『黄金バット』




        第二十五話  フー=マンチュー博士五稜郭の攻防

 北海道函館市の名所の一つに五稜郭があります、戊辰戦争という明治維新の時の日本の中で行われた戦争でかなり激しい戦いが行われた場所です。
 ですがその五稜郭を夜に皆がいない間にです。 
 フー=マンチュー博士が入り込んで占領しました、そのうえで高らかに言うのでした。
「私を五稜郭から追い出したいのなら実力で来ることだな」
「何でこんなことするんだ!」
 高らかに言う博士に函館の人は怒って尋ねました、皆博士が占領してしまった五稜郭を囲んで怒っています。
「迷惑だろ!」
「五稜郭は皆の場所だぞ!」
「函館の観光名所の一つだぞ!」
 だから皆が入って楽しむ場所だというのです。
「そんな場所を何で占領したんだ!」
「悪いことするな!」
「魔人は悪いことをするものだ」
 これが博士の返事でした。
「だからだ」
「五稜郭を占領しているのか」
「悪いことだからか」
「皆の場所を占領したのか」
「しかもここはとてもいい」
 五稜郭という場所自体が気に入っているというのです。
「私はここで暮らすことにしよう」
「おのれ、何てことをするんだ」
「やっぱり魔人は悪いことをするのか」
「そんなことはさせないぞ」
「何度も言うが五稜郭は皆のものだ」
「皆の場所を渡すものか」
「何とかして追い出すぞ」
 皆こう言ってそれぞれ鉄パイプや木刀や鎌を持って五稜郭に入って博士をやっつけようとします、ですが。
 五稜郭に沢山の人間位の大きさの自分達で動く木製の人形達が出てきてでした、五稜郭を取り戻そうとする皆に襲い掛かってきました、その数と勢いがあんまりにも強くてそれでなのでした。
 皆押し返されました、それを見て函館の市長さんも困ってしまいました。
「参った、今度は木人形を使ってか」
「悪事をしようとしてきますね」
 街の助役の人も市長さんに困ったお顔で応えます。
「おそらく五稜郭に住み着いて」
「そうしてくるな」
「そんなことを許せば大変です」
「そうだ、だから一刻も早く何とかしないと」
 フー=マンチュー博士が五稜郭に住み着いてそこから木の人形達をあちこちに送って悪いことをするというのです。
 それで市長さんもでした、市民の人達がまた五稜郭に押しかけない様に五稜郭の周りにバリケードと機動隊の人達を配置してでした。
 北海道にいる陸上自衛隊の人達に応援を頼もうとしました、ですがここで函館にいるある男の人が市長さんのところに来て言ってきました。若々しい顔立ちで背も高く立派な体格をしています。
「私が行きます!」
「えっ、君は」
「はい、土方と申します」
 こう名乗るのでした。
「土方直哉といいます」
「土方というとまさか」
 市長さんは新選組の副長さんで五稜郭で壮絶な戦死を遂げたあの人を思い出しました。
「あの人の子孫なのかい?」
「いえ、あの人とは苗字が一緒であるだけです」
 それだけだというのです、見れば五稜郭の時の土方さんの服装そのままで刀も持っています。
「函館に住んでいる刀鍛冶で包丁も造っています」
「その人がどうして」
「私は最初の市民の突入に参加していました」
 木の人形達に押し返されたその時にというのです。
「無念でした、ですが今度こそです」
「いや、それは危ない」
 市長さんは土方さんの申し出を断りました。
「相手は魔人だよ、だからね」
「私が行くことはですか」
「駄目だよ、あの博士にはね」
 魔人であるフー=マンチュー博士にはというのです。
「普通の人が束になっても敵わない、現に貴方も押し返されたね」
「はい、ですが負けていられないです」
「敵う筈がないというのに」
「はい」
 だからだというのです。
「それでも行かずにいられないです」
「気持ちとして」
「それは函館の皆も同じです」
 土方さんの言う通りでした、一度は押し返された函館の人達はバリケードと機動隊の人達が行かせまいとしてもです。
 それぞれまた鉄パイプや木刀等を持って五稜郭を囲んで言うのでした。
「今度こそは負けないぞ!」
「五稜郭を取り戻すんだ!」
「魔人なんかに負けるか!」
「フー=マンチュー博士に勝つぞ!」
 こう言って戦おうとします、これには機動隊の人達も困ってしまい市長さんもどうすべきか迷いました。
 市民の人達の熱意を受けるべきか安全を考えるべきか、今まさに判断を迫られていました。土方さんは市長さんの前を後にして既に五稜郭に向かって車を飛ばしています、五稜郭はもうどうなるかわからない状況でした。
 ですがここであの声が聞こえてきました。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「あの笑い声は!」
「まさか!」
 宙にあの男がいました、黄金バットです。
 黄金バットは宙に浮かんでいました、背中に裏地が赤い黒マントを羽織りそのマントをたなびかせてです。両手を腰に当てて立っていました。
 黄金バットは右手にステッキを出して五稜郭の方に向けて金色に輝く空気を飛ばしました、するとでした。
 木の人形達は消え去り後に残ったのはフー=マンチュー博士だけになっていました。函館の人達はその状況を見てでした。
 いよいよです、五稜郭を取り戻そうとしてきました。ですが黄金バットは博士の前に颯爽と舞い降りて。
 今度は拳法を使う博士と激しい一騎打ちを繰り広げました、ステッキの先をサーベルの様にして使う黄金バットは博士を徐々に追い詰めて。
 そして遂に左肩を掠めました、するとでした。
 フー=マンチュー博士は苦い顔になり黄金バットに言いました。
「この戦い私の負けた、貴殿の攻撃を掠めてしまった」
 このことから敗北を認めるのでした。
「ではこれより去ろう」
 こう言ってです、そのうえで。
 博士は何処かへと姿を消しました、そして後には黄金バットだけが残っていましたが。
 黄金バットも何処かへと飛んでいきました、函館の人達は後に残った五稜郭を見て思うのでした。
「まさか俺達を見てなのか」
「黄金バットが来てくれたのか」
「あくまで函館を取り戻そうとしている俺達を見て」
「そうしていたのか」
「間違いないです」
 ここで土方さんが五稜郭の皆のところに到着して言いました。
「黄金バットは人の心を見て動く様です」
「それならか」
「黄金バットは函館に出てくれたのか」
「俺達の五稜郭を取り戻そうという動きを見て」
「そうしてくれたんだな」
「そうです、今五稜郭を乗っ取ろうとしていた魔人は消えました」
 黄金バットに敗れてです、フー=マンチュー博士は何処かへと姿を消しました。そうなったというのです。
 土方さんはこのことを言って自分と同じ函館の人達に述べました。
「我々の手によってではないですが」
「それでもだな」
「五稜郭は我々の手に戻った」
「このことを喜ぶか」
「今は」
「そうしましょう、黄金バットに感謝して」
 こう言ってでした、そのうえで。
 土方さんも他の函館の人達も五稜郭が自分のところに戻ったことを喜びました。このことは市長さんも同じで。
 公の場で黄金バットそして危機を承知で五稜郭の為に立ち上がった函館の人達に深い感謝の言葉を言いました、そうしてこの日を函館の人達の黄金バットへの感謝の日としたのでした。


黄金バット  第二十五話   完


                   2018・11・4









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