『黄金バット』




         第十八話  黒バット会津若松城の攻防

 この時福島の人達は皆困っていました、何とある日急に黒バットが福島の人達が愛する会津若松城の天守閣の一番上に表れてです。
 そのまま居座ってしまったのです、福島の人達はその黒バットを見てすぐに言いました。
「嫌なことになったな」
「黒バットは普通のやり方じゃ倒せないぞ」
「相手は魔人だ」
「魔人を倒すには並の努力じゃ無理だ」
「何とかしないと駄目だ」
「それでも手段はあるのか」
「自衛隊に出てもらうしかないのか?」
 皆口々に言います、ですがこれといっていい解決方法を思いつきませんでした。そしてその間ずっとです。
 黒バットはずっと会津若松城の天守閣にいます、二つの鯱の間に堂々と腕を組んで仁王立ちをして立っています。
 その黒バットを見てです、総理大臣も苦い顔で言いました。
「これは何とかしないと」
「はい、どうしますか?」
 官房長官が総理大臣に尋ねました。
「やはりここは」
「自衛隊だね」
「彼等に出てもらいますか」
「それしかないかね」
 総理大臣は官房長官に難しいお顔で返しました、官邸でお二人共とても悩んでいます。
「ここは」
「黒バット、いえ魔人達に対することが出来るとなると」
「やはりだね」
「はい、ここはです」
 官房長官は総理に強い声で言いました。
「やはり」
「自衛隊しかないね」
「はい」
 こう総理に答えるのでした。
「私はそう思います」
「そうだね、では」
「すぐにですね」
「自衛隊を出動させよう、そしてだが」
「会津若松城はですね」
「貴重な文化遺産だ」
 だからだというのです。
「余程のことがない限りは」
「傷付けてはならない」
「そのことを厳命しておこう」
「それでは」
 例え魔人との戦いであっても貴重な文化遺産は傷付けてはいけない、それでなのでした。
 総理もこのことは強く言ってです、そしてでした。
 すぐに自衛隊に出動命令を出しました、すると自衛隊の人達はすぐに会津若松城に向かったのですが。
 ここで、です。何と会津若松城にです。地元の人達がどんどん雪崩れ込んでいっていました。
 その状況を見てです、自衛隊の人達はびっくりして叫びました。
「地元の人達がお城に入っているぞ!」
「自分達でお城を取り戻すつもりか!」
「駄目だ、生身で魔人達は倒せないぞ!」
「とても無理だ!」
「何とかして止めるんだ!」
「危険だ!」
 しかしです、自衛隊の人達が止めるよりも先にです。
 会津若松城を愛する福島の人達はお城の本丸からどんどん天守閣に近付いていきます、皆意気込んで言っていました。
「お城を取り返すんだ!」
「黒バットから取り戻せ!」
「魔人が何だ!」
「魔人なんかに負けてたまるか!」
「行くぞ!」
「お城は俺達の手で取り返すんだ!」
 皆必死のお顔で黒バットがいる天守閣最上階の屋根に向かいます、そして天守閣を一階一階です。
 踏破して遂にでした、地元の人達の間でも腕に自信のある人達が屋根に出て黒バットを囲みます。ですが。
 黒バットは悠然として腕を組み立っています、まるでこれから起こることが何でもないといった様子です。
 その天守閣を見てです、自衛隊の人達は心配するお顔になりました。
「無理だ、相手は魔人だぞ」
「屋根に来ただけでも大変なのに」
「それで戦うというのか」
「無茶にも程がある」
「しかも黒バットは空を飛べるんだ」
 このことについても言いました。
「それでどうして戦うんだ」
「魔人には魔人しか戦えないぞ」
「無茶にも程がある」
「何とか止めないと」
「しかし間に合わない」
「どうすればいいんだ」
 自衛隊の人達は困ってしまいました、ですが。
 その彼等にです、何とです。
「ハハハハハハハハハハハハハ!!」
 黄金バットが姿を現しました、正義の魔人は彼等のすぐ近くの櫓の屋根の上にいつもの様に両手を腰に当ててマントをたなびかせ仁王立ちしていました。
 その黄金バットを見てです、自衛隊の人達は言いました。
「黄金バットか!?」
「まさか黒バットと戦うのか!?」
「そうなのか?」
 自衛隊の人達は皆こう思いました、ですが。
 今日は違いました、何とです。
 黄金バットは天守閣の方に飛び立つとその手に持っているステッキから光線を放ってそれを黒バットを囲んでいる地元の人達に当てました。するとです。
 その光を受けてです、地元の人達はその姿を変えました。何とです。
 皆黄金バットになりました、すると皆驚いて言いました。
「黄金バットになった!?」
「まさか」
「俺達が黄金バットになったのか」
 その身体を見ながら言うのでした。
「嘘みたいだ」
「身体に力がみなぎるぞ」
「それに空も飛べるぞ」
「超能力も使えるぞ」
 何人かは実際に飛んだり衝撃波を出したりしようとしたら実際に出来ました、変わったのは外見だけではありませんでした。
 皆が黄金バットになったのです、それをわかってです。
 皆確かなお顔になってそのうえでわかりました。自分達が何をすべきかを。
「俺達で倒すんだ」
「黒バットをやっつけるんだ」
「そして会津若松城を取り返すんだ」
「俺達の力で!」
 こう言い合ってです、一斉に黒バットに向かいました。黒バットはすぐに空に上がり黄金バットになった地元の人達との戦いをはじめました。
 黒バットはステッキから破壊光線を放ち掌から衝撃波を放ちステッキの先をフェシングにしてです。
 縦横に戦ってきます、ですが地元の人達もです。
 意地、そして想いがあります。自分達が愛するお城を何とか取り戻そうとです。そうしてでした。
 必死に戦います、戦いは長い間続き夜まで続きました。魔人は満月の光に照らされ勇者達と戦います。
 そして真夜中になった時にです、地元の人の一人のステッキの先での突きがです。
 遂に黒バットに掠りました、するとです。
 黒バットは無言でした、しかし負けを認めた様な態度になってです。
 身体を自身のマントで覆うとそのまま何処かへと姿を消しました、それを見てそれまで彼と戦っていた地元の人達は顔を見合わせてお話をしました。
「勝ったのか?」
「俺達が」
「黒バットは傷を付けられて諦めたのか」
「戦うのを諦めたのか?」
「そうなのか?」
 いぶかしむ声でお話をします、ですが殆ど何もわかりません。わかっていることはただ黒バットが帰ったことだけです。
 それで、です。地元の人達は一旦天守閣の屋根の上に戻りました。そしてまたお話をするのでした。
「だとすると俺達はやったのか」
「会津若松城を守ったのか」
「俺達の力で取り戻したのか」
「それが出来たのか」
 こう言い合います、ですが。
 確かな答えは出ません、何しろ黒バットは何も言わなかったのですから。それで、なのでした。
 何もわからないままいぶかしんでいるとです、そしてです。
 黄金バットは皆の変身を解きました、するとでした。地元の人達は元の姿に戻りました。するとここで自衛隊の人達が地元の人達に言いました。
「すぐに救助に行きます!」
「ヘリを屋上に向かわせます!」
「そのままじっとしておいて下さい!」
「危ないですから!」
 こう言ってすぐにヘリを向かわせて活躍をした地元の人達を助け出しました、そしてその後でお話をするのでした。
「黄金バット尾は地元の人達の心を汲み取ったのか?」
「それで今回は自分は戦わなかったのか」
 今は本丸の櫓の一つの屋根の上にいる黄金バットを見ます。
「地元の人達を黄金バットに変えて」
「そして自分の姿を授けてか」
「彼等に自分達の力で城を取り戻させた」
「そうしたのか」
 黄金バットは何も言いません、この魔人もまた殆ど喋らないのです。
 そしてです、黄金バットは何処かへと飛び去っていきました。何も答えませんでしたがお城は確かに地元の人達の手で取り戻されました。
 地元の人達は自分達の手で見事です、取り戻すことが出来てそうしてでした。福島全体が歓喜の渦に包まれました。
 それを見てです、総理は官邸で言いました。
「自衛隊ばかりじゃない、地元のお城を取り戻すつもりなら」
「それならですね」
「自分達の手で取り戻す」
「それが一番ですね」 
 官房長官も応えます。
「やはり」
「何といってもね」
「黄金バットはその手助けをしてくれたのでしょうか」
「そうだろうね」
 総理はこう考えました。
「やはり」
「黄金バットはそこまで考えているのでしょうか」
「そうかも知れない、そして若しそうなら」
「黄金バット、素晴らしい魔人ですね」
「まさに正義の魔人だよ」
「全くですね」
「確かに今回は地元の人達が取り戻した」
 そのお城をとです、総理は感慨を含んだ声で言いました。
「しかしその助けは黄金バットがしてくれた」
「それならですね」
「黄金バットに心から感謝しよう」
 今回もとです、総理は心から言ったのでした。そして黄金バットの功績を国民の皆さんに公表して彼の功績を伝えるのでした。


第十八話   完


              2017・6・10



意外な展開だな。
美姫 「本当よね。バットにそんな能力があるとは知らなかったわ」
ああ。まさか、他の人たちを変身させる事が出来るとは。
美姫 「しかも、力も与えているしね」
地元の人たちの心意気に応えた方法か。
美姫 「本当に凄いわね」
だな。今回も楽しませてもらいました。
美姫 「投稿ありがとうございました」
ありがとうございました。



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