『ドリトル先生の水族館』




                  第三幕  水族館の中

 先生は日笠さんのお願いを受けて水族館の中に入りました、この時も動物の皆は先生と一緒にいます。
 その水族館の中のカブトガニを見てです、トートーは言いました。
「あの生きものってね」
「カブトガニだね」
「うん、あれも変わった生きものだね」
「そうだよね、瀬戸内海だけにいるんだ」
「日本のだよね」
「とても貴重な生きものだから」
 それで、というのです。
「大切にしないといけないんだ」
「食べられないんだね」
 食いしん坊のガブガブの言葉です。
「それじゃあ」
「うん、止めた方がいいよ」
「そうなんだね」
「そういえば水槽厳重だよ」
 ホワイティはカブトガニが入っている水槽を観ました。上から観られるようになっていますがその上の部分もガラスで覆っていてです。
「手を入れられない様になっているよ」
「天然記念物だからね」
 先生はホワイティにも答えました。
「そのことも当然のことだよ」
「そうだよね」
「ただ、この子達のこともね」
 先生は皆に言いました。
「日笠さんからメールで連絡があってね」
「診察するの?」
 ジップが先生に尋ねました。
「カブトガニ君達も」
「そうするんだ」
「ふうん、カブトガニ君の観察ね」
「これからするんだ」
「じゃあ係の人にお話してね」
 そしてというのです。
「今からはじめるよ」
「それでだけれど」 
そのカブトガニさん達だけれど」
 チープサイドの家族がここで先生にお話することはといいますと。
「普通にいれば寄生虫が結構いるみたいだけれど」
「その心配はないわよ」
「海水が奇麗でね」
「それでそうした虫もいないわ」
「とりあえず外はね」
「大丈夫よ」
「それは何よりだね。あとは中だけ」
 身体の中の虫とです。
「病気もないとね」
「そこは先生が診るんだね」
「うん、カブトガニの身体のことも知ってるから」
 それでとです、先生は老馬にお話しました。
「診察させてもらうよ」
「じゃあ今からね」
「カブトガニを診察してね」
 オシツオサレツも言います。
「まずはこの子達」
「それから次の子達だね」
「そうなるよ。でははじめよう」
 こうしてでした、先生はカブトガニ達の診察をはじめました。実際に海水を満たした水槽の中のカブトガニ達に尋ねました。
「少しいいかな」
「おや、これはドリトル先生」
「前来てたよね」
「うん、少し前にも来させてもらったよ」
 先生はカブトガニ達に答えました。
「それで君達を観ていたよ」
「それで今日は診察だよね」
「さっき皆とお話していたけれど」
「僕達を診察するんだ」
「そうしてくれるんだね」
「その為に来たんだよ」
 まさにその通りと答える先生でした。
「ここにね、では今からいいかな」
「うん、診察してくれるのならね」
「お願いするわ」
「診られることはあまり好きじゃないけれど」
「何かお医者さんは怖いからね」
 このことは他の生きもの達と同じです。
「それでも先生が診てくれるのならね」
「怖くないから」
「宜しく頼むよ」
「今からね」
 こうしてでした、先生はまずはカブトガニの皆を診察しました。その診察はすぐに終わってそうしてなのでした。
 先生は診察の後で係員の人に伝えました。
「皆大丈夫です」
「怪我や病気はですね」
「はい、ありませんでした」
 にこりとしてお話するのでした。
「ですからご安心下さい」
「それは何よりです」
「寄生虫もいませんでしたし」
 動物の皆のチェックも役立っています。
「ご安心下さい」
「わかりました、ではカブトガニの皆はですね」
「このままで大丈夫です」 
 今の状況で水槽の中にいてもというのです。
「では僕は次の場所に行きます」
「はい、有り難うございます」
 先生はこうお話してカブトガニの皆のコーナーを後にしました、カブトガニの皆のお礼の言葉を受けてからです。
 そして次は鮫のコーナーに行きましたが。
 動物の皆は水槽の底で動かない小さな鮫を見ていました。もう一種類虎縞模様で丸い少し猫みたいになっているお顔の鮫もいます。
 その二種類の鮫を見てです、先生に尋ねました。
「ドチザメさんとネコザメさんだよね」
「鮫は鮫だけれど」
「大人しい種類で」
「いつも泳いでいなくていいんだね」
「そうだよ、鮫は回遊魚だけれどね」
 常に泳いでいなくてはならない身体の構造をしている鮫なのです。
「中にはこうした種類の鮫君もいるんだよ」
「こうして動かなくてもいいんだね」
「底の方でじっとしていても」
「それでもいいんだね」
「そうなんだね」
「そうだよ、それが彼等なんだよ」
 ドチザメやネコザメだというのです。
「大人しいしね」
「確かに大人しいね」
「じっとしているだけで」
「鮫といえば怖いけれど」
「この飴さん達はね」
「怖くないわ」
「むしろ見ていて落ち着くわ」
 皆は鮫達を見つつこうも言いました。
「鮫って怖いイメージが強いけれど」
「人を襲うしね」
「船が危ないとすぐに周りに出て来るし」
「怖いよね」
「うん、そうした鮫がいるのも事実だよ」
 怖い鮫達がというのです。
「実際にね。けれどね」
「こうしてなんだ」
「大人しい鮫もいて」
「鮫も色々なんだね」
「ああした怖い鮫ばかりじゃないのね」
「そうだよ、それでだけれど」
 ここまでお話してです、先生はこおうも言いました。
「今回はね」
「鮫さん達のだよね」
「診察だよね」
「これからするんだね」
「そうなんだね」
「そうだよ」
 その通りだというのです。
「これからね」
「歯じゃないよね」
 ジップは先生にこのことを確認しました。
「やっぱり」
「その必要はないからね」
 だからだと返す先生でした。
「鮫君達の場合は」
「悪い歯はね」
「うん、鮫君達はすぐに生え代わるからね」 
 だからだというのです。
「悪くなった歯はね」
「そうだよね、すぐに次の歯が出て来てね」
「生え代わってね」
「欠けても虫歯になっても」
「すぐに新しい歯が生えてくるから」
「虫歯になっても」
 他の皆も言います。
「だから歯はね」
「診る必要はないね」
「他の生きものと違って」
「チェックはするけれどね」
 それはするというのです。
「健康状態は歯にも出るからね」
「お口の中にもね」
「だから診ることは診るんだ」
「治療の必要はなくても」
「それでも」
「うん、そうするよ」
 絶対にと答えた先生でした。
「だから今からね」
「今度は鮫の皆の診察だね」
「水槽の中に入って」
「それからだね」
「そうだよ、じゃあ潜水服を借りて」
 先生はまた言いました。
「診察をしようね」
「じゃあね」
「今からね」
「診察をして」
「鮫の皆にもほっとしてもらおう」
 動物の皆も先生に応えてでした、そのうえで。
 先生は潜水服を着て鮫の皆を診察しました、その診察の後で。
 先生は係の人にです、こう言いました。
「皆大丈夫なことは大丈夫ですが」
「何かありますか?」
「少し栄養が偏っている感じがしました」
「食べるものに問題ありですか」
「そう思います。ですから」
 先生は係の人にこうも言うのでした。
「食事は何か追加されて下さい」
「そういえば最近アジばかりで」
 係の人も気付きました。
「他のお魚はありませんでした」
「それをです」
「他の種類のお魚もですね」
「出して下さい」
「わかりました。ではどうした種類が」
「アジだけでなく」
 先生は係員の人に具体的なアドバイスもしました。
「鰯や鮭等も」
「そうしたお魚もですか」
「餌としてあげて下さい」
「わかりました、しかし鮫もなんですね」
「偏食はあまりよくありません」
「そうなのですね」
「まんべんなくあらゆる栄養素が入っている」
 先生はこうもお話しました。
「ドッグフードやキャットフードの様なものならともかく」
「お魚だとですね」
「それが一種類だとです」
「どうしても栄養が偏るのですね」
「そうです、ですから」
「わかりました、それでは」
 係員の人は確かな声で先生に応えました。
「すぐに他のお魚も出します」
「そうして頂けると何よりです」
 こうしてでした、鮫の皆にアジだけでなく色々な種類のお魚も出されることになりました。そのことを決めてからです。
 先生は鮫のコーナーも後にしました、そしてここで。
 次のコーナーに向かいながらです、チーチーが先生に言いました。
「いや、鮫もなんだ」
「うん、偏食はね」
「あまりよくないんだね」
「色々な種類のお魚を食べた方がいいんだね」
「そうなんだ」
 こうチーチーにもお話するのでした。
「それは君達もだよ」
「そうそう、偏食はね」
 それこそとです、ダブダブも言います。
「絶対によくないのよ」
「だからダブダブもだよね」
「栄養のバランスを考えてね」
 そしてというのです。
「お料理の献立を考えているのよ」
「そうだよね」
「先生はね」
 ポリネシアが言うことはといいますと。
「どうしても私達やトミーがいないと」
「駄目だっていうんだね」
「だって先生お料理出来ないでしょ」
「そうしたことは本当に駄目だね、僕は」
 自分でもわかっている先生です。
「家事全般がね」
「だからお料理もね」
「トースト焼き機は使えるよ」 
 それはというのです。
「何とかね」
「いや、それお料理じゃないよ」
 すぐにです、トートーが先生にすぐに言いました。
「トーストを焼くことは」
「違うかな」
「違うよ」
 きっぱりとしてです、トートーは先生に答えました。
「あとインスタントラーメンを作ることもね」
「そういえば先生袋のインスタントラーメンもだよね」
 ホワイティも言ってきました。
「お料理出来ないよね」
「ガスコンロとか苦手なんだよね」
「お湯入れるカップラーメンだけだよね」
「あれだと何とか作られるよ」
「それも作ったとは言わないよ」
 ホワイティもこう言います。
「それもね」
「そうなんだ」
「そうだよ、やっぱりお料理出来ないじゃない」
「トーストやカップラーメンはね」
「作ったとはね」
 チープサイドの家族の言葉は。
「ちょっとね」
「言えないから」
「だからね」
「先生はお料理は」
「全くね」
「出来ないとしか」
 言えないというのです。
 そして老馬もです、先生に横から言いました。
「ましてそうしたものばかりだとね」
「栄養が偏るっていうんだね」
「パンとかインスタントラーメンばかりだと」
 それこそというのです。
「先生も栄養が偏るよ」
「僕達が食べる草だってね」
「一種類だけ食べてるとね」
 オシツオサレツも言うのでした。
「偏るから」
「先生だってそうだよ」
「ちゃんと何でも食べないと」
「先生にしてもね」
「そうだよね、僕にしてもね」
 先生も皆の言葉に頷きます。
「偏食はよくないからね」
「そうそう」
「まあ先生偏食はしてないけれどね」
「いつもね」
「ちゃんとバランスよく食べてるわね」
「それこそ何でも」
 バランスのいい食事を摂っているというのです。
「確かに先生家事はからっきしでね」
「先生だけだと食べるものが偏るけれど」
「パンやインスタントラーメンだけとか」
「本当になるから」
「それか外食」
「外食だけになるとか」
「外食も好きだけれどね」
 先生は日本に来てから外食も楽しんでいます。八条学園の食堂だけでなく八条町のご馳走も神戸や大阪の美味しいお店もです。
 けれどです、先生はこうも言うのです。
「それでもね」
「外食ばかりでもね」
「やっぱり栄耀偏るよね」
「あと外食は基本塩分や糖分も高いし」
「そこも気をつけないといけないから」
「しかも高くつくしね」
 先生はお金のことにも言及しました。
「今の僕はそれなりの収入があるけれど」
「お金は節約しないと」
「何時何があるかわからないから」
「無駄に使ってるとね」
「いざって時に困るからね」
「やっぱり注意しないと」
「無駄使いは厳禁だよ」
「そうだよね。だからね」
 それでと言う先生でした。
「外食ばかりでもね」
「そうそう、よくない」
「それもね」
「やっぱりメインはお家でバランスのいいもの」
「しっかりと食べるべきだよね」
「そうだね、だからダブダブもトミーもね」
 先生はまた言いました。
「僕にそうしたものを考えて出してくれているんだね」
「その通りよ、そうしたことは任せてね」
 先生の足元からです、ダブダブは答えました。
「先生は確かに家事はからっきしだけれど」
「その分だね」
「私達がいるから」
 だからだというのです。
「安心していいわよ」
「悪いね、いつも」
「まして先生は健康だけれど」
 ここでこうも言ったダブダブでした。
「太ってるから」
「肥満の問題だね」
「それ以上太るとやっぱり」
「健康によくないよ」 
 自分からです、先生も答えます。
「ここから病気にもなるしね」
「内蔵にもよくないわね」
「ましてや僕はスポーツもしないから」
 こちらもです、先生は苦手です。先生は子供の頃から身体を動かすことはそれこそ人一倍苦手な人なのです。
「だからね」
「余計に気をつけないといけないわね」
「そうなんだよ、だからね」
「私達がね」
「バランスよくだね」
「そうした食べものを出しているわ」
 実際にというのです。
「鮫さん達と同じで偏食厳禁ね」
「その通りだね、そういえば」
「そういえば?」
「日本にいるとね」
 この国にいると、といいますと。
「色々な食べもの、お料理があって」
「普通にしているとね」
「ちょっと意識したらね」
「偏食にならなくて済む」
「そうだよね」
「そうなんだよね。お店に行けばお野菜も果物もあって」
 色々な種類のものが沢山です。
「お魚もお肉もあるから」
「和食もバランスよく出来るし」
「いいよね」
「何かと」
「そうしたことも」
「うん、いいことだよ」
 先生は日本のそうしたことについても笑顔になっています。そのうえで動物の皆に笑顔でお話するのでした。
「果物もいいからね」
「身体にね」
「糖分には幾分気をつけないといけないけれど」
「それでもね」
「いいんだよ、それでね」
 さらにお話する先生でした。
「お野菜だってね」
「それじゃあ先生、今日はね」
 また言って来たダブダブでした。
「美味しくバランスよく食べられるね」
「何を作ってくれるのかな」
「カレーはどう?」
「カレーライスだね」
「ヘルシーに鶏肉と夏野菜をたっぷりと入れたね」
「そのお野菜をだね」
「御飯には他の穀物を入れてね」
 麦や稗、粟等を入れてです。
「十六穀ね」
「お店で売っている十六穀だね」
「あれを御飯に入れましょう」
「そっちでも栄養を摂るんだね」
「そうよ、じゃあね」
「今日はカレーだね」
「ピーマンに茄子、アスパラガスにズッキーニ、トマトに玉葱と人参を入れて」
 本当に色々な種類のお野菜をです、ダブダブはお話に出しました。
「あとポテトサラダも作って」
「ジャガイモはそっちで使うんだ」
「そう、それでデザートは無花果よ」
「充実してるね」
「だから栄養はね」
「バランスよくだね」
「摂らないと駄目だから」
 それ故にというのです。
「今日はこれでいくわ」
「夏野菜をたっぷりと入れたカレーだね」
「これはいいわよ」
 ダブダブは得意満面で言います。
「というかカレーは何でも入れられるから」
「栄養を摂ろうと思えばね」
「最適よ」
「本当にそうだよね」
「あとスープやお味噌汁、お鍋もそうなのよね」
 そうしたお料理もというのです。
「栄養を摂りやすいのよ」
「しかも美味しいしね」
「そう、特にね」
「特に?」
「粕汁と豚汁よ」
 ダブダブは日本のこのこの二つのお料理も出しました。
「この二つもいいわ」
「ああ、豚汁はね」
「確かにいいね」
「美味しいだけじゃなくて」
「身体もあったまって」
「お野菜を色々とたっぷりと入れられて」
「いいよね」
 皆も豚汁と聞いて言います。
「お味噌汁の中でもね」
「最高にいいよね」
「粕汁にしてもね」
「いいわよね」
「そう、だからね」
 それでとです、また言ったダブダブでした。
「服は私もトミーもよく作るのよ」
「そうだよね、冬はあれだよね」
「豚汁か粕汁」
「そしてお鍋」
「そうだよね」
「日本はお鍋も多いから」
 鍋料理もというのです。
「バランスよく食べやすいのよ」
「僕は最近ね」
 ここで先生が言うお料理はといいますと。
「ちゃんこ鍋だね」
「ああ、力士の人達が食べるね」
「あのお鍋だね」
「あれもいいよね」
「確かにね」
「うん、僕は力士じゃないけれど」
 ここでも先生は先生です、ちゃんこ鍋を食べても別にお相撲をしようとは全く思わないのです。観ることはしても。
「ちゃんこ鍋もいいよね」
「そうよ、ちゃんこ鍋もお野菜もお肉もたっぷり入れるからね」 
 ダブダブは先生にこのお鍋のことも答えます。
「いいのよ」
「そうだよね」
「案外カロリーも少ないし」
 先生が太っていることも頭に入れています。
「余計にいいのよ」
「そういうことだね」
「まあ先生のスタイルなら」
「僕の?」
「お相撲しても問題ないけれど」
「駄目駄目、確かに僕は太っているけれど」
 先生はダブダブの今の言葉には笑って返します。
「筋肉はないから」
「お相撲は出来ないのね」
「力士の人は確かに太ってるけれど」
「それでもなのね」
「脂肪は薄皮一枚で」
 それで、というのです。
「その下は筋肉だからね」
「ああ、そういえばね」
「力士の人ってそうよね」
「筋肉あるよね」
「骨格もしっかりしてるし」
「戦う為の体格だよね」
「格闘家の」
 動物の皆も先生に言われて頷きます、力士の人達がどうなのか。
「脂肪はあっても」
「実はそれは薄くて」
「その下には厚い筋肉」
「それがあの人達なんだね」
「そうだよ、力士の人達はそうなんだよ」
 先生もこのことを知っているのです。
「戦う為の身体だから」
「先生とは違うんだ」
「そこが」
「僕は筋肉はあまりないから」
 運動は苦手で歩く位しかしていないからです。
「とてもね」
「お相撲はなんだ」
「出来ない」
「力士の人達には敵わない」
「そうなんだね」
「とても無理だよ」
 力士の人達とお相撲をすることはというのです。
「僕にはね」
「ただ太ってるだけじゃないんだね」
「力士の人達って」
「実は脂肪は多くない」
「そうした人達なんだ」
「ああなるのは所謂肉体改造だよ」
 その結果だというのです。
「まずたっぷり食べるんだ」
「そのちゃんこをだね」
「お腹一杯食べて」
「そうしてからなんだ」
「そう、お昼寝とかをしてね」
 力士の人達は食べてすぐに寝ます、これも力士の人達のお仕事のうちなのです。
「ああした身体になるんだ」
「そうなんだ」
「あえてああした身体になってるんだね」
「一見と太っている」
「そうした身体に」
「トレーニング、稽古の形もね」 
 そちらもだというのです。
「ああした身体になる様になっているんだ」
「何もしなくてもああした身体にはならないんだね」
「そうなる様にしたことをしてなんだ」
「ああした身体になる」
「そうなんだね」
「そうだよ、スポーツはどれでもそうだけれど」
 お相撲に限らずというのです。
「そのスポーツをするのに相応しい体格があるんだ」
「ボクシングとかラグビーとか」
「サッカーや陸上でもなのね」
「それに相応しい体格がある」
「そうしたものなのね」
「うん、ボクサーが柔道をしてもね」
 先生はかなりわかりやすい例えを出しました。
「合わないんだよ」
「その体格の問題で」
「そうなるの」
「そう、ボクシングは足を素早く動かしてパンチで攻める」
 先生は歩きつつ右手の人差し指を立てて皆にお話します。スポーツはしなくてもその知識はしっかりしています。
「それに対して柔道は掴んで投げたりするね」
「うん、柔道はそうだね」
「そうして闘うものだね」
「柔道はね」
「そうしたものだね」
「そこが違うから」
 だからというのです。
「それぞれのスポーツに相応しい体格があって。それに」
「それに?」
「それにっていうけれど」
「今力士の人の稽古のことを言ったけれど」
 お話するのはこのことについてもでした。
「ボクシングにはスパーリング、柔道には投げる稽古があるね」
「それぞれのスポーツで」
「それぞれのスポーツがある」
「それでなんだ」
「それぞれのスポーツをしないと駄目」
「そういうことかな」
「そういうことなんだ」
 先生は皆にいつもの穏やかな笑顔でお話しました。
「野球をしていて格闘家の訓練をしたり格闘技の食事をいつも食べてもね」
「何にもならないだね」
「意味がないのね」
「むしろやったら駄目なんだ」
 決して、という口調での言葉でした。
「野球選手には野球選手のトレーニングと体格があって相応しい食事の仕方もあるから」
「そこで格闘家のトレーニングをしたりしても」
「いつも格闘家の食事を食べても」
「格闘家の体格になっても」
「全くいいことはないよ」
 先生はスポーツはしないのですがスポーツ選手の診察をすることもあるのでこうした知識もしっかりと備わっているのです、所謂スポーツ医学です。
「そうしたことをしたらかえって駄目なんだ」
「百害あって一利なし」
「それぞれに合ったことをしないといけない」
「そうしたことなんだね」
「絶対に」
「そうだよ、それでどうして僕がスポーツ選手のことを話したのか」 
 野球選手のことをです。
「日本である野球選手を見てのことなんだ、厳密に言うと元だね」
「その元野球選手がなんだ」
「そういうことをしていたんだ」
「野球選手なのに格闘家の訓練とかしてたんだ」
「そんな変なことしてたんだ」
「うん、それで格闘家より強いとか言って悦に浸っていてね」
 それだけではないとです、先生はそのお顔を曇らせてお話しました。
「しかもマスコミがその選手を持て囃していたのを知ってね」
「間違ってるって思ったんだね」
「そうしたことは」
「先生にしては」
「それはおかしいよ」
 絶対にという口調での言葉でした、先生はとても温厚な人ですが間違っていることは間違っているという人なのです。 
 それで、です。その元野球選手とマスコミについても言うのです。
「野球選手だからね」
「格闘家じゃない」
「それでそんなことをしても」
「変なことにしかならない」
「しかもそうしたことをする人を持て囃すマスコミだね」
「おかしいっていうんだね」
「幾ら人気があってもおかしいことはおかしいんだ」
 それを否定する先生ではないので今も言うのです。
「日本はとてもいい国だけれどね」
「そこは間違っている」
「その野球選手とマスコミは」
「先生はそう言うんだね」
「日本のマスコミはおかしいよ」
 先生も首を傾げさせることです、日本のマスコミについては。
「人気選手でもおかしいことをしているとね」
「おかしいと言わないと駄目だよね」
「野球選手が格闘家のトレーニングをしたりするとか」
「それで格闘家の体格になって喜んでいるとか」
「間違っているんだね」
「何度も言うけれど野球をするに相応しい体格があってね」
 先生は更に言いました。
「格闘をするに相応しい体格があるから」
「じゃあ若しね」
「格闘家が野球をしたらどうなるのかな」
 オシツオサレツが先生に尋ねました。
「そうしたことをしたら」
「その時は」
「だから全然野球をする体格じゃないんだよ」
 先生はオシツオサレツの問いに真面目な口調で答えました、見ればお顔もそうしたものになっています。
「筋肉のつき方とかが」
「ううんと、僕がチーチーの真似をするみたいなのかな」
「僕がジップでね」
 ジップとチーチーは先生がオシツオサレツにお話したことを聞いてそのうえでお互いに顔を見合わせてお話しました。
「それじゃあね」
「どうしても無理があるよね」
「そうだよ、無理があるよ」
 そこは絶対にというのです、先生は二匹にもそうしました。
「だから怪我ももとでもあるんだ」
「身体に合わないことをするから」
「それで」
「それじゃあね」
 今度はダブダブが言いました。
「身体にも無理がかかってってことね」
「うん、野球は打って走って守るね」
「格闘家はパンチとかキックとか投げ技ね」
「野球をするんじゃないんだよ」
「それで野球をしても」
「無理があるから怪我が多くなるんだ」
 野球をする体格ではないからというのです。
「だから駄目なんだ」
「それでその選手はどうなったの?」
「先生元って言ったけれど」
 ガブガブとポリネシアが尋ねます。
「やっぱり怪我多かったの?」
「そうなったのかしら」
「そうだよ、そうしたトレーニングをするまでは怪我に強い選手だったのに」
 それがというのです。
「怪我ばかりする選手になったよ」
「ああ、やっぱり」
「そうなったのね」
 二匹も納得することでした。
「変なことするから」
「そうなったのね」
「うん、それまでは打つだけじゃなくて守れて走ることもそこそこだったのに」
 そうした選手だったというのに、というのです。
「守備も走塁は駄目になって」
「打つだけ?」
 ホワイティが老馬の頭の上から尋ねました。
「それって」
「うん、その打つ方も固くなってどんどんおかしくなっていったらしいね」
「やっぱり」
「打つのは腰の回転で打つんだ」
 野球のバッティングはです。
「腕力も必要だけれどそれがメインじゃないからね」
「というかその選手って」
「おかしいよ」
 トートーも老馬も首を傾げさせます。
「何で野球選手なのにそうしたことしたの?」
「格闘家のトレーニングするとか」
「野球知らなかったの?」
「そうだったの?」
「おかしなことだよね、僕もその人の考えはわからないよ」 
 その元野球選手のそれがというのです。
「おかしなことしたよ」
「かえって怪我が多くなって」
「守れなくなって走れなくなって」
 チープサイドの家族も呆れています。
「打つ方もおかしくなって」
「いいことないじゃない」
「そうだよね。それで今その人はね」
 その元野球選手はといいますと。
「引退して不摂生な生活をして家族にも縁を切られておかしな身なりになってね」
「どんどんおかしくなってるんだ」
「そうなんだ」
「うん、皆とバランスのいい食事をって言ったけれど」
 お話がここでこのことに戻りました。
「それもしていないことは間違いないね」
「先生以上にそうしたことはしっかりしないといけないのに」
「元とはいえスポーツ選手だから」
「けれどなんだね」
「そうした風になってるんだね」
「おかしなことに」
「そうだよ、僕もその人をテレビで観ていると」
 その日本のテレビで、です、
「しっかりしないとって思うしどうしてマスコミも誰も止めなかったのか」
「そんなことをしたら駄目だって」
「野球選手が格闘家の訓練をしても」
「うん、残念に思うよ」
 とても、という口調での言葉でした。
「止めていたらよかったのに」
「というか人気選手だからってね」
「間違ってることをしても止めないのは駄目だよね」
「ましてや持て囃すなんて」
「最悪だよ」
「人気チームにトレードで入ってね。その人気チームが何をやっても持て囃される状況だったから」
 このことも残念そうに言う先生でした。
「余計におかしかったんだ」
「何か日本のマスコミっておかしいね」
「イギリスのマスコミよりずっとね」
「おかしなことをしても持て囃すとか」
「人気チームにいるからって」
「それで人気選手だからって」
「何か違うよ」
 間違っていると、です。動物の皆も思うのでした。
「僕達だって先生に言うのに」
「おかしいことはおかしいって」
「言うのに」
「食べるものだって栄養のバランスを考えてって」
「あと早寝早起きもね」
「うん、皆がいないとね」
 先生がここでお話することはといいますと。
「僕はね」
「とにかく世事のことはからっきしだから」
「お料理にしてもね」
「それで僕達もね」
「先生にしっかりと言って用意してるのよ」
 栄養のバランスのいいお料理にしてもです。
「お食事はしっかりと」
「味と量だけでなく栄養バランスも考えて」
「そしてそのうえで」
「作ってるのよ」
「そうだよね、やっぱりしっかりしたものを食べないとね」
 栄養バランスのいいものをです。
「これからも用意するから」
「先生も偏食はしないでね」
「鮫さん達もそこは改善されるし」
「その元野球選手みたいにはならないでね」
「絶対だよ」
「僕も気をつけるよ。不摂生な生活なんてしたら」
 その元野球選手の様にです。
「後が怖いからね」
「そうそう」
「糖尿病とかになったら」
「後が大変だっていうから」
「内蔵の病気とかね」
「そういえばイギリスにいた時は今よりずっとエールを飲んでいて」
 先生はここでこのことにも気付きました。
「朝からね」
「それもどんどんね」
「どんどん飲んでたよね」
「イギリスじゃそれが普通だしね」
「エールが水代わりだから」
「そうしていたけれど日本ではお水やお茶が普通に飲めるから」
 お水がいいからです、先生にとって日本のお水はとても美味しいものなのです。
「エールを飲まなくなったら」
「痛風の気もだよね」
「なくなったんだね」
「うん、診断の時に言われたよ」 
 まさにその時にというのです。
「痛風の兆候があったけれど消えたって」
「そうなんだね」
「そっちの病気の心配もなくなったんだね」
「痛風の方も」
「そうなのね」
「そう言われたよ。エールにしてもね」
 このお酒もというのです。
「プリン体とかがあるから」
「あまり飲み過ぎると痛風によくないんだよね」
「ドイツで痛風の人が多いにもそのせだし」
「お水が主体だと」
「その心配がぐっと減るね」
「そうだよね、じゃあ健康を維持して」
 そのうえで、と言う先生でした。
「水族館の皆の診察を続けよう」
「そうだね、健康だからこそ出来るしね」
「それじゃあね」
 皆も笑顔で頷いてでした、先生と一緒に水族館を回るのでした。先生が水族館でやることはまだまだありました。



水族館にやって来た先生たち。
美姫 「順に回っていくみたいね」
診察だしな。
美姫 「特に今の所は問題もないみたいだけれど」
このまま何事もなく、診察を終える事が出来るのかな。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る