『ファィアーエムブレム 聖戦の系譜』

    
第一夜 光を継ぐ者





                序曲


 グラン暦七五八年より始まったいわゆる『グランベル動乱』は数千万の犠牲者とアグストリア、イザーク、ヴェルダンといった諸王国を歴史から退場させ、エルトシャン王、キュアン王子、ランゴバルト公、レプトール公、そしてシグルト公子といった有力諸侯達をも歴史の表舞台から消し去った。とりわけバーハラの戦いに参加したシグルトの仲間達はシグルトの死と共に軍を解散し、ある者はシレジアへ、ある者はアグストリアへ、またある者はレンスターへとそれぞれ身を隠した。
 バーハラの戦いにおいて甚大な被害を被りながらもシグルトを死に追いやることに成功した近衛軍司令官ヴェルトマー公アルヴィスはシレジア、レンスターを滅ぼし、同じ頃レンスターに侵攻してきたトラキアを屈服させ、アズムール王の死後その後を継ぐ形で王の孫娘ディアドラ王女と結婚し民衆の圧倒的な支持の下グランベル帝国初代皇帝に即位した。
 アルヴィスの統治は厳格な法治主義を基とするものであり息苦しくはあったが不正や汚職、事実無根の暗黒教団狩りといったものは鳴りを潜め民は太平を謳歌した。その治世は暫く続きそれが永遠のものと思われた。だが突如として異変が起こった。
 グラン暦七七四年、皇妃ディアドラが謎の死を遂げ皇女ユリアが行方不明となった。そしてディアドラの亡骸は不可思議なことにグランベル動乱の首謀者の一人であるとされる(誰一人としてその話を信じてはいなかった。シグルド公子はおそらくランゴバルト公やレプトール公に陥れられ結果として反逆者の汚名を着せられているに過ぎない、いずれその汚名は晴れると皆信じていた。後にこの予想は的中することになる)シアルフィのシグルド公子の墓の横に葬られた。葬儀に皇帝は姿を見せず、代わりにまだ幼さの残るユリウス皇子が葬儀を取り仕切った。その後ろには素性の知れぬ怪しげな一団が控えていた。
 この時より皇帝は表舞台に現われることはほとんどなくなり、帝国の治世は一変した。弾圧、粛清、密告が世に広まり少しでも帝国に批判的な素振りを見せた者は容赦なく串刺しや車裂きといった惨たらしい処刑を加えられた。人心は荒廃し各地で反乱が頻発しては弾圧され大陸全土は地獄絵図と化した。当初は熱狂的にアルヴィスを迎えた人々も今では『悪逆帝』、『暗黒竜』とさえ呼ぶようになった。最早グランベル大陸三億八千万の民は心の底から帝国を、そしてアルヴィスを憎悪するようになった。
 イザークは先の動乱においてイザーク王家が滅亡した後ドズル家出身でありランゴバルト公の長子ダナンが王となった。ダナン王は父に似て強欲かつ粗暴な人物であり、その統治は悪政の極みであった。ダナン王直属の家臣達や親衛隊はイザークの所々で悪行を欲しいままにし多くの罪無き人々が命を失った。重税と搾取、徴用により民の生活は悲惨を極めた。ただ王とその一派のみが贅を尽くし快楽と腐敗の中にいた。そのような王を王の次子ヨハン、三子ヨハルヴァ、そして『騎士の中の騎士』と称され十二神器の一つ聖斧スワンチカの継承者であるアグストリア総督長子ブリアン等は懸命に父の悪政を正すよう諫めたが苦言に耳を貸すようなダナン王ではなくイザークの民達は塗炭の苦しみを味わい続けていた。
 その様な状況では王に反抗する勢力が現われるのも必然であった。イザーク北西部の廃城であったティルナノグ城を根拠地にかってのイザーク王子シャナンを中心としてかってシグルドの軍にいた者やダナン王に反する人々が集まりだしていた。彼等は自らを『解放軍』と称して着々と決起の時に備えていた。その中に彼等が盟主と仰ぐ一人の少年がいた。彼こそはかって大陸の動乱時に義の為に戦い続けヴァルハラへと旅立ったシアルフィ公子シグルドの忘れ形見ーーー。名をセリスといった。


投稿、ありがとうございます。
美姫 「うちのHPでは、初となるFEね」
おう。序曲は、親世代のあらすじみたいな感じだから、いよいよ次からだな。
美姫 「うんうん。一体、どんなお話が繰り広げられる事になるのかしら」
楽しみに待ってます。



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