『ドリトル先生と日本の鉄道』




                  第一幕  鉄道博物館

 王子はこの日も先生のお家にお邪魔しています、そうして先生に対してこんなお話をしていました。
「実は我が国今鉄道に力を入れているんだ」
「鉄道は重要な移動手段だからね」
「うん、道路も整備しているけれどね」
 それだけでなくというのです、王子はトミーが出してくれたよく冷えている麦茶を飲みながら先生に応えます。
「それでもね」
「鉄道もだね」
「そちらも力を入れていて」
「政策としてだね」
「国全体で整備を整えているんだ」
「そうなんだね。じゃあね」
「そう、日本は鉄道も凄いよね」
 王子は先生に今自分達がいるこの国のお話もしました。
「今や世界一と言っていい位だからね」
「日本は鉄道大国だよ」
 先生もこう答えます。
「明治維新の頃から力を入れていてね」
「全国に路線があってね」
「その状況たるやね」
「まさに世界一だね」
「路面面積も凄くて鉄道会社も多くて」
「列車の種類も凄いよね」
「本当に世界一と言っていい位にね」
 そこまでだというのです。
「鉄道大国だよ」
「だからね、我が国でもね」
「日本にだね」
「援助をお願いして進出もしてもらって」
 そうしてというのです。
「鉄道技術を教えてもらっているんだ」
「何から何からまでなんだ」
「いい線路の敷き方や列車のこと、駅や運用のこと」
「全部なんだね」
「まさにね、駅員さんの教育のことも」
「運転士さんもかな」
「そうだよ、本当に全部ね」 
 鉄道のことなら何から何までです。
「教えてもらって」
「王子のお国もだね」
「立派な鉄道を動かせる国になるつもりなんだ」
「いいことだね、本当に日本はね」
「鉄道も凄いよね」
「鉄道は我が国からはじまったけれど」
 先生の祖国イギリスで生まれたのです、産業革命の中でイギリスはこの素晴らしい乗りものも生み出したのです。
「今やね」
「日本はイギリスを超えたんだ」
「それも遥かにね」
「それも凄いね」
「しかもとても計画的に動かされているから」
「新幹線もそうだね」
「地下鉄もね」
 こちらもというのです。
「日本は地下鉄も充実しているね」
「大阪なんかかなりだね」
「東京はもっと凄いよ」
 こちらの地下鉄はというのです。
「もうね」
「大阪のあれよりも凄いんだ」
「そのせいか路線が多くてね」
「大阪のあれよりもなんだ」
「何ていうか迷路みたいで」
 このことは苦笑いでお話する先生でした。
「殆ど東京に行かない人間にはわからないよ」
「先生基本関西にいるからね」
「この神戸にね」
「神戸も地下鉄はあるけれど」
「大阪みたいに複雑じゃないね」
「そして東京はなんだ」
「その大阪よりも遥かになんだ」
 複雑だというのです。
「だからぱっと見ただけでわからないよ」
「本当に迷路みたいなんだ」
「東京は表の路線も凄いけれどね」
「あっちにも環状線あるよね」
「むしろあちらが主かな」
 環状線といえばというのです。
「大阪の環状線よりもね」
「そうだったんだね」
「そう、そしてね」
「東京は地上の路線もなんだ」
「環状線を中心として私鉄も多くて」
「かなり複雑なんだ」
「東京は道路は狭いと言われるけれど」
 それでもというのです。
「路線はかなり広いと言えるね」
「そんな場所なんだ」
「うん、人口が多いだけにね」
「世界一の大都市と言われるだけあって」
「凄い路線の数だよ」
「そしてその状況を築いたのが」
「日本という国なんだ。ちなみに今東京の道路は狭いって話をしたけれど」
 そちらのお話も忘れない先生です。
「実は敷かれた当時は規格外に広かったんだ」
「そうだったんだ」
「今の時点ではそうだけれど」
「敷かれた頃はなんだね」
「山縣有朋って人がどうしてもって言ってね」
 道路を広くすべきとです。
「それで広かったんだ」
「そうだったんだ」
「実はね」
「そんなこともあったんだね」
「それで鉄道の話に戻すけれど」
 またこちらのお話をする先生でした、冷たい麦茶を飲みながら。
「日本はね」
「うん、鉄道大国で」
「何かと充実しているよ」
「日本は鉄道好きな人も多いしね」
「所謂鉄っちゃんだね」
「ああした人達の知識って凄いね」
「鉄道を心から愛している人達だからね」
 それだけにというのです。
「もうその知識たるやね」
「先生以上かな」
「マニアの人は時として学者以上に学者になるんだ」
 先生は王子にこの言葉を出しました。
「それでなんだ」
「それで?」
「そう、それでね」 
 まさにというのです。
「僕よりもね」
「先生以上ってのも凄いね」
「僕も彼等に学ぶところが多いんだ」
 マニアの人達からというのです。
「彼等の知識からね」
「成程ね」
「そして自分の学問を高めていこうと努力しているつもりだよ」
 マニアの人達の知識そして情熱にです。
「鉄道についてもね」
「そう、先生って鉄道の論文も書いたことあるよね」
「あるよ。今も学んでいるよ」
 鉄道のこともというのです。
「科学の一環としてね」
「そうだよね」
「鉄道が充実しているとね」
 それでというのです。
「移動も輸送もとても楽だから」
「今の日本みたいにね」
「ドイツでもね」
「あっ、ドイツの鉄道っていうと」
 この国についてはこう言った王子でした。
「戦争でもね」
「使っていたね」
「プロイセンだった時だよね」
「そう、鉄道を充実させてね」
 まさにこれをというのです。
「そうしてね」
「兵隊さんやものを素早く戦場に送ったんだね」
「何しろ歩くよりずっと速く沢山運べるから」
 鉄道を使えばです。
「馬よりもね」
「だからだね」
「しかも歩くよりずっと疲れないから」
 鉄道に乗って移動すればです。
「だからなんだ」
「沢山の兵隊さんやものを速く沢山戦場に送って」
「プロイセンは勝っていったんだ」
「それでドイツが建国されたんだったね」
「こうしたことを見てもわかる通りにね」
「鉄道は凄く役に立つよね」
「だから日本もね」
 先生達が今暮らしているこの国もというのです。
「鉄道も凄いんだ」
「本当に世界一だね」
「それは間違いないね」 
 オシツオサレツも言います、動物の皆は今も先生の周りにいます。
「新幹線もあるし」
「あれなんか他の国にないしね」
「新幹線なんてね」
「もうどれだけ凄いか」
 チープサイドの家族も新幹線について言及します。
「あっという間に行きたい場所に行けるから」
「あんなの他の国にないね」
「新幹線の種類も多いし」
 ジップはその種類のお話もします。
「日本全国に路線があってね」
「北海道から九州まで行こうと思えば一日でなんて」
 チーチーが言うにはです。
「飛行機でもないと無理なのにね」
「日本は結構広い国だけれど」
 ガブガブが見るとです。
「その北から南まで鉄道で一日って何気に凄いよ」
「イギリスだとグラスゴーからロンドンまで数時間」
 ダブダブは祖国を例えに出しました。
「ちょっとないわね」
「しかも乗っていて揺れないのよね」
 ポリネシアはこのことをよしとして言うのでした。
「あれも凄いわね」
「あれだけ速くて揺れない」
 トートーも言います。
「このことも凄いよ」
「車内のサービスもいいし」
 老馬はこのことに感激しているのです。
「まるでホテルにいるみたいだよ」
「中も奇麗だし」
 最後にホワイティが言います。
「新幹線って最高だね」
「あれは鉄道の中でも芸術だよ」
 先生もこう言う位です。
「まさにね」
「新幹線もね」
 王子は先生達にその新幹線のお話もしました。
「我が国は学ばせてもらっているんだ」
「王子の国でもなんだ」
「将来導入出来たらって思って」 
 そう考えてというのです。
「それでね」
「うん、王子のお国の事情もあるけれど」
「学んでだね」
「悪いものじゃないよ」
 こう言うのでした。
「だからね」
「このままだね」
「そう、日本と提携していくといいよ」
「それが先生の考えだね」
「これは政治的なお話になって」
 先生はこのこともわかっています。
「そしてね」
「先生は政治にはだね」
「政治家になったこともスタッフになったこともないから」
 それでというのです。
「だからね」
「専門家としてはだね」
「言えないよ」
 このことは断る先生でした。
「だからね」
「政治の専門家としてはだね」
「言えないよ、鉄道もね」
「論文は書いていても」
「技術者ではないよ」
 そうだというのです。
「だからそれはね」
「学者さんとしてだね」
「言えるけれど」
 それでもというのです。
「政治のこと、技術のことはだね」
「それぞれだね」
「専門の人達に聞いてね」
「わかったよ、それは父上と母上もね」
 王様と王妃様もというのです。
「わかっているし首相も議会もね」
「皆だね」
「わかっているしね」
「じゃあ大丈夫だね」
「僕もそう思うよ、しかし日本との提携はね」
「いいことだね」
「そのことは言えるよ、日本の鉄道技術は本当に凄いから」
 先生はこのことは間違いないと言えました。
「それに日本政府のバックアップは凄いからね」
「そうしてことも見て父上と母上も決めたんだ」
「日本と提携しようって」
「鉄道のことはね」
「そうなるね」
「ちなみにイギリスとどうかって意見はね」
 王子は先生にこのことは少し苦笑いでお話しました。
「出なかったよ」
「ああ、やっぱりそうだよね」
「あれっ、やっぱりなんだ」
「うん、だから我が国は鉄道発祥の国だけれど」
「その技術はだね」
「もう日本とかの方が上だから」
 そうなったからだというのです。
「だからね」
「イギリスの話が出なかったのも納得しているんだ」
「うん。それはこの学園にいてもわかるしね」
「鉄道博物館だね」
 動物の皆がここで言ってきました。
「あそこに行けばわかるよね」
「そうそう、鉄道の歴史とかね」
「そういうのもわかるよね」
「あそこ凄いからね」
「鉄道模型の凄く大きなディオラマもあるし」
「鉄道のことなら何でもわかるね」
「八条グループは鉄道も持ってるからね」
 先生は動物にも応えてお話しました。
「それも日本全国に路線を持っている」
「JR並だよね」
「日本全国に路線持ってるってね」
「しかも全部つながってるし」
「凄いよね」
「そう、JRはかつて国鉄だったけれど」
 所謂お役所と言っていいものだったのです、言うならば警察や自衛隊と同じ様な組織といったものでしょうか。
「国鉄と同じ様にね」
「日本全土にだね」
「路線を持っていて」
「それで経営しているんだね」
「八条グループの国内における基幹企業の一つだよ」
 八条鉄道はというのです。
「本社は神戸にあって大阪と東京を中心としてね」
「全国に展開していて」
「まさに日本全土に行けるね」
「そうだよね」
「だから凄いんだ、その八条鉄道も全面的に協力していて」
 そしてというのです。
「あの鉄道博物館は凄いんだ」
「色々充実しているんだ」
「そうなんだね」
「そうだよ、だからそこに行くとね」
 八条学園の中にある鉄道博物館にです。
「色々なことがわかるんだ」
「そういえばですが」
 これまで先生達と一緒に座っていながらもお話を聞くことに専念していたトミーが先生に尋ねてきました。
「八条鉄道の線路の幅は全部同じですね」
「あっ、そのことだね」
「はい、全路線同じですよね」
「そうだよ、統一されているよ」
 先生はトミーにすぐに答えました。
「全部同じ幅にね」
「そうですよね」
「他の私鉄の企業とも一緒だったりするよ」
「そうなんですね」
「だから日本全土に同じ車両で行くことが出来るんだ」
「八条鉄道の」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「線路の幅が統一されているとね」
「いいんですね」
「そうなんだ。だから線路の幅はね」
「大事ですね」
「そう、それでね」
 先生はトミーにさらにお話しました。
「線路の幅も重要なんだ」
「鉄道にとってですね」
「欧州各国とロシアでは線路の幅が違っていたね」
「今もそうだったでしょうか」
「そうだよ、欧州やアメリカ、オーストラリア、中国とはね」
「ロシアの線路の幅は違うんですね」
「そして日本もだよ」
 今先生達がいるこの国もというのです。
「時には同じ企業の中でも線路の幅が違っていたこともあったんだ」
「同じ企業でもですか」
「買収、合併の中でね」
「元々違う企業だったからですか」
「それで線路の幅がね」
 違っていたというのです。
「それで台風の時に線路が壊れて」
「修理の機会にですか」
「統一したってこともあったんだ」
「そんなことがあったんですね」
「線路の幅は確かに重要だよ」
 先生はトミーにも今そこにいる皆にも確かな声でお話しました。
「何しろその幅の鉄道でないと走れないんだからね」
「だから欧州各国の鉄道はロシアでは走られないんですね」
「イギリスの鉄道もアイルランドでは走られないよ」
「線路の幅が違うからですね」
「そうだよ」
 その通りだというのです。
「北アイルランドは実はね」
「このことも問題ですね」
「うん、このことはあまり言われないかな」
「イギリスとアイルランドは線路の幅も違うということは」
「歴史的なことがあって仲が悪いけれどね」
 イギリスとアイルランドはです。
「鉄道のこともね」
「違っていて」
「難しいですね、ただ」
「ただ?」
「線路の幅はこれまで考えてこなかったです」
 トミーは先生に考えるお顔になってお話しました。
「ちょっと」
「そうだったんだ」
「というか同じ国でも企業によって違うこともですね」
「さっき僕が話した通りにね」
「時には同じ企業の中で」
「そう、違うとかね」
 そうしたこともというのです。
「あるからね」
「そこも考えることがですね」
「鉄道では重要なんだ」
「成程、わかりました」
 強い声で頷いたトミーでした。
「鉄道は線路あってですが」
「その鉄道の幅もね」
「大事ってことですね」
「そうだよ」
「わかりました」
「やっぱり僕の国もそこは考えているよね」
 王子は線路の幅について先生に尋ねました。
「そうだよね」
「勿論だよ、このことはね」
「とても大事なことだから」
「考えられているよ」
 当然としてというのです。
「王子の国でもね」
「それで日本の方もだね」
「ちゃんとね」
 その提携する国でもというのです。
「考えていてくれてるよ」
「それは何よりだね」
「さもないと折角線路を敷いてもね」
「その上を列車が走れないから」
「当然としてね」
 そうしたことはというのです。
「皆わかっていてね」
「考えているんだね」
「そうだよ、基礎の基礎としてね」
「そういうことだね」
「若しそこを間違えると」
 その場合についてもお話する先生でした。
「線路の敷きなおしだよ」
「手間とお金がだね」
「またかかるから」
「それは困るね」
「今は線路を敷くことも機械になって」
「昔よりもだね」
「ずっと早く済む様になったけれどね」
 人の力だけで行うよりもです。
「けれどね」
「やっぱり手間とお金はだね」
「かかるからね」
「敷きなおしとかになると」
「大変だからね」
 それでというのです。
「そこはね」
「ちゃんとだね」
「しているよ、そして鉄道が万全に敷かれたら」
 先生は王子ににこりと笑ってお話しました。
「王子の国はさらにね」
「うん、発展するね」
「そうなるよ」
「父上と母上もそう言ってね」
「日本との提携にだね」
「踏み切ったんだ」
 政治としてそうしたというのです。
「色々考えてね」
「どの国と提携するか」
「最初は日本とだけお話していたけれど」
 それがというのです。
「途中別の国が日本よりもって凄い安いお金で言ってきたけれど」
「それよりもなんだ」
「日本の方が安全で確実だからってね」
「そうなってだね」
「日本になったんだ」
 日本の信頼性を取ったというのです。
「そうした経緯があったんだ」
「日本の技術は特に鉄道でそうだね」
 ジップもそれはと言います。
「安定しているよね」
「そうそう、ちゃんと時間通りに列車が駅に来るし」
 チーチーがジップに応えます。
「事故も凄く少ないし」
「列車の事故って酷いわよ」
 ダブダブはこのことは暗いお顔で言いました。
「脱線とかしたら」
「そうそう、線路から外れたら終わりなんだよね」
 トートーもこう言います。
「中に人が一杯乗ってるし」
「線路に石とかあったりしたら」
 それだけでとです、ホワイティは言いました。
「駄目だしね」
「電車は上の電線とかで何かあったら」
「もうそれで動かないし」
 チープサイドの家族は電車の上の方に注目しています。
「ちょっとしたトラブルで停止とか」
「そういうのあるしね」
「台風とか地震で停まるのも」
 老馬は日本でよくある自然災害のことが頭にあります。
「仕方ないけれどね」
「若し台風とかの中で無理に進んだら」
 ガブガブはそのケースをお話します。
「列車が横倒しだよ」
「しかも列車って何両もつながってるから」
「一両つながったら全部だね」
 オシツオサレツは二つの頭でお話します。
「横倒しになって」
「中に乗っている人やものが大変なことになるよ」
「そう思うと鉄道は安定感第一ね」
 ポリネシアはこう結論付けました。
「何といっても」
「それで決まったんだね、日本に」
 王子も皆のお話を聞いて言います。
「安定感が一番だから」
「事故はないし災害のことも考えていて運用もしっかりしている」
 先生がここでまた言いました。
「色々考えるとね」
「日本が第一だね」
「そうだよ、日本こそはね」
 まさにというのです。
「そうしたことまで考えて鉄道を運用している」
「鉄道大国だね」
「新幹線は伊達じゃないよ」
 日本の鉄道で最も有名なこれはというのです。
「日本のあらゆる鉄道技術が結集しているから」
「あそこまでなるんだね」
「そうなんだ」
「外観も恰好いいしね」
「あの外観だね」
「先生もいいと思うよね」
「スマートでカラーリングもよくて」
 笑顔で、です。先生は王子に応えて言いました。
「素晴らしいよね」
「僕新幹線好きだけれど」
「僕もだよ。昭和の最初の頃の新幹線もね」
「あの鳥の頭みたいな形の」
「あっ、そう見えるね」 
 先生は王子の今の言葉に応えました。
「最初の新幹線は」
「そうだよね、あの新幹線もね」
「今見ると古いデザインだけれどね」
「恰好いいね」
「愛嬌もあってね」
「あのデザインで」 
 王子は先生にかなり真剣にお話しました。
「我が国の鉄道もいきたいんだけれど」
「いいと思うよ。電車だよね」
「流石にもう蒸気機関車やディーゼルはね」 
 それで動く鉄道はというのです。
「古いからね」
「だから無理だね」
「もう日本ではどっちもないよね」
「完全になくなったって言えるかな」
 先生もこのことは否定しませんでした。
「蒸気機関車、SLは今も人気があるけれど」
「デザインもいいしね」
「けれどもうね」
「完全に過去のものだね」
「やっぱり電車の方がね」
「何かとやりやすいんだね」
「だってパンダグラフからずっと燃料を補給出来るから」
 上の電線からです。
「石炭をいつも放り込まなくてもね」
「あれが凄い重労働だっていうね」
「夏はとても暑くてね」
「それに先頭の機関車に沢山の列車が引っ張られるけれど」
「一両だけだからね」
 燃料を受けられる車両はです。
「電車は全車両だけれど」
「それも問題なんだね」
「そうだよ、だからね」
「もう電車の時代になったんだね」
「今はね」
「それが時代だね」
「日本でもどっちも長い間使われていたけれどね」
「もうだね」
「ないよ」
 そうなったというのです。
「ディーゼルはまだあってもね」
「もう殆どだね」
「使われていないと思うし」
「成程ね」
「これからリニアモーターカーが出て来ると言われているけれど」
 先生はこちらの鉄道のお話もしました。
「これはね」
「かなり凄いみたいだね」
「うん、あれが導入されたら」
 先生は王子に強い口調でお話しました、科学を学ぶ立場としてこの最新技術には興味があるみたいです。
「どれだけ凄いか」
「新幹線よりもだね」
「凄いよ、むしろね」
「むしろ?」
「日本は新幹線みたいにね」
「リニアモーターカーを運用するんだ」
「そのつもりみたいだよ、日本人のいいところとして新しいものにすぐに注目して」
 そしてというのです。
「研究して取り入れる」
「新しいものなら」
「いいと思ったらね」
 その時点でというのです。
「しかも自分の国に合う様にアレンジしてね」
「それでリニアモーターカーもなんだ」
「それで研究しているんだ」
「じゃあ我が国も」
 王子は先生のお話から自分のお国のことを思いました。
「日本みたいに」
「いいと思った新しいものはだね」
「積極的に取り入れていこう」
「そしてだね」
「そうなったら」
 それならというのでした。
「もっともっと発展するね」
「そうだね、我が国は鉄道を生み出しはしたけれど」
 それでもと言う先生でした。
「新幹線は出来なかったしね」
「あれはだね」
「あれはもう一つの芸術だよ」
 そこまで言っていいものだというのです。
「素晴らしいよ、音はあるけれどね」
「あっ、新幹線の線路の左右に防音壁あるね」
「騒音はあるからね」
 こちらの問題はというのです。
「それで置いているけれど」
「それでもなんだ」
「そう、あれだけのものはね」
 そうそうというのです。
「世界にないからね」
「だからだね」
「音の問題があってもね」
「素晴らしいものだね」
「芸術だよ」
 またこう言った先生でした。
「あれは是非ね、実はね」
「イギリスにもだね」
「あればと思っているけれど」
「イギリスにはないんだね」
「それが残念だよ。それでね」
「それで?」
「リニアモーターカーも日本の方が先かな」
 その導入はというのです。
「このままだと」
「先生としては複雑だよね」
「日本を応援したいけれど」
「やっぱり自分のお国にだね」
「是非って思うからね」
「どっちも同じ時期に導入してくれたら」
「僕にとって最高だけれど」
 それでもというのです。
「それはね」
「中々だよね」
「そうはいかないだろうね」
「イギリスの方が後かな」
「そうなるかもね、このままだと」
「日本はこちらについてかなり積極的だしね」
「そう、だからね」
 その為にというのです。
「日本の方が先かな、いいことだけれど」
「イギリスにも頑張って欲しい」
「難しいところだね」
「そうだね、しかしね」
「しかし?」
「いや、学ぶ立場だった日本がね」
 鉄道をです。
「今やイギリス以上の鉄道大国なんて」
「凄いことだね」
「そうだよね、あっという間にだね」
「先生だった筈が追い越されたね」
 先生はジョークを入れて言いました。
「そうなったね」
「立派な弟子かな」
「立派過ぎるよ、これは」
「新幹線まで作って」
「リニアモーターカーもだから」
 そちらもというのです。
「これは立派過ぎる弟子だよ」
「恐ろしい弟子を持ったね、イギリスも」
「鉄道に関してもね」
「鉄道も、なんだ」
「いや、ロイヤルネービーもね」
 海軍のお話もする先生でした。
「第二次世界大戦の時には」
「ああ、追い抜かされたっていうんだね」
「航空母艦も艦載機なんてね」
 それこそというのです。
「それに戦艦までね」
「ああ、大和だね」
「あんな戦艦を建造されたら」
 それこそというのです。
「見たらね」
「それだけでだね」
「負けたって思うよ。今の海上自衛隊もね」
「イギリス海軍以上なんだ」
「凄いよ。立派な海軍だよ」
 海上自衛隊はというのです。
「鉄道も海軍、つまり船も負けてるね」
「じゃあここはね」
「我が国も凄いっていうだけじゃ駄目だから」
「挽回したいね」
「そうしたいところだね」
「そうだよね。まさか日本がね」
「明治維新から百五十年少しでね」
 それだけの間で、というのです。
「ここまでの国になるなんてね」
「近代化からもうだね」
「世界の最先端の国だよ」
「一回敗戦しているのにね」
「そこからあっという間に復興したしね」
 戦禍はかなりのものだったというのにです。
「途中何度も大地震があったし」
「ああ、地震はね」
 王子もこのことについては暗いお顔になります。
「日本には付きものだね」
「それに台風もね」
「日本は災害が多いからね」
「それが沢山あったけれどね」
 それでもというのです。
「今みたいな国になっているから」
「そのことも凄いね」
「そう、だからね」
 それでというのでした。
「余計に凄いよ」
「百五十年でここまでの国になっただけじゃなくて」
「戦争も災害も乗り越えてだからね」
「じゃあその日本を乗り越えるには」
「イギリスもかなりの苦労が必要かな」
 こうも思った先生でした、鉄道のことから。








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