『ドリトル先生と二本尻尾の猫』




                          第一幕  化け猫

 自宅で、です、トミーが先生に食後の休憩時間の時にあることを尋ねました。
「あの、先生」
「何かな」
「はい、猫のことですけれど」
 こう先生に切り出すのでした。
「日本は何かイギリス以上に猫が多くないですか?」
「数?それとも種類が」
「両方ですね」
 そのとぢらもというのです。
「多い気がします」
「そうだね、それはね」
 先生はトミーのその話に応えて言います。
「確かにそうだね」
「そうですよね」
「日本人は犬も好きだけれどね」
 ここでジップを見て言う先生でした。
「猫も好きだね」
「そうですよね」
「うん、僕も猫はよく見るよ」
「日本でも」
「いつもね、見ない日はないね」
「そういえば八条学園でも」
 二人が通っているこの学園もです。
「動物園に猫のコーナーがあって」
「うん、かなり多いね」
「イギリスの猫もいますし」
 イギリス産の猫、それがというのです。
「マンクス猫がいたのは驚きました」
「ああ、あの猫だね」
「はい、尻尾がない」
 それがこのマンクス猫の特徴です。
「あの猫達を見て日本にもいるんだって思いました」
「うん、逆にイギリスだとね」
 先生達が生まれ育ってきたこの国はといいますと。
「日本の猫はね」
「少ないですね」
「うん、残念だけれどね」
「日本の猫も可愛いですね」
「うん、かなりね」
「イギリスにいないことが残念です」
「そうだね、ただね」
 ここで、です。こうしたことを言う先生でした。
「日本の猫は昔尻尾を切られていたんだよ」
「それはどうしてですか?」
「うん、日本の猫は化けるって言われててね」
「イギリスのケット=シーと同じですか?」
「少し違うね、妖怪と妖精は似たものでも」
 それでもというのです。
「日本の化ける猫とイギリスのそうした猫は違うよ」
「と、いいますと」
「イギリスの猫は化ける猫、ケット=シーはね」
 先生は微笑んでトミーにお話します。
「知っているね」
「はい、後ろ足で立って」
「そしてね」
「長靴を履いたりしますね」
「そうだね、けれど日本には長靴がなかったから」
「草履を履くんですか?」
 トミーは日本であるということから日本の昔の履きものをお話に出しました。
「あれを」
「いや、それがね」
「違うんですか」
「うん、履きものは履かなくて」 
 その足にというのです。
「尻尾が二本になるんだ」
「尻尾がですか」
「そう、そっちが二本になるんだ」
 そうなるというのです。
「長い間生きて妖力を備えてね」
「狐や狸みたいに」
「そう、狐も長い間生きていたら尻尾が増えるね」
 日本の狐のお話もする先生でした。
「彼等と同じ様にね」
「日本の猫もですか」
「うん、二本になるんだ」
 その尻尾がというのです。
「それが日本のそうした猫なんだ」
「猫の妖怪でした」
「猫又といってね、この猫又が」
 先生のお話は続きます。
「長い尻尾を持っているから二つに分かれると思われていて」
「それで、ですか」
「そう、尻尾が長い猫はその尻尾を切られていたんだ」
「そうだったんですか」
「猫達には災難だけれどね」
「そうですよね、尻尾が長いと切られるなんて」
 トミーも猫達の立場に立って考えてみて答えます。
「酷いですね」
「奥州みたいに魔女の使い魔と言われて殺されたりはしなかったけれど」
 それでも尻尾を切られていたのです、そうした理由で。
「そういう目に遭っていてね」
「日本の猫の尻尾は短かったんですね」
「そうだよ」
「成程。ただ」
「うん、尻尾が二本あるとだね」
「それは魔女の使い魔の猫そっくりですね」
 トミーは猫又の尻尾のお話を聞いてでした、すぐにこうした猫達のことを思い出しました。
「そうですね」
「うん、魔女の猫も尻尾が増えるからね」
「変身する度に」
「そこは同じだね」
「けれど猫又はですね」
「うん、長く生きて妖力を手に入れてね」
 そして、というのです。
「その妖力の証みたいに尻尾が増えたんだ」
「それじゃあ狐と同じで」
「長生きすればする程」
「妖力が高くなって」
 また言ったトミーでした。
「その都度」
「尻尾が増えていくのでは、っていうんだね」
「そうなりますか?」
「そうした話もあるね、千年生きた猫又はね」
 それこそ、というのです。
「尻尾が九本になるっていう話もあるね」
「九尾の狐みたいに」
「そうなるっていう話があるよ」
「日本人の考えでは尻尾が増えると」
「そう、妖力が強いっていう考えがあるから」
 先生は日本の妖怪のことにもかなり詳しくなっています。それだけ日本のことを深く広く勉強しているからです。
「猫もそうだよ」
「九尾の猫ですか」
「凄い猫だね」
「二本だけでも凄いですけれど」
「それが九本になるとね」
「凄いですよね」
「まあとにかく。日本の猫はね」
 その猫達はというのです。
「長く生きると妖力を持つと言われているよ」
「それじゃあ街の猫も」
「動物園の猫もね」
「そんな猫がいるでしょうか」
「そうかも知れないね」
 微笑んで、です。こう返した先生でした。
「ひょっとしたらだけれど」
「先生は日本に来られてから狐や狸と」
「うん、色々とね」
「頼みごとを受けて解決されていますね」
「イギリスにいた時はなかったよ」
 そうしたことがです。
「長生きした動物達と会ったりとかはね」
「本当に日本に来てからですね」
「そうだね、面白いね」
「イギリスにいた時はキャラバンとかサーカスとか開いたりして」
「月にも行ったね」
「そうしたことをしていましたけれど」
 日本に来てからはです。
「今は、ですね」
「うん、妖怪というかね」
「そうした動物達と一緒になることが多いですね」
「イギリスは妖精の国でね」
「日本は妖怪の国ですね」
「そう、そしてね」
 その妖怪達がというのです。
「彼等は人間と一緒に暮らしているんだ」
「人間は多くの人が知らなくても」
「そうだよ、僕達が会って来た人達みたいにね」
「人間の世界にいて」
「そして生きているんだ」
「そういう国なんですね、日本は」
「妖怪はいないっていうけれど」
 その実はというのです。
「違うんだよ」
「ちゃんといて、ですね」
「うん、一緒に生活しているんだ」
 それが日本という国だというのです。
「面白いね」
「はい、確かに」
「さて、また誰かに会うかな」
 先生は期待している様なお顔をトミーに見せました。
「近いうちに」
「先生は何でも引き寄せる人ですからね」
「何でも?」
「はい、人も動物も」
「そして妖怪も」
「出来事も」
 生きているものだけでなく、というのです。
「あらゆるものを引き寄せる人ですから」
「それで妖怪とも会って」
「そのお願いを適えているんですよ」
「ううん、そういえばね」
「そういえば?」
「いつも。子供の頃からね」
 先生はこれまでの一生を振り返ってです、トミーにお話するのでした。
「周りに人がいてくれたね」
「それは先生の人徳ですね」
「そして何でも引き寄せることもかな」
「はい、人徳ですよ」
 先生のそれだというのです。
「ですから」
「僕の周りに人がいたんだ」
「じゃあ先生は除け者になっている人が先生のところに来たらどうしますか?」
 こうした人は色々な理由で何処にもいます、イギリスにも日本にも。
「そうした人は」
「うん、そうした人が意地悪でもないと」
「そうでもない限りはですね」
「うん、僕はね」
 先生の性格、考え方からのお言葉です。
「友達にならせてもらうよ」
「分け隔てしないんですね」
「人はね、分け隔てされたら嫌だよね」
「はい」
 このことはトミーもです、そうしたことをされて嫌でない人もいないでしょう。だからトミーも先生の今の言葉がわかるのです。
「それは」
「そうだね、だからね」
「先生はそうしたことはされないんですね」
「しないよ」
 まさに絶対と答える先生でした。
「だから誰ともね」
「友達になって」
「そうしてきているんだ」
「そうなんですね」
「そうだよ、仲間外れは誰でも嫌だから」
「自分がやられて嫌なことは人にしない」
 トミーはこの言葉も言いました。
「先生のお考えはそうですね
「例え誰でもね」
「そしてそれが実行出来る先生だからこそ」
 トミーは先生のとても優しい笑顔のお顔を見つつ述べました。
「皆一緒にいるんですね」
「そうであれば嬉しいよ」
「というかね」
「そうそう、先生はね」
 ここで動物達が先生に言うのでした。
「公平な人だから」
「差別する様な人じゃないから」
「どんな人にも優しいし」
「僕達にもね」
 動物達にもです、先生は公平です。
「人間と同じ様に接してくれて」
「しかも理解してくれているし」
「そうした人だから」
「人間も動物も集まるんだよ」
「先生の周りにね」
「そうだよね、先生みたいな人だからこそ」
 トミーは動物達の言葉も思い出して言うのでした。
「皆集まるんだね」
「今は特にね」
「学校に行っても僕達や学生さん達に囲まれてて」
「商店街に行っても皆声をかけてくれて」
「先生皆の人気者だよ」
「ううん、街を歩いてね」
 先生は皆の言葉に少し照れ臭そうに笑って言うのでした。
「声をかけてもらって気恥ずかしくなるね」
「日本語も流暢だしね」
「日本の食べものにも親しんでて」
「今だって甚平さん着てるし」
「浴衣だって着るし」
「どれもまたいいんだよ」
 日本の食べものも服もというのです。
「最近は靴もいいと思うよ」
「ああ、日本の靴ね」
「日本製の」
「そう、この神戸は日本の靴の生産の中心地でね」
 先生は日本の産業のことも勉強しています、それで神戸が日本の靴の生産の中心地であることも知っているのです。
「一杯靴作っていて」
「いい靴も手に入りやすい」
「そういうことなんだ」
「うん、草履や下駄もね」
 こうしたものもというのです。
「いいのが手に入るよ」
「そういえば先生最近ね」
「下駄も履いてるよね」
「それもからからと音を立てて」
「楽しそうに履いてるね」
「下駄はいいものだよ」
 この日本の履きものもというのです。
「だからね」
「最近よく履いてるんだ」
「そうなのね」
「ううん、遂に履きものまでなんだ」
「日本に親しんできたんだ」
「あの時王子に誘われてよかったよ」
 そうして日本に来て、というのです。
「物凄く落ち着いて親しめているよ」
「そうした日本好きでもあるからですね」 
 先生が何故人気があるのか、トミーはこのことも理由だとわかりました。
「先生は人気があるんですね」
「そうなるのかな」
「そう思います、けれど妖怪の人達にも人気がある」
 それはといいますと。
「これはもうちょっとないですね」
「うん、妖怪は普段は人と接しないからね」
「そうですよ、凄い縁ですよ」
「面白い縁だね」
「はい、あと気になったことは」
 ここでトミーが言うことはといいますと。
「狐や狸はイヌ科ですね」
「僕の親戚だね」
 犬のジップが言って来ました。
「あの人達は」
「そうそう、どちらもね」
「日本じゃどっちの動物も人気があるね」
「イギリスでも狐は人気があるけれど」
「狸はね」
「いないせいもあるし」
 それでなのです。
「あまりね」
「そう、狐程人気がないよ」 
 トミーはこうジップにもお話します。
「日本はそこが違うよ」
「狐も狸もね」
「君のご親戚がね」
 その人達こそがというのです。
「一杯いて。化けてね」
「愛されてるよね、日本の人達に」
「そうだよ」
「そして犬の妖怪もいて」
「猫の妖怪もいるんだ」
 その彼等もというのです。
「化け猫とか猫又ね」
「猫又のことは聞いたけれど」
 それでもというのです、鼠のホワイティは自分達の天敵である猫のことを気にしながらこうしたことを聞きました。
「化け猫ってどんなのかな」
「猫又も化け猫の一種だよ」
 先生がホワイティの質問に答えます。
「それでね」
「化け猫は妖怪なんだね」
「これまで僕達が会ってきた狐さんや狸さんと一緒だよ」 
「化けて人と一緒に住んでいるんだ」
「人間としてね」
 その仮の姿で、というのです。
「そうしているんだよ」
「そうなんだ」
「あれっ、けれど化け猫って聞くと」
 豚のガブガブがふと思ったことはといいますと。
「猫又よりも怖い気がするね」
「あっ、そうね」
 家鴨のダブダブがガブガブの言葉に応えます。
「言われてみれば」
「どうしてかわからないけれどね」
「狐さんや狸さんと違って」
「おどろおどろしい?禍々しい?」
 オウムのポリネシアがこう言います。
「そんな感じがするわね」
「ただ化かして皆と一緒にいるだけじゃない」
 今度は梟のトートーでした。
「襲う様な気がするけれど」
「どうしてかね」
「わからないけれど」
 雀のチープサイドの家族もそうしたことを感じています。
「何かね」
「訳がわからない位に」
「怖いっていうか」
「不気味な」
「それは佐賀のせいかな」
 先生は何故か化け猫と聞いて怖いものを感じている皆にこのことをお話しました。
「佐賀藩の化け猫だね」
「佐賀藩?」
「それ何なの?」
「江戸時代の日本は今の都道府県じゃなくて幕府と各藩に分かれていたんだ」
 先生はオシツオサレツに応えて皆にこのことからお話しました。
「そしてその藩の一つがね」
「あっ、佐賀藩だったんだね」
 猿のチーチーが言います。
「そしてその佐賀藩に」
「そう、化け猫のお話があるんだ」
「その化け猫って怖かったんだ」
 老馬が応えます。
「そうだったんだ」
「そう、佐賀藩に祟って物凄く怖いことになったんだ」
「だからなんだ」
「化け猫というとね」
 それこそなのです。
「言葉自体に怖いものを感じるんだろうね」
「そうだったんだ」
「佐賀藩の化け猫の話は僕もまだ勉強中だけれど」
 それでもというのです。
「怖いお話だよ」
「本当にあったお話ですか?」
 トミーは先生の化け猫のことを尋ねました。
「それで」
「そうじゃないみたいだよ」
「そうなんですね」
「うん、ただその猫は黒猫だったから」
 それで、というのです。
「佐賀では長い間黒猫は好かれていなかったらしいよ」
「黒猫はよく不吉な存在とされますね」
「色のせいでね」 
 その黒のせいなのです。
「そうなりやすいね」
「日本でもそうなんですね」
「そうなるね、彼等には気の毒だけれど」
「小説でも怖いですし」
「ポーの小説がそうだね」
 そのタイトルがまさに『黒猫』です。
「あの黒猫は怖いね」
「はい、読んでいて忘れられない位です」
「それは日本でもなんだ」
 その佐賀のお話自体がです。
「怖いと思われているんだ、大阪は違うけれどね」
「あの街はですか」
「そう、あの街では黒猫はね」
 それこそというのです。
「商売繁盛として好かれているよ」
「お客さんを招くんですね」
「そう思われているよ」
「地域によって違うんですね」
「そうだよ、これは欧州でもだね」
「そういえば黒猫が好かれる場合と嫌われる場合が」
「猫自体がそうだから」
 先生は欧州における猫の歴史もお話するのでした。
「好かれたり嫌われたり」
「日本ではそこまでないですからね」
「うん、黒猫が嫌われることはあっても」
「猫全体はですね」
「嫌われることはないから」
「そうなんですね」
「そう、ただ本当に昔は尻尾が長い猫はいなかったんだ」
 それこそというのです。
「そうだったんだ、猫又にならない様にね」
「猫又も怖がられていたんですね」
「そうだったんだ、ただ」
「ただ?」
「実際の猫又は怖くないから」
 江戸時代思われていた様にというのです。
「別にね」
「怖いことしないんですね」
「そう、別にね」
「じゃあ狐さんや狸さん達と一緒で」
「愛すべき妖怪さん達だよ」 
 そうだというのです、こうしたことをお話してでした。
「あの人達も」
「この神戸にもいるとか」
「普通にあるかもね」
 オシツオサレツは二つの口でこうしたことを言いました。「ひょっとして」
「先生は妖怪さん達にも愛されてるから」
「自然と集まって来るからね」
「だからね」
「もう神戸にいてね」
「それで縁があればね」
「ふらりとね」
「僕の前に出て来るかもね」
 先生も笑って応えます。
「何らかの理由で」
「尻尾が二本あるとね」
 ここで指摘したのはチーチーでした。
「すぐにわかるんじゃ?」
「うん、目立つよね」
「そうだよね」 
 チーチーはジップにも応えます。
「尻尾は一本が普通だから」
「それが二本もあるとね」
「それじゃあね」
「すぐにわかるよ」 
「まあ人間に化けていたらわからないけれど」
「猫の姿の時はね」
 それこそというのです、そうしてです。
 先生は皆にです、こうも言いました。
「その尻尾も色々隠すから」
「それで他の猫と区別がつかない」
「そうなるんだ」
「そうだよ、まあ猫又が来てもね」
 それこそという先生でした。
「僕は喜んでお話したいね」
「お茶を飲んで」
「そうしてだよね」
「そうしたいね、それじゃあね」
 ここまでお話してでした、先生は。
 トミーにです、微笑んでこう言いました。
「お酒飲んでいいかな」
「何を飲まれますか?」
「焼酎にしようかな」
 そのお酒にしようかというのです。
「それでおつまみは枝豆で」
「うん、それでお願い出来るかな」
「先生最近枝豆がお気に入りですね」
「丁渡いいおつまみじゃないかな」
「美味しくて食べやすくて」
「しかも食べやすくてね」
 そうした要素が揃っているからだというのです。
「いいおつまみだよ」
「だからですね」
「最近はね」
 日本酒や焼酎を飲む時はというのです。
「それにしているんだ」
「それで、ですね」
「おつまみはそれを頼むよ」
 枝豆をというのです。
「それじゃあね」
「焼酎を持って来てくれるんだ」
「枝豆はもう茹でていますから」
「用意がいいですね」
「言われると思っていましたから」
 そこはトミーの読みでした。
「そうしました」
「それでなんだね」
「先生がお酒をお願いされて」
「枝豆を欲しいっていうことが」
「最近よく飲まれますからね」
「そう、特に焼酎をね」
 先生もご自身で言います。
「夜飲むね」
「そうですね、ただその量は」
 飲む量はというのです。
「イギリスにおられた時よりも」
「少ないんだね」
「イギリスではエールが多くて」
「そうそう、朝から飲んでいたよ」
 イギリスではそれが普通です、だから先生もそうして飲んでいたのです。
「イギリスにいた時は」
「そうでしたよね」
「けれど今はね」
「夜だけで」
「それも瓶一本ですから」
「昔はずっと飲んでる感じで」
 日本にいての感覚だとです。
「全然違うね」
「夜にそれだけで」
「しかもウイスキーを飲まれることが減って」
「ウイスキーはアルコール度高いんだよね」
 四十パーセントです。
「それと比べたら」
「はい、かなり違いますので」
「お酒を飲む量は減ったね」
「しかも和食が多くなって」
 このこともあるのでした。
「お食事も健康的になって」
「じゃあ僕は健康になったのかな」
「なっていますよ、ただ」
 ここでトミーは苦笑いになって先生にこうも言いました。
「体重は」
「それはだね」
「変わっていないですね」
「ううん、体型はね」
 それは、です。先生の場合は。
「何かね」
「どうしてもですね」
「僕は変わらないね」
「そうですよね」
「甘いものが好きだからかな」
「ティーセットのせいじゃないの?」
 こう言って来たのはジップでした。
「先生そもそも運動しなくて」
「甘いものをだね」
「うん、毎日食べているよね」
「三時のティータイムはね」
 それこそです、先生にとっては。
「絶対のことだから」
「それも三段の」
「うん、どうしてもね」
 スコーンやクッキーにケーキにマフィン、フルーツといった甘いものが先生が好きなティーセットのお友達です。
「必要で」
「そして紅茶には」
「ミルクティーでね」
「お砂糖を欠かさないよね」
「どうしてもね。ただね」
 ここでまた言う先生でした。
「最近日本のお茶菓子もいいね」
「ああ、最近そういえば」
「先生日本に来てからね」
「日本のお茶飲んでね」
「日本のお菓子で」
 その日本の組み合わせでなのです。
「お茶飲んでるよね」
「お茶の時間は」
「イギリス風だけじゃなくて」
「日本風もね」
「そっちもあるよね」
「その場合も」
「うん、その場合はね」
 日本のお茶を飲む場合はといいますと。
「お茶にお砂糖を入れないよ」
「あと日本のお菓子はね」
「日本のお菓子はイギリスのお菓子より甘さ控えめでね」
「実際に糖分少ないし」
「そっちの方がいいんじゃ?」
「先生の体型のことを考えたら」
 動物の皆は暖かく笑いながら先生に述べました。
「さもないとね」
「先生いい人だけれど、凄く」
「それでもね」
「もうちょっと痩せたらね」
「相手の人出来るから」
「どうかな」
「ううん、どうなのかな」
 苦手なお話になったから困る先生でした。
「痩せることはね」
「まあ先生健康だけれどね」
「糖尿病でも高血圧でもないし」
「太ってはいてもね」
「健康だけれどね」
 お医者さんだけあってです、先生は健康にも気をつけています。
「けれどね」
「太っていることは確かだから」
「だからね」
「そのことはね」
「少しでもいいから痩せて」
「そうしたらよ」
 それで、というのです。
「もっとね」
「ダイエットして」
「そしてね」
「女の人にアピールして」
「相手をゲットしよう」
「是非共」
「日笠さんだって」
 ポリネシアはこの人のことを言うのでした。
「あの人最近先生と距離近いけれど」
「その機会を逃せば駄目だよ」
 トートーもはっきりと指摘します。
「先生の奥手さは酷いから」
「そうよ、ここは一気によ」
 それこそというのです。
「先生からアピールしないと」
「その為にもダイエットをね」
 是非にというのです、ですが先生はです。
 やっぱり今一つ浮かない顔で。こう返すだけでした。
「そうしないと駄目かな」
「だから何時まで独身なのか」
「一生?」
「サラさんもう結婚してるよ」
「それで子供さんも二人いるのに」
 お兄さんの先生はというのです。
「ずっと独身なんて」
「そんなの駄目に決まってるじゃない」
「人生は結婚してから本当のはじまりっていうし」
「そもそも先生日常生活はさっぱりだから」
「世事には疎いから」
 それもかなりです。
「確かに僕達やトミーはいつも一緒だけれど」
「先生世の中のことは何も知らないから」
「私達がいても心配で見ていられない時があるのよ」
「それに子供もいて家庭がないと」
「先生も充分じゃないわ」
「だからね」
「もうそろそろ」
 ダイエットして女の人に受けるスタイルになって、というのです。
「結婚しよう」
「相手の人が来てくれる為にも」
「ここはダイエット」
「少しスリムになろう」
「僕もやっぱり」
 トミーも先生に言うのでした。
「その方がいいかなって」
「トミーも思うんだ」
「はい、先生なら大丈夫ですよ」
 こうも言いました、先生に。
「いい人見付かりますよ」
「そう言われると急かされているみたいだよ」
「実際急かしてます、本当に日笠さんは」
 あの人はというのです。
「どうでしょうか」
「そうそう、あの人ね」
「あの人性格いいわよ」
「奇麗だしね」
「女性的で料理上手だし」
「それじゃあね」
「いいんじゃ?」
 動物達もまた言います、とかく結婚のことは色々と言われる先生でした。ですがそうしたお話はいつも通りです。
 何か気付いたら終わっていてです、先生は枝豆を食べつつ焼酎を楽しんでいました。そしてその焼酎を飲みつつ皆に言いました。
「いや、美味しいね」
「焼酎美味しいですか」
「うん、飲みやすいよ」 
 見ればお湯割りの焼酎を飲んでいます、お顔がもうほんのりと赤くなっています。
「この焼酎もね」
「それ芋焼酎です」
「薩摩芋から作ったものだね」
「はい、鹿児島の」
「九州の一番南にある」
「あそこで作られたものです」
 それが今先生が飲んでいる焼酎だというのです。
「スーパーで買ってきました」
「へえ、スーパーでこんな美味しいお酒が売っているんだ」
「そうなんですよ」
「いいね、日本は何処でも美味しいものが入るね」
「お酒屋さんでもいいお酒が売っていて」
「そこでも買っているんだね」
「お酒屋さんだと日本酒とか凄いですよ」
 どう凄いかもです、トミーは先生にお話しました。
「揃えている数と種類が」
「イギリスのウイスキーやエールみたいにだね」
「はい、もうそんな感じで」
「それはいいね」
「焼酎もそうです、スーパーでも確かに美味しい焼酎は売っていますけれど」
 それでもとです、トミーは先生を見ながらにこにことしてお話します。
「やっぱりお酒屋さんは違います」
「凄くいい品揃えなんだね」
「そうなんです」
「それでこの八条町にもだね」
「いいお酒屋さんがありますよ」
「そのお酒屋さん紹介してくれるかな」 
 ふとです、先生はトミーにこうお願いしました。
「今ね」
「はい、それじゃあ」
 トミーは笑顔で先生にそのお酒屋さんの場所を説明しました。そしてその名前もです。全部先生にお話しました。
 そしてです、先生は全部聞いてから笑顔で言いました。
「それじゃあ行って来るよ」
「明日にでもですね」
「うん、それでどんなお酒があるのか見てくるよ」
「先生、道に迷わないでね」
 ここで忠告したのはジップでした。
「何かそこも不安だから」
「僕が方向音痴だからかな」
「そう、だからね」
 まさにそれが理由でした、先生は旅行や冒険の時はともかく近所の場所では迷ってしまうことが多いのです。
「だから気をつけてね」
「僕が一緒だから」
 お家の外から老馬が言ってきます。
「まあ道案内は任せて」
「うん、頼むよ」
「本当に先生は世話が焼けるよ」
 老馬は仕方ないねという笑顔で言うのでした。
「何かとね」
「悪いね、いつも」
「悪くはないよ、先生だとね」
「悪くないのかな」
「うん、先生は世話が焼ける以上にお世話になってるからね」 
 だからだというのです。
「先生みたいな人はそうはいないから」
「だからだね」
「そう、じゃあ明日仕事帰りね」
「そのお酒屋さんに行こう」
「じゃあ君にもね」 
 トミーは老馬にもでした。
「お酒屋さんの場所を教えるよ」
「うん、頼むよ」
 こうして老馬にもです、トミーはお酒屋さんの場所と名前を教えました。そのうえでそのお酒屋さんに行くのでした。



今回は猫が出てくるのかな。
美姫 「ただの猫ではないみたいだけれどね」
いつもの団欒で化け猫の話も出てたしな。
美姫 「今回は一体、どういう展開を見せてくれるのかしら」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」



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