『ドリトル先生と沖縄の蛇達』




                第八幕  三つの島へ

 先生はその朝は御飯を食べてでした、すぐに港に向かいました。動物の皆と一緒にそちらに向かうとです。
 もう安座間さんと真喜志さんがいました、大きめのヨットに帆を張っていて今にも出発出来る様になっています。
 先生はそのヨットを見て真喜志さんに言いました。
「このヨットは」
「はい、先日のヨットとは別のものでして」
「少し遠出の為のですか」
「その為のヨットです」
 こうお話するのでした。
「どちらのヨットも八条グループが所有しているヨットですが」
「今回は三つの島を巡るからですね」
「あのヨットより大きいものにしました」
 こう先生にお話するのでした。
「もう食べものもお水も積んでいます」
「では今すぐに」
「出発出来ます」
 出港出来るというのです。
「では行きますか」
「はい、それでは」
「お昼等はここで食べますが」 
 安座間さんも先生にお話します。
「宿泊は基本は」
「ホテルですね」
「はい、こちらでいいですね」
「はい」 
 先生は安座間さんに笑顔で答えました。
「それではそれで」
「奄美大島、渡嘉敷島、久米島と行きますが」
「最初は何処に行くのですか?」
「実は奄美大島はこの本島と少し離れていますので」
「そこに行く時はですね」
「はい、飛行機で行きますが」
 しかしというのです。
「久米島と渡嘉敷島はです」
「このヨットで行くんですね」
「はい、そうします」
「そうですか」
「まずヒヤンは」
 安座間さんはヒヤンのお話をしました。
「奄美大島にいて」
「渡嘉敷島と久米島にはハイですね」
「そちらの蛇がいます」
「渡嘉敷島にはハイがいて」
「久米島にはクメジマハイがいます」
「ハイは二種類いますね」
「模様の違いですが」
 それがあるというのです。
「二種類います」
「そうでしたね」
「ではまずは」
「ハイをですね」
「探しに行きましょう」
「船で渡嘉敷島と久米島に行って」
「ここからすぐです」
 この二つの島はというのです。
「この沖縄本島から」
「だから船で行きますね」
「そうです、あと朝御飯は」
「食べてきました」
 先生は安座間さんにこのことも笑顔で答えました。
「もう」
「まだ早いですが」
 六時です、丁度。
「それでもですか」
「ひょっとしてヨットに積んでいる食べものは」
「朝御飯でした」
「そうだったのですか」
「パンやお握りを積んでいたのですが」
 少し残念そうに言う安座間さんでした。
「それは残念でした、ですが」
「それでもですか」
「それはそれで、です」
「お握りやパンをですね」
「食べます」
「それでは」
「はい、行きましょう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆で、です。ヨットに乗り込みました。ヨットは先生達が船に乗り込むとすぐに出港しました。朝の海を勢いよく進んでいきます。
 その朝の海を見てです、チープサイドの家族はこんなことを言いました。
「沖縄の海って何度見ても奇麗だね」
「そうよね」
 青い、何処までも澄んでいるその海をヨットの傍から水平線の向こうまで見ながら言うのでした。
「文字通りサファイアを溶かした」
「そんな感じね」
「この海を見ていたら」
 チーチーはずっと遠くを見ています。
「ずっと見ていきたいね」
「海はね」
 ジップも言います。
「見ているだけで何かを感じるね」
「いつもそうなんだよね」 
 ホワイティはそのジップの頭にいます。
「海を見ていると」
「自然にね」
 そのホワイティにダブダブが応えます。
「普段は感じないものを感じるね」
「神戸の海もそうだけれど」
 トートーもその丸くてとても大きな目で海を見ています。
「沖縄の海もそうだね」
「それでいて沖縄の海は凄く奇麗だから」
 神戸の海とはまた違った奇麗さだとです、ポリネシアは言うのでした。
「感じるものが違うわ」
「この海をずっと見ていきたくて」
 老馬の言葉です。
「そして護っていきたいね」
「この海をずっと見ていたいから護る」
 ガブガブは老馬の背中から彼に応えました。
「そういうことね」
「素晴らしいと思ったものを護りたい」
「誰でも思うことだね」
 オシツオサレツも二つの頭で海を見ています、この人の場合はその二つの頭でヨットの左右の海を見ています。
「こう言うと奇麗ごとじゃないかも知れないけれど」
「エゴかも知れないけれどね」
「いや、奇麗と思うとね」
 先生も言いました。
「護りたくなる、そして動くことはね」
「いいことなんだね」
「そうしたことも」
「それでもいいの」
「うん、結果としてそれが素晴らしいことを護ることなら」
 それならというのです。
「いいと思うよ、僕は」
「皆の為とか思ったり」
「そこにいる生きものの為とか」
「そう思わなくていいんだ」
「別に」
「その為に動くのならね」
 それならというのです。
「いいんじゃないかな、むしろね」
「むしろ?」
「むしろっていうと」
「そこでもっと崇高な理想とか言ったり極端に走る方がね」
 そうしたことの方がというのです。
「危険だよ、奇麗だから守りたい、それでもいいんだ」
「それで程々になんだ」
「護ればいい」
「産業、人が生きることも考えて」
「そのうえで」
「若し完全に自然を護りたいのなら」 
 そういう場合のこともです、先生は言及しました。
「もう文明も何もかも捨てて」
「自然に戻る」
「そうするべきなんだね」
「そこまで至るよ、そうした生活をしたい人は僕は止めないし」
 強制は決してしないのが先生です。
「けれどそれは出来るかな」
「多くの人が」
「それが出来るのか」
「そうなると」
「難しいよね」
「まず、ね」
 それこそというのです。
「それが出来る人は少ないね」
「そうだよね」
「どうしてもね」
「それが出来る人って」
「いないね」
「安座間さんと昨日お話したけれど」
 安座間さんは今は真喜志さんと二人で地図を見てお話をしています、先生もその手には開かれた渡嘉敷島の地図があります。
「そう主張して文明の生活を満喫している人も多いからね」
「そういえばそうだよね」
「原発反対って言ってクーラーをガンガンかけてる人いるよね」
「暖房もね」
「それを言ったら電気を使うことを節約しないといけないのに」
「それは言わないね」
「テレビで言ってる人いるけれど」
 原発は危ないと言ってです。
「テレビって放送にも番組作るのにも凄く電気使うから」
「節約しないといけないのに」
「夏でも中継の中でスーツ着てるけれど」
「あのお部屋冷房凄く効いてるだろうね」
「だからスーツでいられるよね」
「僕は別に夏にスーツでもね」
 先生は今もスーツでネクタイを締めていますが。
「平気だしね」
「先生太ってるけれど暑がりじゃないし」
「別にね」
「寒さにも強いし」
「そこはいいだよね」
「うん、それに夏のスーツはね」
 まさに今着ているそのスーツです。
「薄い麻の生地だからね」
「涼しいんだよね」
「それも凄く」
「そう、だから平気だけれど」
 それでもというのです。
「テレビの人達はね」
「そうしたスーツじゃなくて」
「夏でも厚い生地のスーツで」
「そうしたスーツを着られる位冷房の効いたお部屋にいてね」
「原発反対って言うってね」
「おかしいよね」
「そうした主張もいいよ」
 原発反対という主張も否定はしない先生です。
 ですがそれと共にです、こうも言ったのでした。
「けれどそう主張するのなら」
「使う電気位はだね」
「その分節約しないといけないんだね」
「最低限として」
「そのうえでだね」
「自分は電気はふんだんに使うけれど他の人は原発を使わない分我慢しろっていうのはね」
 そうした主張はといいますと。
「これは人として間違っているよ」
「結局そうなるよね」
「僕達原発のことはよく知らないけれど」
「今確実に原発の代わりになる電力があるのか」
「そこを確かにしてからだね」
「中にはね」 
 実は先生は日本の原発反対派の人の主張と行動、特に言っている人達の顔触れにおかしなものを感じているのです。
「原発の代わりの電力の根拠が無茶苦茶で」
「しかもなんだ」
「さらになのね」
「主張は決め付けと断定ばかりで」
 しかもというのです。
「自分の正義に酔っている人とか」
「そうした人もいるんだね」
「何かもうね」
「そうなるとね」
「かえっておかしいよね」
「そうした人って」
「僕は独善は好きじゃないんだ」 
 先生としてはです。
「やっぱりちゃんとそうした代わりのものを確かにして」
「そのうえでだね」
「考えて言わないと駄目だよね」
「原発についても」
「文明についても」
「自分は文明での生活を満喫していて人には我慢しろと言うのは」
 その文明の生活をです。
「偽善どころかもっと悪い、悪事そのものだよ」
「先生はそんな悪い人になりたくないから」
「だからこう言うんだね」
「そうしたことはあってはならない」
「絶対にって」
「そうだよ、人としてね」 
 それこそというのです。
「守らないといけない矜持だと考えてるよ」
「そういえば何処かの町長さんで被爆した人いなかった?」
「そうそう、東北の地震で」
「漫画にも出ていたけれど」
「毎朝鼻血が出るって」
「あの人もそう言ってるけれど」
「あの人はどうなのかしら」
「若しもだよ」
 このことについてはお医者さんとして言う先生でした。
「毎朝鼻血が出る位の放射能を浴びていたら大変だよ」
「そうだよね」
「もうかなり深刻な事態だよね」
「そこまでになっていたら」
「それこそ」
「うん、一刻も早くお医者さんに診てもらってね」
 そのうえでというのです。
「治療を受けないと、そもそもね」
「そもそも?」
「そもそもっていうと」
「その症状はその人だけか、あと鼻血は本当に被爆の影響か本当に鼻血が毎朝出ているか」
「細かくだね」
「診察してもらわないと」
「駄目だよ、すぐにね」
 このことは真顔でお話します、先生も。
「診察を受けないと、若し本当ならかなり重症だよ」
「命に関わる位」
「そこまで」
「悠長なことは」
 それこそというのです。
「言っていられないよ」
「じゃあ何なのかな」
「その町長さんって」
「本当に被爆したのか」
「それも疑っているんだ」
「僕はね、そしてその人の主張を思い込みで漫画とかに載せたら」
 そうしますと。
「風評被害の元でもあるし」
「気をつけないといけない」
「そうなんだね」
「ましてやその場所に行くなとか書いたら」
 最早というのです。
「日本では以前ダイオキシンとその近くの農家の人のお話もあったけれど」
「その時と一緒で」
「大変なことになる」
「そうなるんだね」
「うん、そのダイオキシンの話はある報道番組が起こしたことで」
 報道の中でやったというのです。
「悪質な風評被害だと批判されたけれどその番組のキャスターの人は頬杖をついて謝罪したよ」
「それ謝罪?」
「どう見ても日本の謝罪の形じゃないわよ」
「そんな謝罪で許されるの?」
「普通余計に怒られない?」
「だから余計に批判されたよ」
 当然の流れとしてです。
「本当に日本の環境保護の話は気をつけないとね」
「おかしな人がおかしなことを言っていて」
「それがまかり通っているから」
「テレビや漫画で」
「だからなんだね」
「しかもそうしたことを言う人達は」
 このことも常にと言葉の中に入れて言います。
「謝らないか謝ってもね」
「そんな謝り方で」
「そうした人達だから」
「気をつけないといけない」
「騙されたりするんだね」
「騙そうとしている人達もね」
 そうした人達を詐欺師と言うのですが。
「いるからね」
「ううん、何かね」
「日本ってそんな人がマスコミとかに多くて」
「イギリスよりも多い?」
「イギリスにもロンドンの市長さんになった人でそうした人いたけれど」
「あの人も酷い人だよね」
「どうもテレビや新聞とかは」
 そうした媒体はというのです、先生は。
「かなり気をつけて観ないとね」
「騙されて大変なことになる」
「そうなんだね」
「あの市長さんは自分が政治の世界で偉くなる為にあんなこと言ったけれど」
「それで今イギリス大変なことになっているけれど」
「自分の為だけや自分の考えを広める為に嘘を言う人もいるんだ」
 世の中にはです。
「こうした人達は捕まらなくてもね」
「詐欺師だよね」
「お金は取らないけれど」
「そうしたことをする人も」
「捕まらないにしても」
「うん、詐欺師になるね」
 こう言うのです。
「日本はあの市長さんみたいな人が物凄く多いよ」
「先生が日本に来て気付いたことだね」
「マスコミとか知識人の人達が本当に酷くて」
「信じたら危ない」
「余程気をつけないと騙されるんだね」
「環境のお話もそうで特に従軍慰安婦とかいうお話は」
 この件はといいますと。
「あれは完全に犯罪だね」
「マスコミがやった」
「そうしたことなんだ」
「うん、あんなことが許されるのなら」
 関係している人の経歴を完全に書き換えたのではないかという様なことはです。
「もうジャーナリストの世界は無法地帯だよ」
「報道の自由とかね」
「表現の自由とかは確かにあっても」
「そうしたものを悪用する行為で」
「あってはならないことね」
「平気で嘘を言う人はいて」
 そしてです。
「日本ではテレビや新聞とかに物凄く多いんだ」
「嫌なことだけれど」
「現実なのね」
「この沖縄でもそうだよ」 
 悲しいお顔になって思う先生でした、日本に来てこのことが嫌になる位にわかったのです。このことについてはイギリスよりも遥かに酷いとです。
 そして先生は安座間さん、真喜志さんともお話をしました。お二人とお話することは何かといいますと。
「渡嘉敷島ですね」
「はい、今日はです」
「この島に行きます」
「そしてです」
「そのうえで」
「ハイをですね」 
 生成は応えました。
「クメジマハイではなく」
「普通のハイです」
「そのハイを探しに行きます」
「そして保護をしますので」
「つがいで十組」
 会わせて二十匹をというのです。
「今日無理なら明日です」
「夕方まで行って本島に戻って」
「そうしていきますので」
「ヨットの中に蛇達を入れる水槽があります」
 そこまで用意しているというのです。
「水槽は持って行きますし」
「島に着いたらすぐに森に入りましょう」
「ハイが発見された森まで」
「わかりました、ただ本当に問題は」
 先生はここでも言いました。
「ハイにですね」
「出会えるかどうか」
「このことが問題です」
 まさにというのです。
「本当に」
「沖縄の、しかも現地の人でも」
「見たことのない人がいる位なので」
 実在さえ疑われた位です。
「見付けること自体が」
「難しいですね」
「まずはそこからですね」
「第一にして最大の難関でしょうか」
 そこまでのものだというのです。
「これは」
「そうですね、ただ」
「ただ?」
「一つやり方がありますが」
 先生はここでこう安座間さんに言いました。
「僕に考えがあります」
「と、いいますと」
「はい、僕は動物の言葉がわかって」
 そしてです。
「動物とお話が出来ます」
「そうでしたね」
「ですから」
「先生のその特技を使われて」
「ハイ達を探しましょう」
「渡嘉敷島の生きもの達とお話をして」
 そうしてというのです。
「そのうえで」
「言われてみれば」 
 安座間さんも言われて気付きました、このやり方に。
「先生ならそのやり方が出来ますね」
「幸いにして」
「出来ることは何でもする」
「ですから」
 それでというのです。
「そうしましょう」
「それでは」
「いや、助かります」
 安座間さんは先生に笑顔でお話しました。
「先生にそうした特技がおありとは」
「その通りですね、ハイは沖縄の蛇ですから」
「そのことも関係ありますね」
「おそらくハブの言葉と近いです」
「ハブですか」
「そうです、ですからハブとお話が出来れば」
 渡嘉敷島にいる彼等とです。
「手掛かりが得られるかも知れません」
「ハイ達が渡嘉敷島の何処にいるのか」
「そのことが」
「それでは」
「ハブは渡嘉敷島にもいますね」
「結構な数がいます」
 渡嘉敷島にもというのです。
「何しろ沖縄の代名詞にもなっている蛇ですから」
「こちらの蛇は多いですね」
「そうです」
 それこそあちこちにいるというのです、沖縄の。
「では渡嘉敷島に着きましたら」
「まずはハブと会えたら」
「彼等とお話をして」
「そうしてハイの手掛かりを得ましょう」
「わかりました」
 こうお話してでした、そのうえで。 
 先生達はヨットを飛ばして渡嘉敷島に向かいました、渡嘉敷島は沖縄本島から比較的近くてそれでなのでした。
 動物の皆が思っていたよりも早く着いてこう言うのでした。
「あれっ、もう着いたんだ」
「早いね」
「思ったよりもね」
「すぐに着いたね」
「案外ね」
「そうなったね」
「うん、この島はね」
 先制も皆にお話します。
「本島と近いんだ、久米島もだよ」
「じゃあ久米島に行く時も」
「すぐに着くんだ」
「距離自体はすぐで」
「行き来も楽なんだね」
「奄美大島は遠いけれどね」
 その本島からです。
「この二つは近いから」
「だからだね」
「すぐに着くから」
「距離のことは心配いらないね」
「行き来が楽だね」
「そうだよ、じゃあ着いたから」
 先生は皆ににこにことして言います、ヨットは波止場に停泊していますが真喜志さんと安座間さんがその作業を慣れた動きでしています。
「いよいよだよ」
「ハイを探すんだね」
「その凄く数の少ない蛇を」
「今から」
「そうだよ、とにかく数が少ない蛇だから」
 それでというのです。
「出会うにはね」
「ハブとお話をしたり」
「この島の生きものともだね」
「お話をして」
「それで探さないといけないんだね」
「そうだよ、それが一番いいと思っているんだ」
 ハイを探すにはです。
「僕はね」
「いや、蛇はね」
 ここで老馬が言うことはといいますと。
「その辺りに普通にいるってね」
「思うね」
「けれどそれは蛇の種類によるんだね」
 ジップの言葉はしみじみとしたものでした、今は。
「日本だとアオダイショウやヤマカガシは普通にいて」
「シマヘビとかもね」
 トートーはこの蛇の名前を出しました。
「こういうのは普通にいるね」
「毒蛇だとマムシにここにいるハブとか」
 ダブダブはハブの名前も出しました。
「普通にいるけれど」
「ヒヤン、ハイは」
 これから探す蛇達について述べたポリネシアでした。
「そうじゃないのね」
「毒蛇だっていうけれど」
 ホワイティは大きな括りで言いました。
「普通にいるよね」
「ヤマカガシだって毒蛇だし」
「そうそう」
 チープサイドの家族はこの蛇が毒蛇ということからお話します、
「毒蛇にしても」
「普通にその辺りにいるけれど」
「それは種類によるもので」
 ガブガブはその渡嘉敷島の森の方を見ています、その森にハイ達がいるかも知れないと思ってそうしてです。
「一概に言えないのね」
「数の少ない蛇もいて」
「毒蛇でもそうなんだね」
 オシツオサレツも言います。
「そうした種類の毒蛇もいる」
「そういうことだね」
「そうなんだ、数の大小は種類によるんだ」
 それこそとです、またお話した先生でした。
「ハブも実はね」
「ハブも?」
「沖縄にいるあの蛇もなんだ」
「少ないの?」
「そうなんだ」
「沖縄にだけ生息しているから」
 だからというのです。
「ハブはね」
「それじゃあ」
「蛇としては数が少ないんだ」
「世界的に見たら」
「そうなんだ」
「そうだよ、例えば羆もね」
 この活きものもというのです。
「北海道にいる種類で言うとね」
「ああ、少ないんだ」
「羆にしても」
「そうなんだね」
「実は絶滅が危惧されているんだ」
 このことは本当のことです。
「人を襲うこともある生きものだけれどね」
「絶滅の心配もあるから」
「そのことも注意しないといけないんだね」
「数は少ないから」
「そうだよ、ハブも世界的に見ればこの沖縄という場所にしかいないから」
 だからというのです。
「保護にも気をつけないとね」
「ハブにしても」
「そしてヒヤン、ハイは特に」
「少ないんだね」
「そうだよ、だから探すことはね」
 普通にするとです。
「ものすごく難しいんだ」
「だからまずはだね」
「ハブからお話を聞くんだ」
「そうしてからだね」
「ハブを探すんだね」
「そうするよ、さてハブは」
 彼等を探すとです、ふとでした。 
 波止場の近くにある広場の草原のところを動いていました、丁度物陰に向かおうとしているところです。そのハブを見てです。
 動物の皆もです、言いました。
「あっ、丁度ね」
「ハブ君がいるよ」
「じゃああのハブ君にお話を聞いて」
「それからだね」
「うん、ハイを探そうね」 
 先制も言ってでした、先生は早速そのハブを呼び止めました。
「いいかな」
「僕に用かな」
「そうなんだ、君にお話を聞きたいけれど」
「お話を?」
「この島にハイという蛇がいるね」
「ああ、あの蛇達だね」
 ハブは先生のお話を聞いてこう返しました。
「島の真ん中の森の方にいる」
「あそこにいるんだ」
「そうなんだ」
 実際にというのです。
「ハイはね」
「実はこのことを聞きたかったんだ」
「ハイが何処にいるのか」
「そうだったんだ」
「教えてくれて有り難う」
「お礼はいいけれど。ただ」
 ここでこう言ったハブでした。
「気をつけてね」
「会うにはだね」
「あの森に普通に行ってもね」
 ただそうしてもというのです。
「人間には見ることすら難しいから」
「だからだね」
「ハイは慎重だから」
「隠れるんだね」
「そうだよ、しかも数がとても少ないから」
 このハブもこのことを言います。
「中々会えないんだ」
「やっぱりそうだね」
「けれどドリトル先生みたいな人だったら」
「僕だけれど」
「あっ、先生だったんだ」
 ハブは言われてはっとなりました。
「あらゆる動物のお友達の」
「僕のことを知ってるんだね」
「知ってるも何も」
 それこそというのです。
「先生は有名人だからね」
「沖縄の生きものの間でもだね」
「そうだよ、僕も知ってるよ」
 だから先生のお名前を出したのです。
「いや、まさかここで先生にお会い出来るなんてね」
「奇遇かな」
「本当にね、ただね」
「ハイに会うにはだね」
「先生だったらね」
「動物の言葉がわかるからだね」
「会えるよ、森の方にもハブがいてね」
 そしてというのです。
「そこのハブともお話をしてね」
「探せばいいんだね」
「ハイさん達の方も先生ならね」
 あらゆる動物のお友達である先生ならというのです。
「お話を聞くから」
「だからだね」
「うん、大丈夫だよ」
 ハブは先生ににこりと笑って言いました。
「会えるよ」
「それじゃあ」
「ただ、ハイさん達に会ってどうするの?」
 ハブはここで先生にハイに会う目的を聞きました。
「一体」
「うん、実はね」
「実は?」
「ハイ君達を保護したいんだ」
「保護なんだ」
「彼等は数が少ないね」
「凄くね」
 先程言った通りです、本当にハイ達は数が少ないのです。
「実は僕も森であまり会えない位なんだ」
「数が少ないからだね」
「うん、たまたま会うことはね」
 それこそというのです。
「中々ないよ」
「そうなんだね」
「うん、まあ先生ならさっきお話した通りにね」
「会えるんだね」
「大丈夫だよ、じゃあ頑張ってね」
「君はこれから何処に行くのかな」
「ちょっと溝の方に行ってね」 
 ハブは先生に行き先のこともお話しました。
「そこで物陰で寝るつもりなんだ」
「安全だからかな」
「そう、しかも溝で物陰だと涼しいから」 
 だからというのです。
「行くんだ」
「そうするんだね」
「じゃあね」
「またね」 
 笑顔でお別れをしてでした、そのうえで。
 先生はまた皆にお話をしました。
「ハイ君達のいる場所がわかったね」
「うん、これでね」
「先生の狙い通りハブ君とお話が出来てね」
「それでハイさん達が何処にいるかわかったね」
「この島の何処にいるのか」
「運がよかったよ」
 心から言う先生でした。
「神様の配剤だね」
「そうだね、じゃあ神様に感謝して」
「そのうえで森に行こうね」
「安座間さんと真喜志さんにお話をして」
「そのうえでね」
「うん、行こう」 
 こうしてです、先生は。
 ヨットの停泊作業を終えた安座間さんと真喜志さんにお話をしました、すると真喜志さんはすぐに明るいお顔になって言いました。
「わかりました、それでは」
「はい、今からですね」
「その森に向かいましょう」 
 こう笑顔で言うのでした。
「これから」
「では」
「いや、流石は先生ですね」
 真喜志さんは笑顔でこうも言いました。
「すぐにわかりましたね」
「運がよかったです」
「ハブに会えて」
「全くです、蛇のことを一番よく知っているのは」
「同じ蛇ですね」
「それも同じ地域に住んでいる」
 先生は真喜志さんににこりと笑ってお話をしました。
「他の生きものも同じです」
「そこにいる生きものを一番よく知っているのは」
「そうです」
 まさにというのです。
「同じ種類の生きものです」
「では本土でも」
「狐は狐、狸は狸です」
 同じ種類の、というです。
「生きものです」
「そうですね、やっぱり」
「はい、ですから先程お話が出来て何よりです」
「運がよかったですね、まさに」
「神様がそうしてくれました」
 先生は真喜志さんににこりとして言いました。
「本当に有り難いです」
「全くですね、では」
「はい、森に行きますか」
「道具を持って」
 そのうえでとお話をしてでした、先生達は森に向かいました。波止場から住宅地帯に出てそこから森に入りますが。
 その森に入るとです、先生は虫が多いことに気付きました。
「本土の森よりも」
「虫が多いですね」
「はい、数も種類も」
 どちらもとです、安座間さんに答えました。
「多いですね」
「沖縄は亜熱帯なので」
「虫の数も種類もですね」
「多いです」
 実にというのです。
「そうなっています」
「そうですね」
「はい、ですから」
「こうしてですね」
「虫が多いです、それに」
「それにですね」
「植物もです」
 森を構成している、です。
「本土とは種類が違いまして」
「ガジュマルもそうですし」
「はい、あの木も沖縄の木ですね」
「そうですね」
「沖縄は生態系も本土とは違っていまして」
「植物もですね」
「違います」
 本土のものとはです。
「そちらもまた」
「そうですね」
「それで森もです」
「本土の森とは違いますね」
「そうです、土壌もです」
 森のそちらもです。
「また違います」
「そうですね」
「ですから」
 それでというのです。
「この森の調査もです」
「いいものですね」
「はい」
 本当にというのです。
「沖縄の生態系、動物も植物も」
「そして土壌も」
「こうしたことを学びますと」
「沖縄は凄く面白い場所ですね」
「はい」
 本当にと言う先生でした。
「僕もそう思います」
「そうですよね」
「何かと楽しく学べる場所です」
 沖縄は、というのです。
「自然のこと、文化のことと」
「何かとですね」
「そこを見ていきますと」
「色々なものも見えてきますね」
「そうです、珍しい動物も一杯いますし」 
 これから会いに行くハイ達にしてもそうです。
「僕はそこから沖縄を学びたいですね」
「学者としてですね」
「そうです、ただハブに噛まれますと」
「大変です」
 何しろ毒蛇だからです、安座間さんも否定しません。
「今は血清がありますが」
「血清がありましても」
「最初からです」
 それこそです。
「噛まれないことです」
「それが大事ですね」
「そうです」 
 だからというのです。
「君子危うきにといいますが」
「何も理由がないなら近寄らないことですね」
「調査目的でないと」
「ハブにはですね」
「近寄らないことです」
 そうすべきというのです。
「本当に」
「全くですね」
「はい、調査の際もです」
「慎重ですね」
「その生物のことをよく把握して調査する」
 事前にです。
「このことは大事です」
「最初からですね」
「事前の知識があれば」
 それで、なのです。
「全く違いますからね」
「その生物の調査も」
「ですから」
 それでというのです。
「まずはです」
「その生物をよく知ること」
「それからですね」
「そして慎重にです」
「調査を行うべきですね」
「特に危険と思われる生物は」
 そのハブも入ります、ハイもです。何しろ毒がありますので。
「知ることです」
「それは何処でも言われていますね」
「中国の神農や白澤もですね」
「古代の帝王に神獣ですね」
「はい、人間に薬や毒、妖怪のことを教えてくれたという」
「事前に知って」
「危険がない様にした」
 そうした書が昔の中国にはあったのです。
「ありましたね」
「そうしたお話ですね」
「ですから」
「事前に知ることはいいこと」
「調べることは」
 こうお話をします、ただ。
 そのハイ、そしてヒヤンについてです。先生は安座間さんに確認しました。
「ただ、ヒヤンやハイは毒があっても」
「噛まれたというお話ですね」
「ないみたいですが」
「そういえばないですね」
「確かに」
 安座間さんだけでなく真喜志さんも言います。
「エラブウナギに噛まれたというお話も」
「ないですね」
「そうですね、ハブはあっても」 
 それでもです。
「ヒヤンやハイ、エラブウミヘビは」
「確かにないですね」
「そうした蛇に噛まれた話は」
「気性が大人しくて」
 ヒヤンやハイ、エラブウミヘビはです。
「しかも数が少ないので」
「ヒヤンやハイは」
「それもかなり」
「だからですね」
「はい、見掛けることすら稀の」
「そうした蛇なので」
「そういうことですね、いや本当に」
 あらためて言う先生でした。
「毒のある蛇といってもそれぞれですね」
「そうですね」
「こうしたことについては」
「蛇それぞれで」
「ヒヤンやハイにそうしたお話はないですね」
「やはり沖縄はハブですね」
 あらためて言う先生でした。
「沖縄で噛まれる人が多いのは」
「そうですね、どうしても」
「そこはですね」
「どうしても」
「沖縄では」
「それで困ってもいて」
 噛まれる人が多くてです、暑い場所ではよくあるお話です。アマゾンのジャングルですともっと大変だったりします。
「マングースが輸入されたりして」
「それは失敗しました」
「残念ですが」
 安座間さんも真喜志さんもこのことには苦笑いになりました。
「ハブを捕まえないで」
「他の沖縄の生きものを食べて困ってます」
「こちらはこちらで」
「困っています」
「外来種の問題ですね」
 沖縄にはこちらの問題もあります。
「マングースは」
「はい、本当に」
「どうしたものか」 
 この問題も困ったことです、沖縄のマングースのことも。



幻の蛇とは言え。
美姫 「動物と話せる先生が居れば、ね」
だよな。他の蛇に聞いて居場所も分かったし。
美姫 「次はいよいよ登場かしら」
さて、どうなるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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