『ヘタリア大帝国』




                           TURN9  ドクツ動く

 レーティアの演説が終わるとだ。今度はグレシア=ゲッペルスが壇上にあがった。その彼女の軽い感じを見てだ。
 エイリスやオフランスの面々はだ。顔を顰めさせて囁き合った。
「あれがドクツのナンバーツー」
「レーティアの第一の腹心にして知恵袋か」
「ドクツ宣伝相グレシア=ゲッペルス」
「あの女がか」
「忌まわしい女だ、あれも」
 こんな言葉もだ。エイリス、オフランスの中から聞こえてきた。エイリスの緑、オフランスのダークブルーの色がそれだけで不機嫌なものになっている。
 そしてその中でだ。彼等はゲッペルスについてもだ。彼等にとって危険なものを感じていた。
 その視線を感じながらだ。グレシアは壇上で話しだしたのだった。
「はい、皆さんいいかしら」
 レーティアとは対象的にだ。気さくな感じである。
「ドクツ宣伝相ゲッペルスよ」
「グレシア!グレシア!」
 彼女にもだ。レーティア程ではないが国民から歓声が起こる。
 そしてその歓声に笑顔で手を振りながらだ。グレシアは演説をはじめるのだった。
「元気かしら。朝御飯はちゃんと食べたかしら」
「食べました!」
「それも美味しく!」
「そうよね。私達はこれまでは朝も碌に食べられなかったわ」
 グレシアもだ。ドクツの過去を語るのだった。
「戦いに敗れ、そしてエイリスとオフランスに苦しめられていた頃はね。けれどね」
 今はどうか。それが彼女が今言いたいことだった。
「私達の総統が全てを変えてくれたわ。総統は私達にお腹一杯の御馳走を取り戻してくれたのよ」
「総統万歳!」
「レーティア総統万歳!」
「そう。私もそれは同じよ」
 その大きな胸を前に突き出し両手を腰の横にやって。グレシアは微笑みながら語る。
「碌に食べられなくて胸が縮んでいたわ」
 ここで国民の間から笑いが起こる。
「けれど今は違うわ。黒パンにジャガイモにビールに」
 ドクツの心の食べ物だ。
「そしてソーセージ。今朝なんか五本も食べたわ」
「五本もか」
「よくもそんなに食えるものだ」
「太って成人病になれ」
 エイリスとオフランスの面々が忌々しげに悪態を漏らす。
「我々も今は辛いというのに」
「何が朝から五本だ」
「それだけドクツの経済が復活しているのか」
「朝からふんだんに食えるということか」 
 その宣伝であったのだ。今のグレシアの言葉は。しかしそれだけではなくだ。
 グレシアは余裕の笑みでだ。こうも言ったのだった。
「けれど栄養は全部頭と胸にいっているからご心配なく」
 ここでまたドクツ側から笑いが起こる。エイリスとオフランスからは笑いとは逆のものが。
 それを壇上から見て喜びながらだ。また言うグレシアだった。
「そう。全ては総統のお陰。その総統閣下がね」
「遂に。新世界の秩序を打ち出されたわ」
「しかも私達にはイタリン、日本という頼りになる同盟国も出て来てくれたわ」
 彼等へのリップサービスも忘れない。
「何よりも総統閣下に復活したドクツ」
「これだけ揃って敗れる要素は何一つとしてないわ」
 レーティアを念頭に置きながらだ。グレシアは演説を続けていく。
「腐りきった下らない国々なんて問題ではないわ」
「そうだ!エイリスが何だ!」
 国民からだ。声があがった。
「エイリスなんか倒してしまえ!」
「オフランスもだ!」
「欧州の腐った下らない奴等なぞ問題じゃない!」
「敵の筈があるか!」
「そう、敵ではないわよ」
 まさにその通りだとだ。グレシアは国民達に語る。
「だからこそわかるわね。そこの僕?」
「えっ?」
 一人の少年がだ。グレシアに声をかけられてだ。素っ頓狂な声をあげた。
「僕ですか?」
「そう、君よ」
 その少年にだ。グレシアは笑みを向けて語りかける。
「ドクツはこれから何を為すべきか」
「はい、それは」
「何かしら」
「レーティア総統の!偉大な総統の下に集い!」
 そしてだ。少年は顔を上気させて語った。
「そしてそのうえで!」
「そうよ。戦いに勝ち」
「欧州の統一を!」
「それを果たすのよ。ゲルマン民族の生存圏確立と」
「世界新秩序を!」
「それを築くのよ。世界は総統により治められるようになるのよ!」
 そこまでなるというのだ。
「あの方の手によってね!」
「はい、その通りです!」
「我が国に総統がおられる限り!」
 グレシアもだ。波に乗って語る。
「我がドクツが敗れる要素はあるかしら!」
「ありません!」
 少年は直立不動になって断言した。
「総統がおられる限り!」
「そうよ。今それがはじまるのよ!」
 左手は腰に当てたままでだ。右手は高らかに肩の高さで肘を曲げて横に掲げてみせた、グレシアの得意の姿勢になってだ。そのうえでの言葉だった。
「ドクツの栄光の歴史が!今ね!」
「そうだ、今からだ!」
「今からはじまるんだ!」
「レーティア総統万歳!」
「ドクツに栄光あれ!」
「進め統一帝国!」
 グレシアは熱狂する国民達にさらに言う。
「進め第三帝国!私達の進撃は今はじまったわ!」
 こう高らかに謡いだ。グレシアは国民達を鼓舞するのだった。これは事実上のエイリス、そしてオフランスへの宣戦布告だった。この演説が終わり。
 質素な、まさに本棚と執務用の机に椅子、そして応接用のソファーとテーブルしかない席においてだ。レーティアはグレシアにだ。こう言っていた。
「演説は終わったな」
「ええ、凄くよかったわよ」
「私達の宣言は終わった」
 レーティアは己のその席からだ。目の前に立っているグレシアに語る。見れば部屋の絨毯もカーテンも質素なものだ。大国の総統のものとは思えない。
 そこでコーヒーを飲みつつだ。レーティアは言うのだ。
「それでは後はだ」
「そうよ。戦争の準備はもうできているわ」
「まずはポッポーランド侵攻だ」
「そして、ね」
「北欧、東欧だな」
「ギリシアまで侵攻しましょう」
「予定通り一気にだ。まずはポッポーランドにはマンシュタインとロンメルを送る」
 二人の名前が挙げられる。
「彼等なら何もなく攻略できる」
「そうね。あの二人に貴女の開発した兵器があれば」
「そしてドクツの精兵がいる」
 彼等の存在についてもだ。レーティアは言及した。
「これだけの要素が揃いしかもだ」
「ポッポーランド側は私達を甘く見ているからね」
「油断している相手程戦いやすい相手はいない」
 レーティアはポッポーランドについては素っ気無かった。
「だからあの二人には勝てる」
「そしてだけれど」
「ポッポーランドで勝利を収めればすぐにだ」
「北欧、東欧ね」
「北欧連合にはポッポーランドからそのままマンシュタインとロンメルを送る」
 そちらにはだ。彼等をだというのだ。
「そして東欧だが」
「ブルガリアとルーマニアは今の時点で私達に寄ってきているわ」
「だからだ。ポッポーランドでの勝利と共に彼等に声をかける」
「ドクツにつくかどうか」
「そうだ。彼等は外交により引き込む」
「問題はギリシアね」
「ギリシアにはだ」
 今度はそちらだというのだ。
「トリエステと。先生だ」
「先生も送るのね」
「そうだ。ポッポーランド占領と共に動いてもらう」
 レーティアはギリシアについてもだ。既に戦略計画を発動させていた。
「これで問題はない」
「本当に一気に進めることになるわね」
「しかし東欧と北欧はだ」
「ええ、序章ね」
「そうだ、序章だ」
 まさにだ。それだというレーティアだった。
「大事なのはその後だ」
「オフランスね」
「我がドクツの仇敵、あのオフランスだ」
「あの国には既に平和主義を扇動しているから攻めてはこないわね」
「しかしかなりの軍事力はある」
 これは確かだとだ。レーティアは断言した。
「伊達に大国ではない」
「それにマジノ線ね」
「そうだ。あの守りだ」
「あれがある限りオフランスは難攻不落だけれど」
「しかしだ」
「そうね。私達にはあれがあるわね」
「あの娘は今は動かさない」
 あえてそうするというレーティアだった。
「東欧、北欧ではだ」
「我がドクツの切り札だからこそ」
「切り札は最後まで取っておく」
 静かにだ。レーティアは言った。
「オフランスはそうした相手だからな」
「あの国を破ってこそだからね」
「あの国とエイリスだけは許せない」
 その蒼い目に怒りの炎が宿っていた。それがレーティアの今の目だった。
「何があろうともだ」
「同意よ。同じドクツ国民としてね」
「だが今度は違う。我々は勝つ」
「その為に生きてきたからね」
「私も総統になった」
 己の前に立つグレシアを見上げてだ。レーティアは毅然として言い切った。
「ドクツの為にだ」
「そうよ。思い出すわ」
 ここでだ。グレシアは過去を思い出した。そのことをレーティアにも話すのだった。
「三年前私はね」
「デパートの店員だったな」
「そうよ。しがないね」
「ブティックだったな」
「そうよ。とはいってもそのデパートもね」
 どうだったかとだ。グレシアは辛い目も見せて語った。
「酷い有様だったわ」
「ものがなかったな」
「何もね。なかったわ」
「ドクツには何処にも何もなかった」
「恐慌で経済は完全に破綻して爆発的なインフレーションになって」
「そして着るものにも食べるものにもこと欠く有様だった」
「私もね。何時クビになるかわからなかったわ」
 デパートもだ。閑古鳥が鳴く状態ならそうなるのも当然だった。グレシアも何時仕事を失うかわかったものではなかったのだ。三年前は。
 だがそこでだ。どうなったかというのだ。
「けれど。仕事帰りの街角でね」
「私達は出会ったな」
「あの頃の貴女は見られたものじゃなかったわ」
 少し苦笑いになってだ。グレシアはレーティアに語った。
「何よ。おさげの三つ編みで黒のジャージの上下で」
「わ、悪いか?」
「しかも猫背で丸眼鏡でノーメイクで」
「大事なのは外見ではない」
 レーティアはバツの悪い顔になってグレシアに返す。国民に見せることのない顔で。
「中身だ。違うか」
「それはその通りよ。けれどね」
「それでもか」
「あの時の貴女は論外だったわ」
「そこまで酷かったのか」
「あんな外見じゃ幾ら素晴らしいことを言っても誰にも届かないわ」
 それがだ。三年前のレーティアだったというのだ。
「それに演説もね」
「演説にはあの頃から自信があったぞ」
「あっても。人は外見も見るものなのよ。それにね」
「姿勢か」
「演説は口でするだけではないのよ」
 グレシアはこの事実を指摘したのである。演説は口だけではなく服や身振り手振りでもするものだとだ。レーティアに対して話すのだった。
「確かに。あの頃から貴女の演説の内容と口調はよかったわ」
「しかしか」
「外見があれで。しかも猫背だと」
「駄目だったか」
「プラカード持って喋ってただけじゃない」
 それがだ。グレシアがはじめて見たレーティアだったのだ。
「あれでは駄目よ。けれどね」
「それでもか」
「私は見たわ。貴女に」 
 他ならぬだ。レーティアにだというのだ。
「貴女のその天才をね。貴女の演説はまさにドクツを救うものだったわ」
「だからあの時私に声をかけてくれたんだったな」
「そう。そしてデパートの仕事を自分から辞めて。ずるずると付き合っていた彼氏とも別れて」
 余計なものをだ。全て切り離したというのだ。
「そして貴女を選挙に送り出してドクツの指導者になってもらう為にね」
「まさにその為にか」
「メイクをして。髪も整えて眼鏡も外して」
 まずは外見からだった。
「猫背も訂正させて衣装もコーディネイトしたのよ」
「ファンシズムに相応しくか」
「もうね。あの頃のワイマール体制じゃどうしようもなかったから」
 こう見ていたのはグレシアだけではなかった。ドクツの国民全てが思っていたことだった。グレシアは先程からソファーにいるドイツとプロイセンも見て言った。
「祖国さん達もそうだったわよね」
「正直な。あの時はな」
「あと少しで死ぬところだったぜ」
 まさにそうだったとだ。ドイツとプロイセンも答える。二人はこれまではレーティアとグレシアの話をコーヒーを飲みながら聞いているだけだった。しかしだ。
 グレシアに話を振られてだ。こう答えたのである。
「明日すら危うかった」
「いや、本当にな」
「そうだったわね。ワイマール体制じゃもう我が国は立ち直れなかったのよ」
「私もそれは感じていた。だからだ」
「独裁ね」
「私がドクツを立て直すつもりだった」
 レーティアはこう言い切った。
「この私の手でだ」
「貴女はそれができたわ。けれどね」
「ただ。独裁を願うだけではなくか」
「ファンシズムが必要だったのよ」
「それで私をコーディネイトしたんだな」
「その通りよ。全てはね」
「そして私は選挙に出た」
 ファンシズムを掲げてだ。そのうえでだというのだ。
「まずは国会議員になり御前は秘書を務めてくれた」
「そうしたら。後はだったわね」
「国会に出られれば後は私のものだ」
 レーティアには自信があった。そして能力も。だからだった。
「私の演説に誰もが魅了され私の掲げる政策は次々と議会を通った」
「当然よ。ドクツに貴女程の天才はいないわよ。いえ」
「いえ、か」
「人類の社会に。貴女程の天才はね」
 レーティアはだ。そこまでの人物だというのだ。
「いないわ。だからね」
「それ故にだな」
「貴女は政党にも所属していない新人無所属の議員でもね」
「ドクツを救う政策を通せたな」
「そしてね」
 さらにだった。レーティアの躍進はそこに留まらず。
「老齢の大統領に首相に任命されてから。すぐに次の大統領にも任命されたのよ」
「そして大統領は私に全てを託して引退した」
 前の大統領であったヒンデンブルグはだ。そうして政界から退いたのである。一次大戦の英雄もあまりにも老いだ。力を使い果たしていたのだ。
 そしてだ。国家元首になったレーティアは。次にどうしたかというと。
「私は大統領と首相を兼ねた総統になった」
「それが今の貴女ね」
「そうだ。そしてだ」
「総統になって終わりではないわね」
「私にとって権力はだ」
 総統になってドクツの権力を一手に握った。しかしだ。
 それもどうかとだ。レーティアは言うのだった。
「私のやるべきことを果たす為の道具だ」
「それに過ぎないわね」
「それに過ぎない。大切なことはだ」
「総統になり何をするかね」
「その通りだ。私はこの国を世界の盟主にしてみせる」
 こう言い。ドイツをプロイセンを見た。
 そしてそのうえでだ。こうも言うのだった。
「祖国達も楽しみにしてくれ」
「楽しみか」
 ドイツがだ。そのレーティアの言葉に顔を向けた。そうして言う。
「俺は。少なくとも生きている」
「今こうしてだな」
「それだけでも奇跡に思える」
「欲はないのか?」
「ないと言えば嘘になる」
 少なくともだ。ドイツは嘘は吐かなかった。
「俺も。かつての様にだ」
「欧州に覇を唱えたいな」
「そうしたいとは思っている」
「それは俺もだぜ」
 プロイセンもそう思っているとだ。彼は少し不敵な顔で述べた。
「絶対にな。またのし上がってやるぜ」
「その意気だ。私は祖国達、そして国民の為にあるのだ」
 私はなかった。レーティアにだ。
 その彼女の意気もだ。ここで言ってみせたのである。
「私はドクツと結婚した男なのだからな」
「言うわね」
 今のレーティアの言葉にだ。グレシアは少し驚きの声をあげた。
 そしてだ。こうレーティアに返したのだった。
「じゃあ貴女は結婚しないというのね」
「興味はない」
 実に素っ気無かった。そうした話には。
「結婚や交際という。俗世のことにはな」
「では興味があることは」
「政治、そして技術のことだ」
 そうしたこと全般だというのだ。
「他にはない」
「ある意味凄いわね。その考えは」
「私はこのドクツの総統だ」
 だからこそだというのだ。
「ならば結婚する必要もない」
「じゃあ死ぬまでなのね」
「そうだ。この命が尽きるまでだ」
 まさにだ。その時までだというのだ。
「私はこの国の為に働き。そしてドクツが世界を統一するのだ」
「統一帝国ね」
「その為にだ」
 グレシア、それにドイツとプロイセンを見てだった。
「頼むぞ」
「わかっている。総統は俺達を救ってくれた」
「今にも死にそうな俺達をな」
 ドイツとプロイセンにとっては忌まわしい記憶だ。三年前のことは。
 敗戦と賠償金、そして恐慌が彼等を死の淵に追いやっていた。しかしだった。
 今はレーティアにより再び立ち上がった。そしてだった。
 ここからだ。さらにだったのだ。
「用意はできた。ではだ」
「まずはポッポーランドか」
 ドイツの目の光が強くなった。そのうえでレーティアに応えたのだ。
「では俺と相棒はか」
「妹達と共にポッポーランドに向かってもらいたい」
 実際にだ。レーティアはドイツとプロイセンにこう話した。
「そしてギリシア方面だが」
「オーストリアの野郎とハンガリーだよな」
「そうだ。二人に行ってもらう」
 まさにそうするとだ。レーティアは今度はプロイセンに答えた。
「ポッポーランド攻略と同時にルーマニア、ブルガリアを我々の側に引き込みだ」
「そこを通路にして一気にギリシアまでか」
「攻め込むんだな」
「既にトリエステ提督達の艦隊はオーストリア星域に入れてある」
 レーティアは用意周到だった。そこまでしていた。
 そのうえでだ。また言うのだった。
「まずは東欧だ。一気に進む」
「そしてそのうえで北欧か」
「あの連中も引き込んでくか」
「北欧連合王国で問題なのはノルウェーとデンマークだ」
 北欧連合は五つの国の連合王国なのだ。その構成国のこともだ。レーティア達は把握していた。
「スウェーデンは中立的、フィンランドは我々に好意的だ」
「既にスウェーデンにも工作は行っているわ」
 グレシアがまたレーティアに答える。
「デンマーク、ノルウェーを攻略すればあの国もね」
「一気にドクツになびく」
「そうなるわね。それでノルウェーとデンマークもね」
「彼等もドクツに組み込もう」
「そうしましょう。ただ」
「ただ?」
「アイスランドが問題ね」
 グレシアは怪訝な顔になり首を少し傾げさせて言った。
「あの国がどう動くかよ」
「アイスランドか」
「ええ。あの国の動きが問題になるわね」
「そうだな。既にあの国はエイリスと関係がある」
 ドクツの宿敵の一つのだ。その国とだというのだ。
「そこからエイリスの艦隊が来るだろう」
「既に送る準備はしているかも知れないわね」
「あの女王は中々の切れ者だ」
 レーティアはここでこう言った。
「それも考えられる」
「そうね。厄介なことにね」
「有能な敵と無能な味方は厄介だ」
 今は何気に言った。だがレーティアは後にこの言葉を噛み締めることになる。
「そしてあの女王はだ」
「有能な敵ね」
「エイリスは甘く見れない」
 レーティアは真剣な面持ちで述べる。
「獅子はな」
「獅子ね。若しくはね」
「ユニコーンだ」
 エイリスのことをだ。こうも例えて話される。
「だからあの国を倒し。そしてだ」
「モスクワまでのソビエトの領土を手に入れてね」
「ゲルマンの生存圏を築く」
 そしてだった。
「そこを地盤にして世界を統一するのだ」
「ええ、遠大だけれど」
「可能だ。いや、必ず果たす」
 レーティアの言葉には虚勢はなかった。揺らぎもだ。
 そしてその絶対の自信と共にだ。言ったのである。
「私の計算に狂いはない」
「世界統一計画への計画はね」
「何度も検証した。私にはできるのだ」 
 そうなのだった。レーティアにはだ。
「だからこそ実行に移す。私は実行できないことはしない」
「じゃあポッポーランド侵攻もね」
「おそらく世界の誰もが無謀な戦いをはじめたと思うだろう」
 世界の目もだ。レーティアは察していた。そして把握していた。
「しかしだ。それは間違いだ」
「ええ、ポッポーランド軍の戦力ではね」
「今の我々の相手ではない」
 レーティアはまた断言した。
「完膚なきまで叩き潰しドクツ第三帝国の初陣を飾る」
「ではだ。俺達もだ」
「国家艦隊の用意をするな」
「ポッポーランドにはマンシュタインとロンメルが行く」
 レーティアは二人にもこのことを話した。
「共に戦ってくれ」
「ではだ。今から艦隊に入る」
「吉報を待っててくれよ」
 ドイツとプロイセンは席を立ちだ。そのうえでレーティアに告げた。そうしてだ。
 彼等も自分達の艦隊に向かうのだった。その彼等を見送りだ。
 レーティアはグレシアにだ。こう言ったのである。
「本にも書いたがな」
「私の戦い、ね」
「そうだ。あの本に書いたがだ」
 レーティアが自分で書いた書だ。ドクツでは聖書に匹敵する存在にもなっている。
「私はオーストリアに生まれたが」
「ドクツを愛しているわね」
「この国が心からいとおしい」
 ドクツの、彼女の国への愛を隠そうとしない。露わにさせていた。
「そう。かつての神聖ローマ帝国がだ」
「そして今のドクツ第三帝国こそがね」
「その神聖ローマ帝国だ」
「ここにベルギーとオランダ、ルクセンブルグを入れて」
「イタリンもだ」
 イタリン共和帝国、この国もだというのだ。
「あの国と同盟を結べて何よりだ」
「そうね。私達ドクツの人間はどうしてもね」
「あの国は嫌いになれない」
「祖国さんは微妙な感じだけれど」
「しかし嫌いではない」
 レーティアはドイツのそうした感情も読み取っていた。ドイツは決してイタリアを嫌ってはいない。確かに色々と迷惑を被ってはいるがそれでもだ。
「そしてプロイセンはだ」
「あからさまに。イタちゃんとロマーノ君を気に入っているわね」
「おい、その呼び方か」
「いいじゃない。嫌いじゃないんだから」
 グレシアは気さくに笑ってレーティアの咎める感じの顔に返す。
「イタリンの国家はね」
「それはそうだが。しかしだ」
「その固いところがレーティアのいいところよ」
「真面目なところがか」
「そう。真面目だからこそこの国を導けるのよ」
 レーティアのその性格もだ。ドクツにとっていいというのだ。
「少なくとも私では無理よ」
「グレシアではか」
「御気楽だし。能力はないし」
「しかし御前のお陰で私は」
「私は宣伝相でしかないわ」
 それに過ぎないとだ。自分で言うのだった。
「総統とは違うわ」
「ではあくまで宣伝相としてか」
「貴女とドクツの為に働かせてもらうわ」
「ではその様に頼む」
「喜んでね。そしてね」
「そして?」
「ポッポーランドを占領したら。あの国とギリシアを回るわよ」
 グレシアはさらに陽気になった。そのうえでの今の言葉だった。
「いいわね。それこそ東欧全体をね」
「コンサートか」
「ツアーよ、ツアー」
「それはわかるのだが」
 だがどうかとだ。レーティアはそれまでは毅然として自信に満ちていた顔だったがそれを急に曇らせてだ。そしてこうグレシアに言ったのである。
「だが。あの時の御前のデザインした服はだ」
「苦手なのね」
「好きになれない」
 実際にこうレーティアだった。
「あの様にひらひらした服はだ」
「日本帝国のアイドルの服をモデルにしてるけれど」
「あの国の文化はよくわからない」
「わからないというの?」
「あの国はどういった文化だ。和風というのか」
「和を以て尊しと為すね」
「いや、それではなくだ」
 レーティアが言いたいことはそこではなかった。ではそれは何かというと。
「そのアイドルだ。萌えとかヲタクだったな」
「非常に面白い文化ね」
「ファンシズムとはまた別の。あの衣装は」
「着るのが嫌なのね」
「嫌だ」
 はっきりとだ。レーティアは言い切った。
「ああしたひらひらでカラフルな服は着られたものじゃない」
「歌を歌ったり踊るのはよくても?」
「それはいいが。この前の赤と黒の学校の制服みたいなのは何だ?」
「あれね」
「そうだ、あの衣装だ」
 レーティアのステージ衣装も全てグレシアがデザインしている。言うならばグレシアは彼女のマネージャーでありプロデューサーなのである。
 その彼女がデザインしたその衣装についてだ。レーティアは問うたのだ。
「あれは何だったのだ」
「日本帝国のアイドルグループの衣装よ」
「また日本帝国か」
「そう。可愛いって思ったからね」
「あれも恥ずかしかったぞ」
「大好評だったわよ、国民に」
 グレシアはこう言うがだ。それでもだった。
 レーティア本人は嫌な、誰が見てもそう見える顔と態度でだ。グレシアに返した。
「それでも私はだ」
「駄目よ。これも国家元首の務めだから」
「総統のか」
「そうした務めを果たしてこそよ」
「国民は私についてきてくれる、か」
「国家もね。だからこその支持率百パーセントよ」
 つまり完全にだ。ドクツの国民はレーティアを支持しているのだ。それだけ彼女の人気は絶大でだ。尚且つその支持の中身も濃いものになっているのだ。
 そしてこのことをだ。グレシアはさらに話した。
「占領するポッポーランドやギリシア、北欧もね」
「私がツアーを行いか」
「そう。ドクツの国民になってもらうわ」
「そうするか。ではだ」
「ええ。ツアーの用意もお願いね」
「わかった」
 嫌々だがそれでもだった。レーティアも頷いた。戦争に勝ってそれで終わりではなかった。
 それからのことも考えながらドクツは動いていた。既にポッポーランドやルーマニア、ブルガリア方面の国境にだ。
 ドクツの軍が向かっていた。その動きは。
「速いわね」
「そうね」
 ドイツ妹とプロイセン妹がその艦隊の動きを見ながらモニターを通じて話していた。二人も兄達と共にポッポーランドとの国境に向かっているのだ。
 そしてその中でだ。妹達は銀河の大海を進む艦隊の動きを見てだ。話しているのだ。
「これまでの艦艇とは違う」
「全く違う速さね」
「こんな速さの艦艇ははじめて見たわ」
 ドイツ妹の言葉は唸る感じだった。己の旗艦の艦橋から。
「総統が設計、開発されたこの艦艇は」
「総統閣下ね。凄い方ね」
 プロイセン妹も唸る。まさにそうした声だった。
「政治や経済だけでなくね」
「そう。軍事も改革して」
「兵器の開発も行っているからね」
「この兵器は何世代も先を行っているそうね」
 ドイツ妹は自分達の艦艇を見ながらまたプロイセン妹に話した。
「三世代辺りかしら」
「四世代位じゃないの?」
 プロイセン妹はこうドイツ妹に返した。
「うちの兄貴も喜んでるわよ」
「プロイセンさんもそうなのね」
「そうだよ。兄貴も総統をかなり褒めているわ」
「私達と同じく」
「そうよ。そうしてるわ」
「ドクツは一つにまとまってるのね」
 ドイツ妹はこのことも察して述べた。
「オーストリアさんにハンガリーさんもそうなっているし」
「そうね。全てはレーティア総統の下に」
「あの方の共にね。私達は進むのね」
 こう話してだ。そうしてだった。
 ドクツの艦隊は進んでいた。そうしてだった。
 ポッポーランドに侵攻した。それを聞いてだ。
 ポーランドは自分の国の菓子をかじりながらだ。リトアニア、今はソビエトにいるかつての相棒に対してだ。電話でこんなことをだ。実に陽気に話していた。
「で、ドクツが来たんよ」
「えっ、それって大変なことじゃない」
「大丈夫大丈夫」
 驚くリトアニアにだ。ポーランドは明るく返す。
「ドクツなんか楽勝だしーーー」
「けれど結構な数が来てるんだよね」
「まず国家艦隊が四つ?」
 ドイツ達であることは言うまでもない。
「それと後二つ来てるんよ」
「合わせて六個艦隊」
「で、うちは十個艦隊なんよ」
「数は優勢だけれど」
「だから楽勝じゃね?」
 実に明るく言うポーランドだった。
「何も心配いらんって」
「けれど。ドクツっていうと」
「ああ、あの総統?」
「そうだよ。レーティア=アドルフさんが兵器も開発してるっていうけれど」
「だから大丈夫だしーーー。俺のところの方が数多いんよ?」
「それはそうだけれど」
「それにエイリス、オフランスとの同盟もあるしーーー」
 ポーランドはリトアニアに外交のことも話した。
「全然平気って。心配いらんって」
「本当に大丈夫?」
「大丈夫だって。そんでだけれど」
「それでって?」
「そっちどうなん?今」
 リトアニアの状況をだ。ポーランドは聞いてきたのだ。
「ソビエトってどうなん?」
「ま、まあここはね」
 急にだ。リトアニアは口ごもった。そしてだ。
 難しい声でだ。電話の向こうのポーランドに言ってきた。この時リトアニアは自分の顔が愛手に見えないことを喜んだ。それは見られたくなかったからだ。
 そのうえでだ。こうポーランドに言うのだった。
「貧富の差とか失業とかなくて」
「共有主義だったっけ」
「うん、それに基いて。書記長が政治を行ってるから」
「あの女の子?」
「そう、カテーリン書記長」
 彼女の名前をだ。リトアニアは出した。
「あの人が今の俺達を指導してくれているんだ」
「ロマノフ朝の人とはまた違うん?」
「全然違うよ。本当にね」
「ロマノフとどっちがええのん?」
「そ、それは」
 どうかというと。ここでまただった。
 リトアニアは口ごもった。そしてこうポーランドに言いつくろったのだった。
「まあそれはね」
「楽しくやってる?それで」
「だから。貧富の差も失業もないから」
「じゃあ生活に困ることはないんよね」
「うん、ないよ」
 その心配はないというのだ。
「それに。お金のやり取りもないし」
「えっ、それもないん」
「そうだよ。ないよ」
 それもだと答えるリトアニアだった。
「共有主義では何でも好きなだけ手に入るんだよ」
「必要なのは何でも?」
「そう。欲しいものはね」
「それって最高だしーーー。じゃあ俺も普通に共有主義にしよっか」
「い、いやそれは」
「そうすればまたリトと一緒にいられるしーーー」
 ポーランドは能天気なままリトアニアに話す。
「それってよくね?どう思うリト」
「俺もポーランドとはまた一緒にいたいけれど」
 この気持ちはリトアニアも一緒だった。しかしだ。
 それでもだとだ。リトアニアは言葉を濁して言ってきた。
「まあ。そっち頑張ってね」
「ああ、戦争のこと」
「そうだよ。ドイツさんにプロイセンさんも来てるんだよね」
「妹二人も来とるんよ」
「じゃあ余計にまずいじゃない。危ないよ」
「だから大丈夫なんよ。俺勝つしーーー」
「だといいけれど」
「じゃあ今から出撃準備するから」
 何も心配していないといった顔での言葉だった。
「んじゃまたね」
「うん、それじゃあ」
 こうしてだった。ポーランドはリトアニアに別れを告げて電話を切った。そのうえで彼自身の艦隊の出撃の用意に入るのだった。
 既にポッポーランド軍の主力八個艦隊はドクツ軍と対峙しようとしていた。その中でだ。
 ポッポーランド軍の司令官がだ。艦橋の旗艦でこう参謀達に言っていた。
「ドクツ軍は四個艦隊か」
「はい、国家艦隊が二つにです」
「通常艦隊が二つです」
「わかった。しかしだ」
 どうかとだ。司令官はここで言った。
「数は半分だな」
「向こうは国家艦隊二つを呼びに置いています」
「ドイツ妹とプロイセン妹の艦隊です」
「余裕か?数は向こうが劣っているというのに」
「そうですね。それぞれの艦隊の艦艇の数もこちらの方が多いというのに」
「それで、ですから」
「ふん、負けるつもりか」
 司令官はドクツの考えを読まずにこう言った。
「ならばだ」
「はい、それならばですね」
「我等を侮っているかも知れませんが」
「それならばですね」
「ここで叩き潰してやる」
 司令官は勝利を確信する笑みで言った。そのうえでだ。
 己が率いるその艦隊を動かしていく。その八個艦隊をだ。奸対はセオリー通りの動きでドクツ軍に迫る。その彼等を見てだ。
 巨躯、まさにそう言っていい。二メートルを越える身体に全身は筋肉で覆われている。その恐ろしいまでの巨体を灰色の軍服で包んだ灰色の髪と頬髯、四角く岩の如き顔をしたグレーの輝きを放つ目の男がだ。静かに艦橋の部下達に告げていた。
「来たな」
「はい、前から来ます」
「八個艦隊全てが」
「ではだ。祖国殿とプロイセン殿の艦隊に連絡してくれ」
 男はこう部下達に告げた。
「いいな」
「はい、ではすぐに」
「モニターを開きます」
 こうしてだ。ドイツとプロイセンがモニターに出て来た。そうしてだ。
 彼等はすぐにだ。男にこう言ってきた。
「アイゼン=マンシュタイン元帥、ではだな」
「今から攻撃に入るんだな」
「そうだ。間も無く射程に入る」
 まだかなり離れているがそうだというのだ。
「では。その時にだ」
「わかった。三個艦隊で総攻撃だな」
「そうするか、いよいよだな」
「そしてだ。祖国の妹殿はだ」
「はい」
 今度はドイツ妹が出て来た。マンシュタインは彼女にも話した。
「我々が一斉射撃を行い敵軍が怯んだ時にだ」
「はい、一斉射撃に加わるのですね」
「敵が怯んだ時にさらに攻撃を加えて欲しい」
 そうしてくれというのだ。そしてだ。
 マンシュタインの旗艦、そのレーティアが描かれたかなり奇抜な塗装の戦艦のモニターに自分達から出て来たプロイセン妹ともう一人に対しても言った。 
 見ればマンシュタインとは対象的に痩せた中肉中背の姿である。細い顔は飄々とした感じで黒の中に黄金の輝きがある、不思議な目をしている。
 髪は黒と白、そして赤だ。赤と白は前髪にある。その髪を砂色の略帽で包んでおり同じ色の陸戦用のラフな軍服の前をはだけさせている。その男もいた。
 マンシュタインは彼等にもだ。こう告げたのである。
「ではプロイセン妹殿とエル=ロンメル元帥はだ」
「ああ、高速機動部隊でだよな」
「俺の指揮する」
「そうだ。一斉射撃を加えられた敵軍の後方に回りだ」
「派手に霍乱しながら攻撃するんだね」
「打ち合わせ通り」
「そうしてくれ。いいな」
 マンシュタインは腕を組んだ姿勢で強い声で答えた。
「それでな」
「わかってるよ。じゃあ早速な」
「動くとしますか」
「この戦い、我が新生ドクツの初陣だ」
 マンシュタインは重く低い、バスの声で言った。
「完勝する。わかったな」
「よし、では戦争開始だ」
「派手にやるぜ」
 ドイツとプロイセンが応えてだ。そのうえでだ。
 前から来るポッポーランド艦隊に照準を合わせた。
「全艦隊照準定めました」
「わかった」
 マンシュタインは艦橋の部下の言葉に頷いた。そしてだ。今こう命じたのだった。
「一斉射撃!撃てーーーーーーーーっ!」
 この言葉と共にだ。ドクツ軍から無数の光の帯が放たれた。
 それは瞬時にポッポーランド軍を撃った。忽ち彼等の艦隊は次々に炎に包まれ多くの艦が吹き飛ばされ真っ二つになる。それを見てだ。
 司令官は唖然としながらだ。艦橋でこう言った。
「何っ、まさか!」
「はい、ドクツ軍の総攻撃です!」
「今来ました!」
「それが我が軍を撃ってきました」
「かなりの艦艇が撃沈、大破しました!」
「あの距離からか!」
 司令官は唖然としたまま叫んだ。
「まさか」
「しかもかなりの威力です」
「我が軍の戦艦が一撃で大破しています」
「巡洋艦に至っては撃沈されているものもあります」
「まるで要塞砲です」
「くっ、どういうことだ」
 司令官は今更ながらだ。苦い声を出した。
「あの距離から。あれだけの攻撃を浴びせてくるとは」
「司令、しかもです」
「後方にです」
「何っ、まさか」
 司令は部下達の言葉に慌てて艦橋のモニターを見た。そこには両軍の動きが三次元映像で映し出されている。自軍は赤、敵軍は青で。
 見れば青いドクツ軍の二個艦隊が自分達の後方に回っている。その速さは。
「何だ!?魚雷艇か」
「いえ、戦艦です」
「そして巡洋艦です」
「高速戦艦か。しかし」
 有り得ない速さだった。その速さは。
「何という速さだ」
「このままでは後方に回られます」
「どうされますか」
「二個艦隊か」 
 その数を見てだ。司令は瞬時に判断した。
 こちらも二個艦隊を敵に向ける、そうだ。そしてすぐにそう命じた。
 ポッポーランド軍から二個艦隊が割かれ後方に回ろうとする。しかしだ。
 その二個艦隊がだ。まさにだった。
 ドイツ妹が彼等を攻撃した。その二個艦隊をだ。
「今よ。あの二個艦隊を狙うわ!」
「了解!」
「わかりました!」
 こうしてすぐにだった。その二個艦隊が攻撃を受けた。それでだ。
 ポッポーランド軍はまたしても多くの艦艇を失った。次々に撃沈され大破していく。沈む艦艇から生き残った将兵達が命からがら脱出していく。
 そのポッポーランド軍を見ながらだ。ロンメルは己の旗艦でこう言っていた。
「よし、これでいい」
「我が軍が動いてですね」
「そのうえで」
「そうだ、動く」
 ロンメルは艦橋の司令席に胡坐をかいて座りながら言った。
「さらに動くぞ。そして時折一撃離脱を加えてだ」
「敵に我々の動きを悟らせない」
「そうされますね」
「そうだ。そうするんだ」
 こう部下達にだ。楽しむ笑みで言ったのである。
「わかったな。このままだ」
「ああ、わかってるよ」
 プロイセン妹がモニターからそのロンメルに言ってきた。
「ロンメルさん、派手に動こうね」
「妹さんもな。共に動こう」
「ああ、それにしてもこの駆逐戦艦だが」
「尋常じゃない速さだね」
「こんな速い戦艦ははじめてだ」
 そこまでの速さだというのだ。
「しかも攻撃力もある」
「しかもマンシュタインさんや兄貴達の標準戦艦もね」
「かなりの長射程、そして威力の砲を持っている」
「ポッポーランドの奴等も想像していなかったみたいだね」
「そこが狙い目だ」
 ロンメルは不敵な笑みでプロイセン妹に話した。
「敵を侮る。それ自体がだ」
「敗北につながるからね」
「その通りだ。では動くか」
「よし、じゃあやるよ」
「そうするか」
 こう話してだ。そのうえでだ。
 ロンメルとプロイセン妹の艦隊は一撃離脱を繰り返しながらポッポーランド軍を横から、後ろから霍乱していた。そしてその惑わされるポッポーランド軍にだ。
 マンシュタイン率いる主力艦隊は総攻撃を浴びせる。そしてだった。
 一方的に、それこそ攻撃さえできなかったポッポーランド軍の司令はだ。こう言った。
 旗艦も大破している。艦橋に警報が鳴り響いている。その中でだ。
 彼はだ。こう部下達に言った。
「ここまで損害を受けてはな」
「はい、最早です」
「残念ですが」
「戦闘不能だ」
 司令は忌々しげに部下達に告げた。
「だからだ。いいな」
「はい、降伏ですね」
「そうされますね」
「そうするしかない。ではだ」
 こうしてだった。司令はドクツ軍に通信を入れた。そうしてだった。
 ポッポーランド軍の主力艦隊は降伏した。そしてそれはそのままポッポーランドの敗北になった。ポーランドはワルシャワにおいて呆然としながらも降伏に同意した。こうしてドクツの初陣は完勝に終わった。


TURN9   完


                           2012・3・9



ドクツが遂に進軍開始か。
美姫 「初陣は見事に勝利を収めたわね」
ああ。これによってドクツの科学力の高さが知られたな。
美姫 「いよいよ本格的にどこも動き出すかもね」
さて、どうなっていくのか。
美姫 「次回も楽しみにしてますね」
待っています。



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