『ドリトル先生と姫路城のお姫様』




                第五膜  姫路城

 先生は動物の皆とトミー、王子と一緒に姫路城に来ました。そして姫路城に入るとすぐになのでした。
 その白くて壮麗なお城を見てです、こう言ったのでした。
「凄いね」
「まるで雪が降ったみたいだよ」
「真っ白でね」
「それでいて凄く恰好よくて」
「大阪城も立派だけれど」
「このお城も奇麗だね」
「日本で一番奇麗なお城とも言われているよ」
 先生はその皆にお話しました。
「実際にね」
「そうだよね」
「これだけ奇麗だとね」
「そうも言われるよね」
「奇麗な中に雄々しさもあるし」
「芸術品でもあるよ」
「そう、芸術品でもあるんだ」
 先生は皆にその通りだと答えます。
「このお城は」
「そうだよね」
「見ているとね」
「本当に奇麗だよ」
「このお城はね」
「特に天守閣がね」
「あの天守閣を見ているとね」
 本当にと言うのでした。
「芸術的なものさえ感じるよ」
「あの天守閣に登るのもいいしね」
「一番上から周りを観ることも」
「そういえばね」
 王子が先生に尋ねました。
「姫路城の天守閣の形は独特だね」
「天守閣と一緒にだね」
「うん、小さな天守閣も一緒にあるね」
「あれは小天守っていうんだ」
 先生は王子に答えました。
「王子が今小さな天守閣と言った通りにね」
「やっぱりそうなんだね」
「そう、日本の天守閣は一つとは限らないんだ」
「大きな天守閣とだね」
「小天守も一緒にあったりするんだ」
「それが姫路城の天守閣なんだね」
「あれもいいよね」
 先生は王子にこう答えました。
「そうだね」
「うん、よくあんな素晴らしい建物建てたよ」
「僕もそう思うよ、奇麗な建物は世界各国に沢山あるけれど」
「日本のお城もその中に多くて」
「それでね」
「その中でもだね」
「姫路城は有名だよ」
 その奇麗さでというのです。
「だから明治維新の時に取り壊されるって話が出ても」
「壊すのは勿体ないってだね」
「そうなってね」
 そのうえでというのです。
「取り壊されなかったんだ」
「いいことだね」
「僕もそう思うよ」
「こんなものを取り壊すなんて勿体ないよ」
 王子は心から言いました。
「本当に」
「そうだね、だからね」
「残って」
「今に至るんだ」
「この奇麗な姿を見せているんだね」
「そうだよ、じゃあね」
 それならと言う先生でした。
「是非ね」
「お城の中を見て回って」
「天守閣にもだよ」
 小天守と一緒になっているその立派な天守閣もというのです。
「登ろうね」
「それじゃあね」
「それとね」
「それと?」
「うん、皆時代劇も観るね」
 先生は皆にこうも尋ねました。
「日本のね」
「あっ、このお城出ますね」
 トミーが最初に気付きました。
「そういえば」
「徳川吉宗さんが主人公のね」
「あのかなり続いた時代劇ですね」
「あの時代劇ではね」
 まさにというのです。
「姫路城が出ているね」
「そうでしたね」
「本当は江戸城の筈だけれど」 
 幕府の将軍様だからです、将軍様は江戸城にいてそこから政治を執っていたのです。今は東京と呼ばれているその場所から。
「姫路城だったね」
「このお城を江戸城だということにしてですね」
「撮っていたんだ」
「そうでしたね」
「これは外国人にはわからないね」
 先生は笑って言いました。
「このお城を江戸城と言ってもね」
「今で言う皇居ですね」
「そう言ってもね」
「そうですよね」
「けれどね」
「それを、ですね」
「あえてね」 
 その時代劇の中ではというのです。
「そういうことにしていたんだ」
「時代劇ではそうしたことも多いですね」
「歌舞伎からだからね」
「時代を変えて名前を変えても」
「そういうことにするね」
「忠臣蔵もですね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「姫路城もね」
「あの時代劇ではですね」
「エジンベアの宮殿をバッキンガム宮殿ということにする様なものだけれど」
 イギリスではこうなるというのです。
「そこをね」
「あえてして」
「撮影して放送していたけれど」
「それが、ですね」
「また奇麗でね」
「いいってことになったんですね」
「姫路城はそこまで奇麗だからね」
 それ故にというのです。
「好評だったんだ」
「かなり長いシリーズでしたけれど」
「そうなったんだよ」
「そうですか」
「うん、こうして観てみてもね」
 まさにとです、先生はお城の中の石垣や壁、櫓等を見回しつつさらにお話しました。先生も楽しんでいる目になっています。
「そうなった理由がわかるよ」
「姫路城はね」
 ポリネシアもうっとりとしています。
「この世にあるとは思えない位だからね」
「そこまで奇麗だからね」
 ホワイティはオシツオサレツの背中から言いました。
「だからね」
「世界には色々な場所があるけれど」
 それでもと言うトートーでした。
「姫路城はそうした場所の一つだね」
「この世にあるけれどこの世にあるとは思えない」
 ダブダブもこう考えています。
「そんな場所ね」
「そうだよね」
 ジップはダブダブの言葉に頷きました。
「僕達何度も来てるけれど」
「来て観て回る度に思うよ」
 ガブガブも珍しく食べもの以外のことに関心を向けています。
「ここは凄く奇麗だって」
「本当にそうだね」
 チーチーが続きます。
「この世にこんな場所があるんだね」
「ここにある一つ一つが芸術品だね」
 老馬は実際にこう思いました。
「壁も石垣もね」
「こんな場所に住めたら」
「どれだけ素晴らしいかしら」
 チープサイドの家族もうっとりとなっています。
「このお城の城主様が羨ましいかしら」
「このお城に住めて」
「江戸時代のお殿様とかね」
「このお城に住めて最高の気持ちだっただろうね」
 最後にオシツオサレツが言います。
「他の大名の人達にも自慢出来るね」
「こんな立派なお城に住めるとか」
「そうだね、そしてね」
 先生は皆のお話を受けてこうも言いました。
「このお城にはね」
「うん、あのお姫様がいるんだよ」
「今も住んでるんだよね」
「そうだよね」
「そうだよ、ただね」
 ここでふと思った先生でした。
「このお城の天守閣は前に改修したね」
「ああ、そうだったね」
「それでお城が真っ白になったね」
「それまでも白かったけれどね」
「余計に白くなったね」
「あの時お姫様はどうしていたのかな」 
 ここでこう思った先生でした。
「一体」
「他の場所に住んでいたのかな」
「そうだったのかな」
「このお城の何処かに」
「そうしてたのかな」
「やっぱりそうなのかな」
 先生は考えつつ皆に応えました。
「あの時は」
「そうなのね」
「それじゃあね」
「あの時は天守閣から出て」
「このお城の何処かで暮らしていたのかしら」
「そうだったのかな」
「その辺りのことは気になるね」
 王子もこう言いました。
「この姫路城にいつもいる方だからね」
「そうだよね」
「兵庫の妖怪変化の総大将だから」
「この姫路城にいつもいる筈だから」
「天守閣を離れて」
 改修の間はです。
「このお城の何処かにいたのかな」
「そうかも知れないわね」
「考えてみれば住む場所が多いしね」
 このお城はというのです。
「櫓も多しね」
「そうだね」
「そのお城の何処かに入るか」
「そうしたお話を考えれば」
「何処でもあるね」
「そうだね」
 動物の皆も言います。
「ひょっとしたら」
「このお城の何処かにいたのかしら」
「そう思うとね」
「何処か気になるね」
「どうにも」
「僕もね」
 まさにと言った先生でした。
「何処なのかって思うけれど、ただ」
「ただ?」
「ただっていうと」
「わかっていて何度も巡ってみたけれど」
 それでもというのでした。
「本当に迷路みたいだね」
「ああ、そのことだね」
「実際にそうだよね」
「日本のお城だけあってね」
「何処が何処なのかわかりにくくて」
「道も入り組んでいて」
「ちょっと油断したらね」
 それならと言うのでした。
「道に迷ってね」
「困ったことになるね」
「何度巡ってもこうだとね」
「最初に何も知らずに攻め込んだなら」
「大変なことになるね」
「そしてそこでね」 
 先生はすぐ傍にあった櫓を見上げました、そうして皆に言うのでした。
「櫓とか城壁の穴からね」
「攻撃を受けてね」
「やられるんだね」
「そうなっちゃうんだね」
「そうだよ」 
 まさにというのです。
「だから攻めにくいんだ」
「ただ奇麗なだけじゃなくて」
「護りも凄いんだね」
「このお城攻めようと思うと苦労するね」
「絶対に」
「そうだよ、ただお城の堅固さで言うと」 
 その堅固さで言うならというのです。
「豊臣秀吉さんの大坂城は一番かな」
「ああ、あのお城ね」
「そういえば当時は大阪じゃなくて大坂だったね」
「先生もそこはわかってるんだね」
「そう、大坂城はね」
 豊臣秀吉さんの頃のこのお城はといいますと。
「もうどうして攻めにくく守りやすくするか」
「豊臣秀吉さんが考え抜いて」
「そうして築いたから」
「実際に攻めにくかったんだね」
「文字通り難攻不落っていう位に」
「そうだったんだ」
 実際にというのです。
「川が入り組んでいる中に築城して」
「大阪って橋が多いですね」
 トミーがこのことを言いました。
「その地名が」
「そう、つまりね」
「それだけ川が多かったんですね」
「その中にお城を築いたからね」
「川に守られていたんですね」
「只でさえね、そしてね」
 先生はさらにお話しました。
「そこに豊臣秀吉さんはね」
「考え抜いてですね」
「城攻めの名人と言われただけにお城のことがよくわかっていたけれど」
「そのことを最大限に活かして」
「築城したんだ、ものもお金もかなり使ってね」
「そうして築いたんですね」
「巨大なお城をね」
 川に守られている大坂の地にです。
「外堀も内堀も築いて」
「どの堀も幅があって深くて」
「石垣は高くて険しい、壁も高くて門は堅固で櫓も多い」
「まさに難攻不落だったんですね」
「だから誰も攻め落とせないとね」
「そこまで言われていたんですね」
「そうだったんだ」
 文字通りにというのです。
「大坂城はね」
「だから徳川家康さんも」
「攻める時に謀略を使って」
 そうしてというのです。
「外堀も内堀も埋めてね」
「一時休戦の時に」
「そうして石垣も壁も櫓も壊してだよ」
「その守りの殆どを取ったんですね」
「そうでもしないとね」
 それこそだったというのです。
「攻め落とせない様なお城だったんだ」
「それが当時の大坂城だったんですね」
「そうだよ、勿論道もね」
 動物の皆が言うお城の中のそれもというのです。
「複雑でね」
「迷う風だったんですね」
「しかも伏兵を隠しやすい場所に置いていたから」
「余計に攻めにくかったんですね」
「そうだったんだよ」
「姫路城より攻めにくかったんですね」
「このお城も凄かったけれど堅固さなら」
 このことについてはです。
「大坂城は別格だっただろうね」
「凄いお城だったんですね」
「今の大阪城は徳川幕府の頃に建てられたから」
 豊臣秀吉さんが建てたお城ではないというのです。
「あの天守閣は秀吉さんの頃の天守閣を再現しているけれどね」
「黒くて黄金の瓦でなくてもですね」
「そこは再現していないね」
 そこまではというのです。
「実際に」
「そうですよね」
「けれどね」
「それでもですね」
「うん、天守閣の形はね」
「再現しているんですね」
「そうなんだ」
 大阪城はというのです。
「そこはね、僕はあの頃の天守閣だったら」
「秀吉さんのものだったら」
「姫路城にも負けなかったと思うけれどね」
「このお城の天守閣にも」
「文字通り天下一のお城だったからね」
「そうですか」
「今の鉄筋コンクリートの天守閣でもとんでもなく立派だけれどね」 
 それでもというのです。
「やっぱり姫路城はね」
「凄いですよね」
「そう思うよ、本当に」
「白鷺城っていうけれど」
 ここでこう言ったのは王子でした。
「その名前に負けない位にね」
「立派なお城だね」
「そう思うよ、流石に今の大阪城でもね」
「白鷺城にはだね」
「僕が思うにね」
 こう前置きしてお話するのでした。
「姫路城は日本一のお城だよ」
「王子はそう思うんだね」
「うん、奇麗で恰好いいからね」
 だからだというのです。
「築かれた時代そのままで残っているしね」
「歴史的価値もあるからだね」
「そうしたお城実際には少ないよね」
「大阪城もそうだしね」 
 先生はまたこのお城の名前を出しました。
「そして熊本城、名古屋城、広島城もね」
「それぞれだよね」
「天守閣は初代じゃないから」
「それぞれ戦争で初代の天守閣はなくなってるね」
「それで二代目だったりするんだ」
「そうだったね」
「大阪城は三代目だよ」
 このお城はというのです。
「秀吉さんのお城は大坂の陣で焼けてね」
「お城自体がなくなったしね」
「それで天守閣も焼け落ちたんだ」
 黒と金色の見事な天守閣がというのです。
「それで後で徳川幕府がもう一度築城してね」
「天守閣もだね」
「そうしたけれど落雷を受けて」
 その二代目の天守閣がというのです。
「そうしてね」
「また焼け落ちてだね」
「当時は避雷針とかなかったからね」
 そのせいでというのです。
「雷を受けたらね」
「それで終わりで」
「そうだったからね」
 それ故にというのです。
「二代目の天守閣もね」
「それでなくなったんだね」
「そうだよ、それで長い間大坂城に天守閣はなくて」
「確か昭和に入ってだね」
「やっと建てられたんだ」
 こう王子そして他の皆にお話するのでした。
「それが今の三代目の天守閣だよ」
「青緑の瓦のだね」
「そうだよ、これまでの天守閣は短命だったけれど」
「三代目はタフみたいだね」
「空襲でも生き残ったからね」
 第二次世界大戦での大阪への空襲です、この戦争では日本の多くの街が空襲を受けて大変だったのです。
「天守閣の周りは瓦礫の山になったけれど」
「天守閣だけは残ったんだったね」
「そうだったんだ、これがね」
「凄いことだね」
「これまでの二代の天守閣の想いがあるのかな」
 ここで先生はこうも思いました。
「短命だったね」
「前の二代の魂が三代目にあって」
「それでね」
 そのうえでというのです。
「ああしてね」
「生き残ったんだね」
「空襲からも。そしてね」
「今もだね」
「大阪の街にあるのかもね」
「そう思うとあの天守閣も立派だね」
「そうだね」
 先生は大阪城の天守閣のお話をするのでした。
 そしてです、先生は皆と一緒に姫路城の中を回っていってでした。
 そのうえで天守閣のある本丸まで来ました、ですがここで先生は言うのでした。
「いやあ、ここまで歩いてね」
「疲れたの?」
「そうなったの?」
「ちょっとね」
 こう皆に答えました。
「丁度十一時だしね」
「じゃあお茶にしよう」
「そうしよう」
「ティータイムだしね」
「それならね」
「そうだね、喫茶のコーナーもあるし」
 丁度いい具合にすぐ傍にありました。
「じゃあそこで飲もうね」
「日本のお城だしお抹茶ね」
「お抹茶飲もう」
「それとお菓子もね」
「それ食べよう」
「是非ね」
「そうだね、お団子にお饅頭に」
 先生はそちらのお話もしました。
「きんつばも食べよう」
「そうしようね」
「じゃあね」
「今から食べようね」
「そしてお茶も飲もう」
 こうお話してでした、そのうえで。 
 先生は皆と一緒に茶屋に入りました、そうしてです。
 お抹茶にお団子、お饅頭にきんつばも頼みました。お昼前ですしそれぞれ一個ずつです。そのうえでなのでした。
 天守閣を観ながらお抹茶を飲みますが。
「いいねえ」
「うん、日本のお城だね」
「日本のお城にいる気がするね」
「そうだよね」
「素敵な気分になるね」
「本当にね」
「素晴らしいね」
 笑顔でお話します、皆と一緒に飲みながら。
「これが日本のお城に来た時の楽しみの一つだね」
「日本のお城に来たらね」
「こうしてお城の中でお茶を飲んでお菓子を食べる」
「些細なことだけれどね」
「日本のお城に来た楽しみね」
「醍醐味の一つだね」
「僕もそう思うよ、だからね」
 それでというのです。
「日本のお城に来たら」
「先生いつもこうしてるね」
「お城に来てね」
「そうして楽しく食べてるね」
「お茶も飲んでね」
「お城の景色も楽しんでるね」
「うん、特にこのお城ではね」
 姫路城ではというのです。
「奇麗なお城だけにね」
「いいよね」
「それじゃあね」
「楽しもうね」
「今の時間も」
「是非ね」
「それでね」
 ここで言ったのはジップでした。
「これから天守閣に登るね」
「一番上に行くね」
 トートーはその天守閣を観ています。
「七階まで」
「一番上まで登ってね」
 ガブガブはもうこのことを楽しみにしています。
「そこから景色も観ようね」
「頂上からの景色がまた素敵なんだよね」
 ホワイティもうきうきした感じです。
「本当にね」
「じゃあお茶を飲んで」
「お菓子も食べて」
 チープサイドの家族は今からお話します。
「それからね」
「天守閣に入ろうね」
「お昼はその後だね」
 チーチーはその先のことも考えています。
「それも楽しみだね」
「今日も楽しみが多いわね」
 ポリネシアはこのこと自体を指摘しました。
「お城の中も天守閣も」
「何ていうか」 
 まさにと言ったダブダブでした。
「ここにずっと住みたくなったわね」
「そうだね、天守閣の中では住めないけれど」
 老馬は姫路城の天守閣のその中を知っているのでこのことはわかっています。
「けれど御殿の中に住みたいね」
「いいね、道に迷うけれど」
「それでもこんな奇麗な場所なら」
 最後にオシツオサレツが言います。
「是非ね」
「ずっと住みたいね」
「うん、誰もがそう思うね」
 先生も笑顔で皆に応えます。
「こうしたお城や宮殿の中に入るとね」
「そうだよね」
「ベルサイユ宮殿でもね」
「あの宮殿おトイレなかったらしいけれど」
「住みたくなるよね」
「あそこもね」
「そうだね、誰もがそう思うけれど」
 それでもというのでした。
「やっぱり住むとなったら」
「自分のお城が一番?」
「そうなるかしら」
「いざ住むとなると」
「実際にはね」
「そうだね、姫路城にしてもね」 
 やっぱりというのです。
「慣れ親しんでくつろげる我が家にはね」
「やっぱり負けるかな」
「そうだよね」
「今の僕達のお家が一番かな」
「あの日本のお家がね」
「何といっても」
「そうかもね、それとね」
 さらに言う先生でした。
「日本のお家に僕はね」
「親しんでるね」
「イギリスのお家よりもね」
「あのお家に長く住んでいたけれど」
「今じゃすっかりね」
「うん、何か日本に入って」
 そうしてというのです。
「すぐに馴染んでね」
「そうだよね」
「今もだよね」
「ずっと住んでいてね」
「そうしてね」
「今じゃすっかり馴染んで」
「日本人より日本の暮らしに馴染んでいるかもね」 
 動物の皆が見てもです。
「よくそこまで馴染めるねっていう位にね」
「先生今のお家に馴染んで」
「お布団で寝て座布団の上に座って」
「ちゃぶ台も使ってね」
「全部いいね、何か三日もしたら」
 今のお家にそれ位住むとです。
「普通にね」
「暮らしてるね」
「そうなったね」
「そしてそのお家の方がいい」
「今の先生は」
「このお城に住んでもいいけれど」
 それでもというのです。
「第一はね」
「あのお家だね」
「先生にとっては」
「言われてみれば僕達もだね」
「お城や宮殿に住むのもいいけれど」
「第一はね」
「僕達のお家だね」
 動物の皆も先生と同じでした、考えてみますと。
 そうしてです、トミーもお茶を飲みながら言いました。
「僕もですね」
「トミーもだね」
「僕は先生や皆と違って馴染むまでに時間がかかりました」
「イギリスのお家の方がだね」
「馴染めていました」
 最初はというのです。
「そうでしたけれど」
「トミーはそうだったんだね」
「お箸も」
 食べる時に使うこの食器もというのです。
「最初はどうも」
「そういえばトミ―最初はね」
「お箸に苦労していましたね」
「うん、僕はね」
 先生はといいますと。
「世界中を回ってきたからね」
「お箸にも慣れていましたね」
「そうだったけれどね」
「僕もそのつもりでしたけれど」
 先生と一緒に世界中を旅してです。
「お箸の正しい使い方が」
「ああ、ちゃんとしていると思っていたら」
「それが、でして」
 日本に来て日本人のお箸の使い方を見てです。
「違うって気付いて」
「ちゃんとした握り方、使い方にするのにだったんだ」
「苦労しました」
 そうだったというのです。
「これが」
「そうだったんだね」
「はい、本当に」
 まさにというのです。
「僕は、あと畳やちゃぶ台も」
「日本のお家独自だね」
「お布団もですね」
「全部だね」
「最初は慣れませんでした」
「それまでに時間がかかって」
「苦労しました、ですが今は」
 どうかといいますと。
「慣れてです」
「馴染んでいるね」
「そうなっています、そういえば畳も」
 トミーはふと日本のお家にあるこの敷くもののことを思いました。
「江戸時代から凄く増えたんですね」
「昔の日本のお家の床は木の板だけね」
「湿気や寒気が」
「そのまま残っていたからね」
「過ごしにくかったんですね」
「夏も熱気が残ってね」
 夏は夏でというのです。
「困るからね」
「それで畳が出てきて」
「日本のお家には絶対にある様になってね」
「快適になったんですね」
「それだけね。若し畳がないと」
 そうなればというのです。
「日本のお家は過ごしにくいね」
「日本のお家には欠かせないですよね」
「今ではね」
「そういえば畳のベッドがあるね」
 王子がこちらのお話を出しました。
「そうだね」
「あれもいいそうだね」
「そうみたいだね」
「日本ならではのベッドだね」
「そうだね、日本ではベッドはね」 
 こちらの寝る場所はといいますと。
「奈良時代はあったと思うけれど」
「平安時代から和風の趣が強くなって」
「それでね」
 そうなってというのです。
「お布団になっていったんだ」
「そうだったんだね」
「お布団も本当に日本ならではだね」
「日本のお家はお布団だね」
「そのお布団も日本の文化の中で出てきて」
「育っていったんだね」
「そうして定着したんだ」
 そうしたものだというのです。
「実はね」
「畳と一緒だね」
「そうなるね、ただ天守閣の中は本来武器庫でもあったから」
「住む場所じゃないね」
「基本大きな櫓だよ」
 それが天守閣の実態だというのです。
「だから住むにはあまり向いていないんだ」
「織田信長さんは住んでいたそうだけれど」
「安土城の天主閣に」
「けれどそれは一般じゃなかったのね」
「実は」
「うん、あの人は天主閣を御殿にしていたからね」
 そうした造りにしていたからだというのです。
「かなり特別な例でね」
「普通は御殿に住むんだね」
「天守閣じゃなくて」
「この姫路城でもね」
「それは同じだったのね」
「そうだよ、大抵のお城でね」 
 先生はお茶を飲みつつ皆に答えます。
「御殿に住んでね」
「天守閣には住んでいなかったんだね」
「天守閣は武器庫で周りを観る場所で」
「住む場所じゃなかった」
「このことも覚えておくべきね」
「是非ね、それとね」
 さらにお話をする先生でした。
「さっき秀吉さんのお話が出たけれど」
「そうそう、このお城を築いたのは秀吉さん」
「最初に築いてね」
「その後でここまで大きくなったのよね」
「そうだったわね」
「そうだよ、最初はね」
 本当にというのです。
「秀吉さんが築いたんだ」
「あの人色々なところで出て来るね」
「日本の戦国時代のことに」
「織田信長さんもだけれど」
「あの人もそうね」
「そうだよ、戦国時代は信長さんと秀吉さんがね」
 まさにこの人達がというのです。
「よく出て来るよ」
「そうだよね」
「このお城もそうだしね」
「大阪だってそうだし」
「京都にも関係あるし」
「とにかく何かとね」
「信長さんと秀吉さんは出て来るね」
 皆もしみじみとして思います。
「それだけメジャーなんだね」
「日本の戦国時代では」
「やっぱりね」
「あの人達がいないとどうしようもないし」
「色々関わっているね」
「お茶だってそうだしね」
 今飲んでいるこちらもというのです。
「茶道を広めたのもね」
「ああ、そういえばね」
「お茶もそうだね」
「茶道を広めたのも信長さんだったね」
「茶器だってそうでね」
「千利休さんを取り立ててね」
「茶道が広まってね」
 そしてというのです。
「お茶自体もね」
「日本で広く飲まれる様になったね」
「それと一緒にお菓子も出て来てね」
「日本に定着したね」
「そうなったんだったね」
「実は織田信長さんはお酒が飲めなくてね」
 何と下戸だったというのです。
「それで甘いものが好きだったし」
「それ意外だよね」
「随分過激なお話も多い人なのにね」
「如何にも大酒のみなイメージがあるのに」
「それがね」
「お酒飲めなかったとかね」
「凄い意外だれど」
 動物の皆も最初織田信長という人はかなり飲む人だと思っていたのです。
「けれどそれがね」
「実は、なんだね」
「あの人お酒飲まなくて」
「というか飲めなくて」
「甘いものもお好きで」
「それでお茶に出会ってね」
 そうなってというのです。
「お茶に親しみ様になって」
「そこからだね」
「茶道が武士の人達の間に広まって」
「庶民の人達にも伝わって」
「それでだね」
「お茶も広まったんだね」
「皆が飲む様になったんだ、それお茶を飲むとお菓子も食べたくなるから」 
 甘いものもとです、お饅頭を食べつつお話する先生でした。
「それでね」
「僕達もこうしてだね」
「お茶とお菓子を楽しめる様になったんだね」
「日本でもね」
「そうなったんだね」
「そうだよ、千利休さんがいてこそだけれど」
 それでもというのです。
「織田信長さん、そしてその後の豊臣秀吉さんもお茶に親しんでね」
「金色の茶屋だって造ったしね」
「大阪城にあるよね」
「あれ凄いよね」
「あんなの造らせる位だったからね」
「茶道、お茶は余計に定着したんだ」
 この人もお茶に貢献したというのです。
「そうだったんだよ」
「お城や戦だけじゃない」
「戦国の世も終わらせたし」
「それにだね」
「お茶にも貢献したんだね」
「文化にもね、そう思うと」
 先生は残り少なくなったお茶を飲みつつさらにお話します。
「あの人達は凄いね」
「そうだよね」
「秀吉さんは姫路城を築いたし」
「そうしたことも考えると」
「戦国時代はあの人達ね」
「全くだね、そして秀吉さんは」
 この人はといいますと。
「どうもこのお城のお姫様に会っているね」
「おさかべ姫に」
「そうなんだ」
「どうもね。宮本武蔵さんもみたいだけれど」
 この人だけでなくというのです。
「あの人もね」
「会ってたんだね」
「最初に姫路城を築いただけに」
「そうだったんだね」
「そうみたいだよ、そして代々の城主さんがね」
 秀吉さんの後の人達もというのです。
「会っていたみたいだよ」
「成程ね」
「最初の城主さんが秀吉さんだしね」
「だったらね」
「あの人が最初に会ったのね」
「そうだったんだね」
「そうみたいだよ、そしてその年のお城のこととかを聞いていたみたいだね」
 そのおさかべ姫からというのです。
「どうやらね」
「ううん、凄い縁だね」
「秀吉さんも妖怪と関係があって」
「そしてだね」
「会っていてね」
「お話を聞いていたんだね」
「そうみたいだね、大阪の印象が強い人だけれど」
 大坂城を築いただけにです。
「それでもね」
「姫路城も築いたから」
「このお城のお姫様にもお会いしていた」
「それも最初にお会いしていた人だったんだね」
「どうもね、あと宮本武蔵さんの逸話は」 
 この人はといいまうと。
「天守物語の元かもね」
「あっ、そうなんだ」
「あの人のお話がなんだ」
「天守物語の原型なんだ」
「そうなっているんだ」
「そうみたいだよ、この人のお話も」
 宮本武蔵とおさかべ姫のお話もというのです。
「どうもね」
「創作なんだ」
「実際のお話じゃないんだ」
「そうなのね」
「そうみたいだよ、宮本武蔵といえば」
 この人についてはこう言った先生でした。
「有名な逸話が多いね」
「佐々木小次郎とのライバル関係とかね」
「巌流島の決闘とか」
「あと吉岡一門との果し合いね」
「鎖鎌の名人とも戦ってるよ」
「子供の頃木に吊るされたね」
「その殆どが創作だからね」
 その実はというのです。
「これがね」
「えっ、そうなの」
「殆どそうだったの」
「佐々木小次郎との勝負にしても」
「そうだったのね」
「佐々木小次郎は一応実在人物らしいけれど」
 それでもというのです。
「武蔵と同じ位の年齢じゃなかったっていう説もあるから」
「へえ、そうだったんだ」
「そこも違っていたんだ」
「佐々木小次郎にしても」
「実在していても」
「そうだよ、吉岡一門なんて滅んだと思われていたけれど」
 果し合いの結果です。
「今もお家あるからね」
「ううん、そうだったんだ」
「宮本武蔵さんについては」
「殆ど創作だったんだ」
「吉川英治の小説の影響が大きいから」
 その殆どは小説のことだったというのです。
「だからね」
「姫路城のお話にしても」
「その実はわからないのね」
「創作だった可能性が高い」
「そういうことね」
「そのことも覚えておいてね」
 宮本武蔵のこともというのです、そうしたお話をしてでした。
 お茶を飲んでお菓子を食べ終えた先生達はいよいよ天守閣に入りました。壮麗でかつ言い伝えもあるその場所に。








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