今回の戦後処理として最後まで残っていた敵将の処遇。
 まず顔良と文醜に関しては、流夏が度量の広さを見せ、二人を高町軍に登用するという形で落ち着いた。
 そして、残る敵将はただ一人。
 諸悪の根源とも言うべき人物……袁紹の処遇。
 それを決めるのは、恭也の指名を受けたこの人。

「さて、次は私の番ですね。さてどうしましょうか?」

 表情こそニコニコ笑顔ながら、その瞳の奧には冷酷な光が見え隠れする──黄漢升である。





















『恋姫†無双異聞 〜高町恭也伝〜』
 第五十一章






















 黄忠──紫苑が行ったことは、なんと彼女の猿ぐつわをはずすことだった。
 それには、当然ながらこの場にいる誰もが難色を示す。
 猿ぐつわを噛ませているこの状況ですら何かとうるさいのだ。それを外した日には、それこそ周囲が辟易するくらいに騒がしくなるのは目に見えている。しかし、

「敗軍の将の言葉を聞いた上で、どう裁くのかを決めたいんです。ダメでしょうか?」

 紫苑の言葉ももっともだった。袁紹には袁紹なりの言い分もあるだろうし、発言を完全無視して裁きにかけるというのはあまりに非人道的過ぎるのかもしれない。そう思った恭也は袁紹達の背後に控えている兵士たちに命じて、袁紹の猿ぐつわを外させた。
 わずか数秒後に、恭也はそれを後悔することになるのだが。

「ぶは……っ! まっっっっっっっっっっったく、揃いも揃ってとんでもない無礼を働いてくれましたわねっ! この野蛮人共はっっ!」

 これが袁紹の第一声だった。しかも彼女の言葉は更に続く。

「この……高貴なるわたくしを……名門袁家の袁本初をあーーーんなカビ臭くて狭いところに一ヶ月も閉じこめるだけでも万死に値しますわ! しかもまあ、ここに連れてきてからも好き勝手な事を仰いましたわね! わたくしがしゃべれないことをいいことに無能扱いだなんて! この、全知全能才色兼備完全無欠のわたくしに向かって! 地方の小領主風情がよくもまあ言ってくれやがりますわねっ! 自らを『天の御遣いぃ〜』だなんて名乗る恥知らず、名門袁家に楯突いたこと自体が罪だと言うことをまったく理解してませんのねっ!」

 袁紹の、耳障りなくらい名甲高い声での罵詈雑言。
 恭也は、その内容に腹を立てるどころか、

(よくもまあ……しゃべるものだな)

 妙なところで感心してしまう。
 しかし、そんな呑気なことを考えてるヒマはなかった。
 何故なら、

「……許せん……っ」

 恭也の隣に控える愛紗が、自らの主を辱めるような暴言を吐く袁紹に明らかな殺気を放っていたからである。しかも、そっち方面にはとんと鈍感な袁紹はなおも続けた。

「そもそも、どこの馬の骨ともわからない男のクセに、名門袁家に刃を向けるなんて! 恥を知りなさい、恥をっ!」
「……恥を知るのは貴様だ……」
「へ……?」

 そこでようやく袁紹は、マシンガンのごとく罵詈雑言を吐き続けた口を止める。何故ならば、いつの間にか彼女の目の前には、高町軍の将軍である関雲長が目の前に立っていたからである。
 しかも──

「我が主を面前で愚弄するとは……っ」
「愚弄? お言葉ですわね。これは真実ですわ」
「……それこそ、万死に値する!」

 ──いつの間にか、愛紗の手には、彼女の代名詞とも言える青龍刀が!

(やばいっ! 完全に殺る気だっ!)

 愛紗の殺意はすでに限界を超えていた。
 愛紗は元々気の長い方ではない。高町軍の中でも怒りの沸点は低い方だし、一日一回はどこかで愛紗の怒鳴り声は聞こえるくらいだ。しかし、その“怒り”が殺意に変わることは稀だ。愛紗は怒りを露わにすることが多い分、その怒気を制御することにも慣れている。その彼女が溢れる殺意を抑えきれないほどに怒っている姿は、もしかしたら初めて見るかもしれなかった。
 そして彼女が怒る理由は至極当然のこと──敬愛する主、高町恭也を敗軍の将が貶めるからである。
 だが、それを恭也が黙って見ているはずがない。

「鈴々っ! 星っ!」
「おうっ、なのだ!」
「やれやれ……」

 恭也の声に早々に反応した二人は、即座に殺気立った愛紗を囲む。そして星が愛紗を羽交い締めにして、鈴々が愛紗の青龍刀を持つ手を押さえた。

「落ち着くのだ、愛紗ー!」
「今回袁紹を裁くのはおぬしの役目ではなかろう。怒り猛る気持ちはわかるが、ここは抑えろ」
「ぬぅぅぅぅぅぅっっっっ!」

 さすがの愛紗も、鈴々と星の二人がかりで抑えられては自慢の青龍刀を振るう事は出来そうにない。それが悔しいのか、愛紗は唸りながらも袁紹を睨みつけるのだった。
 そんな愛紗の殺意を目の当たりにした袁紹は、それこそ言葉を失い驚いていたのだが、愛紗が制止させられたのを見て再び勢いを取り戻す。

「ふ……ふんっ! まったく、部下のしつけがなってませんわね。主が主なら部下も部下ですわ! このわたくしに刃を向けるなんで無礼極まりないですわよ! 主が恥知らずなら飼い犬も恥知らずですわ! この程度の家臣団を引き連れて得意になってるなんて……」
「──黙れ」
「っっっ!?」

 ──瞬間。
 玉座の間の空気が一瞬で凍りついた。
 誰もがそんな錯覚に陥ってしまった。
 そして、全ての人間が即座に理解する。誰がこの場を凍りつかせるほどの……絶対零度を想起させるほどの冷酷な殺気を放っているのか。
 その殺気の主は……玉座にいた。

「……俺のことをどう思っていようと、どう蔑もうがお前の勝手だが……愛紗を、そして俺の大切な仲間をこれ以上侮辱するなら……」
「ひ……あ…………あ…………っ」
「……俺はお前を絶対に許さない」

 愛紗のように声を荒げているワケではない。
 むしろ、その声は静かに響く。しかし、その抑えられた声に込められた怒りはどれほどのモノか、計り知れなかった。
 恭也がこの世界に舞い込んでから、支え続けてくれた愛紗。そして、死線を共にした仲間達。今の恭也にとっては何よりも大切で、今の自分が守るべきモノだった。
 それを言葉とはいえ、傷つけようとするモノを恭也は決して許しはしない。

「あ…………あ………………」

 そして、殺気や怒気に鈍感な袁紹もまた、彼の怒りを感じ取り、過剰なまでに怯えていた。
 袁紹には覚えがある。その、自らの心臓を刺し貫くような視線と、心を押し潰すような声。
 反董卓連合で、彼女は体験していた。
 恭也から向けられた殺意──あまりにも洗練されすぎた、質量すら感じるほどの凄まじい殺気を。そして、彼女は決して認めはしないだろうが、その恐怖はすでに彼女の心に植え付けられていた。
 恭也の殺意は……袁紹にとってはすでにトラウマとなっているほど。
 袁紹は──震えが止まらなかった。








 恭也の静かな怒りの前に言葉を失っているのは、何も袁紹だけではなかった。
 愛紗も、朱里も、鈴々も、星も、翠も、流夏も、紫苑も。
 彼女たちもまた、これほどまでの怒りを露わにする恭也を見るのは初めてだったのだ。
 これまで恭也は戦場で幾度もその小太刀を振るってきた。その時は殺気を纏って戦いに臨んでいた。しかし、そこに怒りの感情はない。恭也が持っていたのは、自らの刃で仲間を守ろうとする意志。それこそが恭也の戦う姿だった。
 だが、今は違う。
 誰もが感じ取った、恭也の殺気の向こうにある純然たる怒り。袁紹にのみ向けられた鋭すぎる殺気は、その矛先が向いていない彼女たちも感じるほどに恐ろしいモノだった。
 しかし、誰もそこに恐怖を感じない。
 何故なら……その怒りは、彼女たちを守るためのモノだったから。

(御主人様は……これほどまでに、私たちのことを……っ)

 怒りの強さは、そのまま恭也の仲間達を思う気持ちの強さ。
 それがわかるからこそ、それまで憤慨していた愛紗にもすでに怒りの気持ちはなかった。
 そこにあるのは、ただ恭也から感じられる想いの強さと、あらためて心に刻む彼を想う気持ち。

(このお方についてきて、本当に良かった……そして、これからも……)

 愛紗も、そして他の面々も。恭也の心を感じ取り、一層その絆は深まるのだった。











 恭也の怒りは確かに凄まじい。
 それは“二人とも”感じ取ってはいたが、それよりも驚く光景が目の前にあった。

(あの姫が……)
(怯えてる……あの姫が……)

 驚きを隠せないのは、文醜と顔良の二人組。
 そして彼女らが驚いている理由は……これほどの人間の目の前で、怯え震え上がる袁紹の姿を見てしまったからだ。
 この二人は袁紹のことをよく理解している。だからこそ、プライドの高い彼女が人前で怯える姿など見せるはずがない事も知っていた。もちろん、他人からの怒りや殺気といったモノに鈍感だということもあるのだが。
 そんな彼女が、目の前の恐怖におののいている。虚勢を張ることも出来ず、ただただ怯えている。
 袁紹のそんな姿を見るのは、つきあいの長い二人でも初めてだったのだ。

(それだけ……高町が怖いって事か)
(高町さんが怒るのは優しいからなのはわかるけど……この人はただ優しいだけのひとじゃないんだ)

 その驚きは、そのまま恐怖を与える恭也への評価へと変わる。
 これから自分が仕える相手──高町恭也という人物を肌で感じ取った瞬間だった。


















 不意に、恭也の殺気が霧散する。
 恭也自身が、怯えて震えている袁紹の姿を見て我に返ったのだ。

(……いかんな。感情的になりすぎたか)

 現在、自分がいる場はあくまでも仲間達の前であり、行っているのは敵将の処遇を決めるという大事な事。そこで感情をむき出しにするのは、形だけとはいえ一軍の大将のすべき事ではない。恭也はそれを思い出し、自制した。

「……すまない。取り乱してしまったようだ」

 恭也は自分の失態を恥じて頭を下げる。
 しかし、それを不快に思った人間はこの場にはいなかった。

「いえいえ。むしろありがたかったですよ、御主人様」
「紫苑?」
「おかげさまで、あちらも静かになってくれましたので」
「あちら……? ああ……」

 紫苑が指差した先──沈黙してしまった袁紹を見て、恭也は苦笑する。

(どうやら、俺の失態もそれなりの役には立ったようだ)

 そんな恭也の苦笑に、紫苑は微笑を返してから、あらためて袁紹と向かい合う。
 今回、袁紹を裁く権限を受けたのは彼女なのだ。

「さて……ようやく彼女の処遇を決められますね。しかし……あらためて対面して、そして彼女の言葉を聞いて再認識しました」

 不意に、紫苑の目がすっと細くなる。

「袁本初……あなたには同情の余地はありません」

 普段は優しく朗らかな雰囲気を持つ紫苑らしからぬ、厳粛な表情で吐き捨てるように言い切った。

「自己中心的で無慈悲。残酷にして非道。無知にして無能。一軍の将として……まったくの無価値。顔良ちゃんたちには、武将としての価値を見出し、登用という形になりましたけど、あなたにはそこまでする価値は皆無です。むしろ高町軍の害にすらなりかねない」

 紫苑は冷静に、そして冷酷に、自らの目と耳で感じ取った袁紹という人物評を並べ上げる。そこには一片の容赦もなかった。

「同情の余地もなく、登用する価値もない。だとすれば、自ずと私がこれから下す裁定も見えてくるのではなくて?」

 そして挑発的とも言える視線を袁紹に送る。それに、自尊心が高すぎる彼女が反応しないはずがなかった。

「言ってくれますわね……一度はわたくしの手駒になった女が……」
「あれはあなたの策ではなかったんでしょう? 確か、郭図とかいう将のモノだとか」
「そんなの関係ありませんわ! わたくしの部下の策はわたくしの策も同然!」
「……その厚顔無恥っぷりが、無能の証だと言ってるのよ」
「きーーーーーーっっ! なんですって〜っ!」

 相変わらず簡単にキレる袁紹。そんな袁紹の前で紫苑はあくまでも冷静だった。
 紫苑には大人の女性の余裕が感じられるのだが、袁紹にはそれが全くない。人としての器の差が見て取れるやりとりだった。
 そんな中で、紫苑は振り返り恭也を見る。袁紹に向けていた醒めた表情とはうってかわっての、いつもの穏やかな表情で。

「御主人様。袁紹という人物がどの程度のモノなのかは、存分に分かっていただけましたでしょうか?」
「ああ……ここにいる全員が理解出来ているだろうな」
「ならば……?」
「ああ。決めてくれ」

 紫苑はあらためて確認を取ったのだ。これから裁定を下すために。
 そして恭也は紫苑にゴーサインを出した。
 その瞬間。
 この場にいる誰もが確信をした。
 紫苑がこれから下す裁定……それが“死罪”なのだと。
 だからこそ、

「ちょっと待ってくれ!」
「少しだけ待ってください!」

 この二人は──文醜と顔良は待ったをかけた。

「いや、その……黄忠、さんの言ったことはあながち間違いじゃない、っつーか、思いきりその通りなんだけどさ。その……あれでもいいところもある…………かも知れないんだ。だから、せめて死罪は勘弁してくれないかな、って」
「確かに姫は、ワガママで考えなしで意地っ張りで他人への配慮に欠ける、どうしようもない人ですけど! 根っからの悪人では………………ない、と思うんです…………きっと。だから!」

 散々自分たちを振り回してくれた元君主。それでもさすがに死にゆく姿を見るのは忍びないと思ったのだろう。そんな二人の優しさが、袁紹をかばったのだ。
 なのに、

「……さっきから聞いていれば……っ、黄忠の言う通りだとか、ワガママだとか! 文醜さんに顔良さん! あなた方は普段からわたくしのことをそう思ってましたのねっ!」
「いや……だから、姫? 今はそんなことを言ってる場合じゃ……」
「黙らっしゃいっ! そもそもあなたたち……わたくしという素晴らしい主がいながら、何をああもあっさり高町なんぞに恭順なんかして! 恥を知りなさい恥を!」
「……いや、姫さぁ。もっと現実を見ろって。もうあたいらの軍はないし、冀州はもう高町軍のモンなんだぜ? それに、あたいらだって死にたくないし」
「文ちゃんの言う通りですよぉ、姫。もう私たちは全てを失ったんですから。ここはちゃんと皆さんに謝って命だけでも助けてもらいましょうよ〜」
「わたくしが!? 謝るですって!? わたくしに非などありませんわっ! 誰があんなのに頭を下げるモノですかっ! そんなの……死んでもいやですわ!」

 袁紹はそんな顔良たちの気遣いすら無駄にしてしまう。
 彼女はこの状況でもまだ自らの負けを認めていないのだ。
 彼女に付き従う兵士はどこにもいない。彼女が治める領土もすでにない。いくら袁紹でも、それくらいの認識は出来ている。だが、それでも彼女は決して王としての姿勢だけは崩さなかった。

(その気位の高さだけは尊敬に値するな……とはいえ、これでは顔良さんも大変だったろうな……)

 恭也は自分が“あんなの”扱いされているのも気にならず、ただただ袁紹のプライドの高さに呆れている。そして、そんな主君に仕えていた顔良にあらためて同情の念を抱くのだった。
 しかし、今の彼女を見てそんな呑気な感想など抱けない人間が一人いる。

「あら、今なんて言ったのかしらね? 死んだ方がマシ、と聞こえたんだけど?」

 気が付けば顔良たちと袁紹の口論の前に置いてきぼりにされた紫苑だ。
 紫苑は剣呑とした瞳で、袁紹の言葉尻を捕らえている。

「言葉通りですわ! この、武家の頂点たる袁家の総代であるこのわたくしが、高町風情に頭を下げるなんて、死んでもイヤだと言ったのです! 何か文句でもある──っ!?」

 ……袁紹の言葉は最後まで続かなかった。
 何故なら、そんな彼女の鼻先を──

「それでは、いっそのこと……お望み通りにしてあげましょうか?」

 ──鋼鉄製の矢がかすめていったから。
 袁紹の耳にははっきりと、その矢の空気を斬り裂く音が聞こえていた──それくらい、彼女の顔の側ギリギリを通過したのである。そして、その矢は玉座の間の壁に刺さっていた。

 しーーーーーん

 玉座の間が、再び静寂に包まれる。
 先ほどは恭也の殺気で。
 そして今回は……達人が放った一本の矢で。
 袁紹は、突然自らを襲った物理的な恐怖を前に、驚愕の声もろくに上げられず、自分の──文字通り──目の前を通過して壁に刺さっている矢を凝視し、その後まるで錆び付いたブリキのおもちゃのような動きで、その矢の軌道から予測した発射先へと視線を移す。そこには、

「死にたいのなら、最初から言ってくれればいいんですよ♪」

 瞳こそは剣呑とした光を灯しているが、表情だけは“笑顔のまま”の紫苑が、いつの間にか手にしている愛弓を構えた形で、立っていた。
 その笑顔だけは、いつもの紫苑の表情で……いや、だからこそというべきか。いつも通りの笑顔のままで平然と弓矢を操る紫苑に、その場にいた全員に戦慄が走ったのだった。
 その紫苑の底知れない恐ろしさを如実に感じていたのは袁紹で、普段なら自分の鼻先をかすめるような矢を放った紫苑に文句の十や二十は言いそうなモノなのに、完全に気圧されて口をパクパクするばかり。声はまったく出ていなかった。
 そしてそれは文醜や顔良も同様だった。見た目は絵に描いたような良妻賢母な紫苑の、笑顔のままの凶行を目の当たりにした二人は、先ほどのような袁紹の嘆願を口にすることが出来ないくらいに怯える始末。

「さて……場も落ち着いたことですし。裁定の続きと参りましょうか」

 たった一本の矢で完全にその場を支配した紫苑が、相変わらずの落ち着いた口調で袁紹の裁きを再開する。

「さて……袁紹? あなたは先ほど、こう言いましたよね? 我らが御主人様に頭を下げるぐらいなら、死んだ方がマシ、と」

 まず紫苑が行うのは先ほどの言質を取ること。しかし彼女は袁紹に問いただすと同時に、どこから取り出したのか再び鋼鉄製の矢を弓につがえていた。

「先ほどの言葉、今でも……言えるかしら?」

 そして充分に引き絞り、狙いを定める。紫苑が構える弓矢──その鏃はしっかりと、袁紹の脳天へと向けられていた。もし、このまま紫苑が矢を放てば、確実に袁紹は死ぬ。それだけは間違いなかった。
 そんな状況での先ほどの問いだ。
 返答次第ではすぐに矢を射る──紫苑の目はそう言っている。
 事実彼女はすでに先ほど、なんの躊躇もなく矢を放っていた。これはもう安っぽい脅しでもなんでもないのである。
 この状況を前にして、意地を貫ける者など、そうそういるものではなかった。
 しかし──

「ふんっ! 何度でも言えますわ! 高町なんぞに頭を下げるくらいなら、死んだ方がマシですわっ!」

 ──例外がここにいる。
 生来の、不釣り合いなほどに高い自尊心がここでも裏目に出てしまった。
 表情は引きつったまま。しかし袁紹の口から出たのは、命乞いではなく、

「この袁本初! 自らの言葉に二言はなくてよ!」

 あくまでも自分の意志を貫き通すという、強い意志。
 その言葉を聞いた瞬間、紫苑はニヤリと邪気を含んだ笑みを浮かべ──袁紹に向けていた鏃を下ろし、ゆっくりと構えを解いた。
 そして、振り返って恭也と正対する。

「御主人様?」
「ん?」
「私としては正直、袁紹には死罪が妥当だと思ってました、ですが……彼女には死よりもなお辛いことがあると聞いた今、妙案が浮かびまして」
「……聞こうか」
「お耳を……」

 紫苑はゆっくりと恭也のいる玉座へと歩み寄り、恭也に耳打ち。紫苑の“妙案”を聞いた恭也は最初目を丸くした後、すぐに意地の悪い笑みを浮かべた。

「確かに……妙案だな。俺はそれで構わないぞ」
「ありがとうございます。では、早速」
「ああ……」

 袁紹も、文醜も、顔良も。そして他の高町軍の面々も、紫苑が何を企んでいるのかわからないまま、首を傾げるばかり。
 そんな中、紫苑から頼まれたことを実行すべく、玉座の間にいた兵士の一人にある命を下した。

「すまないが……月と詠を呼んできてくれないか?」













 程なくして玉座の間に現れたのは、メイド服に身を包んだ小柄な少女二人。

「あの……お呼びですか、御主人様?」
「……これでもボクたちは忙しいんだけど?」

 最近ではすっかり侍女としての仕事も慣れてきた(はず)の月と詠。
 月の方はあまり来ることのない玉座の間にいる自分に違和感があるのか、どこか落ち着かない様子。一方の詠は仕事の途中だったのだろう、突然の呼び出しに対してあからさま過ぎるほどに不満そうな表情を見せていた。

「そもそも、ボクたちは政務や軍事には不介入って決め事があったでしょうが。今、やってるのは戦後処理……思いきり軍事じゃない。その最中にボクらを呼ぶなんて……何考えてるのよ」
「え、詠ちゃん……御主人様にそんな口の利き方はダメだよ〜」

 もっとも、詠の場合は表情だけでなく、不満はしっかりと口からも出るのだが。
 そんな相変わらずな二人に苦笑する恭也。
 だが、二人を呼び寄せたのは恭也の意志ではない。

「ごめんなさい、詠ちゃん。あなた方を呼んだのは私なのよ」
「紫苑が?」
「紫苑さんが、私たちに用事……なんですか?」
「ええ。大切な用事があってね」
「それなら別にいいんだけど」
「…………」

 恭也に呼び出されたと思っていた時は不満たらたらだった詠だが、実は紫苑が呼び出したと知ると、その不満はなくなっていた。そんな詠の変わり様に、恭也は一抹の寂しさを覚える。

(そこまで嫌われてるのか……俺は)

 紫苑が高町軍に降って、この啄県に来てから一ヶ月が経つ。その間に、紫苑は月や詠とも何度も顔を合わせており、いつの間にか意気投合していた。決して人付き合いが良い方ではない詠も、紫苑には気を許しているフシもある。

「で、どうしたのよ? 紫苑だって知ってるでしょ? ボクらがこーゆー場所には居合わせてはいけないってことは」
「ええ。でもね、今回に限ってはあなたたちの了解が必要な事だったから」
「??」

 首を傾げる月と詠。
 そんな二人に、こちらは混じりっけのない微笑みを見せた紫苑は、二人を呼んだ理由を語る。

「実はね……あなたたち二人に、お願いしたいことがあるのよ。ここにいる──」

 そう言って紫苑は、何が起きてるのか分からずきょとんとしている袁紹を指差して、

「──袁紹を侍女見習いとしてこの城に置くので、指導と監視をお願いしたいのよ」

 事も無げにそう言い放ったのだ。
 それを聞いた瞬間、

『は……!?』

 先に話を聞いていた恭也以外の全ての人間が、目を丸くしていた。
 そんなみんなの顔を見てしてやったりと思ったのか、紫苑もくすくすと笑いを堪えきれない。

(まったく……紫苑はいい性格をしている)

 先に話を聞いていたからこそ驚かなかった恭也も、ここは苦笑するしかなかった。
 あえて恭也に耳打ちして、他の面々に聞かせなかったのは、みんなの驚いた顔を見たかったのだろう。その目的を達成した紫苑はあらためて驚く面々に説明する。

「本来、袁紹は敗軍の将としての責任を果たし、死罪にすべきが妥当だと思ってました。けれど、彼女のその不遜な態度に敗北者としての自覚は欠如。いまだに自らの負けを認められない愚かぶりは、目に余ります。ですから、彼女には死よりもなお重い刑罰を与えようと思ったんです」
「死よりもなお……」
「……重い刑罰?」

 誰よりも自分は高貴で優れていると確信しきっている袁紹。
 しかし、それはまったく根拠のない……いや、むしろ真逆とも言える自己評価。
 そんな袁紹が一番堪える刑罰とは?

「それが……このお城で一番低い立場にすること。自分が一番だなんて思い上がりが、二度と出来ないくらいに分からせてやろうと思いまして」
「それが……?」
「はい。侍女見習いとして、この城で働かせる──これこそが、私が今回決めた裁きですわ」

 それこそが、紫苑が思いついた、袁紹にとっては死罪よりも重い罰。
 気位だけは大陸一とも言える袁紹を一番下の立場にすること。
 その案を聞いた面々は、

「なるほど……確かに」
「紫苑さんらしいです……けど」
「うんうん。いい気味なのだー」
「あの本初が下っ端……確かにそりゃ面白い」
「でも、なんかなー。役にたつのかよ、アイツ」
「まあ、そのあたりは確かに期待薄ではあるな」
「姫が……下っ端……面白そうじゃん」
「でも、そんなの姫に務まるはずが……」

 紫苑の裁きに納得する者、心配が隠せない者がそれぞれ。
 そんな中、自らの処遇を聞いた袁紹と言えば、

「ふ……ふざけるんじゃありませんわよっ!」

 やっぱり不満が爆発していた。
 しかし、不満があるのは実は袁紹だけでない。

「ちょっと紫苑! 待ちなさいよ!」

 袁紹に続く形で不満の声を上げたのは……なんと詠だった。
 詠は眉をつり上げて、いきり立つ袁紹をびしぃっと指を差して、

「こんな明らかに戦力外の役立たずをボクに押しつけるなんて! 冗談じゃないわよっ!」

 詠とてかつては董卓軍の軍師である。彼女もその当時から冀州の袁紹の無能っぷりは耳に入っていたし、朱里や紫苑からそれとなく袁紹軍との戦いの顛末は聞いている。すなわち、彼女はしっかりと袁紹という人物の無能ぶりを理解しているのだ。だからこそ、今回の紫苑の裁定は聞き流せない。

「ボクたちだってヒマじゃないのよ!? 城内の掃除だけでも大変なのに、月なんかはあそこのボンクラの世話まで……」
「え、詠ちゃんってば……御主人様のお世話は私からやらせてもらってるんだから〜。それに、御主人様のことをボンクラなんて失礼すぎるから……」

 詠の不満は思わず恭也の方まで飛び火しかねなかったが、月の制止もあり、再び紫苑の裁定結果へと戻っていく。しかし、

「月は黙ってて。ともかく、紫苑? 私たちにはちゃんとこなす仕事もあるのよ? なのに、なんでそんな微塵も使えないダメ人間の世話まで……」
「……おおおおおおおお待ちなさいな! そこのチビ侍女!」

 それを……この女が黙って聞いているはずもなかった。

「さっきから聞いていれば……何を好き勝手なことを! 侍女風情がよくも言ってくれやがりましたわねっ!」
「何よ? 図星を指されてムキになったわけ? まったくめんどくさいわね……自分の力量も見極められない身の程知らずって」
「あんですって〜っ! どうしてもこうもチビな輩は生意気なのかしらっ!」
「……咄嗟に出てくる返しの言葉が、相手の身体的な特徴ってあたりがまた無能さを露呈してるわよね。低能らしさ満載で呆れるわよ」
「むきーーーーーーーっっっっっ! さっきから無能だの低能だのと! あなたなんぞに言われる筋合いはありませんわよっっ! この眼鏡チビ!」
「ボクはただ、ありのままのことを言ってるだけでしょーが! あれほどの大軍を持ち合わせておきながら、半分にも満たない兵数の高町軍に惨敗してる時点で無能確定でしょ!」
「あれはわたくしの責任ではありませんわ!」
「それが大将の地位にいた人間の台詞なの!? 信じられないわねっ! あんたみたいな典型的なアホの下にいた部下が可哀想だわ!」

 袁紹の尽きることのない悪口雑言に、見事なまでの抗弁能力を見せる詠。詠も最初こそは冷静に言い返していたが、いつの間にかそのテンションは鰻登りに。
 どんどんヒートアップしていく二人の口げんかに、もはや誰も口を挟めなかった。

「可哀想なのはわたくしの方ですわ! 部下が不甲斐なかったからこそ、今こうして高町なんぞの前に敗軍の将として立たされている……こんな屈辱を味わうだなんて……っ」
「逆でしょうが! どんなに優れた部下がいたって、大将が腐ってるから負けたんでしょ! それを負けたのは部下のせいだって? 格好悪すぎよ、あんた。無能の上に見苦しいなんていいトコなしね!」
「なんてことをっ! わたくしは全知全能、もっとも神に近い人間ですのに!」
「何が全知全能よ!? あんたみたいな低能なんて、ボクらの仕事だって満足に出来ないに決まってるわ!」
「はんっ! あなたみたいな生意気な眼鏡チビに出来て、わたくしに出来ないことなど何一つありませんわ!」

 ──その言葉こそ、紫苑が待っていた言葉だった。

「……言いましたね?」
「「へ……っ!?」」

 二人の口論の継ぎ目を狙ったかのような、紫苑のしてやったりと言わんばかりの声で、袁紹も詠も誰も止められないとまで思われた口げんかを止めてしまう。
 二人とも、本能が働いたのだ。
 今の紫苑を無視してはいけないということを察していたのである。

「今……言いましたよね、袁紹? あなたの口から聞きましたよ……詠ちゃんに出来て、自分に出来ないことはないって」
「そ、それは……」
「言いましたよね?」
「……ええ。それが何か?」

 念を押して袁紹の言質を取る紫苑。
 袁紹は紫苑の意図が読めず、首を傾げながらも自らの発言を認めていた。
 一方、さっきまで袁紹と口げんかで鍔迫り合いを展開していた詠はというと、

(や、やられた……まんまと紫苑の仕掛けた罠にハマった…………)

 すでに紫苑の思惑を読みとり、自分の気の短さからの失態を悔いている。詠はもう紫苑の筋書きが読めたのだ。しかしそれはもう手遅れと詠の有能な頭脳は理解している。
 そう……袁紹と違って。

「でしたら、それを証明して欲しいところね」
「証明……ですって?」
「ええ。あなたは出来ると言ってましたけど、そんなの信じられないですからね。自分では全知全能なんて言っておきながら、いともあっさり私たちに敗北した“口だけ”のあなたの言葉なんて」
「……言ってくれますわね……っ」
「あら、事実でしょう? それともどこか間違いがあったかしら?」
「それは……っ」
「言っておきますけどね。部下のせいにするのは大将の器が知れますからね」
「うぐ……っ」

 袁紹が逆上して手が付けられない状態になる前に手を打ち、言い訳出来る逃げ場をなくす。これまでの袁紹の振るまいや言葉から彼女の性格を紫苑はしっかりと把握していた。こうなってしまっては、もう紫苑と袁紹では役者が違う。

「あなたがどう思ってるのか、じゃないのよ? ここにいる誰もが、今のあなたは口だけで本当は何も出来ないダメ人間だと思ってるの。だからこそ、あなたは口だけでなく行動で周囲の評価を覆すべきだと言ってるのよ」
「……行動?」
「ええ。まずは手近なところで……詠ちゃんのお仕事をやってみせたらどうかしら?」
「はんっ! どうしてわたくしが……この袁本初が侍女の仕事なんぞを?」
「だって、あなたが言ったんでしょう。詠ちゃんの出来ることで自分が出来ないことはないって。それを証明するのは、実際に詠ちゃんがしている仕事をあなたが完璧にこなすしかないでしょう?」
「そ、それは……」

 完全に紫苑の掌中にある袁紹は、完全に自分のペースを見失っていた。紫苑はあくまで冷静に、それでいて理路整然……というよりも、子供を諭すようにわかりやすく袁紹に説明している。こうなってしまうといくら“あの”袁紹でもその内容は頭に入るし、聞き入ってしまうのだ。

「そ、その程度の仕事なら、わざわざわたくしが出る──」
「言っておきますけどね。顔良ちゃんも文醜ちゃんも、すでにあなたの部下ではないということは忘れないようにね。今のあなたには頼る部下はいないの。ですから、自分のことは自分でするように」
「むむむ……っ」

 袁紹はあらためて顔良たちが高町軍に降った事実を思い出し、裏切り者、とでも言いたげな強い視線を二人にぶつける。が、紫苑はそれすらも許さなかった。

「そもそも、自分のことを全知全能というのであれば、その能力を発揮して証明しろ、と言ってるのよ? なのに他人に頼るなんてそれこそ自分の言葉が嘘だと証明しているようなものでしょう? これは、あなたが、自分の力でやるべきなの」
「…………」
「決めなさい、袁本初。あなたが取るべき道は二つだけよ。一つは、詠ちゃんの仕事をこなし、自らの才を私たちに見せつけるか。それともここで尻尾を巻いて逃げて、自らの無能さをさらけ出すか。さあ、あなたはどちらを選ぶのかしら?」

 そして、紫苑は袁紹に選択肢を与える。しかしそれはあまりに安い挑発混じりの選択肢。明らかに一方だけを選ばせる気満々の見え透いたモノなのだが、

「逃げる、ですって?」

 袁紹はそれすらも見えていなかった。

「冗談じゃありませんわ! わたくしの辞書に敵前逃亡という言葉はありませんのよ!」
「なら、いいのね?」
「上等ですわ! そこの生意気チビ眼鏡の仕事くらい、鼻歌交じりでこなして見せますわ!」

 そしてついに、彼女は紫苑が待ち望んだ宣言をここにいる面々の前でしてしまったのである。それを聞いて紫苑は微笑んだ。それは、普段の慈愛に満ちた彼女の微笑みからはかけ離れた、黒い微笑み。

「その言葉に、二言はないわね? 袁本初」
「当然ですわ!」

 それを聞いて、紫苑はあらためて振り返って恭也と正対した。

「以上です、御主人様。袁紹は私の裁定を聞き入れました。彼女をこれからはこの城で侍女見習いとしてこき使う……ということでよろしいですね?」
「ちょっと待ちなさい!」

 紫苑の最終報告に、恭也が返事をする前に声を荒げて割り込んだ者がいる。言うまでもないだろうけども。

「誰が、いつ、侍女見習いになることを承諾したというのです!?」
「あなた、でしょう? 袁本初」
「わたくしが? いつそんな──」
「あなたは言ったはずよ。自らの言葉を証明するために詠ちゃんの仕事をこなしてみせると。そして今の詠ちゃんの仕事は侍女。なら、あなたも同じ位置で仕事をするのは当然でしょう?」
「ですが……っ」
「だけど、私たちはあなたの言葉には半信半疑なの。だから、あえて侍女見習いという立場をあなたに与えるの。わかったかしら?」
「うぐぐ……っ」

 納得は出来ない。しかし、紫苑のわかりやすい説明はイヤでも理解出来てしまう。その二律背反が袁紹を苛立たせるが、今はその苛立ちをぶつける対象がどこにもないのが痛いところだった。

「二言はないのでしょ? 袁本初」
「あるはずがありませんわ!」
「なら、決定ね♪」

 見事なまでのコントロール。
 こうして、袁紹の侍女見習い再就職が確定した。























「ふぅ……」

 俺は一人残った玉座の間で、大きく息を吐いた。
 袁紹達の処遇を決めた後、それぞれ自分の仕事をすべく、この場所から出ていった。その際に、流夏と紫苑の二人は俺を軽く睨んでいたのだが。
 流夏の方は単純に、厄介事をよくも押しつけてくれたな、と言わんばかりの視線だったが。
 紫苑の方は……なんというか、艶のある笑みを浮かべながらだったからな……逆に怖い。彼女は俺の意図を理解しているのかも知れないな。
 それはともかく。
 あの二人に処遇を任せたのは間違いじゃなかった。
 これでもし、二人のどちらかが死罪を申しつけていれば、俺の目論見は脆くも崩れ去っていたからな。しかし、流夏と紫苑は俺の期待通りとも言うべきか、三人を生かすという裁定を下してくれた。

「これに関しては本当に感謝しないとな……」

 どうして今回、袁紹達の処遇をあの二人に決めさせたか。
 それは……部下を殺された流夏の。
 結果として、領土を失った紫苑の。
 二人の決断を見て欲しい人物がいたから。
 その人物は、最後まで釈然としない表情をしていたのを俺は見逃さなかった。
 きっと、彼女にはあの裁定は理解出来ないのだろう。
 だが、俺は……彼女にこそ理解してもらいたい。だからこそ、今回は流夏と紫苑に頼ったのだ。

「さて……そろそろ俺も動くとするか」

 俺はいつまで経っても慣れることのない玉座から立ち上がり、この場から立ち去る。そして、一人の少女の姿を探し──

「──いた」

 ──彼女の姿は程なくして見つかった。
 渡り廊下の柱に背中を預け、気の抜けた表情で空を見上げていた。
 俺は気配を殺すこともなく、彼女へと近寄り、

「……スキだらけだぞ。珍しく」

 苦笑混じりに声をかけるのだった。






あとがき

 ……ここんところ、長くなってばかりだ(汗
 未熟SS書きの仁野純弥です。
 袁紹を裁くだけだったはずなのに、えらい文章量になってしまい、ちょっと自分に呆れてたりします。さて、今回でようやく袁紹達三人の処遇が確定しましたが……袁紹を侍女見習いにするという裁定には、不満のある読者も多いかもしれませんね(笑
 今回、こうして袁紹を生かしたのは、顔良のためでもあります。今回、顔良を高町軍に引き入れることを決めた時、一番ネックになったのが袁紹の存在でした。袁紹を処刑したり戦場で息の根を止めたりしたら、顔良がどう思うか? 原作を見ていても、彼女の忠臣っぷりは泣けるほどですからね。袁紹が死んだ上で恭也に尽くせるか……と考えると、どうにも苦しくて。そこで思いついたのが、袁紹は誰からもいじめられる立場にして側で生かそう……というモノでした。これから袁紹は一番下っ端としての苦しみをとことん味わってもらうつもりですので、「袁紹なんて死ねばいい」と思っていた皆さんも、ここは抑えて、ヤツの苦しみを楽しんでくださいな(マテ
 そして、今回は変なところでヒキを作って終わりましたが、まあ……ここまで読んでくれている皆さんならば、ある程度予測は出来ていると思いますが。まあ次回をお楽しみに、ってことで。
 では最後に、ここまでこのお話を読んでくださってる読者の皆様と、SS公開の場をくださった氷瀬さんに最大級の感謝を。
 では〜。



袁紹は侍女見習いか。
美姫 「まあ、彼女にしたら屈辱かもしれないけれどね」
侍女としてまた何か騒動を起こしそうではあるけれどな。
美姫 「文醜あたりは面白がって、何かと命令したりしそうだけれどね」
ともあれ、無事に敵将たちの処遇も決まったな。
美姫 「そして、それに関して何やら思惑のあったらしい恭也も動き出したわね」
それは次回へ〜。ああ、気になるな〜。
美姫 「次回も楽しみに待ってますね」
待ってます!



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