『ドリトル先生と悩める画家』




                 第十幕  雪の中の学園

 雪は止みました、ですが関西全てが雪に覆われました。それは勿論神戸も同じで。
 八条学園は一面銀世界です、屋根も木も草原も道路もです。
 全て雪に覆われています、先生は銀世界の動物園の中にいて動物の皆に言いました。
「暑い場所の生きもの達は中に引っ込んでるね」
「うん、そうだね」
「ライオンも像もキリンもね」
「皆中に入ってね」
「出て来ないね」
「これだけ寒いと仕方ないよ」
「うん、無理をしたらね」
 暑い場所にいる生きもの達が寒い場所に出るとです。
「よくないから」
「だからだね」
「ここはだね」
「暑い場所にいる皆は引っ込んで」
「寒い場所の生きもの達だけがいるね」
「そうだね」
「そうだよ。こうしてね」
 実際にというのです、見れば狼やシロクマ達は元気です。そしてホッキョクギツネもです。
 元気に檻の中で動いています、その白い毛を見てです。先生は言いました。
「ホッキョクギツネ君は元気だね」
「夏は今一つだけれどね」
「冬はいつも檻の中だね」
「それで冬にこそ元気になるね」
「寒い北極の生きものだからね」
 先生もお話します。
「シロクマ君やレミング君達と一緒でね」
「あとトナカイさんもだよね」
「トナカイさんも北極の方にもいるね」
「サンタさんと一緒に」
「そうだよ、だからトナカイ君もね」
 見れば彼等も元気です、雪の中で飛び跳ねています。
「ああして元気なんだ」
「寒い場所にいる生きものは雪が好きなんだね」
「そういうことね」
「暑い場所にいる生きものは夏が好きで」
「それぞれね」
「そうだよ。特にね」
 さらにお話する先生でした。
「北極や南極にいるとね」
「寒い場所が好きで」
「今みたいな状況が一番いい」
「そうなるんだね」
「そうだよ」
 先生は皆に笑顔でお話します。ですがここで。
 灰色の毛に黒い水玉模様があるアザラシを見てです、こう言うのでした。
「ヒョウアザラシ君も元気だね」
「ううん、そうだね」
 ダブダブは専用のコーナーの中で泳いでいる彼等を怖いものを見る目で見て言うのでした。
「あの人達もね」
「殆どのアザラシさんは穏やかだけれど」
 ホワイティもヒョウアザラシ達を怖いものを見る目で見ています。
「ヒョウアザラシさん達は違うからね」
「猛獣よ」
 ガブガブははっきりと言いました。
「クロクマさん達よりもまだ怖いかも」
「南極にはシロクマさんはいないけれど」
 ジップもヒョウアザラシ達を怖いものを見る目で見て言うのでした。
「ヒョウアザラシさんがいるんだね」
「先生と一緒でも」
 チーチーも警戒している感じです、安全な場所にいても。
「気をつけないとね」
「虎さんやライオンさんと同じだから」
 猛獣だとです、トートーも認識しています。
「他のアザラシさん達と違って」
「人も襲われるらしいし」
 このことは老馬が言いました。
「怖いよね」
「歯が鋭くて」
「あんな歯で噛まれたら」 
 チープサイドの家族はヒョウアザラシの他のアザラシ達とは全く違う鋭い歯を見ています、本当に豹のものみたいな歯です。
「只じゃ済まないよ」
「私達の誰も」
「安全な場所にいても」
 ポリネシアも言います。
「気をつけないといけないって思うわ」
「何かライオンや虎よりも怖い?」
「そんな感じがするね」
 最後にオシツオサレツが言いました。
「海の中だとね」
「鮫よりも怖いんじゃ」
「まあそんなに怖がらなくていいよ」
 先生は警戒する皆に穏やかな声でお話しました。
「食べていたら別に襲わないから」
「それ以上は食べない」
「そうなんだね」
「幾ら怖くても」
「そうなんだ」
「うん、それに絶対に外に出られない様にしているしね」
 ヒョウアザラシが自分達のコーナーからというのです。
「安心していいよ」
「そうなんだね」
「幾ら怖くてもだね」
「ちゃんと御飯は食べてるし」
「出られないから」
「安心していいよ。というか皆変に怖がるよりもね」
 それよりもというのです。
「知ることが大事だよ」
「ヒョウアザラシさんを」
「その方がいいんだ」
「怖がるよりも知る」
「その方がいいのね」
「そうだよ、君達はライオン君や虎君は怖がっていてもね」
 それでもというのだ。
「彼等程怖がってはないね」
「だって食べていれば何もしてこないし」
「満腹ならね」
「ライオンさんも虎さんも満腹なら寝てるだけで」
「頑丈な檻の中にいるし」
「そう、知っているからだよ」
 ライオンや虎達をというのです。
「極端に怖がっていないんだ」
「だからヒョウアザラシさん達もなんだ」
「知ることが大事なんだね」
「怖がるんじゃなくて」
「そちらの方が大事なんだね」
「そうだよ。だから学問は大事なんだ」
 知ることが出来るからだというのです。
「生物学もね」
「そういうことなんだね」
「ううん、流石は先生ね」
「怖がるんじゃなくて知る」
「それこそが大事だってことね」
「そうだよ、怖がるよりも学ぶ」
 先生は前を見て微笑んで言いました。
「それが一番いいんだ、そしてね」
「そして?」
「そしてっていうと?」
「ホッキョクギツネ君だけれどね」
 先生は皆と一緒にホッキョクギツネのコーナーに戻りました。そして真っ白な毛の彼等を見て言うのでした。
「今は白いね」
「純白の毛が奇麗だね」
「シロクマさんみたいな毛ね」
「シロギツネさんっているけれど」
「また別の奇麗さがあるわ」
「うん、夏は青がかった灰色でね」
 先生はホッキョクギツネの毛の色をお話するのでした。
「冬はこうなるんだ」
「奇麗な純白に」
「雪みたいな白になるのね」
「北極の雪に合わせて」
「そうなるのね」
「そうだよ、この白さがいいね」
 先生は目を細めさせてこうも言いました。
「本当にね」
「北極には何度か行ったけれど」
「あそこのホッキョクギツネさんも奇麗だしね」
「雪の中で見分けにくいけれど」
「見事jな保護色でね」
「そう、シロクマ君達もそうだけれど保護色なんだ」
 その奇麗な白い毛はといううのです。
「獲物を捕まえやすくなるんだ」
「白くて獲物に見付かりにくい」
「だからなんだね」
「シロクマさん達も白い」
「そうなのね」
「そうだよ」
 こうしたことをお話するのでした、そしてです。
 先生はホッキョクギツネ達を見ているとでした、その隣に太田さんが来てこんなことを言ったのでした。
「奇麗な狐ですね」
「今日は動物園に来ているんだね」
「はい、生きものに雪の動物園を観て」
 そうしてというのです。
「スランプ脱出のインスピレーションを得ようと」
「そう思ってだね」
「それで観て回っています」
「成程ね」
「アルビノじゃないんですよね」 
 ホッキョクギツネ達を見たままです、太田さんは先生に尋ねました。
「この狐達は」
「保護色だよ」
「それでこんな色になるんですね」
「そうなんだ」
「北極だから」
「その地域によって生きものも変わるからね」
「そうですか、僕は生きものについては詳しくないですが」
 それでもとです、太田さんは先生にお話しました。
「観ていていいですね」
「感じるものがあるんだね」
「はい、ただそれがスランプの脱出につながるか」
「それはだね」
「わからないです」
「そうだね、けれどだね」
「先生が言われた通りにです」 
 こう先生に言うのでした。
「スランプを脱出した後のことも考えて」
「観ていくんだね」
「そうします、ここの生きもの達も」
「そして動物園もだね」
「観ています、この動物園も何回か来てますけれど」
「それでもだね」
「何か違いますね」
 こう言うのでした。
「雪に包まれていると」
「それだけでだね」
「全く違います」
「そんな感じがするね」
「はい」
 実際にというのです。
「別の場所にいるみたいです」
「君がよく感じることだね」
「同じ場所でも季節や時間、気候によって」
「変わるね」
「どんな場所でも」
「そうなんだよね」
「そしてそれを感じ取ることが」
 先生にです、太田さんは目の光を強くさせて述べました。
「大事ですね」
「芸術にはね」
「ですからこの動物園も」
「観てだね」
「何かを感じます」
「だからこそここに来たんだね」
「はい、あとですが」
 太田さんは先生にこうも言ったのでした。
「僕ペンギンが好きなんです」
「ああ、あの鳥がだね」
「はい、好きです」
 実際にというのです。
「愛嬌がありますね」
「そうだね、よちよちと歩いてね」
「あの姿がいいです」
「陸地ではそうでね」
「一旦海に入ると」
 太田さんはペンギン達のそれからもお話するのでした。
「凄い速さで泳ぎますね」
「そうだよ、ペンギン君達にとって海は空なんだ」
「他の鳥達と同じで」
「そう、主な場所なんだ」
「海で泳ぐのに最適の身体なんですね」
「そうなんだ」
 実際にというのです。
「寒い南極の海で長い間泳いで獲物を手に入れる」
「そうした鳥ですね」
「だからあの体型なんだ」
「翼で泳ぐんですね」
「そうしているんだ」
 飛ぶのではなくです。
「あれも進化の一つだよ」
「生きものの」
「そうだよ、海では凄い速さで泳げるから」
「面白いですね」
「そうだね、じゃあ彼等も観るんだね」
「もう観てきました」
 既にという返事でした。
「ここに来て最初に」
「そうなんだね」
「物凄く楽しそうに泳いでました」
「何しろこの寒さだから」
「元気なんですね」
「雪まで降ってね」
「南極みたいに、いや違いますね」
 太田さんは自分のお言葉を訂正して言うのでした。
「南極よりはあったかいですね」
「あそこと北極は違うよ」
「寒さのレベルが」
「僕はどっちも行ったことがあるけれどね」 
 それでもというのです。
「物凄い寒さで」
「今よりもですね」
「とんでもなくね」
 だからだというのです。
「辛いよ」
「いるだけで」
「マイナス何十度にもなるから」
「今はマイナス五度もないですね」
「マイナス三度だよ」
 先生は携帯で今の神戸の温度をチェックして答えました。
「そう出ているよ」
「マイナス三度ですか」
「そうだよ」
「じゃあ南極よりも全然ですね」
「暖かいよ」
「ペンギン君達にとっては夏ですかね」
「ははは、そんな感覚かな」
 先生は太田さんの言葉に笑って応えました。
「とはいっても南極も北極も夏でもね」
「今の神戸よりも寒いですか」
「うん、そうだよ」
「やっぱり違いますね」
「だから若し行く時があれば」
「その寒さにはですね」
「覚悟しておいてね」
 とにかくというのです。
「そうしていてね」
「ううん、北極も南極も」
「どっちも相当に寒いから」
 だからだというのだ。
「行く時は覚悟していてね」
「わかりました、そこは」
「そして南極の方が寒いんだ」
 北極と南極を比べるとです。
「そちらの方がね」
「そうなんですね」
「特に冬はね」
 この季節はというのです。
「凄いから気をつけてね」
「そんなにですか」
「僕も最初に行った時は堪えたから」
 その寒さにというのです。
「ブリザードも凄くて。ただオーロラがあって」
「そのオーロラがですね」
「奇麗でね」 
 こちらのことをお話するのでした。
「一度見たら忘れられないよ」
「オーロラですか」
「君はオーロラ見たことあるかな」
「残念ですが」 
 太田さんは先生に少し困った感じの笑顔になってお話しました。
「苦手です」
「ああ、じゃあ機会があったらね」
「オーロラもですね」
「見ればいいよ」
「一度見てみたいですね」
「見ればそれがきっと財産になるよ」
 先生は太田さんに微笑んでこうもお話しました。
「君の芸術もね」
「とにかく何でも観ることですね」
「そうなるね、寒い世界のものでもね」
「是非ね」
「そうします」
 こうしたことをお話しました、そして先生は太田さんにあらためて言いました。
「それと君結構暖かい服装をしてるね」
「寒さには気をつけてます」
 見れば厚い生地のコートにズボンです、首にはマフラー頭にはニット帽で耳には耳当てまでしています。手にはミトンです。
「ズボンの下にはもう一枚。トランクスの上に穿いてます」
「ズボン二枚だね」
「ジャージを」
「それはいいね」
「寒いですから」
 だからだというのです。
「もう完全装備でいます」
「寒ければ服を着ろっていうけれど」
「そうしています」
 実際にというのです。
「寒くない様に」
「いいね、僕も実はね」
 いつものスーツに帽子、それにコートを着ていますが。
「シャツの上にセーターも着てるしズボンの下にもね」
「穿いてるんですね」
「日本で言う股引をね」
「そう言うとおじさんですね」
「ははは、年齢はそうだよ」
 先生は太田さんに笑って答えました。
「実際にね」
「そこでそう言われますか」
「言うよ、本当のことだからね」
 先生は笑って太田さんに言うのでした。
「僕はいいおじさんだよ」
「だから股引もですか」
「穿いてるんだ。あとカイロも持ってるよ」
 使い捨てカイロもというのです。
「背中に貼ってるよ」
「あれもいいですよね」
「偉大な発明品だよ」
 使い捨てカイロにこうも言うのでした。
「本当にね」
「僕もそう思います、今は使ってませんけれど」
「どうしても寒い時は使うね」
「そうしています、外で描く時に暖めてくれますから」
 だからこそというのです。
「そうしています」
「それもいいことだね」
「はい、寒い時を描く時は暖かくして」
 そうしてというのです。
「描いてます、あと暑い時は」
「涼しくしてだね」
「帽子を被ってお水も用意して」
「描いているんだね」
「そうしています」
「夏は熱射病や日射病に気をつけないとね」
「ですから」
 夏にお外で描く時はというのです。
「そうしています」
「そうしたことも備えてるんだね」
「はい、いつも」
「それは何よりだね、じゃあ僕はこれから爬虫類のコーナーに行くけれど」
「爬虫類ですか」
「彼等を観てくるよ」
「あそこは何処もお部屋の中は暖かくしてますから」
 熱帯と同じ気温にです。
「元気にやっていますね」
「うん、ただヨウスコウワニ君達は出ていないけれどね」
「その種類の鰐はですか」
「彼等は冬眠をするんだ」
「そうした鰐もいるんですね」
「唯一冬眠をする鰐君だよ」
 先生は太田さんにこのこともお話しました。
「彼等はね」
「鰐っていうと熱帯にいて」
「冬眠はしないってだね」
「思ってましたけれど」
「ヨウスコウワニ君は名前の通り揚子江、長江流域にいてね」
「中国の南の方の大きな川ですね」
「あそこは鰐君が住むには冬は寒くてね」
 だからというのです。
「冬眠もするんだ」
「そうなんですね」
「そうした鰐君もいることは覚えておいてね」
「わかりました、覚えておきます」
「そうしてね」
「そうしたことも覚えておくと」
 太田さんは考えつつ先生にお話しました。
「芸術のヒントにもなりますね」
「何でもヒントになるからね」
「はい、それじゃあ」
「色々観て回っていってね」
「動物園でも」
「是非ね、それで君は今度は」
「カバを観ようかって思っています」
 この生きものをというのです。
「そう考えています」
「彼等をなんだ」
「はい、そう考えています」
「彼等も熱帯の生きもので」
「日本の冬は辛いですね」
「だから今は隠れているよ」
 表には出ないでというのです。
「中に入っているよ」
「じゃあ中に行って」
「これは他の熱帯の生きもの達と同じだけれどね」
「観てきます、それとゴリラも」
 太田さんは笑顔でさらに言うのでした。
「観てきます」
「それは何よりだね。彼等は凄く賢いんだよ」
「実は優しい性格なんですね」
「完全な菜食主義でね」
 先生は太田さんにゴリラのこともお話しました。
「穏やかで暴力を知らないんだ」
「そう聞いてます」
「外見でよく誤解されるけれど」
「その実はですね」
「森の賢者と言われる位ね」
「優しくて賢い」
「そうした生きもの達なんだ」
 それがゴリラ達だというのです。
「怖がることはないよ」
「生きものも外見で判断してはいけないですね」
「そうだよ、人もそうだけれどね」
「外見じゃわからないですね」
「うん、そのことは人として覚えておいてね」
「肝に銘じます、それじゃあまた」
「うん、またね」
 笑顔で一時のお別れをしてでした、先生と太田さんは別の生きもの達を観に行きました。そしてその後ででした。
 爬虫類のコーナーで熱帯の爬虫類達を観ている先生にです、動物の皆が言ってきました。
「太田さん明るいね」
「いつも通り」
「スランプっていうけれど」
「あまりスランプに見えないわ」
「というか前より明るい?」
「そうかも」
 こう言うのでした。
「何かね」
「ひょっとしてスランプから抜け出ようとしてる?」
「そうかも」
「前よりも明るくなって」
「そうなってる?」
「少なくとも前向きなままだね」
 先生はこう皆に答えました。
「彼は」
「うん、そうだね」
「むしろ前よりも前向きだよ」
「あれじゃあスランプ抜け出られそうだよ」
「すぐにでもね」
「そんな感じがするわ」
「トンネルを出るのは近いかな」
 実際にこう言った先生でした。
「彼は」
「じゃあもう一押し?」
「太田さんがスランプ出るには」
「じゃあ先生もね」
「太田さんの背中をだね」
「押せられたら」
 それならとです、先生も言いました。
「そうさせてもらおうかな」
「先生はここで強く動きはしないけれど」
 トートーは先生のことの性格を指摘しました。
「必ず動きよね」
「先生流の穏やかで落ち着いた押し方でね」
「そうしてるわね」
 チープサイドの家族も言います。
「こうした時はね」
「いつもそうだよね」
「だから今回も」
 ダブダブは先生の横で木に巻き付いてボールみたいになっているエメラルドボアを見つつ言うのでした。
「そうするのかな」
「あれしろこれしろって押し付けないけれど」
 ホワイティは先生のその気質をよくわかっています。
「穏やかなアドバイスがいいんだよね」
「その人の状況を見た的確なものだし」
 老馬はこのことを指摘しました。
「いいんだよね」
「口調も穏やかで強制とか絶対にしないのがね」
 まさにとです、ポリネシアも言いました。
「またいいのよ」
「だから皆聞くんだよね」
「先生の言うことを」
 オシツオサレツもよく知っていることです。
「強制されたら反発する人もいるけれど」
「穏やかなアドバイスだからね」
「そうそう、先生の言うことだとね」
 チーチーはうんうんと頷いています。
「素直じゃない人も聞けるんだよね」
「だから太田さんにしても」
 ジップは太田さんのことを考えるのでした。
「聞いてくれるね」
「きっとそうね」
 ガブガブが最後に太鼓判を押しました。
「先生の言うことなら」
「うん、僕でよかったら」
 先生もいつもの銚子で言います。
「お話させてもらうよ」
「そうだね、じゃあね」
「太田さんにアドバイスしてあげましょう」
「気付いたことがあったら」
「そうしましょう」
「それが彼の今回のスランプ脱出の最後の一押しになるのなら」
 先生は微笑んで言いました。
「僕も嬉しいね」
「よし、それじゃあね」
「今はよね」
「太田さんの状況を見て」
「アドバイスをしましょう」
「それがいいね」
 先生も頷きます、そうしてアフリカや中南米の爬虫類達を見ていきますが一緒に観ている動物の皆は今度はこんなことを言いました。
「皆ジャングルにいる生きものだけれど」
「いつも思うけれど違うわね」
「外見も大きさも」
「結構ね」
「そうだよ、ジャングルといってもね」
 先生も皆にお話します。
「アフリカのジャングルとブラジルのアマゾンじゃ違うんだ」
「まただね」
「別のジャングルよね」
「それぞれが違う」
「そうよね」
「そうだよ、皆どちらも行ったことがあるね」
 先生は皆にこうも尋ねました。
「それで観てきたけれど」
「言われてみれば違うわね」
「実際にね」
「どうにも」
「アマゾンはね」
 それこそというのです。
「あまりにも独特だよね」
「うんうん、凄い川だからね」
「あそこの川はね」
「長くて幅も広くて」
「その周りをジャングルが覆っていて」
「その中に色々な生きものがいるんだよね」
「彼等もいるしね」
 先生は赤と黒、白のストライブ模様の蛇達を観ています。とても奇麗で目立つ外見をしています。
「サンゴヘビ君達も」
「アナコンダさんとかね」
「物凄く大きな蛇さんもいるしね」
「あと鰐さんもいるし」
「爬虫類の人達も色々ね」
「うん、それで僕が思うに」
 先生は皆にこうも言いました。
「アフリカもだけどアマゾンは特にね」
「特に?」
「特にっていうと?」
「まだ発見されていない生きものがいるね」
 そうだというのです。
「多分ね」
「いるかな、やっぱり」
「まだ発見されていない生きものが」
「アマゾンには」
「そうだっていうのね」
「若しくは絶滅したと思われている生きものが残っているかも知れないよ」
 先生はこちらのお話もしました。
「人間の知っていることは本当に僅かだからね」
「だからアマゾンもだね」
「まだまだだね」
「いるかも知れない」
「そうかも知れないんだね」
「そうだよ、ニホンオオカミ君達もそうだったね」
 彼等もというのです。
「絶滅していたと思ったら」
「そうそう、いたよね」
「先生の大発見だったね」
「前から噂になっていたらしいけれど」
「本当にいてね」
「びっくりしたわ」
「そうしたこともあるからね」
 だからというのです。
「アマゾンにもまだね」
「発見されていない生きものがいる」
「若しくは絶滅したと思われていた生きものが」
「あの中にいるんだね」
「そうかも知れないんだ」
「そうだよ、森の中だけじゃなくて川の中にも」
 ジャングルだけでなくです、アマゾン川のその中にもというのです。
「いるかもね」
「そういえばあそこに凄く大きなアナコンダの噂あるね」
「二十メートル以上あるとか」
「あの噂本当?」
「見たって話が多いけれど」
「今そんな蛇さんいるの?」
「そこまで大きな蛇さんが」
「いるかも知れないね」
 先生はそのアナコンダを観つつ答えます、皆と一緒に観ているその大蛇は七メートルはあります。これだけでも相当な大きさですが。
「このアナコンダ君の三倍位の大きさのね」
「三倍ってね」
「鰐さんでも一飲みじゃない」
「あそこにいる生きもの全部よ」
「もう何?」
「怪物みたいよ」
「昔はティタノボアっていう大蛇がいてね」
 先生は大昔の生きものにも詳しいです、それでこの蛇のこともお話するのでした。
「十三メートルあったらしいよ、骨格も残っていて見たけれど」
「十三メートルね」
「それ相当よね」
「このアナコンダさんの二倍近いから」
「もうね」
「お化けみたいよ」
「そう、それで相当な大きさだったんだ」
 十三メートルのその骨格もというのです。
「博物館の二階の天井から一階まで螺旋状に飾られていたけれど」
「それで一階の床まであるんだ」
「凄い大きさね」
「僕達皆一飲みじゃない」
「恐竜みたいよ」
「十三メートルでそうだから」
 先生のお話は続きます。
「二十メートル以上になると」
「もうどんなのかしら」
「この動物園でも飼育出来ないわね」
「恐竜みたいじゃない」
「そこまで大きいと」
「恐竜もいるんじゃって噂があるしね」
 アマゾンにはです。
「これはアフリカでもどの国でもあるけれどね」
「ネッシーとかね」
「スコットランドのあれは有名よね」
「先生も何度かネス湖に行ってるけれどね」
「やっぱりネッシーはいるのかしら」
「恐竜かしら」
 皆こうも考えるのでした。
「やっぱりね」
「いるのかしら」
「どうかしら」
 皆言うのでした、ネッシーのことについても。
「いても恐竜じゃない?」
「アシカとか鯨とか?」
「大きなお魚とかね」
「正体は色々だけれど」
「一体何かしらね」
「そこはわからないわね」
「僕は恐竜じゃないかもって思うけれど」
 それでもというのです。
「やっぱりいると思うよ」
「ネス湖にはね」
「ネッシーはいる」
「先生はいつもそう思っているね」
「うん、目撃例の中には間違いないと思えるものも多いよ」
 ネッシーのそれにはです。
「残っている写真だってね」
「違うって写真も多いけれど」
「間違いないっていう写真もだね」
「ちゃんとあるから」
「だからネッシーはいる」
「先生はそう思っているのよね」
「グーグルの写真でもあったからね」
 ネス湖にです。
「これはっていう写真が」
「そう思うと無下に否定しても」
「そうしても何もならないわね」
「いないって頭から決めても」
「何もならないわね」
「そう、あらゆる学問は否定からはじめると進まないよ」 
 それこそ一歩もというのです。
「全くね」
「そうだね、それはね」
「科学でもアニメや特撮を科学的に検証して否定してる本あるけれど」
「今の科学を絶対として否定している」
「先生はそう言ってるよね」
「今の科学技術も絶対じゃないよ」
 先生は言い切りました。
「完璧じゃないんだ」
「まだまだ何もわかっていない」
「どんどん進んでいくものだから」
「今の技術で否定しても」
「それでもだね」
「何もならないんだね」
「しかもその科学知識が間違っている場合も多いから」
 先生は穏やかですがそうした考えをはっきりと否定していました。
「そうした考えは何もならないよ」
「取るに足らないんだね」
「そうしたものだね」
「それに過ぎないんだね」
「そう、だからどんどんね」
 それこそというのです。
「夢を持って出来る、見付けるって思うことが大事なんだ」
「学問については」
「そうすべきなんだ」
「今の知識だけで駄目だの出来ないだの言うのは学問じゃないんだ」
 先生はこうも言いました。
「それじゃあ何もしない方がいいよ」
「無理だ、出来ないってしか言わないよりも」
「それよりもだね」
「出来るって思う」
「そうして進むことが」
「何よりも大事なんだよ」
 こう言うのでした。
「今の知識や技術が絶対じゃない」
「それを絶対視してあれは駄目、これは出来ないとかね」
「そんなことばかり言う人はだね」
「駄目」
「進歩がないっていうんだね」
「そしてそうした本を読んでも」
 そうした人が書いた本もというのです。
「面白くないよ」
「やっぱりそうだよね」
「夢を頭から否定しているからね」
「何の生産性もないし」
「読んでもためにならないよね」
「うん、僕が思ったことは」
 先生は感想もお話しました。
「この人は悪い意味で才能があるのかなって思ったよ」
「悪い意味?」
「っていうと?」
「うん、面白くない本を書くね」
 そうした才能がというのです。
「ある人じゃないかなってね」
「いい才能じゃないわね」
「というか無駄な才能じゃない」
「あれは駄目これは出来ないとか言うだけでね」
「面白くない本を書く才能があるって」
「だからその人の本は一冊読んでね」
 そうしてというのです。
「もう読んでないよ」
「読んでも無駄みたいだしね」
「正直その方がいいね」
「というかそんな才能いらないわ」
「無駄なだけじゃない」
「そうしたことに情熱をかけるより」
 それよりもというのです。
「建設的な方に情熱をかけないと」
「駄目だね」
「その人にとってもよくないわね」
「才能も建設的な方に向けないと」
「よくないってことだね」
「誰にとってもよくないよ」
 読む人、関わる人、ご本人にとってもというのです。
「それこそね」
「学問は否定するものじゃなくて」
「可能性を見出すものでね」
「夢を以て行う」
「どうすれば出来るのか」
「そうして考えていくべきものね」
「そうだよ、あらゆる学問がそうなんだよ」 
 それこそというのです。
「僕はずっとそう思ってるよ」
「学問は前に進むものである」
「先生の考えの一つだね」
「否定するよりまずは可能性を考える」
「そうよね」
「うん、可能性はね」 
 それこそというのです。
「まず見出すものなんだよ」
「そうだね」
「じゃあ僕達もその先生と一緒にいてね」
「可能性を見出していくよ」
「あらゆることにね」
「そうしていけばいいよ、じゃあね」
 それならというのでした。
「僕はここでもね」
「動物園の中でもだね」
「学問に励むんだね」
「そうするんだね」
「そうするよ、さて次はね」 
 明るく言う先生でした。
「何処に行こうか」
「まあ何処でもいいんじゃない?」
「先生のお好きな場所にね」
「気が向いたところに行く」
「そうしてもね」
「そうだね、じゃあ今度は」
 先生は皆の言葉を聞いて言いました。
「鳥類のコーナーに行こうかな」
「そっちだね」
「そっちに行くんだね」
「じゃあ僕達もね」
「一緒に行くよ」
 皆も先生についていくというのでした、いつもと一緒で。そして実際にでした。
 皆は先生と一緒に鳥類のコーナーに行きました、先生は冬の動物園でも学問を楽しみました。そこにいる様々な生きもの達を観て。



先生たちはいつも通りかな。
美姫 「そうね。雪でも皆と楽しそうにね」
良い事だな。
美姫 「確かにね。で、太田さんの方は」
こちらも復調の兆しか。
美姫 「果たしてどうなるかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」
ではでは。



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