『恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS』




                          第百二十話  于吉、埋伏を作らんとするのこと

 またしてもだ。于吉は企んでいた。彼は闇の中で同志達に話していた。
「そろそろ戦いですが」
「ようやくだな」
 彼に左慈が応える。
「全く。あの妖怪共もやってくれた」
「はい。ですがようやく戦力の建て直しができ」
「そして陣も船もな」
「整いました。それならです」
「攻めるか」
「はい、ですがその前にです」
 ここでだ。彼は言うのだった。
「彼等に仕掛けたいのですが」
「おいおい、またか」
 グリザリッドは于吉のその言葉に苦笑いで言った。
「またそうするのか」
「はい。そう考えているのですが」
「懲りないな。全く」
「戦いを楽しむことも必要だと思いますが」
「いつも通りか」
「はい、いつも通りです」
 そうだとだ。于吉は余裕の笑みでグリザリッドに話す。
「そうしようと考えていますが」
「具体的にはどうするつもりだ?」
「内応する者を作ろうと考えています」
「いや、それはどうだろうな」
「かなり難しいと思うが」
 グリザリッドだけでなくセスも疑問の言葉を出す。
「向こうは俺達と完全に敵対する奴ばかりだ」
「それで内応する者を作るというのはだ」
「難しい、いや不可能じゃないのか?」
「そう思うが」
「まあいちいち名前を挙げなくてもいいだろう」
「こちらの世界の人間も我々の世界の人間もだ」
 どちらの世界の者達もだとだ。ネスツの二人は言う。
「誰一人として無理だろうな」
「不可能と言ってもいい」
「いえ、います」
 しかしだ。于吉は自信に満ちた声でこう言ってだ。
 そのうえでだ。オロチの面々を見て言うのだった。
「そうですね」
「そういうことね」
 シェルミーがその于吉の言葉にだ。楽しげに笑って応えてきた。
「私達の血を使うのね」
「そうです。八神庵は無理でしょうが」
「あの男はこちらからお断りだ」
 社は于吉にすぐにこう返した。
「あの血が暴走すると俺達にも来るからな」
「それで私達は一度死んだわ」
「血の暴走に巻き込まれてね」
 そうなったとだ。バイスとマチュアが話す。
「あの男はオロチの血よりも神器の血が強いわ」
「それが影響してかえって悪いのよ」
「はい、私も彼についてはそう思います」
 于吉もだ。八神についてはそう見ていた。
 それでだ。彼についてはこう断定したのだった。
「彼は絶対に仕掛けません」
「それがいいね。若し仕掛けたらね」
 クリスもそのことについて言う。
「かえって僕達に来るからね」
「ですから彼ではなくです」
「あいつだな」
 社は于吉の言葉にあるものをここで察した。
 そうしてだ。こう言ってにやりと笑ったのである。
「あいつに仕掛けるんだな」
「それでどうでしょうか」
「悪くないな。じゃあそうするか」
「はい。ではお願いできるでしょうか」
「もう一人欲しかったところだがな」
 社はこんなことも言った。
「仕掛けるんならな」
「もう一人はあれだからね」
 クリスもそのことについて残念そうに笑って述べる。
「どうしようもないからね」
「あいつがオロチなのは何かの間違いだからな」
 社もだ。彼についてはこう言うだけだった。
「今じゃあっちで楽しくやってるみたいだしな」
「それなら仕方ないね」
「ああ、あいつだけに絞る」
 社もだ。決めたのだった。
 そしてそのうえでだ。自分から于吉に対して言った。
「俺達はそれでいいぜ」
「わかりました。それでは」
「問題は何時仕掛けるかね」
 シェルミーはこのことについて言及した。
「問題はそれだけれど」
「事前に仕込むことが大事です」
 于吉はそれが重要だというのだ。
「それでは」
「それではね」
 ミヅキが出て来てだ。怪しく笑って言う。
「私が協力するわ」
「では私が行きましょう」
 ゲーニッツだった。彼が出て来てであった。
「そうして仕掛ければいいですね」
「御願いできますね」
「そうさせてもらいます」
 ゲーニッツは于吉に対して慇懃に一礼してだ。そうしてだった。
 ミヅキと共に姿を消した。それを見送りだ。于吉は楽しげに笑って言った。
「これでよしですね」
「相変わらず楽しんでいるんだな」
 グリザリッドがその于吉に対して声をかけた。
「次から次にか」
「戦いはそうでないと楽しくありませんから」
 それでだとだ。于吉は言う。その彼に司馬尉が言った。
「では。ただ仕掛けるだけでは見破られるから」
「ここでさらにですね」
「私も行くわ」
 楽しげに笑ってだ。こう言ってだ。彼女も同志達に話す。
「軍を率いてね」
「では私達も」
「御供します」
「ええ、そうしましょう」
 妹達にも応えてだ。司馬尉は船団の一部を率いて連合軍に向かった。そうしてだった。
 わざと大きく銅鑼を鳴らしてだ。攻めんとする。それを見てだ。
 関羽がだ。すぐに劉備に報告した。
「義姉上、来ました」
「敵ね」
「はい、数は少ないですが」
 それでも来たとだ。関羽は劉備に述べる。
「攻めて来ました」
「わかったわ。それじゃあ」
「出陣ですね」
「そして皆警戒態勢に入って」
 劉備も強い顔で言う。
「若しかしたら敵が他にも来るかも知れないから」
「はい、それでは」
「私も行くわ」
 劉備自身もだ。そうすると言って席を立った。そのうえでだ。
 船に向かう。見れば既に多くの船が出港していた。指揮は于禁が執っていた。
「行くのです野郎共!」
「おうよ!」
「姐さん、それじゃあ!」
「敵の奴等を全員叩きのめして鰐の餌にするのです!」
 戦の時の彼女の口調になっていた。
「御前等もうかうかとしてると!」
「へい、その時はですね」
「俺達も!」
「金玉ひっこ抜いて腑抜けにしてやるのです!」
 こう言うのだった。
「そうされたくなかったら行くのです馬鹿共!」
「おうよ、行くぜ!」
「俺達もな!」
 ジャックとミッキーもいた。その彼等が船に乗りだ。
 そのうえで司馬尉が率いる敵に向かう。他の者達もだ。
 港に集り警戒していた。その中でだ。
 諸葛勤がだ。こう孫策に進言した。
「雪蓮様、港だけでなく」
「陣全体にね」
「はい、敵は川から来るとは限りません」
 だからだというのだ。
「陣の外にもです」
「そうね。警戒するべきね」
「ですから」
「わかったわ。じゃあ劉備」
「うん、そうね」
 劉備もだ。真剣な顔で孫策の言葉に頷く。そうしてだ。
 すぐにだ。全軍に告げた。
「陸地も見て!」
「わかったのだ!」
 張飛がすぐに向かう。連合軍は陣の外側全体にも警戒の目を向けた。
 外への目は万全だった。だがその隙にだ。陣の端からだ。
 ミヅキとゲーニッツは入り込んだ。水から出てそこに入った。
 陣の中に入りだ。ゲーニッツは不敵な笑みでミヅキに話した。
「ここまでは上手にいきましたね」
「そうね。司馬尉はよくやってくれているわ」
 実際に戦闘に入りその指揮を執る司馬尉の船を見ながらだ。ミヅキも言う。
「お陰でこうしてね」
「楽に忍び込めましたね」
「連合軍の目は川の船団と陣の外の陸地に向けられているわ」
「川の船団のいない場所は」
 そこはなのだった誰も。
「そしてです。中はさらにですね」
「誰も見ていないわ」
「人は集中する生き物です」 
 そこをだ。衝いたのだった。
「一方を見れば他の方角がおろそかになります」
「そういうことね。それではね」
「では彼女のところに向かいましょう」
 ゲーニッツは楽しげに笑ってだ。ミヅキと共に敵陣の中を進む。誰もが陣の外や船団を見てだ。彼等には全く気付かなかった。
 しかしだ。ここでふとだ。周瑜が言った。
「そういえば」
「あれっ、何かあったの?」
「ええ。陣の外は見ているけれど」
 こうだ。怪訝な顔になって孫策に話す。
「中は」
「そういえばね。皆中は見ていないわね」
「兵が粗相をして火事にでもなったらことだわ」
 このことに気付いたのである。それでだった。
「中を見回る者も出しましょう」
「そうね。それじゃあ」
 ここでだ。孫策は傍にいたハイデルン達にこう告げた。咄嗟にだ。
「ええと。中の見回りをお願いできるかしら」
「火事や喧嘩があるかどうかだな」
「ええ。頼むわ」
 こうハイデルンに言う。
「中をね」
「わかった。それではだ」
「任せてもらおう」
 タクマも応えてだ。彼等は陣中の見回りに出た。
 ハイデルン、タクマに柴舟だ。この三人が兵達を連れて陣中を見回りだした。その頃だ。
 ゲーニッツとミヅキはだ。レオナのところに近付いた。彼女は丁度ウィップと共にいた。しかしそのウィップのところにラルフとクラークが来て言った。
「おい、ちょっといいか?」
「来てくれるか?」
「何かあったのですか」
「ああ、予備ってことでな」
「船に乗ってくれるか?」
 ラルフとクラークはこうウィップに話す。
「俺達と一緒にな」
「そうしてくれるか」
「わかりました」
 ウィップは敬礼と共に二人に応えた。軍人らしくキビキビとした動作でだ。
「では今から」
「レオナはここに残っていてくれ」
「待機ってことでな」
「はい」
 レオナも二人に敬礼で応える。
「それではここで」
「それじゃあ行くか」
「船にな」
 二人はウィップを連れてだ。港に向かった。レオナは港から離れた天幕のところにいた。そこで一人で待機することになった。しかしだ。
 そこにだ。ゲーニッツが来る。ミヅキもだ。そうしてだった。
 後ろからだ。レオナに囁くのだった。
「貴女は」
「!?」
「忘れてはいませんか」 
 こうだ。ゲーニッツが囁くのである。
「貴女の為すべきことを」
「私の為すべきこと」
「貴女はここにいるべき方ではないのです」
 こう囁き続ける。
「そう。貴女の血脈に従うのです」
「私の血脈」
「貴女はオロチなのです」
 言うのはこのことだった。
「ならばそれに従い」
「オロチの血に従い」
「為すべきことをされるのです」
 これがゲーニッツの囁きだった。
「そう、それは」
「それは」
「貴女の心にではなく血に問うのです」
「私の血に」
「さあ、貴女の血は何と言っていますか」
 あえてだ。ゲーニッツはレオナに問うた。
「貴女に対して」
「それは」
「その言葉に従うのです」
 ゲーニッツだけでなくだ。ミヅキもだ。レオナに対して囁く。
「どうかしら。闇は」
「闇・・・・・・」
「光よりもいいものではなくて?」
「光、それは」
「闇は全てを包み込んでくれるわ」
 妖しい言葉でだ。レオナに囁くのだった。
「さあ、だから闇の中に」
「その中に」
「血に従い闇の中に」
 ゲーニッツの言葉も入れてだ。ミヅキは囁く。
「そうするのよ」
「そうして」
「そう、オロチとして生きなさい」
 ミヅキがこう言うとだった。ゲーニッツもだ。すかさずといったタイミングでレオナにまた囁いた。
「時が来れば」
「その時に」
「待て」
 今まさに虜にできる時にだった。彼等を止める声がした。そしてだ。
 ハイデルン達がだ。二人にすぐにそれぞれの攻撃を放った。
 鎌ィ足に気、そして炎が襲う。二人はそれをすぐに左右に散ってかわした。
 そのうえでだ。こう彼等に言うのだった。
「まさかと思いましたが」
「中も見ている人間がいたのね」
「危ういところだったな」
 鎌ィ足を放ったハイデルンが言う。右にはタクマ、左には柴舟がいる。
「レオナの血を呼び起こすつもりか」
「その通りです」
 悠然と笑ってだ。ゲーニッツはハイデルンの問いに答える。
「あと一歩で完全になるところでしたが」
「生憎だったな」
「全くです。残念なことです」
 酷薄で挑発するものすらある笑みでだ。ゲーニッツはハイデルンに述べる。
「人が多いとこうしたことにもなるのですね」
「貴様が人とは思えぬがのう」
 柴舟はゲーニッツを見据えて言う。
「オロチの中でも最強の貴様はな」
「ははは、私が最強ですか」
「貴様の力はよく知っておるわ」
 オロチと戦う宿命の者だからこその言葉だった。
「それ故にじゃ」
「有り難いお言葉ですね。それでは」
「楽しもうかしら」
 ミヅキも言ってだ。そのうえでだ。
「ここでも戦いを」
「ふん、羅将神ミヅキだったな」
「その通りよ」
 ミヅキもだ。裕全と笑ってハイデルンに応える。
「私の名前は知っていたのね」
「長年に渡って世の陰で乱してきた邪神」
 タクマはミヅキをそうした存在として知っていた。
「オロチや常世と並ぶ破壊と渾沌の存在だな」
「人から見ればそうね」
 明らかにだ。人ではない者の言葉だった。
「アンブロジア様は」
「御主自体がアンブロジアではないのか?」
 タクマは鋭い目でそのミヅキに問い返した。
「違うのか、それは」
「さて、それはどうかしら」
 ミヅキは悠然と笑ったままあえて答えない。
「はっきりとしたいのならね」
「わかっておる。倒す」
 タクマは闘いだ。そうすると言ってだ。すぐに身構えてだ。
 全身に気を込め。両手を前後に前に出し。
「覇王至高拳!」
 巨大な気の壁をだ。ミヅキに向けて放ったのだった。
 そしてそれを合図にだ。ハイデルンと柴舟もだった。
 ゲーニッツに向かう。三人で彼等の相手をする。
 ハイデルンは鎌ィ足を放ってからだ。跳びだ。
 ゲーニッツの首を狙う。しかしゲーニッツはそれをかわし。柴舟の炎の拳も受けてだった。
 彼自身もだ。右手をスナップさせて。
「そこですか!?」
「くっ!来たか!」
「竜巻か!」
 竜巻を出しそれで二人を攻める。二人はそれを何とか受ける。だがそこにだ。
 鎌ィ足も出しだ。寄せ付けない。それはミヅキも同じだった。
 妖獣を出しその攻撃も繰り出しだ。タクマを迎え撃つ。さしものタクマもだった。
「おのれ、この力は!」
「伊達に神と呼ばれている訳ではないわ」
 ミヅキは攻撃を仕掛けながらタクマに言う。
「こうして。力があるからこそ」
「それでだというのか!」
「そうい。さあ受けなさい」
 邪気をだ。タクマに放って言う。
「そして邪悪の力を知るのよ」
「させん!」 
 その邪気をだ。覇王至高拳で打ち消しだ。タクマは返す。
「この程度でわしを倒せるか!」
「成程、それで防いだのね」
「我が極限流空手は無敵!」
 こう言ってだった。タクマはミヅキに一気に接近し拳を何度も繰り出す。
「神とて倒してみせよう!」
「わしもじゃ!」
 柴舟もだ。炎を次々と繰り出しながらゲーニッツに告げる。
「草薙の炎はオロチを焼く炎よ!」
「だからこそというのですね」
「貴様になぞ負けん!」 
 これが柴舟の言葉だった。
「断じてな!」
「そういうことだ。私もだ」
 ハイデルンは今は二人のフォローに回っていた。そのうえでだった。
 二人を相手にしている。三対二だった。その中でだ。ハイデルンは兵達に対してもだ。こう命じたのだった。
「御前達は弓を放て」
「しかしそれではです」
「ハイデルン殿達にも」
「構わない」
 それはいいと言うのである。
「私達に当たることはない」
「その位のものは何なくかわしてみせるわ」
 柴舟も余裕の笑みで兵達に言う。
「だから安心してじゃ」
「撃つがいい」
 タクマも言ってだ。そうしてだった。
 兵達にだ。ゲーニッツとミヅキを射らせた。その援護射撃を受けながらだ。
 三人は彼等とさらに戦う。兵達の援護が効果がありだ。
 ゲーニッツもミヅキも劣勢を感じた。それでだった。
 ミヅキがだ。こうゲーニッツに囁いた。三人の攻撃をかわしながら。
「少しまずいわ」
「そうですね。劣勢ですね」
「三人と兵達だけならともかく」
 ここは敵陣の中だ。彼等から見てだ。
 それならばだとだ。ミヅキは言うのだった。
「他の者も来るわ」
「特に三種の神器と宝珠の者達ですね」
「奴等が来たら厄介だわ」
 ミヅキはその流麗な眉を顰めさせて言うのだった。
「だからもうね」
「そうですね。ここは退きますか」
 ゲーニッツもこう言ったのだった。
「残念ですが」
「洗脳は中断ね」
「はい」
 ミヅキにこう応えるがだ。しかしだった。
 その笑みに企みと余裕があるのをハイデルンは見た。その隻眼に。
 しかしそのことは今は言わずにだ。黙って見ただけだった。
 その二人がだ。こう彼等に告げてきた。
「では。名残惜しいですが」
「今回はこれでね」
「ふん、撤退ということか」
「はい」
 ゲーニッツはにやりと笑って柴舟の言葉に応えた。
「そうさせてもらいます」
「できればここで始末したかったのだがな」
「残念だったわね」
 ミヅキもだ。楽しそうに笑って返す。
「また今度になるわね」
「月並みな言葉だが次は逃さぬ」
 タクマも彼等に対して告げる。
「覚悟しておくのだな」
「はい。それでは次は」
「完全に滅ぼしてあげるわ」
 こう言ってだった。二人はだ。
 闇の中に消えていった。その彼等を見送ってからだ。
 ハイデルン達はレオナを保護してそのうえで本陣に戻った。その頃には既に船での戦いも終わっていた。
 話を聞いてだ。孔明が深刻な顔で述べた。
「では船での戦いは囮だったのですね」
「おそらくはな」
 そうだったとだ。タクマも答える。
「レオナを洗脳することが目的だったのだ」
「そういえばレオナさんは」
 鳳統はタクマと同じくそのレオナ、俯いている彼女を見ながら述べた。
「オロチの血が」
「ああ、オロチ一族八傑衆の一人なんだよ」
「親父さんが元々そうだったんだ」
 ラルフとクラークが一同にこのことを説明する。
「あのゲーニッツが親父さんの血を覚醒させようとしてな」
「その時にこいつの血が暴走してな」
 二人もだ。そのレオナを見ながら説明していく。
「で、まあ何だ」
「親父さんをな」
「そのことは以前聞いていましたが」
 鳳統はやや暗い顔になって述べた。
「今その血を狙って来るとは」
「正直俺も予想していなかった」
「奴等の謀略は何度も退けてきたしな」
「こうしてレオナを狙って中から乱してくるなんてな」
「想像すらしていなかった」
「はい、それは私達もです」
「まさか。こんなことをしてくるなんて」
 孔明も鳳統も項垂れた顔で述べる。そしてそれは他の軍師達もだった。
 誰もが困惑している顔だった。想定すらしていなかったのだ。
 そしてだ。その中でハイデルンがこのことを話したのだった。
「しかもだ」
「しかも?」
「しかもといいますと」
「レオナへの洗脳は完全には解けていない」
 そのことをだ。ここで言ったのである。
「何時オロチの血が覚醒するかわからない」
「ああ、それは間違いねえぜ」
 何とだ。意外な人物が話してきた。
 山崎だった。彼にしては珍しく真剣な顔で言うのである。
「オロチの血ってのは目覚めさせるとな。半端な状態でも何かちょっとあれば目覚める様になるんだよ」
「じゃあやっぱり」
「レオナさんは」
 孔明も鳳統もだ。そのことを聞いて通訳。
「またオロチが出て来ればそれで、なんですね」
「オロチの血が覚醒するんですか」
「俺は大丈夫だけれどな」
 山崎は今度は面白そうに笑って述べた。
「俺はオロチの血なんて全く関係ねえんだよ」
「それ何でや?」
 張遼が不思議そうにその山崎に問うた。
「あんたもオロチやっちゅうのに」
「俺は俺の生き方をするだけなんだよ」
 そうだと答える山崎だった。例え闇社会に生きていてもだ。
「世界がどうとか関係ねえんだよ。それにな」
「それに?」
「それにっていいますと」
「入れとか運命に従えとかいうのは嫌いなんだよ」
 山崎の考えではないというのだ。
「だからオロチの奴等には絶対に与しないさ」
「そのことだけは安心できるな」
 キムもそのことについては山崎を信頼していた。
「御前は絶対にオロチにはつかないな」
「まあ今の生活も俺にとっちゃ地獄だがな」
 言うまでもなく日々キムの修業と強制労働、そして体罰のフルコースを受けているからだ。
「けれどそれでもあの連中みたいな考えはないんだよ」
「そのことはわかりました」
「そういうことですね」
 孔明と鳳統は山崎自身のことについて納得した顔で頷いた。
「オロチの血脈もその気が全くなければですか」
「効果がないんですね」
「そういうことだよ」
「ですがレオナさんは」
「どうなのでしょうか」
 このことについてはハイデルンが話す。
「レオナの場合は無意識にある闘争心等も刺激されている」
「そしてそれも暴走させられる」
「そうなのですか」
「山崎と違いまだ精神的に幼い」
 それもあってだというのだ。
「闘争心やそうしたものをコントロールできないのだ」
「それならどうすればいいのでしょうか」
「ここは」
「仲間だ」
 ハイデルンは今度はラルフとクラークを見て述べた。
「この二人は過去もレオナの暴走を食い止めてきた。その説得と交流によってだ」
「それなら今回もですね」
「御二人にお願いしていいでしょうか」
「ああ、任せな」
「俺達が絶対にそんなことをさせないからな」
 ラルフもクラークもだ確かな笑みで孔明と鳳統に答える。
「オロチの血は俺達が絶対に鎮めてみせる」
「何があってもな」
「ただしだ」
 ここでまた言うハイデルンだった。
「オロチはまた出て来る。決戦の時にだ」
「そしてレオナさんの血を覚醒させ暴走させようとする」
「そのうえで私達を中から乱してきますね」
 軍師二人もこのことを察して述べた。
「所謂埋伏の毒」
「レオナさんをそうしてきますね」
「それがわかっているのなら」
「そしてラルフさんとクラークさんの血を完全に静められるのなら」
 こう考えていってだった。二人はある考えに至った。
 そのうえでだ。こう一同に述べた。
「これは使えるかも知れません」
「私達にとって」
「というとどうするんだ?」
「作戦を思い浮かんだみたいだな」
「はい、思い浮かびました」
「賭けになりますが」 
 それでもだとだ。二人はラルフとクラークに答えてだ。そのうえで話すのだった。
「ここはあえて彼等にレオナさんの前にもう一度来てもらってです」
「仕掛けてもらいましょう」
「彼等がそれを作戦の軸の一つにするのならですね」
 ウィップは話を聞いてこう述べた。
「それを打ち破るのですね」
「はい、そうです」
「それで彼等の機先を潰しましょう」
「そのうえで勢いに乗る」
 ウィップは思案する顔で述べる。
「いい策ですね」
「確かに賭けです」
「ラルフさんとクラークさんがレオナさんの血を完全に抑えられるかどうかですから」
「それは任せてくれ」
「俺達は絶対にやるさ」
 二人は確かな顔と声でこう答える。
「オロチの血なんかに負けるかよ」
「絶対に抑えてみせるからな」
「はい、ではお願いします」
「レオナさんの為にも」
「じゃあ策を破るか」
「そうするか」
 ラルフもクラークも頷いてだった。こうしてだ。
 オロチ達の策を破ることになったのだった。それを決めてからだ。
 ハイデルンはレオナにだ。こう告げたのである。真剣な顔で。
「大丈夫だ」
「はい、私もまた」
 レオナ自身もだ。思い詰めている顔だが確かな声で答えた。
「勝ちます」
「オロチの血にだな」
「私はオロチではありません」
 レオナ自身も言うのだった。
「私は人間です」
「そうだ。御前は人間だ」
「そして」
 今度はラルフとクラークを見て話す。
「ラルフさんとクラークさんの」
「ああ、仲間だよ」
「かけがえのないな」
 それを二人も言ってだった。
 レオナの傍に来てだ。笑顔でこう話した。
「じゃあ今からゆっくりと語り合うか」
「色々とな」
「お話ですか」
「飲みながらな。美味いもんでも食ってな」
「そうするか」
「では野菜を」
 レオナはベジタリアンなのだ。肉は食べないのである。
「お酒はワインを」
「ヘルシーだな。じゃあパスタにするか?」
「あれなら野菜食いながら酒も飲めるからな」
 二人はレオナの話を聞いてそれにしようと考えた。そうしてだ。
 ウィップも加えてだ。パスタを茹でトマトや大蒜を炒めてソースを作りだ。ワインも用意してだ。四人で楽しく飲み食いをはじめたのだった。
 そしてその中でだ。ラルフがレオナに尋ねた。
「で、聞きたいことがあるけれどな」
「何でしょうか」
「レオナは好きな漫画とかあるのか?」
「漫画ですか」
「ああ、本とかな。テレビ番組とか」
 そうしたもので好きなものはあるかというのだ。
「どんなのが好きなんだよ」
「はい、日本の特撮で」
「ああ、特撮か」
「ウルトラセブンが好きです」
 その番組が好きだというのだ。
「よく観ています」
「そういえばだよな」
「そうだな」
 ラルフとクラークはレオナの話を聞いてだ。お互いに話す。
「レオナのあの気の放ち方ってな」
「アイスラッガーだからな」
「自分に似てるからか」
「それでなのか」
「はい、私もそう思います」
 レオナ自身もこう答える。パスタを食べながら。パスタはマカロニ、それも何種類ものマカロニがミックスされたものだ。そこにトマトやマッシュルーム、セロリ、大蒜のソースをかけたものを食べているのだ。当然油はオリーブだ。
「あのヒーローは私に似ています。それに」
「それに?」
「まだ好きなのがあるのか?」
「エヴァンゲリオンが好きです」
 そのアニメも好きだというのだ。
「アニメも」
「そういえばあのヒロイン似てるよな」
「ああ、レオナにな」
「とはいってもレオナはもっと人間味豊かだけれどな」
「そうなってきたよな」
「ならいいのですが」
 レオナは硬い表情で述べる。
「私も」
「そうだよ。あのヒロインはあれはあれで味があるんだけれどな」
「キャラクターの一つのジャンルになったからな」
「無表情系、クールっていうかな」
「そうしたキャラも確立されたからな」
「クーデレですね」
 ウィップはワインをごくごくと飲みながら話す。
「そうした話ですよね」
「ムチ子もそうした話何だかんだでよく知ってるな」
「ウィップです」
 その呼び名は訂正を入れるウィップだった。
「宜しくお願いしますね」
「いい仇名だと思うんだけれどな」
「そうは思いませんけれど」
「よくないか?ムチ子ってな」
「そのままじゃないですか」
「だから。それがいいんだよ」
 ラルフはあくまでこう主張する。
「ムチを持っててウィップだろ」
「はい、それはその通りです」
「ならムチ子でいいじゃないか」
 また言うラルフだった。
「それでな」
「何かラルフさんのネーミングセンスって」
 ウィップは困った顔でラルフに話す。
「どうしようもなくださいですから」
「おい、そう言うのかよ」
「いや、それは否定できないな」
 そのことについてはクラークもだ。ウィップについて述べる。
「ラルフのネーミングセンスは昔だからな」
「おい、長年の戦友に対してそれかよ」
「戦友だから言うのさ」
 クラークはクールに笑って述べる。
「心配してな」
「心配する顔には見えないがな」
「俺は表情には出さないタイプだからな」
「都合のいい時はそう言うんだな」
「ははは、それは気のせいだ」
 飲み食いしながらだ。二人は笑顔で談笑する。そしてその二人を見てだ。
 レオナもだ。微笑んでいた。そうして言うのだった。
「何かこうしていると」
「楽しいか?」
「そうなんだな」
「はい、楽しいです」
 こう言うのだった。
「とても」
「そうだろ。楽しいだろ」
「こうして皆で楽しくやればいいんだよ」
 まさにそうだとだ。ラルフもクラークも応える。そうしてだった。二人でレオナに対してだ。笑顔でこう言ったのである。
「さあ、どんどん飲めよ」
「そして食うんだ」
 言いながらレオナの皿にパスタを盛りワインも注ぐ。
「もう飽きる位な」
「楽しめよ」
「はい、そうさせてもらいます」
 二人に応えてだ。レオナもだった。
「今も」
「よし、じゃあほらな」
「飲むんだ」
 ラルフはさらにだ。パスタを盛りだ。クラークも杯に極限まで注ぎ込む。その並々と注がれた紅い酒を見てだ。レオナはこんなことを言った。
「ワインですが」
「結構飲んでるよな」
「好きなんだな」
「身体にいいですし」
 まずはここから話すレオナだった。ワインについて。
「それに美味しいですね」
「大人の味っていうかな」
「そうした感じだからな」
「はい。何か飲んでいると」
 どうなのかというのだ。
「それだけで大人になった気持ちにもなります」
「ビールもいいけれどワインもな」
「かなりおつなものだよ」
 二人もこう言ってだ。さらに飲むのだった。そしてウィップもだった。真っ赤になったその顔でだ。にこにこと笑ってだ。三人に話したのである。
「お酒は病みつきになりますね」
「かといってもアル中にはならないようにな」
「それは注意しろよ」
「はい、わかっています」
 こう返すウィップだった。
「お酒は飲んでもですね」
「飲まれるな、な」
「それはわかってるな」
「はい、どんなに飲んでもそれはありません」
 ウィップ自身も言う。
「ワインについても他のお酒についても」
「バーボンなんかは強くてな」
 ラルフはバーボン、彼の国のアメリカの話をはじめた。
「油断してるとすぐに酔い潰れるからな」
「ウイスキーもだな」
 クラークはこの酒の話をする。
「あれもきついからな」
「ストレートで飲んだら余計にな」
「くるからな」
「強いお酒には注意ですね」
 レオナもそのことを言う。
「身体にも」
「ああ、ウォッカは特にな」
「あれはもう爆弾だよ」
「ちょっと飲んだらノックアウトされるからな」
「とんでもなく寒い場所でないと飲むのは危険なんだよ」
「ウォッカといいますと」
 ウィップの知っているウォッカはというと。
「あれで火を噴くこともできますよね」
「殆どアルコールだからな」
「火を点けたら燃えるからな」
 それがウォッカなのだ。
「本当に火を噴くことできるからな」
「そうした酒だからな、あれは」
「それで芸もできますね」
 ウィップはこんなことも言う。
「要注意ですね」
「それやって火傷するなよ」
「顔にかかったりするからな」
「ちょっと風が吹いたらだからな」
「来るぜ。火は」
 ラルフは確信していた。
「今は空気が乾いているからな」
「そうですね。最近雨も降っていませんし」
「しかもこの時代は船も陣地も木だしな」
 ウィップに応えてだ。ラルフはさらに話す。
「弓矢にしても槍にしてもな」
「火を使えば一発ですね」
「ああ、大炎上だ」
 ラルフは真顔で言った。
「それでそこで風でも起こせばな」
「陣全体がキッチンだな」
 クラークはわざとジョークを入れたが顔は真剣なものだった。
「洒落にならないな」
「ましてや奴等には火を使う奴もいる」
 ラルフはクリスのことを念頭に入れていた。
「来ない筈がないんだよ」
「それに対する備えはしていますが」
「それでも来るな」
 今度はレオナに応えて言うラルフだった。
「間違いなくな」
「そうなりますね。やはり」
「さて、どう来るのかわかっているならな」
 ここでは明るくだ。ラルフは仲間達に言ってみせる。
「やり方は幾らでもあるさ」
「幾らでもですか」
「ああ、水も用意してある」
 見ればだ。あちこちに木のバケツが置かれそこには水がなみなみと入れられている。
「それに船も離してるんだ。そうそうな」
「火で来られてもな」
「大丈夫さ。そして奴等がレオナのところに来る」
「そこでか」
「返り討ちにしてやろうぜ」
 不敵にクラークに返す。
「御前もそう考えてるだろ」
「敵の裏をかく」
 クラークも楽しそうに笑って述べる。
「それが戦争だからな」
「そういうことさ。それじゃあな」
「ああ、やってやるか」
「やってやろうな」
 多くの戦いを共に戦ってきた戦友同士が話す。そうしてだった。
 ラルフはまた一杯飲みだ。自分でワインを注ぎ込もうとする。だがここでだ。
 レオナがそっとこう言ってきたのだった。
「待って下さい」
「何だ?入れてくれるのか」
「はい」
 そうするとだ。レオナは実際にワインが入っている瓶を取ってだ。 
 そこからラルフの杯に注ぎ込む。そうしたのである。
「どうぞ」
「悪いな。けれどな」
「けれどとは?」
「レオナもこういうことをしてくれるようになったんだな」
 笑ってだ。こう言ったのである。
「変わったな」
「変わったのですか」
「前はずっと表情だって乏しくてな」
 それでだというのだ。
「しかも戦い以外をするってこともな」
「なかったからな」
「ああ、本当に機械みたいだった」
 それがかつてのレオナだったというのだ。クラークと二人で話す。
「それがここまで変わるなんてな」
「私も変わっていっているのですね」
「人間になってきたよ。それにな」
「それに?」
「可愛くなったな」
 レオナにだ。こうも告げたのである。
「それもかなりな」
「それは」
 そう言われるとだ。レオナは顔を赤くさせた。そうしてこう言ったのである。
「私はそんな」
「こう言われて赤くなるのもな」
「なかったからな」
 クラークがまた言う。
「何言われても感情がなくてな」
「機械みたいな返事ばかりでな」
「そこも変わってきてるからな」
「今のレオナならな」
「ああ、オロチにはならないさ」
 それもだ。大丈夫だというのだ。
「本当に変わったからな」
「人間になったんだよ」
「人間ですか」
 レオナは二人の話を聞いて少し驚いた様になって言葉を出した。
「今の私は」
「ああ、人間さ」
「それになったからな」
「最初から人間ではなくですか」
 人間のことについてだ。ラルフとクラークは話した。彼等の考えを。
「人間ってのは姿形じゃない」
「心なんだよ」
 そこにあるというのだ。人間はだ。
「どんな姿形をしていてもな。心が人間ならな」
「そいつは人間なんだよ」
「心ですか」
「ああ、だから御前は人間なんだよ」
「人間の心を手に入れたからな」
 微笑みつつだ。二人はレオナに話していく。
「人の心がある人間だよ」
「もうオロチじゃないんだ」
「そうですか」
「つまりですね」
 ウィップもだ。一旦皿を空にしてから話す。
「オロチは人間ではないのですね、彼等は」
「人間の心がないからな」
「そうなるな」
 それもまたそうだとだ。二人はウィップにも述べる。
「あっちにいる連中は全部そうだな」
「人の心がない、つまりだ」
「人間ではないですか」
 ウィップもだ。このことを今わかった。そうしてだ。
 自分でパスタを皿に入れて食べながらだ。話すのだった。
「では私は人間として」
「戦うんだな」
「そうするんだな」
「大佐達と一緒に」
 微笑みだ。ラルフを階級で呼んで答える。
「そうさせてもらいます」
「ああ、じゃあこの世界の戦いもな」
「気合入れて生きるぞ」
「わかりました」
 ウィップも笑顔で、少女の笑顔で応えてだった。仲間達と共にいた。その中でだ。
 劉備は己の天幕の中でだ。孔明の話を聞いていた。孔明はこう劉備に話してきた。
「星の動きを見ていますと」
「何かあったの?」
「はい、大きく動いています」
「どういった感じで?」
「南東から北西へ」
 方角をだ。孔明は述べたのだった。
「大きく動いています。妖星達が」
「南東から北西っていうと」
 劉備もだ。孔明の深刻な顔の言葉を見ながら述べた。
「敵陣から私達の陣によね」
「はい、つまりは」
「来るのね」
 ここでだ。劉備も真剣な顔になった。
「決戦なのね」
「桃香様、何があろうともです」
 劉備の傍らにいて常に護衛を務めている魏延が強い声で言ってきた。
「桃香様は私が御護りします」
「御願いね、焔耶ちゃん」
「はい、この焔耶一命にかえても」
「それとです」
 今度は鳳統が話す。彼女もいるのだ。
「戦いはこの赤壁で終わりではなくなりそうです」
「えっ、そうなの」
「はい、星の動きを見ていますと」
 鳳統もだった。星を見られる。それで言うのである。
「こちらの星達は何一つとして落ちませんが」
「それはいいことよね」
「はい、そして妖星達もです」
 こうだ。鳳統は眉を顰めさせて話す。
「全く落ちていません」
「全くですね」
「はい、ですから戦いはです」 
 赤壁で終わらないというのだ。
「そうなりそうです」
「そうなの。まだ戦いが続くのね」
 劉備は暗い顔になり述べた。
「早く終わって平和になって欲しいのに」
「平和は勝ち取るものです」
 魏延は両手を拳にして強い声で言った。
「ですから我々も」
「勝ち取るのね」
「はい、そうしましょう」
「少なくともあの人達の好きにさせたら」
 劉備はこれまでの司馬尉達との多くの戦いや暗躍のことを思い出してだ。この答えを出した。答えはそれしか見出せなかった。
「この世界は」
「そうです。全てが破壊されます」
「そうなってしまうことは間違いありません」
 孔明と鳳統もこのことを言う。
「ですから。何としても勝ちましょう」
「彼等に」
「そうね。絶対にね」
「それとです」
 徐庶もいた。彼女もまただった。
「私も星を見ていたのですが」
「黄里ちゃんは何を見たの?」
「私達の傍に黄色い巨大な星が現れました」
「黄色の?」
「そして青と赤、白い星達を護る様な場所にいました」
 そうなっていたというのだ。
「その星が現れたのです」
「そうなの」
「はい、この星が誰なのかはわかりませんが」
「一つ大きなことをするのね」
「その様です」
「他に誰かいるのかしら」
 劉備は少し考える顔になって述べた。
「ええと。そういえば月ちゃんが何か」
「そこまではわかりませんでした」
 徐庶もだ。首を捻り困った顔で述べた。
「ですが悪い星ではありませんでした」
「それはなのね」
「何をするのかはわかりませんが」
 星達も何かをだ。劉備達に知らせていた。戦いのこと、そしてまた誰かが来ることをだ。彼女達に静かに知らせていたのだった。


第百二十話   完


                         2011・10・20



開戦早々に緊迫した事態に……と思ったんだが。
美姫 「あの妖怪、もとい化け物……じゃなくて、あの二人の登場でちょっと気が抜けた感じになったわね」
おまけに敵陣の被害がもう甚大だしな。
美姫 「それによって少しは余裕ができたのは良い事よね」
確かにな。とは言え、それでもどうにか陣を立て直したし。
美姫 「まだまだ戦いは続くわね」
どんな結末が待つのか楽しみです。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る