『ドリトル先生の林檎園』




                第十二幕  素敵な食事の後で

 先生達は長野県を発つ前に今の旅館がある街でお蕎麦の美味しいお店を探しました、そしてそのお店に入ってです。
 お蕎麦を注文しました、先生はまずはざるそばを食べて言いました。
「うん、やっぱりね」
「美味しいよね」
「長野県のお蕎麦は」
「風味がいいよね」
「しかもこのお店のお蕎麦コシもあるし
「おつゆも素敵な味だし」
「美味しいよ」
 先生は動物の皆に笑顔で応えました。
「おつゆの中にお葱や山葵も入れてね」
「そうして食べるとね」
「余計に美味しいよね」
「山葵のつんと一瞬で来る刺激もあって」
「さらによくなるね」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「このお蕎麦はね」
「素敵な味だね」
「おかわりしたい位だよ」
「ざるそばをね」
「そうしたくなるわね」
「そしてざるそばの後は」
 王子はざるそばのおつゆに唐辛子をかけつつ言いました。
「温かいね」
「うん、汁そばをね」
 先生は王子にも答えました。
「食べようね」
「そちらのお蕎麦もね」
「どちらも食べて」
 そしてというのです。
「楽しもうね」
「是非ね、先生は身体も大きいしカロリーも使ってるし」
「スポーツはしないけれどね」
「いつも学問をしているからね」
「うん、頭を使っているとね」
 学問で、とです。先生は答えました。
「これがね」
「カロリー使うよね」
「脳は人の身体の中で特にカロリーを使う場所でね」
「だから学問をしてね」
「それで使っているとね」
「かなりのカロリーを消費して」
「それで食欲もね」 
 必然的にというのです。
「出るよ」
「そうだよね」
「先生日本に来られて食べる量が増えていますしね」
 こう言ったのはトミーでした、見ればトミーの食べ方はかなり礼儀正しいです。
「食欲が増していますね」
「そうだよね、イギリスにいた時の倍は食べているよ」
「それでいて体重は減って脂肪率もで」
「血糖値とかもね」
「減ってますね」
「健康になっているね」
 イギリスにいた時よりもです。
「そうなっているね」
「そうですよね」
「そう思いますと」
 本当にというのです。
「先生は今は相当学問に励んでおられますね」
「そうなるね」
「そして食生活は」
「かなりよくなっているね」
「そうですよね」
「そのことも嬉しいよ、ではね」
「はい、お蕎麦をですね」
「食べようね」
 言いつつまたお蕎麦を食べる先生でした、本当にコシも風味もおつゆもよくて美味しいです。そしてでした。
 先生達はざるをおかわりしてからその後で今度は鴨なんばそばを二杯食べてそれからでした。今度はです。
 アップルパイと林檎のお菓子で有名な喫茶店に入ってそのうえでそうしたものを食べました。それからでした。
 先生はまたです、こう言ったのでした。
「うん、長野の林檎はね」
「いいよね」
「美味しいよね」
「本当にね」
「この味はね」
「素晴らしいね」
「お蕎麦の後でね」
 まさにと言った先生でした。
「デザートに最高だね」
「先生の考えが当たったね」
 ガブガブが言いました。
「お蕎麦の後はね」
「林檎だよね」
 チーチーはアップルパイを食べつつ言いました。
「これが一番いいよ」
「そうだね、じゃあね」
 ここで言ったのはジップでした。
「あと少しで長野県を後にするしね」
「しっかり食べようね」
 ホワイティは自分の言葉に素直に従っています。
「皆で」
「うん、アップルティーも飲んで」
 老馬は今はアップルティーを飲んでいます、そのうえでの言葉です。
「楽しんでいこうね」
「そうそう、長野県の思い出にね」
「最後のね」
 オシツオサレツは前の頭でアップルティーを、後の頭でアップルパイを食べています。
「まさに有終の美を飾ろうね」
「このお店でね」
「終わりよければ全てよしっていうし」
「今も肝心よね」
 チープサイドの家族も食べつつお話をしています。
「しっかりと食べて」
「それで思い出にしようね」
「今回の旅も最初からいいものだったけれど」
 ダブダブは長野県に着いた時からのことを思い出しています。
「最後もいいと最高になるから」
「今はこうして食べて」
 トートーは言いながら食べています。
「思い出にしようね」
「美味しいものを食べてそれが思い出になるなら」
 最後に言ったのはポリネシアでした。
「こんないいものはないよね」
「そう、だからね」
 それでというのです、先生もまた。
「楽しく食べようね」
「それじゃあね」
「今からそうしよう」
「そしてそのうえでね」
「キャンピングカーに乗って」
「そしてそのうえで」
「神戸に向かいましょう」
「高速道路に入りますので」
 王子のすぐ後ろから執事さんが言ってきました。
「神戸まで距離がありますが」
「それでもですね」
「今日中に着けます」
 こう先生にお話するのでした。
「ですからご安心を」
「それでは」
「それと」 
 ここで言ったのは王子でした。
「先生お土産買ったかな」
「お土産?皆の分だね」
「うん、買ったよね」
「買ったよ」
 それはしっかりと、というのです。
「一緒に遊んだ皆の分はね」
「日笠さんの分は?」
 王子はこのことを先生に尋ねて確認しました。
「どうなの?」
「買ってるよ」
 先生は王子ににこりと笑って答えました。
「どちらもね」
「それならいいよ、僕達の分はいいから」
「あれっ、いいんだ」
「先生の気持ちは嬉しいけれど」
 それでもというのです。
「僕達よりもね」
「日笠さんなんだ」
「あの人のことは忘れないで」
 それでというのです。
「買っているのがいいよ」
「そうなんだね」
「そう、本当にね」
 そこはというのです。
「僕も嬉しいよ」
「何か皆日笠さんのことを気にかけているね」
「同然だよ」
「そうだよね」
「日笠さんのことを忘れていたら」
「僕達も困るから」
「どうかってなるし」
 動物の皆も先生に言います。
「しっかり覚えてくれていてよかったわ」
「ここで僕達も確認するつもりだったし」
「若し忘れていたら今すぐ買ってもらっていたから」
「日笠さんの分もね」
「お友達としてでもですよ」
 トミーも先生に言いました。
「日笠さんには忘れないで下さいね」
「そうそう、絶対に」
「僕達のことは忘れてもいいけれど」
「日笠さんの分は忘れないでね」
「こうした時はいつも」
「それこそ何があっても」
「そういえば日笠さんと知り合ってからいつもだね」
 ここで先生も言いました。
「僕は日笠さんにもお土産買ってるけれど」
「人への気遣いを忘れないのが先生でね」
「そこは先生の長所よ」
「そこは先生のいいところで」
「忘れないのはいいことだよ」
「本当にね」
「このことは。だからよかったよ」
 先生が今回も忘れないで、というのです。
「じゃあ神戸に帰ったら」
「明日大学に出勤するけれど」
「動物園に行きましょう」
「それで日笠さんにもプレゼントよ」
「そうだね、しかし日笠さん位の人なら」
 ここでこうも言った先生でした。
「いい人といい恋愛が出来そうだね」
「それは同意だよ」
「僕達にしても」
「日笠さんならね」
「絶対にいい人と素敵な恋愛が出来るわ」
「とてもいい人とね」
「そこで僕を見るのがわからないね」
 先生は皆の視線を感じて笑って述べました。
「どうにも」
「まあね、先生はわからなくても」
 王子はアップルティーを飲みつつやれやれといった笑顔になっています、そのうえで先生に対して言うのでした。
「そのうちね」
「そのうち?」
「わかってもらえるよ」
「そうかな」
「うん、そうなるよ」
 是非にと言うのでした、そしてです。
 先生は最後の最後のアップルティーとアップルパイを楽しんでからでした、皆と一緒にキャンピングカーに乗ってです。
 そのうえで神戸に向けて出発しました、そして長野県を出た時に長野県の方を振り向いて言いました。
「幸村さんや義仲さんや藤村さんともね」
「今はだね」
「お別れね」
「また来る日まで」
「その時までね」
「そうだね、下坂さん達ともね」
 この人達のこともです、先生は思うのでした。
「また会える日までね」
「お別れだね」
「そして長野県の美味しい食べものとも」
「それともね」
「今はね」
 動物の皆に言うのでした。
「お別れだよ」
「そうだね」
「それじゃあね」
「お別れをして」
「そしてだね」
「神戸に向かおうね」
「そうしようね、また機会があれば」
 その時はというのです。
「来ることになるからね」
「その時はまた、ですね」
 トミーが言ってきました。
「色々とですね」
「巡ってね」
 そしてというのです。
「楽しもうね」
「学問を」
「是非ね」
「その日がまた来ることを」
「僕は楽しみにしているよ、さて」
「これからですね」
「神戸に帰ろうね、またサラも来るし」 
 先生は妹さんのお話もしました。
「あの娘もおもてなししないとね」
「そうですね、サラさんは今度の月曜にですね」
「来日してね」
「お仕事で、それでですね」
「僕達のお家にも来るよ」
 そうしてくるというのです。
「だからね」
「サラさんもおもてなしをして」
「それであの娘のお土産も買ったから」
 先生は妹さんのことも忘れていません。
「だからね」
「サラさんにも楽しんでもらいますね」
「長野県のことをね」
 是非にというのです。
「そうしてもらうよ」
「それじゃあ」
「神戸に戻ろうね」
 先生達の今のお家にというのです、こうしたお話をしてでした。
 先生達は長野県からはるばる神戸まで戻りました、岐阜県から滋賀県、京都府を通って大阪府に入って。
 遂に神戸に着きました、すると動物の皆は楽しそうに言いました。
「遂に来たよ」
「神戸にね」
「はるばるね」
「高速を使ったらすぐだったね」
「実際に」
「うん、日本は高速道路も発達しているから」
 だからだというのです。
「鉄道でも速いけれどね」
「鉄道大国だけあってね」
「世界屈指の」
「けれど車道もいいからね」
「高速道路も」
「だからね」
 それでというのです。
「こちらを使ってもだよ」
「今回みたいにね」
「あっという間に着けるね」
「お昼に出てね」
「もう神戸だよ」
「昔は長野県から神戸に行こうと思ったら」
 先生は明治維新までのことを思って言うのでした。
「それこそね」
「こんなに速くじゃないからね」
「もうどれだけかかるか」
「何日もかかるよね」
「それこそ」
「そんなのだったからね」
 そのことを思うと、というのです。
「今はね」
「本当にあっという間だね」
「長野県から神戸まで」
「結構以上に離れているのに」
「それがね」
「便利だよ、これが飛行機なら」
 この交通手段ならといいますと。
「もっと速いよ」
「それこそあっという間だね」
「鉄道や車よりもずっと速くて」
「それこそ一時間位?」
「それ位だよね」
「それ位だよ、文明の進歩はね」
 このことから考えてもというのです。
「素晴らしいものだよ」
「全くだね」
「じゃあ神戸に着いたし」
「後はお家に帰って」
「ゆっくり休みましょう」
「そうしようね、お風呂にも入ってね」
「晩ご飯はちゃんとあるし」
 王子はこちらのお話もしました。
「ここにね」
「キャンピングカーの中で食べるんだね」
「そうだよ、茹でたソーセージとツナサラダとサンドイッチと」
 王子はメニューのお話もしました。
「フライドポテトだよ」
「それが今晩のメニューだね」
「そしてデザートは無花果でお酒はビールだよ」
「ビールかい」
「ソーセージだからね」
 メインはこれだからというのです。
「爺やがそちらを用意してくれたんだ」
「執事さんが」
「そうなんだ、じゃあね」
「うん、今晩はね」
「それを食べようね」
 こうお話してです、そしてでした。
 皆で晩ご飯も楽しんで、でした。長田区にある自宅に着きました。王子は先生達を贈ると笑顔でお別れをしてです。
 そのうえで自分達のお家に帰りました、先生達は王子の車を見送ってから自宅の鍵を開けて中に入って。
 お風呂に入ってからです、先生は皆に言いました。
「じゃあ今日はね」
「これでだね」
「もう休んで」
「そしてだね」
「そのうえで」
「明日ね」
 またというのです。
「頑張ろうね」
「じゃあ明日はね」
「日笠さんのところにも行って」
「そうしてだよ」
「お土産渡そうね」
「プレゼントとしてね」
「わかっているよ、明日は講義は午後だし」
 それでというのです。
「それからね」
「登校したらすぐにね」
「動物園に行こうね」
「そしてそのうえで」
「日笠さんのところに行きましょう」
「是非ね」
「それはわかっているよ」
 先生もというのです。
「だからね」
「僕達も一緒に行くから」
「いつも通りね」
「そうするしね」
「先生しっかりだよ」
「日笠さんに渡してね」
「そしてお話もしてね」
 こう先生に言うのでした、皆で。
「明日も勝負だよ」
「先生にとってね」
「いい?これも人生だから」
「頑張ってね」
「何か随分深刻かな」
 先生は皆のお話から思いました。
「僕のことは」
「深刻じゃないけれどね」
「それでもね」
「まあ何ていうかね」
「先生にとっていいことになるよ」
「頑張ったらね」
「そうなんだね、よくわからないけれど」
 もっと言えば全くわかっていません、先生だけは。
「明日はね」
「うん、日笠さんのところに行って」
「それでね」
「お土産渡して」
「そしてそのうえで」
「お話してね」
「そうしてね」
 皆で先生に言います、先生がわかっていないことはわかっていても。
 それで次の日実際にでした、先生は大学に行くとすぐにでした。
 動物の皆に急かされてお土産を持って動物園に行きました、そうしてそのうえで日笠さんとお会いしました。
 先生は挨拶の後で、でした。日笠さんに言いました。
「実は長野県に行っていまして」
「学会とフィールドワークですね」
「はい、それで昨日帰ってきまして」
 それでというのです。
「日笠さんにもお土産を買ってきました」
「私にですか?」
 先生にそう言われてです、日笠さんはお顔をぱっと明るくさせました。
 そうしてです、先生にこう言いました。
「嬉しいです」
「嬉しいですか」
「はい、とても」
 こう言うのでした。
「私の為に買ってくれるなんて」
「日笠さんはお友達ですから」
「お友達、ですか」
「はい、ですから」
 お友達と言われて日笠さんは微妙なお顔になりました、ですが先生はそのことには気付かずさらにお話しました。
「是非にと思いまして」
「それで、ですか」
「これを」
 長野県の観光土産の中で美味しい食べものや女の人向けのお土産を出しました。そうして日笠さんに言うのでした。
「どうぞ」
「有り難うございます、では」
「それではですね」
「美味しく食べさせてもらって」
 そしてというのです。
「アクセサリーは使わせてもらいます」
「そうさせてもらうと有り難いです」
「それでは、あと」
「あと?」
「今回のお礼に」
「お礼はいいです」
 謙虚な先生はこう返しました。
「僕は差し上げたいと思っただけですから」
「だからですか」
「はい、このことは」 
 特にというのでした。
「別に」
「いえ、そういう訳にはです」
「いかないですか」
「はい、ですから」
 日笠さんは先生に必死な感じでさらに言いました。
「今度ご馳走させてもらいたいですが」
「ご馳走といいますと」
「実は私最近毎日自炊していまして」
 それでというのです。
「お昼もお弁当を作っていまして」
「それで、ですか」
「先生に今度です」
「お弁当をですか」
「それをお礼にしたいですが」
「それは有り難いですね」
 先生は日笠さんの気持ちには気付いていませんが好意には気付いています、それで笑顔で応えました。
「それではです」
「受け取って頂けますか」
「有り難く、ですが悪いですね」
 ここでも謙虚な先生でした。
「お礼だなんて」
「とんでもない、では明日早速です」
「作ってくれますか」
「そうさせてもらいます、先生はお身体が大きいですから」
 このことはもう頭に入っている日笠さんでした。
「沢山作りますね、それでメニューは」
「何でもいいですよ」
「そうですか?」
「僕は偏食はないですから」
 つまり何でも食べられるのです、しかも美味しく。
「ですから」
「では鮭とほうれん草のおひたしとプチトマトでいいですか?」
「はい、全部好きです」
「お握りもですね」
「大好きです」
「なら沢山作ってきますので」
 日笠さんは先生から貰ったお土産を両手に大事そうに抱えつつ満面の笑顔で先生に応えました、そうしてでした。
 先生は日笠さんからお弁当をご馳走してもらうことになりました、先生はそのことに普通に喜んで研究室でも明日が楽しみだねと動物の皆に言いましたが。
 動物の皆は先生にやれやれといった感じで言葉を返しました。
「違うからね、先生」
「日笠さんのお礼は」
「先生はわかっていないんだよ」
「いつも通りね」
「僕達もいつも言ってるけれど」
「それが困るんだよね」
「本当に」
 これが皆の言うことでした。
「どうなんだろうね」
「何があっても気付かないって」
「先生の鈍さときたら」
「やれやれよ」
「僕達もやきもきだよ」
「何でそう言うのか言われないけれど」
 それでもと言う先生でした。
「僕が悪いことはわかるよ」
「悪いっていうかね」
「どうなってなってるの」
「先生についてね」
「その鈍感さに」
「ううん、僕は鈍感かっていうと」
 先生はミルクティーを飲みつつ考えるお顔になって言いました。
「そうだろうね」
「いやいや、普通の時は違うよ」
「普段はね」
「先生気遣い出来るし」
「よく気がついてくれるよ」
「人の気持ちとかね」 
 あくまで普段はというのです。
「本当にね」
「だからそういうのじゃなくて」
「どうかっていうと」
「本当にね」
「あることについては」
「自分で最初から絶対だって思ってるからね」
 それでというのです。
「今も言うんだよ」
「どうかってね」
「そうね」
「そうなんだね、しかしね」 
 やっぱりわかっていないまま言う先生でした。
「皆僕に何かあるってだね」
「そう、思ってるよ」
「実際にね」
「何かとね」
「今日のことでも」
「日笠さんのことかな、日笠さんはね」
 先生はどう思っているかというのです。
「大切なお友達だよ」
「そう思ってるよね」
「先生としては」
「だからお土産も差し上げたし」
「よかったっていうのね」
「僕にしてはね」
 本当にというのです。
「忘れてはいけなかったしね」
「そう、先生は忘れないよ」
 ジップは断言しました。
「人と人のお付き合いのことはね」
「そのことも先生の長所よ」
 ポリネシアも言います。
「人としてのね」
「その気遣いも好かれる点だよ」
 ガブガブははっきりと指摘しました。
「皆からね」
「その気遣いがね」
「先生が皆から好かれて」
 チープサイドの家族も言うのでした。
「女の人からもね」
「そうなるんだね」
「だから先生」
 ホワイティは先生が座っている席のテーブルの上から言います。
「少し見方変えたらいいよ」
「謙虚と諦めって違うよ」 
 トートーは先生の諦めを言いました。
「全然ね」
「そうそう、謙虚はそこからいい評判を生むけれど」
 チーチーは先生の紳士さの源の持ち前の謙虚さを思いました。
「諦めはそこで終わりだから」
「本当にそれで終わりで」 
 老馬も言います。
「前に進まないんだよね」
「そう、本当に」
「そこから先に進まないよ」 
 オシツオサレツは二つの頭で先生に言いました。
「お友達だけじゃないよ、世の中は」
「他の存在の人達もいるよ」
「先生だってそうよ」
 最後に言ったのはダブダブでした。
「どう?少し考え変えたら?」
「考えね、それが何か」
 どうかと言う先生でした。
「僕にはね」
「わからないよね」
「今だって」
「どうにもね」
「そうよね」
「皆が何を言ってるのかね」
 そのことがというのです。
「どうにも」
「そうだよね」
「先生はね」
「けれど僕達は言うから」
「しっかりとね」
「今だってね」
「ううん、僕は何をすればいいのかな」
 ロイヤルミルクティーを飲みつつ首を傾げるばかりなのが今の先生でした、どうにもわからないので。
「一体」
「だからね」
「そこを考えてね」
「ちょっと考え変えたらわかるから」
「それでね」
「本当にそれだけでね」
「僕達も怒ってないしね」
 皆実は先生には怒っていません、やれやれとなっているだけで。
「ほんの少しでいいから」
「先生は少しだけね」
「考えを変えてね」
「それだけでいいから」
「本当にそれだけで」
「あの人はね」
「そうだよ、それだけで」
 本当にというのです。
「先生の人生は今以上に素晴らしいものになるから」
「必ずね」
「先生は今の幸せで満足しているけれど」
「もっとよくなるよ」
「今以上に幸せになれるよ」
「それもね、僕は今最高に幸せで」
 これ以上はない位にというのです。
「何もいらない位だけれど」
「その認識を変えるべきだよ」
「もっとね」
「その謙虚さはいいけれれど」
「もっとだよ」
「そこは」
「そうかな、僕は今以上に幸せになれるのかな」
 最高だと思っているそこからというのです。
「皆が言う通りに」
「だからなれるって」
「だって幸せにも上限はないのよ」
「人は何処までも幸せになれるんだよ」
「天井はないから」
 幸せにはというのです。
「だからね」
「少しでいいから」
「ちょっと考え変えてね、先生」
「先生はもっと幸せにになれるよ」
「今以上にね」
「そうなってもいいしね」
「幸せになれるのは先生だけじゃないから」
 こうも言う皆でした。
「その先生達を見て僕達も幸せになるし」
「そうなれるから」
「だからね」
「先生ちょっとね」
「考え変えてみようね」
「よくわからないけれど」
 それでもと言った先生でした。
「そうすればいいんだね」
「そうだよ」
「それでね」
「これからね」
「頑張っていこうね」
「そちらも」
 皆で先生に言います、例え今はわかっていなくても先生が気付けばいいと思っていてそうでなくても自分達が頑張ろうと思って。
 先生は長野県でのフィールドワークの成果を論文に活用する為にちゃんとパソコンにも移して今書いている論文の執筆もはじめますが。
 ここで、です。こうも言ったのでした。
「いや、今回もね」
「よかったよね」
 王子が研究室で書いている先生に応えました。
「僕もね」
「今回の旅ではだね」
「いい経験だったよ」
 そうだったというのです。
「本当にね」
「日本の歴史、農業についてね」
「いいことを学ばせてもらったよ」
「王子もどんどん日本通になってきているね」
「そしてね、将来ね」
「うん、国王になるからね」
「その為の学問にもね」
 こちらのこともというのです。
「出来ているからね」
「いいよね」
「うん、ただ長野県は皇室との縁はね」
「日本の皇室だね」
「京都や東京と比べると流石に少ないね、僕はね」
「日本の皇室からだね」
「国王としてどうあるべきかを」
 このことをというのです。
「学ばないといけないから」
「だからだね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「僕としてはね」
「どうしてもだね」
「日本の皇室のことを学ばないといけないけれど」
「長野県ではね」
「それはしていないね、けれど」
「学ぶことは皇室のことだけじゃないからね」
「そちらはそちらでね」
 また別の機会にというのです。
「やっていくよ」
「そうするね」
「うん、本も読んでるし」
 皇室に関する本をというのです。
「だからね」
「それではね」
「皇室のことも学んで」
「それでだね」
「立派な王様になるよ」
 王子は先生に約束しました、王子にとっても長野県の旅は非常に利のあるものでした。そして先生のお家にです。
 サラが来て先生のお話を聞くとこう言いました。
「それでお弁当美味しかったの?」
「長野県のことは聞かないんだ」
「それは後でよ」
 緑茶を飲みつつ言うのでした。
「そのことは」
「そうなんだ」
「それよりもお弁当よ」
「日笠さんが作ってくれた」
「そう、どんな味だったの?」
「凄く美味しかったよ」
 先生はサラに笑顔で答えました。
「火加減も味加減もよくてね」
「よかったのね」
「お握りもね」
 こちらもというのです。
「おかずと同じだけね」
「美味しかったのね」
「真心を感じたよ」
「その人の」
「ええ、凄くね」
 本当にというのです。
「満足出来たよ」
「それは何よりよ」
「日笠さんはお料理もいい人だね、それで美味しいと言ったら」
「どうだったの?」
「また作りますね、僕が言ったらって言ってくれたよ」
「もう間違いないわね」
 ここまで聞いてです、サラは言いました。
「これは」
「間違いない?」
「ええ、間違いないわ」
 こう先生に言うのでした。
「このことは」
「何が間違いないのかな」
「兄さんがわからないことよ」 
 サラはここではむっとなって先生に返しました。
「そのことがよ」
「僕がわからない」
「学問や世の中のこととしてわかっていても」
「それでもなんだ」
「兄さん個人としてはね」
 先生にまた言うのでした。
「わかっていないことよ」
「そうしたものなんだ」
「そしてね」
 さらに言うサラでした。
「これは間違いないから」
「またそう言うんだね」
「そう、幸せはね」
 それはというのです。
「もうすぐ目の前になるわね」
「僕の幸せがだね」
「これで私も安心よ」
 今度はにこりとなるサラでした。
「兄さんならって思っていたけれどね」
「僕ならだね」
「そうよ、それじゃあね」
 サラは先生に上機嫌で言うのでした。
「これから長野県のお話をね」
「それをだね」
「聞かせてくれるかしら」
 こう言うのでした。
「これから」
「うん、それじゃあね」
「林檎の有名な県よね」
「あとお蕎麦がね」
「山に囲まれていて」
「それが長野県なんだ」
 先生は長野県のことは明るくお話しました。
「いい場所だったよ」
「そうなのね」
「サラも機会があったら」
 その時はというのです。
「行ってみたらいいよ」
「そうしたらいいわね」
「是非ね、ただね」
「ただ?」
「林檎は赤いものが主流だから」
 先生はこのこともお話しました。
「そのことは知っておいてね」
「そういえば」
 ここで先生も気付いて言いました。
「日本では林檎はね」
「赤いものが主流だね」
「イギリスと違ってね」
「イギリスでは青い林檎が主流だけれどね」
「そこは違うわね」
「そのことは覚えておいてね」
「それも日本ね、お店に行っても」
 勿論日本のです。
「赤い林檎が殆どで」
「青いものもあるけれどね」
「黄色いものもね」
「そこが違うね、あとそのまま食べることが多いから」
 林檎をです。
「そこもね」
「違うわよね」
「そうだよ、アップルティーとかはね」
「あまりしないのね」
「お店では売っていても」
「お家で造らないのね」
「そうしたことはしないから」
 それでというのです。
「それに使う林檎もね」
「少ないのね、種類が」
「そこも違うね」
「ううん、色々違うわね」
「林檎でもね」
 日本とイギリスはというのです。
「そうだからね」
「覚えておくといいわね」
「そうだよ」
「面白い違いね」
「全くだね」
「じゃあその違いも頭に入れてね」
 サラは先生に笑顔で言葉を返しました。
「私はイギリスに帰るわね」
「もう少しゆっくりしたらどうだい?」
「実はこれから主人と大阪に行くの」
 それでというのです。
「だからね」
「神戸はこれで後にして」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「大阪で二人で楽しんで」
「子供達にだね」
 先生にとっては甥御さん、姪御さんになります。
「大阪のお土産を買っていくんだね」
「兄さんみたいにね」
「僕は長野だけれどね」
「私は大阪よ」
 そちらになるというのです。
「そうするわ」
「そうだね、じゃあ大阪を楽しんできてね」
「大阪名物の一つの蟹か河豚を食べたいわね」
「道頓堀かな」
「ええ、どちらかをね」
「じゃあそうしたことも楽しく考えながらね」
「そのうえで、っていうのね」
「うん、大阪に行くといいよ」
「そうさせてもらうわね」
 サラは先生に笑顔で応えました、そうして先生と笑顔で別れてそのうえで大阪に向かいました。先生はその妹さんの姿が見えなくなるまで見送りました。


ドリトル先生と幸せの林檎   完


                   2019・5・11








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