『ドリトル先生学校に行く』




               第三幕  トミーの到着

 王子はまた自分のお家に先生を招待しました、今日は和風のステーキをご馳走しています。
 その和風のステーキ、大根おろしとお醤油をかけた大きなステーキを食べてです、先生は王子に言いました。
「ステーキもなんだね」
「そうだよ、和風のものがあるんだ」
「こんな風にだね」
「このステーキも美味しいよね」
「うん、面白い味だね」
 その大根おろしとお醤油のステーキをフォークとナイフで切ってお口の中に入れて味わいつつ王子に答えます。
「こんなステーキもあるんだね」
「日本ではね」
「そうだね、ステーキはイギリスにいた時にも結構食べていたけれど」
「向こうはお肉がメインだからね」
「それでもこうしたステーキはなくて」
「新鮮だね」
「これも病みつきになりそうだね」
 そこまで美味しいというのです。
「王子にまた美味しいものを紹介してもらったね」
「そうだね、ただね」
「ただって?」
「このステーキを食べているとね」
 勿論王子もその和風ステーキを食べています、そうしながらこんなことも言ったのです。
「御飯が欲しくなるね」
「これをおかずにしてだね」
「そう、御飯を食べたくなるね」
 そうなるというのです。
「僕はね」
「そうだね、僕もだよ」
「先生もだね」
「このステーキは今みたいにフルコースで食べるんじゃなくて」
 それよりもだというのです。
「おかずとして食べたいね」
「それで御飯をだね」
「うん、そう思うよ」
 こう言うのでした。
「日本の食べ方もいいよね」
「おかずで御飯を食べるのがね」
「僕もよくそうして食べてるから」
「僕もだよ」
「それが日本の食べ方だからね」
 日本にいます、だからその食べ方をしているというのです。
「美味しい食べ方だね」
「本当にね。それでだけれど」
「うん、今日先生に来てもらった理由だね」
「何かな、今回僕を呼んだ理由は」
「トミーのことなんだ」
 彼のことについてお話する為にです、王子は今日先生をお家に招待したというのです。
「トミーは留学の許可を貰って日本へのパスポートも手に入れたよ」
「それで留学先もだね」
「八条大学だよ」
 先生も王子も通っているその大学にだというのです。
「決まったよ」
「そうなんだね、よかったよ」
「ただ、問題はトミーのいる場所だけれど」
「僕の家に住んでもらうとか?」
「いや、寮があるんだ」
 王子はここでこれをお話に出しました。
「大学の寮がね」
「ああ、あるね。いい寮が」
「八条学園は日本全国、全世界から学生さんが集まるからね」
 だから寮も充実しているのです、そうした設備も。
「それでいい寮も揃ってるけれど」
「学校に近い寮がだね」
「そう、どの寮も学園の敷地内か学校のすぐ傍にあるよ」
「通学が楽なんだね」
「むしろ先生が今住んでいるお家よりもね」
 通いやすい場所にあるというのです。
「本当に目と鼻の先だから」
「しかも設備もいいんだね」
「本当にいい寮だから」
 だからだというのです。王子も。
「そこもいいかなって思うけれどね」
「寮だね、確かに学園には近いし設備がいいだろうけれど」
 それでもだとです、ここで先生は難しい顔になって王子にお話しました。
「そこにいる人によるね」
「いい人が多いといいけれどね」
「世の中そういう人ばかりじゃないから」
「若し悪い人達ばかりだと」
「トミーが可哀想だよ」
 こう王子にお話するのでした。
「だから寮は賭けだよ」
「そうだね、それじゃあ」
「アパートとかはあるから」
「あるよ」
 王子は先生の問いにすぐに答えました。
「いい場所にいいアパートがあるよ」
「そうなんだ、じゃあそこかな」
「学校からはちょっと遠いけれどね」
「どれ位離れてるのかな」
「先生のお家と同じ位の距離だよ」
 そこにそのアパートがあるというのです。
「けれど家賃は安いししかも一人で住むには広いしおトイレもお風呂もちゃんとあるしね」
「それでそのアパートもだね」
「おトイレとお風呂は別々になってるよ」
 そこはそうなっているというのです。
「日本のアパートだからね」
「やっぱりそうなんだね」
「一緒になっているアパートもあるけれどそこはそうなんだ」
「それじゃあトミーにはそこを紹介しようかな」
「そうすればいいよ、台所もあるし」  
 そこもちゃんとしているというのです。
「寮が不安ならね」
「うん、何かあれば僕達もいるしね」
「そのアパート動物の出入りもいいから」
「ペットを入れてもいいアパートだね」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「いいアパートだから」
「それじゃあそこにしようね」
 こうお話したところで、です。先生は王子にこうも言いました。
「ただ、僕の家に住んでもらっても」
「ああ、それだね」
「うん、それもいいかなって思うけれど」 
 王子にこう提案したのです。
「それはどうかな」
「そうだね、それもいいけれど」
「部屋はかなり余ってるよ」
「あのお家広いからね」
「僕の部屋に書斎にしているお部屋もあって応接間にしている場所もあって」
「それでもまだだね」
「うん、お部屋は余ってるから」
 トミーがお家に入ってもだというのです。
「僕は何の問題もないよ」
「トミーにとってもだね」
「僕達はお互いに知っている仲だし」
 それもかなりです、二人共長いお付き合いですから。
「見知らぬ場所で見知らぬ人と一緒に住む寮に入ることよりもいいだろうし」
「見知らぬ場所で一人暮らしをするアパートよりもね」
「いいんじゃないかな」
 こう王子にお話します。
「そう思うけれどね」
「じゃあトミーにね」
「そのことを言ってみるんだね」
「うん、後でトミーに連絡するよ」
 王子はステーキを食べながら先生にお話します。
「そうするよ」
「寮がいいかアパートがいいか僕と一緒に住むか」
「どれがいいかね」
「僕の方は何の問題もないってね」
 先生は王子にまたこのことを言いました。
「お話しておいてね」
「わかってるよ、ちゃんとお話しておくから」
「頼むよ、それとだけれど」
「それと?」
「先生も日本に大分慣れてきたみたいだね」
「そうかも知れないね」
 先生は王子の今の問いに微笑んで答えました。
「何だかんだで」
「そうだね、少なくとも八条学園と八条町にはね」
「他の街や場所はまだ回っていないけれど」
「もう少し落ち着いたらね」
 その時はとです、王子は先生にここでもこうお話します。
「他の場所にも行ってね」
「そうするよ、出来ればね」
「日本は他の場所も楽しいし綺麗だから」
「大阪や京都もだね」
「奈良もね」
「他には伊勢神宮、高野山も」
「高野山は険しいよ」
 王子は先生のお話を聞いて高野山については笑って言いました。
「もう登るだけでも大変だよ」
「日本は山が凄く多いけれど」
「その中でもね、高野山はね」
「相当に険しいんだね」
「修行をする場所だから」
 修行は楽な場所ではありません、だから高野山もだというのです。
「先生じゃ登ることも下りることも大変だよ」
「僕は運動は苦手だからね」
「それでもいいのならね」
「行くといいんだね」
「僕も時間があれば一緒に行かせてもらうから」
 同行したいというのです。
「その時はね」
「そうなんだね」
「僕も高野山は一回行ったからね」
 高野山について知っているというのです。
「案内は任せてね」
「同行してくれる時はだね」
「うん、楽しく行こうね」
 高野山についてもこうしたお話をするのでした、先生達はステーキの後御飯を食べてデザートに無花果を食べました。そしてその食事の後でもです。
 先生は王子と一緒に紅茶を飲みながらこう言うのでした。
「トミーとは日本でも仲良くやっていきたいね」
「全くだね」
 王子も先生のその言葉に頷いて答えます。
「僕もそう思ってるよ」
「折角また皆一緒になれるんだから」
「それならね」
「うん、仲良くやりたいよ」
 イギリスにいた時と同じくというのです。
「そう思ってるよ」
「そうだね、トミーも日本に馴染めればいいね」
「トミーも僕と一緒に沢山の国や場所を回ってきたけれど」
「日本はどうかだね」
「それはわからないからね」
 だからだというのです。
「そのことも心配だったりするんだ」
「すき焼きは美味しく食べてくれたけれど」
「日本はすき焼きだけじゃないからね」
「うん、一杯あるよ」
 その他のものが実にだというのです。
「だからね」
「トミーが馴染めるかどうかは」
「そういったものをトミーが受け入れられるかだね」
 王子はトミーに主点を置いて先生に言いました。
「それが問題だね」
「どうなるのかな」
 先生は不安も感じながら王子に応えます。
「期待しているけれどね」
「不安でもあるね」
「今はそう思ってるよ」
 実際に紅茶を飲みつつ微妙なお顔になっている先生でした。
「どうかな、トミーは」
「まあ今ここで考えてもね」
「仕方ないね」
「なるようになるよ」
 王子はあえてこう言いました。
「しかも先生がいるから」
「僕がいるから?」
「悪いことにはならないと思うよ」
「それは買い被り過ぎじゃないかな」
「いや、先生はいい人だしね」
 しかもだというのです。
「動物の皆もいるから」
「だからなんだ」
「そう、大丈夫だよ」
 そうだというのです。
「僕はそう思うよ」
「それじゃあだね」
「先生はトミーを悪い様にはしたくないよね」
「うん、絶対にね」
「それならだよ」
 先生がそう思っているのならというのです。
「トミーはまず大丈夫だよ」
「僕のことも大きいんだ」
「トミー自身がどうかっていうこともあるけれどね」
「そうなるんだね」
「さて、それじゃあね」
「それじゃあ?」
「トミーには僕から連絡しておくから」
 何処に住みたいかということをです。
「明日先生にお話するからね」
「待ってるよ」
「そうしておいてね」
 こうお話してでした、先生は王子とトミーのことについてある程度のことを決めたのでした、そしてお家に帰りますと。
 動物達がです、先生にこんなことを言ってきました。
「先生、凄いよ」
「凄いことになったよ」
「凄いことって何かな」
 先生は皆の言葉に目をしばたかせて返しました。
「一体」
「サラさんが来るのよ、日本に」
「サラが!?」
「ええ、そうなのよ」
 ポリネシアが先生にお話します。
「この街にもね」
「またそれはどうしてかな」
「お仕事の関係でね。取引先の人とお話をする為に」
「日本に来るんだ」
「ほら、そうしたお話になってたでしょ」
「時々日本に来るって言ってたね」
「そう、それでなのよ」
 ポリネシアはこのことからも先生にお話するのでした。
「この八条町にも来るから」
「また急にだね」
「お仕事は急に来るものでしょ」
 ポリネシアは先生のことも含めてお話しました。
「先生だって今のお仕事はね」
「うん、急に来たね僕も」
「同じよ、お仕事は急に来るっていうのはね」
「サラも同じなんだね」
「そう、最近サラさんのご主人の会社の業績は急に伸びてるから」
 八条グループと契約したからです、それでサラのご主人の会社は業績が急激によくなってきているのです。
「だから忙しいみたいよ」
「それで日本にも来て」
「そう、先生にも会いに来るみたいよ」
「元気かな」
「元気だと思うわ」
 サラの体調についてはホワイティがお話します。
「電話にはポリネシアが出て人の言葉でやり取りをしたけれどね」
「元気なんだね」
「ええ、とてもお元気だったわ」
 またポリネシアが先生にお話します。
「だから安心してね」
「そう、それならいいよ」
「それに会社の業績もいいから」
 だからだというのです。
「凄く上機嫌だったわ」
「尚いいことだね」
「そう、サラさんって結構お天気屋さんだから」
 この辺りは兄妹ですが先生とかなり違います、先生はいつも温厚ですがサラは結構気分屋な性格なのです。
 それで、です。サラが上機嫌であることは先生にとってもいいことなので笑顔になってこう言いました。
「美味しいお茶が飲めるね」
「そうよね」
「本当にね」
 こうお話するのでした。
「じゃあお茶を用意しておこうか」
「イギリスのもの?それとも日本のもの?」
 このことはチープサイドが尋ねてきました。
「どっちにするのかしら」
「ここは両方用意しておこう」
「両方なの」
「サラがどっちがいいって言ってもいい様にね」
 それでだというのです。
「どっちも用意しておこう」
「出さない方はどうするのかしら」
 チープサイドは先生にこのことも尋ねました。
「一体」
「そちらは僕達が後で食べよう」
「日本の場合もイギリスの場合も」
「どっちも美味しいからね」
 だからだというのです。
「そうしよう」
「わかったわ、じゃあその時はね」
「サラ次第だからね」
「そういうことね」 
 チープサイドはここまで聞いて納得しました、そしてです。 
 そうした話をしてです、先生はあらためて皆に言いました。その言うことはといいますと。
「これからお風呂に入りたいけれど」
「もう沸いてるよ」
 チーチーが先生に答えてきました。
「先生がそろそろ帰って来る頃だと思ってたからね」
「もう入ることが出来るんだ」
「そう、先生が帰って来た丁度その時にね」
「お風呂が沸いていたんだね」
「ちょっとボタンを押すだけで沸くから」
「あれなら誰にも出来るよ」
 トートーも笑顔で言ってきます。
「私達にもね」
「そうなんだね」
「あと先生、連絡に便利だから携帯買ったら?」
 ジップはここでこう先生に言ってきました。
「そうしたらどうかな」
「携帯電話だね」
「それかスマートフォンね」
 そのどちらかをだというのです。
「買ったらどうかな」
「そうだね、学校に行けば皆持ってるね」
「ないよりある方がいいよね」
「凄く便利そうだね」
「だって何時でも何処でも連絡が出来るんだよ」
 それで便利な筈がない、ジップは先生に言います。
「こんな便利なことないじゃない」
「じゃあ買っておこうかな」
「先生機械類は苦手だけれどね」
「実はパソコンもね」
 そちらもだというのです、先生はジップに困った笑い顔になってお話します。
「どうもね」
「けれど日本はイギリスよりそうしたことが発達してるから」
「持っていないとだね」
「不便だからね」
 それで持っているべきだというのです。
「そう思うけれどどうかな」
「そうだね、それじゃあね」
 先生はジップの言葉に素直な顔で頷きました、そうしてなのでした。
 先生は携帯かスマートフォンも買うことにしました、そしてパソコンもです。
 そうしたことも決めてす、先生は考える顔でこうも言いました。
「日本に来てから僕もどんどん変わっていくね」
「これまで携帯とかパソコンに縁がなかったからね」
「うん、僕はね」
 先生はガブガブにも言葉を返します。
「だからね」
「そうだね、それでだね」
「うん、自分でも驚いているよ」
 先生自身もだというのです。
「ここまで変わってきているなんてね」
「日本に来てね」
「というか日本の生活がね」
「イギリスと全然違うよね」
 皆はこう先生にお話しました。
「パソコンも携帯もイギリスっよりずっと多いし」
「車だってそうで」
「あと電車もね」
「何でも日本より多いんだよね」
「そうなんだよね、思った以上にハイテクだね」
 先生は日本の生活についてこう述べました。
「機械が一杯あるよ」
「古風なイメージがあったけれど」
 ポリネシアは日本のかつてのイメージ、自分の中にあったそれを言いました。
「実は違うのね」
「いや、歴史とね」
 先生はそのポリネシアにお話します。
「それとなんだ」
「機械もなのね」
「そう、電脳もね」
 それもだというのです。
「両方共備わっている国なんだよ」
「それが日本なのね」
「そうみたいだね、どちらもね」
 先生はこうポリネシアと他の皆にお話しました。
「この国にはあるんだよ」
「そうした国なのね」
「だからね」
 それでだというのです。
「日本にいるとね」
「パソコンや携帯も必要なのね」
「僕の研究室にも入れるよ」
 先生はポリネシアに言いました。
「パソコンをね」
「お家には入れないの?」
 ホワイティは先生にパソコンをお家の中にも入れるかどうか尋ねました。
「そうしないの?」
「ああ、このお家にだね」
「そう、それはどうするの?」
「そうだね」
 少し考えてからです、先生はホワイティの問いに答えました。
「そうしようかな」
「そうするのね」
「やっぱりね、パソコンは必要だからね」
 そうした時代だからだというのです。
「入れようかな」
「それじゃあ私パソコンのコードとかには気をつけるわね」
「かじらない様にだね」
「今までもお家のものはかじらなかったけれど」
 ホワイティは礼儀正しい鼠です、だからお家のあちこちをかじったりせず先生がこれをかじって欲しいと言ったものだけをかじっています。 
 そしてです、パソコンのコードとかもだというのです。
「かじらないからね」
「そうしてね」
「うん、気をつけるよ」
 こう先生にお話するのでした。
「だから先生もね」
「パソコンや携帯の使い方を勉強しないとね」
「出来るよね」
 お馬さんがこのことを尋ねてきました。
「パソコンや携帯を使うことは」
「実はね」
 先生はお馬さんのその質問にです、困った笑顔で答えました。
「昔からそういうのはね」
「駄目なの?」
「うん、そうなんだ」
「イギリスのお家でもなかったしね」
 パソコンも携帯もです、先生は持っていませんでした。
「だからね」
「殆ど使ってないのね」
「そうなんだ」
 こうお馬さんに答えます。
「けれどこうしたこともね」
「うん、努力しないとね」
 先生はパソコンや携帯については苦手でも、といった感じで言います。
「駄目だしね」
「頑張ろうね、そっちも」
「サイバーも」
 皆はその先生を励まして言います。
「是非共ね」
「そうしてね」
「頑張るからね」
 先生もそのことは不安ですがそれでも真面目に考えています、そうしてなのでした。
 お家と研究室にそれぞれパソコンを入れてそしてです。
 携帯も持ちました、その携帯を研究室の自分の席の上に置いていますと。
 そこにです、准教授が来てその携帯を見て笑顔で言ってきました。
「おや、携帯を買われたんですか」
「そうなんです、はじめて買いました」
「イギリスでは持っておられなかったんですね」
「そうなんです」
 このことを准教授にもお話した先生でした。
「ですからはじめてですけれど」
「メールアドレスは」
「はい、それはですね」
 准教授にそのアドレスも教えます、パソコンのものも。
「またご連絡下さい」
「そうさせてもらいますね、何かあれば」
「あと着信音ですけれど」
 先生は携帯のそのこともお話しました。
「何にしましょうか」
「先生の好きな曲でいいのでは?」
 准教授は先生の前に立って自分の携帯を見ながら笑顔で述べました。
「そうされては」
「僕の好きな曲ですか」
「そうです、どんな曲がお好きですか?」
「騒がしい曲は苦手ですが」
 こうしたところは先生らしいです。
「民謡なら」
「イギリス民謡ですね」
「イングランドのものだけでなく」
 イギリスといっても一口ではありません、イングランドとスコットランド、ウェールズ、アイルランドの四つの地域があるのです。かつてはそれぞれの国に分かれていました。
「他の地域のものも」
「アイルランド民謡もですね」
「はい、スコットランドやウェールズのものも」
 どれも好きだというのです。
「その中でも好きな曲は」
「何でしょうか」
「ホーム=スウィート=ホームですね」
 その曲だというのです。
「あの曲が一番好きです」
「ああ、あの曲ですね」
「ご存知ですか、准教授も」
「はい、ジョーン=サザーランドが引退の時に歌った曲でしたね」
「そうです、それではですね」
「はい、その曲を」
 是非にと言うのでした。
「着信にさせてもらおうと思っていますが」
「成程、いい趣味ですね」
「いい趣味ですか」
「ホーム=スウィート=ホームとは」
 その曲を選んだことがだというのです。
「いいと思いますよ」
「それではですね」
「はい、その曲で」
「それでは。しかし日本の携帯の機能は凄いですね」
 今度はこのことについて言及した先生でした、自分の携帯を手にしてそれであれこれと動かして見ながらです。
「ネットにもつながりますか」
「それは普通ですよ」
「携帯ならですか」
「そこから小説サイトにも行けますし」
 それも可能だというのです。
「勿論その他のサイトにも行けます」
「まるで万能ですね」
「ははは、パソコンもそうですけれどね」
「いや凄い、ネットについても殆ど知らないですが」
 それでもだというのです。
「これからそちらも勉強ですね」
「そうなりますね」
「どんどん勉強していくことになりますね」
 先生は准教授に笑顔で言いました。
「日本語のサイトも行けますし」
「他の言葉もですね」
「そうです、フランス語とドイツ語も大丈夫ですし」
「中国語もですね」
「いけますので」
 だから大丈夫だというのです、ただここで。  
 先生はジョークで、です。こうも言いました。
「ただ動物達の言葉のサイトはありませんね」
「そうですね、動物達はサイトをしませんから」
「それで、ですね」
「はい、ないです」
 それはだというのです。
「残念ながら」
「犬のサイトがあれば面白いですが」
「犬自身が運営しているサイトですか」
「そうしたものもあれば面白いですが」
「パソコンの前で犬が座ってキーボードを叩いているのですか」
 准教授は先生とのお話からそうした風景を想像しました。
「確かに面白いですね」
「そうですね、うちのジップもそうしてみれば」
「さっきまで研究室にいたあの犬ですね」
「はい、今は学園の中を散歩していますけれど」
 他の皆と一緒にです、そうしているのです。
「ジップもそうすれば」
「面白いですね」
「はい、そう思います」
「しかし動物の言葉もわかるとは」
 それはだとです、准教授は腕を組んで考える顔になって述べました。
「本当に便利ですね」
「これが中々面白いのです」
 その動物達の言葉がだとです、先生はお話します。
「学問としても」
「そうですか、ではその学問を立ち上げられては」
「言語学の中にですね」
「オウム語学や犬語学を」
 人間の言葉と同じ様にだというのです。
「そうされては」
「面白いですね、確かに」
「今のところそれが出来るのは先生だけです」
 ドリトル先生だけだというのです。
「ですから考えられては」
「はい、そうしてみます」
「しかし先生は」
 ここで、です。准教授はふとこんなことも言いました。
「日本に来られてから随分と変わりましたね」
「そうですね、本当に」
「はい、パソコンに携帯も買って」
「イギリスにおられた頃とはですね」
「本当に違います」
 全くだというのです。
「いきなり、それも急に変わりました」
「戸惑っておられますか」
「正直言いまして」
 そうだとです、先生は笑って言いました。
「ここまで変わるとは思いませんでした」
「日本についてもですね」
「車が多いだけでなく」 
「パソコンや携帯もあってですね」
「そうです」
 それでだというのです。
「イギリスよりも遥かに高度の技術を持っています」
「そうですか」
「噂には聞いていましたがその噂以上です」
 そしてその中にいて、です。
「僕も変わってきていますね」
「そうですか」
「これからも変わっていきますね」
 先生は日本の中にいてさらにそうなっていくことも考えました、そうして。 
 その携帯の音楽、ホーム=スウィート=ホームを聴いて目を細めさせて准教授に言いました。
「それでも携帯で聴くこの音楽もですね」
「いいものですね」
「CDで聴く場合も演奏で聴く場合もいいですか」
「携帯で聴いてもですね」
「名曲は何で聴いても名曲です」
 そうだというのです。
「非常にいいです」
「どんな高度な技術で聴いてもそのよさは変わらない」
「そう思います」
 准教授とそうしたこともお話しました、そしてなのでした。
 先生はその音楽を聴きました、准教授も先生と一緒にそうしました。
 その先生にです、妹さんが尋ねてきました。サラの格好はイギリスにいた頃と変わらない可愛らしいものです。
 そのサラが先生のお家に入って先生を見てこう言いました。
「あら、変わってないわね」
「そうかな、変わったと思うけれど」
「いえ、変わっていないわ」
 全くだというのです。
「兄さんも皆もね」
「サラから見ればだね」
「日本の中にいてもね」
 サラは先生のお家の中を見回して先生にお話します。
「兄さんは兄さんね」
「そして皆もね」
「ええ、イギリスにいた時と変わらないわ」
「そうかな」
「今も三時には紅茶を飲んでるわね」
「いや、日本茶の場合もあるよ」
「そうなの?」
「うん、そうだよ」
 先生はサラをお家の中に案内します、居間に入りながらそうしてなのでした。
 先生はサラを居間に入れてそのちゃぶ台に入れました、そしてなのでした。
 紅茶とティーセットを出します、そのうえでまた言うのでした。
「今はこれだけれどね」
「日本のお家でティーセットは」
「どうかな」
「凄く違和感があるわね、それにお家に入るのに靴も脱いで」
「日本のお家だからね」
「畳に襖ね」
「それに障子とね」
「木のお家なのね」
 サラはこのことも言いました。
「本当に日本のお家なのね」
「そうだよ」
「このお家が兄さんが今住んでいるお家なの」
「いいお家だよ、暮らしやすいよ」
「だといいけれど」
「それでサラ、ご主人は?」
「今お仕事の打ち合わせよ、社長さん同士のね」
 サラはお茶を入れつつお話します。
「それで私は今は時間があるから」
「僕の家に来てくれたんだ」
「私がタッチ出来ないお話なのよ」
「サラは副社長じゃないのかい?」
「もっと言えば秘書でもあるわよ」
「それでもなんだ」
「そう、おかしな場所には行かないけれど」
 このことはもうチェックしてしかも目付まで置いています、先生と違ってサラはこうしたことは厳しいのです。
「一対一の打ち合わせだから」
「相当重要なものみたいだね」
「そうなのよ、だからね」
 それでだというのです。
「私は主人が打ち合わせをしている間に兄さんの顔を見に来たのよ」
「成程ね」
「そうよ、それでだけれど」
 今度はお茶と三段のティーセットを見て言うサラでした。
「このお茶とセットは日本のものよね」
「うん、そうだよ」
「日本のお茶とセットは向こうの人にご馳走してもらったけれど」
「美味しかったね」
「イギリスのものより美味しくてびっくりしたわ」
 先生にこう言うのでした。
「まさかこんなに美味しいなんて思わなかったから」
「だからだね」
「それでこのお茶とセットも」
「日本のものだからね」
「美味しいのね」
「そうだよ」
「自信なくすわ」
 サラは困った笑顔になってお兄さんに言いました。
「本場のものよりずっと美味しいものを作ってくれるなんて」
「それが日本だからね」
「お水と調味料がいいのね」
「素材もね」
「素材はイギリスもいいけれど」
「作っている人も違うからね」
 それで味が全然違うというのです、同じものであっても。
「だからね」
「それでなのね」
「そう、それじゃあね」
「ええ、頂くわ」
「それじゃあね」
 こうしたことをお話してでした、サラは実際にそのお茶とティーセットを飲んで食べました、そのうえで言うことは。
 笑顔で、です。こうお兄さんに言いました。
「これもね」
「イギリスよりもだよね」
「美味しいわ、憎たらしいまでに」
「おいおい、憎たらしいのかい・」
「私が作るのよりもね」
 それよりもだというのです。
「美味しいから」
「それでなのね」
「そう、美味し過ぎるから」
「憎たらしいんだ」
「どうして日本のお料理はこうまで美味しいのかしら」
「あっ、ティーセット以外も食べたんだね」
「懐石料理をご馳走になったわ」
 それを食べたというのです。
「それがまたね」
「美味しかったんだね」
「お箸を使うことには苦労したけれど」
「あれはコツが必要だからね」
「ええ、けれど小さなお皿に乗せられたお料理が一杯出て来て」
「御飯もだね」
「凄く美味しかったわ」
 その懐石料理もだというのです。
「他のお料理もそうだったけれど」
「楽しんだみたいだね、サラも」
「そうよ。それで今兄さん大学の教授よね」
 サラはお茶を飲みながら先生自身のことを尋ねてきました。
「そうよね」
「そうだけれど」
「今忙しいの?」
「それなりにね、毎日大学に行ってるし」
「イギリスにいた時とは全く違うのね」
「いつも朝に行ってね」
 そしてだというのです。
「夕方に帰ってるよ」
「本当に忙しいみたいね」
「それでも三時にはこうしてお茶を飲んでるけれどね」
「今日は日曜だからお休みなのね」
「そう、日本でも日曜はお休みだよ」
 この日にはというのです。
「だからこうしてサラと久しぶりに一緒にお茶を飲めるんだよ」
「そういうことね」
「そうだよ、毎日充実しているよ」
「それは何よりね。イギリスにいた時はね」
 その時の先生はといいますと。
「兄さんお仕事もなくてね」
「病院はあってもね」
 それでもでした。
「患者さんがいなくて」
「お金がなくてね」
「今はあるのよね」
「結構貰ってるよ」 
 月給はというのです。
「有り難いことにね」
「生活は安定したのね」
「そうだよ、パソコンも買ったし携帯も買ったから」
「兄さんがパソコンに携帯もって」
「意外がな」
「意外も何も信じられないわ」
 実際に驚いた顔で言うサラでした。
「兄さんがそうしたものを使うなんて」
「けれど実際に使ってるよ」
「それが本当に信じられないのよ」
 またこう言うサラでした。
「まさかね」
「僕が機械音痴だからだね」
「充分に使えてるの?」
「一応は」
 使えているとです、先生はいささか自信なさげにサラに答えます。
「出来ているよ」
「だといいけれど」
「うん、大学の研究室にも入れているから」
「パソコンをなの」
「この家にもあるしね」
「それで携帯も持ってて」
「僕も変わったんだよ」 
 そうした意味でだというのです。
「日本人みたいにしているよ」
「けれど服はそれなのね」
 イギリスにいた時と同じ服装です、穏やかな配色のズボンにシャツ、ネクタイとチョッキの形のセーター0といった格好です。
「着物じゃなくて」
「いや、着物は持っていないし」
「着ないの?これからも」
「今日本で着物を着ている人も滅多にいないよ」
「確かにね。皆イギリスと同じ服ね」
「一緒だよ」
 そこはだというのです。
「日本とイギリスもね」
「そうね、そういうのを見てね」
「僕達が変わってないっていうんだね」
「そうよ」
 サラはこう先生に返しました。
「イギリス人のままね」
「まあ僕もね」
「日本は好きだけれどだね」
「着物は着ないのね」
「そちらはね。今のところはね」
 興味はないというのです。
「中々面白そうだけれどね」
「わかったわ、そのことはね」
「サラはどうかな」
「着物ね」
「着てみようとは思わないのかな。今着ている服も結構古風だけれど」
 今のイギリスではサラが今着ている不思議の国のアリスの頃の様な服はそうそうありません、これはサラの趣味なのです。
「着物はどうかな」
「別にね」
 サラは首を右に捻って先生に答えました。
「それはね」
「いいんだね」
「うん、特にね」
 こう言うのでした。
「いいわ」
「そうなんだね、わかったよ」
「着物って高いのよね」
「服によるけれどね」
 それでもだというのです。
「着物は高いよ」
「生地はシルクよね」
「しかもかなり質のいいシルクでね」
 そうしてだというのです。
「職人さんが仕立てているから」
「人の手もかかると」
「そう、かなり高くなるよ」
「そんな服を買うとね」
 サラのお家ではというのです。
「大変だから」
「会社はまだ厳しいのかい?」
「かなり楽になったわ、けれどね」 
 業績はかなりよくなりました、けれどそれでもだというのです。
「お金は節約しないと」
「世知辛いね」
「世の中はそんなものよ。とにかく着物はね」
「買わないんだね」
「そう、買わないわ」
 決してだというのです。
「そうした服はね」
「僕も止めておくよ」
 先生はあらためて着物は買わないことにしました、けれどその先生にサラは明るい声でこう言いました。
「男の服は女ものよりずっと安いわよ」
「それは着物もなんだね」
「どの服でもよ」
 男ものの方がずっと安いというのです。
「だから兄さんは買えるんじゃないかしら」
「今の僕ではだね」
「そう、教授になって定期的な収入も出来たから」
 それでだというのです。
「大丈夫だと思うわ」
「まあ僕も服はね」
 先生は服にこれといってこだわりがありません、むしろ無頓着で若い女の子からはださいと言われる位です。
「あまり気にしないから」
「むしろ気にしたら?」
「ファッションのことをだね」
「そう、兄さんただでさえ野暮ったいのに」
 先生の今の服装も見ての言葉です。
「余計にそうなっているわ」
「服装をよくしてどうなるのかな」
「女の子にもてるわ」
「そういうことは別に」 
 先生はそうしたことにはあまり興味がありません、だから今も独身なのでしょうか。
「いいけれど」
「じゃあずっと独身でいるつもりなの?」
「そんな気もないけれど」
「じゃあもうちょっと服装にも気を使ってね」
 そしてだというのです。
「ぱりっとしてね」
「女の子にも注目されて」
「そう、結婚のことも考えるのよ」
「ううん、そうしないと駄目なんだね」
「そうよ、そっちも頑張ってね」
「そういうことはどうもね」
 先生は服装については難しい顔で言うのでした。
「あまり興味がないし」
「全く、そうしたところも変わらないわね」
 サラは先生のファッションに対する興味のなさも見て呆れた顔で言いました。
「イギリスにいた時と」
「結局僕は僕なのかな」
「そういうことね」
「皆もね」
 サラは微笑んで自分の周りにいる動物達を見回して微笑んでこうも言いました。
「日本にいてもイギリスにいる時と同じね」
「それっていいことかな」
「どうなのかな」
「悪いことじゃないわ、私ほっとしてるから」 
 そのイギリスにいた時と変わらない皆を見てだというのです。
「兄さん達が困っていないかなって心配だったのよ」
「えっ、そうだったんだ」
「そう、慣れない外国でどうしてるかって」
「とはいってもこれまで色々な国に行ってきたしね」
 イギリス以外の場所には慣れているというのです。
「日本にもね」
「すぐに慣れるのね」
「そうだよ、とはいっても僕もどうかと思ったけれど」
「今はなのね」
「慣れてきたし楽しくやってるよ」
「イギリスにいた時と同じ様にだね」
「そう、だから心配しなくていいよ」
 先生は妹さんににこりと笑って告げました。
「これからもね」
「そうなのね。じゃあまた機会があればね」
「ここに来てくれるんだね」
「ええ、そうしてもいいわよね」
「うん、いいよ」
 先生は妹さんの申し出に明るい笑顔で答えました。
「何時でもね」
「そう、それじゃあね」
「うん、待ってるよ」
 こうお話してでした。そうして。
 サラは今は先生達と一緒にお茶を楽しみました。そうしてでした。
 軽い足取りでご主人のところに戻ります、先生達はその妹さんを玄関で見送りました。そうしてでした。
 先生にです、ポリネシアが言ってきました。
「後はね」
「うん、トミーだね」
「そう、トミーも来るわね」
「来たら色々案内しないといけないね」
「そうね。それで何処に入ることになったの?」
 ポリネシアがトミーが住む場所について尋ねました。
「一体」
「それはまだなんだ」
「決まってないのね」
「王子ともう少しお話をしてね」
 それで決めるというのです。
「それからだね」
「そうなのね」
「けれど出来ればね」
「このお家になのね」
「うん、一緒に住めればいいね」
 先生はこう言うのでした。
「このお家は広いしね」
「そうよね、お部屋もあるし」
「このお家は僕達だけじゃ広過ぎるからね」
 まさにお屋敷です、先生達だけでは確かにこのお家は広いです。
 だからです、先生は言うのです。
「トミーもいれくれたらね」
「有り難いわね」
「うん、トミーも家賃の心配はないし」
「知った者同士で住めるし」
「いいと思うしね」
 だからこそだというのです。
「トミーもこのお家に住める様にね」
「王子とお話するのね」
「そうしていくよ。じゃあこれからね」
 先生はポリネシアとのお話を終えてです、そしてでした。
 皆にです、笑顔でこう言いました。
「今から晩御飯まで時間はあるから」
「お散歩に行く?」
 ジップが先生の足元から顔を見上げて言ってきました。
「そうする?」
「うん、僕もそう言おうと思ってたんだ」
「じゃあ今からね」
「皆で行こう、楽しくね」
 こうお話してでした、先生は皆と一緒に晩御飯まで街をお散歩するのでした。先生の日本での生活は楽しい日々ばかりです。


ドリトル先生学校に行く   完


                              2013・11・16



サラが先生の家にやって来たな。
美姫 「結構、早い再会だったわね」
まあ、何だかんだと言いつつも仲の良い兄妹だな。
美姫 「今回は王子とかお客さんが来る回って感じね」
だな。まあ、共通して食べ物の話と、後はトミーに関してか。
美姫 「留学するにあたっての生活場所ね」
先生は自分の所に大歓迎って感じだけれど。
美姫 「どうなるのかしらね」
次のシリーズも待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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