『ドリトル先生と牛女』




                第六幕  妖怪達の歯

 牛女さんは二度目の手術の前に休日に先生をまたお家に呼びました、そうしてそのうえで動物の皆と一緒に来たこんなことを言いました。
「あれからライムジュースは控えています」
「そうされていますか」
「それよりもです」
 こう先生に言うのでした。
「おぢゃをです」
「飲まれていますか」
「麦茶にお抹茶に梅茶にと」
「日本のお茶をですか」
「よく飲んで」
 そうしてというのです。
「ライムジュースはです」
「控えられていますか」
「幸いお茶は大好きなので」
 それでというのです。
「そちらを飲んでいますと」
「ライムジュースはですか」
「飲まないでいられます」
「お茶があればですか」
「はい」
 そうだというのです。
「大丈夫です」
「それは何よりですね」
「お茶は美味しいですし」
 牛女さんは先生に穏やかな笑顔でお話しました。
「しかも身体にもいいですね」
「はい、ビタミンがあります」
「そうですね」
「ですから飲みましても」
「身体にいいですね」
「左様です」
 まさにというのです。
「ですから」
「それで、ですね」
「どんどん飲まれて下さい、またお砂糖を入れないと」
 そうなればというのです。
「別に歯にもです」
「悪くないですね」
「はい」
 そうだというのです。
「ですから」
「飲んで問題はないですね」
「全く、後は塩分とミネラルをです」
「摂ればいいですね」
「そうされて下さい」
「塩分でしたら」
 牛女さんの傍にいる若い人が言ってきました。
「お料理にです」
「入れていますね」
「はい」
 まさにというのです。
「そうしています」
「それは何よりです」
「和食ですと塩分が多いですね」
「そうですね」
「ですから」
 それでというのです。
「これといってです」
「塩分のことはですね」
「問題ないです」
 こちらのお料理を食べていると、というのです。
「そしてミネラルもですね」
「和食ですと」
 先生は笑顔で応えました。
「別にです」
「問題なしですね」
「そちらのお料理でしたら」
「それでは」
「あと実は」
 ここでまた牛女さんが言ってきました。
「ミルクもです」
「飲まれていますか」
「毎日よく飲んでいます」
「ミルクもいいです」
「よく飲んで、ですね」
「ミルクは栄養の塊なので」
 だからだというのです。
「飲まれてもです」
「そうですか」
「何もです」
 まさにというのです。
「問題ありません」
「では」
「どんどん飲まれて下さい、そして歯磨きは」
「忘れないで、ですね」
「されて下さい」
「わかりました」
「あと二回の手術で完治しますので」
 それでというのです。
「ご安心下さい」
「それでは」
「あと二回手術を受けて下さい」
「そうさせて頂きますね」
「それとお金は受け取ったので」
 先生はこちらのお話もしました。
「もうです」
「宜しいですか」
「はい」
 牛女さんにこちらのお話もしました。
「二百万も頂きましたので」
「二百万で充分ですか」
「ですから」
 それでというのです。
「もうです」
「いいですか」
「充分です」
「二百万は私にとっては」
「何でもないですか」
「何しろこの六甲に広い土地を持っていまして」
 牛女さんは先生にご自身のお話をしました。
「そこに六甲の妖怪の多くが住んでいて」
「大家さんですか」
「妖怪のマンションもアパートも多く持っていて」
 そしてというのです。
「遊ぶ場所もです」
「持っていますか」
「そちらの収入がありますので」
 先生にお話します。
「二百万位は」
「何でもないのですか」
「はい」
 そうだというのです。
「妖怪は妖怪でお金を持っています」
「そうなのですね」
「私もです」
「収入があり」
「その管理もしています」
「では」
「はい、二百万をお出ししました」
 最初の手術のお金としてというのです。
「ですが」
「もうです」
「では」
「はい、むしろ二百万も頂いて」
 先生は恐縮した声で牛女さんに言いました。
「ご安心下さい」
「それでは」
 牛女さんは先生のお話を聞いてこう返しました。
「お酒やお菓子では」
「そちらですか」
「お礼をしないというのもどうもですし」
「だからですか」
「お酒やお菓子で宜しいでしょうか」
「そうですね」
 先生は牛女さんの提案に考えるお顔になって答えました。
「そこまでいわれるなら」
「はい、それでは」
「宜しくお願いします」
「ではこれを」
 牛女さんは先生ににこりと笑ってあるものを出しました、そしてです。
 先生は皆と一緒にお家でお話しました。
「いや、美味しいね」
「そうだね」
「このお饅頭美味しいよ」
「羊羹も素敵だわ」
「お団子もね」
 皆も言います、見れば皆牛女さんから貰った和菓子を食べています。色々なお菓子が一杯あります。
 そしてです、皆で笑顔で食べながらお話しています。そこで先生はまた言いました。
「こんな美味しいものを貰えるなんてね」
「やっぱり恐縮?」
「先生としては」
「そうなの?」
「どうもね」
 実際にというのです。
「これまたね」
「まあ謙虚で無欲なのはいいけれど」
 老馬が先生に言いました。
「あちらさんもどうしてもって言ってるし」
「いいと思うよ」
「そうよね」
 チープサイドの家族も言います。
「お菓子ならね」
「これ位だと」
「お金は恐縮でも」
 今言ったのはダブダブです。
「あちらもお礼をしない訳にはいかないわよ」
「これは礼儀だったね」
 チーチーも言います。
「日本の」
「お礼を贈るのはね」
 ジップはチーチーに続きました。
「他の国でもあるけれど日本は特にそれがあるね」
「まあこれ位はいいんじゃないかしら」
 ポリネシアは寛容な感じです。
「お礼の贈りものなら」
「日本にはお中元とかもあるしね」
 ガブガブはこちらのお話をしました。
「それじゃあね」
「いいと思うよ」 
 トートーもこう言いました。
「こうしたものなら」
「あちらもお礼をしない訳にいかないし」
 ホワイティは先生に強く言いました。
「そこは応じないとね」
「若し応じなかったら」
「先生の方が失礼になるよ」
 オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「イギリスと同じで日本も礼儀には厳しいし」
「先生は紳士だし守らないとね」
「受け取ってよかったのかな」
 先生は言いました。
「つまりは」
「そうそう」
「お金は受け取ったけれどね」
「それでもういいとしても」
「お礼には応じないと」
「相手にも悪いし失礼だしね」
「そういうことだね、じゃあ素直に」
 先生は皆にあらためて言いました。
「食べてね」
「うん、そしてね」
「楽しんでね」
「美味しかったってお礼言おうね」
「またお会いした時にね」
「それがいいね」
 先生は羊羹を食べて言いました、そしてです。
 この日はお菓子を楽しんで次の日は大学の研究室に入って論文を書きました、そこに何とろくろ首にです。
 子泣き爺や砂かけ婆、一反木綿にぬり壁、から傘、河童にキジムナーに鬼と色々な妖怪達がやってきました。
 妖怪達はノックをして先生にどうぞと言われて研究室に入るとこう言ってきました。
「ドリトル先生ね」
「お話は聞いてるわ」
「会うのははじめてかな」
「八条学園にいる妖怪だけれど」
「僕達のことは知ってるかな」
「うん、この学園の妖怪は有名だしね」
 それでというのです。
「君達のことは聞いているよ」
「それは何より」
「わし等のことを知っているとは」
「まあわし等はこの学園の住人だしな」
「悪魔博士と一緒にずっと暮らしているし」
「それも仲良く」
「ああ、あの大学の伝説の教授の」
 先生は悪魔博士と聞いて言いました。
「何でも百五十歳は過ぎてるという」
「いや、百五十歳って」
「それもう人間じゃないわよ」
「あの人のことは僕達も聞いてるけれど」
「本当のこと?」
「百五十歳って」
「江戸時代から生きてるって噂があるよ」 
 先生は周りにいる動物の皆に答えました。
「何でもね」
「江戸時代って」
「凄いね」
「仙人みたいね」
「そういえば仙術とか錬金術やってるって噂あるね」
「それで長生きになってるの?」
「そうかしら」
 動物の皆はお話を聞いて言いました。
「あの人は」
「それで妖怪さん達ともお付き合いあるの」
「噂では秘書の人がそうだとか」
「そんなお話もあるね」
「ああ、ろく子ちゃんね」 
 着物姿のろくろ首が言ってきました、細長い首が何メートルも伸びていてその先のお顔がにこにことしています。
「あの娘は実際によ」
「妖怪だったんだ」
「あの秘書さん」
「そうだったのね」
「私の親戚でね」
 それでというのです。
「ろくろ首よ」
「そうなんだ」
「その実は」
「そうだったのね」
「ええ、それでね」
 そのうえでというのです。
「学園の中でよく一緒に飲んでるわ」
「そうだったんだ」
「あの人はろくろ首で」
「貴女と親戚同士なのね」
「そうなのね」
「そうよ、それで今日ここに来たのはね」
 ろくろ首は自分から言いました。
「先生に歯を見て欲しくてね」
「それでだね」
「お邪魔したの」
 こう言うのでした。
「私達はね」
「牛女さんのお話を聞いてだね」
「私達も歯が気になって」
 それでというのです。
「お邪魔したのよ」
「そうだったんだね」
「それでだけれど」
 ろくろ首はあらためて言いました。
「先生に診て欲しいの」
「診察代はこちらで」
 砂かけ婆はお金をぽんと出してきました、見れば札束です。
「百万でどうですじゃ」
「診察代としては多いから」
 先生は砂かけ婆にこう返しました。
「幾ら何でも」
「そうかのう」
「その十分の一でも多いかな」
「十万で」
「ちょっとね」
「いやいや、金の心配はいらん」 
 砂かけ婆は先生にこう言ってきました。
「わしは砂金も出せる」
「砂だけじゃなくて」
「うむ、だからな」
 それでというのです。
「お金の心配はいらんからな」
「それでなんだ」
「十万では」
 それだけしか受け取ってもらえないことはというのです。
「少ない」
「では」
「せめて半分」
「五十万を」
「受け取って欲しいのじゃが」
「そうなんだね」
「そこは頼む」
 こう言うのでした。
「百万が駄目でもな」
「そこまで言うのなら」
 先生も頷いてです、そうしてでした。
 実際に五十万だけ受け取りました、そのうえで研究室に来た皆のお口の中を歯科室に移ってそこで診ました。
 その診察の後でこう言いました。
「皆大丈夫だよ」
「虫歯はないのね」
「うん、一本もね」
 ろくろ首に答えました。
「皆ないよ」
「それは何よりね」
「今が大丈夫ならね」
「この状態を維持することね」
「歯磨きはこれからもね」
 先生は妖怪達に穏やかな笑顔でお話しました。
「しっかりとね」
「磨いていくことね」
「特に寝る前にね」
 この時にというのです。
「しっかりとね」
「それじゃあね」
「甘いものは食べていいけれど」
「歯磨きはしっかりと」
「そうして」
 そのうえでというのです。
「歯を健康なままでね」
「それじゃあね」
「あとね」 
 ここで、でした。先生はさらに言いました。
「鬼君の歯が凄かったね」
「わしの歯が」
「特に強いね」
「まあわしの歯は自慢だな」
「実際にだね」
「何でも噛み砕けるということで」
 まさにというのです。
「自慢だよ」
「だからこれからもね」
「歯を磨いてだね」
「その強さを保っていってね」
「そうさせてもらうよ」
 是非にというのでした。
「わしも」
「そうすればね」
「これからも美味いものを楽しんで食えるな」
「そう出来るよ」
「それは何より、では今宵は焼肉に」
 それにというのです。
「日本酒もな」
「飲むね」
「そうするとしよう」
 鬼は楽しそうに言いました。
「是非」
「それではね」
「尚焼肉は牛のだよ」
「そちらの焼肉だね」
「最近羊も好きだが」
 こちらのお肉を焼いたものもというのです。
「今宵は牛だ」
「そちらの焼肉もいいね」
「うむ、愉しみだ」
「皆で食べよう」
 その焼き肉をとです、ぬり壁も言います。
「お酒も飲んで」
「やはりお酒は欠かせないな」
「どうしても」
 まさにというのです、そしてです。
 子泣き爺は先生にこんなことをお話しました。
「実はわし等は宴が好きで」
「それでだね」
「毎晩のう」
「飲んで食べてだね」
「楽しんでおるのじゃ」
 そうしているというのです。
「毎日」
「では夜は」
「わし等の時間であるし」
 このこともあってというのです。
「心からのう」
「楽しんでいて」
「毎日な」
 それこそというのです。
「皆で」
「仲良くだね」
「やっておるよ」
「それでだけれど」
 ここで先生は妖怪達に尋ねました。
「皆朝に寝ているのかな、やっぱり」
「如何にも」
「朝は寝床じゃ」
「そこでぐーぐーぐー」
「そうしとるよ」
「歌であったけれど」
 先生は日本の妖怪アニメを思い出しつつ言います。
「実際になんだね」
「大体午前中は寝て」
「昼飯を食べてから動くな」
「それで夕方から夜に遊んで」
「夜明け頃に寝ておるな」
「夜は墓場で運動会というけれど」
 アニメのお話をさらにしました。
「そうなんだね」
「あの歌の通りだよ」
「あの漫画家さんの作品通りで」
「あの漫画家さんも今はわし等の仲間だし」
「妖怪博士になっておるよ」
「妖怪博士だね」
 その名前を聞いてです、先生はこう言いました。
「江戸川乱歩の小説でもあったね」
「二十面相じゃな」
「あの人の作品だったのう」
「二十面相は色々あったが」
「その作品の一つだな」
「それを思い出したけれど」 
 先生はさらに言いました。
「あの人は本当にそうなったんだね」
「あれだけ妖怪に親しんだ人はいなかったからね」 
 ぬり壁が言ってきました。
「だからだよ」
「お亡くなりになって」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「妖怪になったんだ」
「大好きなそれにだね」
「そう、外見はそのままで」
「妖怪のことなら何でも知っている」
「そうした人になったんだよ」
「そうなんだね」
「今はわし等と楽しく過ごしているよ」
 そうしているというのです。
「本当にね」
「それは何よりだよ」 
 先生もお話を聞いて笑顔になりました。
「僕もあの人のことは知っていたけれど」
「凄い人だったね」
「妖怪のことなら世界一だったと思うよ」
「その人が妖怪になって」
「なるべくしてなったと思うし」 
 それにというのです。
「幸せになっていたらね」
「尚更だね」
「そう思うよ」
「そうなんだね」
「その人にもお会いしたいね」
 先生は笑顔でこうも言いました。
「何時かね」
「そうだね、じゃあね」
「機会があればね」
 先生は妖怪の皆に言いました、そしてです。
 彼等が研究室を後にしてからです、先生は動物の皆にお話しました。
「妖怪の諸君とも会えたね」
「この学園にいるね」
「皆とね」
「それが出来たわね」
「よかったよ、歯も奇麗だったしね」
 皆のそれがというのです。
「本当にね」
「よかったよね」
「何かとね」
「歯も奇麗で」
「他にも色々聞けたしね」
「うん、それとね」
 先生はさらに言いました。
「あの漫画家さんのことも聞けたしね」
「そうそう」
「あの人のこともね」
「ちゃんと聞けたし」
「よかったね」
「今は妖怪になっていて」 
 妖怪博士になってというのです。
「妖怪の皆と楽しく暮らしているんだね」
「心から愛していた妖怪になれるとか」
「いいよね」
「それじゃあ楽しくない筈がないね」
「そうだよね」
「あの人位妖怪が好きで詳しい人は」
 先生は先程妖怪の皆にお話した言葉を言いました。
「本当にね」
「先生も知らないね」
「そうだよね」
「先生も妖怪や妖精が好きだけれど」
「それでもだね」
「僕なんか足元にも及ばないよ」
 その漫画家さんと比べたらというのです。
「本当にね。多くの妖怪の身体の仕組みやお家や生活まで描いたんだから」
「それ凄いね」
「そこまで描くなんてね」
「これまでそこまでした人いるかな」
「いないよね」
「うん、知らないね」 
 先生にしてもというのです。
「実際にね」
「そうだよね」
「そのことは」
「僕達も思い当たらないし」
「そうした人がいて」
 そしてというのです。
「今愛している妖怪と一緒になれたんなら」
「それでだね」
「素晴らしいね」
「そのことは」
「何といってもね」
 先生は笑顔で言いました。
「こんないいことはないよ」
「うん、しかしね」
 ここでこう言ったのはジップでした。
「よく妖怪の身体とかお家まで描いたね」
「普通そこまでしないわよ」
 ダブダブも今は唸っています。
「本当に」
「そんなことする人なんてね」
 それこそとです、ホワイティも言います。
「これまでいなかったんじゃないかな」
「日本じゃ怪獣の身体まで設定するけれどね」
「特撮でね」
 チープサイドの家族も言います。
「それでも妖怪のそこまで描くなんて」
「何処までなんだろうね」
「妖怪って日本だけでも多いけれど」
 ガブガブも首を傾げさせます。
「世界中の妖怪にも詳しいみたいだし」
「しかもそこまで描くなんてね」
 トートーもガブガブに言います。
「尋常なものじゃないよ」
「尋常じゃないっていうか」
 チーチーも唸っています。
「まさに人類の歴史一の妖怪学者だったんじゃないかな」
「そちらのことは下手な学者さん以上だったっていうし」
「そうかも知れないね」
 オシツオサレツも言います。
「あの漫画家さんは」
「そこまでだったかもね」
「そして今は妖怪さんになっていて妖怪さん達と一緒にいる」
 こう言ったのは老馬です。
「いいことだね」
「日本人の宗教は生まれ変わりがあるけれど」
 ここから言うポリネシアでした。
「妖怪にも生まれ変われるんだね」
「そうだね、僕はキリスト教徒だけれど」
 それでもとです、先生も皆にお話します。
「生まれ変わりは信じているよ」
「そこは宗教によるね」
「キリスト教の世界では最後の審判があって」
「仏教や天理教では生まれ変わりがある」
「そういうことだね」
「そう、宗教はそれぞれの精神世界でね」
 そのことであってというのです。
「生まれ変わりを信じるならね」
「生まれ変わるんだね」
「そうなるのね」
「次の人生を送れるのね」
「そうだよ、魂は不滅で」
 それでというのです。
「最後の審判まで待ったりね」
「生まれ変わる」
「そこは色々だね」
「宗教によって違う」
「それぞれの精神世界で」
「アメリカのパットン将軍はキリスト教徒だったけれど」
 先生は今度はこの人のお話をしました、第二次世界大戦で活躍したとても勇敢で目立つ個性の人でした。
「生まれ変わりを信じていたんだ」
「そうだったんだ」
「あの人もなんだ」
「キリスト教徒でも」
「そうだったのね」
「自分をカルタゴの名将ハンニバルの生まれ変わりと言っていたんだ」 
 そうだったというのです。
「あの人はね」
「そうだったんだ」
「あの人は」
「自分をハンニバル将軍の生まれ変わりって言ってたんだ」
「他にもピュロス大王の生まれ変わりともね」
 ハンニバルだけでなくです。
「言っていたんだ」
「キリスト教でも生まれ変わりあるんだ」
「それを信じている人がいるんだ」
「そうだったんだ」
「うん、そして日本ではね」 
 この国ではといいますと。
「昔から生まれ変わりの話が多いよ」
「あの漫画家さんだけじゃなくて」
「他の人もなんだ」
「生まれ変わってるの」
「そうしたお話が多いんだ」
「うん、これは猫のお話だけれど」
 そのお話はといいますと。
「長く飼っていた猫が亡くなって」
「生まれ変わる?」
「そうなったんだね」
「今のお話の流れだと」
「暫くして子猫が家の前にちょこんと座っていたとかね」
 そうしたことがというのです。
「あったりするそうだよ」
「長く飼っていた猫の生まれ変わり?」
「それじゃあ」
「そうなの」
「僕はそうじゃないかって思っているよ」
 先生としてはです。
「長く飼ってもらって馴染んでいるからね」
「だからだね」
「今度も猫に生まれ変わって」
「それでお家に来た」
「またそのお家で暮らす為に」
「そうじゃないかなってね、そう思うと」
 先生は微笑んで言いました。
「面白いね」
「そうだよね」
「そうしたお話を聞くとね」
「生まれ変わりって本当にあるんだ」
「何かと面白いね」
「また次の一生を送るなんて」
「僕も仏教徒なら」
 どうかとです、先生はさらに言いました。
「生まれ変わっているね」
「一度死んでも」
「それでもだね」
「生まれ変わって次の一生を送る」
「それが繰り返されるのね」
「人とは限らないけれどね」
 次の一生はというのです。
「決して」
「他の生きものの可能性もあるね」
「僕達みたいな生きものの場合もあれば」
「妖怪の場合もある」
「そうなのね」
「六道があるね」
 仏教にはです。
「そのうちの何処かになるよ」
「一度死んだら何処かに生まれ変わるね」
「その六つの世界のどれか」
「どれかに生まれ変わるんだなね」
「そうだよ、そしてね」
 それにというのです。
「相当悪いことをしたら地獄に堕ちたりね」
「餓鬼になるのよね」
「仏教の考えだと」
「地獄に堕ちるのも嫌だけれど」
「餓鬼に生まれ変わるのもね」
「かなり嫌よね」
「うん、餓鬼にはね」
 先生にしてもでした。
「生まれ変わりたくないね」
「そうだよね」
「餓鬼だけはね」
「凄く嫌だね」
「あれに生まれ変わることは」
「動物には生まれ変わったら嬉しいけれど」
 あの漫画家さんが妖怪を愛していたのと同じだけ動物の皆を愛している先生はそう思っています、この辺り同じです。
「けれどね」
「餓鬼はね」
「地獄に堕ちるのも」
「どうしても嫌だね」
「絶対に」
「それは嫌だよ、というか」
 それにというのです。
「僕は修羅界にも行きたくないね」
「ずっと戦うとかね」
「先生は絶対無理ね」
「先生と戦争ってね」
「無縁だから」
「僕は争いは嫌いだよ」
 それこそ一番嫌いなものです。
「心からね」
「争いは何も生まない」
「先生いつも言ってるわね」
「争うのなら学ぶ」
「それが先生だね」
「そう考えているからね」
 だからだというのです。
「どうしてもね」
「修羅界は嫌だね」
「餓鬼界や地獄と同じだけ」
「そうだね」
「その行いで生まれ変わるなら」
 それならというのです。
「僕は修羅界はないと思うけれど」
「それでもだね」
「絶対に行きたくないね」
「先生としては」
「うん、あと極楽に行くのなら」
 それならというのです。
「人界の方がいいかな」
「そうなんだ」
「極楽よりもなんだ」
「この世界の方がいいんだ」
「確かに色々あるけれど」
 人界にはというのです。
「いいことも悪いこともね」
「それでもだね」
「人界の方がいいんだ」
「また人間に生まれ変わりたい」
「そうなのね」
「流石に北朝鮮には生まれたくないけれど」
 それでもというのです。
「基本的にね」
「人間に生まれ変わりたいのね」
「先生は」
「若し仏教徒なら」
「そう考えているのね」
「うん、それかね」 
 若しくはというのです。
「皆と同じ様な」
「動物にだね」
「生まれ変わりたいのね」
「そうなんだね」
「どちらかだね」
 こう皆に言うのでした。
「僕は。妖怪も悪くないけれどね」
「妖怪も楽しそうだしね」
「見ていたら」
「牛女さんもそうだし」
「他の妖怪の皆もね」
「だからね」
 それでというのです。
「妖怪もいいね」
「確かにね」
「かなり長生きみたいだしね」
「その間ずっと楽しいとか」
「凄くいいね」
「それだけに」
 さらに言う先生でした。
「妖怪もいいね」
「そうだね」
「じゃあね」
「先生が生まれ変わるなら人か動物か」
「それか妖怪だね」
「その三つのうちどれかだね」
 先生は紅茶を飲みつつ微笑んで言いました。
「そして幸せに過ごしたいね」
「幸せは絶対だね」
「そうじゃないと生きている意味ないね」
「誰もが幸せになる義務がある」
「先生いつもそう言ってるし」
「何故生きているか」
 今度はこう言う先生でした。
「それはね」
「幸せになる為」
「それが先生の持論だね」
「だからだね」
「僕達も幸せになるべきで」
「先生もだね」
「そして他の皆もだよ」
 まさに誰もがというのです。
「幸せにならないとね」
「生きているのなら」
「それならね」
「楽しく幸せに」
「そうなるべきだね」
「そうだよ、幸せになる努力もね」
 これもというのです。
「しないとね」
「先生も努力しているしね」
「幸せになる為に」
「学問だけじゃなくて性格もね」
「いつも円満になる様にね」
「紳士でありたいと思っているよ」 
 先生は皆に応えました。
「人に嫌なことをしないこともね」
「先生は自分では努力してないって言うけれど」
「それは立派な努力よ」
「何といっても」
「本当にね」
「そう言ってくれるならね」
 それならというのです。
「僕はね」
「これからもだね」
「努力していくね」
「幸せになる為に」
「そうしていくよ」
 本当にというのです。
「僕はね」
「先生は努力していないって言うけれど努力しているよ」
「それは僕達が保証しているよ」
「紳士になる様にしていることも」
「そして学問もね」
「学問は好きだからしているけれど」
 それでもというのです。
「好きなことに励むこともだね」
「やっぱり努力だよね」
「それが自分を高めることになるなら」
「それならね」
「そうだね、ただ本当に僕はね」
 謙遜しての言葉でした。
「自分ではね」
「努力しているとはだね」
「思ってないのね」
「そうなんだね」
「うん、気楽に暮らしているね」
 本当にこう思っています。
「僕は」
「それでもいつも本読んでるし」
「現地に行ってもいってるし」
「検証もしてるじゃない」
「実際に紳士だし」
「そうなる様にしているし」
「そうだといいね」
 皆の言葉に励まされたお顔になって述べました。
「僕も」
「このことは安心していいよ」
「努力しているから今の先生があるんだよ」
「そしてこれからもね」
「先生はどんどん立派になっていくよ」
「そうなる様に心掛けるよ」
 先生にしてもです。
「僕も」
「是非ね」
「じゃあ牛女さんの手術もね」
「またするね」
「あと二回」
 それだけというのです。
「するよ」
「うん、じゃあね」
「そっちも頑張っていこうね」
「牛女さんの歯完治させようね」
「是非共ね」
 先生は笑顔で応えました、そうして皆とさらにお話をして楽しい時間を過ごしました。








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