『ドリトル先生の野球』




                第三幕  リトルリーグ

 先生は今日も大学に出勤して講義や研究に精を出しています、その中で動物の皆にこんなことを言われました。
「先生最近野球のお話結構するよね」
「特に阪神のことについて」
「じゃあうちの野球部はどうかしら」
「八条大学の」
「ああ、この大学の野球部は強いよね」 
 先生は研究室の中で論文を書きつつ皆に応えました。
「そうだね」
「大学野球でも強豪だしね」
「何度か優勝もしてるし」
「プロ野球にもいい選手送り出してるしね」
「うん、八条リーグにもね」 
 こちらにもというのです。
「いい選手を送り出してるね」
「日本のもう一つのプロ野球だね」
「八条グループが運営してるね」
「グループの中のそれぞれの企業が運営していて」
「親会社にもなってるね」
「八条グループはこの学園も運営していて」 
 それでというのです。
「日本を代表する、そして世界的な企業を数多く持ってるね」
「鉄道もやってるし」
「鉄鋼業も自動車業もね」
「新聞や雑誌も出してるし」
「食品にパルプに」
「インターネットにも進出してるわね」
「そうした大手の企業がね」
 グループ内のそうした企業がというのです。
「それぞれチームを持ってるね」
「日本の中で二十四だったかな」
「あと台湾やタイ、オーストラリアでもリーグ持ってたね」
「本場アメリカでもで」
「この前中国でもはじめたし」
「メキシコでも前から」
「歴代の総帥さんが野球好きでね」
 このことがあってというのです。
「やってるけれどこれが企業にとってもいいことなんだ」
「っていうと?」
「それぞれの企業にもっていうと」
「どういうことかな」
「その企業の名前が毎日何もしなくても新聞やテレビで出るからね」
 そうなるからだというのです。
「プロ野球のチームを持ってたら」
「それで名前知られるからなんだ」
「つまりその企業の宣伝になるんだね」
「プロ野球のチームを持っていたら」
「そういうことね」
「そうだよ、正直軍需産業よりもね」 
 こちらの産業で企業経営をするよりもというのです。
「実入りがいいよ」
「球団経営って赤字っていうけれど」
「色々お金かかって」
「それでもなんだ」
「実入りがいいのね」
「だって毎日それだけでその運営している会社の名前が日本全土にいつも出て日本の人達に覚えてもらえるから」
 だからだというのです。
「多少赤字経営でもね」
「実入りはある」
「最高の宣伝になるから」
「だからいいんだね」
「そうだよ、楽天にしてもね」 
 この企業でもというのです。
「成り行きみたいな形で球団経営はじめたけれど」
「毎日いつも自分の企業の名前が出て」
「最高の宣伝になってるから」
「それでいいってなってるのね」
「そうだよ、こんないいことはないってね」
 その様にというのです。
「楽天側も今はそう考えてるみたいだよ」
「そうなのね」
「球団を持つことはその企業にもいい」
「そうなのね」
「そうだよ、まあ親会社の評判が悪いと」
 その時はといいますと。
「運営しているチームも不人気だけれどね」
「巨人とかね」
「あのチーム本当に人気ないね」
「東京ドームの一塁側いつもガラガラだし」
「ネットでも評判は散々で」
「ああしたチームもあるけれどね」
 戦力も成績も人気も十二球団でダントツで最低のチームもです、親会社の評判もとにかく悪いうえに。
「やっぱりね」
「球団経営はだね」
「運営するチームにもいい」
「そういうことだね」
「だから八条グループでもね」
 この中でもというのです。
「それぞれの大手企業が運営しているんだ」
「それでスポーツを楽しんで」
「それに企業の宣伝もしている」
「そういうことね」
「二十四のチームでね」
 そうなっているというのです。
「それでこの大学でもね」
「野球部強いんだね」
「高等部も甲子園の常連だしね」
「小学校から野球部あるし」
「勿論中等部でもね」
「サッカーやバスケもあるけれど」
 学園内には幼等部つまり小学校からです。
「野球もそうだね」
「それでだよね」
「皆楽しんでいて」
「大学からはプロ野球選手も出てるね」
「高等部の方からも」
「そうだね、そういえば」
 ここで先生はこうも言いました。
「僕はプロ野球の方に関心があるけれど」
「大学野球はなんだ」
「あまり関心がないんだ」
「そうだったんだ」
「そうだったよ、これではね」
 どうにもと言うのでした。
「よくないね」
「ううん、じゃあね」
「ここはちょっと観に行ってみる?」
「大学の野球部の方も」
「そうしてみたら?」
「そうだね」
 先生は皆の言葉に頷きました。
「それじゃあね」
「うん、早速ね」
「ちょっと観に行きましょう」
「今日にでもね」
「野球のグラウンドの方に行って」
「そのうえでね」
「そうしよう、しかし」
 こうも言う先生でした。
「うちの学園は敷地が広くてグラウンドも充実していてね」
「そうそう、野球部にしてもね」
「大学と高等部は専用のグラウンドがあるし」
「室内練習場も充実してるし」
「いつも熱心に練習してるね」
「そうしてるね」
「それはいいことだね、サッカーもラグビーもそうだし」
 野球以外のスポーツもというのです。
「そうしたことが充実していることはね」
「それだけでいいよね」
「野球にしても」
「それじゃあね」
「今日もね」
「野球を観に行こうね」 
 こうお話してでした、そのうえで。 
 皆で三時の講義が終わるとその足で野球部の方に向かいました、そうしてグラウンドでの練習を観ていますと。
 ふとです、オシツオサレツが二つの頭で言いました。
「いいグラウンドだね」
「ここでそのまま試合出来るよ」
「よく整備されてるし」
「いい場所だね」
「これなら」
 ダブダブもそのグラウンドを観て言います。
「いい野球が出来るね」
「芝生もいいね」
 ホワイティは芝生に注目しています」
「天然だね」
「人工芝じゃないんだね」
「そうね」
 チープサイドの家族もお話します。
「日本では最近天然芝が多いけれど」
「このグラウンドもなのね」
「全体的に設備がいいね」
 トートーはこのことに注目しています。
「バッティングの設備も」
「ボールも多いし質もいいわよ」
 ポリネシアはそちらを観て言います。
「バットやグローブも充実してるし」
「皆熱心に練習しているし」
 ガブガブは部員の人達を観ています。
「雰囲気もいいわね」
「しかも闊達で和気藹々としていて」
 老馬はそのことをよしとしています。
「スポーツをしているって感じだね」
「何か先生に合ってる?」
 ジップはこう思いました。
「こうした雰囲気は」
「先生って勝利至上主義じゃないからね」 
 チーチーはジップのその言葉に応えました。
「スポーツマンシップに基づいて楽しむのがスポーツだっていうから」
「その通りだよ、日本はおかしな先生も多くて」
 マスコミと同じくとです、先生は皆にお話しました。
「試合に負けたら部員は全員丸坊主、自分はしないで次の日丸坊主にしている生徒が少ないと暴力を振るう」
「教師以前に人間失格だね」
「自分はしないって何?」
「負けた生徒に責任があって指導する自分にはない?」
「そんな考えの人間が先生?」
「日本の先生も酷いのいるね」
「しかも暴力振るうって」
 皆そのお話には呆れかえりました。
「最低じゃない」
「人間ですらないわよ」
「そんな手合いが子供達を教えてるって」
「大変なことじゃない」
「僕はこうしたことは絶対に駄目だと確信しているよ」
 そもそも先生の中にはこんなことは何一つとしてありません。
「そんな人の部活なんてね」
「絶対に雰囲気悪いよ」
「もう何かあったら暴力で」
「部員の生徒の子達に何するか」
「朝鮮労働党みたいな感じね」
「そう、あの国みたいでね」
 日本だというのにです。
「もう滅茶苦茶にね」
「暴力を振るって」
「生徒を怯えさせて自分の思う通りにしていくのね」
「あんまりだよね」
「そんな人の部活にいたら絶対に駄目よ」
「挙句には受け身を知らない生徒に床の上で背負い投げをするっていうから」
 柔道の技を素人の人に仕掛けるというのです。
「問題外だよ」
「ええと、背負い投げって柔道の技だから」
「畳の上でするのよね」
「しかもちゃんと柔道を知ってる人に」
「受け身位知っている人に」
「そうしたことを一切無視してね」
 そのうえでというのです。
「そんなことをするんだ」
「もうスポーツじゃないね」
「それって暴力じゃない」
「それもかなり酷い部類の」
「リアルでヤクザ屋さんじゃない」
「生徒の人に何かあったらどうするのよ」
 皆先生のお話にさらに呆れました。
「よくそれでクビにならないわね」
「イギリスじゃ先生にすらなれないわよ」
「というか普通に他のお仕事じゃクビよね」
「懲戒免職間違いなしよ」
「確実にね」
「僕もそうなると思うよ」 
 先生にしてもです。
「日本でも普通の社会ならね」
「学校の先生は違うのね」
「そんな人でも学校の先生になれるのね」
「それでクビにならないで」
「生徒の子達に暴力振るってるのね」
「それが現実なんだよね」
 残念なことにと言う先生でした。
「というか普通採用の時点でないけれどね」
「普通の社会ならね」
「そんなヤクザ屋さんみたいな人採用しないわね」
「絶対に問題起こすから」
「そのことが間違いないから」
「それが世の中だからね、けれど」
 それでもと言う先生でした。
「この野球部は違うね」
「そうだね」
「しっかりしてるよ、皆」
「誰かに怯えてる雰囲気なくて」
「本当に和気藹々としてるわ」
「顧問の先生が暴力で生徒を怯えさせて思い通りにする」
 そんなことはというのです。
「日本の学校の忌まわしい一面だよ」
「そうした先生こそ刑務所に行かないとね」
「この世にいたら駄目な位だよ」
「暴力以外にも悪いことしてそうだしね」
「そんな人は」
「暴力を振るわれた生徒が頭下げて挨拶する横をふんぞり返って通ってうっす、だけの挨拶をする人は」
 先生の言葉には先生にしては珍しい完全な否定がありました、先生は暴力や差別を絶対に認めないからです。
「本当にヤクザ屋さんだよ」
「そのヤクザ屋さんが学校で教鞭を手にしている」
「ぞっとするお話ね」
「日本だけよね」
「嫌なお話だよ」
「それで先生様とか言われるとか」
「仰げば尊しというけれど」
 先生は歌の一節もお話に出しました。
「尊敬するどころか絶対に否定しないといけない」
「そんな人もいるね」
「本当にね」
「反面教師にしないといけない」
「そんな人もいるね」
「勿論いい先生も日本にも大勢いるけれど」
 それでもというのです。
「あまりにも質が悪い人も多いよ」
「本当に他のお仕事にはいない様な」
「ヤクザ屋さんそのものの人がいて」
「生徒に暴力を振るっているとか」
「しかも大手を振って歩いてるなんて」
「そんなことはあらためないとね」
 先生は絶対に、と言葉の中に入れました。
「本当にね」
「全くだね」
「先生の言う通りだよ」
「そんな酷い先生は辞めさせないと」
「一刻も早くね」
「心から思うよ、それでだけれど」
 先生は野球部の練習を観つつ言いました。
「皆筋がいいけれど」
「どうしたの?」
「誰かこれはって人いたの?」
「誰かいるの?」
「あのキャッチャーの子だけれど」
 ブルペンで練習している人を観ての言葉です。
「随分筋がいいね」
「あれっ、そうかな」
「僕は別に」
「私も」
「普通のキャッチャーじゃないかな」
「これといって何もないんじゃ」
「いや、キャッチングがね」
 まずはこちらのことからお話するのでした。
「何処にどんなボールが来ても普通に捕球してるし」
「そうかな」
「別に普通じゃない?」
「これといって何も」
「凄くないけれど」
「僕が観るとね」
 先生の目ならというのです。
「そう思うんだ」
「そうなんだ」
「そんなにいいキャッチングなんだ」
「そうなんだね」
「それにね」 
 さらにお話する先生でした。
「送球もいいね」
「普通にボール受けて返すだけじゃ」
「そうじゃないんだ」
「私達には普通に見えるけれど」
「先生が観たら」
「うん、プロでもね」 
 そちらでもというのです。
「充分以上に通用するかもね」
「そこまでのキャッチングなんだ」
「それで送球も」
「凄くいいんだ」
「あれなら」
 まさにというのです。
「本当にプロでもいけるよ」
「ううん、それじゃあだね」
「これか凄い選手になるんだね」
「あの人は」
「期待出来るんだ」
「彼がこの野球部で一番凄い選手かもね」
 先生はこう思ってです、野球部の監督さんにお話を伺いました。現場を預かる責任者でもある人にです。監督さんは落田雅士さんという初老の穏やかですが確かな目の光を放っている色黒で蛙に似たお顔立ちの人です。
「彼はうちの正捕手です」
「そうなんですね」
「はい、高校時代から注目されていて」
 それでというのです。
「甲子園にも三度出ています」
「三回もですか」
「その時からプロのスカウトにも注目されていまして」
「今ではですね」
「うちの正捕手で」 
 それでというのです。
「四番も務めています」
「打つ方もいいんですね」
「安定した打率に長打もあって」
「それで、ですか」
「そちらでも主力です」 
 バッティングの方でもというのです。
「足は遅いですが」
「それでもですね」
「他のことは申し分のない」
「そうした人ですか」
「絶対にです」 
 監督さんはその人についてさらに言いました。
「今度のドラフトで」
「プロに指名されてですね」
「プロ入りしますよ」
「そこまでの人ですか」
「そしてプロでも」
 そちらでもというのです。
「絶対にです」
「活躍してくれると」
「私は確信しています」
「そこまでの選手ですか」
「ですから」
 それでというのです。
「期待しています」
「彼のこれからに」
「怪我にも強いですし」
「それが一番大きいですね」
「やっぱりスポーツ選手はですよね」
「怪我がないことです」
「そして怪我をしても」
 万が一とです、先生も言いました。
「それに強い」
「そうした選手がです」
「一番ですね」
「鉄人という言葉がありますね」
 監督さんはこの言葉も出しました。
「そうですね」
「はい、よく」 
 その通りとです、先生も答えます。
「言われますね」
「怪我をしない、多少の怪我でも大丈夫」
「そうした人に贈られる言葉ですね」
「日本ではかつて衣笠祥雄さんという野球選手がいました」
「広島東洋カープの選手でしたね」
「この人はとにかく怪我をしなくて怪我をしても頑丈で」
 それでというのです。
「多少の怪我では平気でして」
「そのことが、でしたね」
「この人の最大の強みで」
「活躍しましたね」
「幾ら凄い能力を持つ選手でも」
「まず怪我をしないことですね」
「大選手は怪我に強い選手が多いです」
 実際にそうだというのです。
「衣笠さんだけではないですね」
「そうですね、長く活躍してくれる選手もですが」
「プロならですね」
「長く活躍してくれてしかも怪我をしない」 
 先生は言いました。
「こうした選手がですね」
「一番いいですね」
「やはりそうですね」
「衣笠さんもそうでしたし」 
 監督さんは先生にさらにお話しました。
「金田正一さんや王貞治さん、鈴木啓示さんに野村克也さんと」
「どの人もですね」
「活躍が長く」
 そしてというのです。
「怪我にもです」
「強かったですね」
「そうでした」
「そういえばどの人も」
 ここで先生は言いました。
「練習熱心でしたね」
「そして身体のコンディションにもでしたね」
「かなり気を使っていましたね」
「食事のことも考えて」
「そうでしたね」
「そのことは事実です、金本知憲さんも」 
 広島そして阪神で活躍したこの人もというのです。
「活躍期間が長く怪我をしなかったですが」
「練習熱心で」
「しかもコンディションには気をつけていました」
 そうした人だったというのです。
「だからです」
「あれだけ活躍出来ましたね」
「ですから私はいつも言っています」 
 監督さんもというのです。
「まず怪我をしないことです」
「そのことが大事ですね」
「それには練習をしっかりとして」
「食事もですね」
「栄養バランスよく沢山です」
 そうした食事をというのです。
「心掛けるべきだとです」
「選手の人達にもですか」
「お話しています」
 そうしているというのです。
「私も」
「そうなのですね」
「はい、お酒は飲んでもいいですが」
「慎んで、ですね」
「深酒には気をつけて」
 そしてというのです。
「煙草はです」
「控えるべきですね」
「幸いうちの野球部にはいません
「煙草を吸う人は」
「私も吸いません」
 監督さんもというのです。
「若い時から」
「そうですか、僕もです」
「煙草はですか」
「お酒は好きですが」
 それでもとです、先生は監督さんに答えました。
「意識がなくなるまではです」
「飲まれないですか」
「かなり飲んでいますが」
 先生はご自身のことを正直にお話しました、この正直さもまた先生が皆から愛される理由なのです。
「煙草はです」
「吸われないですか」
「一本も」
「そうなのですね」
「やはり煙草は」
 先生はお医者さんとしてお話しました。
「身体にはです」
「よくないですね」
「特にスポーツ選手にとっては」
「吸われない方がいいですね」
「出来るだけ。歌手の人もです」
 この職業の人もというのです。
「出来るだけです」
「吸われない方がいいですか」
「身体全体に悪影響を与えるので」
 それが煙草だからだというのです。
「ですから」
「出来るだけですね」
「スポーツ選手や歌手の人は喫煙は控えるべきです」
「私もそう思っています、そして」
「この野球部ではですか」
「今は喫煙者はいません」
 監督さんははっきりと言い切りました。
「有り難いことに」
「それは何よりですね」
「煙草も駄目なら」
 監督さんは先生にさらにお話しました。
「麻薬はです」
「尚更ですね」
「あれは断じてです」
「犯罪ですし」
「手を出してはならないと」
「選手の人達にもですね」
「言っています」
 そうしているというのです。
「もう選手生命どころかです」
「人間としてですね」
「命にも関わるので」
「だからですね」
「私は麻薬は絶対に許していません」
「いいことです、麻薬中毒になれば」
 どうなるかとです、先生も監督さんにお話します。
「スポーツどころではありません」
「そうですよね」
「麻薬は身体も心も蝕みます」
「健全な生活が出来なくなります」
「健全な生活を送れなくなれば」 
 それこそというのです。
「スポーツもです」
「出来ないですね」
「残念なことに」
 本当に残念そうなお顔で言う先生でした。
「日本でもそうしたお話がありましたね」
「プロ野球で、でしたね」
「かつてのスター選手が」
「何でも現役時代からしていたとか」
「ああしたことをしますと」
「駄目ですね」
「何があっても」
 先生は語尾を荒くすることもありません、ですがそれでもとても残念そうにこう監督さんにお話するのでした。
「野球選手として以前にです」
「人としてですね」
「とても悲しいことです」
 そうだというのです。
「とても」
「そうですね」
「やはりスポーツ選手はです」
「しっかりとした練習と食事で」
「怪我をしないで長く活躍してこそ」
「本物ですね」
「はい、言葉で言うことは簡単でも」
 それでもともです、先生はお話しました。
「ですが」
「それでもですか」
「はい、それを実行するとなると」
「難しいですね」
「先程お話に出た人達は」
 衣笠さんの様な人達はというのです。
「どの人もですね」
「節制もしていてちゃんとした練習をいつも凄い量をしていて」
 そしてというのです。
「野球の為に全てを捧げていた」
「そうした人達でしたね」
「そこまで出来る人はそうはいません」
 そうだというのです。
「ですから」
「それで、ですか」
「そうした人はです」
 本当にというのです。
「滅多にいないので」
「だからですね」
「非常に難しいことです、若しこの人達の様な人が増えますと」
 その場合はといいますと。
「今以上にです」
「凄い選手Tがですか」
「増えるとです」
 その様にというのです。
「思います」
「そうですか」
「難しいことでも」
 例えそうでもというのです。
「出来る人がいれば」
「その時は」
「凄いことになると思います」
「そうなのですね」
「僕としては難しいことでも」
 例えそうであってもというのです。
「そうした人が増えて欲しいですね、野球以外でも」
「他のスポーツでも」
「そうした人が増えて」
 そしてというのです。
「凄い成績を残す人が出れば」
「いいですか」
「そう思います、ピッチャーなら」
 先生はここでこうも言いました。
「金田正一さんを超える」
「四百勝を」
「その人が出れば」
「そう思われますか」
「絶対に出ないとは」
 そうしたことはというのです。
「言えないですね」
「そうですね、そうしたことは」 
 監督さんも先生のお話に頷きました。
「これからは」
「人の世、そしてスポーツでもですね」
「絶対ということは」
 まさにというのです。
「言えないです」
「そうですね」
「ですから」
「この世にあるものは」
「何があっても」
 それこそというのです。
「絶対のものはない、人のことは」
「人はですか」
「そうです、絶対のことは」
 それが何かもです、先生は監督さんにお話しました。
「神のことです」
「人はどうしても絶対ではない」
「ですから超えられない様な記録も」
 それが例えどれだけ到達出来そうにないものでもというのです。
「絶対ではないのです」
「四百勝もですね」
「イチロー選手もそうですね」
「あの人は日米通算四千本安打を超えて」
「記録になりましたね」
「はい、四千本安打なぞ」
 到底とです、監督さんも答えました。
「メジャーでも二人しかいなくて」
「到達しそれも第一位になるなぞ」
「絶対に無理なものでしたが」
 それでもというのです。
「イチロー選手はです」
「それを成し遂げましたね」
「だからですね」
「絶対ということはないので」
「四百勝もですか」
「そしてホームランや盗塁も」
 こちらの記録もというのです。
「何時かです」
「記録を塗り替える人がですね」
「出て来て」 
 そしてというのです。
「新たな記録を残す」
「そうした人が出るのかも知れないですね」
「僕はそう考えています」
「どの様な記録も絶対のものではないですか」
「何があろうとも」 
 それこそというのです。
「そうかと」
「ではイチロー選手の記録も」
「何時か更新する人が出るかも知れないです」
「それが記録ですか」
「そう思います、そして記録はどんどん塗り替えらていき」
 そうしてというのです。
「塗り替える度に人が成長していきます」
「よりよくなっていきますか」
「あらゆることで。人の進化は続き」
「どんどんよくなっていきますか」
「悪くなることもあるでしょうが」
 少し苦笑いも浮かべてです、先生はこうも言いました。
「ですが」
「全体的に見てですか」
「よくなっていって」
 そしてというのです。
「進歩していきます」
「スポーツでもですね」
「学問でも。この世の全てのものは」
 まさにというのです。
「そうしてです」
「進歩していって」
「素晴らしいものになっていきます」
 こう監督さんにお話してでした、そのうえで。
 先生達は監督さんとお話しつつです、そうして。
 野球部の練習を見続けました、それが終わってからでした。
 研究室の戸締りをしてからお家に帰りました、その後で皆に笑顔でお話しました。
「今日はいいもの観られたわね」
「そしてお話も出来たね」
「いい選手を観られたし」
「怪我や活躍のこともお話出来て」
「記録のことも」
「僕もそう思うよ、やっぱりね」
 先生はトミーが作ってくれたお好み焼きを切ってご飯のおかずにしながら皆にお話しました、お味噌汁にキャベツの千切りもあってお好み焼きの上にはおソースにマヨネーズ、鰹節と青海苔そして紅生姜があります。
「スポーツ選手は怪我をしない」
「そのことが第一だね」
「何といっても」
「スペックが高いことは絶対にしても」
「何につけてもね」
「怪我をしないことだね」
「そう、怪我をして」
 そしてというのです。
「駄目になって選手は多いね」
「どのスポーツでもね」
「そうした人多いわ」
「実際にね」
「これまでどれだけいたか」
「そう考えるとね」 
 本当にというのです。
「まずはね」
「怪我をしない」
「それが一番大事ね」
「何といっても」
「例えば事前によくストレッチをして」
 練習や試合の前にというのです。
「後も整理体操をするとね」
「それだけでだね」
「全然違うんだね」
「そうなんだよね、これが」
「何かね」
 ジップが先生に言ってきました。
「先生が言うことって正論だよね」
「そうそう、何も問題のない」
 まさにとです、トートーはジップに続きました。
「正論だね」
「その通りにするだけで」 
 チーチーも言うことでした。
「怪我をするリスク減るね」
「身体をよくほぐして試合や練習に挑んで」
「その後のケアもしっかり」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「あとちゃんとした練習に食事」
「そうすれば違うね」
「何ていうか」
「ちゃんとしたことをちゃんとする?」
 今度はチープサイドの家族が言いました。
「それだけで怪我をするリスクがかなり減って」
「長い間活躍出来るんだね」
「まさに先生の言う通りだね」 
 ホワイティも言うことでした。
「真面目にちゃんとすることだね」
「身体が固かったり疲れていたら」
 この時のことはポリネシアが言いました。
「怪我をしやすいし」
「事前に身体をほぐして後は整える」
 ダブダブの言葉はしみじみとしたものでした。
「基本だけれど」
「その基本をちゃんとしたら」
 ガブガブはぴしっと言いました。
「全く違うわね」
「いや、先生の言う通りだよ」 
 真剣にです、最後に老馬が言いました。
「それだけでも違うね」
「かなりね、まあ真面目な人はちゃんとしているよ」
 試合や練習前に身体をほぐして暖めて挑んで、です。そしてその後はしっかりとケアをすることもというのです。
「だから怪我しないんだ、あとね」
「あと?」
「あとっていうと」
「あるチームのピッチャーの人だけれど」 
 先生は皆にご飯を食べてです、お好み焼きで焼酎を飲みながら言いました。もうキャベツもお味噌汁もたっぷり食べてお好み焼きも二枚目です。
「よく肘の靭帯を痛めるけれどね」
「ピッチャーで肘はまずいよね」
「特に靭帯はね」
「骨折よりも悪いね」
「そうだよね」
「そこを痛めたら」
 皆も肘の靭帯と聞いて言いました。
「そうなったらね」
「もうね」
「選手生命の危機だよ」
「その時は」
「そう、だからね」 
 それでというのです。
「僕は気になっているんだ」
「肘ってなると」
「ピッチャーの人でってなると」
「変化球かな」
「試合や練習で投げて」
「その事前の柔軟とかね」
「後のケアが不十分なのかな」
 皆でお話します。
「それでかしら」
「肘を痛める人が多いのかな」
「それも靭帯を」
「そうなのかな」
「そのせいでそのチームは投手陣が不安になっているからね」
 肘の靭帯を痛める人が多くて、です。
「僕も気になっているんだ」
「それ絶対に問題あるね」
「チーム全体の問題だね」
「練習に問題ある?」
「事前のことにも後のことにも」
「練習や試合の時に」
「そうかもね、変化球は武器になるけれど」
 それでもというのです。
「爪や手首、特に肘にね」
「負担がかかるよね」
「カーブにしてもシュートにしても」
「どうしてもね」
「それは避けられないね」
「そのことはわかっているから」 
 だからだというのです。
「ちゃんとした柔軟とかね」
「ケアもだね」
「そうしたことが必要だね」
「どうしても」
「それを怠っていると」
 どうしてもというのです。
「肘を痛めるよ」
「それがあまりにも多くて」
「先生も心配しているんだね」
「そのチームのことを」
「巨人であっても」
 先生が好きでないこのチームでもというのです。
「やっぱりね」
「怪我人が多いと」
「先生はお医者さんだから」
「どうしてもだね」
「放っておけないよ」
 こう言うのでした。
「チームの好き嫌いはあってもね」
「人を救うことがお医者さんだからね」
「公平にしないといけないね」
「嫌いなチームの選手でも」
「怪我をしないようにしてもらって」
「怪我がしたら治さないとね」
「そうだよ、けれどそのチームは」
 先生はまたそのチームのお話をしました。
「本当に怪我が目立つね」
「普通に肘の靭帯痛めてるんだね」
「とにかく怪我人が多くて」
「それが問題なんだね」
「そのチームは」
「怪我人が多くて」
 それでというのです。
「それがそのままチームの成績にもつながってるしね」
「怪我人が出るとね」
「それがそのままチームの戦力に影響するし」
「主力選手が怪我したら」
「それだけで駄目だよね」
「だからね、そのチームは練習内容を見回して」
 そしてというのです。
「そのうえでね」
「練習や試合の前後にだね」
「身体をほぐすてケアもして」
「そうしないと駄目だね」
「チームが万全に戦える為にも」
「怪我人が多いとチームの士気にも影響するし」 
 こちらにもというのです。
「その為にはトレーナーも必要だよ」
「その人達もだね」
「増やすべきだね」
「そうした人達も」
「やっぱり」
「そうだよ、プロのチーム怪我人を出さない」
 まずはというのです。
「それが第一だよ」
「何といってもね」
「それが最初にあって」
「そこから戦略や戦術がある」
「そういうことだね」
「そう思うよ、僕は」
 先生は皆に温厚な笑顔でお話しました、そうしてスポーツのことをさらにお話するのでした。








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