『ドリトル先生と学園の動物達』




                   第二幕  八条学園の動物園

 先生はお家に帰ってそのうえで日笠さんに言われたことをトミーと動物達にお話しました、それは晩御飯の時でした。
 晩御飯のおかずのゴーヤチャンプル自分が作ったそれを食べながらです、トミーは玉葱と人参のお味噌汁を飲みながらお話してくれた先生にこう言いました。
「虫歯の治療ですか」
「動物達のね」
「先生にとっては慣れたお仕事ですよね」
「うん、動物達を診ることはね」
 虫歯にしてもそうです。
「昔からよくやってきたから」
「だからですね」
「うん、すぐにね」
「引き受けられることを決められたんですね」
「そうしたよ。駄目だったかな」
「いいと思いますよ」
 ほうれん草のバター炒めも食べつつ言うトミーでした。
「動物園の動物達にとって」
「そうだね、それじゃあね」
「明日からですよね」
「早速働かせてもらうよ」
 先生はトミーにこうも言いました。
「明日からね」
「わかりました、じゃあ僕も」
「トミーもだね」
「時間がある時になりますけれど」
 トミーも学生さんとして講義に出なければなりません、そちらをおろそかにしては本末転倒になるからです。
「それでも」
「そう言ってくれるんだね」
「言うだけでなく」
「実際に協力してくれるんだ」
「そうさせてもらっていいですか?」
「うん、是非にね」
 先生はちゃぶ台の向こう側に座っているトミーに答えました。
「お願いするよ」
「それでは」
「じゃあ僕達も」
「及ばずながらね」
 動物達もここで先生に言ってきました。
「協力させてもらうよ」
「いつも通りね」
「皆もだね」
「そうだよ、先生が働くのならね」
「そうさせてもらうよ」
 まさにいつも通りだというのです。
「それじゃあね」
「明日から動物園に行かせてもらうよ」
「先生について行って」
「そうしてね」
「これで百人力だよ」
 トミーと動物達が協力してくれる、だからだと言う先生でした。
「有難いよ、じゃあ頑張ろうか」
「それじゃあね、先生」
 ジップが先生に笑顔で言ってきました。
「今回も一緒に頑張ろうね」
「それではね」
「しかし。虫歯ねえ」
 チーチーは動物園そして水族館で問題になっているそれのことについて首を傾げさせながら言うのでした。
「確かになることはなるけれど」
「それでもだね」
「そんなに虫歯になっている動物が多いんだ」
「そうみたいだよ」
 先生はチーチーにも答えました。
「どうやらね」
「それはよくないね、歯はしっかりしないと」
 大事にしないと、というのです。
「駄目なのに」
「歯は治らないからね」
 こう言ったのはホワイティです。
「僕なんてそれこそね」
「いつも何か齧らないとね」
 トミーがホワイティに答えます。
「歯が伸びてね」
「そう、大変なことになるから」
「だから歯はね」
「大事にしているよ」
 齧ることによってです。
「いつもね」
「そうだね、ホワイティも歯は大事にしてるよね」
「歯が駄目だと食べても美味しくないっていうね」
 ガブガブが言うのはこのことでした。
「だから僕だってね」
「そうだね、ガブガブも歯を大事にしてるよね」
 トミーはガブガブにも応えました、見ればガブガブは白い御飯をとても美味しそうに勢いよく食べています。
「いいことだよ」
「先生からよく言われてるからね」
「虫歯になったらね」
「うん、大変だってね」
 だからだというのです。
「僕もこのことだけはしっかりしてるよ」
「そうそう、歯は噛むからね」
 お庭から老馬も言ってきました。
「大事にしないと」
「困るのは自分だから」
「そうしたことはね」
 オシツオサレツもお庭で老馬に続きます。
「しっかりしないとね」
「絶対に」
「そうなんだけれどね」 
 先生は皆に応えながら言うのでした。
「なってしまったらね」
「やっぱりだよね」
「治療しないと」
「そう、原因を調べることと一緒にね」
 忘れてはならないというのです。
「だから僕は明日から頑張るよ」
「まずはどの動物を診ますか?」
 トミーは今度は治療するその動物のことを尋ねました。
「そうしたことはまだ決まってないですか?」
「うん、何もね」
 そうだと返す先生でした。
「それがね」
「そうなんですか」
「まずはね」
 何につけてもというのです。
「それからだね」
「そこは動物園の方で決めてくれるでしょうか」
「そうじゃないかな、僕はまだ動物園のことはよく知らないしね」
「どんな動物がいるかはご存知ですよね」
「そうしたことはね」
 既に知っている先生でした。
「動物園にも何度か行っているから」
「だからですね」
「水族館にも行っているよ」
 先生は動物達皆の友達です、その先生がこうした場所に行かない筈がありません。だから動物園も水族館も何度も行っているのです。
「植物園にも行ったし」
「他の場所もですね」
「博物館、美術館にも行ったよ」
 学園の中にあるそうした場所にもです。
「学園の中は一通り回ってるよ」
「そして動物園や水族館は」
「特に動物園だね」
 その中でも、というのです。
「一番よく行ってるね」
「そこはやっぱり先生ですね」
「そう、だからね」
「動物園にどうした動物がいるかは」
「知っているつもりだよ」
 そうだというのです。
「大体ね」
「そうですね、それじゃあ」
「動物の歯のこともね」
 どんな動物がいるかがわかればです、先生ならです。
「わかるよ」
「動物それぞれで歯が違いますからね」
「それが一番の問題だけれどね」
 ジップも言うのでした。
「犬には犬の歯があるからね」
「そうだね」
「犬の歯は肉を食べる為のものだよ」
 ジップは先生にこのことをお話するのでした。
「狼や狐、狸もそうだけれどね」
「狐や狸は雑食だけれどね」 
 こう言って来たのはトートーでした、トートー達鳥は歯がないので今のお話は基本的に聞いているだけです。
「基本はそうだね」
「うん、だから僕達イヌ科の歯はね」
「尖っていて牙があるね」
「そうだよ、ネコ科もね」
「僕達の場合はね」
 鼠のホワイティが言うには。
「前歯が出ているんだよ」
「ホワイティ達の歯はそうね」
 ホワイティにはポリネシアが応えます。
「そこがどんどん伸びるのよね」
「そうなんだ、僕達は前歯が一番重要だよ」
「他の歯はあってもね」
「前歯が一番なんだ」
 そうだというのです。
「そうなんだよね」
「そうよね」
「そう、僕達の歯はそうだよ」
 げっ歯類全体がというのです。
「そこが違うんだ」
「僕達の歯は先生やトミーと同じかな」
 チーチーも自分の歯について言います。
「猿はね」
「人間は猿の仲間よね」
 ダブダブが応えます。
「だからよね」
「そう、果物とかもよく食べるしね」
「牙があってもね」
「ジップ達みたいにはなっていないよ」
 牙が大きくなってはいないというのです。
「別にね」
「そうなっているわね」
「ゴリラさん達なんかお野菜や果物しか食べないから」
 ゴリラは完全なベジタリアンです、お肉は絶対に食べないのです。そのせいか彼等はとても大人しいのです。
「だからね」
「猿の歯は先生達と似てるのね」
「そうなるよ」
 チーチーはダブダブに応えるのでした。 
 そして、でした。ガブガブも自分の歯について言いました。
「僕達の歯もね」
「豚だけじゃなくてね」
「猪もだよね」
「そう、猪さん達もなんだよ」
 ガブガブはチープサイドの夫婦、それに子供達に言葉を返します。
「何でも食べるからね」
「鋭くなjくてもね」
「しっかりしてるわね」
「猪さん達には牙もあるし」
「前歯も強くて」
「豚の歯って案外強いんだよ」
 何処か誇らしげに言うガブガブでした。
「だから噛んだら痛いよ」
「わかってるよ、ガブガブの隠れた武器だよね」
「それがよね」
「普段はやんちゃでも」
「怒ると怖いって」
「僕怒らないけれどね」
 それでもというのです。
「けれど歯には自身があるよ」
「そしてわし等の歯は」
「そう、草を噛むとね」
「どんな歯になるのか」
 最後は老馬とオシツオサレツでした。
「草、硬いものでも噛んで潰す」
「最初は切ってね」
「そうしてじっくりと噛むから」
「かなり強いのじゃ」
「自分で言うのも何だけれどね」
「僕達の歯は強いよ」
 二頭が三つのお口で言います、オシツオサレツのその二つの前後の頭のそれぞれのお口も喋っています。
「それがわし等の歯じゃ」
「草食動物のね」
「それだよ」
「うん、皆の歯のことはわかっているつもりだよ」
 先生も応えます。
「僕にしてもね」
「そうだね、それじゃあね」
「動物園に行っても大丈夫だね」
「動物の皆の歯のことがわかっているから」
「だからね」
「一通り頭の中に入っているつもりだから」
 こうも言う先生でした。
「だからね」
「それじゃあ」
「今回も」
「絶対に大丈夫とか。慢心はしないけれど」
 それでもだというのです。
「知識はあるつもりだからね」
「そのことは大きいよね」
「皆の歯の仕組みがわかっているってことは」
「うん、皆の歯も診ているしね」
 今ここにいる動物の皆のそれもです。
「だからね」
「僕達も助けさせてもらうけれど」
「先生、動物園の皆の歯もね」
「治療してあげてね」
「そうして助けてあげてね」
「是非そうさせてもらうからね」
 動物達からもお願いするのでした、こうして先生は動物園や水族館の動物達の歯を診ることになりました。
 その先生が大学に出勤して研究室に入りますと王子が執事さんと一緒に研究室にやって来ました、そうして動物園のお話を聞いて言いました。
「先生らしいお仕事だね」
「動物達を助けることがだね」
「うん、先生らしいよ」
 こう先生に言うのでした。
「本当にね」
「そうだね、僕もそう思うし」
「トミー達にも言われたんだね」
「頑張ってくれってね」
「それでトミーと皆もだよね」
「手伝ってくれるよ」
 そのお仕事をというのです。
「そのことを約束してくれたよ」
「じゃあそろそろ来るかな」
「いや、今日はこれから講義があってね」
「それでその後だね」
「検診は十一時からだから」
「その時にだね」
「うん、皆来るよ」
 トミーも皆もというのです。
「そう時間を決めたよ」
「そうなんだね、じゃあ午前はその検診の後で御飯を食べて」
「午後にまた講義があるからね」
「それが終わってまた」
「うん、検診だよ」
 そうなっているというのです。
「暫く続けるよ」
「わかったよ、じゃあ僕もね」
「王子もだね」
「僕はそっちの知識は疎いけれど」
 動物の歯のことはです。
「それでも出来ることがある筈だから」
「王子も手伝ってくれるんだ」
「そうさせてもらうよ」
 笑顔で先生に言うのでした。
「だから一緒に頑張ろうね」
「それは有難いね。ただね」
「ただ?」
「いや、王子は随分と身体を動かすね」
 肉体労働をするというのです。
「スポーツ以外でも汗をかくね」
「王子としては変わってるっていうのかな」
「うん、頭脳労働だけじゃないんだね」
「僕はそうだよ」
 にこりと笑ってです、王子は先生にこう答えました。
「僕の国は小さいしね」
「そのこともあってだね」
「王子でも自分から動かないと」
 身体を動かして働いて汗をかかないと、というのです。
「やっていけないからね」
「王子は先生に会われて変わられましたが」
 執事さんも先生に温厚な笑顔でお話します。
「日本に来られてです」
「さらに変わりましたね」
「左様です、そうなられました」
「日本にそうなる要素があるんだね」
「日本では会社の社長さんも掃除するじゃない」
 このことも言う王子でした。
「自分の靴は自分で磨いてね」
「そうそう、そこが違うね」
 先生も王子のそのお話に応えます。
「日本はね」
「立場のある人も自分でそうしたことをするから」
「王子もなんだ」
「自分で進んでする様になったんだ」
「お屋敷のお掃除もされています」
 自分からそうしているというのです。
「ご自身のお部屋も」
「気付いたらそうしているよ」
「お屋敷に使用人の人達がいてもだね」
「うん、出来る限りね」
「自分のことは自分でだね」
「しているよ」
 先生ににこりとしてお話するのでした。
「そうしてるよ」
「そこが本当に変わったね」
「自分のことは自分で」
 王子は笑顔で言いました。
「そうしているからね、だからね」
「今回のこともなんだ」
「うん、手伝わせてね」
 身体を動かすからというのです。
「出来ることなら何でもするから」
「わかったよ、じゃあ頼むよ」
「そういうことでね」
 こう笑顔でお話するのでした。
 そしてまず講義に出てでした、先生はその足で動物園に向かいました。すると日笠さんが出迎えてくれました。
「それでは」
「はい、今からですね」
「宜しくお願いします」
 先生に深々と頭を下げて言うのでした。
「動物達の検診を」
「歯をですね」
「そうです、昨日お話した通りに」
「わかりました、それでは」
 先生も頭を下げて応えます、そうしてでした。 
 先生はまずは爬虫類のコーナーに案内してもらいました、そうして鰐を見ました。鰐はナイルワニでした。
 鰐は一匹ではなく何匹も鰐のコーナーである濠の中にいます、先生はそこの中に入ろうとしますが日笠さんは驚いて先生に言いました。
「あの、濠の中は」
「入るとですね」
「危ないですよ」 
 鰐だからです、言うまでもなく。
「襲われでもしたら」
「いえ、大丈夫です」
 先生はその日笠さんに笑顔で応えます。
「僕は彼等の言葉がわかりますので」
「何を考えているかわかるからですか」
「今の彼等は多くは落ち着いていて」
 そして、というのです。
「何匹かは困っています」
「虫歯で、ですね」
「はい、ですから今の彼等はです」
「近寄ってもですか」
「大丈夫ですよ」
 穏やかな微笑みで日笠さんに言うのでした。
「ご心配なく」
「それでは」
 いささか不安ですがそれでもでした、先生が仰るのならです。
 ここは先生にお任せすることにしました、とはいってもいざという時は救出出来る様に手筈は整えていました。
 先生は鰐達に怯えることなく彼等の中に入りました、そうして彼等の言葉で穏やかにこう言ったのでした。
「歯を診に来たよ」
「僕達の歯を?」
「診る為に来てくれたんだ」
「そうだよ、見たところ何匹かはね」
 鰐達のうちにです。
「本当に困っているね」
「痛いんだ」
 鰐のうちの一匹が困った顔で先生に答えました。
「実際にね」
「そうだろうね、それじゃあね」
「診てくれるんだね、先生が」
「おや、僕のことを知ってるのかな」
「この学園にいる生きものは皆先生のことを知ってるよ」
 鰐はこう先生に答えました。
「誰だってね」
「そうだったんだ」
「この動物園にも何回か来てくれているしね」
 鰐達も見ていたのです、動物園を楽しく見て回っている先生を。
「先生は僕達の言葉がわかるよね」
「そうだよ、だから君達とも今こうして話が出来るんだ」
「そうした人だからね」
「僕は有名なんだ」
「そうなんだ、皆知ってるよ」
「それは有り難いね」
 皆に名前と顔を知ってもらっている、そのことがと言う先生でした。
「検診もしやすいよ」
「皆先生のことを知っていてね」
 そして、というのです。
「どんな人かも知ってるからね」
「とてもいい人だってね」
「優しくて公平でね」
「僕達のこともよく考えてくれている」
「そうした人だってね」
 先生のそうした人柄が動物の皆にも知れ渡っているというのです。
「だからね」
「先生に診てもらえるのならね」
「僕達にしても有り難いよ」
「是非診て」
「そうして僕達の虫歯を治してね」
「わかったよ、それじゃあね」 
 先生も鰐達ににこりと笑って応えます、そうしてでした。 
 先生は皆の歯を診ました、するとです。
 実際に何匹かは虫歯になっていました、中にはかなり悪化しているものもあります。それで先生はその酷い虫歯の鰐にこう言いました。
「この歯はもうね」
「もうって?」
「抜くしかないね」
 それしか方法がないというのです。
「残念だけれどね」
「そうなんだ」
「まずは麻酔を打ってね」
 お口にです。
「そうして痛まない様にしてからね」
「僕の歯を抜くんだね」
「抜いてその後はね」
 それで終わりではなく、というのです。
「代わりの歯を入れるよ」
「代わりの?」
「そう、差し歯をね」
 それを抜いた歯の代わりに入れるというのです。
「そうすれば元の通りに噛めるからね」
「そうしてくれるんだ」
「そうだよ、それにしても実際にね」
 鰐達の歯の検診を終えてあらためてです、先生は首を傾げさせながらそのうえでこう言ったのでした。
「虫歯の鰐が多いね」
「うん、最近ね」
「妙に多いよ」
「僕達もそう思ってるよ」
「実際にね」
 鰐達もこう先生に答えます。
「どういう訳かわからないけれど」
「だから皆困ってるんだ」
「虫歯って大変だよ」
「痛いからね」
「いつも痛いからよく眠れないし」
「しかも食べることも辛くなるから」
 こうした事情があって、というのです。
「僕達先生にね」
「治してもらいたいんだ」
「それじゃあ治療もするからね」
 ちゃんとそれも忘れていない先生でした。
「麻酔もあるから安心してね」
「うん、じゃあ頼むよ」
「お願いするよ」
 こうしてでした、先生は鰐達の歯の治療もするのでした。そうしてその検診と治療が終わってからでした。
 先生はイリエワニのコーナーを後にして他の鰐達のところも回りました、歯のある爬虫類は全て診ました。
 それが終わってからです、先生は日笠さんにお話しました。
「やはり不自然ですね」
「虫歯の動物がですね」
「多過ぎますね」
 こうお話するのでした。
「どうにも」
「そうですね、それで手が足りなくて」
 先生をお呼びしたこともお話する日笠さんでした。
「お願いしましたし」
「そうですね」
「とにかくです」
 あらためて言う日笠さんでした。
「最近妙に多くて」
「困ったことに」
「原因も調べていますが」
「そうそう、鰐達の歯を診ますと」
「虫歯についてですね」
「お口の中、歯のところに残っていた食べカスが」
 それがです、どういったものだったかというのです。
「おかしかったです」
「と、いいますと」
「鰐は肉食ですね」
 このことからお話する先生でした。
「そうですね」
「はい、ですから餌も肉です」
「そうですね、しかしなのです」
 その食べカスの中にというのです。
「おかしなものがありまして」
「おかしいとは」
「お菓子がありました」
「お菓子、ですか」
「そうです、それもかなり甘い」
 只のお菓子ではなく、というのです。
「日本にはない様なお菓子です」
「八条動物園では動物達に餌をやらない様にとです」
「お願いしていますね」
「はい、餌は充分にありますし」
 それにと言う日笠さんでした。
「そうしたものを食べますと」
「今回の様なことがありますね」
「糖分は歯にとってよくありません」
 このことは動物でも同じです。
「ですから」
「そうですね、しかし」
「それでもなのですね」
「お菓子が残っていました」
「そうでしたか」
「これまでこのことはわからなかったのでしょうか」
「いえ、餌をやらないで欲しいとお願いしているのですが」
 見れば動物園の中には餌をあげないで下さいと書かれている立て看板があちこちにあります、それも日本語だけでなく英語や中国語、スペイン語等で書かれています。
「しかし」
「それでもですね」
「やはりマナーを守らない人はいます」
 どうしてもとです、困ったお顔で言う日笠さんでした。
「それでどうしても虫歯もあり今回もその報告がありましたが」
「それでもですね」
「はい、日本にはない様な」
「そこまで甘いお菓子ですか」
「日本のお菓子の甘さは確かに甘いですが」
 それでもというのです。
「国によってはそれよりも遥かに甘いお菓子があるのです」
「そういえばそうですね」
 日笠さんも先生のお話にはっと気付いて答えました。
「私も他の国に出張で行きますが」
「そこでお菓子を食べて」
「その甘さに驚いたことがあります」
 このことをです、日笠さんは先生にお話するのでした。
「アメリカ等でも」
「アメリカのお菓子は日本以上に甘いですからね」
「チョコレートもアイスクリームも」
「本当にそうですね」
「オーストリアのザッハトルテ等も」
 これもなのでした。
「驚く位甘かったです」
「甘いということはそれだけ糖分が多いということです」
「では今回は」
「おそらくですが」
「誰かが外国のお菓子を動物達にあげているのですか」
「その結果だと思います」
 動物達の虫歯が異常に多くなっているというのです。
「鰐達を診た結果ですが」
「左様ですか」
「しかし。マナーの悪いお客さんにしても」
 先生は悲しいお顔になって言うのでした。
「こうしたことは」
「はい、どうしてもです」
「起きるのですね」
 動物達にお菓子等をあげてその結果彼等が虫歯になることがです。
「何処でも」
「そうですね、こうしたこともマナーですが」
「そのマナーを守れない人がですね」
「います」
「そうなのですね」
「ですから私達も注意しているのですが」 
 動物園の中の所々にある看板を見てもわかることです。
「しかし」
「それでもですね」
「起こってしまっています」
 そうしたことが、というのです。
「残念なことに」
「そして今回は」
「日本のお菓子ではなく」
「しかも範囲が広いのですよね」
「そうです、虫歯になっている動物の数も種類も」
 普通に起こっている時よりも遥かにというのです。
「そうなっています」
「原因究明もしなければなりませんね」
「本当にそうですね」
「はい、それでなのですが」
 ここまでお話してです、先生は日笠さんにあらためて言いました。
「検診、治療の助手に僕の家族に来てもらいたいのですが」
「イギリスからの留学生の人とですね」
「はい、そして動物達です」
 彼等も来てくれることもお話するのでした。
「彼等にも手伝ってもらっていいですね」
「はい、そうしたことは先生にお任せします」
 これが日笠さんの返答でした。
「全て」
「わかりました、それでは」
「はい、それでは」
 こうしてでした、先生は日笠さんからもトミー達の助っ人を認めてもらいました。そうして実際にでした。
 トミー達が来てです、彼等の助けも借りて動物達の検診と治療それに原因究明にあたりました。鰐の次はです。
 キリン達を診ました、先生はキリン達に何を食べたのか聞きました。
「餌の草とね」
「あとお菓子だよね」
「そうそう、異様に甘いね」
「あのお菓子もね」
 食べたというのです。
「何か信じられない位に甘かったけれど」
「あんな甘いお菓子はじめてだったわ」
「甘過ぎて困る位に」
「凄い甘さだったわね」
「甘過ぎて困るって」
 ガブガブがそう聞いて言うのでした。
「僕ちょっと想像出来ないけれど」
「それが凄いのよ」
「無茶苦茶な甘さなのよ」
「それこそ一口食べてびっくりする位にね」
「僕達も食べてみてね」
「本当に驚いたのよ」
 そして食べてです。
「お砂糖とかが多過ぎたせいか」
「虫歯になったわ」
「そうそう、そのせいよね」
「先生に言われてわかったわ」
「うん、君達が虫歯になった原因はね」
 それは何かとです、先生もキリン達にお話しました。
「お菓子のせいだね、鰐君達と一緒で」
「ああ、鰐さん達もなの」
「虫歯になってるのね」
「僕達みたいに」
「そうなの」
「うん、中にはかなり酷い虫歯の鰐もいたよ」
 見ればキリン達も同じです、中にはそれこそもう抜くしかない位虫歯が酷くなっているキリンもいて実際に先生はその歯を抜いています。
「これは糖分のせいだね」
「ああ、やっぱり」
「やっぱりそうなのね」
「あのお菓子のせいなのね」
「そうなのね」
「それでそのお菓子だけれど」
 先生はキリン達にさらに尋ねました。
「どんなお菓子なのかな」
「ええと、それは」
「どんなのだったかな」
「僕ちょっとわからなかったよ」
「私もよ」
「どんな感じだったかね」
「どうも」
 キリン達は先生のこの質問には要領を得ない返事でした。
「覚えていないっていうか」
「何か色々種類なかった?」
「そうよね、ちょっとね」
「どれがどうとかは」
「あれっ、一種類じゃないんだ」
 ジップはキリン達のお話を聞いてその目を瞬かせました。
「お菓子って」
「そうだったと思うけれど」
「その辺りは曖昧っていうか」
「お菓子を放り込んで来る人は一人じゃないし」
「果物もそうだけれど」
 それで彼等が食べるお菓子も一つだけではないのです。
「放り込まれるお菓子の中でね」
「物凄く甘いものがあったっていうだけで」
「それが何かまではね」
「どうしたお菓子までかはね」
「僕達もね」
「覚えていないわ」
 そうだというのです。
「どうにもね」
「先生達には悪いけれど」
「ううん、そうなんだね」
 そのお話を聞いてでした、先生も首を傾げさせました。
 そうしてです、キリン達の歯の検診と治療を終えて彼等にこの場のお別れを告げてからです。先生は一緒に歩いている皆に言いました。
「今日の検診はこれで終わりだけれど」
「お菓子が原因なのはわかりましたね」
 隣を歩いているトミーが先生に言ってきました。
「そのことは」
「それもかなり甘いね」
「けれど食べカスは」
「そのお菓子がね」
 それが、といいますと。
「一つじゃないからね」
「鰐やキリンの歯にですね」
「何種類かあってね」
「その中の一つがですね」
「物凄い糖分が入っているんだ」
 そうなっているというのです。
「チョコレートか、ケーキのスポンジか」
「そこまではですか」
「何かはっきりしないね」
 今のところは、というのです。
「どうにも」
「そうなんですか」
「他のお菓子もあってね」
 困ったことにです。
「お菓子をあげている人は一人じゃないから」
「そういえばこの動物園って」
 トートーがその大きな目で周りを見回しながら言いました、先生の左肩にとまったうえで。
「もうすぐ閉園時間だけれど」
「まだ人が多いね」
「お客さんの多い動物園なんだね」
「この学園の動物園や水族館は観光スポットでもあるんだ」
 ただ学園の施設であるだけではないというのです。
「沢山の動物達がいるからね」
「大勢の人達が来ているんだ」
「コアラやパンダもいるからね」
 そうした動物達もいるのです。
「珍しい動物も多いから」
「人気があるんだ」
「そうなんだ」
 この学園の動物園はというのです。
「水族館も植物園もだよ」
「博物館、美術館もいつも人が結構いますしね」
 トミーも言います。
「だからですね」
「そう、観光客の人も多いから」
「この動物園も人が多いんですね」
「そうだよ、こうしてね」
「そういうことですか」
「うん、生徒さん達はかなり安く入園できるし」
 八条学園の学生さん達はサービスを受けてです。
「そのこともあるからね」
「あっ、そういえば」
 チーチーも周りの人達を見てあることに気付きました。
「カップルも多いね」
「そうね、学生さん質のね」
 ダブダブもチーチーに応えます。
「楽しそうにデートしてるわね」
「ここはデートスポットでもあるんだね」
「そうみたいね」
「ということはね」
「先生、いい?」
 ダブダブはチーチーと一緒に先生に言うのでした。
「早くお相手を見付けてね」
「こうした場所でデートしないとね」
「駄目よ、本当に私達がいてもね」
「先生も結婚しないといけないからね」
「何か最近しょちゅう言われるね」 
 結婚のことをとです、困ったお顔で返す先生でした。
「そのことは」
「だってね、先生はね」
「心配で見ていられないのよ」
 ホワイティとポリネシアも同じ意見でした、ホワイティはトミーの頭の上にいてポリネシアは先生のお顔の横を飛んでいます。
「特に結婚のことはね」
「何かとね」
「見ていて何時結婚出来るのか」
「気になって仕方ないのよ」
「僕達みたいにいい人を見付けて欲しいけれど」
「これがそうはいかないから」 
 チープサイドの夫婦は先生の上を飛びながら言いました、子供達も周りを飛んでいます。
「日本に来ても縁がなくて」
「どうなるのか」
「そう思うとね」
「言わざるを得ないのよ」
「まあとにかくね」
 老馬が言うことには、彼とジップ、ガブガブ、チーチーとオシツオサレツは歩いてトミーと一緒に先生の周りにいます。
「先生はお相手を探すのと一緒に」
「虫歯の治療と原因の究明だね」
「うん、誰がどうしてそうしたお菓子をあげているのか」
「それを確かめないとね」
「そんなに甘いお菓子を作っているとね」
「それこそだよね」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「匂いもするよね」
「それもかなりね」
「だからそこからね」
「調べていけないいんじゃないかな」
「それだと僕の出番かな」
 ここで名乗りを挙げたのはジップでした。
「匂いならね」
「犬だからね」
 ガブガブもジップに言います。
「やっぱりこうした時も頼りになるよ」
「だから任せてね」
「うん、その時は頼むよ」
 先生もそのジップに笑顔で応えます。
「是非ね」
「わかったよ先生、ところでね」
「ところで?」
「先生女の人と会ったの?」
 ジップは先生にこんなことを尋ねたのです。
「女の人の匂いがするよ」
「香水の?」
「あっ、香水の香りはしないよ」
 ジップはダブダブにすぐに返しました。
「けれどサラさんとはまた違うね」
「女の人の匂いがするのね」
「誰かと会ったのかな」
「日笠さんのことかな」
 先生はジップに言われて少し考えるお顔になってから答えました。
「獣医さんの」
「その人の匂いなんだ」
「いい人だよ」
 先生は温和な笑顔でこうも言いました。
「親切で礼儀正しくて」
「獣医さんねえ」
「そうだよ、明日皆も会うかもね」
「一体どんな人なのかな」
 首を傾げさせてこうも言ったジップでした、そして他の皆もです。 
 今は日笠さんについては何も知らないのでした、それは明日からでした。



確かに動物によって歯は異なるよな。
美姫 「そうよね。用途が少し違うからね」
でも、食べる上で重要な器官なのは間違いないけれど。
美姫 「だからこそ、皆困っているみたいね」
痛いのは嫌なのは共通という事だな。
美姫 「何とか原因はお菓子だという事までは分かったけれどね」
勝手にあげられていると、更に絞り込んだりは難しそうだよな。
美姫 「その予防もね」
まだまだ治療も続くだろうけれど、こっちの方も何か解決策を考えないとな。
美姫 「一体どうなるのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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