『ドリトル先生と日本の鉄道』




               第八幕  二つの部活

 先生はプラモ部と軍事研究会に事前にアポを入れてそうして翌日お邪魔することを予定に入れました、そのお話をお家で聞いてです。
 トミーもこの日もお邪魔している王子はこの日の夕食であるナポリタンを食べながら先生に言いました。
「そうですか、列車砲ですか」
「あれのディオラマをだね」
「鉄道博物館のコーナーに置いて」
「動く様にするんだね」
「そう考えているんだ、ただね」
 どうしてもと言う先生でした。
「列車砲は日本には縁がないんだよね」
「もうない兵器ですしね」
 トミーはナポリタンの中にあるソーセージとパスタと一緒に食べながらそのうえで先生に言いました。
「列車砲は」
「第二次世界大戦までだね」
「そうですよね」
「色々不便だったしね」
「線路の上でしか動かせないですしね」 
 列車だからです、このことは。
「しかも置いて撤去するのに手間暇もかかるし」
「ミサイルが出来たらね」
「もうそこにいきましたね」
「車両も発達したしね」
「戦車とか装甲車の方が便利ですしね」
「だからもう列車砲はないよ」 
 他の兵器が発達した結果だというのです。
「本当にね」
「そうですよね」
「うん、けれどね」
「スペースが空いて」
「普通の列車はもう全部あるからね」
 それでというのです。
「列車砲をって思っているんだ」
「軍事も重要ですからね」
「軍事のことも頭に入れておかないとね」
「学問としてはですね」
「よくないからね、それにね」
「恰好いいからですね」
「そうなんだよ、列車砲を見ているとね」
 この兵器をとです、先生はトミーにこうもお話しました。見れば皆のスパゲティはかなり沢山あって先生のスパゲティの上には粉チーズがたっぷり乗せられています。ケチャップにソーセージと玉葱、ピーマンにマッシュルームそして大蒜が入っていてオリーブオイルがたっぷりと使われています。
「恰好いいからね」
「だからですね」
「いいと思ったんだ」
「そういうことですか」
「そうなんだよ」
「ただね」
 ここで王子が先生に言ってきました。
「大丈夫かな」
「ああ、兵器とかを置いているとだね」
「戦争を連想するとか子供に影響がとかね」
「そう言う人が多いね」
「日本にはね」
 こう先生に言うのでした。
「いるね」
「そうだよね」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「抗議でイベントが中止とかね」
「日本じゃあるね」
「それ大丈夫かな」
「はっきり言えるよ、そのことは」
「軍事も学問ってだね」
「戦争も軍事も知らないと」
 そうしないと、というのです。
「何も対応出来ないからね」
「だからだね」
「列車砲も置いていい筈だよ」
 先生は王子に確かな声で答えました。そうしつつナポリタンの横に置かれている野菜スティックにバーニャパウダーを付けて食べます。
「そちらもね」
「そうだよね」
「しかし日本にはね」
「本当にそんな人がいてね」
「それでクレームをつけてくるのは」
「おかしいよね」
「迷彩服を子供が着ることが」
 どうにもというお顔で言う先生でした。
「おかしいかな」
「何か市民団体の人が抗議したんだよね」
「ある政党の市会議員の人がね」
「そうした人って何なのかな」
 王子はフォークを動かしつつ首を傾げさせました。
「戦争反対ばかり言ってたら平和になるって思っているのかな」
「軍隊やそれに関係するものがないとね」
「じゃあトレンチコートもフロックコートも着れないよ」
 王子はきっぱりと言い切りました。
「どっちも軍服からだしね」
「ダッフルコートもね」
「詰襟の制服やセーラー服も」
「あっ、学校の先生でどっちも軍服が元だから大嫌いって先生いるよ」
「じゃあその先生ブレザーも着れないね」
 王子は即座に返しました。
「ブレザーも軍服が元だしね」
「自衛隊は実際にブレザーだしね」
「陸空海とね」
「全部だしね」
「ブーツもね」
 これもというのです。
「軍隊からだし」
「これも履けないね」
「変な先生だね」
「ちなみにこの先生階級にこだわっているし日本の皇室は反対で北朝鮮には好意的だったよ」
「ああ、そうした先生なんだ」
 王子は先生の今のお話を聞いてすぐにわかったというお顔になりました。
「日本の皇室が駄目で北朝鮮がいいとか」
「おかしいね」
「あそこ世襲制の共産主義で階級社会だよ」
 そのことをきっぱりと言い切りました。
「こんな国他にないから」
「生まれで階級を厳密に決めていてね」
「おかしな人だよね」
「そう、本当にね」
「そんな人が反対するんだね」
「日本ではね」
「そんなおかしな人の言うことは」
 日本の皇室は反対で北朝鮮がいいと言ってブレザーのことも知らない様なそんな人の言うことはというのです。
「気にしなくていいよ」
「そうだよね」
「それで先生もだね」
「鉄道博物館の人達にも提案するしね」
「館長さんの人にもだね」
「そうしてね」
 そのうえでというのです。
「若しそんな人達が来ても」
「はっきり言えるよね、先生なら」
「うん、どうして置いたかとね」
「置いていい理由もだね」
「言えるよ、市民団体が前に抗議してきても」
 鉄道博物館の前で、です。
「それでもね」
「反論出来るんだね」
「論破する自信があるよ」
「じゃあそのことも期待させてもらうよ」
「それじゃあね」
「しかしあれだね」
 ここで老馬がどうかというお顔で言いました、勿論動物の皆も今先生と一緒に明るいお顔でお話をしています。
「どの国にもおかしなところがあるけれど」
「おかしな人もいてね」 
 ジップが老馬に続きます。
「そんなこと言うんだよね」
「市民団体とか野党の政治家の人とか学校の先生とか」
 ホワイティが具体的にそうした人達を挙げました。
「そうした人多いよね」
「何でもかんでも軍事利用とか戦争を思い出すとか」
 ダブダブも食べながら首を傾げさせます。
「神経質じゃないよね」
「おかしいししかも」
「北朝鮮には何も言わないし」
 チープサイドの家族も疑問に思っています。
「あっちが何をしてもね」
「何も言わなくて」
「自衛隊とかには言うよね」
 チーチーははっきりと指摘しました。
「基地とかイベントに文句言って」
「しかも平和とか民主主義とか言うけれど」
 トートーはかなり疑問という感じです。
「他の人の意見認めそうもないし」
「しかもそうした人達って数は少ない筈なのに」
「何故かそうした人のクレームが通るって」
 オシツオサレツは二つの頭で疑問を述べました。
「他の観たい参加したい人達の意見は?」
「少しの人達の大声が通るの?」
「それもおかしいよ」
 ガブガブも思うことです、ナポリタンも楽しんでいますがそれでも疑問に思うことは彼も思うのです。
「民主主義って僅かな人のおかしな意見も聞くにしても」
「それが大勢の人の意見や考えを潰すとしたら」
 最後にポリネシアが言いました。
「全体主義じゃないかしら」
「僕もそう思うよ、そんな人達には間違ってるって言わないと」
 それこそとです、先生も言います。
「その人達の好きな様にね」
「なってしまうよね」
「イベントが中止されたみたいに」
「そうなるよね」
「僕も予想しているし」
 そうした人達が来ることはです。
「若し来たらね」
「その時はだね」
「先生が説明するんだね」
「そして反論するね」
「そうするよ、そうした人達が何人来ても」
 例えそうしてもというのです。
「僕一人で反論して説明するからね」
「ああ、そうした人達って狂暴だからね」
 王子がこう言ってきました。
「沖縄の基地の前見たら」
「王子から見てだね」
「うん、どう見ても沖縄の人達じゃないうえにね」
 それにというのです。
「やりたい放題しているし」
「だからだね」
「先生囲んで何かしようとするかもね」
「僕は暴力は振るわないよ」
「先生はそんなことしないよ、けれどね」
 それでもというのです。
「相手は違うよ」
「暴力もだね」
「何してくるかわからないよ」
「安心していいよ、八条グループはグループ全体でああした人達を相手にして論破してきているから」
「企業としてだね」
「グループが変な経済評論家に言い掛かりつけられたこともあったけれど」
「経済評論家?」
「何でも辛口の批評家とか言われている」
 そうしたというのです。
「その手の市民団体に近い人で」
「やっぱりそうした人なんだ」
「それでね、色々事実無根か適当なことを書いてきたけれど」
「反論してなんだ」
「論破して以後その人は言わなくなってきたけれど」
「相手をするんだ」
「そうした人達は一つ一つそうしていかないとね」
 反論して論破してというのです。
「色々し続けてくるから」
「だからなんだね」
「グループ全体で動いてくれるから」
「安心していいんだね」
「僕のバックアップもしてくれるよ」
 先生は王子に微笑んで断言しました。
「これまで通りね」
「今回のことで何かあっても」
「そうだよ。だから安心しているよ」
「それはいいことだね」
「僕もそう思うよ」
 先生にしてもというのです。
「本当にね」
「そうだよね」
「うん、あとね」
「あと?」
「問題はプラモ部の人達も軍事研究会の人達も日本軍や自衛隊マニアの人達が多いから」
 このことをお家でも言う先生でした。
「列車砲と縁が薄かったかないかね」
「列車砲っていいますと」
 トミーもこう言いました。
「やっぱりドイツ軍ですね」
「そうだよね」
「はい、イメージ的に」
 この軍隊だというのです。
「どうしても」
「そうだね、日本軍だとね」
「航空機か軍艦ですね」
「そのイメージだね」
「自衛隊は最新鋭の兵器で」 
 陸空海どの自衛隊もです。
「イギリス軍以上の兵器ばかりですね」
「自衛隊はそうだね」
「プラモでも何でも」
「兵器は一通り揃えている」
「そんな風ですけれど」
「列車砲はね」
 どうしてもというのです。
「弱いね」
「ドイツ軍マニアの人もいますよね」
「どちらの部にもだね」
「そうですよね」
「そうだと思うし実際にいてくれているみたいだけれど」
「よかったじゃないですか」
「それでも思ったよ。八条グループが海軍や自衛隊と縁があったしあるせいで」
 それでというのです。
「この学園も日本軍や自衛隊好きな人が多いよ」
「軍事研究会もプラモ部も」
「どちらもね」
「そうなんですね」
「まあナチスの親衛隊の軍服は人気があるね」
 先生もこうは言います。
「あれはね」
「軍服で一番人気じゃないですか?」
「そうかも知れないけれど」
「この学園ではですね」
「海軍に自衛隊が人気で」
「海上自衛隊もですね」
「人気があるね、あちらの制服も」
 この学園ではそうなのです。
「どうもね」
「ナチスやドイツ軍のものよりも」
「実際にね」
「旭日旗も人気あるしね」
 王子は旗のお話をしました。
「あの旗も」
「まさに海軍の旗だね」
「自衛隊でも使っているね」
「あの旗物凄く恰好よくて」
「王子も好きなんだね」
「大好きだよ」
 実際にと答えた王子でした。
「あんな恰好いい旗はね」
「他にはない、だね」
「そう思うよ、最高の旗だね」
「あの旗に海軍のあの黒のボタンのない詰襟か白の礼装はね」
「あの金色のボタンのだね」
「海上自衛隊の黒と金のブレザーも人気があるし」
「セーラー服も」
 水兵さんの軍服もです。
「いいよね」
「僕もそう思うよ」
「その恰好良さもあって」
「この学園では日本軍、自衛隊の人達のファンが多くて」
「特に海なんだ」
「そうだよね」
「陸軍、陸上自衛隊、航空自衛隊も人気があるけれど」
 海軍、海上自衛隊以外もです。
「どうしてもね」
「そちらの方だね」
「この学園は海だよ」
「大学に水産学部もあるしね」
「あちらも海軍の影響が残っているよ」
「そうみたいだね」
「そして日本軍や自衛隊の次に」
 この軍隊、組織のファンの人達が主流でというのです。
「他の国の軍隊が好きな人達となるけれど」
「ドイツ軍はその中なんだ」
「その中では一番人気みたいだけれど」
「この学園は日本軍、自衛隊マニアだね」
「その人達が多いよ」
「成程ね」
「だから鉄道模型、動くそれが出来るか」
 それはといいますと。
「少し不安だよ」
「そうなんだね」
「僕としては」
「出来ることを祈ってるよ、ただね」
 こうも言った王子でした。
「列車砲は兵器だからね」
「だからだね」
「鉄道模型のディオラマか」
「軍事のディオラマだね」
「同じディオラマでも少し色が違うね」
「そうなるみたいだね」
「そうだよね、ドイツ軍の兵隊さん達が周りにいるよね」
「多分そうしたディオラマになるよ」
 実際にと答えた先生でした。
「やっぱりね」
「恰好よさそうだね」
「軍隊を恰好いいと考える人達にとってはね」
「そうした人達が主流だと思うけれど」
「それはどうか」
「そうなるね」
「僕は軍隊に関わったことはないけれど」
 先生はそうしたこととは本当に縁がなかったです。
「けれどね」
「それでもだね」
「知識はあるつもりだよ」
「軍事も学問だからね」
「歴史の中でも重要だからね」
「そうしたことも学ばないとね」
「学問に支障が出るからね」
 だからだというのです。
「学んでいるよ」
「そうだよね」
「ナポレオンのことも学んできたし」
 この人の時代には鉄道はまだなかったですが軍事のことで考えると歴史上とても重要な人の一人です。
「その他の人達のこともね」
「孫子も読んだかな」
「読んだよ、中国語の方もね」
「流石先生だね」
「それで学んできているし」
「列車砲もだね」
「そうだよ、そしてね」
 さらに言う先生でした。
「その列車砲はね」
「ああ、列車砲にも種類があるね」
「とびきりのがいいね」
「インパクトがあるから」
「ドーラがいいかな」
 こう言ったのでした。
「その列車砲は」
「ドーラ?」
「ドイツ軍が建造した八十センチ砲の列車砲だよ」
「八十センチって凄いね」
「大和が四十六センチだからね」
 日本を代表する戦艦の主砲がです。
「大和は九門、ドーラは一門だけれどね」
「数は大和の方が多いね」
「ずっとね、けれど八十センチ砲なんてね」
「他の国は使っていないね」
「それだけに運用は大変だったけれど」
 それでもというのです。
「列車砲の中で一番インパクトもあるし」
「だからだね」
「この列車砲を置ければ」
 そして動かすことが出来ればというのです。
「凄くいいよ」
「だからだね」
「置きたいよ」
「それはいいアイディアだね」
「ドイツ軍は他にも列車砲があったけれど」
「そのドーラがだね」
「一番大きくてインパクトもあったから」
 それ故にというのです。
「あれを置きたいね」
「じゃあそのこともだね」
「明日お話するよ」
「その様にしてね」
「是非ね」
 王子は先生に笑顔で応えました。
「成功させてね、このお話」
「そのつもりだよ」
「それがいいね、しかし当時のドイツの兵器でもね」
「例えその時代がナチスが政権を握っていてもだね」
「軍事のものでも」
「いいものはいいとね」
 そう認識してというのです。
「考えて展示しないとね」
「ナチスだから、戦争を連想させるから駄目となると」
「学問も止まるし民主主義でもないよ」
「そうだね、ああしたことを言う人達ってね」
「民主主義を声高に言うんだけれどね」
「全然民主的じゃないね」
「そうなんだよね、そうしたことも考えながらね」
 そのうえでというのです。
「明日それぞれの部に行って来るよ」
「そうしてね」
 王子も他の皆も先生に笑顔で応えました、そうして次の日先生は動物の皆とまずはプラモ部の部室に行きましたが。
 そこに一人の小柄で痩せた茶色の髪の人がいて先生に挨拶をしてきました、お部屋の中にはロボットや戦車、軍艦に飛行機の完成して塗装されたプラモデルやディオラマが沢山飾られています。
 そうしてです、先生も挨拶をしてからでした。
 先生にです、その人は名乗りました。
「新垣慎太郎といいます」
「新垣君だね」
「大学では工学部の一回生です」
「工学部だね」
「はい、そうです」
 こう名乗るのでした。
「宜しくお願いします、僕がプラモ部の中のドイツ軍好きです」
「そうなんだね」
「この部活はアニメファンと日本軍、自衛隊マニアの人がです」
「やっぱり主流だね」
「はい、僕は主流じゃないんですよ」
 笑って先生に言うのでした、先生の今回のお話を聞いてから。
「お互いの趣味には干渉しないのがこの部活ですけれどね」
「プラモでもドイツ軍は人気だけれどね」
「それでもなんです」
「この部活ではだね」
「ドイツ軍よりも」
 まさにというのです。
「ロボットアニメや日本軍なんですよ」
「そして自衛隊だね」
「そちらなんですよ」
「日本はロボットアニメも多いからね」
「そうです、それでお話をですね」
「うん、これからしていいかな」
「お願いします」
 新垣君は先生に笑顔で応えました、そして先生のお話を聞くと唸って言いました。
「ドーラをですか」
「あの列車砲の動く模型をね」
「鉄道博物館にですか」
「軍事研究会の人と協力してで」
「凄いですね、あの列車砲の動く模型なんて」
 それこそと言う新貝君でした、二人は今は部室のテーブルの席に向かい合って座ってそうしてお話をしています。
「それを造るなんて」
「僕は今考えているけれどね」
「僕一人でもやらせてもらいたい位ですよ」
「じゃあドーラのプラモもだね」
「フルスクラッチでも造ります」
「ドーラのプラモは売っていないかな」
「八条プラモから売ってますね」
 すぐに答えた新垣君でした。
「確か」
「じゃあそれでだね」
「造らせてもらいます」
「そうするんだね」
「では」
 さらに言う新垣君でした。
「そこから忠実に再現して」
「プラモ自体を改造もしていって」
「実物みたいなものを造りますから」
「軍事研究会の人や鉄道博物館の人達と一緒に」
「そうさせてもらいます」
 新垣君は快諾してくれました、プラモ部はそうなりました。
 先生は次は軍事研究会の部室に行きました、勿論この時も動物の皆も一緒ですが皆は至って静かです。
 そして皆で、でした。
 今度は軍事研究会の部室に入りました、部室には軍事に関する本が幾つもの本棚に整然と並べられています。
 その部室に大柄で逞しい身体つきの丸坊主の人がいました、ここでもこの人から挨拶をして先生に応えました。
「和田哲也です」
「和田君だね」
「文学部の一回生です」
「君は文系だね」
「はい、軍事は歴史から学んでいまして」
「そうなんだね」
「僕がドイツ軍が好きで」
 それでというのです。
「今回です」
「僕のお話を聞いてくれるんだね」
「是非聞かせて下さい」
 こう言ってです、そしてでした。
 先生は和田君にも今回のお話をしました、するとです。
 和田君も明るいお顔になって先生に言いました。
「ドーラ、いいですね」
「君もそう思うね」
「はい、確かに列車砲は使い方が難しかったですが」
「特にドーラになると余計にね」
「しかしです、鉄道博物館に列車砲は相応しいですし」
「特にドーラはだね」
「動く模型となりますと」
 まさにというのです。
「絵になります、是非です」
「動くドーラの模型をだね」
「飾りましょう、では戦場をイメージして」
「そうしてだね」
「プラモ部の人ともお話をして」
 そうしてというのです。
「やっていきましょう」
「じゃあ鉄道博物館でもね」
「お話をしてですね」
「やっていこうね」
「宜しくお願いします」
 こうしてでした、和田君も快諾してくれました。和田君も新垣君もすぐにでした、先生と一緒に鉄道博物館に入って。
 その空いているスペースを見て博物館の責任者である宮田さんとお話をしました。
「ここならです」
「結構いいもの置けますね」
「ドーラ置けますよ」
「それもかなり広く動けるものが」
「そうなんだね、博物館としてはね」
 宮田さんも二人にお話します。
「もう置くのなら本格的なね」
「そうしたものをですか」
「置きたいですか」
「そう、実際に大砲まで動いて」
 列車砲のそれがです。
「そして周りもね」
「ただ列車砲を置くだけじゃなくて」
「さらにですか」
「実際に戦場で運用していたみたいに」
 その様にというのです。
「周りに軍人さん達も置きたいね」
「ここのディオラマの他の場所みたいに」
「そうしてですね」
「本格的にいきたいですか」
「そこまで」
「うん、それで大砲からはSLみたいに」
 先生がSLの模型に出したアイディアをそのまま使ってというのです。
「火を噴く様にしたいね」
「ああ、砲撃したみたいに」
「ああして」
「そうしたいね」
「火打石を使ってなんだ」
 先生は新垣君と和田君に自分のアイディアをお話しました。
「そうしてなんだ」
「成程、火打石ですか」
「あの火花を使いますか」
「そうしてだよ、ドーラの大砲が動いて」
 そしてというのです。
「そこまで出来るから」
「やらせて下さい」
 熱い声で、でした。新垣君が先生に応えました。
「そこまで出来たらです」
「凄いよね」
「はい、プラモはもう造るなら」
 それならというのです。
「徹底的にですよ」
「忠実に実物を再現してだね」
「凄いものにしてこそなんで」
 だからだというのです。
「やらせて下さい」
「そこまでだね」
「やらせて下さい」
「僕もです」
 和田君も先生に言ってきました。
「ドーラについては詳しいつもりなので」
「だからだね」
「実際にドーラが使用された状況はわかっています」
「第二次世界大戦の時の」
「ですから」
 それでというのです。
「もうそれこそです」
「忠実にだね」
「再現させてもらいます」
「頼むよ、そのことは」
「こちらも動くドーラを再現させられるなら」
 それが模型でもというのです。
「やらせてもらいます」
「わかったよ、じゃあね」
「二人と一緒に鉄道博物館の方もです」
 宮田さんも言ってきます。
「全力で造らせてもらいます」
「はい、それでは」
「はい、楽しみにしておいて下さい」
「是非そうさせてもらいます」
 先生も宮田さんに笑顔で応えます、そしてでした。
 鉄道博物館の人達は新垣君和田君と一緒にドーラの動く模型を造りだしました、先生は無事に頼りになる人達の協力を鉄道博物館に提供出来ました。
 ですがここで先生は宮田さんに尋ねられました。
「先生はプラモデルや鉄道模型は」
「好きです」
 先生は穏やかな笑顔で答えました。
「見ることは」
「では造ることは」
「これが造られないんですよ」
「そうなんですか」
「はい、不器用でして」
 そのせいでというのです。
「僕はそうしたものは造られないです」
「あれっ、プラモは子供でも」
「造られますお」
 新垣君と和田君が言ってきました。
「先生手術もされますよね」
「でしたら」
「手術は出来るけれどね」
 そちらは出来ます、伊達にお医者さんではありません。
「けれどね」
「プラモや鉄道模型は」
「そうしたものを造ることは」
「絵も彫刻も他の工作もね」
 小学校の授業で言う図画工作はというのです。
「不得意なんだ、スポーツと同じでね」
「先生がスポーツ出来ないといいますと」
「それは結構有名ですけれど」
 新垣君と和田君も知っていることです。
「それで、ですか」
「そうしたこともなんですか」
「そうなんだ、どうしてもね」
「だからプラモも」
「そちらも」
「造られなくてね、見るだけなんだ」
 そうだとお話する先生でした。
「よくフィギュア造ってる人いるよね」
「はい、フィギュア部ですね」
 新垣君がすぐに応えました。
「そちらの部活もありますけれど」
「あれはもう職人芸だよ」
「そこまでですか」
「僕から見れば」
 それこそというのです。
「その域に達しているよ」
「そうなんですね」
「手先を使うことは苦手なんだ」
 だから家事も一切出来ないのです、先生が家事をしようとするとすぐに動物の皆が止めてきました。
「子供の頃からね」
「先生は学問の人なんですね」
 和田君は先生のお話からこのことを察しました。
「そういうことですね」
「そうなるかな」
「わかりました、それじゃあ」
「僕は学者の立場としてかな」
「これからも宜しくお願いします」
「実際に造ることは任せて下さい」
 宮田さんも言ってきました。
「皆で得意不得意を考えて」
「そうしてですね」
「力を合わせてやっていきましょう」
「それでは」
「はい、皆でやっていきましょう」
 宮田さんが言って新垣君と和田君も頷いてでした。
 皆で力を合わせてドーラの動く模型も造っていくことになりました、早速ディオラマやドーラの模型の製作がはじまりました。
 今日のことがあってです、動物の皆は研究室で先生に言いました。
「先生って本当にね」
「手先のことは駄目だから」
「スポーツもね」
「だからプラモもね」
「どうも僕の手はね」
 先生ご自身も自分の手を見て言います。
「手術の時以外はね」
「駄目だね」
「後はフォークやスプーンを使うだけで」
「後お箸」
「そういうのを使うだけだね」
「本やペンは持てるけれど」
 そしてパソコンの文字の入力も得意ですが。
「それでもね」
「本当に先生不器用だから」
「プラモなんてね」
「ましてやプラモ部の部室にあったみたいなのは」
「あのプラモどれも凄かったね」
 老馬がしみじみとして言いました。
「ロボットも戦車も」
「あれも職人芸だね」
「全くだよ」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「塗装も完璧で」
「今にも動きださんばかりだったよ」
「金属の重量感や錆の感じも描いていたけれど」
 ホワイティもこのことにはびっくりです。
「よくそんな塗装出来たね」
「プラモの接着の後のラインもなかったし」
 ポリネシアはパーティングラインのことも驚いています。
「まさに小さな本物だったわ」
「ロボットなんて」
 トートーが言うことはといいますと。
「ちゃんとポーズまで付けてね」
「とんでもないこだわりを感じたわね」
 ダブダブはこのことにびっくりしていました。
「何処までも精巧にっていう」
「日本人の趣味へのこだわりは凄いよ」
「全くよね」
 チープサイドの家族も舌を巻いています、鳥にも舌はちゃんとあります。
「何処までも精巧で」
「好きなものにはとことんだからね」
「ディオラマだって凄かったよ」
 ガブガブはロボットや戦車のそれに唸っていたのです。
「実際にそんな場所があったみたいな」
「色々な工夫があったね」
 チーチーにもわかることでした。
「ただ造るだけじゃない」
「何処をどうしたらもっと凄くなるか」
 ジップの言葉も唸るみたいになっています。
「その努力が感じられるね」
「あんなことはね」
 とてもと言う先生でした。
「まさに本当に好きで」
「プラモデルが」
「その世界自体がだね」
「それでこそね」
 まさにというのです。
「出来ることだよ」
「じゃあ先生はね」
「プラモにそこまでの情熱はない」
「そうなるの」
「そうもなるかな、好きだけれど」
 それでもというのです。
「あそこまでしたい、そう思うまでには」
「好きじゃないんだ」
「あそこまでは」
「そうだね、この場合不器用だからというのは」
 先生がそう言って実際にそうだからプラモを造らないことはといいますと。
「理由にならない、むしろね」
「そうしたことはだね」
「理由にならなくてする」
「そうするんだね」
「そうだね、そうした人は」
 それこそというのです。
「もう幾ら不器用でも」
「プラモを造って」
「それも凄いプラモを目指す」
「そうするんだね」
「ディオラマにしても」
「そうなるね、誰だって最初は出来ないしね」
 プラモデルにしてもその他のことでもというのです。
「それが出来る様になるには」
「やってみる」
「それも失敗も恐れないで」
「何度失敗してもいい」
「それで勉強もしていくんだね」
「そうなるね、人間努力だからね」
 これこそが一番大事だからだというのです。
「努力をすれば」
「最初は全然駄目でも」
「あんなプラモデルを造られる」
「そうなるんだね」
「天才はいてもね」
 それでもというのです。
「モーツァルトはいつも作っていたからね」
「そうだよね」
「あの人はいつも作曲していたよね」
「子供の頃からずっと」
「立ち止まらずに」
「プラモだったら造り続ける」
 そうなるというのです。
「ひたすらいいものを目指してね」
「そうすればだね」
「ああした凄いプラモが造られる」
「そうなるのね」
「知識だって最初は何も知らなくても」
 それでもというのです。
「学べば学ぶ程だね」
「うん、わかっていってね」
「知っていくわ」
「そちらもそうなるし」
「それだったら」
「何でもだね」
 プラモだけでなくです。
「人に大事なのは情熱と努力だよ」
「その二つさえあれば」
「誰だってあんなものを造られる」
「あんな素晴らしいものを」
「そして先生もかな」
「あっ、僕もだね」
 皆に言われて先生は気付いた様になって笑って応えました。
「そういえばそうだね」
「そうだよね」
「先生だってね」
「若しプラモ部の人達みたいにプラモが大好きだったら」
「その時は」
「うん、もうね」
 それこそというのです。
「なれるかもね、ただね」
「先生にプラモへのそこまでの情熱はないんだね」
「最初は下手でもあそこまでなる」
「素晴らしいものをこの手で造りたい」
「そこまではないんだね」
「やっぱり僕の関心は」 
 それはといいますと。
「情熱と言っていいね、それはね」
「学問だね」
「そちらに向かってるわね」
「本当に」
「そちらによね」
「学問なら何でもだけれどね」
「うん、どうも僕は学問に関心の全てがいっていて」
 自分でもこう考える先生でした。
「他のことはね」
「出来ないにしても」
「関心がない」
「そうなんだね」
「うん、そうなるかな」
 考えるお顔で言いました。
「僕は」
「そうだね」
「人の関心、情熱を向けるものはそれぞれだけれど」
「先生は学問で」
「学問に全関心がいっているのね」
「そうなるだろうね、人はまず情熱を持つ」
 関心と情熱をここでは同じものとしてお話する先生でした。
「そしてね」
「情熱を向けた対象に熱く向ける」
「それでだね」
「努力していく」
「それが大事なんだね」
「そうだね、じゃあ今から僕はね」
 先生はあらためて言いました。
「その情熱を向けるよ」
「学問だね」
「それをするんだね」
「これから」
「今度は医学についてだよ」
 先生の第一の学問です。
「それに励むよ」
「そうそう、学問ね」
「医学の学問をするんだね」
「先生の博士号は医学が最初だったし」
「病院も開いていたしね」
「そうだしね、頑張るよ」
 笑顔で言った先生でした、そしてです。
 先生は本を読みはじめました、ドイツ語のその医学書を。それは論文を書く為でしたがそのドイツ語の本を読んでからです。
 先生は皆にです、こう言いました。
「ドイツ医学は細菌で有名だったけれどね」
「あっ、コッホね」
「コッホだったよね」
「細菌学の権威だった」
「あの人だね」
「うん、コッホは日本の文豪森鴎外にも教えた人でね」
 舞姫や高瀬舟で有名なこの作家さんは本来はお医者さんでありドイツに留学して多くのものを学んだのです。
「細菌学についてはね」
「まさに権威で」
「細菌学を大成させた人だね」
「凄い発見もしたし」
「それで沢山の人が助かったんだね」
「うん、その人のこともあるし」
 それでと言う先生でした。
「今細菌学の本を読んでいてもしっかりしているね」
「しっかりした本なんだね」
「先生が今読んでいる本は」
「そうなんだね」
「うん、今ドイツでは列車砲の話に関わっていたしその前も鉄道のお話をしていたけれど」
 それでもというのです。
「こうした分野でも凄いんだよね」
「医学、特に細菌学で」
「凄い実績を残していて」
「今も有名だね」
「うん、そうなんだよ」
 まさにというのです、そしてです。
 先生はその論文の本も読んでそうしてでした、論文を書く用意もしていきました。鉄道博物館のこともこちらのことも励む先生でした。








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