『ドリトル先生と日本のお料理』




                 第三幕  王子の洋館

 先生は一週間の間学園の中や街を見て回りました、そのうえでお家に帰っていつも動物達にお話をするのでした。
「見て回れば回る程ね」
「いい学校なんだね」
「いい街なんだ」
「味があるよ」
 先生はにこやかに笑って皆にこうお話します。
「ここに住めて通えてよかったかもね」
「けれどまだだよね」
 チーチーがここで先生に尋ねます。
「まだお仕事ははじまってないよね」
「あと少しだけれどね」
 それでもまだなのは確かだというのです。
「まだなんだ」
「そうだよね、それじゃあ」
「はっきりとは言えないっていうんだね」
「生徒さんが問題じゃないかな」
 先生が教授を務めることになっている八条大学医学部の学生さん達がだというのです。
「先生をどう見てくれるかだよ」
「そのことだね。いい子ばかりならいいけれど」
「悪い人だっているかもね」
「そうだね、大丈夫かな」
「知り合いがいてくれるのは有り難いけれどね」
 王子達のことです、王子は今も先生を学園や街のあらゆる場所を案内してくれて説明してくれているのです。その王子達の存在は確かに有り難いです。
「日本でもね」
「そうだね、そのことはね」
「それだけでもかなり心強いけれど」 
 チーチーはさらにお話します、スーパーで貰った柿を食べながら。
「生徒の人達がね」
「どんな人達かだね」
「学園の中にいる人達はどうなの?」
 チーチーはこのことも尋ねました。
「柄の悪い人達はいる?」
「中等部とか高等部で服装が乱れている子はいたね」
 先生は学校の中で見た子達を思い出しながら答えます。
「それでも極端におかしな子はいないよ」
「それはいいね」
「おかしな先生もいないよ」
 先生の方も大丈夫だというのです。
「聞いた話だけれど日本にはおかしな先生が多いっていうけれど」
「えっ、そうなの!?」
 ジップは先生に日本にはおかしな先生が多いと聞いてです。少し驚いてそれで先生に尋ねました。顔も思わず上げて。
「日本はそうなの」
「そうみたいだね、おかしなことをする先生がね」
「多いんだ」
「おかしなことを言ったりね」
「意外だね、日本はそうなんだ」
「完全にいい社会なんてないんだよ」
 先生はジップに優しいですが少し寂しげにこう言いました。
「イギリスにもよくないところはあったし」
「日本にもなんだ」
「日本の先生達は酷い先生が多いらしいんだよ」
「それって怖いよね」
「人を教える先生がおかしいと大変よ」
 ホワイティも言います。
「おかしなことを教えるから」
「そう、それが問題になっているらしいんだ」
 先生はそのホワイティにもお話します。
「何とかしないといけないってね」
「日本も悩みがあるのね」
「いいことばかりの社会はないからね」
 悪いこともある、悪いことに対する悩みも当然としてあるというのです。
「そうなるよ」
「そうなのね」
「そう、けれどあの学園はね」
 八条学園はです、どうかといいますと。
「そこまで悪い先生はいないみたいだよ」
「それは何よりね」
「うん、同僚もいいに越したことはないからね」
 それでだというのです。
「僕としても嬉しいよ」
「それじゃあ後は」
「医学部の学生さん達だね」 
 先生が教えるその人達がだというのです。
「いい子達ならいいね」
「そうだね、本当にね」
「そうした人達ならね」
 動物達も先生の言葉に頷きます、最後のそして最も肝心なことをお話してです。先生は皆にこうも言いました。
「あと柿だけれど」
「このオレンジ色の果物だね」
「少し平べったい感じの」
 彼等からみるとり林檎に似ていなくもない形ですがヘタがあってそうも見えるのです。
「面白い形だよね」
「それに味もね」
「いい甘さだね」
 先生もその柿を手に取って食べつつ言います。
「しつこくなくてあっさりとしていて」
「ほんの少し渋みもあってね」
「食べやすいよね」
「いや、こんなものはイギリスにはなかったよ」
 先生は笑顔で食べつつ言います。
「日本の果物らしいけれど」
「この柿もね」
「いいよね」
「幾らでも食べられるよ」
 こう言いながら一個全部食べた先生でした。
「これは」
「この柿も身体に凄くいいそうよ」
 ポリネリアも柿をついばみながら先生に言ってきます。
「甘くて美味しいだけじゃなくて」
「ああ、これもなんだ」
「昨日の無花果もね」
「あれはイギリスにもあるけれどだね」
「そう、身体にいいから」
「じゃあこれからはイギリスにいた時以上に果物を食べようかな」
 先生はもう一つ柿を手に取って言いました。
「そうしようかな」
「そうしたらいいわね」
「食べものも大事なんだよ」
 先生は新しい柿を食べつつ述べます。
「中国では医食同源というからね」
「まずは身体にいいものを食べないとね」
「健康になれないよね」
「そうだよ、とはいっても今までの僕は」 
 先生はです、イギリスにいた時は。
「あまりね」
「食べものにはよね」
「きを使ってこなかったよね」
「そうだね」
 今思うとです。
「そうだね」
「それでも日本に来たら」
「それを変えるんだね」
「そうするよ、日本のものを食べてね」
「和食は身体にいいよね」
「カロリーも少なめで」
「そうそう、これなら僕も」
 今度はこんなことを言う先生でした。
「痩せられるかな」
「少なくとも無茶苦茶な肥満はしないわね」
 チープサイドはそれないと言いました。
「ほら、よくアメリカにいる」
「お腹が極端に出ただね」
「ああいう人にはならないわね」
「うん、流石にあそこまではね」
 太らないとです、先生も言います。
「日本のものを食べているとね」
「何であそこまで太るの?アメリカ人の中にはそうした人もいるの?」
 ガブガブはこのことがどうしてもわからないので先生に尋ねました。
「僕も先生も太ってるけれどね」
「あそこまでは太ってないっていうんだね」
「だっておかしいじゃない」
 その太り方がだというのです。
「お腹がもうその人と同じだけありそうじゃない」
「あれはね。食べるもののせいだよ」
「アメリカの?」
「アメリカの食べものはカロリーや糖分が多いんだ」
「そうしたのを物凄く食べてると」
「そう、太るんだ」
 あそこまでだというのです。
「僕もガブガブもそうなるよ」
「アメリカにいてああしたのを食べたら」
「そう、太るよ」
「ううん、アメリカって怖いね」
「太ることについてはね」
「あそこまで太ったら動けないじゃない」
 ガブガブも柿を食べつつ自分の身体を見ます。
「どうしようもなくなるよ」
「実際に満足に動けなくなっている人もいるよ」
「健康にも悪いよね」
「勿論だよ、太り過ぎはよくないけれど」
 先生はさらに言います。
「あそこまで太ると太り過ぎなんてものじゃないよ」
「そうだよね」
「けれど日本にいるとね」
 そして日本のものを食べていると、というのです。
「まずあそこまでは太らないよ」
「普通に太るだけだね」
「確かに太っている人はいるよ」
 日本にもです、そうした人がいることは確かです。
 ですがそれでもだとです、先生はガブガブにお話します。
「それでも極端に太っている人はいないよ」
「普通の太り方だね」
「お腹が出ていても膝まで下がっているとかはないよ」
「アメリカみたいに」
「そこまではないから」
「じゃあ僕達も大丈夫なんだ」
「むしろイギリスにいる時より痩せられるかな」
 こう言うのでした。
「日本にいるとね」
「そういえばこの柿も」
 ガブガブはあらたな柿を食べながら先生に応えます。先生も二個目の柿をかなり食べています。柿は種なしなのでとても食べやすいです。
「甘いけれどね」
「お菓子とはまた違うね」
「自然の甘さだね」
「そう、だからね」
 そうした甘さだからだというのです。
「それだけ糖分が少ないんだ」
「そうだね」
「日本はお菓子も多いけれど」
 そのお菓子もどうかといいますと。
「甘さは控えめな感じだよ」
「イギリスのよりもね」
 ダブダウブが言います。
「甘さは控えめね」
「日本人は強い味は好まないみたいだね」
「だから極端に甘くないのね」
「お菓子もね」
 先生は柿を食べるダブダブにもお話します。
「そうなんだよ」
「じゃあ日本のティーセットもイギリスのより甘くないのは」
「そうだよ、日本人の好みに合わせているからね」
 だからだというのです。
「ああした味なんだよ」
「そうなのね」
「けれど噂には聞いていたけれど確かにね」
「確かにって?」
「イギリスのティーセットより日本のそれの方がいいね」
 美味しいというのです。
「むしろね」
「そうそう、日本のお菓子の方がいいよね」
「ティーセットもね」
「日本の方が美味しいし」
「お茶もね」
 それもだというのです。
「美味しいよね」
「お水もいいし」
「何かミルクの質もよくて」
「全体的に日本の方がね」
「いいわよね」
「このことがとても嬉しいよ」
 ティーセットが美味しいことがだというのです。
「これだけでも違うよ、それとね」
 ここで先生は自分の膝下、胡座をかいて座布団に座っているそこを見ます。そこにあるのは柿だけではありません。
 お茶もあります、そのお茶はといいますと。
 日本のお茶です、日本のお湯呑みの中に入っています。
 その緑色のお茶を見てです、皆に言うのです。
「このお茶もね」
「玄米茶よ」
 ダブダブがそのお茶がどういったお茶なのかをお話します。
「これはね」
「玄米茶っていうと」
「そう、お茶の葉ではなくてね」
「お米も入っているんだね」
「そうなの、玄米がね」
 お米はお米でもそれが入っているというのです。
「だから普通のお茶じゃないのよ」
「成程、お茶だけでなく玄米の味もするんだ」
「だからその分もね」
「美味しいんだね」
「それがこれなのよ」
 このお茶だというのです、玄米茶だと。
「他にも色々なお茶を買って来たけれどね」
「玄米茶以外にはどんなお茶があるのかな」
「本当に色々なの」
 ダブダブはこう前置きしてから先生にどういったお茶が今お家にあるのかを説明します。
「麦茶にこぶ茶、梅茶に煎茶にほうじ茶、抹茶にね」
「本当に多いね」
「勿論紅茶もあるわよ」
 イギリスでいつも飲んでいたそれもだというのです。
「けれど紅茶の種類もイギリスみたいに一杯あって」
「スーパーにだね」
「そうなの、コーヒーも揃ってるわよ」
 そちらもだというのです。
「何か凄く一杯種類があってどれがどれかわからない位なのよ」
「それで日本のお茶はだね」
「ええ、そうなのよ」
 それだけの種類を買って来たというのです。
「どのお茶が一番美味しいか確かめたいしね」
「この玄米茶は美味しいね」
 先生は今飲んでいるそのお茶について笑顔で述べました。
「とても」
「他にも一杯お茶があるからね」
「楽しめるね、そちらも」
「ええ、そうしてね」
 こんなことをお話しながら日本のお茶も楽しむ先生達でした、そして。
 次の日先生は王子のお家に招かれました、この日は日曜日でした。
 王子の今のお家も神戸の八条町にあります、海が見える丘の上にあるそのお家は白い綺麗な大きい洋館です。 
 その洋館を観てです、先生は一緒にいる王子に言いました。
「いいお家だね」
「これも日本のお家なんだ」
「そうだね、イギリスかフランスのお家に似てるけれど」
「少し違うよね」
「日本が入ってるね」
 イギリスやフランスのお家に似ていてもだというのです。
「イタリアも入っているみたいだし」
「これが僕の今のお家なんだ」
 王子は煉瓦の煙突もあるそのお家を観ながら先生にお話します。
「ここから学校に通っているんだ」
「成程ね」
「いいよ、とても」
 この洋館での生活もだというのです。
「中もいいし」
「そう、今から中に入って」
「それでお昼をご馳走するよ」
「お昼、楽しみだね」
「洋食だよ、今日は」
「洋食といってもだよね」
「そう、日本のお料理だよ」
 そうなるというのです。
「やっぱり欧州のお料理を基にしているけれど」
「日本が入っているんだね」
「食堂で日本のパスタはもう見たよね」
 王子は学園の食堂のことからもお話します。
「あれも」
「うん、スパゲティだけれど」
 それでもだったのです。
「何かが違うね」
「そうそう、イタリアのだとケチャップは入れないけれど」
「あのナポリタンというのを見たけれど」
 先生も食堂で見たスパゲティの名前を出します。
「あれにはケチャップが入っているね」
「ソーセージとか茸もね」
「マッシュルームがね」
 玉葱もです。
「あれは日本のスパゲティだね」
「間違ってもイタリアのナポリのじゃないじゃない」
 ナポリタンであってもです、王子は今お家の門のところで先生とお話しています。お庭は薔薇が一杯あって今は緑の世界です。
「あのスパゲティは」
「そうだね」
「他にも色々な洋食のメニューがあるけれど」
「どれもだね」
「そう、欧州のものとは違うから」
 それは決してだというのです。
「そのことも味わってもらうから」
「今からだね」
「じゃあ中に入ろう」
 お家の中にだというのです。
「そうしよう」
「うん、じゃあね」
 先生も王子の言葉に頷きます、そしてなのでした。
 先生は王子が住んでいる洋館の中に入りました、洋館の中は白くダークブラウンの階段もあります。玄関があってそこで靴を脱いでスリッパを履きました。
 このことは欧州と同じです、ですが全体の雰囲気が。
「ううん、イギリスみたいで」
「また違うよね」
「かといってフランスでもイタリアでもないね」
「ドイツでもね」
「また違うよ。強いて言うのなら」 
 先生はその洋館の中を見回しながら王子に言いました。
「日本の中に入った欧州だね」
「お風呂場とおトイレも別々だよ」
 そこもイギリスと違うというのです。
「寝室はベッドだけれどね」
「違うんだね」
「そう、お風呂場はね」
 やっぱりおトイレとは別々だというのです。
「離れてるよ」
「そこが全然違うね」
「日本だよね」
「そうだね、それでお風呂場の設備もよくて」
「毎日楽しく入っているよ」
 そのおトイレとは別々になっているそのお風呂場でだというのです。
「いつもね」
「それはいいことだね」
「じゃあ今からね」
 王子は先生ににこりと笑って言いました。
「その洋食をご馳走するから」
「日本の」
「シェフが今から準備してくれているんだ」
「そういえば今まで和食は食べてきたけれど」
 鯖の煮付けやお握りにお味噌汁、おうどんや丼といったものをです。ゴーヤチャンプルも美味しかったです。
「洋食はまだだったよ」
「そう思ってなんだ」
「今日は僕を洋食でもてなしてくれるんだね」
「楽しみにしていて、凄く美味しいから」
 洋食もだというのです。
「和食に負けない位にね」
「そう、それじゃあね」
 先生は王子の言葉ににこりと笑って食堂に入りました。そして暫く待っているとまずはサラダが来ました。
 サラダのドレッシングは白いです、レタスと胡瓜、ラディッツに若布のサラダを食べて先生は言いました。
「多分フレンチドレッシングだけれど」
「やっぱりフランスじゃないよね」
「少し違うね」
「和風フレンチドレッシングだよ」
 それがその白いドレッシングだというのです。王子は先生にお話します。今二人は白いテーブルかけがかけられたテーブルに向かい合って座っています。
「言うならね」
「そうだね、海草も入ってるし」
「日本だよ」
 最初のサラダもだというのです。
「これも洋食なんだ」
「成程ね」
 こうしたお話をしてです、サラダを食べ終えるとスパゲティが来ました。
 そのスパゲティ、ナポリタンも来ました、物凄く大きなお皿にケチャップで色が付けられたスパゲティが大量に盛られています。 
 そのスパゲティを前にしてです、先生は王子に尋ねました。
「これがだね」
「そう、食堂でも見たね」
「ナポリタンだね」
「実際に食べてみて、美味しいから」
「うん、じゃあね」
 フォークを右手に取ってです、博士はそのスパゲティを食べてみました。すると一口食べて目を丸くさせて言いました。
「いや、これも」
「いいよね」
「うん、オリーブオイルも使ってるし」
「大蒜も入れているよ。この二つをパスタに使うと」
 どうなるかといいますと。
「パスタの味がぐんとよくなるから」
「イタリアだね」
「それはね、けれどね」
「このナポリタンは」
「日本だよ」
 それに他ならないというのです。
「紛れもなくね」
「そうだね、イタリアにはない味だよ」
「ちゃんとトマトを使ったスパゲティもあるよ。イカ墨のもあるから」
「あのイタリアのものも」
「そう、けれどこのナポリタンはね」
 どうかといいますと。
「紛れもなく洋食だよ」
「日本だね」
「日本の味がするよね」
「不思議だね、欧州から来た料理なのに」
 それでもだとです、先生はそのスパゲティをとても美味しく食べながら王子とお話をするのでした。
「日本だね」
「洋食といってもね」
「それでもだね」
「いや、不思議だよ」
「不思議って?」
「日本のお料理がね」
 それ自体がだというのです。
「不思議だよ」
「和食があってだよね」
「洋食があってね」
「あとラーメンとかハンバーガーもね」
 そうした食べものもだというのです。
「サンドイッチもだけれど」
「日本のものになっているんだね」
「どれも本来の国のものとは違っているよ」
 やっぱり日本のものになっているというのです。
「そうなっているよ」
「成程ね」
「そう、このナポリタンと同じでね」
「日本は面白いね」
「お料理だけを見てもね」
「洋館もそうだけれど」
「一見欧州でもね」
「日本が入っているよ」
 そして日本のものになっている、だから面白いというのです。
「これもね」
「そうだね、どれもね」
「そういえばケーキも」
 いつも紅茶と一緒に食べるそれもです。
「イギリスじゃなくてね」
「日本のケーキだよね」
「日本人は他の国のものを自分の中に取り入れるんだね」
「そして自分のものに出来るんだ」
「話は聞いていたけれど凄いね」
 先生も素直に賞賛することでした。
「いや、本当に」
「そうだね、、それでね」
「ナポリタンの次はだね」
「ハンバーグだよ」
 それが出て来るというのです。
「そっちも楽しんでね」
「うん、ではね」
 先生は ナポリタンも堪能しました、そしてです。
 ハンバーグも食べました、そのうえでまた王子に言いました。
「これはソースが」
「そう、デミグラスソースだけれど」
「やっぱり日本だね」
「そうなんだ、しかもこのハンバーグもね」
 それ自体もだというのです。
「牛肉と豚肉だけを入れているんじゃないよ」
「人参に玉葱も入っていて」
 大きなハンバーグの中には赤いものや白いものも入っています、それが人参や玉葱であることは言うまでもありません。
「それに他にも」
「鶏肉や魚肉ソーセージも入っているんだよ」
「そうだったんだ」
「学校の給食で入っているからね」
 それでだというのです。
「このハンバーグには入れているんだ」
「そうなんですか」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「このハンバーグの中にも入っているんだ」
「成程ねえ」
「これも日本独自だね」
「そもそも魚肉ソーセージがね」
 それ自体がです、イギリスでもソーセージはよく食べられるのですがそれはあくまでお肉のソーセージだからです。
 魚肉ソーセージ、それはといいますと。
「日本のものだし」
「そうだね、これはね」
「身体によさそうだね」
「実際にそれも考えてなんだ」
 魚肉ソーセージを入れているというのです、他のものも。
「そうしたハンバーグなんだ」
「日本のハンバーグだね」
「そうだよ、それとだけれど」
「それと?」
「今回はパンじゃないからね」
 王子はにこりと笑ってこのことを断るのでした。
「やっぱり洋食でね」
「ううん、日本の洋食の中で」
「これはとびきりのものだよ」
 王子はフォークとナイフでハンバーグと付け合せの焼いたお野菜を食べつつ先生にお話をします、このことも。
「その洋食の中でもね」
「ナポリタンと同じだけね」
「そう、とびきりのものだよ」
 まさに洋食、日本のお料理の中でもだというのです。
「だからそれもね」
「楽しみにしていていいんだね」
「是非ね」
 こう言うのです、先生に対して。
「二度びっくりするよ」
「二度?」
「見て食べて」
 そうしてだというのです。
「二度びっくりしてね」
「それじゃあね」
 先生は王子のこれまで以上に楽しげな言葉に応えました、そうして。
 ハンバーグも食べ終えました、そして次に出て来たものは。
 オムレツです、かなり大きな分厚いオムレツが出てきました。その黄色いオムレツには赤いケチャップがかけられています。
 一見するとただのオムレツです、ですが。
 先生はその端にあるものを見つけました、それはといいますと。
「御飯かな、オレンジだけれど」
「チキンライスだよ」
「チキンライス!?」
「それも日本の洋食の一つでケチャップを入れて炒めたものなんだ」
「それがチキンライスなんだ」
「鶏肉を小さく切ったものや玉葱も入れてね」
 そして作ったものだというのです。
「それがチキンライスなんだ」
「それもあるんだね」
「そうだよ、それでそのチキンライスをね」
 王子は自分の前にもあるチキンライスを見つつ先生にさらにお話します。
「薄いオムレツの生地で包んだものがね」
「このオムライスだね」
「そうだよ、見てびっくりしたね」
「うん、こんな料理もあるなんて」
「日本だけだよ、それでね」
 王子はオムライスを見つつにこにことしてお話していきます。
「食べればね」
「美味しいんだね」
「これまでのお料理と同じ位美味しいよ」
 ナポリタンやハンバーグと同じだけだというのです。
「だから是非食べてね」
「これもだね」
「今からね」
「それじゃあね」
 先生も王子の言葉に頷きました、そうして。
 新しいスプーンを右手に持って黄色い生地に入れて御飯もその中に入れます。そのうえで食べてみますと。
 その味はです、王子の言った通りでした。
 先生はにこりとしてこう王子に答えました。
「王子の言う通りだよ」
「驚いたんだね」
「これもとても美味しいよ」
 このオムライスもだというのです。
「凄くね」
「そうだよね、このオムライスはね」
「美味しいんだ」
 そうだというのです。
「僕もよく食べているよ」
「いいね、日本人はこんなものを食べているんだ」
「値段も手頃なんだ」
「イギリスの高級レストランでもこんなものは滅多にないよ」
「どのお料理もだね」
「このオムライスにしても」
 それ一つ取ってもだというのです。
「偉大なメニューだよ」
「こうして食べるだけでもね」
「いいね、いや今日はとても満足したよ」
 先生はオムライスをあっという間に食べ終えました、そのうえで王子にお礼を言いました。
「有り難うね」
「いや、まだだよ」
「あっ、デザートだね」
「デザートはプリンだよ」
「プティングだね」
「そう、日本のね」
 それだというのです。
「プティングとプリンはまた違うんだ」
「日本のものとイギリスのものは」
「そう、違うんだ」
「それじゃあそれも」
「食べてね」
「わかったよ、デザートもね」
「紅茶もあるから」
 博士の大好物であることは外せません。
「楽しんでね」
「デザートもだね」
「プリンもね」
 それもなのでした、かくして。
 先生は日本のプリンも前にしました、イギリスのものよりも明るい感じの黄色でカラメルソースもイギリスのものよりも黒いです。
 それを小さなスプーンで食べて言いました。
「イギリスのものより大人しい甘さだけれど」
「それでもだね」
「そう、美味しいよ」
 このプリンもだというのです。
「プティングとはまた違うね」
「これがプリンなんだ」
「日本のデザートの」
「そう、プリンなんだ」
 プティングでなくだというのです。
「これがね」
「成程ね、日本の洋食の中のデザートで」
「美味しいよね、これも」
「まさかこうしたものまであるなんて」
 先生はプリンを食べながら唸る様にして言いました。
「洋食も凄いね」
「どうかな、こうしたものが日本の洋食レストランで普通に食べられているんだ」
「いいよ、じゃあ今度からはね」
「洋食もだね」
「食べるよ」
 和食だけでなくというのです。
「洋食もね」
「そうするといいよ。ところでかなり食べたけれど」
「満腹したよ」 
 そのことでも満足した先生でした。
「本当に日本の食べものは美味しいよ」
「そうだね、じゃあ今からは」
「今は?」
「テレビを観ない?」
「テレビ?」
「ドラマにする?それともアニメにする?」
 勿論日本のものです。
「そっちは面白いよ」
「美味しいんじゃなくてだね」
「そう、面白いんだ」
 ドラマもアニメもだというのです。
「だからそちらもどうかな」
「そういえば日本の商店街の中にね」
 ここで、です。先生は王子にドラマやアニメのことをお話されてあることを思い出しました。その思い出したこととは。
「レンタルビデオショップというお店があったけれど」
「テレビで今放送されているのじゃなくて前に放送されていたドラマやアニメを観られる場所なんだ」
「そういうお店だね」
「そう、ビデオを借りて家で観るんだよ」
 そうする場所だというのです。
「そこはね」
「いいお店みたいだね」
「そうしたお店も日本にあるから」
「じゃあドラマやアニメを観たいと」
「昔のね。それと特撮も観られるから」
「特撮?」
「そうだよ、知らないかな」
 ここで、です。王子はこのタイトルを言いました。
「仮面ライダーとか戦隊とかね」
「それが特撮なんだ」
「面白いよ、これも」
「日本はドラマやアニメ、その特撮も面白いんだね」
「作品によるけれどね」
 面白いというのです。
「そういうものも楽しんでよ」
「何か忙しいね」
 先生は最後の紅茶を前にしてに少し困った感じのお顔になって言いました。
「日本は」
「美味しいものが一杯あって楽しいことも一杯あって」
「うん、忙しいね」
「それが日本なんだ」
「美味しいものも楽しいことも一杯あるんだね」
「そうだよ、あるんだよ」
 そうだというのです。
「だからとても忙しいよ」
「お仕事もあるし」
「そう、忙しいから覚悟してね」
「そうなるね。じゃあ今から」
「ドラマにする?アニメにする?」
「特撮にしようかな」
 先生が選んだのは第三のものでした。
「その仮面ライダーにしようかな」
「ああ、あれはいいよ」
「仮面ライダーもだね」
「もう最高だよ、日本人が考え出した最高のヒーローだよ」
 王子はこれまでよりもさらに明るい笑顔で先生にお話するのでした。
「イギリスで言うとジェームス=ボンドかシャーロック=ホームズか」
「それはかなりだね」
「絶対のヒーローなんだ」
「じゃあ今からその仮面ライダーを観るんだ」
「最初のがいいかな」
 王子は先生とお話しながら選ぶこともしました、仮面ライダーと一口にいっても色々な作品があるみたいです。
「あれでね」
「何かわからないけれど任せるよ」
 何を観るかは、というのです。
「王子にね」
「よし、じゃあ今からテレビのお部屋に行こう」
 王子は先生のお話を受けて笑顔のまま応えました。
「日本のテレビだよ」
「テレビも日本のものだね」
「日本のテレビは最近あまり売れないらしいけれど」
 それでもだというのです。
「性能は凄くいいから」
「いい映像が観られるんだね」 
「映画にも負けないよ」
 そこまで素晴らしいというのです。
「日本のテレビの画面はね」
「ううん、映画みたいとはね」
「それが日本だから、いいね」
「観させてもらうよ」
「それじゃあね」
 こうして先生は洋食をお腹一杯食べた後で王子と一緒に日本のテレビでその仮面ライダーを観ました、そしてそのことをお家に帰ってから皆にお話しました。
「いや、それもいいよ」
「日本の特撮っていうのも」
「仮面ライダーもだね」
「007にも負けていないよ」
 先生はにこにことしてその仮面ライダーのことをお話していきます。
「強くて格好よくて正義の為に戦っていてね」
「つまり正義のヒーローなんだ、仮面ライダーって」
「そうなんだね」
「そうだよ、正義のヒーローだよ」
 まさにそれだというのです。
「それが仮面ライダーなんだ」
「そして特撮のヒーローなんだ」
「日本の特撮じゃそうなんだ」
「正義のヒーローが悪い奴を倒す」
「そうなんだね」
「王子の話だと最近のヒーローは違うみたいだね」
 先生は王子から聞いたことも皆でお話しました。
「人間が戦うみたいだよ」
「正義とか悪じゃなくて」
「人間がなんだ」
「日本人はあまりはっきりとした善悪を決めないんだ」
 先生はここでこうも言いました。
「どんなものにも善と悪が一緒にあるって考えるんだ」
「えっ、じゃあ先生にもなの!?」
 チープサイドの子供のうちの一羽が先生の今の言葉を聞いて驚いた顔になってそれで先生自身に問い返しました。
「いいものと悪いものがあるんだ」
「そうだよ、僕にもね」
 実際にそうだとです、先生はその子に答えます。
「あるんだよ」
「先生みたいな人でも」
「その心の中にいいものと悪いものがあるんだよ」
「そうなんだ」
「誰でもそうだよ、人間は誰でもね」
 いいものと悪いものがあるというのです。
「不完全だからね」
「ううん、先生でもって」
「人間はね。皆もだよ」
 それは動物達もだというのです。
「同じだからね」
「いいものと悪いものがあって」
「それが人間で私達なの」
「そうなんだ」
「そうだよ、日本人はそうしたものもわかっているんだ」
 人間が不完全で善悪が共にある存在だということがです。先生はそのことにも唸る様にして言うのでした。
「頭もいいって聞いてたけれどね」
「それが特撮にも出ているんだ」
「テレビの番組にも」
「とにかく特撮もね」
 それもだというのです。
「面白いからね」
「そう、それじゃあ」
「今度僕達も観てみる?」
「日本の特撮をね」
「どんなのか」
「皆で観ようね」 
 先生はその皆ににこりとしてお話しました。
「そうしようね」
「丁度テレビもあるしね」
 ここでジップが言ってきました。
「それで観られるね」
「電化製品はあるしね」
 一式全てです。
「観ようね、ただ」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「テレビはあるけれど」
 それでもだというのです。
「ビデオやDVDはないから」
「それはだね」
「これからなんだ」
「うん、買ってね」
 そしてだというのです。
「セットして、あとレンタルビデオショップの会員にもなって」
「商店街にそうしたお店があったわね」
 ダブダブはレンタルビデオショップと聞いて言いました。
「そういえば」
「うん、あそこの会員になってね」
「ビデオも借りるのね」
「そこに昔のドラマやアニメがあるらしいから」
「特撮もよね」
「そう、だから借りてね」 
 そしてだというのです。
「仲良く皆で観ようね」
「よし、それじゃあ」
「そのことも」
 皆でお話してでした、先生は特撮のことやビデオのこともお話しました。そうしたことを話してそしてなのでした。
 先生は商店街にも行ってレンタルビデオショップの会員にもなることにしました。しかしその中でなのでした。
 遂にです、この日が来ました。
「そうそう、明日だよ」
「明日からなのね」
「いよいよなんだね」
「そう、仕事がはじまるよ」 
 それがだというのです。
「遂にね」
「先生は教授だったね」
 トートーが言ってきます。
「そうだったね」
「そうだよ、大学の医学部のね」
「凄いじゃない、今や名士だよ」
「いや、日本では教授や先生といってもね」
 イギリスとの違いがここにもあってです、先生はトートーだけでなく皆にもこのことをお話するのでした。
「そんなに偉くないよ」
「そうなんだ」
「偉くないんだ」
「うん、お給料はいいけれどね」
 それでもだというのです。
「イギリス程度はね」
「偉くないんだね」
「そういうものなんだね」
「そうだよ、普通のお仕事だよ」
「ううん、偉くないなんて」
 大学の教授がです。ガブガブにしても納得出来ない顔で言いました。
「日本ってこのことも変わってるね」
「その辺りは国によるよ」
「そうなんだ」
「アメリカだってイギリス程先生や教授は偉くないよ」
 同じ英語の国のこの国でもだというのです。
「そこが違うからね」
「だから日本でもなんだ」
「前も言ったけれど日本は酷い先生も多いから」 
 その日本のよくない部分です、そうした意味で日本にも善悪があるのです。
「その地位で偉いってこともね」
「ないんだ」
「そうなんだ。だから僕も名士じゃなくてね」
 例え大学の教授でもです、イギリスではまさに名士として尊敬されるそのお仕事にあってもだというのです。
「普通だよ」
「普通なんだ」
「これまで通りなんだ」
「普通に先生なんだ」
「そうなんだ」
「そうだよ、そう考えてね」
 動物達もだというのです。
「そうしてね」
「わかったよ、それじゃあね」
「教授じゃなくて先生だね」
「そうだね」
「そうだよ」
 まさにそうだというのでした。
「これまで通りね」
「日本の先生だね」
「そうなったんだね」
「いい先生になりたいね」
 ここでこうも言った先生でした。
「悪い先生じゃなくて」
「うん、先生でいるのならね」
「悪い先生でいたくないよね」
「暴力とかはね」
 暴力といったものについてもでした、先生は言いました。
「そんなことは嫌いだし」
「先生僕達を殴ったりもしないしね」
「酷いことしないからね」
「力があってもそれは悪いことに使ってはいけないんだよ」
 先生の信条の一つです。
「力は。例え持っていてもね」
「それはいいことの為に使うものだね」
「自分より力が弱い相手をいじめる為のものじゃないね」
「そんなことをしたら絶対に返って来るよ」 
 自分自身にだというのです。
「だからね」
「そうしたことはだね」
「したら駄目だよね」
「僕はそう思ってるよ」
 先生は穏やかな声ですが強く言いました。
「だから僕は皆にも絶対に暴力を振るわないし酷いことも言わないんだ」
「言葉の暴力もだね」
「それも使わないんだね」
「暴力を使う人は能力がない人だよ」
 こうも言う先生でした。
「自分の人格でどうにか出来ない、教える力がないからね」
「暴力を振るうんだね」
「そうするんだ」
「そう、僕も自分が立派な人間だとは思わないけれど」
 その人格も教師としての資質もです。
「それでもね」
「そんなことはしないんだ」
「暴力も」
「そうだよ、それはイギリスでも日本でもね」
 守ってそうしてだというのです。
「これまで通りやっていくよ」
「じゃあそのことを忘れないでね」
「頑張ってね先生」
 動物達もその先生を応援します、そのうえで先生はお仕事に向かうのでした。


ドリトル先生と日本のお料理   完


                             2013・11・9



学園でのお仕事はもうちょっと先みたいだな。
美姫 「お茶やコーヒーの種類の多さに驚いていたわね」
だな。今回も王子の家なども出てきたけれど、タイトル通り食べ物の話が多かったな。
美姫 「どれも気に入ったみたいで良かったけれどね」
だな。食も大事な事だからな。
美姫 「いよいよ次からはお仕事にかかるのかしら」
どうなるんだろうか。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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