『ドリトル先生と奇麗な薔薇園』




                  第一幕  青い薔薇

 ドリトル先生はお医者さんですが他にも様々な学問を楽しんでいてかなりの数の博士号を持っています。まさに学問については何でも博士です。
 その先生にです、王子は先生のお家に来てお話をしていました。
 王子はちゃぶ台を囲んで座ってそうしてお茶を飲みながら先生に言うのでした。
「この前祖国から絵葉書が送られてきたけれど」
「どんな絵葉書だったのかな」
「うん、あらゆるお花が咲き誇っているね」
「そのお花達と撮ったなんだ」
「とても素敵な絵葉書が送られてきたんだ」
「それでその絵葉書を見てだね」
「僕も祖国の奇麗なお花を観ようと思ったんだけれど」
 ここで先生に言うのでした。
「日本にいるとね」
「うん、日本にも沢山のお花が咲き誇っているけれどね」
「南国のお花はね」
 王子のお国があるアフリカ、アフリカでも熱い場所にあるそこに咲く様なお花はどうしてもというのです。
「沖縄かね」
「植物園でもないとね」
「観られないよね」
「うん、どうしてもね」
「神戸にいたらね」
「温帯のお花ばかりだね」
「どうしてもそうだよね」
「気候上仕方ないよ」
 このことはというのです。
「そのことは」
「菊とか百合とか菖蒲とかね」
「王子はそうしたお花も好きだね」
「うん、ただ日本にいたら」
「どうしてもね」
「日本人は本当に桜が好きだね」
 王子も心から思うことでした。
「もう桜がないとね」
「どうしようもない位にだよね」
「桜が好きだね」
「そうだね、もうどんなお花よりもね」
「日本人は桜だね」
「そこは日本人は譲れないね」
「うん、ただね」
 王子はこう言ったのでした。
「僕としてはね」
「王子は王子でね」
「ハイビスカスとかね」
 熱帯のこのお花を出すのでした。
「ああしたお花がね」
「第一だね」
「そうなんだ、国花もね」
「王子の国花はそのハイビスカスだったね」
「だからね」
 それ故にというのです。
「絵葉書に出ていたお花達もね」
「観ていてよかったって思ったんだ」
「そうなんだ、だから観たくなったから」
 その南国の、お国でも咲き誇っている花達をというのです。
「植物園に行こうかな」
「八条大学のかな」
「うん、これからね」
「いいことだよ。今日は休日だけれど」
 それならと言う先生でした。
「その休日の過ごし方としてもね」
「いいよね」
「うん、じゃあ僕もご一緒していいかな」
 先生もお茶を飲みつつ王子に言いました。
「そうしていいかな」
「そうだね、僕と爺やだけで言ってもね」
 今もお傍に控えてくれている執事さんを見て言うのでした。
「寂しいし」
「それならね」
「先生も一緒にね」
「そう、そして僕が行くと」
 先生は今も周りにいる動物の皆を見回しました、皆今もくつろいでとてものどかなお顔でいます。
「皆も一緒だよ」
「そうして余計に賑やかになるね」
「だからね」
「賑やかに楽しむ為にも」
「皆で行こう、トミーが今お買いものに出ているけれど」
 ご近所のスーパーにそうしているのです。
「トミーが帰ってきたらね」
「トミーと一緒にだね」
「うん、行こう」
 植物園まで皆でというのです、こうお話してです。
 先生達は実際にトミーが帰ってからお家の戸締りをしてから皆で大学の植物園まで行きました。そうしてです。
 王子はまずは南国のコーナーに行ってそこに咲き誇っているお花達を観ました、そのうえで笑顔で言いました。
「やっぱりハイビスカスとかを見るとね」
「王子としてはだね」
「一番いいお花を見たって思えるよ」
 まさにというのです。
「本当にね」
「そうだね、その国それぞれのお花があってね」
「そのお花を見ることはね」
「最高の楽しみの一つだよ」
 まさにというのです。
「僕もそう思うよ」
「そうだよね」
「日本人が桜をこよなく愛している様にね」
「あの思い入れがね」
「王子にとってはハイビスカスだね」
「このお花になるんだ」
 そのハイビスカスを見て言うのでした。
「だからね」
「今見てだね」
「幸せな気持ちだよ」 
 本当にというのです。
「僕もね」
「それは何よりだね、ただ」
「ただ?」
「先生もだよね」
 こよなく愛しているお花があるというのです。
「そうだよね」
「うん、僕もね」
「やっぱりあるよね」
「あるよ、それは薔薇だよ」
「イギリスの国花だね」
「うん、国花であることを置いておいてもね」
 イギリス人としてというのです。
「僕は薔薇が大好きなんだ」
「そうだよね」
「見ているとそれだけでね」
「幸せな気持ちになれるんだね」
「薔薇園でティータイムとかね」
 こうしたことをすればというのです。
「もう最高に幸せだよ」
「そこまでなんだね」
「うん、今日のティータイムはそうしようかな」
「いいですね」 
 先生のすぐ傍にいたトミーが先生の提案に笑顔で応えました。
「それじゃあ今日の三時は」
「うん、この植物園の薔薇園でね」
「ティータイムをしましょう」
「そうしようね」
「この植物園の薔薇園は凄いですか」
「一面に色々な種類の薔薇が咲き誇っていてね」
「あんな薔薇園は他にないです」
 それこそと言うトミーでした。
「いえ、あるとしたらイギリス王室の」
「宮殿とかにあるね」
「そうした花園位ですね」
「全くだよ」
 実際にと言う先生でした。
「この植物園の看板の一つだしね」
「それだけにですね」
「あの薔薇園はね」
 本当にというのです。
「凄いよ」
「だからですね」
「あそこでティータイムを楽しもうね」
「わかりました」 
 トミーも笑顔で頷きました、そしてです。
 皆で一緒に南国のコーナーを巡って他のコーナーも巡ってでした、途中お昼御飯も食べてそれからです。
 午後も植物園を回って三時の薔薇園に入りましたが。
 そこで、です。動物の皆はお茶を飲みはじめた先生に尋ねました。
「色々な薔薇があるけれど」
「青い薔薇もあるね」
「青い薔薇まであるなんてね」
「凄いよね」
「確か青い薔薇は」
 ここで言ったのはガブガブでした。
「昔はなかったんだよね」
「人の手で生み出されたものだったわね」
 ダブダブも言います。
「そもそも」
「赤や白の薔薇と違ってね」
 トートーもその薔薇達を見ています。
「そうだったね」
「本当に色々な薔薇が咲き誇っているけれど」
 ジップは黄色い薔薇も見ました、本当に奇麗な黄色の薔薇達で香りも素晴らしいです。
「青い薔薇はちょっと違う感じがするね」
「有り得ないけれどここに実際にある」
 ホワイティはこう言いました。
「そんな感じかな」
「そうそう、有り得ないものってね」
 ポリネシアはホワイティに応えました。
「青い薔薇って言ったわね」
「それだけ有り得ないものだったのに」
 チーチーの口調もしみじみとしています。
「今はあるんだね」
「不思議だよね」
「本当にそうね」
 チープサイドの家族も思うのでした。
「そんなものが今はあるなんて」
「そして僕達が見ているなんて」
「うん、それだけにね」
 老馬もその目で青い薔薇を見ています。
「素晴らしいものを見ているって思えるよ」
「赤、白、黄色、ピンク、紫、黒にね」
「そして青い薔薇」
 オシツオサレツも二つの頭でお話します。
「どの薔薇も素晴らしいけれど」
「青い薔薇も加わると余計に凄く思えるね」
「うん、僕もね」
 先生もその薔薇達を見て思うのでした。
「素晴らしいと思うよ、青い薔薇もあってね」
「人間が生み出したお花だね」
「青い薔薇は」
「まさにそうだよね」
「何といっても」
「うん、ただね」
 ここでこうも言った先生でした。
「よく人の手で生み出すことはって言うよね」
「そうそう、神様がする仕事だから」
「人間がするのはどうか」
「そう言う人もいるよね」
「特にキリスト教の人で」
「それを言ったら品種改良は出来ないからね」
 だからと言う先生でした。
「作物だって」
「だからそう言うとだね」
「進歩が止まってしまうんだね」
「麦やジャガイモだって品種改良されていったし」
「薔薇もよね」
「青い薔薇だって」
「あってもいいと思うよ。神様は人の成長を待ち望んで見守ってくれているから」
 それが先生の思う神様の気持ちです。
「科学だってそうした品種改良だってね」
「いいんだね」
「より素晴らしいものを生み出していくことは」
「人間が努力して」
「そうしていくことは」
「そう思うよ」
 まさにというのです。
「より奇麗なもの、素晴らしいものを生み出していくことはね」
「だから青い薔薇を楽しめる」
「先生はそうだよね」
「じゃあ今もだね」
「楽しめるね」
「そうだよ、お茶もだけれどね」
 今飲んでいるミルクティーのミルクとお砂糖での甘さも楽しみつつ動物の皆にお話するのでした。
「青い薔薇も楽しんでいるよ」
「それは何よりだね」
「ティーセットのバウンドケーキとエクレアとチョコレートも美味しいし」
「だからね」
「本当に素敵なティータイムになってるわね」
「そうよね」
「うん、ただね」
 ここでこうも言った先生でした、薔薇達を見ながら。
「少し気になることがあるね」
「あっ、結構ね」
「虫食いあるね」
「特に歯に」
「そうだね」
「うん、これは問題だね」
 こう言うのでした。
「他のコーナーでも気になったけれど」
「植物にはどうしても虫がつくね」
 王子がこう言いました。
「それは仕方ないね」
「そう、温室だと余計にね」
「いつも暖かいからね」
 それこそ冬でもです。
「だからね」
「虫が住む様になってね」
「その虫達がだね」
「自然とね」
「お花の葉や茎を食べたりお汁を吸ったり」
「お花自体にもだよ」
 まさにというのです。
「ついてね」
「食べたりするね」
「悪いことばかりじゃないけれどね」
「受粉もさせてくれるからね」
「うん、蜂や虻達がね」
「このことはいいけれど」
「悪い虫というけれど」
 こうも言う先生でした。
「毛虫とかアブラムシとかがね」
「草木を痛めるから」
「あまりよくないんだよね、植物園では」
「そうだね」
「これはね」
 さらに言う先生でした。
「何とかしないとね」
「虫が増えたらね」
「うん、よくないよ」
 こう王子にお話しました。
「これ以上はね」
「そうだよね、やっぱり」
「かといってお薬はね」
 こちらはといいますと。
「草木を痛めて環境にもよくないしね」
「そうそう、虫をかなり殺すとなるとね」
「草木にもよくないよね」
「そして見る私達にも」
「どうしても」
「沈黙の春という本があるけれど」 
 先生もこの本を読んでいます。
「強過ぎる農薬は使わざるを得ないのは事実でも」
「農業をしているとだね」
「もう仕方ないんだね」
「それだけ虫が多いから」
「その虫を何とかしないといけないから」
「うん、けれど農薬を散布したら」
 実際に使った時はというのです。
「その日体調が悪いっていうしね」
「自分にも農薬がかかって」
「それでだね」
「どうしても身体の調子が悪くなるんだね」
「そうなのね」
「それで農薬を使うなと言ってもね」
 先生は言いながら日本にあるとある料理漫画のことを思い出しました、原作者の人がとにかく問題を起こし続けている漫画です。
「現実はね」
「うん、使わざるを得ないよね」
「虫の多さと害を考えると」
「今の農業では」
「農薬は」
「そうだよ、さもないと農作物が虫にやられてね」
 そのかなり多い彼等によってです。
「収穫も出来も悪くなるからね」
「仕方ないよね」
「このことは」
「本当に農作物には虫がつくから」
「草木にもだけれど」
「だから農業では使わざるを得ないよ」
 農業ではというのです。
「けれど植物園の中で使うとね」
「危ないよね」
「お花は温室の中にあったりするし」
「どうしてもね」
「植物園で農薬は使えないね」
「この薔薇園にしても」
「うん、ここでもだよ」
 本当にとです、先生は動物の皆に答えました。
「使いにくいよ」
「実際にね」
「そうだよね」
「じゃあどうすればいいのか」
「それが問題だね」
「うん、本当にね」
 こう答えた先生でした。
「植物のあるところ虫もだけれど」
「この薔薇園にしても」
「いるしね」
「それで草木を食べたりするから」
「挙句にはお花まで」
「一度植物園の人に聞いてみるよ」
 先生はこのことを問題と思ってです、こうすることを決意しました。
「そうするよ」
「そしてだね」
「実際にこの問題を解決するんだね」
「そうするのね」
「そう考えたよ」
 今というのです。
「そうするよ」
「そこは先生だね」
「先生らしいよ」
「問題があると思ったら聞いてね」
「必要なら解決の為の力を貸すんだね」
「僕の力は微々たるものだけれど」
 謙遜ではなく実際にこう思っています、この辺り先生はとても謙虚です。ですが今はお茶の時間なので。
 お茶を楽しみました、そしてその後で。
 植物園の人に薔薇園の虫達のことをお話しますと植物園の人は先生に困ったお顔でこう答えたのでした。
「私達も手入れしていますが」
「それでもですか」
「人手が足りなくて」
「薔薇園だけじゃないですからね」
「はい、どうしても駆除しきれていないです」
 それが実情だというのです。
「これが」
「そうでしたか」
「はい、それでなんです」
「ああしてですね」
「虫がいまして」
 それでというのです。
「薔薇も傷つけられています」
「そして他の花や草木も」
「そうです、本当に見付け次第駆除していますが」
「植物園もやることが多いですしね」
「はい、ですから」
 そのせいでというのです。
「私達も困っています」
「駆除しきれていないですね」
「そうです、ここで農薬を散布しますと」
「肝心の草木にも人にもよくないですからね」
「はい、それに虫に耐性が出る可能性もあります」
 農薬で駆除しないといけない害虫にです。
「そうなっては余計に強い農薬を使い」
「また耐性が出来てですからね」
「悪循環ですし」
「農薬はですね」
「農場なら仕方ないですが」
 それでもというのです。
「植物園ではです」
「使いにくいですね」
「特に温室が多いこの植物園では」
 若し温室の中で使えば余分な農薬が外に出ず中に籠ってです、余計に植物や人を傷めてしまうのです。
「使えないので」
「難しいですね」
「それで私達も困っています」
「そうですか」
「いい解決案を探しています」
 植物園の人達もというのです。
「そうしています」
「わかりました、では」
「あっ、先生がですか」
「はい、僕も考えさせてもらっていいですか?」
 こう植物園の人に申し出るのでした。
「そうしていいですか?」
「お願いします」
 先生の申し出を渡りに舟とばかりにです、植物園の人は先生に是非にというお顔で応えて言うのでした。
「ここは」
「はい、それでは」
「知恵を出して下さい」
「そうさせてもらいますね」
「そうだった、八条学園には先生がいて」
 ドリトル先生、この人がというのです。
「助けてくれるんです」
「いえ、僕なんかとても」
「いえいえ、先生が助けてくれるなら」 
 もうそれだけでというのです。
「その問題は解決しますから」
「そうですか?」
「これまで学園で起こった問題で先生が協力してくれて解決しなかった問題はないです」
「そうなんですか」
「はい」
 その通りという返事でした。
「ですからもうこの問題もです」
「解決したとですか」
「そうなりました」
 ここでそうなったも同然と言う人が多いですが植物園の人はこう言うのでした。
「では早速園長さんにお話します」
「早いですね」
「急ぐべきことは急がないと」
 それこそというのです。
「では今日はもう遅いですから明日です」
「貴方が園長さんにお話してですね」
「はい」
 それからというのです。
「おそらく園長さんから先生にお話がありますので」
「それで、ですね」
「宜しくお願いします」
「それでは」
「はい、そういえばです」
 ここでこうも言った植物園の人でした。
「この学園は何かと虫が多いですね」
「植物が多いだけに」
「桜にも」
「桜は元々毛虫が多いですから」
 とてもつきやすいのです。
「他の草木、お花にも」
「蜂や虻もですね」
「蜂や虻は近寄らないといいんです」
 それでというのです。
「そうしないと刺さないですから」
「それはその通りですね」
「まあスズメバチは別ですが」
「あの蜂は放っておけないですね」
「とても」
 植物園の人もこの蜂についてはこう言います、それもかなり困っているお顔で。
「この前も農学部の方の森に巣がありまして」
「スズメバチの巣が」
「農学部の子が襲われて刺されそうになったんですね」
「刺されなくてよかったですね」
「はい、ですが駆除の人達が出て」
 そうしてというのです。
「何とかしました」
「スズメバチは仕方ないですね」
「はい、放っておいたらそれこそです」
「何人も刺されますからね」
「ですから」
 それでというのです。
「もう見付けてすぐにです」
「巣ごと駆除しましたね」
「森の方にも人がよく行きますから」
「部活のランニングコースでもありますしね」
 森の間の道を走るのです。
「高等部の子達がよく走っていますね」
「だからです」
「もうすぐにですね」
「駆除しました」
「そうしたこともあったんですね」
「そうです、まあスズメバチは置いておいて」
 植物園の人は先生にさらにお話しました。
「他にも虫が多くて」
「色々困っていますか」
「そうなんです、学園全体で」
「そして植物園でもですね」
「はい、どうしたものか」
「そこを考えさせてもらいますので」
 今からと言う先生でした。
「宜しくお願いします」
「それでは」
 植物園の人はあらためて先生にお願いしました、こうして先生は植物園の虫の問題の解決にあたることになりました。
 そのお話の後で皆でお家に帰りましたがここで、です。動物の皆は先生にこぞって言うのでした。
「さて、今度はね」
「どうしたものだろうね」
「植物園の虫の駆除ね」
「あの植物園広いけれど」
「どうするの?」
「そうだよ、あの植物館人手多い方だけれどね」
 そうした植物館だとです、王子も自分のお家に帰る前に先生のお家に寄っているのでそこで言うのでした。
「それでも広くて色々お仕事があってね」
「虫の駆除まではね」
「していてもだよ」
 それでもというのです。
「しきれていないから」
「それをどうにかするかだね」
「うん、それで先生に知恵は」
「今はないよ」
「ないんだ」
「ちょっとね、けれどね」
「申し出たからにはだね」
「うん、絶対にね」
 人との約束、それが誰であっても絶対に守るのが先生です。律儀さでも先生は皆から信頼されている人なのです。
「果たすから」
「そうするからだね」
「うん、絶対に出すよ」
 解決案、それをというのです。
「そうするよ」
「そうだね、じゃあ僕もね」
「協力してくれるんだね」
「絶対にね」
 こう約束するのでした、王子も。
「一緒にいるから」
「宜しく頼むよ」
「その様にね」
「ううん、ただね」
「虫の問題は厄介だよ」
 オシツオサレツがここで言いました、その二つの頭で。
「小さいけれど数が多くてね」
「あちこちにいるからね」
「そうそう、だからだね」
「植物園の人達も駆除しきれていないのよ」
 チープサイドの家族も言います。
「隅から隅までいるし」
「それも隠れるから」
「薔薇だけじゃなくて色々なお花や草木にいてね」
 ポリネシアも困ったお顔で述べます。
「荒らすから」
「一気に駆除するなら本当に農薬だけれど」
 トートーはあえて農薬をお話に出しました。
「使えないしね、今回は」
「そうよね、制約があるのがね」
 まさにと言うダブダブでした。
「問題ね」
「さて、どうしたものかな」
 チーチーは腕を組んで考えるお顔になりました。
「ここは」
「農薬は駄目、されど相手は多い」 
 ホワイティはこの現実を指摘しました。
「厄介な問題だね」
「けれど先生は引き受けたら絶対に約束を守る人だから」
 このことを言ったのはガブガブでした。
「今回もだね」
「けれどどうしたらいいかな」
 老馬も考えていますが名案は出ません。
「植物園の害虫駆除は」
「明日園長さんとお話するにしても」
 最後にジップが言いました。
「難しい問題だよ」
「こうした問題は植物を扱ってると常ですね」
 まさにと言ったトミーでした。
「このことは」
「うん、はっきり言うとね」
 実際にとです、先生もトミーに答えます。
「避けられない問題だよ」
「そうですね」
「うん、どうしたものか」
「人類が昔から直面していることですね」
「それこそ農業をはじめてからね」
 まさにこの頃からというのです。
「対している問題だよ」
「そうですよね」
「だから農薬も発達しているしね」
「虫の問題が深刻なだけに」
「無農薬野菜は魅力的な言葉でも」 
 如何にも健康そうに聞こえる、そうだというのです。
「けれど虫にかなり食べられるリスクがあってね」
「生活の為に農業を営んでいると」
「虫の駆除だけで大変な労苦だから」
 虫を探し回って見付けて駆除するだけでもです。
「難しいよ」
「それが現実ですね」
「そう、現実はね」
 まさにというのです。
「中々そうはいかないんだよ」
「そうですよね」
「うん、だから農薬はね」
「必要ですね」
「そうだよ、よく無農薬だハウス栽培も駄目だとか言う人がいるけれど」
 先生はここでも日本の有名な料理漫画を思い出しました。
「現実を知らない人だよ」
「農業を」
「そう、だからね」
「現実を知っていますと」
「そんなことは言えないよ」
「農薬を使うなとかハウス栽培をするなとか」
「そう、言えないよ」
 とてもというのです。
「ハウス栽培だって何時でもどんなお野菜や果物が食べられて」
「栄養だってそうですね」
「そうだよ、収穫の季節や栽培している土地のことを考えると」
「採れた作物の栄養が極端に低いとか」
「それはですね」
「一概に言えないよ」
「そうですか」
「そう、本当にね」
 それこそというのです。
「そこまで考えて言ったり書かないと」
「よくないですね」
「それが売れている漫画とかだったらね」
 まさにその料理漫画です。
「世の中に与える悪影響は計り知れないよ」
「テレビでもそうですね」
「日本でもイギリスでもテレビの影響は大きいよね」
「そして害毒も」
「そう、これはどうも日本だけじゃないよ」
 テレビの害毒、それはというのです。
「本当にね」
「それが現実ですね」
「そう、それでお花や草木のことに戻るけれど」
「虫ですね」
「どうしたものか」
 本当にというのです。
「考えていかないとね」
「さもないと植物園が荒れたままですからね」
「そう、明日正式に引き受ける話が決まるけれど」 
 それでもというのです。
「今からね」
「考えていきますね」
「そうするよ、それとね」
「それと?」
「晩御飯は何かな」
 今日のそれはというのです。
「一体」
「あっ、晩御飯ですね」
「うん、何かな」
「はい、鮟鱇鍋です」 
 トミーは先生ににこりと笑って答えました。
「このお鍋です」
「鮟鱇鍋なんだ」
「それです」
「いいね、鮟鱇もね」
「美味しいですよね」
「大好きだよ」
 先生が日本に来て知った味です。
「あのお鍋もね」
「鮟鱇自体が美味しいからね」
「肝が特に美味しいんだよね」
 王子もお話に入りました。
「鮟鱇は」
「そうなんだよね」
「そう、そしてね」
「肝もだね」
「食べたいんだ」
 鮟鱇は是非にというのです。
「それでね」
「勿論用意してるよ」
 その肝もと言うトミーでした。
「ちゃんとね」
「そう、それじゃあね」
「今から作るから」
「それではです」
 執事さんがここで動きました。
「私もお手伝いさせて頂きます」
「あっ、すいません」
「いえいえ、では今からですね」
「はい、お野菜を切って」
「鮟鱇は」
「一匹丸ごとお店の人に切ってもらっていまして」
「そちらはですか」
「もうお鍋に入れるだけです」
 それでいいというのです。
「安心して下さい」
「そうですか」
「はい、ですから後は」
「お野菜を切るだけですね」
「そうです」
「では二人でやればすぐですね」
「そうですね、もう本当に」
 まさにと答えるトミーでした。
「それですぐです」
「では楽ですね」
「はい、本当に」
 二人でお話してです、早速でした。
 お野菜を切ってです、鮟鱇鍋に入りました。ですがここで。
 先生は鮟鱇についてこんなことを言いました。
「鍋にすると最高に美味しいけれど」
「あれっ、他にも鮟鱇料理あるんだ」
「お鍋以外にも」
「そうなの」
「うん、唐揚げにしても美味しいしね」
 動物の皆にお話します。
「ムニエルもいいみたいだね」
「そうなんだ、ムニエルもいいんだ」
「ムニエルにしても美味しいんだ」
「それじゃあだね」
「お鍋以外にしてもいいんだね」
「そうなんだね」
「そうみたいだよ、そして肝だってね」
 お鍋の中のそのあん肝も見て皆にお話するのでした。
「酢のものにしてもいいよ」
「あっ、それいいかも」
「他のお魚の肝みたいに」
「そうして食べてもね」
「よさそうね」
「お魚の肝を食べるのもね」
 まさにというのです。
「日本で知った楽しみ方だけれど」
「そうそう、イギリスでは食べないけれど」
「けれど食べてみたらね」
「これが随分と」
「だからあん肝もだよ」
 これもというのです。
「食べてみたらね」
「美味しくて」
「それで病みつきになったんだね」
「他にも鱈やエイの肝も食べるけれど」
「鮟鱇にしても」
「そうなんだよね、フォアグラも美味しいけれど」
 太らせたガチョウの肝臓です、欧州ではご馳走の中でも珍味中の珍味とされていて先生も食べたことがあります。
「あん肝も美味しいね」
「しかもずっと安いですよ」
 トミーが先生に経済的なお話もしました。
「あん肝は」
「フォアグラよりもだね」
「はい、ずっと」
 こうお話するのでした。
「このこともいいですよ」
「そうだよね」
「健康にもいいですし」
「肝臓、レバーだからね」
「コレステロールが高いですが」
 このことは問題でもというのです。
「それでもです」
「栄養もあってね」
「食べると凄くいいです」
「しかもお酒にも合うし」
 日本酒を飲みつつ応える先生でした。
「最高だよね」
「あっ、先生また日本酒だね」
「お酒も飲むんだね」
「それも日本のお酒をね」
「それを飲むんだね」
「そうだよ、飲んでね」
 そうしてというのです。
「楽しむよ」
「いや、虫のことは気になるけれど」
 それでもと言う王子でした、王子は今はお酒は飲んでいません。
「今は鮟鱇を楽しめるね」
「そうだね、じゃあ明日はね」
「植物園の園長さんとだね」
「お話することになるだろうね」
 こう王子にお話しました。
「このことはもう頭に入れているよ」
「そうなんだね」
「うん、けれどそれは明日のことだしね」
「今僕達がどうこう出来ることじゃないからね」
「申し出てね、返事を頂くまでは」
 明日にそうなるまではです。
「何も出来ないからね」
「じゃあ今はだね」
「食べてね」
 鮟鱇鍋、とても美味しいそれをというのです。
「英気を養おう」
「それが一番だね」
「そうだよ、あん肝を食べてお酒も飲んで」
 そうしてというのです。
「楽しもうね」
「是非ね、あとスズメバチのお話が出たけれど」
「あの虫だね」
「植物園にあの虫が入ってくることもあるね」
「その場合はすぐに駆除されているよ」
「危ないからだよね」
「うん、いつも巣が出来ないかチェックされてるしね」
 スズメバチのその巣がです。
「そうしたことはね」
「ちゃんとだね」
「されてるよ」
 そうしたことはしっかりと、というのです。
「人手が足りないといっても」
「その人手はそうしたことに回されているんだ」
「あれは出来たらとんでもないから」
 植物園にスズメバチの巣が出来たりしたらです。
「だからね」
「いつもチェックしてるんだね」
「そうだよ、では今夜も飲んで食べて」
「そうしてだね」
「楽しもうね」
 飲みつつ笑顔でお話した先生でした、そうして明日からのことに備えるのでした。



先生、今回は植物園の相談に。
美姫 「虫の駆除ね」
果たして、先生はどうするのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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