袁紹軍第一陣を退け、敵将である顔良、文醜の両名を倒して捕らえた俺たち。
 だがここでのんびり勝ち鬨を上げるヒマはなかった。
 朱里の提案通り、俺たちはほとんどの戦力をつぎ込んで逃げる袁紹軍を追撃しなくてはならない。そのため、城壁の外へと出てきた朱里と流夏の二人と合流し、捕らえた二人の敵将と、彼女らに最後まで付き従っていた敵兵を啄県の城の地下牢へと連行させた。
 うちの軍の兵士によって連行される顔良さんとは……最後まで目を合わせずに。

「さて……朱里の指示通り、これより追撃に向かうわけだが、問題が一つ」
「啄県の留守役、ですか?」
「……さすが朱里。その通りだ」

 朱里がいてくれると話が早くて助かる。
 彼女の言う通り、俺たちはまず啄県に残る留守役を決めなくてはならなかった。
 今回、袁紹が突如馬首を翻したのも、留守にした本国に迫る脅威のため──らしい。これはあくまで朱里の推察であり、事実の確認は取れていないのだが。
 ……まあ、今になって突然袁紹が退却する理由なんて、それこそコレくらいしかないんだがな。
 それを見る限り、こちらとしては寡兵しか啄県に残せないとしても、優秀な将を残していきたいと考えた。
 しかし、

「御主人様はこの追撃戦に出陣なさるのでしょう? ならば、御主人様の青龍刀である私が残るわけにはいきません」
「袁紹をボコボコにするのは鈴々の役目なのだ! 虎牢関の仕返しをするのだ!」
「えと……敵はまだ兵数で言えば私たちの軍よりも多いですし、この追撃戦では策略も必要になると思うんですけど……」
「あたしも行くぜー。留守役なんて性に合わないし。何より、今回は戦場で槍を振るうと決めてるからな」
「……今回は、最後まで見届けたいんだ。本初──袁紹の最後までを」

 ……こんな様子で、誰一人「残って本拠を守ろう」と言ってくれない。
 それぞれに譲れないモノがあるんだろうことはわかるので、俺は溜息をつくしかなかった。
 そして出した結論は──

「しょうがない……今回も“あの二人”に頼むとするか」

 俺は伝令兵に頼んで、城内にいるはずの二人の女性を呼び出すことにした。
 ──ここにいる全員が追撃戦に出るというのであれば、選択肢はもう他に残っていない。





















『恋姫†無双異聞 〜高町恭也伝〜』
 第四十二章























「……というわけで、今回も留守を任せたいんだが。頼まれてくれるか? 糜竺、糜芳」

 俺が留守役を頼んだのは、先の連合軍参加の時にも同じ役目を請け負ってくれていた糜竺と糜芳の姉妹だった。
 姉の糜竺は政治能力に優れ、普段は内政面で朱里を補佐している。
 そして妹の糜芳は戦略発案などに才能を見せ、彼女もまた朱里のサポートをこなしていた。
 姉の糜芳は落ち着きのある清楚な雰囲気を持った少女で、腰まである長い髪を三つ編みにしてまとめている。
 妹の糜竺は姉とは違い華やかな雰囲気を持った少女で、肩まで伸びた栗色の髪はまるでパーマのようにふんわりとウェーブがかかっていた。
 城から呼び出しての俺の頼み事に、

「はぁ……やはりそうなりますか」

 姉の糜芳は、俺の頼み事の内容が予測済みだったらしく、どこか諦観したような溜息をつく。
 そして、

「うぅ……今回は御主人様と一緒に行けるかな、って期待してたのにぃ……」

 妹の糜竺の方はこの追撃戦に同行したかった本音をあっさりと口にした。
 このあたりも二人の個性が出ていてなんとも面白い。
 とはいえ、面白がってるヒマはない。今の俺たちは一刻を争うのだ。

「申し訳ないとは思う。だが、啄県を任せられるのは二人の他にはいないんだ。ダメか?」

 現状では本当にこの二人以外に留守役を任せることは出来ない。
 能力的な観点で考えれば、元々太守であった月や、その月の軍師だった詠もいるが、あの二人を表舞台に立たせるわけにはいかないのだ。周囲の敵国に“董卓たちが生きている”という事実を知られることだけは避けないとならないから。
 ……恋に関しては、太守の代理をやらせること自体が無謀だしな。
 それらのことを考慮するとやはり、

「……ダメ、なんて言えません。言えるはずがないですよ」
「しょうがないですよね。やっぱりここは私たちじゃないと……ですよね?」

 そんな現状をしっかりと把握してくれているこの二人しかいなかった。
 二人の了承を得た俺は、無意識のうちに頬を緩ませる。

「助かる……二人ともありがとうな」
「御主人様の笑顔のためなら、なんてことないですからっ♪」

 俺は胸をなで下ろしながら頭を下げると、糜竺はさっきの落ち込んでいた表情から一変、眩しいくらいの笑みを浮かべてくれた。そして姉の糜芳も、

「私たちはあくまで御主人様の命に従っただけですから。家臣である我らに頭など下げなくても……」
「俺は君らを部下と思ったことはないからな。立場上はともかく、俺の中では二人はあくまで“仲間”なんだ。だから、これからもこういうことがあれば、俺は頭も下げるし感謝の意を示す。これは憶えておいてくれ」
「……しょうがない方ですね」

 やはりどこか呆れたような、それでも温かさを感じさせる微笑みを見せてくれるのだった。
 ……これで一安心だな。
 俺はあらためて糜芳と糜竺の姉妹の前で表情を引き締める。形式上、俺は太守で彼女たちは家臣なのだから、その形式に則る必要があるから。

「留守を頼む」
「はっ!」
「はい〜。お任せですよ♪」

 だからこそ、せめて出来る限りの信頼を込めて、二人に命を下す。
 そして二人もまたそれにしっかりと応えてくれた。
 その心地よい返事を聞いた俺は感謝の意を込めた微笑を二人に見せてから、二人に背を向けて全軍に向かって出来る限りの大声で口上を述べる。

「これより我らはこの幽州を脅かした袁紹軍を追撃する! 連中を追い出し、この幽州を攻めたことを存分に後悔させてやろうじゃないか! そのためにも……そして我らの幽州の平和のためにも! みんなの力を貸してくれ!」

 ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっっっ!

 口上の後に響くのは、兵士たちの大地を揺るがすほどの賛同の雄叫び。
 この士気の高さが俺の心すらも高揚させ、追撃への闘志を倍増させてくれる。
 留守役も決まり、後顧の憂いもなくなって進軍を開始出来る……のだが。

「──なんでこの状況で不機嫌そうなんだ?」

 何故か、俺と糜竺・糜芳の姉妹のやりとりを見ていた愛紗たちが俺の背中に向けてくる視線はキツイモノがあった。
 ……俺が一体何をした?


















 高町軍、追撃のための進軍開始。
 そんな中──。

「なぁなぁ、愛紗」

 騎馬にまたがり軍の先頭に立つ愛紗に、同じく馬上の人となっている翠が馬を走らせながら近寄り、馬首を並べながら話しかける。

「……なんだ?」
「随分ご機嫌斜めじゃないか。そんなに気に入らないのか?」
「だから、何がだ?」
「あんたんトコの御主人様があの……糜竺と糜芳だっけ? あの二人に笑いかける事とかだよ」
「……別に」
「別に、って顔してないぜ?」
「…………」

 翠の指摘に、愛紗は不機嫌そうな表情のまま口を閉ざした。その指摘が図星であることを態度で示すかのように。
 そんな愛紗を見て翠は肩をすくめた。

「そんなにイヤなら、イヤだって本人に直接言えばいいじゃないか」
「そ、そんなこと……言えるワケがないだろう」
「なんでだよ? 恋人だったらそれくらい言ったっていいんじゃ……」
「こっっっっっっっっっっっ!? か、勘違いするな翠! わ、私はあくまであの方の臣下に過ぎないんだぞ!」
「あ、そうなんだ?」
「そ、そうだ……私などが御主人様のこ、こ、こ……」

 そのまま赤面しながら「恋人だなど……」を連呼している愛紗を見ながら、翠はあらためて彼女の主である高町恭也について考える。

(まあ……いい男ではあるよな。格好いいし、落ち着きもあるし……)

 そんな中で翠は、先の袁紹軍との戦いの中で目撃した彼の小太刀を振るう姿を思い出す。

(それに……確かに強かった。あんな間合いの狭い剣なのに、それをまったく苦にしない戦い方も随分と風変わりで面白いし。あの“噂”もあながちガセネタじゃないのかもな)

 翠の言う“噂”とは──数ヶ月前の反董卓連合内で流れたモノ。
 曰く、董卓軍最強の武将の呼び声高い呂布を天の御遣いが倒したという。
 その話を聞いた時、正直なことを言えば翠は半信半疑だった。天の御遣い、という呼び名が一人歩きしたのかも……という考えもあったし、なにより翠は実際に恭也と顔を合わせていたからこそ、その噂を鵜呑みには出来なかったのである。
 だが、今日の戦場での彼の戦いぶりを自らの目でしかと見届けた翠は、その認識を改めた。

(愛紗たちみたいな力強さは感じない。だけど、それに勝る速さと独特な動き……アレには驚かされたし、興味がある。あたしだったら……勝てるか?)

 翠とて涼州では無敵の名を冠した女傑である。自らの武には誰にも負けない自信を持っているし、自信を持つだけの腕を有してもいる。しかし同時に、彼女は自分こそが最強だと自惚れているわけでもなかった。世の中には自分に負けない腕を持った武人だっているだろうし、自分が勝てないほどの豪傑だっている──それくらいのことは想定している。

 だが、翠はむしろそうであってほしいとすら思うのだ。
 彼女は今の自分に納得していないから。もっと強くなりたいという向上心を抱いているから。
 だからこそ、先の連合で愛紗と鈴々の二人と出会った時は、心の中で歓喜していた──もっとも、表立ってそんな素振りを見せることはなかったが。
 この二人はどちらも自分と同等かそれ以上の実力を持った相手だと、彼女の“武人としての勘”が告げていたからだ。

 だが、初対面の時の恭也を見た時は、その“武人としての勘”は働かなかった。漠然と強いとは思ったが、愛紗たちと比べれば、一枚落ちるかな、程度のモノなのだろうと推測したのである。
 しかし、それは違っていた。
 彼女の“武人としての勘”が働かなかった理由──それはきっと恭也が、翠が今まで見てきたどの武人とも違う“何か”を持っているから。
 その“何か”がなんであるかは今の翠にはわからない。
 ただ、

(勝てるかどうかはやってみなくちゃわかんないよな。どっちにしても、面白そうだな……)

 彼女もまた、恭也に深い興味を抱くことになる。
 そして恭也について知りたいと思った彼女が、後にどのような感情を抱くようになるのか──。























 ──それはさておき。
 話を本筋に戻そう。
 初戦の疲れがもちろんあるはずの高町軍であったが、追撃の勢いは凄まじいモノがあった。
 元々兵力では劣る高町軍ではあるが、それ故に軍の統制はしっかりと取れており、軍全体の小回りが利くということもあって、進軍速度は袁紹軍を遙かに凌ぐ。
 一方の袁紹軍は、いまだに五万を超える軍勢で、しかも途中で命からがら高町軍から逃れてきた第一陣の兵士たちも追いついてきたことで更に大所帯となってしまったのだ。結果として袁紹軍の進軍速度は更に落ちてしまう。

「もうっ! うっとおしいですわね!」

 その事実にいちばん苛ついてるのは大将である袁紹その人であった。
 彼女は他にもいろんな要素に苛つきを感じている。
 自分が幽州の高町──彼女曰く、恥知らずで生意気な自称天の御遣い──を意気揚々と倒しに行った矢先、それを邪魔するかのように冀州制圧のために挙兵した曹操にも。
 先陣を切って高町軍と戦いながら、勝てなかった顔良と文醜にも。
 そして、自分たちが背中を見せてるのを良いことに、寡兵でありながら追撃してくる高町軍の大将にも。

「あのクルクル小娘も、高町も……どれほどわたくしの邪魔をすれば気が済むのかしら……っ」

 名家である袁家に生まれ、何不自由なく王道を歩んできた袁紹は、自分の思惑通りに事が進まないと癇癪を起こしてしまうという悪癖があった。

 ……その悪癖が、袁紹軍にさらなる悲劇を引き起こすこととなる。



「誰か! 誰かいませんの!?」
「はっ。いかがなさいましたか袁紹様!」

 現在の袁紹軍の“一応”の軍師の立場にあり、顔良たちがいない今はこの袁紹の副官も兼ねている青年──郭図(かくと)が、苛立ちを含んだ袁紹の声に対応した。

「いくらなんでも進軍速度が遅すぎますわ! これでは冀州に攻め込もうとする曹操軍の攻撃にも間に合いませんし、あの生意気な高町軍にも追いつかれるのではなくて!?」
「……その可能性は高いかと。しかし、六万を超える軍勢ゆえ、これ以上の軍の移動は速くすることは出来かねます」

 袁紹が癇癪を起こすこと自体は珍しいことではない。
 だが、それをいつも宥めていたのは顔良や文醜だった。軍師である郭図は、そんな様子を遠巻きに見ているだけだったため、袁紹の面倒をみることに慣れていない。だから彼はわからないのだ。
 今の彼女には、正論をぶつければいいと言うモノではないことに。

「そこを何とかするのが軍師の仕事でしょう!?」
「そ、そんな無茶な……」
「無茶でもなんでも、なんとかなさい!」
「…………」

 袁紹の無茶振りに絶句する郭図。
 いきなりそんなことを言われても、今はこの進軍速度で進むしかないじゃないか──郭図は、そんな言葉を吐き出したかったが、それを飲み込み、必死に新たな方策を考える。
 だが、そんな都合のいい案など出るはずがなかった。
 この郭図という青年。肩書きこそは袁紹軍の軍師だが、決して優秀な人間ではない。事実として、袁紹軍の戦略立案を主だって担当するのは軍師の彼ではなく顔良である。それは何故か?
 答えは簡単。
 彼女の方がより優れた案を出せるからだ。
 その事実から、郭図は顔良を疎ましく思っていたのである。だが、こうして顔良は不在で自らに軍師としての仕事が回ってくると、何も出来ないのが現状だった。
 彼に名案が浮かばないのは、その長い沈黙で袁紹でも察することが出来る。そんな彼の有様に、彼女の苛立ちは頂点に達した。
 その結果、

「ええい、もうっ! 案がないのなら、わたくしがなんとかしますわ!」

 袁紹の独断がまかり通ることになってしまう。
 彼女の独断で軍が動く──それは顔良や文醜がもっとも恐れていた事なのだが……それを止める人間は存在しなかった。

「兵の数が多すぎて速度が上がらないと言うのなら、減らせばいいのでしょう!」
「は? 減らすと言われますと?」
「軍の中で足の遅い兵士を追撃してくる高町軍への足止めとしてこの場に残せば、敵の速度は遅くなり、逆にわたくしたちの足は速くなる……違いまして?」

 名案でしょう? とでも言いたげな袁紹。
 だが、郭図はそれに素直に頷けなかった。

「そ、それは……」

 袁紹の言う“足の遅い兵士”とは……顔良と文醜が体を張って時間稼ぎをしたことでようやく本軍に合流したばかりの、疲弊した元第一陣の兵士たちのことである。
 つまり袁紹の案とは、命からがら逃れてきた第一陣の兵士たちを見捨てるのと同義なのだ。もっとも、袁紹がそのことに気づいているかどうかは微妙なところだが。
 有能ではないが袁紹ほど無能でもない郭図は、その事実に気づいてしまったがためにすぐには頷けなかったのだ。ここで袁紹の案に頷いてしまえば、顔良たちの奮戦も無駄にする事となる。
 彼は軍師としての仕事を奪われたこともあって、顔良には良い感情を持ってはいなかった。だが、それでも顔良たちの頑張りを無駄にすることには抵抗がある。彼は決して悪人にはなれない性格をしていた。
 しかし──

「文句がおありのようね?」
「あ、いや……」
「もし、わたくしの案に問題があるというのなら、あなたが代案を出してみなさいな。有効な策があるというのなら、わたくしも聞いてさしあげてよ?」
「…………」

 こう袁紹に言われてしまうと、何も言えなくなってしまう。
 そして結局は、

「……いえ。袁紹様の案で問題ないかと」

 代案など出せない郭図は袁紹の案に乗ることしか出来なかった。

 ──彼は自分の意思を押し通せるほどの強さもなく、善人にすらなれないまま流されることしか出来なかったのである。










 袁紹の案──足の遅い兵士たちを追撃してくる高町軍の足止めをさせるため彼らを迎撃すべくこの場に置いていく──が実行に移され、約一万の兵が高町軍迎撃を任され、その場に留まった。
 その一万の兵とは……第一陣で高町軍との戦いの末に敗走した元顔良・文醜軍の兵士たちである。
 袁紹は彼らに向かって、こう命じた。

「あなたたちに名誉ある役目を言い渡しますわ。これよりこの場に残り、迫る高町軍を迎撃なさい。なんなら返り討ちにしても構いませんわ。あと、どう迎撃するかは好きになさい」

 丸投げである。
 策も何も与えず、疲弊した兵士たちを見捨てた──袁紹がどう思っているかは別として、誰の目から見てもそう映ることだろう。
 事実、彼女の命を受けてその場に残った一万の兵士たちは、自分たちが捨て石であることを自覚し、

 ──せっかく顔良将軍や文醜将軍が俺たちが退却するために体を張ってくれたのに。
 ──俺たちゃ捨て石かよ?
 ──袁紹様は俺たちの事なんて消耗品くらいにしか思ってないんだぜ。
 ──そうだろうさ。畜生……あのアマぁっ!

 沸き上がる不満を隠そうともせず、声を大にして袁紹への怨嗟の言葉を吐きだしていた。
 その傲慢かつワガママな性格のせいもあって軍の中での袁紹の人望は見事なまでにない。それでも兵士たちが上の命令に従ってきたのは、権力が怖かっただけでなく、顔良という袁紹軍の良心とも言うべき存在があったからだ。しかし今は彼女の存在もなく、総大将である袁紹はいともあっさりと自分たちを捨てたのである。
 となれば、

「あんな女の命令に従うこたぁねーよ!」

 こんな言葉が兵士たちから出てくるのも必定だった。
 そしてその言葉がキッカケとなり、兵士たちは次々と軍から離脱を始める。一人、また一人と軍の列から抜け出し、軍の統制から離れて故郷へと逃げ帰り始めたのだ。そして、その行為は他の兵士たちにもすぐさま伝染し、兵の離脱は止まらなくなっていく。
 本来ここで、この部隊を指揮する部隊長が勝手な行動を取る兵士たちを諫めなければならないのだが、この場を逃げ出したいのは隊長格の将たちも一緒だったのだ。彼らも元は顔良や文醜の下で腕を振るっていた猛者である。彼らもまた顔良たちには忠誠を誓っていたが、袁紹にはそれほどの忠誠心はなかった。彼らも心情的には兵士たちに近いので、離脱する兵士を咎めることはしなかったのである。



 ──そして隊長格の武将たちも、全ての兵士たちが逃げ出したのを確認してから、その場を離れていく。顔良たちがいなくなった袁紹軍から離れることに、何の未練もないかのように。


 数分後。
 高町軍が“かつて一万の袁紹軍”がいた場所に着いた時、そこには人の気配はまったくなく、恭也たちは進軍速度を落とすことなく、その場を通過していく。
 袁紹軍と高町軍の距離は更に縮まっていった──。






あとがき

 ……地味にキャラが増えてる(ぇ
 未熟SS書きの仁野純弥です。
 顔良たちとの戦いが終わり、今度は追撃戦となります。とはいえ、今回は追撃戦の準備と言ったところでしょうか。とりあえず原作では名前だけだった糜竺と糜芳にそれなりのビジュアルイメージをつけてみました。まあ、想像するにはあまりに大雑把なイメージなのは申し訳ないんですけどね。
 あとは、地味な新キャラとして袁紹軍の“一応”軍師さん。公孫賛編の時の田楷といい、新キャラが男となるとイメージすら出さないと言う手抜きっぷりに、自分でもビックリ(核爆
 まあ、それはともかく。これからは袁紹編のメインともなる戦いへと向かうこととなりますので、楽しんでもらえたら幸いです。
 では最後に、ここまでこのお話を読んでくださってる読者の皆様と、SS公開の場をくださった氷瀬さんに最大級の感謝を。
 では〜。



ああ、自爆するかのように瓦解していく袁紹軍。
美姫 「また追い付かれそうになって同じ事をしたりしてね」
まさか、それは流石にないだ……いや、袁紹だし。
何もせずにドンドン兵の数が減っていくとか本当に起こったら……。
美姫 「それはそれで面白いわね」
いやー、本当にこの後どうなるのか色々と想像して次回を待つとしよう。
美姫 「次回も楽しみにしてますね〜」
待ってます!



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