『ドリトル先生と姫路城のお姫様』




               第四幕  兵庫の棟梁

 先生のお願いに応えたお静さんはその日の朝から先生の研究室に来ました、いつも通り服を着て二本足で立っていて尻尾も二本あります。
 そしておさかべ姫についてこう言いました。
「あの方はこの県の妖怪の総大将よ」
「やっぱり偉い人なんだね」
「そうよ」
 その通りだというのです。
「昔のお国で言うと播磨、丹波、但馬、丹後ね」
「合わせて四国だね」
「その四国のね」
 まさにというのです。
「妖怪の総大将なのよ」
「うわ、凄いね」
「流石お姫様ね」
「それで姫路城にいるだけあるわね」
「凄い妖怪さんだったのね」
「そうよ、本当に凄い方よ」
 お静さんはこの時も先生と一緒にいる動物の皆に答えました。
「私なんかよりずっと長生きだしね」
「あれっ、お静さんって猫又よね」
「猫又って最低でも五十年生きてるのよね」
「最低でもそうだっていうから」
「お静さんは確か何百年生きてるのよね」
「そのお鈴さんよりずっと長生きって」
「そうよ、本当にね」
 その鳥とです、お静さんは皆にさらに言いました。
「妖力も学識も凄いのよ」
「長生きしているだけあって」
「そうなのね」
「じゃあそうした意味でも凄い人なのね」
「それがあのお城のお姫様なの」
「しかもこの世とは思えない位の美貌で」
 そちらも凄いというのです。
「お人柄も気品があって穏やかで」
「本当の意味のお姫様なのね」
「それがあの人なのね」
「それじゃあだね」
「まさに総大将に相応しい方なのね」
「そうなのね」
「関西は妖怪が多くて」
 お静さんはこのこともお話しました。
「それぞれの府県で総大将がいるのよ」
「兵庫はあのお姫様でだね」
「そう、大阪と京都、奈良、滋賀、和歌山、三重でね」
「三重県もだね」
「あそこは東海に入る場合もあるけれど」
「関西に入れられる場合もあるからね」
「あそこにもいるわ、それでね」
 先生はお静さんにさらにお話します。
「狐さんの方もね」
「九尾の狐だね」
「あの方もおられるしね」
「関西は妖怪が多くてだね」
「偉い方も多いのよ」
「そのこともわかったよ、ただ」
 先生は自分が座っているテーブルの空いている席に座ってお茶を飲みつつお話をするお静さんに言いました。
「お静さんのお話を聞いていると」
「どうしたのかしら」
「うん、あのお姫様は狐が正体って説があったけれど」
「それは違うみたいよ」
「それがわかったよ」
「元は人間だったってお話があったわ」
 そうだったというのです。
「私が知る限り狐ではね」
「ないんだね」
「ええ、それと天守物語って作品があったわね」
「実は僕はあの作品についての論文を執筆中なんだ」
 このこともお話した先生でした。
「それであのお姫様についても調べてるんだ」
「そうだったのね」
「うん、それでね」
「ええ、あの方はむしろね」
「天守物語の方がだね」
「そっくりなのよ」
 こう先生にお話しました。
「これがね」
「そうだったんだ」
「何か昔の絵じゃ怖いお婆さんみたいな感じだけれど」 
 それがというのです。
「実はね」
「凄く奇麗な人なんだ」
「そうよ、ただね」
「ただ?」
「あの作品は私も読んだし観たけれど」
 それでもというのです。
「ちょっと妖しく描き過ぎよ」
「あれは泉鏡花の作風だね」
「私もそう思うわ」
「泉鏡花にも詳しいみたいだね」
「勿論水木しげる先生にも詳しいわよ」
 こちらの妖怪についての大家にもというのです。
「あの人今は博士になってるし」
「お亡くなりになったけれど」
「そう、人間としての一生を終えてね」
 そうなってというのです。
「遂に私達と同じ妖怪になってね」
「そうしてなんだ」
「外見はそのままで」
 人間の時と同じというのです。
「妖怪のことなら何でもご存知の」
「妖怪博士にだね」
「なったのよ、私達の中じゃ名士よ」
 日本の妖怪の中でもというのです。
「もうね」
「何か納得出来るお話だね」
「そうでしょ、あそこまで妖怪のことを描いてくれたのよ」
 漫画の中で、です。
「そして凄く詳しくて親しくしてくれたから」
「妖怪になることも当然だね」
「そうよ、今じゃ本当に試験も学校もなくて」
「朝は寝床で夜は夜で」
「運動会って感じよ」
 そうして楽しく暮らしているというのです。
「そうしてくれてるわ」
「いいことだね」
「私達はね」
 日本の妖怪はとです、お静さんは先生にお話します。
「いつも人間と一緒にいるのよ」
「妖怪の世界と人間の世界は一緒にあるね」
「神様の世界もね」
「三つの世界の垣根は低いね」
「曖昧よ」
 そこはというのです。
「凄くね」
「人間は神様になれば」
「妖怪にもなるし妖怪と神様もね」
「実はあまり違わないね」
「そりゃ天照大神位偉い神様は違うけれど」
 妖怪とは全く違う存在だというのです。
「姫路城のお姫様や九尾の狐になると」
「神様と言ってもいいね」
「実際九尾の狐って神獣でもあるから」
 そうした存在でもあるからだというのです。
「だからね」
「もうそこはだね」
「そうよ、妖怪はね」
 まさにというのです。
「人間や神様とね」
「あまり違わないね」
「そうよ、ただ心がね」
「どうかだね」
「大切なものがなかったら」
 その心にです。
「もう人間でも妖怪でも神様でもなくなるわ」
「化けもの、かな」
「そう言うべきね、妖怪と化けものは同じ様に言われるけれど」
 それでもとです、お静さんは先生にお話します。
「実はね」
「違うね」
「そうよ、人間も心に大切なものがないとそうでしょ」
「人間でなくなるね」
「では何かというと」
「化けものだね」
「神様もよ、心の中に大切なものがないと」
 そうなればというのです。
「やっぱりね」
「化けものになるね」
「だから妖怪もね」
「妖怪は妖怪であってだね」
「化けものじゃないのよ」
「変化もだね」
「そうよ、私なんて妖怪と言うか変化というか」
 それはというのです。
「ちょっとわからないわね」
「猫だからね、猫又は」
「そう、猫が長生きしてね」
 そうしてというのです。
「妖怪になるけれど」
「これがね」
 まさにというのです。
「人間にも変身出来るから」
「変化と言ってもだね」
「いいのよ、本当にね」
「その辺りはだね」
「ちょっと曖昧なのよ」
 妖怪とも言えるし変化とも言えるというのです。
「この辺りは。ただ尻尾が二本あるから」
「それでだね」
「妖怪になってるかしらね」
「変化はそのままの姿でいるのかな」
「そうした場合が多いから。ただ私今は尻尾二本だけれど」
 猫又の名前通りにです。
「これがね」
「変わっていくね」
「長生きするにつれて尻尾の数が増えて」
 そうなっていってというのです。
「千年経つと九本になるわ」
「狐君達と一緒だね」
「そう、九尾猫になるのよ」
 まさにそうなるというのです。
「あと他の生きものもだね」
「そう、狸に獺に穴熊にね」
「穴熊は貉だからね」
「彼等もなるし」
 長生きしていると尻尾の数が増えていくというのです。
「そして犬もね」
「日本ではそうだね」
「千年生きていると九本尻尾になって」
「凄い魔力を備えるね」
「そうよ、ちなみに一番強いのは」
 それはといいますと。
「人間でしょうね」
「千年生きた人間だね」
「つまり仙人さんね」
 この人達だというのです。
「要するに長生きした生きものは仙猫とか仙狐なのよ」
「妖力が仙術だね」
「そうなるから。それで人間が長生きすると」
「一番強いんだね」
「そうよ、仙人さんは滅茶苦茶強いわよ」
「君達よりもだね」
「久米仙人さんなんか凄いから」 
 この仙人さんになると、というのです。
「とんでもない力をお持ちよ」
「ああ、仙人さんって日本にもいたね」
 老馬がこのことに気付きました。
「中国だけじゃなくて」
「久米仙人さん以外にもいたね」
 トートーも言います。
「仙人さんって」
「役小角さんがそうだったかしら」
 ポリネシアはこの人を思い出しました。
「違ったかしら」
「陰陽道はまた違うよね」
 ジップは首を少し傾げさせています。
「あれとはまた」
「あと密教も別だったかな」
 ホワイティは高野山のことを思い出しています。
「あっちは仏教だから」
「何か日本ってそうした術の種類が多いから」
 チーチーは少し困ったお顔になってます。
「区別がつきにくいね」
「とりあえず仙人さんもいるね」
「それは確かね」
 こう言ったのはチープサイドの家族でした。
「久米仙人さんもそうだし」
「中国と一緒で」
「というか中国から入ったのね」
 ダブダブが指摘しました。
「仙人そして仙術も」
「仙人とか陰陽道とか密教とか」
 ガブガブは今一つ分けきれていないです。
「色々あるから仙人さんもいるのかな」
「とりあえず日本にも仙人さんはいる」
「それでいいかな」
 オシツオサレツは二つの頭でこう考えました。
「要するにね」
「簡単に考えていいんじゃないかな」
「うん、何しろこの久米仙人はね」
 先生はこの人について皆にお話しました。
「久米寺を建てているしね」
「お寺って仏教だけれど」
「仙人さんって仏教とは違うよね」
「確か中国の宗教の道教だから」
「お正月とかのね」
「そっちなのに?」
「仏教のお寺を建てたんだ」
 皆はこのことにどうにも首を傾げさせてしまいました。
「何かね」
「全然違うんじゃ」
「いいのかな」
「全然違うのに」
「だからそこは日本でね」
 先生は首を傾げさせた皆に知的で温和な笑みでお話しました。
「神道も仏教も道教もキリスト教もね」
「一緒にあるから」
「だからいいのね」
「仙人さんが仏教のお寺を建てても」
「そうしても」
「そうなんだ、そこはね」
 本当にというのです。
「混ざっているんだ」
「日本らしくて」
「神社の中にお寺があったりその逆があったり」
「クリスマスのすぐ後にお正月があったり」
「節分が終わったらバレンタインとか」
「それで暫くしたらひな祭りとか」
 そうした様々な宗教行事があることがというのです。
「日本なんだね」
「何か混沌としてる感じだけれど」
「仙人さんもいて」
「仙人さんがお寺を建てるお国ってことね」
「そうよ、もう全然ね」
 お静さんも皆に言います。
「そうしたことはね」
「普通ってことなのね」
「仙人さんにしても」
「普通にいていいのね」
「そういうことよ、それで仙人さんのお力は」
 久米仙人をはじめとしてです。
「私達よりずっと凄いのよ」
「そうなのね」
「人間の仙人さんだと」
「もう妖怪の人達より強いのね」
「妖力というか仙力を備えた他の生きものよりも」
「そうなの、ちなみに仙人さんは山にいるから」
 いる場所はそちらだというのです。
「お会いしたいと思ったらそちらにね」
「日本は山が多いから何処かな」
 先生はお静さんに応えて微笑んで言いました。
「一体」
「そこはあれよ」
「自分で探すことだね」
「そうよ」
 その通りという返事でした。
「そういうことでね」
「それじゃあね」
「ええ、しかしね」
「しかし?」
「いや、先生って日本のことでも何でも全然偏見がないから」
 お静さんはここで先生ご自身に言いました。
「私もお話しやすいわ」
「ううん、僕は昔からね」
「偏見についてはなのね」
「ないつもりだから」
 それでというのです。
「学問にそれがあったら駄目だしね」
「人種とか民族とか宗教に」
「あと性別や生物としての種類にもね」
「偏見がないのね」
「今まで色々な場所を巡ったり色々な人に会ってきたしね」
 このこともあってというのです。
「だからね」
「偏見はないのね」
「月にも行ったしね」
 笑ってです、このこともお話した先生でした。
「それで月の人達もお会いしたし」
「ああ、月にも行ったわね」
「アポロ十一号以前にね」
「物凄いお話ね」
「ひょっとしたら」
 ここでふと思った先生でした。
「僕が会った人達はかぐや姫の子孫だったかもね」
「あっ、竹取物語ね」
 かぐや姫と聞いてです、お静さんはかぐや姫がヒロインである世界で最初の物語とも言われているお話を思い出しました。
「あの物語は私も大好きよ」
「そうなんだね」
「ええ、それでね」
「それで?」
「先生の言った通りね」
 お静さんは先生ににこりとして言うのでした。
「先生がお会いした月の人達も」
「かぐや姫の子孫でもだね」
「不思議でないわね」
「そうだよね」
「中国でもそんなお話があるしね」
「常蛾のお話だね」
「ええ、あの女神様のお話もあるし」
 だからだというのです。
「先生がお会いした人達は本当に。ひょっとしたら」
「あの時にだね」
「若し生きていたらだけれど」
 こう前置きをしてお話するのでした。
「かぐや姫にもね」
「お会い出来たのかもだね」
「知れなかったわね」
「そうだね、そう思うと」
「あの時にお会い出来なかったことは」
「今は残念に思えるよ」
「そうなのね。それでも色々なところに行って色々な人とお会いしたから」 
 だからと言うお静さんでした。
「先生には偏見がないのね」
「そうだろうね」
「いいことね」
 にこりと笑って言うお静さんでした。
「本当に」
「そうだよね」
「それとね」
「それと?」
「そんな先生なら」
 先生をよく見て言うのでした。
「絶対に素晴らしい方と一緒になれるわね」
「結婚かな」
「きっとね」
「ははは、僕にはね」
「そんなお話っていうのね」
「ないよ」
 このことはすぐに否定するのでした。
「絶対にね」
「そうかしら」
「僕はもてないんだ」
 断言する先生でした。
「女性には縁がないよ」
「それも全く、なのね」
「そうだよ、僕は生まれてこのかたね」
 それこそといのです。
「もてたことはね」
「一度もないっていうのね」
「子供の頃からね」
 今に至るまでというのです。
「そんなことはなかったから」
「だからなの」
「そう、だから結婚とかね」
「絶対にないのね」
「運動音痴でこの外見だよ」
 野暮ったいものだからだというのです。
「だからね」
「もてなくて」
「結婚もね。妹には来日してここに来る度に言われているけれど」
「いや、人間外見じゃないわよ」
 お静さんは先生に真面目に言いました。
「はっきり言うけれど」
「それ皆から言われるけれどね」
「だってその通りだからよ」 
 真理だからだというのです。
「幾らお顔がよくてもね」
「性格が悪いとだね」
「もてないわよ、品がなくてもね」
 この場合もというのです。
「駄目よ、けれどね」
「けれどっていうと」
「先生は紳士だし親切だし公平で」
 お静さんも先生の長所はちゃんとわかっています。
「女性にも礼儀正しいじゃない、悪いこともしないし」
「モラルは守らないとね、それに紳士でありたいとはね」
「いつも思っていてよね」
「ちゃんとしているつもりだよ」
「しかも服装もしっかりしてるし」
 外出の時はいつもスーツです。
「清潔だしね」
「だから身だしなみはね」
「ちゃんとしないと駄目っていうのね」
「お掃除は皆がしてくれるし、服の手入れも」
 動物の皆を見て言うのでした。
「だからね」
「身だしなみもなのね」
「奇麗にしてね」
 そうしてというのです。
「やっていけているんだよ」
「そうなの」
「僕一人じゃ生活力もないからね」
「それはどうとでもなるわよ、先生ちゃんとした収入もあるし」
 大学教授としてのそれがというのです。
「何も不足はないから」
「だからなんだ」
「絶対にいい人とね」
 お静さんも他の人達と同じく確信して言えました。
「結婚出来て幸せにもね」
「なれるんだ」
「ええ、なれるわ」 
 間違いなくというのです。
「本当にね」
「そうなのかな」
「私は化かすけれど嘘は言わないわ」
 お静さんはまた断言しました。
「だからね」
「僕も結婚出来るんだ」
「いい人とね」
 間違いなくというのです。
「それが出来るわ」
「そうかな」
「そうよ、安心していいわよ」
「果たしてそうかな」
「何なら占ってみるわよ」
 お静さんは先生にこうも言いました。
「猫又の妖力を使ってね」
「お静さん占いも出来るんだ」
「そうよ、じゃあいいかしら」
「それじゃあ折角だからね」
「ええ、はじめるわね」
 こう答えてです、お静さんは虫眼鏡を出してでした。
 先生の手相、そして顔相を見てから先生に言いました。
「学問は万全、金銭とお友達と家族に恵まれているわね」
「いいことだね」
「旅行での運もよし、ただスポーツは全然ね」
「まさにその通りだね」
「そして晩婚だけれど」
 それでもとです、お静さんは確信を指摘しました。
「良縁ありよ」
「そうなんだ」
「ええ、しかもその人はね」
「その人は?」
「近くにいるみたいよ」
「あっ」
 お静さんの今の言葉にです、動物の皆は思わず声をあげました。
 そしてです、お互いでお話をはじめました。
「やっぱり」
「そうだったんだね」
「絶対にって思っていたら」
「本当にそうだったんだ」
「いや、まさにだったね」
「私達の思った通りよ」
「皆わかってるのね」
 お静さんはその皆を見てにこりと笑いました。
「というかいつも先生の傍にいればわかるね」
「わかるよ、それは」
「だってあの人一途だし」
「何かあると先生のところに来てくれるから」
「お弁当やお菓子も作って持って来てくれるから」
「わかるよ」
「そのことはね」
 皆も先生に言います。
「それはね」
「だからね」
「今回のお静さんの占いもやっぱりって思ったよ」
「まさにね」
「それこそね」
「そうね、皆もわかってるし」
 お静さんは皆のお話を聞いて納得したお顔で頷きました。
「これは絶対に幸せになれるわ」
「そうだよね」
「じゃあ僕達も頑張らないとね」
「あの人と一緒に」
「そして先生に幸せになってもらおう」
「是非ね」
「誰のことなのかな」
 先生だけがわかっていなくて首を傾げさせます。
「その人は」
「そこでわからないのが先生だから」
「困るね」
「先生らしいって言えばそうだけれど」
「この鈍感さがね」
「どうしようもないわね」
「先生の欠点はね」
 お静さんはまた虫眼鏡で先生のお顔を見つつ言いました。
「自分に自信がないこととこうしたことに凄く鈍感なことね」
「鈍感かな」
「ええ、凄くね」
 こう先生ご自身に言います。
「そこは問題よ」
「そうなのかな」
「そうよ、もっとね」
 それこそというのです。
「そうしたこともしっかりしないとね」
「駄目なんだね」
「ええ、まあ先生には頼りになるお友達が多いから」
 このことには本当に恵まれています。
「だから絶対にね」
「結婚出来るんだ」
「私の占いは外れないわ」
 それこそ絶対にというのです。
「だって妖力があるから」
「占いの力もあるんだね」
「そうよ、だから安心してね」
「僕は結婚出来るんだ」
「絶対にね、あと姫路城のお姫様は」  
 あらめてこちらのお話もするのでした。
「お会いするとなるとね」
「お姫様だからだね」
「失礼のない様にね」
「そのことはわかっているよ」
「戦士絵は紳士だから間違いないけれど」
 それでもというのです。
「やっぱり相手の方が相手の方だから」
「兵庫の妖怪の総大将だからだね」
「そうよ、人間の世界で言うと知事さんになるけれど」
「君主に等しいね」
「お姫様だから」
 そうした立場だからだというのです。
「一応ね」
「念押しだね」
「それで言っておくわ」
「わかったよ、それじゃあね」
「ええ、そういうことでね」
「そのことは注意しておくよ」
「お願いね」
 このことを先生と動物の皆に言ってでした、そのうえで。 
 お静さんはお店に戻りました、そうしてでした。
 先生はお静さんを送ると論文の執筆に入りましたがここで動物の皆が先生にしみじみとした口調で言いました。
「お静さんもわかってるね」
「先生のことがね」
「しかも占ってくれてね」
「その占いの結果がよかったわね」
「これじゃあね」
「私達も安心よ」
 笑顔で言います。
「これは僕達にとっても吉報だよ」
「そうそう、こんないいニュースないよ」
 オシツオサレツが二つの頭で言います。
「結婚出来るんだね、先生」
「それも確実に」
「じゃあここはね」
 老馬もにこにことしています。
「僕達も頑張っていこう」
「占いは道標」
 ダブダブは右の羽根を挙げて言いました。
「ならその道に行くことよ」
「そうよね、道が見えたら」
 ポリネシアはダブダブの言葉に頷きました。
「そこに行くだけよね」
「しかも妖力を持つ猫又の占いだよ」
 ホワイティはそれならと言います。
「こんな心強いことはないよ」
「幾ら先生が鈍感でもね」
 ガブガブは先生を見て言いました。
「確かなことを言ってもらったから」
「じゃあ何の心配もないね」
「私達も応援していきましょう」
 チープサイドの家族もこう言います。
「あの人のお力になって」
「どんどんとね」
「先生の背中も押して」 
 トートーは先生をその丸い目で見ています。
「やっていこうね」
「肝心の先生は相変わらずだけれど」
 もうチーチーにもわかっていることです。
「それでもだよ」
「こんないい占いのこと言われたら」
 まさにと言うジップでした。
「僕達も前に前にだね」
「何かわからないことを言ってるね」
 先生だけがこう思います。
「皆で」
「ああ、もうね」
「先生が気付かなくてもね」
「僕達は確かな道標を教えてもらったし」
「心配しなくなったわ」
「だから先生が気付かなくても安心よ」
「いや、安心とかね」
 やっぱり先生だけがわかっていません、お言葉にもはっきり出ています。
「よくわからないけれど」
「まあまあ」
「わからなくてもいいから」
「それが何時かわかるから」
「絶対にね」
「そうなるから」
「ううん、そうなんだ」
 やっぱり首を傾げさせたまま応える先生でした。
「僕にとって悪いことじゃないんだね」
「というかいいことよ」
「それも凄くね」
「こんないいことないから」
「だからね」
「もっと頑張っていって」
「そうしていってね」
「まあ占いは悪いことじゃないよ」
 このことは否定しない先生でした。
「科学的じゃないとか否定する意見もあるけれどね」
「あと迷信とかね」
「そう言う人もいるよね」
「当たるものじゃないとか」
「色々言う人いるね」
「そうだね、けれど僕は違う考えだから」
 占いを否定する人達とはというのです。
「占いは本当に道標だよ」
「人にとって」
「そういうものだよね」
「占いを聞いてどうしていくか」
「それを考えて決めるものだね」
「そうだよ、若し悪い結果が出ても」
 自分に思わしくない占いのそれが出てもというのです。
「それをどう生かしていくかだよ」
「悪い様にならない様にしていく」
「そうしていくことだね」
「悪い結果に落ち込まない」
「そこからだね」
「頑張ることだね」
「そう、いい結果だとしたら」
 この場合はといいますと。
「それに向かう様にするんだよ」
「いいならいいで」
「悪いなら悪いで」
「そうしていくといいのね」
「それが占いね」
「そう、人の道標になるから」
 だからだというのです。
「悪いものじゃないよ」
「一概に否定出来ないね」
「占いっていうものは」
「だから昔からあったし」
「今もあるのね」
「それも世界中にあるね」
 このこともです、先生は指摘しました。
「それこそ」
「そうだよね」
「占いない国なんてないよね」
「イスラムだってあるしね」
「占いはコーランで禁じられているけれど」
「それがね」
「イスラムの占星術はかなりのものだよ」
 先生はイスラム教にも通じています、これも学問によるものです。
「確かにコーランでは禁じられているけれど」
「占いは当たらないって言ってね」
「そう言って禁じていたよね」
「それが実はね」
「イスラムでもね」
「占いはしっかりやっていて」
「占星術が有名だね」
 動物の皆も言います。
「それが実は」
「この辺りイスラムは面白いよね」
「柔軟だよね」
「元々寛容な宗教だしね」
「占いも発達したね」
「そうなんだよ、だからね」
 それでというのです。
「占いは世界中であるしね、そもそも非科学的で何でも片付けることはね」
「先生いつも言ってるよね」
「それこそが非科学的だって」
「今の時点の科学では何も語れない」
「科学はまだまだ完璧じゃないって」
「人間のやることなすことで完璧なものはないよ」
 先生はこの摂理を指摘しました。
「科学も然りだね」
「そうだよね」
「科学は万能じゃないね」
「そうだよね」
「それで科学から何でも決め付けるのはね」
「かえって非科学的だよね」
 皆も頷きます、そして先生も言いました。
「空想科学何とかになると」
「あの本こそだね」
「もう非科学的の極みだよね」
「今の時点の科学でアニメや特撮を一方的に書いて」
「しかも設定とか書き換えたり間違えていたり」
「非科学的の最たるものだね」
「科学とか言っていてもね」
 それでもと言う先生でした。
「あれだけ火が格的な本のシリーズはそうないよ」
「だよね」
「それで占いを無闇に否定することも」
「他のことも非科学的だとか一方的に言って否定することもね」
「それこそが非科学的で」
「そこからは何の進歩も生まれない」
「停滞を招くよ」
 まさにというのです。
「キリスト教を絶対としていた時代と同じだよ」
「あの頃の欧州とだね」
「確かにあの頃は進歩しなかったし」
「だったらね」
「非科学的だとか言って決め付けて回ると」
「かえって科学の停滞につながるんだね」
「そうだよ、僕達の今の科学はまだまだで」
 そしてというのです。
「進歩もね」
「最中にあるってことだね」
「まだまだこれから」
「高度に思われていて実は違う」
「どんどん進歩してわかっていくことね」
「そうなんだよ」
 その通りだというのです。
「だからね」
「科学を万能と思わず」
「無闇に否定しない」
「それは占いもそうで」
「あらゆる学問がそうなのね」
「そういうことだよ、学問は否定しないことだよ」
 このことが大事だというのです。
「何につけても」
「先生はそう考えてるよね」
「そpのうえで学問をしていてね」
「今もだよね」
「泉鏡花さんの論文を書いているね」
「そうだよ、あの人にしても」
 泉鏡花もというのです。
「確かに極端な潔癖症でね」
「生ものは否定していたね」
「お水やお酒も沸騰させないとで」
「それで犬にも近寄らなかったけれど」
「そうしたことは別でね」
「妖怪はよく非科学的と言われるけれど」
 それでもというのです。
「その妖怪もね」
「否定しないでね」
「それでだよね」
「しっかりと書いてね」
「名作を残しているね」
「それも数多く」
「そう、だからね」
 泉鏡花もそうだったからだというのです。
「その泉鏡花の作品を学んでいてもね」
「それでもだね」
「偏見もなしで」
「そしてフィールドワークも行って」
「そのうえでね」
「しっかりやっていくね」
「さらに」
「そうしていくよ、それとね」
 さらに言う先生でした。
「皆お城に行っても迷わないでね」
「ああ、日本のお城って迷うよね」
「道が入り組んでいてね」
「何処をどう行けばいいのかわかりにくくて」
「それで迷うよね」
「そんな造りだね」
「あれはあえてだからね」
 迷う様な造りになっているというのです。
「敵が攻めてきた時にあっさり攻め落とされない様にだよ」
「道は入り組んでいて」
「それで上の方から攻撃される様になってるね」
「石垣の上の壁に穴空いてて」
「あそこから矢や鉄砲を撃たれるし」
「あと櫓からも撃たれるね」
「門からも撃たれるしね、とにかくね」
 日本のお城はというのです。
「攻めてきた敵をどう抑えるか」
「その為に櫓や門からも攻撃出来て」
「壁からもそうで」
「それで中も迷う様になっている」
「そうなっているんだね」
「そうなんだ、だからね」
 それ故にというのです。
「迷わない様にしようね」
「大阪城もそうだったし」
「姫路城もそうだしね」
「日本のお城って本当に迷路よね」
「何かとね」
「そこは気をつけようね」
 本当にと言うのでした。
「迷ったら大変だから」
「ルーブル美術館より迷う?」
「姫路城って」
「他のお城もだけれど」
「あのお城もよね」
「結構なものよね」
「僕は結構色々日本のお城を知ってるけれど」
 先生は回ってもいます。
「どのお城も迷路みたいだよね」
「松山城だってね」
「あと和歌山城も」
「本当にどのお城もだから」
「迷路みたいだから」
「迷わない様に気をつけていこう」
 是非にと言うのでした。
「皆で行こうね」
「飛べる面々はお空から場所もチェックしてね」
「そうして進んでいこう」
「とにかく日本のお城は迷路みたいだしね」
「皆でまとまって動いて」
「そうしてやっていこう」
 こう言うのでした、そしてです。
 皆で頑張ってでした、そのうえで。 
 姫路城に行く準備にも入りました、そして先生はお家に帰るとトミーが買ってきたたこ焼きをお酒のあてにしていましたが。
 そのたこ焼きを食べつつです、こうも言ったのでした。
「たこ焼きはいいね」
「うん、蛸をそうして食べるとかね」
「面白いよね」
「しかも物凄く美味しいしね」
「はふはふしながら食べるんだよね」
「お酒にも合うし」
「素敵だよね」
「僕もそう思うよ、日本というか」
 先生はたこ焼きを食べつつ言いました。
「大阪から生まれた素敵な味だね」
「全くだね」
「こうした味もあるんだね」
「イギリスじゃ蛸自体まず食べないけれど」
「日本、特に大阪は違うね」
「こうして普通に食べられるからね」
「しかも美味しくね。泉鏡花は食べなかったけれど」
 蛸自体をです。
「たこ焼きは知らなかったのかもね」
「結構新しい食べものらしいし」
「お好み焼きにしても」
「東京には伝わってなかったでしょうね、あっても」
「金沢でもね」
「あの人は尾崎紅葉の弟子になってからずっと東京にいたけれど」
 それでもというのです。
「たこ焼きは知らなかっただろうしね」
「それにだね」
「蛸自体をだね」
「食べなかった」
「そうだね」
「だからね」
 それでというのです。
「こんな美味しいものを食べなかったことは残念だよ」
「それはそうだね」
「こんなに美味しいのに」
「お酒にも合うのにね」
「そう思うよ」
 先生は焼酎、ロックのそれを飲みつつ言いました。
「あの時代は冷凍技術もなかったけれど」
「だから余計に注意していたんだね」
「何でも火を通していた」
「それで変な形のものも食べなかった」
「注意してだね」
「蛸とかは形が好きじゃなかったみたいだけれどね」
 たこ焼きはかなりあります、それで先生も皆もどんどん食べています。
「それでもね」
「蛸を食べなかったっていうのは」
「どうにも残念ね」
「特にたこ焼きについては」
「そうよね」
「こんな美味しいものをね」
 先生はたこ焼きを食べつつ言いました、その後で明石焼きも食べて蛸を満喫するのでした。その美味しい味を。








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