『ドリトル先生の競馬』




               第三幕  高等部の乗馬部

 先生と動物の皆は八条学園高等部の乗馬部にお邪魔しました、先生達は競技場に来てまずは学生さんや馬達を見ますと。
 皆馬に乗ったりお水や草を食べています、ですが。
 動物の皆は馬達を見てこう言いました。
「どの馬もいいけれど」
「よく食べていてね」
「運動もしていて」
「いい感じだけれど」
「何か体格がね」
「小さい馬が多いね」
「サラブレッドじゃないからね」
 先生が皆にお話しました。
「ここの馬達は」
「それでだね」
「体格が今一つに感じたんだね」
「サラブレッドと比べたから」
「競技の馬と」
「サラブレッドは競技に特化した馬なんだ」
 こう皆にお話するのでした。
「それも競馬のね」
「ああしたレースだね」
「スピードを重視した」
「そうした特別な馬で」
「あの馬を標準にしたらいけないんだ」
「そうだよ、ここの馬達は」
 先生はその馬達を見つつ言うのでした。
「競技に使ってもね」
「農業や遊牧にも使う」
「そうした馬達なんだね」
「だから違うんだね」
「サラブレッドとは」
「そうだよ、あそこの馬は」
 小さな馬も見て言います。
「道産子だね」
「ああ、北海道のね」
「体格は小さいけれどね」
「それでも力持ちで頑丈で」
「いい馬なんだね」
「そうだよ、それでどの子もよく食べていて運動もしていて」
 それでというのです。
「健康だね」
「それが一番いいね」
「皆大事にされているね」
「それでよく教育されていてね」
「いい感じになっているね」
「いいことだよ」
 先生はその健康な馬達を見て思うのでした。
「馬がそして生きものが大事にされているだけでね」
「全くだね」
「先生が思う通りだね」
「やっぱり馬も生きものも健康でないと」
「それで幸せでないとね」
「よくないよね」
「人間も幸せであれば何よりだし」
 それにというのです。
「動物もなんだよ」
「そういうことだよね」
「見れば学生さん達も笑顔だしね」
「気持ちよく馬に乗って馬の世話もしているし」
「だからいいよね」
「そう思うよ」
「いい匂いがするね」
 ここでジップが言いました。
「馬がいる場所独特の」
「馬の匂いが嫌だって人もいるけれど」
 ダブダブもジップと同じく場の匂いを嗅いでいます。
「馬が好きだとね」
「この匂いがいいっていうね」
 他ならぬ老馬の言葉です。
「先生もそう言ってくれるし」
「牧場や競技場の匂いだね」
 ホワイティは今自分達を覆っているその匂いについてこう述べました。
「これは」
「さて、次はね」
「学生さん達と会うんだよね」
 オシツオサレツはこのことをお話しました。
「そうだよね」
「これから」
「じゃあ近くの人達に聞いてみよう」
 チーチーは先生に提案しました。
「そうしようね」
「学生さん達も多いわね」
 ガブガブは彼等を見ています。
「活気のある感じで」
「見ればちゃんと乗馬や飼育の基本を踏まえているし」
 ポリネシアはそこをちゃんとチェックしています。
「部員さん達もちゃんと教育受けているのね」
「乗馬も危険だからね」
 トートーはこのことをお話しました。
「踏まれたり蹴られたりしてね」
「そうなったら大怪我だよ」
「少なくともね」
 チープサイドの家族もお話します。
「下手したら死ぬから」
「落馬も危険だし」
「そう、乗馬も飼育も危ないからね」
 先生もこのことは忘れていません。
「下手に馬の後ろにいくとね」
「蹴られるからね」
「実際にそうなるから」
「若し馬に蹴られたら」
「今は大きいし体重もあるし」
「しかも足の力が物凄く強いから」
 だからだとです、皆も言います。
「もう骨折じゃ済んだらいい位で」
「本当に死ぬから」
「馬の後ろには下手にいかない」
「そうしないとね」
「本当に危ないのよ」
「そして踏まれても」
 この場合もというのです。
「やっぱり馬は体重があるからね」
「死ぬよね」
「下手したら」
「足でも潰れるし」
「そうなるからね」
「よくないよね」
「日本の漫画であったね」
 先生は日本の漫画もよく読んでいます、先生にとっては娯楽だけでなく日本の文化を学ぶ学問でもあるのです。
「拳王様の馬が人を踏み潰す場面が」
「あの漫画だよね」
「世紀末救世主の」
「あの馬物凄く大きいし」
「人を一踏みで、だよね」
「あれは極端に大きな馬だけれど」
 それでもというのです。
「実際に馬に踏まれたらね」
「危ないんだよね」
「どうしても」
「その場合は」
「そうだよね」
「そして落馬したら」
 この場合もというのです。
「これもまた危ないよ」
「高い場所から落ちることだから」
「やっぱり危ないよね」
「これも死ぬ恐れあるからね」
「やっぱり怪我するしね」
「乗馬は危険と隣り合わせだよ」
 先生ははっきりと言いました。
「本当にね」
「そうだよね」
「だから危ないんだよね」
「そこは本当に気をつけないといけないから」
「危険と隣り合わせのスポーツだってことは」
「念頭に置いておかないと」
「それをよくわかっているんだろうね」
 まさにというのです。
「この乗馬部は」
「教育だね」
「学生さん達も教育しているんだね」
「そうだね」
「乗馬が危険だってことも」
「そのことも」
「これはいい部活みたいだね」
 こうしたお話をしてです、先生はまずは顧問の先生を探しました。すると中年の一七〇位の痩せた男の人が出てきました。
 その人は武田さんと言いました、高等部の先生で担当している教科は数学でした。
「この学園出身でして」
「それで乗馬部にもですか」
「所属していました」
 こう先生にお話するのでした。
「それで大学でもしていまして」
「それで今はですね」
「母校で教鞭を取りつつ」
「ここで、ですね」
「顧問もしています」
 こう先生にお話するのでした。
「実は」
「そうなのですね、それで少し部活を拝見させてもらいましたが」
 先生は武田さんにお話しました。
「馬は健康で学生さん達もよく教育されていますね」
「もう競技の結果よりもです」
「そうしたことの方をですか」
「重視しています」
「そうですか」
「はい、馬はよく食べて毛の手入れもして」
 そうしてというのです。
「勿論厨舎も奇麗にして」
「そちらもですね」
「整えて」
 そうしてというのです。
「馬達の健康には気をつけています」
「そして部員の学生さん達の教育もですね」
「そうです、さもないと危険ですから」
「馬に蹴られたり踏まれたり」
「馬は繊細な生きものですね」
「そうです、とても繊細で」
 先生もこのことについてお話します。
「人間も気をつけないとよくないです」
「そうですから」
「だからですね」
「気をつけています」
「そのうえで教育をされていますか」
「競技も大事ですが」
 それでもというのです。
「生きものに対することなので」
「教育にですか」
「より重点を置いています」
「それはいいことですね」
「競技に強くても」
「それでも馬を大事にしないで、ですね」
「マナーが悪いと」
 それこそというのです。
「乗馬をする資格がありません」
「いいことですね、スポーツはやはり」
「スポーツマンシップを忘れないで」
「そして安全もですね」
「相手がいるなら」
 その場合はといいますと。
「その相手を尊重することです」
「馬も同じですね」
「そう考えています」
 武田さんは先生に確かな声で答えました。
「いつも」
「そうなのですね」
「はい、ただ」
「ただとは」
「どうも乗馬でもです」
「勝つことにですか」
「そればかり考えている人がいますね」
 武田さんはこのことは残念そうに言いました。
「それは違うと思いますが」
「確かにそうした人はいますね」
 専制も否定しませんでした。
「残念なことに」
「確かに競技ですから」
「勝つことは大事ですね」
「はい、ですが」
 それでもというのです。
「やはりです」
「馬のこととですね」
「スポーツマンシップです」
「その二つが重要ですね」
「勝利よりも」
「僕も同じ考えです」
 先生は武田さんに確かな顔で答えました。
「プロでもです、プロは勝たなければ意味がないですが」
「それでもですね」
「乗馬なら馬のことを考えて」
「スポーツマンシップもです」
「そうしたことが万全であって」
「それではじめてですね」
「勝つものだと考えています」
 こう武田さんにお話するのでした。
「僕も」
「全くですね、ですがそれがです」
「わかっていない人がです」
「やはりいますね」
「日本に来てそれは違うと思ったことは」
 先生は首を傾げさせつつお話しました。
「剣道のお話ですが」
「そちらのことですか」
「一回戦負けしたからといって部員全員を丸坊主にさせる」
「その先生のことは私も知っています」
 武田さんもでした。
「我が校の剣道部の先生がお話していました」
「そうでしたか」
「それで自分はしないとです」
「こうした場合は教える先生にも責任がある」
「そう考えるのが妥当ですね」
「負けたことが悪いなら」
 それならと言う先生でした。
「教える先生もです」
「責任がありますね」
「しかも自分はしないということは」
「自分は悪くないと考えていないと」
「出来ることではないですし」
 先生はさらにお話しました。
「これはもう部活の指導としては」
「間違っていますね」
「はい、勝利よりも」
「スポーツマンシップですね」
「そちらに重点を置くべきでしかもこの先生は」
「丸坊主にした生徒が少ないと怒ったそうですね」
「翌日、それで生徒の子達に暴力を振るったと聞いて」
 先生は今もどうかというお顔でお話しています。
「日本にはそんな間違った先生がいるのかとです」
「日本は学校の先生の質は」
「悪いとですね」
「教師をしている私が言うのも何ですが」
 武田さんは困ったお顔です、先生とはまた別の表情です。
「いい鉄は釘にならず」
「いい人はですか」
「そう思う位です」
「そこまで酷いのですね」
「しかもこの先生の暴力はただ殴ったりするのではなく」
「もっと酷いものですか」
「何十発も殴ったり蹴ったり罵ったり」
 武田さんはこの事実を先生にお話しました。
「床で背負い投げをしたり」
「それはまた酷いですね」
「こうした先生がいるのです」
「日本の困ったところですね」
「一般社会ならすぐに懲戒免職ですよね」
「そうならないならおかしいです」
 先生は断言しました。
「もうそれは」
「そうですね、ですが」
「日本の学校ではですか」
「先生がそうした暴力を振るってもです」
「問題にならないのですね」
「問題がなかったことにされます」
 つまり隠蔽されるというのです。
「そうなってしまいます」
「その専制は処罰されないですね」
「一般社会なら懲戒免職で警察沙汰ですが」 
 つまり立派な犯罪行為だというのです。
「日本ではです」
「とんでもない現実ですね、日本は素晴らしい国ですが」
「学校の先生については」
「酷いものですね」
「そうした先生を反面教師として」
 そうしてというのです。
「僕はこの部活の顧問を受け持っています」
「そうなのですね」
「馬を大切にして」
「スポーツマンシップを守って」
「そうしてです」
 そのうえでというのです。
「行うものだとです」
「学生の皆さんにも教えていますか」
「はい、ましてや暴力なぞ」
 とてもという口調での言葉でした。
「絶対にです」
「それはいいことですね」
「暴力なぞ振るっても」
「よくなるものではないですね」
「それは普通の人のすることではありません」
 先生にこうも言うのでした。
「ヤクザ屋さんのすることです」
「つまり学校の先生にはヤクザ屋さんもいるのですね」
「ヤクザ屋さんならいつも警察にマークされています」
「そして何かあるとですね」
「すぐに捕まります」
 そうなってしまうというのです。
「そうなりますが」
「学校の先生は違う」
「むしろ聖職者と言われて尊敬されていました」
「いい人はならない様でも」
「そうです、ですから余計にです」
「厄介なのですね」
「僕はそう考えています」
 先生に深刻な表情でお話するのでした。
「まことに」
「そうですか、そう聞きますと」
「先生もですね」
「日本の教育に恐ろしいものを感じてしまいます」
「そうなりますね、ただその先生は」
 武田さんは先生に少し落ち着いたお顔になってこうもお話しました。
「流石に問題になって」
「悪事を重ね過ぎて」
「そしてです」
「責任を取らされましたか」
「今は学校の先生を懲戒免職になり」
 そうしてというのです。
「私生活で行った暴力事件で服役中です」
「そこでも暴力ですか」
「教師の頃と同じで」
「暴力に抵抗がなかったのですね」
「それを行うことに」
「本当に非道な人だったのですね」
「こうした人にはなりたくないとです」
 こうも言う武田さんでした。
「僕は常に思っています」
「そうですね、人として間違っています」
「それで部活でもそして授業でも」
「そうしない様にですね」
「自分を律しているつもりです」
「いいことですね、まことにです」
 先生も武田さんに応えて言いました。
「そうした人になってはです」
「いけないですね」
「反面教師です」
 文字通りのというのです。
「そうしています」
「いいことですね、よくない人はどうしてもいます」
「それならですね」
「そうした人を見て」
 先生も武田さんにお話しました。
「ああはなるまいと思って」
「その人と同じことはしない」
「そうあるべきですね」
「そう考えていますので」
「いいことと思います」
 先生は武田さんににこりと笑って答えました、そうして動物の皆と一緒に部活を見ていますと部員の中に。
 一八五位の引き締まった長身に金髪碧眼の鼻の高い少年がいました、乗馬の腕はかなりのもので馬にもです。
 よく慣れています、先生はその彼を見て皆に言いました。
「彼が噂のね」
「東ドイツから来た子だね」
「美男子だね」
「背も高いしね」
「きりっとした感じで」
「乗馬している姿も様になってるわね」
「そうだね、日本の子達よりも」 
 先生は他の部員の子達も見てお話しました。
「乗馬に慣れているね」
「年季があるんだね」
「子供の頃から乗っていたね」
「やっぱり乗馬は欧州の方が上なのね」
「島国で山に囲まれた日本よりも」
「平地が多いから」
「ドイツも平地が多いからね」
 だからだというのです。
「北の方は特にね」
「そうだよね」
「ドイツの北の方はそうだね」
「南はアルプスがあるけれど」
「ベルリンとかハンブルグとか」
「その辺りは平地だね」
「日本では平地は少ないけれど」
 やっぱり山が多いです、先生は日本に来てから日本は何と山の多い国なのかと思っているのです。イギリスと比べてもずっと多いので。
「欧州は違うからね」
「その分だよね」
「乗馬も盛んで」
「ドイツもそうで」
「上手な人もいるね」
「そうだよ、それでね」
 だからだというのです。
「彼もね」
「子供の頃から乗馬をしていたんだね」
「だからあそこまで上手なんだね」
「東ドイツで」
「そうしていたんだね」
「うん、ただ彼の年齢だとね」
 先生は彼が高校生つまり十代であることからもお話しました。
「もうドイツは統一されているよ」
「統一されて四半世紀以上経つし」
「それならだね」
「あの子が生まれた時にはもう統一されていて」
「東ドイツはなかったね」
「あの国はもう」
「そうなっているよ、東ドイツはなくなっていて」
 そうしてというのです。
「彼も知らない筈だよ」
「東ドイツがどんな国だったか」
「そのことはだね」
「肌では知らないんだね」
「その筈だよ、では彼ともね」
 その彼を見つつ言うのでした。
「お話をしてみようか」
「そうするんだね」
「丁度馬から降りたし」
「今からお話しよう」
「そうしましょう」
 動物の皆も先生の提案に頷きました、そうして皆でドイツ人の少年のところに行きました。そうしてです。
 先生は帽子を取ってそのうえで彼に挨拶をしました、すると彼も挨拶をしてそのうえで先生に言いました。
「はじめまして、ハインリヒ=ホフマンといいます」
「ホフマン君だね」
「オペラ歌手と同じ名前です」
「ペーター=ホフマンだね」
「はい、ワーグナーを歌っていた」
「その人だったね」
「気に入っています、この名前」
 先生にこうも言いました。
「僕も」
「それは何よりだね、自分の名前が好きなら」
「それならですね」
「それだけで幸せなことだよ」
「そう言ってくれるんですね」
「うん、それで君も八条学園の学生さんだね」
「高等部の普通科、二年J組にいます」
 ホフマンは自分から名乗りました。
「楽しく過ごしています」
「そのことも何よりだね」
「ドイツのチューリンゲンから留学しに来ています」
「かつて東ドイツの一部だったね」
「はい、ただ僕が生まれた時は」
 ホフマン自身も言うことでした。
「ドイツは統一されていて」
「君が生まれる十年以上前かな」
「そうなっていまして」
 それでというのです。
「僕自身は東ドイツのことは知らないです」
「歴史になっているんだね」
「実際には知らないです」
「そうだね」
「両親は共に東ドイツ出身で」
「ご両親から聞いてはいるんだね」
「東ドイツだった頃のことは。ですが」
 どうしてもとです、ホフマンは先生にお話しました。
「西の方と比べますと」
「東の方はだね」
「やっぱり違いますね」
「経済格差があるんだね」
「僕が子供の頃もそうで」
 それでというのです。
「今もまだありますね」
「統一して結構な時間が経つけれどね」
「そこは仕方ないですね、ただ」
「ただ?どうしたのかな」
「もう代用コーヒーはないです」
 ホフマンは先生に笑ってお話しました。
「僕も飲んだことはないです」
「やっぱりそうだね」
「あとガムも子供の頃から知ってますし」
 こちらもというのです。
「それにバナナもよく食べていました」
「東ドイツではなくなっているね」
「そうですね、食べものは両親から聞きますと」
「東ドイツの時よりもだね」
「ずっとよくなっていますね」
「そうなっているんだね」
「それで僕は高校一年、日本の学年では」
 ホフマンは先生にさらにお話しました。
「その時からです」
「日本にいるんだね」
「高校の入学式から」
 その時からというのです。
「こちらにいます」
「そうなんだね」
「日本は噂以上にいい国ですね。ですが」
 ここでホフマンは少し苦笑いになって先生にこうも言いました。
「ジャガイモを食べることが」
「ドイツにいた時と比べてだね」
「少ないですね」
 このことがどうもと言うのでした。
「こっちでは主食ではないですね」
「うん、それはね」
「仕方ないですね」
「ドイツは本当にジャガイモだね」
「パンも食べますが」
 それだけでなくというのです。
「ジャガイモもです」
「食べているね」
「主食として」
「そうだね、けれど日本ではね」
「どうしてもですね」
「ご飯が主食だからね」
 それでというのです。
「ジャガイモはおかずだからね」
「肉じゃがはありますし」
「フライドポテトやマッシュポテトも食べるね」
「ジャーマンポテトもありますが」
 それでもとです、ホフマンは少し残念そうに言いました。
「主食でないことが」
「君にとっては寂しいんだね」
「どうしても」
 こう先生にお話しました。
「あとウルスト、ソーセージですね」
「それもだね」
「ベーコンやハムも」
「そうしたものがだね」
「ドイツにいた時より食べなくなりました」
 そうなったというのです。
「他のものを色々食べる様になりました」
「和食とかかな」
「はい、ただスパゲティは」
 こちらはといいますと。
「色々あっていいですね」
「スパゲティが好きなんだね」
「大好きです」
 実際にとです、ホフマンは先生に笑顔で答えました。
「ですからよく食べます」
「日本のスパゲティは美味しいよね」
「凄く、それでイタリア料理は」
「全体としてだね」
「大好きです」
「ピザやグラタンも」
「オリーブに大蒜に」
 それにというのです。
「トマトがいいですね」
「ドイツでもよく食べていたかな」
「お父さんもお母さんもイタリア料理が好きでして」
 ホフマンは先生に明るい笑顔でお話しました。
「イタリアにも毎年みたいに行ってまして」
「一家でイタリアが好きだね」
「大好きです、今は日本にいますが」
「またイタリアに行きたいんだね」
「そう思っています、じゃあ後は」
「そろそろ部活も終わりだね」
「馬を厨舎に戻します」
 こう言ってでした、ホフマンも顧問の武田さんも他の部員の人達もでした。
 馬を厨舎に戻したそのうえで後片付けをして部活を終えました、先生もそのお手伝いをしてそれが終わってからです。
 家への帰路につきました、もうすっかり日が落ちて今にも夜になりそうです。その街の中を歩きながらです。
 動物の皆は先生にこうしたことを言いました。
「イタリア好きみたいね、彼」
「それも随分と」
「ご両親もそうらしいし」
「スパゲティも好きで」
「イタリア料理全体がね」
「ドイツ人ってそうした人多いね」
 チーチーがここで言いました。
「イタリア好きな人が」
「イタリア料理も観光も好きで」
 ポリネシアも言います。
「トマトやオリーブもっていうから」
「イタリア料理って確かに美味しいしね」
 ダブダブも大好きです、それで今言うのです。
「彼が好きなのもわかるよ」
「けれどドイツ人のイタリア好きって」
「かなりよね」
 チープサイドの家族が見てもです。
「私達がイタリア好きなことよりも」
「ずっとだね」
「何でそこまでイタリアが好きなのか」
 ホワイティは首を傾げさせています。
「ちょっとわからない位だよ」
「だから毎年凄い数の人が旅行しているのね」
 ガブガブは旅行のお話をしました。
「ドイツから一千万位の人が行ってるって聞いてるわ」
「一千万って凄いよ」
 しみじみとした口調で、です。トートーは言いました。
「ドイツの人口の何割か」
「それだけの人が行くとなると」
 それにと言ったのは老馬でした。
「民族大移動位だね」
「とにかくドイツ人はイタリアが好きなのかな」
 ジップはこう思いました。
「心から」
「これ昔からみたいだし」
 ポリネシアはこのことを知っていました。
「ドイツが神聖ローマ帝国っていう国だった時から」
「あの国はドイツとイタリアだったね」
「オーストリアとかベルギーも入っていて」
 オシツオサレツが二つの頭で言いました。
「それで中心はね」
「ドイツとイタリアだったね」
「ドイツは冬が長くて寒くて気候も悪いね」
 先生がドイツ人がどうしてイタリアが大好きなのかと思う皆にお話しました。
「土地もよくないし」
「ああ、そうえばね」
「そんなところだね」
「それで貧しかったね」
「ジャガイモが入るまでは」
「ジャガイモを食べる様になるまでね」
 ドイツはというのです。
「食べるものもあまりなくて」
「寒くて土地もよくないから」
「それでだよね」
「このことはイギリスも同じだったけれど」
「ドイツもそうだったわね」
「それに対してイタリアはね」
 この国はといいますと。
「暖かいし青空の日が多くてね」
「土地も豊かでね」
「食べるものも美味しいし」
「もうドイツと正反対」
「そんな風だから」
「それでドイツは昔からなんだ」
 それこそ神聖ローマ帝国だった時からというのです。
「イタリアが好きだったんだ」
「それで旅行もよく行って」
「イタリア料理も食べている」
「そういうことなんだね」
「そうだよ、フリードリヒ大王も食事にいつもフランス料理だけでなくイタリア料理も出させていたし」
 この人もというのです。
「彼が言っていたワーグナーもイタリア好きでよく旅行に行っていたよ」
「ああ、あの人もなんだ」
「イタリア好きだったんだ」
「文豪のゲーテも好きだったし」
 今度はこの人の名前を出すのでした。
「ビスマルクもヒトラーも好意的だったね」
「政治家もなんだ」
「イタリアが好きだったんだ」
「政治的、戦略的な理由があったにしても」
 それでもというのです。
「イタリアが好きだったんだ」
「ううん、何というか」
「ドイツは国としてもイタリアが好きかな」
「国民の人達も好きで」
「それでだね」
「そうだと思うよ、少なくともね」
 先生は笑ってこうも言いました。
「我がイギリスとフランスの関係とは違うよ」
「それは仲悪いじゃない」
「イギリスとフランスなんて」
「それこそね」
「どれだけ仲が悪いか」
「今は戦争していないけれど」
「それでもじゃない」
 動物の皆も二国の関係についてお話します。
「あの国とはね」
「何かと対抗意識あるから」
「一体どれだけ仲が悪いか」
「もう言うまでもないよ」
「僕はフランスは嫌いじゃないけれど」
 先生個人はそうなのです。
「というか嫌いな国はないね」
「先生はそうよね」
「嫌いな人もいないし」
「これといって」
「フランスも嫌いじゃないね」
「別にね。ただ本当に二国の関係は」
 どうしてもというのです。
「悪いとしか言い様がないね」
「そうよね」
「ライバル関係にあるから」
「それこそお互いの国がある限りね」
「国が出来てからだよね」
「お互いの国がね」
「フランスはオーストリアとも仲が悪かったけれどね」
 このこともお話した先生でした。
「イギリスだけでなくて」
「あの国ともなんだね」
「フランスは仲が悪かったんだ」
「これは家同士だったんだ」
 その関係でというのです。
「フランス王家と神聖ローマ皇室がね」
「王様と皇帝」
「そちらが仲が悪くて」
「それでなんだ」
「両国は仲が悪かったんだ」
「フランス王家はヴァロワ家で」
 この家でというのです。
「神聖ローマ皇室はハプスブルク家だったんだ」
「あっ、オーストリアの」
「オーストリア皇帝の家だね」
「あの家は神聖ローマ皇帝でもあって」
「それでなんだ」
「そうだよ、両家は物凄く対立して」
 そしてというのです。
「イギリスとフランスは百年戦争をやったけれど」
「オーストリアともなんだね」
「百年戦争みたいだったんだ」
「そんな戦争していたんだ」
「そうだったんだ」
 まさにというのです。
「フランスから見れば百年戦争に勝ってすぐ後に」
「今度はハプスブルク家とだね」
「戦争をしたんだ」
「今度は神聖ローマ帝国と」
「そしてオーストリアとも」
「果たしてイギリスとどちらがね」
 それこそというのです。
「仲が悪かったか」
「ううん、凄いね」
「イギリスとあれだけやり合って」
「それでオーストリアとも同じ位って」
「フランスもよくやったね」
「僕もそう思うよ、そういえばフランスも乗馬がいいね」
 今度はこちらのお話をするのでした。
「あの国もね」
「あっ、そうだね」
「あの国もだったね」
「平地が多いからね」
「それで乗馬がしやすいからね」
「今は自転車もいいけれど」 
 それだけでなくというのです。
「乗馬もね」
「それもだよね」
「いいんだね」
「そういえばナポレオンの時騎兵隊よかったね」
「かなり強かったわ」
「あの時のフランス軍はいい将軍もいたし」
 騎兵隊を率いる将軍にというのです。
「強かったね」
「いい馬も沢山いて」
「いい騎兵も多くて」
「しかもいい将軍もいた」
「だから強かったんだね」
「そうだったんだ、最後は負けたにしても」
 それでもというのです。
「当時のフランス軍はね」
「騎兵隊も強かった」
「そうだったね」
「それもかなり」
「そして今もね」
 ナポレオンの頃は遠い歴史になってもというのです。
「乗馬がいいんだよね」
「やっぱり平地が多いと乗馬はいいね」
「ドイツもそうだし」
「東欧だってそうだし」
「ポーランドやハンガリーも」
「ああした国々もだね」
「あとコサックだね」
 先生はロシアの騎兵隊の名前を出しました。
「あの人達も」
「ロシアも平地だしね」
「もうとんでもない広さの平原があるから」
「コサックの人達もいたね」
「馬に乗った人達がいたね」
「ただコサックは馬だけじゃないんだ」
 使っていたのはというのです。
「河も移動に使っていたんだ」
「ロシアは川も多いしね」
「ボルガ川とか」
「川の移動となると」
「船だね」
「そう、船も使ってね」
 そうしてというのです。
「彼等は移動していたんだ」
「馬だけじゃなくて」
「そちらもだね」
「ちゃんと使っていたんだ」
「そうなんだね」
「そうだよ、その両方を使っていたから」
 それでというのです。
「かなりの移動力があったんだ」
「ううん、成程ね」
「馬に船」
「昔はその二つを使えれば完璧だったから」
「余計に機動力があったんだ」
「コサックの人達は」
「そして機動力があったから」
 それ故にというのです。
「尚更強かったんだよ」
「戦いに強いだけじゃなくて」
「動きも素早かったから」
「それでなんだ」
「そうだよ、もうね」
 それこそというのです。
「敵に回ったら本当に厄介だったんだ」
「そういえばドイツも警戒していたね」
「ビルマルクの頃のドイツも」
「あれだけ強かったのに」
「ロシアのコサックを警戒していたね」
「あと日本も」
 皆は今自分達がいる国にも言及しました。
「そうだね」
「日露戦争の時にかなり警戒していて」
「コサック騎兵がどう動くか」
「そのことに情報を集めていたわね」
「そう、あの戦争で日本は勝ったけれど」
 それでもというのです。
「コサックにはね」
「凄く気を使ったんだね」
「どう動くか、何処にいるか」
「その情報収集に熱心で」
「対策も講じていたんだね」
「それもね」
 日本軍がコサック騎兵を警戒していたこともというのです。
「あの時は川は関係なかったけれどね」
「馬だね」
「馬に乗って動きが速かったから」
「だから警戒していたんだね」
「何しろナポレオンも苦しめられたんだ」
 先程お話に出たこの人もというのです。
「ロシアと戦う時にね」
「そうだったね」
「神出鬼没のコサック騎兵に襲われて」
「寒さにやられて撤退する時も」
「物凄く苦労したね」
「あれはナポレオンが色々間違えたけれど」
 それで失敗した戦争だったというのです、ナポレオンにとって。
「それでもね」
「あの戦争はだね」
「コサック騎兵の存在が大きかった」
「そうだったっていうんだね」
「そうだよ、昔は自転車も自動車もオートバイもなかったから」
 そうした文明の利器がというのです。
「馬に乗った時の速さはね」
「本当に有り難いね」
「そうだったね」
「馬は本当に大事だったね」
「長い間ね」
 実際にとです、先生は皆にお話してでした。そうしてそのうえで皆でお家に帰ってそこでも楽しい時間を過ごすのでした。








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