『ドリトル先生と二本尻尾の猫』




                 第四幕  若い二人

 先生のお話を聞いてです、トミーと王子、そして皆はこぞって言いました。
「それはまた」
「何ていうか」
「先生にしては珍しい」
「ちょっとこれまでなかった」
「いや、先生がそうしたこと頼まれるって」
「意外ね」
 こう言うのだった。
「ちょっとね」
「そうしたことあるんだ」
「いや、それって」
「それって何ていうか」
「うん、僕も自分で意外だと思ってるよ」
 お家の中で、です。先生はこう言うのでした。
「けれどね」
「頼まれたら」
「それでなんだ」
「それでその恋を適える」
「そうするんだね」
「まずはその娘がどんな娘か知って」
 そして、というのです。
「相手の人もね」
「そうそう、どんな人か」
「まず知ることがね」
「大事だよね」
「何て言っても」
「僕は恋愛には疎いけれど」
 それでもと言う先生でした。
「それでもね」
「こうしたことはね」
「二人のことだからね」
「男女の」
「そうしたものだから」
「相手の人も知らないから」
 それで、というのです。
「だからね」
「それじゃあ」
「まずはお互いのことを知って」
「そうしてそのうえで」
「どうするか考えて」
「そして調べる」
「そういうことだね」
「うん、そうしよう」
 是非にとお話してです、そうしてでした。
 先生は二人で調べてでした、それからどうするかを考えました。その先生にです。
 皆はです、こう言いました。
「じゃあ僕達もね」
「いつも通りね」
「先生と一緒にね」
「出来ることをやらせてもらうよ」
「済まないね、皆もこうしたことには疎いと思うけれど」
「疎くてもね」
 それでもとです、最初に言って来たのはトートーでした。
「皆がいればね」
「そう、強いと思うよ」
 続いてホワイティが先生に言いました。
「それだけね」
「そうそう、いつもそうじゃない」
 ダブダブも先生に言います。
「皆だとね」
「力になる筈よ」
 ガブガブもそうしたことは疎いにしてもでした。
「先生だけ、私達だけよりもね」
「確かに僕達にとってはじめてのことだけれど」
 ジップは恋の橋渡し役のことから言います。
「けれど集まればだよ」
「強いわよ」
 ポリネシアは太鼓判を押しました。
「誰よりもね」
「私達のそれぞれの能力と先生の頭と性格」
「もう無敵じゃない」
 チーウサイドの一家の言葉です。
「これまで何でも乗り越えてきたし」
「今回のことがはじめてもだよ」
「先生、僕達もどうなるかわからないけれど」
 チーチーの今の言葉はとても優しいものです。
「まずはやってみることだよ」
「そう、まずは動こう」
「それぞれの出来ることでね」
 オシツオサレツの二つの口も先生に言います。
「やっていけばいいから」
「不安でもね」
「結局不安に感じてもどうにもならないよ」
 老馬の言葉です。
「まずは動くことだね」
「先生、まずはあちらの猫又さんがですね」
「うん、お静さん達がね」
 先生は動物達の協力を約束する言葉を受けてからトミーに応えました、それまでは彼等の言葉を嬉しく聞いていました。
「あちらの人のことを調べてくれているから」
「僕達はですね」
「お嬢さんのことを知ろうか」
「それがいいですね」
「とてもいい娘なんだよね」
 王子は先生にこのことを尋ねました。
「そうだよね」
「そう聞いてるよ」
「けれどね」
「日本の諺にあるね」
「百聞は一見に然ず」
「そうだったね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「そのお嬢さんと会うんだね」
「実際にどういう人か確かめないと駄目だよ」
 先生はこのことは絶対としました。
「それで動いてもどうしようもないよ」
「相手を知らないと本当に」 
 トミーはまた言いました。
「どうしようもないですね」
「こうしたことはないと思うけれど」
 先生はこう前置きして言いました。
「若しもだよ」
「そのお嬢さんがですね」
「お静さんの贔屓でいい人って言っている」
「その可能性もありますね」
「そう、だからね」
「まずはですね」
「その人に会ってみるよ」
 先生は穏やかな笑顔でトミーに答えて皆に述べました。
「そうするよ」
「じゃあ僕達もね」
「一緒にね」
「一緒に行ってね」
「そうしてね」
 動物達がここでまた先生に言ってきました。
「その人を確かめよう」
「どんな人かね」
「直接お会いして」
「そのうえで」
「うん、行こう」
 こうお話してでした、先生はまずはそのお嬢さんとお会いすることにしました、そのことを決めてそうしてでした。
 先生にです、王子が言いました。
「若しもその娘がとんでもない娘だったら?」
「その場合はだね」
「うん、どうするのかな」
「そうだね、平気で人を騙す様な娘ならね」
「断るのかな」
「そうした方がいいかな」
「相手の人が可哀想だからね」
 そうした娘と一緒になったらです。
「その時はね」
「うん、お静さんにもね」
「言うんだね」
「このお話は降りるってね」
「約束してもだね」
「約束を取り消すことはよくないけれど」
 それでもというのです。
「その人が不幸にならないのなら」
「そうだね、それと」
「それとだね」
「逆の場合もね」
「相手の人がとんでもない人だったら」
「その娘が可哀想になるからね」
 この場合もそうなるからというのです。
「それと両方とんでもなかったら」
「今度は周りが迷惑するね」
「うん、相手の人のことはお静さんが調べてるけれど」
「僕達はだね」
「お嬢さんを調べよう」
 是非にというのです。
「そうしよう」
「それじゃあね」
「そういうことでね。それと」
 お話が一段落してです、先生はです。
 ほっと一息ついてからです、お茶を一杯飲みました、日本のお茶をです。
 先生が一口飲んでからです、ふとでした。
 トミーがです、先生に笑顔で言いました。
「それじゃあもうそろそろ」
「ああ、いい時間だね」
「晩御飯にしましょう」
「今晩は何かな」
「カレーライスですよ」
 トミーはにこりと笑って先生に答えました。
「今晩は」
「ああ、カレーライスだね」
「もう作ってました、後は温めれば」
「食べられるね」
「それを食べましょう」
 こう言うのでした、
「皆で」
「うん、それで何カレーかな」
「今日のカレーはですね」
「日本のカレーはインドのカレーとはまた違うけれど」
 もう全く別ものになっています、日本のカレーとインドのカレーはです。お互い別のものになってしまっています。
 そのカレーにでついてです、先生はトミーに尋ねたのです。
「具が様々で味もね」
「甘口、中辛、辛口と」
「違っていて」
「それで今日のカレーはどんなのかな」
「中辛でソーセージにしました」
「ソーセージカレーだね」
「ソーセージを半分に切ってカレーの中に入れました」 
 その中辛カレーにというのです。
「お野菜もたっぷり」
「いいね、日本のソーセージもね」
「それもですね」
「うん、僕好きだからね」
 それでというのです。
「楽しみにしているよ」
「それじゃあですね」
「皆で」
「食べましょう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆でそのソーセージカレーを食べました、王子は自分のお家に帰ってそこで自分の晩御飯を食べました。そうしてから先生は食べてからお風呂に入ってお酒を飲んでから寝ました、その次の日は日曜でした。
 日曜だからです、トミーが朝おきて御飯を食べてすぐにです、先生に言いました。
「それじゃあ今日は」
「うん、日曜だからね」
「お酒屋さんに行って」
「そう、そしてだね」
「そのお嬢さんにお会いしましょう」
「どんな人か見よう」
 先生も笑顔で応えます、そして。
 ここで、です。トミーは携帯を出して先生に言いました。
「王子にも連絡しますね」
「うん、昨日はね」
「王子は自分のお家に帰りましたから」
「またこっちに来てもらうんだね」
「そうします?」
「そうだね、そうしようか」
 先生は少し考えてから答えました。
「これから」
「はい、じゃあ」
「宜しくね」
 こう言ったところで、でした。先生とトミーの携帯がです。
 それぞれ音楽が鳴りました、メールの着信でした。二人がそれぞれ自分達のメールをチェックしますと。
 王子からでした、王子はメールでこう言っていました。
「あっ、今からだね」
「王子が自分からですね」
「こっちに来てくれるね」
「じゃあ呼ぶ必要ないね」
「そうですね」
 こうお話するのでした。
「それじゃあね」
「僕達はですね」
「ここで出発の準備をしよう」
「そうしましょう」
 こう二人でお話してでした、そのうえで。
 動物の皆と一緒に支度をしつつ王子を待ちました、そして。
 王子が来てです、皆に笑顔で言いました。
「おはよう、今日だよね」
「ああ、そのつもりだったんだ」
「今日は日曜だから」 
 王子としてもというのです。
「声をかけるつもりだったよ」
「そうだったんだね」
「けれど先生達もだね」
「実はそれで王子に連絡しようと思っていたんだ」
「僕がね」 
 トミーも王子に言います。
「そうしようと思っていたら」
「僕からだね」
「うん、メールが来たから」
 それで、というのです。
「僕達が待つことにしたんだ」
「そうなんだね」
「それじゃあね」 
 また先生が言いました。
「行こうか」
「それじゃあね」
 王子も笑顔で応えます、そしてでした。
 皆は先生のお家を出発してです、それから。
 お酒屋さんに向かいました、その中で。
 ふとです、チープサイドの家族が上から先生にこんなことを言ってきました。
「今日はちょっとね」
「賑やかな感じがするよ」
「いつもに比べて」
「雰囲気がね」
「これは猫かな」
 ジップがお鼻をくんくんとさせてチープサイドに続きました。
「この匂いは」
「じゃあ今は」
「そのお静さんだよね」
「そうだよ」
「あの人がだね」
「調べているんじゃないから」
 それで動いて、というのです。
「猫の匂いが沢山あって一つの方向に動いているから」
「じゃあ間違いないかな」
「うん、後はね」
「後は?」
「その猫君達の中でも」
 さらに言うジップでした。
「目立つ匂いがするよ」
「その匂いがかな」
「お静さんって猫さんじゃないかな」
「そうなんだね」
「僕達の鼻は色々わかるんだ」
 その匂いからです、とかく犬の鼻は凄いです」
「だからね」
「あの人も自分から動いてるんだね」
「そう思うよ」
「あの人が動いてくれてるんなら」
 それならと言う先生でした。
「是非ね」
「僕達もだね」
「動こう、他の人が動いているのにね」
「自分が動かないのじゃね」
「駄目だからね」
 それで、というのです。
「ここはね」
「僕達も動く」
「そうしよう」
 先生は老馬に乗りつつ微笑んで言いました。
「是非ね」
「そういうことだね」
「うん、そのお酒屋さんだけれど」
「先生道覚えてる?」
 ホワイティがこのことを尋ねました。
「ちゃんと」
「うん、覚えてるよ」
 先生は穏やかに笑ってホワイティに答えました。老馬の頭のところにいます。
「安心してね」
「それならいいよ」
「何か先生ってね」
 ポリネシアも上を飛びながら言ってきました。
「世事のことがからっきしだから」
「そう言うんだ」
「そう思わない筈がないよ」
「そうそう」
 今度はオシツオサレツでした。
「全く以てね」
「方向音痴なのも確かだから」
「だから僕もいるからね」
 老馬も心配そうです。
「万が一でも大丈夫だよ」
「僕が忘れていても、道を」
「老馬君が覚えているのなら安心だね」
 トートーは道のことでは先生よりも彼を信頼していました。
「本当にね」
「やれやれ、僕は頼りないんだね」
「学問のこと以外はね」
 王子は親しい笑顔で返しました。
「そうだよ」
「道のことも」
「だって先生本当に道に迷うから」
 王子もこのことをよく知っているのでした。
「だからだよ」
「否定出来ないんだよね、自分でも」
「そうだよね、本当のことだから」
「僕自身もね」
「けれどね」
「皆がいるから」
「うん、お酒屋さんまで行けるよ」
 先生お一人でないからでした、全ては。
「だからね」
「それじゃあね」
「行こうね」
「それでそのお嬢さんがおられれば」
 ここで、です。トミーは先生にこうしたことを言いました。
「お会いして」
「うん、話をしてね」
「どういう人か見るんだね」
「その時に皆の力を借りてね」
 そしてというのです。
「僕以外の目からも」
「うん、どういう娘かね」
「確かめるのね」
「そうしよう」 
 これが博士の考えでした。
「ここはね」
「よし、じゃあ」
「まずはお酒屋さんに行って」
「そうしてね」
「色々と調べよう」
 こうしたことをお話してでした、そのうえで。
 先生達は皆と一緒にそのお酒屋さんに行きました、すると。
 小柄で黒髪をショートにした女の子が出て来ました。青のジーンズと白のセーターの上にクリーム色のエプロンを付けています、目はとても大きくてきらきらとしています。お鼻は少し低めですが形はいいです。お顔は丸めで唇は紅色で小さくて。顎の形はとても整っています。
 その娘がです、先生がお店に入るとすぐに出て来て言ってきました。
「いらっしゃいませ」
「はい、どうも」
 先生は微笑んで女の子に応えました。
「お酒を買いに来ました」
「どの様なお酒でしょうか」
「ウイスキーはありますか?」
 先生は微笑んで女の子に尋ねました、動物の皆はお店の外で待っていてトミーと王子は先生と一緒です。
 その中で、です。先生は女の子に尋ねたのです。
「スコットランド産の」
「スコットランド産ですか」
「はい、イギリスの」
「それならです」
 女の子は明るい笑顔ですぐに応えてです。
 お店のウイスキーのコーナーからです、あるウイスキーを持って来て先生に言いました。
「これですが」
「あっ、そのウイスキーは」
「ご存知ですか」
「そのお酒好きなんです」
 先生はにこりと笑って女の子に答えました。
「それではこのお酒を」
「お買いになられますね」
「はい、是非」
「僕はね」
 王子が言うことはといいますと。
「ワインを探しているけれど」
「どの様なワインですか?」
「日本の山梨産の」
 そちらの、というのです。
「赤ワインを探していますけれど」
「赤ワインですか」
「はい、あるでしょうね」
「何種類かありますが」 
 女の子は王子の前に来て真面目に応えます。
「どれをでしょうか」
「ちょっと見せてくれるかな」
「ワインをですね」
「山梨産のね」
「それを全てね」 
 是非にというのです。
「お願いするよ」
「はい、それじゃあ」
 こうしてです、すぐにです。 
 女の子は今度は王子の前にお店の中にある山梨産の赤ワインのボトルを全部持って来てくれました、そしてそのワイン達を見せてからです。
 王子にです、穏やかな笑顔でこう尋ねました。
「どれにされますか」
「ううん、どれにしようかな」
 こう言ってからです、王子は女の子に答えました。
「甘口がいいかな」
「甘口ですね」
「うん、どれかな」
「どれ位の甘さが宜しいでしょうか」
「この中で一番甘いものがいいね」
「はい、それでしたら」
 すぐにでした、女の子はです。
 その中のうちの一つを出してです、両手に丁寧に持ってそのうえで王子に見せてからそのうえで言いました。
「こちらになります」
「このワインが一番甘いんだ」
「山梨産ワインの赤の中では」
「そうなんだ、それじゃあね」
「このワインにされますね」
「そうさせてもらうよ」
「わかりました」
 女の子は王子に笑顔で応えてでした、そうして。
 ワインを包装にかかりました、ですが途中で。
 今度はトミーがです、女の子に言いました。
「ビールありますか?」
「ビールですか」
「はい、黒ビールを」
「大きさはどれ位ですか?」
「三五〇の二十四本セットで」
 日本風に言うのでした。
「お願いします」
「黒ビールですか」
「ありますよね」
「はい、八条ビールの黒で宜しいでしょうか」
「そうです、それでお願いします」 
 トミーは女の子に笑顔で答えました、女の子も穏やかな笑顔で応えて。
 そのうえでカウンターにビールのケースを持って行ってです、こう言うのでした。
「思いですからこちらで包装させて頂きますね」
「じゃあ今から」
「あっ、そこでお待ち下さい」
 行こうとしたトミーにこうも言います。
「また戻りますので」
「そうですか」
「はい、何でしたらお車に」
「いえ、それはいいです」
 そもそも車がありません。
「僕が持って行きます」
「左様ですか」
「はい、それでは」 
 トミーとの応対も穏やかでしかも隙がない感じでした、先生達もお店の外にいる動物達もその間ずっと女の子を見ていました。
 そして、です。買いものの後で。
 先生は荷物を老馬の背中に乗せてご自身は今度はオシツオサレツの背中に乗って進みながらです、こう言いました。
「あの娘だけれど」
「うん、応対もよくてね」
「いい感じの人でしたね」 
 王子とトミーが先生に答えます。
「別にこれといってね」
「悪いところは感じないです」
「穏やかで優しくて」
「いい人だと思います」
「うん、僕達もね」
「そう思うわ」
 動物達も先生に答えます。
「ああいう娘はね」
「問題ないと思うわ」
「細かいところまで見ていたけれど」
「匂いとかもね」 
「悪い人の匂いは感じなかったし」
「お付き合いしている人達も悪い人じゃないみたいだよ」
 そうしたことも調べていたのです。
「もう少し調べてみる必要があるけれど」
「今のところはね」
「悪い人とはね」
「感じないわ」
「君達もそう言うんだね」
 先生は動物の皆の言葉も受けて言いました。
「それじゃあね」
「特にだよね」
「悪い人じゃない」
「あの人ならね」
「相手の人も困らないね」
「うん、あの娘ならね」 
 また言う先生でした。
「大丈夫じゃないかな」
「それじゃあね」
「お世話をね」
「約束して」
「そうしてね」
「それじゃあ」
「今の時点ではいいと思うよ」
 先生は頷きつつ言いました。
「それじゃあ引き続き」
「僕達もね」
「あの娘を見ていって」
「そうしてね」
「調べていこう」
「悪い娘だけじゃないことも確かめて」
 そしてなのです。
「どういう娘かも確かめて」
「そうしてだね」
「それからだね」
「どうするか考える」
「そうだね」
「そうしよう、とりあえず今日は帰ろう」
 先生はこう言ってでした、お酒を手にお家に帰ります。ですがここで、です。王子は先生と自分が持っているお酒を見て言いました。
「絶対にあの娘はいい娘だよ」
「王子はそう思うんだね」
「だってさ、見てよ」
 そのお酒を見つつの言葉です。
「このワインも先生のウイスキーも」
「どちらもだね」
「丁寧に紙で包装してあって」
 そして、でした。
「中にはスポンジまで巻いてくれていて」
「うん、若し割れてもね」
「大丈夫な様にしてくれているじゃない」
「多少だとね」
「ガラスはうっかり手を滑らして落としたらね」
 その時こそ、です。
「あっという間に割れるから」
「それがないから」
「うん、それだけね」
「いいっていうんだね」
「うん、ここまで包装してくれるから」
 それで、というのです。
「絶対に丁寧でね」
「親切な人だね」
「そう思うけれどどうかな」
「そうだね、トミーの言う通りかも知れないね」
 先生はトミーの言葉に頷きつつ述べました。
「やっぱりね」
「そうだよね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「引っ込み事案なところがあるみたいだから」
 猫お静さんのお話によるとです。
「そこは注意だね」
「そうなんですね」
「引っ込み思案となると」
 そうした性格だとするとです、あの娘が。
「どうしたものか」
「先生ってね」
「どうしても恋愛とかね」
「これまで縁がなかったし」
「どうしてもね」
「何をしていいのか」
 具体的なそれがです。
「わからないんだよね」
「そうそう、僕達もね」
「こと恋愛となると」
「どうしていいのか」
「それがね」
「困るよね」
「そこを何とかしないといけないけれど」 
 それでもなのでした。
「具体的にはわからないんだよね」
「さてさて、どうしたものやら」
「そのことも考えていかないと」
「どうにも頭が回らないけれど」
「それでもね」
 こうしてあれこれ考えながらです、お話をしてです。
 皆は一旦お家に帰りました、時間的には然程経っていませんでした。
 それでお家に帰ってからです、先生はまた皆に言いました。
「それじゃあね」
「これからまたですね」
「いや、話はね」
 トミーにこう言うのでした。
「今はこれ以上話しても仕方ないから」
「だからですね」
「ちょっとお静さんに会いたいね」
 これが先生の考えでした。
「ちょっとね」
「それであの人からですか」
「うん、もっとあの娘のお話を聞きたいね」
「そういえば」
 ここで王子があることに気付きました、そのこととは。
「僕達はまだ」
「うん、まだだね」
「あの娘のことをね」
「一回会っただけだから」
「一回だけだと」
 それこそです。
「今は悪い娘じゃないって思っていても」
「まだ不十分だから」
「もう少し見て」
「そう、それからにしよう」
 これが先生のお考えでした。
「今はね」
「わかったよ、それじゃあね」
 王子は先生のお考えに同意して頷きました、他の皆もです。それで、です。ここはチーチーが言ってきました。
「じゃあ今度はね」
「君達がだね」
「ちょっとあの人を見て来るよ」
 こう先生に言ったのです。
「そうしてくるよ」
「再び偵察だね」
「うん、あの娘がどんな娘かね」
 調べてくるというのです。
「細かくね」
「うん、それじゃあ」
「そういうことでね」
「じゃあ今はね」
「これからはね」
「僕達の主な出番だね」
 こうお話してでした、そしてでした。
 今度は動物達があの娘を観ることにしました。
 そして先生にことの次第を言うことにしましたがここで、です。先生は皆にくれぐれもといった口調で注意するのでした。
「車とかにはね」
「うん、注意してね」
「そうしてだよね」
「そう、あの娘を観るにしてもね」
 そうした事故に注意する様に言ったのです。
「いいね」
「うん、わかってるよ」
「車とか怖いからね」
「轢かれたりしたら」
「そうしたらね」
「これからね」
「車には注意して」
 こう言ってです、皆はです。
 早速皆と一緒に行ったのでした、そしてです。
 早速お酒屋さんに行ってです、娘さんを観に行きました、ですが。
 先生はです、皆が行こうとしたところで言いました。
「あっ、待ってくれるかな」
「あれっ、どうしたの?」
「一体」
「ここでどうしたの?」
「一体」
「いや、僕もね」
 こう言ったのです。
「行くよ」
「えっ、僕達が観に行くのに」
「先生はお家で休んでいてよ」
「ここはね」
「待っていてね」
「皆が心配だから」
「車に轢かれたりしない様に」
「それで」
「うん、それでね」
 こう言うのでした。
「皆が轢かれない様に」
「ううん、何かね」
「僕達が動こうとしたらね」
「先生が絶対について来てくれるよね」
「そうだよね」
「何かね、僕だけ休んでとかも嫌だし」
 それにというのです。
「それにね」
「僕達に何かがない様に」
「人間の先生がいてくれたら」
「そう思うから」
「だからなんだ」
「うん、そう思うから」
 それでというのです。
「ここはね」
「ここは、なんだ」
「先生も一緒に来て」
「それで僕達が安全になる様に」
「そう言うんだ」
「うん、そうしていいかな」
 微笑んでの言葉でした、そうして。
 先生は皆と一緒にもう一度お酒屋さんのところに行きました、そしてです。
 チープサイドの家族とトートー、それにポリネシアでした。その鳥達がです。
 皆で一緒にでした、お空に飛んでです。
 そしてです、お店の二階のところを暫く飛び回ってから言いました。
「うん、お部屋はね」
「落ち着いてるわ」
「奇麗だったよ」
 清潔だったというのです。
「あの娘のお部屋があったけれど」
「そこはね」
「奇麗だったし」
「別にね」
「悪いことはなかったわ」
「何もね」
「そうなんだ」
 先生はチープサイド達からお話を聞いて述べました。
「清潔でもあるんだね」
「それでね、お部屋にあるものも」
「おかしなものがないっていうか」
「大人しいのばかりで」
「デザイン的にもね」
「変なのもなかったよ」
「服にしても」
 鳥達はこうしたこともお話してくれました。
 とにかくです、お部屋にある女の子のものはです。
 何もありませんでした、そのうえで。
 皆でこう言ってでした、結論も言いました。
「お部屋を見る限りはね」
「いい娘よ」
「お部屋にも人間性出るから」
「趣味とかもね」
「そうそう、匂いがしないんだよ」
「うん、悪い匂いはね」
 ジップとダブダブもお鼻をくんくんとさせて言います。
「別にね」
「何もないよ」
「やっぱりあの娘はね」
「悪い娘じゃないよ」
「むしろいい娘だよ」
「かなりね」
「成程ね、悪い娘じゃない」
 このことをです、先生はあらためてわかりました。こうした時にわかるのがやっぱり動物の皆があってのことです。
 そしてです、こうも言いました。
「後はね」
「あの娘が具体的にどんな娘か」
「その性格をね」
「確かめることだね」
「そうしよう、じゃあね」
 こうお話してでした、皆で。
 また一旦お家に戻ってでした、この日はです。
 皆で休みました、しかし。
 ふとです、王子が先生に言うのでした。
「恋愛のことはわかりませんけれど」
「うん、何かな」
「先生は今回も慎重ですね」
 言うのはこのことでした。
「やっぱり」
「慎重かな」
「はい、何かと」
「ううん、ことはね」
 こうした慣れていないことでもだというのです。
「一歩一歩ね」
「確実にですね」
「進めていってね」
 そうしてというのです。
「確実にしていかないとね」
「失敗するからですね」
「そう、為していって」
 そしてというのです。
「成功させないと駄目だから」
「それで、ですね」
「こつこつとね」
 例えその足取りが遅くてもです。
「進めていきたいから」
「だからですね」
「うん、こうしてね」
 それこそというのです。
「やっていこう」
「わかりました」
「そういうことでね」
 先生は皆に微笑んで言いました、そうしたお話をしている中で。
 ふとでした、王子がこんなことを言いました。
「先生、ちょっといいかな」
「どうしたのかな」
「うん、サラさんだけれどね」
 先生の妹さんのあの人のことを言うのでした。
「あの人最近どうなの?」
「うん、また日本に来るらしいよ」
「そうなんだ」
「ここのところ来ていなかったけれどね」
 先生達の祖国であるイギリスにいたのです。
「仕事の関係でね」
「また来日するんだね」
「そうなんだよ」
「そうなんだ、あの人も時々来るよね」
「ビジネスの相手が日本の企業だからね」
 八条グループのうちの一つです、先生がいる八条大学を経営しているグループでもあります。
「それでだよ」
「そうそう、それでだよね」
「よく日本にも来るんだ」
「時々にしてもね」
「そして来日するとね」 
 その度になのです。
「絶対にこのお家に来てくれるからね」
「そうだよね」
「それでお茶を飲むけれど」
「サラさんも最近言うよね」
 オウジはそのサラさんのこともお話しました。
「紅茶は日本のものの方が美味しいって」
「そう言ってるね、あの娘も」
「何でかな」
 王子は先生もそう言っているサラの言葉に首を傾げさせました。
「紅茶はイギリスが本場なのに」
「それがだね」
「うん、何で日本のものの方が美味しいのかな」
「うん、日本の企業の製茶技術がよくて」
 先生はその理由をまずこのことから挙げます。
「お水だね」
「あっ、お水ね」
「そう、お水がいいから」
 だからだというのです。
「その分美味しいんだ」
「お茶はやっぱりお水だからね」
「お水が悪いとね」
「どれだけ葉がよくても」
「味はよくないよ」
 そうなってしまうというのです。
「このことは仕方ないよ」
「お水はね」
「イギリスはね」
「日本のものよりもね」
 比べるとどうしてもなのです。
「悪いから」
「それでだね」
「お水の差が大きいね」
 先生は日本とイギリスのそれぞれの紅茶の味が違う理由について述べました。
「やっぱり」
「どうしようもないことだね」
「日本のお水は凄いよ」
「質がよくてね」
「しかもね」
 それにだというのだ。
「量が多いしね」
「だからお茶も不自由しないんだ、ただね」
「ただ?」
「幾ら日本のお水がよくてもね」
 味も質もよくてもというのです。
「生で飲んではいけないよ」
「ああ、川とかお池の水はね」
「そのまま飲んでは危ないんだ」
「中に色々いるからね」
「だからそうしたお水を飲む時はね」
 先生はお医者さんです、ですからこうしたことはちゃんと頭の中に入れています。そのうえで今もこう言えたのです。
「沸騰させないと駄目だよ」
「絶対にだよね」
「生水は怖いから」
 お湯にしないと、というのです。
「だからね」
「絶対に沸騰させてから飲む」
「そこでお茶にして飲むんだよ」
「お湯を飲んでもいいけれど」
「お湯だとね」
 先生は困ったお顔になって述べました。
「僕はね」
「先生は飲めないよね」
「飲めるけれど」
 それでもというのです。
「どうしてもね」
「お茶の方がいいよね」
「そう、だから」
 それでというのです。
「僕はお茶を飲むんだよ」
「そして他の人もだね」
「イギリス人は紅茶がないと」
 他のものがなくてもです、紅茶だけはというのです。
「どうしようもないよ」
「そしてティーセットもだね」
「そちらもあると完璧だね」
「先生食べない日はないからね」
 ティーセットをです、とはいっても最近の先生はイギリスの紅茶ではなく日本のお茶とお菓子でそれを過ごすこともあります。
「そして飲まない日もない」
「お酒は確かに飲みたいけれど」
「いつもじゃないよね」
「いつも飲みたいのはお茶だよ」
 何と言ってもなのです。
「それだよ」
「では今から淹れますね」
 トミーが先生ににこりとして言いました。
「これから」
「うん、紅茶をね」
「ミルクティーでいいですよね」
「それで飲ませてもらうよ」
 先生はミルクティー派です、先生のささやかですが確かなこだわりです。
「今日もね」
「それでは皆の分も」
 淹れると応えてでした、トミーは先生達に紅茶を出すのでした。そして先生達はそのお茶を飲みつつこれからのことを考えてもいました。



流石に苦手な分野での相談という事もあり。
美姫 「皆に協力してもらいつつね」
だな。まずはその女の子を調べるという形になったみたいだけれど。
美姫 「特に問題もなさそうだったわね」
ああ。で、次はどうするかだけれど、本当に慎重だな。
美姫 「まあ、こういうのは苦手とかじゃなくても難しいものだしね」
先生たちは一体どう動くのか、気になります。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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