『ドリトル先生と伊予のカワウソ』




             第四幕  老先生

 先生は加藤さんに案内してもらって動物達と一緒に動物園を観て回りました。その後で公園に戻ってそこも観てです。
 そうして旅館に戻りました、そうしてなのでした。
 その旅館の中でまたご馳走を楽しみました、この日も海の幸が沢山あります。
 加藤さんは今はご自身のお家に戻って先生達だけです、そのお刺身を見てポリネシアが目を丸くさせて言いました。
「今日も凄いわね」
「ハマチだね」
「ええ、いいハマチね」
「とても美味しそうだね」
 先生はそのハマチのお刺身、舟の上のそれを見つつポリネシアに楽しそうに応えます。
「これをね」
「今から食べるのね」
「生のお魚はとても美味しいよ」
 もうすっかりです、お刺身は先生の大好物になっています。
「松山のお刺身もね」
「美味しいわよね」
「ではこのお刺身とね」
「他のものも食べてよね」
「うん、そうしてね」
「お風呂にも入って」
「今日は休もう」
 こう言うのでした。
「そしてまた明日だよ」
「明日も学会があるのかしら」
 トートーが先生にこのことを尋ねてきました。
「そうなのかしら」
「あるよ、ただね」
「論文の発表は終わってるわね」
「そう、だからね」
「明日はよね」
「僕は学会に出席してね」
「他の人の発表を聞くのよね」
 トートーは先生のすぐ傍にいます、そこから先生に尋ねています。
「そうよね」
「そうだよ、他の人の論文もね」
「勉強になるのね」
「色々な論文を読んで勉強しないとね」
「学者じゃないわね」
「自分が論文を書くにも」
 そして発表するにしても、というのです。
「まずはね」
「他の人の論文を聞いて読むことね」
「そうだよ。それも勉強だからね」
「じゃあ明日も」
「学会に出席するよ」
「そしてその後で」
「うん、松山の街に出てね」
 今日の様にです、そうしてというのです。
「勉強だよ」
「先生って本当にお勉強が好きよね」
「勉強というか学問かな」
「それが好きなのね」
「うん、僕は学者だからね」
「イギリスにいた時からね」
「子供の頃から本が好きでね」
 先生はその頃から本の虫だったのです。とにかく色々な本を読んできて学問に励んできたのです。それは今もです。
「学問をしてきたよ」
「医学にね」
「それにね」
 医学だけではないのです、先生が学んできた分野は。
「語学も文学もね」
「歴史もよね」
「本を読んだりすることは好きだから」
「学問はなのね」
「そう、好きだからね」
「それでお医者さんになったわね」
「まさか日本に来るとは思わなかったけれどね」
 このことは本当にです、先生は考えてもいませんでした。ずっとイギリスに住んでいてそこから色々な国に行くこともあるだろうと思っていたのです。 
 ですが今先生は日本にいます。そして大好物になったお刺身の前にいるのです。ここで一旦いただきますをして皆と一緒に晩御飯を食べはじめます。
 そしてお刺身を食べてです、先生はその美味しさに笑顔になってから皆に対してあらためてこう言いました。
「日本のことも勉強していたけれど」
「不思議な国だよね」
「そうだよね」
 ジップとチーチーが先生の今の言葉を聞いて言います。
「とてもね」
「色々な変わったものがあってね」
「独特だよね」
「こんな国他にないよ」
「ないよ、絶対」
「何もかもが変わってるよ」
「日本はね、あらゆる意味においてね」
 どうかとです、先生も言います。
「他の国とも違うね」
「そうだね、本当に」
「この国は他の国とは違うね」
「イギリスと同じ島国だけれど」
「イギリスとも違うね」
「何かこの国には色々なものが来て」
 そしてとです、先生はお刺身を食べつつ述べました。
「そして独自にアレンジされたりして残っていく」
「そうした国だね」
「日本っていう国はね」
「そう思うよ、日本は面白い国だよ」
 こう言うのでした。
「いればいるだけこの国にいたくなったよ」
「じゃあやっぱり?」
「ずっとこの国に住むんだ」
「それで日本人になるんだ」
「そのつもりなんだよ」
「そうしようかな」
 日本の国籍を取って本当に日本人になることをです、先生は今真剣に考えだしているのです。
「神戸に住んでね」
「八条町だね」
「そこにいてだね」
「そう思っているよ、皆もいるし」
 その動物達を見ての言葉です。
「それもいいだろうしね」
「僕達も日本が好きだよね」
「そうなったよね」
 ジップとチーチーは顔を見合わせて先生の言葉に応えました。
「先生と同じでいればいる程ね」
「好きになってきてね」
「先生もいれくれるし」
「それならね」
「うん、君達も日本が好きになってくれたからね」
 このこともあってだというのです。
「ずっと日本にいようか」
「そうして美味しいものも食べて」
「楽しむんだね」
「それがいいかもね」
「そうだよね」
 動物達はそれぞれお話するのでした、そうしながらです。
 彼等も日本のお料理を楽しんでいます、それぞれのご馳走をです。動物によって食べるものは違っています。ですがそのどれもがなのです。
「ううん、こうしたものを食べてると」
「幸せになれるね」
「そうだね」
「じゃあね」
「この美味しいものを食べて」
「明日も楽しもう」
「楽しく学ぼう」
 こうそれぞれお話するのでした、そしてです。
 皆で楽しくお話します、その美味しいものを食べてです。
 お風呂にも入ります、先生は湯舟の中でほう、と満足しているお顔で一緒に入っている皆にこうも言うのでした。
「いやあ、ほっとするね」
「お湯の中に入ったらね」
「違うよね」
「いや、いいよ」
「疲れが吹き飛ぶよ」
「それでもっと元気を貰える様な」
「そんな感じがするよね」
 お風呂に入ると、というのです。それでホワイティが先生の周りを泳ぎながらこんなことを言いました。「シャワーだとね」
「こうはいかないからね」
 先生は癒されている顔でホワイティに答えました。
「お風呂はいいよ」
「そうだね、ただね」
「ただ?」
「今の先生ってね」
 そのほっとしているお顔の先生を見ての言葉です。
「完全に日本人の顔だよ」
「そうなっているんだね」
「うん、お風呂を楽しんでいてね」
「実際に楽しいよ」
「顔立ちもそんな風かな」 
 日本人のものになっているというのです。
「日本人になってるよ」
「ううん、お風呂の中だと特にそうなるのかな」
「なってるよ」
「そうなんだね」
「そうした感じだよ」
「シャワーだとこうはいかないんだよね」
 先生は今も満足しているお顔です、そしてなのでした。
 先生はお風呂の後でお酒も楽しみました、その次の日の朝はです。
 鯛飯です、先生はその鯛飯を食べて旅館の人に言いました。
「これも美味しいですね」
「はい、松山の名物です」
「そうですよね、いや朝からご馳走ですね」
「折角だと思いまして」
 それでだとです、旅館の人は先生に穏やかな笑顔でお話します。
「朝に出させてもらいました」
「そうですか、では」
「その鯛飯を召し上がられてですね」
「それからです」
 こう言うのでした、先生は一日のはじまりに言いました。
「お風呂に入って」
「出ていかれますね」
「お仕事に行ってきます」
「頑張って下さいね」
「有り難うございます、それでは」
 先生は旅館の人と笑顔でお話してでした、そのうえで。
 鯛飯を食べてお風呂も楽しんでなのでした、動物達と一緒に旅館を出てです。そうして学会に出たのでした。
 そしてお昼はです、加藤さんが先生にお勧めするものは。
「では今日のお昼は」
「何にされますか?」
「坊ちゃんはどうでしょうか」
 笑顔での言葉でした。
「いよいよ」
「天ぷらそばですね」
「はい、これです」
 それを食べようというのです。
「これを食べませんか」
「三杯ですね」
「ここは」
「いいですね、実は僕は日本に来て」
「お蕎麦もですね」
「大好きになりました」
 そうなったというのです。
「おうどん以外にも」
「そうですね、それでは」
「お昼はですね」
「天ぷらそばを食べましょう」 
 こうお話してでした、そのうえでなのです。
 皆で、です。笑顔でなのでした。
 あるお蕎麦屋さんに向かうことになりました、その途中に行く為に乗ったものはといいますと。
 バスです、その鮮やかなバスの中で、です。加藤さんはこう先生にお話しました。
「このバスも坊ちゃん由来のものでして」
「そうなのですね」
「マドンナバスといいます」
 加藤さんはこのバスのことも先生にお話するのでした。
「松山の名物の一つでもあります」
「このバスもですか」
「そうなのです、マドンナバスに乗って」
「それで、ですね」
「坊ちゃんの様にです」
「天ぷらそばを食べるのですね」
「そうしましょう、それでは」
「はい、それでは」
 こうお話してでした、まずはそのバスに乗ったのでした。
 こうしてバスでの小旅行の後で、です。ある古風な趣のある蕎麦屋さんに入ってです。先生達が頼んだものは。
「てんぷらそばを」
「おかわりもですね」
「はい、後でします」
 加藤さんが笑顔でお店の人に答えます。
「そうさせてもらいます」
「三杯ですね」
「食べさせてもらいます」
「坊ちゃんですね」
 笑顔でこう言ったのでした、お店の人も。
「では」
「はい、それでは」
 こうお話してでした、先生達はいよいよその天ぷらそばも食べるのでした。その坊ちゃんが食べた天ぷらそばもです。
 食べるのでした、まずはです。
「一杯目ですね」
「はい」
 そしてなのでした。
「次ですね」
「そうです、二杯目です」
「それからですよね」
「三杯食べてです」
 それでこそ、というのです。
「坊ちゃんです」
「そういうことですね」
「そうです、ただ」
「ただ?」
「実は当時と今では」
 ここで加藤さんはこう先生に言うのでした。
「違うものがありまして」
「あっ、そうですね」
 すぐにです、先生も加藤さんのお話したいことがわかりました、それは何かといいますと。
「当時の日本人と今の日本人では」
「体格が違いまして」
「坊ちゃんもですね」
 彼にしてもなのです。
「今の日本人と比べると」
「小柄です」
 そうなるというのです。
「おそらくですが」
「その辺りは食生活でしたね」
「そうです、それが影響しますので」
「確か。江戸時代末期ですが」
 明治時代よりは前ですが、というのです。
「日本人の平均身長は一五四位でしたね」
「小さいですよね、今の我々から見れば」
「はい、その坊ちゃんの三杯とですね」
「我々の三杯は」
「また違いますね」
「そうです、今一五四位ですと」
「日本人でも」
「子供ですね」
 それ位の大きさでしかないのです。
「それ位ですと」
「そうなのですね」
「日本人も大きくなりました」
「そう、そのことですが」
 ここで先生が言うことはといいますと。
「大学でも学生さん達の中には」
「先生よりもですね」
「大きい人がいます」
「先生は背は高いですが」
 見れば先生は加藤さんから見ても結構な高さです、一八〇はあります。
「その先生よりもですか」
「高い人がいます」
「日本人で」
「いや、イギリスにいてもです」
 先生の祖国にいてもというのです。
「日本人はあまり変わらなくなっています」
「背がですね」
「そうです、特に特撮ものですが」
「特撮に出ている人は皆多いですね」
「そうですね、かなり」
 相当にというのです、特撮に出ている人達は、
「大きいですね、驚く位に」
「特撮ものはどうしても」
「出ている人の背がですね」
「多くなります」
「その方が見栄えがいいからですね」
「そうです、だからです」
 特撮ものでは背の高い役者さんが多くなるのです。先生は日本に来てこのこともわかったのです。そうしてでした。
 先生はお蕎麦を食べてです、こうも言いました。
「三杯なら」
「大丈夫ですね」
「はい、食べられます」
「私もです、実はおうどんだけでなく」
「お蕎麦もですね」
「はい、大好物です」
「美味しいですよね」
「そうですね、とても」
 加藤さんはお蕎麦を食べてです、そして。
 天麩羅も食べてです、その天麩羅についても言いました。
「この組み合わせがです」
「お蕎麦と天麩羅の」
「これが最高だと思います」
「恐ろしい位合いますよね」
「全く以て」
 そこまでだというのです。
「私もお蕎麦の中では」
「この天ぷらそばがですね」
「一番好きです」
「僕もですね」
「先生もですね」
「この組み合わせは最高ですから」
 天麩羅と蕎麦、この二つはというのです。
「天ざるもいいですよね」
「あっ、おわかりですね」
「お蕎麦がですね」
「はい、それが」
 まさにと言うのでした。
「おわかりですね」
「通ではないと思いますが」
「いえいえ、先生も隅に置けません」
「僕もお蕎麦についてですか」
「わかっておられます」
 そうだというのです。
「お見事です」
「だといいのですが」
 こう応えてからです、先生はこうも言いました。
「お蕎麦も深い食べものですよね」
「特に東京ではそう言われますね」
「日本の首都である」
「先生は東京に行かれたことは」
「いえ、それがです」
「まだですか」
「残念ながら」
 先生はまだ日本の東の方には行っていません、西の方だけなのです。
「行きたいと思っていますが」
「そうですか、では機会があれば」
「東京にもですね」
「関東にも行かれて下さい」
「いい場所なのですね」
「そうです、それでお蕎麦は」
 そのお蕎麦のお話をです、加藤さんは先生にお話するのでした。
「東京だとかなりうるさくて」
「通の人が多いのですね」
「凄いですよ、東京のお蕎麦は」
「この松山よりもですか」
「松山なんて比べものにもなりません」
「では大阪以上に」
「大阪はうどんなのです」
 先生がこれまで行った日本の街で一番大きなこの街は、というのです。
「あそこは」
「うどんですか」
「そうです、日本は西の方がうどんで」
「東が蕎麦ですか」
「おうどんとお蕎麦で分かれています」
「そうだったのですか」
 先生がはじめて知ったことです、何と日本は東と西でその違いがあるというので、おうどんとお蕎麦で。
「西ではおうどんをよく食べるのですね」
「この松山にしても」
「西だからですね」
「丁度隣に讃岐うどんもありますし」
「あれは有名ですね」
「美味しいですよ、確かに」
 松山の人の加藤さんも認める程です。
「コシがあって」
「よく讃岐うどんのお店がありますが」
「神戸にもですね」
「かなり多いです」
「はい、それで楽しませてもらっていますが」
 その讃岐うどんもだというのです。
「そのことを見てもですね」
「西はおうどんです」
 日本では、というのです。
「東はお蕎麦で」
「文化圏の様なものですか」
「まさに文化圏です」
 それに他ならないというのです。
「うどん文化圏、蕎麦文化圏とです」
「そうした言葉もあるのですか」
「そうです、日本では」
「それはまた面白いですね」
「イギリスではそうしたことは」
「そうしたことはないですね」 
 先生はイギリスのことを思いだしながら加藤さんに答えました。
「特に」
「そうですか」
「麺類、ヌードルはイギリスにも入っています」
「それにパスタもですね」
「あることはあるのですが」
 それでもだというのです。
「そこまで、麺類を主に何を食べるかで文化圏があるということは」
「イギリスではありませんね」
「そうです、ありません」
 こう加藤さんにお話します。
「そうしたことは」
「イギリスは四つの地域に分かれていますが」
 ここで加藤さんが挙げる地域はといいますと。
「イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドですね」
「その四つです」
 かつてはアイルランド全てがイギリスという国に入っていました。
「イギリスは」
「そうですね」
「しかしそうした文化圏というものは」
「ないのですね」
「まして日本人の場合は同じ民族の間で、ですよね」
「そうですね、我が国にはアイヌ民族もいますし在日韓国人もいますが」
 それでもだとです、加藤さんは先生に答えました。
「アイヌ民族は北海道ですから」
「そこが違いますね」
「沖縄の人も違う民族だと言われることがありますが」
 沖縄の人を琉球民族とするか大和民族とするかで議論があることもです、加藤さんは先生にこれとなくお話しました。
「ですが基本沖縄で」
「日本本土のお話ではないですね」
「はい、在日の人はまた別で」
「あくまで同じ民族の間でのお話ですね」
 そのうどん、蕎麦の文化圏のお話はというのです。
「そうですね」
「そうです、大和民族の間のお話です」
「そうしたことはです」
「イギリスではないですね」
「イギリスは四つの民族から成ります」
 先生はイギリスについてこう言いました。
「イングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズの」
「四つの地域の四つの民族ですね」
「その通りです、かつては四つの国家でしたし」
「そちらの国旗にも表されている」
「その通りです」
 お蕎麦を天麩羅と一緒に食べつつです、先生は明るいお顔で加藤さんにお話するのでした。
「ユニオンジャックは合わさった国旗です」
「イングランド、スコットランド、アイスランドが」
「ウェールズは入っていませんが」
 それでもだというのです。
「それぞれの地域が合わさったものがです」
「お国の国旗ですね」
「その国旗にも出ている様に」
「イギリスは四つの民族から成り立っていますね」
「もっと言えばです」
 先生は加藤さんにイギリスの民族事情についてさらにお話します。
「貴族は民族が違います」
「平民とはですね」
「その辺りがまた複雑でして」
「欧州では貴族と平民はですね」
「民族が違います」
「婚姻もしませんし」
「はい、混血も殆どないですし」
 このお話にもなるのでした。
「階級によって民族が違うのです」
「地域だけでなく」
「スペインでも今の王家は」
「ブルボン家ですね」
「その前はハプルブルク家でした」
「ハプスブルク家はスイスにルーツがありましたね」 
 加藤さんもお蕎麦を食べつつ先生に応えます、二人の周りにいる動物達もお蕎麦は誰もが食べられるので楽しんでいます。
「ゲルマン系と言っていいですね」
「そうなりますね」
「そしてブルボン家はフランスの王家ですから」
「やはりスペインの平民とはです」
「民族が違いますね」
「そうなります」
 まさにそうだというのです。
「それはイギリスでもです」
「階級によっても民族が違う」
「日本でも公家や武士がいましたが」
「民族は同じです」
 加藤さんは先生にこのことははっきりと言いました。
「大和民族です」
「そうですね、階級といいますか身分は違っても」
「民族が同じであることは変わらないです」
「そこが日本とイギリスでは本当に違いますね」
「大きな違いですね」
「その通りですね」
 しみじみとして言う先生でした。
「イギリスについて考えるうえでこのことは」
「かなり重要ですね」
「そして日本についても」
「はい、このことはです」
「重要ですね」
 日本の民族事情も、というのです。
「まことに」
「はい、そしてです」
「その同じ民族の中でもですね」
「文化圏があります」
 日本においてはとお話する加藤さんでした。
「ドイツと同じでしょうか」
「ドイツですか」
「いえ、ドイツは」
「はい、あれで実は」
 先生は今度はドイツについて加藤さんにお話しました。
「多民族的です」
「同じゲルマンであっても」
「東のプロイセンはプロイセンで」
「東方のスラブ民族と混血していますね」
「そして南部のバイエルン辺りもです」
 かつてはバイエルンも国でした。
「フランスの影響があり北部もです」
「ベネルクスやデンマークと」
「今は別の国ですがオーストリアはさらにです」
「混血していますね」
「同じドイツ、神聖ローマ帝国といいましても」
「混血していますね」
「私はそう見ています」
 先生は学者としてお話するのでした。
「ですから日本の様に同じ民族の中での文化圏かといいますと」
「違いますか」
「ドイツもまた」
「そうなのですか」
「ドイツには私も何度か行っています」
 先生は知的な微笑みで先生にお話します。
「それでそのことを感じました」
「ドイツ人もまた混血していると」
「そのことを」
「左様ですか、ですが我が国も」
「日本もですね」
「混血しています」
 加藤さんは日本人もというのでした。
「縄文人と弥生人が」
「そして渡来人ですね」
「その混血民族が日本人です」
「つまり大和民族ですね」
「そうです」
 その通りだというのでした。
「日本人もまた混血しています」
「そこは欧州と同じですね」
「そうなりますね、もっとも混血していない民族は」
「ないですね」
 先生はこのことについても微笑んで述べました。
「それは」
「はい、ありませんね」
「どの民族も混血していますね」
「複数の血が入っていて」
「イギリスにしても日本にしても」
「そこは同じですね」
「はい、本当に」
 先生の笑顔はとても優しい感じです、その笑顔で加藤さんとお話するのでした。
「人が好き同士であれば」
「民族が違ってもですね」
「結婚すればいいです」
「では先生も」
 ここでとても明るい笑顔でこう言った加藤さんでした。
「日本において」
「そこそのお話ですか」
「先生位の方ですと」
「結婚相手がですか」
「絶対にいますよ」
「そのことはです」
「今はですか」
「よく妹にも言われます」
 もっと言えばトミーにも王子にもです、先生の結婚のお話はとにかく色々な人から言われていることです。
「誰かいい人いないのかと」
「そうですか、やはり」
「何時までも独身というのはと」
「独身ですが先生は寂しくないですね」
「この子達がいますからね」
 今度は明るい顔で自分の周りを見回す先生でいsた、そこにいる動物達を。
「ですから」
「寂しくはないですね」
「はい」
 全く、というお顔での言葉でした。
「そう思ったことはありません」
「そうですか、ですが」
「人生の伴侶はですね」
「いるべきです」
 つまり結婚すべきだというのです。
「絶対に」
「それはわかっているのですが」
「もう絶滅しているかも知れませんが」
「絶滅とは」
「大和撫子は如何でしょうか」
「大和撫子ですか」
「ご存知でしょうか」
 加藤さんは微笑みつつ先生に尋ねます。
「そうした存在は」
「何でもおしとやかで気品があり家事は万能で」
「しかも慎みがある」
「その伝説の存在ですね」
「その大和撫子は如何でしょうか」
「本当に実在するのですか?」 
 その大和撫子の存在についてです、先生は真剣なお顔で加藤さんに尋ねました。本当に絶滅したと思われる動物について尋ねる様に。
「そうした方は」
「ですから絶滅しているかもとです」
「仰るのですね」
「私も実は見たことがありません」
 大和撫子、それはというのです。
「全く」
「左様ですか」
「おばさんはいます」 
 こちらの人はというのです。
「そうした人は。ですが」
「大和撫子はいませんか」
「そもそも存在したのかどうか」
「そのこともですね」
「わかりません」
 こう先生にお話するのでした。
「この目で見たこともないので」
「そうですか、では大和撫子は」
「はい、しかし」
「それでもですね」
「日本には性格のいい女性が多いので」
「家事も出来て」
「はい、中にはどうかという女性もいますが」
 それでもだというのです。
「いい女性も多いので」
「そうした人とですね」
「結婚されてはどうでしょうか」
 こう先生にお勧めするのでした。
「決して悪いことはありません」
「いい人と結婚すればですね」
「その通りです」
 まさにというのです。
「幸せになれますので」
「僕も何時かはと考えているのですが」
「それでもですか」
「縁がないですから」
「縁は自分で作るものとも言いますので」
「だからですか」
「そちらも努力されるべきです」
 是非にというのです。
「私はそう思います」
「左様ですか」
「まあじっくりとお考えになって下さい」
 やはりお蕎麦を食べつつ言う加藤さんでした。
「人生で最も重要なことなので」
「最も重要なことの一つですね」
「そうです、それだけに」
「結婚は人生の門出ですね」
「下手をすれば墓場にもなります」
 天国と地獄、その差があるというのです。そうしたことをお話しているうちにお二人は三杯目のお蕎麦も食べていました、ですが。
 加藤さんは楽しそうな笑顔で、です。こう先生に尋ねました。
「三杯食べましたが」
「はい、それでもですね」
「もう一杯いけますか?」
「いけると思います」
 にこりと笑ってです、先生は加藤さんに答えました。
「今のお腹の具合ですと」
「それでは」
「もう一杯ですね」
「はい、食べましょう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 加藤さんはお店の人にです、こう言いました。
「すいません、もう一杯ずつ貰えますか?」
「あれっ、四杯目ですか」
「はい、いいですか?」
「坊ちゃんは三杯ですよ」
「美味しいので」
「だからですか」
「はい、四杯目をです」  
 それをだというのです。
「頂けますか」
「わかりました、それじゃあ」
「はい、それではお願いします」
 こうしてです、先生と加藤さんは天麩羅そばをもう一杯ずつ頂くのでした。そのお蕎麦があまりに
も美味しいからです。
 その四杯目のお蕎麦を食べてです、加藤さんはすっかり満足しているお顔で先生に言いました。
「さて、これで」
「満腹になりましたね」
「それではですね」
「これからは」
「今日は何処に行かれたいですか?」
「そうですね、松山城は」
 先生はこのお城の名前を出しました。
「どうかと思っていますが」
「松山城ですか」
「松山の観光の中でも最も有名な場所の一つですね」
「はい、そうです」
 まさにそうだと言うのでした、加藤さんも。
「あのお城は」
「そうですね、では」
「松山城に行かれますか」
「そう考えていますが」
「ではですね」
「はい、これからは」
 こうお話してでした、そのうえで。
 お蕎麦をお腹一杯食べた先生達はお店を出て松山城に向かおうとしました、ですがここでまたジップが言いました。
「あれっ、また」
「そうだね」
 ジップに続いてです、ダブダブも言うのでした。
「この匂いは」
「まだだね」
「狸の匂いだね」
「相当に長く生きている」
 その匂いがです、またしたというのです。
「近くにいるね」
「そうだね」
「ううん、また匂うとなると」
 そのお話を聞いてこう言った先生でした。
「僕達に会おうとしているのかな」
「そうかもね」
「だからまた匂ってきたんじゃないかな」
 ジップとダブダブは先生にお顔を向けて言ってきました。
「その狸さんまだ出て来ていないけれどね」
「それでもね」
「用事があるのならね」
 それならとも言う先生でした。
「何なのかな」
「ううん、すぐに出て来ればいいのに」
「そうだよね」
 ジップとダブダブは首を傾げさせてこうお話をしました。
「先生の用があるのなら」
「これまでの人みたいにね」
「それがかえってね」
「気になるよね」
「まあその狸さんにも都合があるかも知れないね」 
 先生はこう二匹に言いました。
「だからね」
「まだ出て来ないのかな」
「そうなのかな」
「それかね」
 若しくはとです、先生は考えながらこんなことも言いました。
「たまたま擦れ違っているだけとかね」
「その古狸さんと」
「そうしているだけかな」
「そうかも知れないね」
 こうも考えたのです。
「若しかしてだけれど」
「色々なケースがあるから」
「だからだね」
「そう、気にはなっても」
 それでもだというのです。
「その狸さんに会ったその時に」
「そうだね」
「何かをすればいいね」
「そう、そういうことでね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 先生は加藤さんにです、笑顔で言いました。
「では次は」
「はい、松山城にですね」
「お願いします」
 案内をというのです。
「そうして下さい」
「わかりました、松山城も」
「あのお城もですね」
「とてもいい場所なので」
「では楽しみにさせてもらいます」
「そうして頂いて結構です」
「それでは」
 こうお話してでした、先生達は今度は松山城に向かうのでした。しかしその先生達がお店からお城に向かってからです。 
 お店にです、一人の飄々とした感じの小柄なお年寄りが来ました。お年寄りは色は地味ですが整った着物を着ています。
 その人がです、お店の中に入ってこう言うのでした。
「たぬきそばはあるかのう」
「あっ、今日もいらしたのですね」
「うむ、ではな」
「たぬきそばですね」
「やはり蕎麦はな」
「たぬきそばですね」
「わしはそれじゃ」
 お蕎麦ならというのです。
「だからな」
「はい、いつもの一杯を」
「頼むぞ」
「わかりました」
 こうしてです、お年寄りは二人用の席に座ってなのでした。
 たぬきそばを食べます、そのうえでお店の人に言いました。
「先程お店に面白い人が来ておったな」
「動物を一杯連れた外国の方ですね」
「うむ、その人じゃが」
「天麩羅そばを四杯召し上がっていましたよ」
「ほほう、四杯か」
「三杯ではなく」
「それはまた大層召し上がられたのう」
 お年寄りはそのお話を聞いて楽しげに笑いました。
「この店の蕎麦は美味いからのう」
「長老もいつも来て下さいますし」
「思えば金之助先生ともここではじめて会ったな」
「あの人が最初に三杯召し上がられましたね」
「その話は聞いておるな」
「はい、代々受け継がれているお話です」
 このお店にというのです。
「ですから」
「そうじゃな、しかしあの先生にじゃ」
「何かあるのですか?」
「またお話を聞こう」
 こう言ってなのでした、お年寄りは今はたぬきそばを食べるのでした。そのうえでお年寄りだけのことを考えていました。
 そして食べ終わってからです、立ってお金を置いてからお店の人に言いました。
「また明日な」
「はい、有り難うございました」
「さてな」
 お金を置いてからでした、、お年寄りはといいますと。
 先生達が去った方を見てです、こう言うのでした。
「では行こうかのう」
「どちらにですか」
「ほっほっほ、用事をしに行くのじゃ」
 お店の人に笑って言葉を返しました。
「それだけじゃ」
「そうですか、では」
 お店の人はお年寄りを見送りました、そうしてなのでした。
 この人もお店を後にしました、これが一つの出会いの前にあったことです。



あちこちを回って楽しんでいるみたいだな。
美姫 「みたいね」
特に問題もないみたいだし。
美姫 「そうね。でも、そろそろ何かありそうな感じよね」
だな。匂いや先生たちが去った後のお店なんかからするとな。
美姫 「一体、ここでは何があるのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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