『黄金バット』




            第三十五話 フー=マンチェー博士冬の北海道で

 北海道の稚内で今とんでもないことが起こっていました、何とです。
 北海道にいる羆が現れました、しかもその羆は普通の羆ではなく。
 何と全長五十メートルはあります、もうビル並もっと言えば怪獣の様な巨大さで皆その羆を見て驚きました。
「あんな羆が来たら大変だぞ」
「どうにもならないぞ」
「羆は只でさえ怖いのに」
「あそこまで大きいと怪獣だ」
「あんなものはどうにもならない」
「猟師の銃じゃどうにも出来ない」
「一体どうすればいいんだ」
 皆頭を抱えました、そしてです。
 稚内の平原の中を進む羆の先にある人が出てきました、その人は一体誰なのかといいますと。
 フー=マンチュー博士でした、博士は巨大な熊の前に立って悠然として言いました。
「羆を我が生物科学技術で巨大化させたものだ」
「そうだったのか」
「フー=マンチュー博士の仕業だったか」
「これは魔人の行いだと思ったが」
「フー=マンチュー博士だったか」
「あの博士がしたことか」
「この羆止められるなら止めてみせよ」
 博士は悠然と歩いています、まるで目の前に立ちはだかるものは何もないかも様にです。確かに目の前には誰もおらず何もいません、今の言葉も世界中の人達が見ていることをわかって言い放っているものです。
「私が巨大化させたこの熊を」
「このまま羆が街に来ると大変だぞ」
「畑や牧場に来てだ」
「全てを壊して食べ尽くすぞ」
「そうしてしまうぞ」
「これは大変だ」
「早く何とかしないと」
「羆を何とかしないと」
 皆どうしようかと悩みました、そしてです。
 政府も知事さんもすぐの北海道にいる自衛隊や警察に人達に出動を命じました、防衛大臣の人も真っ青になっています。
「あの羆は放っておけない、そして博士も」
「何とかしましょう」
「自衛隊も動かしました」
「それならです」
「羆を止めましょう」
「あの羆は野生のもので博士に利用されているだけだ」
 防衛大臣はこのことを指摘しました。
「犠牲者と言っていい、それならだ」
「出来るだけですね」
「命を奪わない様にしないといけないですね」
「元に戻す方法もある筈ですし」
「それならですね」
「そうだ、砲弾やミサイルに麻酔を入れて」
 そうしてというのです。
「眠らせよう」
「それがいいですね」
「無駄な命を奪うよりも」
「それよりも博士ですね」
「フー=マンチュー博士ですね」
「あの博士を取り押さえて逮捕したいと総理も言われている」
 何しろいつも大変なことをして世を乱している人です、このことは他の魔人達も同じでどうにかしないといけない人なのです。
 それで羆は眠らせて博士を逮捕しようとしますが。
 羆に麻酔が入った砲弾を撃っても全く効きません、ミサイルも何もかもです。
 しかも博士も開いた手をミサイルや砲弾に向けて衝撃波を放ってそれで破壊してしまいます、博士は不敵な笑みで言いました。
「この程度の攻撃でどうにかなると思ったか」
「くっ、何て強さだ」
「羆も厄介だが博士もいるからな」
「余計に厄介だ」
「羆を何とかしないといけないのに」
「博士もいるからな」
「一体どうすればいいんだ」
 皆羆と博士を止められず困ってしまいました、そして遂に稚内市に羆も博士も到着しようとした時に。
 もう防衛大臣も覚悟を決めて麻酔なしで羆にも博士にもこれまでより遥かに大規模な攻撃を浴びせて退治しようとしましたが。
 ここで、でした。稚内の空にです。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「!?この笑い声は」
「まさか」
「まさかと思うが」
「黄金バットか!」
「黄金バットが来てくれたのか!」
 見ればです、稚内の一番高いビルの頂上にです。
 黄金バットがいました、黄金バットは黒マントをたなびかせ両手を腰にやって高笑いを立てています。その黄金バットがです。
 颯爽と空を飛び街に入ろうとした羆そして博士のところに来ました、博士は王本バットに対しても衝撃波を放ち妖術として暗雲を呼び寄せそこから激しい落雷も落としますが。
 黄金バットは衝撃波も落雷もかわしてです、そのうえで。
 牙を剥き出して自分に向かって来ようとする羆に対してステッキの先の宝玉を向けてそこから七色に輝く光の帯を放ってです。
 羆を撃ちました、すると羆は見る見るうちにです。
 羆は元の大きさに戻りました、そうしてでした。
 羆は我に返ったかの様になって何処かに去ってしまいました、博士はその羆を見て歯噛みして言いました。
「してやられたか、これでは仕方がない」
「・・・・・・・・・」
 今は何も話さない黄金バットを見据えています、ですが諦めた様な顔になってです。
「この借りは必ず返す」
「消えたぞ」
「何処かに行ったぞ」
 見ればです、博士は右手で自分の顔の前で印を結ぶとどろんと煙を出してその中に身体を包みました。そしてです。
 その煙が消えた時にはフー=マンチュー博士は姿を消していました、それを見て黄金バットも何処かへと飛んで行きました。
 羆も博士も黄金バットも姿を消した後稚内市は何もなかったの様に静かになっていました。皆その様子を見てです。
「終わったか」
「全ては平和に」
「今回も黄金バットに助けられた」
「本当によかった」
「全ては黄金バットのお陰だ」
 防衛大臣も言いました。
「本当に」
「全くです」
「今回も黄金バットが助けてくれました」
「そのことを讃えましょう」
「黄金バットが稚内の街も羆も助けたことを」
「是非そうしよう」
 こう言ってです、防衛大臣は公に黄金バットへの感謝の言葉を述べました。それは黄金バットにはどうでもいいうことだったかも知れませんが確かに彼に届けられました。


黄金バット第三十五話   完


                 2020・7・1








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