『オズのモジャボロ』




             第十一幕  ブリキの城で

 一行はカドリングの国からです、川を下ってなのでした。
 ウィンキーの国に向かいます、一行を乗せている船は川をどんどん下っていきます。その船の中で、でした。
 モジャボロは皆にです、こう言いました。
「スクーグラーの国のすぐ傍にこの川があってね」
「ウィンキーの国にですね」
「行くことが出来るんですね」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「スクーグラーの国に行くって決めた時にもう決めていたんだ」
「ウィンキーの国に行くならですか」
「この川を使おうって」
「そうだよ。移動には川も使えるからね」
 船を使ってです、今の彼等の様に。
「だからね」
「川はいいですよね」
 しみじみとした口調で、でした。ナターシャはモジャボロに微笑んで言いました。
「寝ていても動きますから」
「そうそう、歩いていたら寝ていると動けないよね」
「けれど船は違いますね」
「寝ている間も動いてくれるよ」
 船の方で、というのです。
「特にこの船はね」
「スクーグラーさんの船じゃないんですか?」
 恵梨香がモジャボロに船のことを尋ねました。
「この船は」
「違うよ、グリンダの船だよ」
「じゃあ魔法の船ですね」
「そうだよ、自分で動いてくれるね」
「カドリングからウィンキーへ行き来する為に」
「グリンダが作ってくれたんだ」
 そうだったというのです。
「それで今僕達もね」
「この船で、ですね」
「ウィンキーの国に行くんだ」
「そうですか、それじゃあ」
「うん、ウィンキーまではすぐだよ」
 本当に寝ていても船が動いてくれてです。ウィンキーの国に行ってくれるというのです。
「そしてウィンキーの国に着いたら」
「かかしさん、木樵さん達と合流して」
「それからエメラルドの都に行こうね」
「わかりました」
 恵梨香はモジャボロに笑顔で応えました、そしてでした。
 ずっと歩いての旅を楽しんでいた一行は今度は船旅を楽しむのでした、船はどんどんウィンキーに向かっていきます。
 その中で、です。カルロスは目を細めて皆に言いました。船の左右はカドリングの赤い世界が広がっています。
「川はいいよね」
「そうね、カルロスのお国もね」
「川があるから」
 こうナターシャに答えます。
「船で皆移動しているよ」
「アマゾン川だったわね」
 ナターシャはこうカルロスに応えました。
「ブラジルの川は」
「そうだよ、あの大きな川だよ」
「あの川はアマゾンのジャングルにあるから」
「色々な動物もいてね」
「皆が船で行き来していて」
「そう、皆の役に立っているんだ」
 それがアマゾン川だというのです。
「凄くね」
「そうね、貴方の国でもね」
「ロシアでもなんだね」
「ええ、そうよ」
 ナターシャは微笑んでカルロスにそうだと答えました。
「私の国でもね」
「川は凄く役に立つよね」
「こうして今みたいに船を使って皆行き来するから」
 だからだというのです。
「洗濯も出来て飲み水にもなってくれて」
「しかもお魚も獲れてね」
「いい場所よ」
 そこが川だというのです。
「川という場所はね」
「アメリカでもそうだよ」
「中国でもね」
 ジョージと神宝も言ってきました、ここで。
「川はいいものだよ」
「皆を助けてくれるよ」
「アメリカもミシシッピーに随分助けられているよ」
「黄河とか長江がないと中国はどうなっていたか」
 二人も川は役に立つと言うのです、そして。
 恵梨香もでした、こう言いました。
「川ね、日本だと淀川とか」
「日本でもだよね」
「川は皆の役に立ってるわよね」
「行き来に使えてお水をくれて」
「お魚も獲れて」
「そうよね、川って有り難いわ」
 しみじみとしてです、恵梨香も言うのでした。そして五人のお話を聞いていたモジャボロも彼等に言うのでした。
「オズの国も同じだよ」
「川が役に立っていますね」
「凄く」
「そうだよ、オズの国にも川が一杯あってね」
 そうしてだとです、五人ににこにことしてお話をするのでした。
「凄く役に立ってくれているよ」
「そうですね、どの国でもですね」
「川は役に立ってくれていますね」
「私達の世界と一緒で」
「今もこうしてね」
 川を使っています、モジャボロ達にしても。だからこそ言うのです。
「いい感じだよ」
「本当にそうですね」
「移動も一瞬ですし」
「さて、それじゃあね」
 また言うモジャボロでした。
「木樵さんのお城にはすぐだよ」
「この川を進んでいけば」
「ブリキの木樵さんのお城にもですね」
「うん、行けるよ」
 本当にです、船で川を下っていけばというのです。
「寝ていても行けるから」
「今は船旅をですね」
「楽しめばいいんですね」
「そうだよ、じゃあお話をしたり飲んだり食べたりしてね」
 そうしてというのです。
「船旅を楽しもう」
「はい、わかりました」
「今は」
 五人もです、笑顔で応えてなのでした。
 今は船旅を楽しく過ごすのでした、やがて両岸の赤がj綺麗に黄色の世界に一変してでした。夜も朝も船旅をしていって。
 遂にでした、皆の左手にお城が見えてきました。そのお城はといいますと。
 石や木ではなくです、ブリキで出来ています。ブリキが日の光を反射してとてもきらきらとしています。そのお城を見てでした。
 ドロシーは明るいお顔で五人にこう言いました。
「あのお城がね」
「ブリキの木樵さんのお城ですね」
「ウィンキーの皇帝の」
「ええ、そうよ」
 まさにです、あのお城こそがというのです。
「着いたのよ、木樵さんのところにね」
「本当にあっという間でしたね」
「あっという間に着きましたね」
「そう、川旅はあっという間に終わるものよ」
 ドロシーは前から来る爽やかな風を受けてでした、そうして。
 身体を大きく左右に延ばして明るい笑顔になってこう言うのでした。
「じゃあね」
「はい、今から」
「木樵さんのところに」
 行こうとお話をしてでした、そのうえで。
 一行はお城のすぐ傍の波止場に船を停めました。すると船は一行が降りると自然にカドリングの方に向かいました。
 そしてです、その船を見送ってからです。
 一行はブリキのお城に向かいました、すると。
 お城に入るとです、そこになのでした。
 ブリキの花壇と花達、泉があってです。
 ドロシーやモジャボロ、かかしにオズマに臆病ライオンといったオズの名士達のブリキの像もありました。勿論木樵のものもあります。
 その像を見てです、五人はしみじみとして言いました。
「まさにですね」
「木樵さんのお城ですね、ここは」
「何でもかんでもブリキで」
「ぴかぴかに光っていて」
「それにドロシーさんの像もあって」
 そのブリキの像を見ながらの言葉です。
「やっぱりドロシーさんは木樵さんのお友達ですね」
「しかもオズの国の英雄なんですね」
「私英雄じゃないわよ」
 ドロシーは笑って英雄という言葉は否定しました。
「全然ね」
「いえ、違いますよ」
「やっぱりドロシーさんは英雄ですよ」
「悪い魔女を二人もやっつけてオズの国の沢山の人を救った」
「英雄じゃないですか」
「私が狙ってやったんじゃないわよ」
 それは違うというのです。
「だからね」
「それで、ですか」
「ドロシーさんは英雄じゃないんですか」
「じゃあ只の女の子ですか?」
「ドロシーさんなんですね」
「そうよ、私は私よ」
 これまでと変わらないです、ドロシーだというのです。
「英雄でもないわよ」
「そうですか、英雄じゃなくて」
「ドロシーさんですか」
「いつもと同じ」
「そうよ、けれど木樵さんはね」
 皆が今いるブリキの城の主はいうのです。
「英雄よ、かかしさん達と同じ」
「そうですか、木樵さんはですか」
「英雄なんですね」
「そう、とても優しくて頼りになるね」
 そうした英雄だというのです、ブリキの木樵は。
「あんないい人はそうはいないわよ」
「ははは、僕も英雄なんかじゃないよ」
 ここで、でした。一行が今いる像達の前から少し離れた場所から声がしてきました。
「僕も只の木樵だよ」
「あっ、そのお声は」
「木樵さんですね」
「そうだよ、皆久しぶりだね」
 こう言ってでした、木樵が皆のところに出て来てなのでした。
 笑顔で、です。こう皆に言うのでした。
「ようこそ、我が城に」
「木樵さん、お久しぶりです」
「お元気そうで何よりです」
「僕は何時でも元気だよ」
 木樵は一行ににこにことして言うのでした。
「何しろ怪我も病気もしない身体だからね」
「だからいつもですか」
「元気なんですね」
「うん、そうだよ」
 こう言うのでした。
「僕はね」
「そうですね、それでなんですけれど」
「ここに来たのは」
「あれだね、今から一緒にエメラルドの都に行くんだね」
「ええ、そのお誘いにね」
 ドロシーがにこりとして木樵にお話しました。
「皆で来たのよ」
「有り難いね、それじゃあね」
「今から一緒にエメラルドの都に行きましょう」
「そうしよう、幸い今お城にかかし君も来ているんだ」
「あの人もなのね」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「一緒に行こう、かかし君とも」
「かかしさんは何処にいるのかしら」
 ドロシーはかかし、彼女にとっては木樵と並ぶ旧友もここにいると聞いて笑顔になりました。そしてなのでした。
 そのうえで、です。こう木樵に尋ねたのでした。
「お城の中かしら」
「そうだよ、じゃあね」
「それじゃあよね」
「そう、今からお城の中に入ってね」
 そうしてというのです。
「かかし君と会おう」
「そうしましょう、けれどかかしさんも来ているなんて」
「そうなんだ、たまたまお城まで遊びに来ていたんだ」
 かかしと木樵は親友同士です、ですからお互いのお家を行き来しています。そうしていつも楽しく遊んでいるのです。
 それで、です。今もだというのです。
「いいタイミングだったね」
「そうね、後でかかしさんのお城にも行くつもりだったけれど」
 それがというのです。
「丁度よかったわ」
「そうだね、では中に入ろう」
 こうしてでした、皆はブリキの木樵のお城に入りました。勿論お城の中も全てブリキです。椅子もテーブルも他の家具もです。
 その中を進んで、でした。そのうえで。
 お城の皇帝つまり木樵との謁見の間に入るとでした、そこにはです。
 かかしがいました、かかしは一行の姿を見ると恭しく頭を下げてからそのうえでこう挨拶の言葉を述べてきました。
「お久しぶりです、皆様方」
「かかしさんお久しぶりです」
「かかしさんもお元気そうですね」
「うん、この通りね」
 にこにことしてです、かかしは皆に言うのでした。
「僕は何時でも元気だよ」
「ええ、私も会えて嬉しいわ」
 笑顔で言ったドロシーでした、かかしに。
「それでだけれど」
「さて、これからエメラルドの都でオズマのパーティーが開かれるね」
 かかしはドロシーににこりと笑って言いました。
「そうだね」
「ええ、だからね」
「皆と一緒にだね」
「エメラルドの都に行かない?」 
 ドロシーもです、かかしににこりとして言うのでした。
「そうしようと思ってお誘いに来たのだけれど」
「最高の申し出だよ」
 これがかかしの返事でした。
「これ以上はない位にね」
「それじゃあね」
「一緒にエメラルドの都に行こう」
 かかしは自分からも言いました。
「今からね」
「それじゃあ今すぐにかな」
 トトがかかしにこう言いました。
「出発かな」
「いや、もうお昼だよ」
 かかしはそのトトにすぐに答えました。
「だからね」
「今はなんだ」
「そう、僕と木樵君はいいけれど」
 この人達は食べる必要はありません、ですがそれでもだというのです。
「君達は違うからね」
「お昼御飯は用意出来るよ」
 木樵が笑顔で皆に言ってきました。
「何でもね」
「えっ、木樵さんのお城でもですか?」
 カルロスは木樵の今の言葉に目を丸くさせて木樵に問い返しました。
「お料理が出るんですか」
「確かに僕は何も食べないよ」
 木樵はカルロスの問いに答えました。
「けれどこのお城に住んでいるのは僕だけじゃないじゃない」
「むしろ何も食べない人はですね」
「そう、僕だけだよ」
「時々僕も来るけれどね」
 かかしも入れると二人です、このお城で何も食べなくていい人達はこの人達だけなのです。そしてなのです。
「このお城には僕に仕えてくれている沢山の人達がいるじゃないか」
「その人達の為のですか」
「そう、食べものがあってね」
 そしてだというのです。
「お料理を作るシェフの人達もいるよ」
「そうですか」
「うん、それじゃあね」
 それではとです、こう言ってなのでした。
 木樵はドロシーとモジャボロにトト、それに五人の子供達になのでした。笑顔でお誘いしました。
「じゃあ今からね」
「はい、お昼ですね」
「お昼御飯をですね」
「ご馳走させてもらうよ」 
 こう言うのでした。
「お城の皆と同じメニューでいいかな」
「はい、是非共」
「そのメニューでお願いします」
「うちのシェフは。僕は彼のお料理は食べたことがないからわからないけれど」
 このことは仕方ありません、何しろ食べる必要が全くない人ですから。
「家臣のj人達は皆シェフのお料理をいつも美味しいと言っているよ」
「そしてそのお料理をですね」
「今から」
「うん、是非食べてね」
 こう言ってなのでした、木樵はかかしと共に一行を食堂に案内してくれました。勿論食堂の中も全部ブリキで出来ています。
 ブリキのテーブルに椅子にです、装飾品があります。そのブリキの食堂の中に黄色い制服の人達がいます、その人達がです。
 モジャボロ達を見てです、笑顔で挨拶をしてきました。
「やあお久しぶりです」
「お元気そうですね」
「ようこそ我等の皇帝の城に」
「こんにちは」
 ドロシー達も彼等に笑顔で応えます、そしてでした。
 木樵はその黄色い制服の人達つまりこのお城で自分に仕えてくれている人達に穏やかな声でこう言ったのでした。
「これからエメラルドの都に行く予定だけれど」
「モジャボロさん達と一緒に行かれるんですね」
「そしてかかしさんと」
「うん、そうすることになったよ」
 こう笑顔で、です。彼等に言うのです。
「お客さん達がお昼を食べたらね」
「そうですか、わかりました」
「では陛下がお留守の間は」
「うん、留守番を頼むよ」
 笑顔で、です。木樵は家臣の人達に言いました。
「それじゃあね」
「はい、わかりました」
「ではお任せ下さい」
「宜しくね。それでだけれど」
 木樵は家臣の人達に留守のことを任せるとでした。
 あらためてです、家臣の人達に対してこう言いました。
「モジャボロ君達のお料理も出してくれるかな」
「わかりました、それでは」
「すぐに」
「席も用意してね」
 こちらもなのでした、そうして。
 一行はそれぞれ用意してもらった席に座ってでした、お昼を食べることになりました。まずはコンソメスープが出て来てです。
 黄色いレタスとトマトにセロリ、アスパラガスのサラダが出て来ました、ドレッシングまで綺麗な黄色です。
 続いて黄色い鮭のムニエル、付け合わせはとても大きなマッシュポテトです。マッシュポテトも黄色です。
 鳥を一羽丸ごとローストにしたものも黄色です、何もかもが黄色です。
 そして黄色のパンもあります、苺のジュースも黄色です。
 その何もかもが黄色いお料理を食べてなのでした。カルロスは笑顔で言いました。
「いや、マンチキンと同じだね」
「カドリングともね」
「一緒だよね」
 ジョージと神宝も食べつつカルロスに応えます。
「色は僕達の世界と違うけれど」
「美味しいね」
「黄色いお料理には最初はびっくりするけれど」
「何でもないね」
「結局ね、色は表面だけなんだよ」
 かかしも木樵も食べていないのでそれぞれの席には何もありません、ですがかかしはそこにいてこう言うのでした。
「味は変わらないんだよ」
「僕達の世界のお料理とですね」
「変わらないですね」
「そうだよ、変わらないよ」
 全く、というのです。
「君達と一緒でね」
「肌や髪の毛、目の色が違ってもですね」
「中身は変わらない」
「そういうことですね」
「この鶏肉にしてもだよ」
 かかしは皆がメインディッシュで食べているそれを見つつ言うのでした。
「色は違うね、それぞれの国で」
「ですがとても美味しいです」
「最高のローストチキンです」
「それだよ、マンチキンの青いものもカドリングの赤いものもね」
 もっと言えばエメラルドの都のものもギリキンの紫のものもです。
「一緒だよ」
「色が違うだけですね」
「全く同じですね」
「そうだよ、同じだよ」
 全く、というのだ。
「オズの国にいればよくわかるよ」
「そうですね、外の色はただの色ですね」
「それだけのことですね」
「そのことがわかるととても大きいよ」
 かかしはとても聡明な笑顔で五人にお話します。
「オズの国の人達もそうだね」
「そういえばそうですね」
「色々な人達がいます」
「白人の人もいればアジア系の人も」
「黒人の人も」
「黄色い食べものも緑の食べものも美味しいんだ」
 味は違っても、というのです。
「では今もね」
「はい、楽しくです」
「食べさせてもらいます」
 こうしてでした、皆はその黄色いお料理も笑顔で食べました。デザートはアイスクリームにお菓子や果物が色々と入ったパフェですがそのパフェも黄色です。その黄色のパフェも他の国のパフェと同じ味でした。
 その黄色のフルコースを全部食べてからです、木樵は皆が食べ終わったと見て満面の笑顔で言いました。
「ではね」
「はい、これからですね」
「エメラルドの都にですね」
「うん、行こう」
 食べ終わってからの言葉でした。
「そうしようね」
「はい、わかりました」
「これから」
「では君達後は宜しくね」
 木樵は家臣の人達にも声をかけました。
「留守を頼むよ」
「お任せ下さい」
「お城は綺麗にしておきます」
「ピカピカに頼むよ」
 木樵のお城はいつもピカピカです、油が塗られて磨かれてです。毎日木樵の身体と一緒にそうされています。
 そのことをです、木樵は家臣の人達に留守の間もお願いするのです。
「そうしてね」
「毎日そうしておきます」
「陛下が戻られた時に眩いお城を見られるでしょう」
「そのことを楽しみにしているよ。それではね」
 こう家臣の人達に言ってでした、そのうえで。
 木樵は皆と一緒にでした、お城を発ちました。モジャボロはお城を振り返りながら笑顔でこんなことも言いました。
「さらば、また来る日まで」
「ははは、何時来てもいいよ」
 木樵はそのモジャボロに笑顔で返しました。右肩には斧が担がれています。
「君が好きな時にね」
「では立ち寄った時にね」
「うん、何時でも来て楽しんでくれたらいいよ」
 これが木樵の言葉です、そうしてです。 
 一行は黄色い世界の中で黄色い煉瓦の道を進んでいきます、黄色い煉瓦の道はウィンキーの国でも同じです。
 ただ、です。黄色の世界の中なので。
 黄色い煉瓦の道は今一つ見えにくいです、それでナターシャは少し苦笑いになってこうしたことを言いました。
「ちょっとばかりね」
「見えにくいわね」
 恵梨香がナターシャに応えました。
「どうにも」
「黄色い中だからね」
「他の国では違うけれど」
「黄色い煉瓦の道はね」
「ウィンキーでは見えにくいわね」
「どうにもね」
 こうお話するのでした、その黄色の道の中で。
 このことは五人共です、黄色い煉瓦の道が黄色の草の中にあって道が今一つ見えにくくて少し戸惑っています。
 その中で進んでいます、ですがその五人にです。
 トトがです、とことこと前を進みながら言ってきました。
「見えにくいならね」
「見えにくいなら?」
「っていうと?」
「歩いてね」
 そうしてだというのです。
「足で確かめながら進むといいよ」
「足でなんだ」
「確かめながらなんだ」
「そうして進むといいんだ」
「同じ色の中でも」
「煉瓦と草じゃ踏む感覚が違うじゃない」
 このことから言うトトでした。
「全く」
「そうだね、確かに」
「煉瓦は固いけれど草は柔らかいから」
「そこは全く違うわね」
「同じ黄色でも」
「だからね」
 トトはドロシーの横をとことこと進みながら皆にお話してきます。
「しっかりと確かめながら進むといいよ」
「自分の足で」
「それぞれ」
「そうだよ、それでね」
 しかもだというのです。トトの言葉は続きます。
「もっと。じっくり見るとね」
「じっくり?」
「じっくりっていうと?」
「同じ黄色でも煉瓦と草は違うよ」
 こうも言うのでした、その黒い身体を黄色い世界の中にこれ以上はないまでにはっきりと映しだしながら。
「それに黄色で色彩が違うね」
「そういえば」
「微妙にだけれど」
「煉瓦の黄色と草の黄色は違うわ」
「どうにも」
「色合いが」
「そうだよね、同じ黄色でもね」 
 黄色は黄色です、それでもだというのです。
「違うね」
「そうだね、だからちょっと見てもわからなくてもね」
 トトもです、そのそれぞれの黄色を見ています。犬でもこちらの世界では色がはっきりとわかるからこそ。
「よく見ればね」
「煉瓦の黄色と草の黄色は違っていて」
「それで足で踏む感覚も違うんだ」
「ちょっと見ただけではわからなくても」
「わかるのね」
「そうだよ、僕もわかるし」
 それにだというのです。
「皆もね」
「そういえばよく見たら」
「足の感触を確かめたら」
「よくわかるね」
「実際に」
「そうなんだよ、黄色ばかりの中でもね」
 よくです、見て感触を確かめればというのです。
「わかるんだ」
「黄色い中でも」
「それでも」
「そうだよ、だからエメラルドの都までの道でもね」
「黄色ばかりの中でも」
「ちゃんと進めるのね」
「そうだよ、じゃあ行こうね」
 こう五人に行ってなのでした、トトはにこにことしてドロシーの横にいて進むのでした。そのトトを見てでした。
 ドロシーはです、ふとこんなことを言いました。
「ううん、トトもね」
「僕も?」
「ええ、よく喋る様になったわね」
「ずっと喋らなかったからね、僕は」
「けれどオズの国にいたらね」
「動物でもね」
「普通に喋ることが出来るから」
 どんな動物でもです、普通に喋ることが出来ます。
 ですがトトだけはです、ずっと喋らなかったのです。ドロシーもある日このことに気付いてトトに尋ねたのです。
「貴方だけ喋ることが出来なかったから」
「実は喋ることが出来たんだけれどね」
「あえてだったわね」
「何かね。僕が急に食べるとね」
 その時のことを考えてなのでした。
「ドロシーがびっくりするって思って」
「それでなのね」
「そうだったんだ」
 だからだったのです、トトはそう考えて喋らなかったのです。
「ずっとね」
「けれど実はだったのよね」
「うん、最初の冒険の時からね」
 今も一緒にいるかかしや木樵とはじめて出会ったあの旅の時からでした。
「僕は喋れたよ」
「ずっとね」
「そう、今みたいにね」
「そのことに気付いて」
 ドロシーもです。
「最初はどうしてトトだけと思って」
「真実がわかってだよね」
「やっぱりって思ったわ」
 トトも喋ることがわかってだったのです。
「そういうことねって」
「それで今はこうしてね」
「お話してるわね」
「普通にね」
「それにしてもだよ」
 ここで言ってきたのはかかしでした。
「僕達もトトとは長い付き合いだね」
「そうだよね、本当に」
「ドロシーと同じだけ大切な友達だよ」
「僕もそう思ってるよ」
「トトを見ているとね」
 かかしはにこりとして言うのでした。
「気持ちが和らぐよ」
「そうそう、犬や猫を見ているとね」
 木樵も言ってきましった。
「自然とそうなるね」
「不思議なことにね」
「犬や猫は見ているだけでそうさせてくれるよ」
 心を和やかにさせてくれるというのです。
「有り難い生きものだよ」
「トトは私の子供の頃からの友達よ」
 ドロシーにとってはまさにそうです、それこそまだカンサスにヘンリーおじさん達と一緒にいた時からのとても古い。
「もう凄く長い付き合いよ」
「そうだね、僕達と会う前からのね」
「ドロシーの最初のお友達だったね」
「今も続いているね」
 そこまでの古いお友達です。
「そうした友達だから」
「僕にとってもそうだよ」
「トトにとって私はなのね」
「最初のね。そして一番古い」
「友達なのね」
「僕ドロシーと一緒にいない生活なんて考えられないよ」
「私もよ」
 お互いに、です。このことは。
「考えられないわ」
「本当にそうだね」
「オズの国にいると私もトトも死ぬこともないから」
 それこそだというのです。
「ずっとね」
「これからも一緒だよ」
 お互いに笑顔での言葉です、そしてでした。
 モジャボロもです、しみじみとしてこう言いました。
「僕もずっと弟と一緒だからね」
「あっ、そういえばモジャボロさんって」
「そうよね」
 五人はここで思い出しました、モジャボロの家族のことを。
「弟さんがおられて」
「ノーム王に捕まっていて」
「それで今はね」
「助け出されてもらってね」
「一緒に住んでるのよね」
「そうだったね」
「うん、そうだよ」
 モジャボロは五人ににこにことしてお話します。
「僕達もずっと一緒だよ」
「弟さんとですね」
「永遠に」
「オズの国で死ぬことはないから」
 老いることもありません、ドロシー達はほんの少しだけ自分から年齢をあげていますが。
「僕達もなんだ」
「ずっとですね」
「弟さんとお二人で、ですね」
「オズの国におられるんですね」
「この国は特別だから」
 まさにお伽の国です、オズの国は。
「そうなんだ」
「まさに不老不死ですね」
「そうした国ですね」
「しかもかかしさんと木樵さんに至っては」
「それこそ食べる必要も飲む必要もないですよね」
「どちらも」
 五人は今度はかかしと木樵に顔を向けました。
「だから何もしなくてもですね」
「不老不死ですね」
「僕は火が怖いけれどね」
「僕も壊される危険があるよ」
 かかしと木樵もそれぞれ怖いものがあります、ですがそれでもです。
「けれど何も食べなくてもね」
「飲まなくてもね」
「全く平気だよ」
「寝る必要もないよ」
「ううん、何度お聞きしても凄いですね」
 しみじみとした口調で、でした。恵梨香は二人の言葉を聞いてそのうえでしみじみとしてこう言うのでした。
「かなり楽ですよね、それだと」
「そうかな、ただね」
「楽しみはその分ないかな」
 二人は恵梨香にここでこうしたことも言いました。
「飲んだり食べたりしてね」
「味わう楽しみはないね」
「寝る喜びも」
「寝ている間に夢を見ることもないよ」
「何しろ僕達はそうする必要が一切ないから」
「全く縁がないからね」
 だからです、そうしたことについての楽しみも知らないというのです。
「そのことはね」
「ちょっと寂しいかな」
「あっ、それって」
 二人の今の言葉を聞いてでした、恵梨香はといいますと。
 はっと気付いた顔になってです、こう言ったのでした。
「かなり寂しいんじゃ」
「夢って楽しいわよね」
 ドロシーも恵梨香に言ってきます。
「寝ること自体がとても気持ちいいから」
「そうですよね、けれどかかしさんも木樵さんも」
「そうすることがないからね」
 そもそもです。
「だからそうした気持ちよさも楽しみもね」
「知らないんですね」
「それってね」
「そうですよね、寂しいですよね」
「そうかも知れないわね」
「とはいっても知らないからね」
「最初からね」 
 二人はこう返します、木樵は最初は人間の身体でしたが今では完全にブリキの身体なのでそうなのです。
「だから楽しい、気持ちいいといってもね」
「知らないしこれからも縁のないことだから」
「嫉妬とかはないよ」
 かかしと木樵にしてもです。
「むしろ僕達にとっては都合がいいしね」
「そうそう、お腹が空くことも喉が渇くこともないし」
 木樵も言います。
「まして寝て休むこともない」
「幾らでも歩けるからね」
「僕達は疲れることもないしね」
「僕達にとって悪いことは何もないよ」
 何も食べなくても飲まなくても休まなくてもです。
「僕達はこれでいいんだ」
「満足しているよ」
「だから嫉妬とかはね」
「何もないよ」
「そうなんですね」
 恵梨香はかかしと木樵の言葉を聞いて頷いたのでした。
「かかしさん達にしても」
「そう、全くね」
「そうした感情はないから」
「わかりました、じゃあ」
「それじゃあだね」
「このことはいいとしてだね」
「はい、パーティーにも参加されますね」
 二人共勿論パーティーに出ます。確かに飲まなくて食べないですがそれでも十分過ぎる程楽しんでいるのです。
「そうですね」
「雰囲気は楽しめるからね」
「飲まなくても食べなくてもね」
 だからだというのです。
「安心していいよ」
「退屈とかは感じないから」
「ましてやオズマといられるんだよ」
「それだけで十分過ぎる程楽しいじゃないか」
「それで何が不満なのか」
「僕達には考えが及ばないよ」
 二人はこうも言うのでした、そして。
 ここで、です。かかしが皆にこう言いました。
「そうそう、ジャックも誘おう」
「あの人もですか」
「お誘いするんですか」
「そう、そうしよう」
 こう提案するのでした。
「ジャックもパーティーに呼ばれているからね」
「そうですね、丁度通り道にジャックさんのお家があるんですよね」
「そうですよね」
 五人はここで思い出しました、ジャックのお家もウィンキーの国にあるのです。木樵やかかし達と同じ様に。
「それじゃあですね」
「今から」
「そう、誘おう」
 是非にと言うかかしでした。
「今からね」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
 こうしてでした、皆は道中のジャックのお家にも向かうことにしました。そして暫く歩いているとでした。
 とても大きなカボチャが見えてきました、その周りは一面カボチャ畑です。ジョージはそのカボチャを見て言いました。
「パイにしたら美味しそうだね」
「いえ、煮っころがしよ」
 恵梨香はそのジョージにすぐに言いました。
「カボチャなら」
「それかな」」
「ええ、それがいいと思うけれど」
「いやいや、カボチャはお菓子にしても美味しいよ」
 神宝はその恵梨香にこう言いました。
「例えばプリンとか」
「そういえばカボチャのプリンってあるわね」
「あれはかなり美味しいよ」
 これが神宝の意見です。
「だからね」
「ううん、おかずにするだけじゃなく」
「そっちもいいじゃない」
「ポタージュにしてもいいわよ」
 ナターシャがお勧めするのはこちらでした。
「カボチャはね」
「あっ、あれも美味しいよね」
 カルロスがナターシャのその言葉に同意して頷きます。
「確かに」
「そうでしょ」
「何気にバーベキューにしてもいいし」
「カボチャは色々使えるわ」
「食べることについてもね」
「固いけれどね」
 それでもだと言うナターシャでした。
「カボチャはいい食べものよ」
「そうだよね」
「それであのとても大きなカボチャがね」
 ドロシーがカボチャ料理についてあれこれと話をはじめた五人にここで言うのでした。
「ジャックのお家よ」
「そうですね、あのお家が」
「ジャックさんのお家ですよね」
「そうよ、ジャックはあの中で暮らしているわ」
 まさにお家に使っているというのです。
「いいお家でしょ」
「はい、如何にもジャックさんのお家って感じで」
「面白いですね」
「あそこにジャkックさんがおられるのはよくわかります」
「納得出来ます」
「お似合いのお家ですね」
「そうでしょ、それじゃあね」
 ドロシーはにこりと笑って五人にお話しました、そして。
 モジャボロもです、皆に言いました。
「では今からジャックに会いに行こう」
「あのお家の中に入って」
「そうして」
「うん、そうしよう」
 こう言ってなのでした。皆は一緒にカボチャ畑の中を進みました。そうしてジャックのお家に入ろうとしましたが。
 ここで、です。急にカボチャ畑の中からでした。 
 白地にところどころに青いラインが入っているセーラー服を着た男の子が出て来ました、可愛らしい顔立ちに青いつぶらな瞳と癖のある金髪、その子を見てでした。
 モジャボロはすぐに笑顔になってです、その子に言いました。
「やあ、ボタン=ブライト」
「あっ、モジャボロさん」
 ボタン=ブライトと呼ばれた男の子は帽子を脱いで一礼して挨拶をしてきました。
「お久しぶりです」
「また面白いところで会ったね」
「そうですね」
「暫く見ていなかったけれど」
 何故見ていなかったかはです、モジャボロにはよくわかっていました。
 それで、です。ボタン=ブライトに笑顔で言いました。
「何処で迷子になっていたのかな」
「わかんなーーーい」
 これがボタン=ブライトの返事でした。
「気付いたらここにいたんだ、僕」
「いつものことだね」
「ドロシーさん達もいるんだ」 
 ボタン=ブライトはモジャボロの横にいるドロシー達に気付きました。
「それに他の子達も」
「私達の新しいお友達よ」
 ドロシーがにこりと笑ってボタン=ブライトに彼等のことをお話しました。
「オズの国に来てくれたね」
「そうなんだ」
「そうなの、この子達はね」
 ここで、でした。ドロシーはボタン=ブライトに五人のことをお話しました。ボタン=ブライトはドロシーの説明を聞いてから言いました。
「成程ね、皆オズの国の人になったんだね」
「住んでいる場所は元の世界だけれど」
 恵梨香がボタン=ブライトにお話します。
「私達オズマ姫にオズの国の市民にしてもらったの」
「そうなんだね、よかったね」
「けれどまさかここでボタン=ブライトに会えるなんて」
 そのことはといいますと。
「思いも寄らなかったわ」
「ボタン=ブライトはこうだよ」
「いつもね」
 かかしと木樵が恵梨香にお話してきます、ボタン=ブライトのことを。
「いつも迷子になっていてね」
「それで急に出て来るんだ」
「何時何処で出て来るかは誰にもわからないんだ」
「それこそボタン=ブライト自身にもね」
「僕は何時でもオズの国にいるよ」
 このことは確かです、ですが。
「けれど何時オズの国の何処にいるかは僕にもわからないよ」
「ううん、そのお話は聞いていたけれど」
「それでもよね」
 恵梨香とナターシャはボタン=ブライトの話を聞いて言いました。
「こうして実際に会うと」
「びっくりするわね」
「どうしてもね」
「いきなりだから」
「オズの国でのいきなりは普通だよ」
 モジャボロがこう二人に言いました。
「これで驚いたら話にならないじゃない」
「それはそうですね」
「確かに」
 五人もこのことはその通りだと頷きました。
「これまでもそうでしたし」
「ボタン=ブライトについてもですね」
「そうだよ、しかしこれは好都合かな」
 モジャボロは恵梨香とナターシャにお話してからです、こうも言うのでした。
「僕達にとっては」
「そうよね、ボタン=ブライトもね」
 是非です、彼もだというのです。ドロシーが応えます。
「パーティーにお招きしてね」
「そうして一緒に楽しもう」
「そうよね、じゃあね」
 ドロシーはモジャボロとお話してからでした、そのうえで。
 ボタン=ブライトにです、こう言いました。
「あの、よかったらね」
「どうしたの?」
「これからエメラルドの都でオズマがパーティーを開くの」
 このことをボタン=ブライトに言うのでした。
「ボタン=ブライトもどうかしら」
「僕もパーティーに参加していいんだ」
「貴方さえよかったらね」
「そうなんだ」
「それでどうかしら」
 ドロシーはあらためてボタン=ブライトに尋ねました。
「貴方さえよかったら」
「うん、参加していいんなら」
 それならとです、ボタン=ブライトはドロシーに答えました。。
「是非共ね」
「そうなのね、じゃあ貴方も一緒にね」
「オズマのパーティーにね」
「楽しませてもらうね」
「そうしてね」
 こうしてでした、ボタン=ブライトもパーティーに参加することになりました。そうしてそのうえでなのでした。
 ボタン=ブライトも入れた一行はジャックのお家に入ろうとします。ですが一行がお家の玄関の前に来たところで。
 不意にでした、その玄関が開いて。
 そこからジャックが出てきました、ジャックは皆を見て言ってきました。
「あれっ、皆どうしたの?」
「いやね、今からね」
「君をパーティーに誘おうと思ってね」
 かかしと木樵がそのジャックにお話します。
「それでここまで来たんだよ」
「オズマのパーティーに一緒に行こうと誘おうとね」
「今お家の中にお邪魔しようと思っていたけれど」
「君の方から出て来るとはね」
「丁度今出発しようとしていたんだ」
 ジャックは二人にこう答えました。
「エメラルドの都までね」
「あっ、そうだったんだ」
「今からだったんだ」
「うん、そうだったんだけれど」
 それでもだと言うジャックでした。
「まさか君達とここで会うなんてね」
「ちょっと意外だね」
「そうだね」
 ジャックはモジャボロにも応えました。
「この展開は」
「けれどここで会ったならね」
「うん、そうだね」
「一緒にね」
「エメラルドの都に行こう」
 こうしてでしった、ジャックは予想よりもあっさりと皆と合流しました。そうしてそのうえでなのでした。
 皆はウィンキーの国からエメラルドの都に向かい続けます、ウィンキーは相変わらず黄色のままです。ですが。
 ジャックのオレンジのカボチャ頭を見てです、カルロスが言いました。
「ジャックさんのカボチャですけれど」
「僕の?」
「はい、ウィンキーのカボチャですよね」
「そうだよ、ウィンキーのね」
「それでも黄色じゃないんですね」
 言うのはこのことでした。
「オレンジで」
「ああ、これね」
「はい、どうしてウィンキーのカボチャなのに黄色じゃないんでしょうか」
「僕はまた違うんだ」
 ジャックはそのカボチャ頭をにこりとさせてカルロスにお話します。
「元々ギリキンで生まれてね」
「紫の」
「そう、紫の頭の時もあれば」
「オレンジの時もですか」
「そう、あるよ」 
 今みたいにというのです。
「あとマンチキン、カドリングのカボチャも植えているから」
「じゃあ青や赤の時もあるんですか」
「そうなんだよ、僕はね」
「そうだったんですか」
「勿論緑もあるよ」
 こちらはエメラルドの都です。
「後このオレンジはね」
「そうそう、それはどうしてですか?」
「これもそうした種のカボチャなんだ」
「オズの五色以外の色もあるんですね」
「あるよ、確かにオズの国はそれぞれの国の色があるけれど」
 それでもだというのです。
「他の色があってもいいんだ」
「決まってはいないんですね」
「それぞれの国で好きな色はあるけれどね」
「それでもですか」
「うん、そうだよ」
 そうだというのです。
「オレンジがあってもいいんだ」
「あっ、そういえば」
 ここでなのでした、カルロスはドロシーを見ました。ドロシーは確かにエメラルドの都の王女様ですが。
 それでもです、その服はといいますと。
「ドロシーさんは白いドレスも他の色々な服も着られますね」
「今もよね」
「はい、そうですよね」
「勿論それぞれの色の服も持ってるわよ」
 オズの国のそれぞれの、というのです。
「けれどね」
「それでもですか」
「そう、どんな色の服を着てもいいのよ」
「ただ好きなだけですか」
「そうよ、それぞれの国でね」
 そうなっているというのです。
「ジャックの頭も同じよ」
「そういうことですか」
「そう、法律でこの色でないと駄目っていうのはないのよ」
「わかりました、そうなんですね」
「そうよ、かかしさんも今はウィンキーの国にいるけれどマンチキンの服でしょ」
 かかしとして作られたその時から変わっていないことです。
「そこは決まっていないから」
「オズの国の法律はそうなんですね」
「必要な法律以外はないわよ」
 つまりです、わずらわしい法律はないというのです。
「この国はね」
「それは有り難いですね」
「本当に」
 カルロスだけでなく他の四人も言います。そうした話をしてそのうえで、でした。
 一行はジャックの頭の色のこともわかりました、ウィンキーの国にあっても別に黄色でなくては行けないということもないことに。
 そうしたことを話しながらでした、皆でエメラルドの都にさらに進んでいきます。ですがいよいよエメラルドの都に入るというところで。
 気付けばでした、もう。
 ボタン=ブライトがいません、それでジョージが苦笑いになってそのうえで言いました。
「また、かな」
「うん。また、だね」  
 神宝も苦笑いで応えます。
「迷子になったんだね」
「いなくなったね」
「ははは、いつものことだからね」
 木樵も笑っています、何も心配していないお顔で。
「また会えるよ」
「エメラルドの都で会えます?」
「ちゃんと」
「これが不思議と会えるんだよ」
 ボタン=ブライトの常として、というのです。
「面白いことにね」
「そうですか、ボタン=ブライトだから」
「だからですか」
「心配しなくていいよ」
 全く、というのです。
「絶対に会えるからね」
「だからですか」
「彼のことは」
「そう、エメラルドの都で会えるから」
 本当にです、木樵は全く心配していません。至って楽観しているというよりも再会出来る時を楽しみにさえしています。
 そうしてでした、皆でなのでした。
 夜になり休みました、ですが。
 かかしと木樵、ジャックの三人はです。テントを出した皆にこう言うのでした。
「僕達は外にいるから」
「テントには入らないよ」
「だから僕達のテントはいいよ」
 それは全く、というのです。
「外でお星様を見ているよ」
「お喋りも楽しんでね」
「そうするからね」
「だから君達は君達でね」
「ゆっくりと寝てね」
「休んでいてね」
「わかりました、それじゃあ」
 ナターシャが応えます、そして。
 かかし達は実際にお外でなのでした。ずっといることになりました。
 ですが、です。ドロシーは三人にこう言いました。
「ただ、これから御飯だけれど」
「晩御飯はだね」
「一緒にいてだね」
「そう、雰囲気は楽しまない?」
 食事の和気藹々とした雰囲気をだというのです。
「そうしない」
「そうだね、それじゃあ」
「今から」
「そう、そうしよう」
 三人は食べることはしませんが皆が食べてにこにことしているお顔は大好きです、それでそのお顔を見てなのでした。
 三人で、です。こう言いました。
「それじゃあね」
「食事の場には同席させてもらうよ」
「一緒にね」
 こう話してです、そしてなのでした。
 三人は食事の場でも一緒になりました。そうして。
 モジャボロがテーブルかけを敷きました、今夜のお料理はといいますと。
 ナターシャがです、笑顔で言いました。
「いいわね、これは」
「ソーセージに」
「あとサラダに」
 こう言うのでした、恵梨香も。
 しかしです、そのサラダはといいますと。
 恵梨香がよくしているサラダとは違います、しかし。
 ポテトサラダに似ています、何か濃い感じです。そのサラダはといいますと。
「ロシアのサラダよね」
「これがまた美味しいのよ」
「それにスープも」
「スープもよね」
「ロシアのスープよ」
 このスープもでした、よく見れば。
 お野菜に鶏肉がたっぷりと入っています、ボルシチではないですが。その濃い感じの如何にも栄養がありそうなスープもなのです。
「これが美味しいのよ」
「じゃあこの焼いたお肉も」
「ええ、ロシアの焼き方よ」
「今日はロシア料理なのね」
「うん、ナターシャちゃんのお国のお料理を出したんだ」
 実際にだとです、モジャボロも恵梨香に答えます。
「今回はね」
「そうなんですね」
「君達のお国のそれぞれのお料理を出してね」
 そしてというのです。
「楽しみたいからね」
「だから今回はですか」
「ロシア料理ですか」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「これがね」
「パンもですね」
 ナターシャはパンも見てにこにことして言いました。
「これも」
「そう、黒パンだよ」
「これなんですよ」
 ナターシャは黒パンも手に取って笑顔になっています。
「このパンがロシアなんですよ」
「ロシアはやっぱり黒パンだね」
「そうです、それとジャガイモです」
 これも大事だというのです。
「あれも食べないと」
「ジャガイモは何処でも食べない?」
 こう言ってきたのは恵梨香でした。
「日本でも食べるし」
「そうそう、それこそね」
「どの国でも食べるよね」
「それも美味しく」
 男の子三人もこう言います。
「普通にね」
「色々とお料理して」
「そうして食べるよ」
「だから特にね」
 恵梨香はまたナターシャに言いました。
「そんな特別とは思わないけれど」
「それがなのよ」
「違うの?」
「ドイツでもそうだけれどロシアではジャガイモは主食と言ってもいいのよ」
「御飯やパンと同じだけのものなの」
「そう、だからね」
 それ故にというのです。
「ジャガイモは大切なものなのよ」
「だからなの」
「そのジャガイモがあるとね」
 勿論ジャガイモもあります、ナターシャは微笑んで言うのでした。
「嬉しいわ」
「そういうことなのね」
「そう、それじゃあね」
 今からというのです。
「食べましょう、ロシア料理ね」
「うん、それじゃあね」
 恵梨香もドロシーも男の子達も頷きました、勿論モジャボロとトトもです。
 そのうえでロシア料理を食べます、するとナターシャの言う通りにでした。
 とても美味しいです、恵梨香も微笑んで言いました。
「美味しいわ」
「そうでしょ。温まるでしょ」
「ナターシャちゃんはロシアではこうしたものを食べてるのね」
「ええ、そうよ」
 その通りだというのです。
「色々なメニューがあるけれどね」
「これもなのね」
「そうよ、じゃあこれをお腹一杯食べてね」
 そしてだというのです。
「エメラルドの都に行きましょう」
「そうね、それじゃあね」
 こうしたことをお話しながらです、そしてでした。
 五人でまずはパンやジャガイモ、それにです。
 お肉やサラダ、スープも食べました、そうしたものを全部食べてからでした。モジャボロは次はあるものを出してきました。
 それはクッキーの様な固いものにです、紅茶でした。
 紅茶を見てです、ドロシーがナターシャに微笑んで言いました。
「ロシアでは紅茶は」
「そうです、ジャムを舐めながら飲みます」
 そうするものだというのです、ナターシャ自身もこうお話します。
「そうします」
「中には入れないのよね」
「そうなんです」
「最初私ロシアではジャムを中に入れるって思ってたわ」
「私も」
 恵梨香もでしあ、このことは。
「それが違うのね」
「そうなの、中に入れても悪くないと思うけれど」
 それでもだというのです。
「ロシアでは本来は舐めながら飲むものなの」
「それがロシアンティーなのね」
「そうよ、それでね」
「このお菓子が」
「ケーキよ」
 クッキーみたいなそれがというのです。
「ロシアのケーキよ」
「そうよね、ロシアでは」
「さて、じゃあね」
「ええ、デザートによね」
「皆で食べましょう」
 ロシアの紅茶にケーキが、というのです。そして。
 そうしてでした、ナターシャはデザートのところにバナナやオレンジを見てでした。この食事の中で一番驚いて言うのでした。
「こうしたデザートがあるのが嬉しいのよ」
「バナナやオレンジがだね」
「ロシアは寒いですから」
 今度はモジャボロに答えるのでした。
「こうしたのはないんですよ」
「輸入されないから」
「されますけれど」
 それでもというのです。
「基本ロシアにないですから。ですから日本に来て普通にバナナやオレンジがありますから」
「そういえばナターシャちゃんバナナとかオレンジが大好きよね」
「ええ、ロシアにはあまりないものだから」
 恵梨香にもお話するナターシャでした。
「好きなだけ食べられるのが嬉しいのよ」
「そうなのね」
「バナナって美味しいわよね」
 勿論オレンジもです。
「こんな美味しいものがあるのね」
「それはちょっと大袈裟じゃない?」
「大袈裟じゃないわよ」
 そこは違うというのです。
「ロシア人にとっては暖かい場所のものは縁がないからね」
「だからバナナやオレンジがなの」
「赤や青のバナナやオレンジには驚いたけれどね」
 このことは少し苦笑いになって言うナターシャでした。
「それでもね」
「大好きなのね」
「ええ、大好きよ」
 マンチキンやカドリングのバナナ、オレンジもというのです。
「それじゃあね」
「これからもなのね」
「食べるわ、大好きだから」
 こう言って実際に今もバナナやオレンジをとても嬉しそうに食べるナターシャでした。恵梨香達に比べると表情が少ないこの娘ですが。
 それでも今は微笑んでいます、そのうえで食べながら言うのでした。
「やっぱり美味しいわ」
「バナナはいい果物よね」
 ドロシーもそのバナナを食べつつ言います。
「美味しいし身体にもいいし」
「そうですよね、最高の果物の一つです」
「さあ、オレンジも食べよう」
 モジャボロはオレンジをナイフで幾つにも切り分けながら言いました。
「それじゃあ」
「いいですね、それも」
「オレンジもだね」
「最高の果物の一つです」
 これもまた、と言うナターシャでした。
「大好きです、あと」
「あと。何かな」
「柿も好きです」
「ああ、あの果物」
「日本に来てはじめて食べました」
 その柿をというのです。
「あれは凄い美味しさですね」
「うん、オズの国にも柿はあるけれどね」 
「美味しいですよね」
「僕は確かに林檎が一番大好きだけれど」
 それでもだとです、モジャボロも言うのでした。
「確かに柿は美味しいね」
「そうですよね、はじめて食べた時にびっくりしました」
 日本に来たその時にというのです。
「日本にこんな果物があるのかって」
「そんなに驚いたの?」
 その日本人の恵梨香がナターシャに少し驚いた顔になって尋ねました。
「柿に」
「ええ、そうだけれど」
「ううん、確かに美味しいけれど」
 それでもだと言う恵梨香でした。
「そこまで美味しいとはね」
「それは恵梨香ちゃんがいつも食べてるからじゃないかしら」
「だからかしら」
「いつも食べてるとわからないものよ」
 幾ら美味しいものでもだというのです。
「だからね」
「私はそうなのね」
「そう、いつも柿を食べてるからね」
「そうなのね」
「恵梨香ちゃんいつも柿食べてるでしょ」
「秋にはね」
 柿の季節、あさにその時はとです。恵梨香も答えます。
「毎日みたいに食べてるわ」
「そうよね」
「そう、だからなのよ」
 そうだというのです。
「恵梨香ちゃんは実感がないのよ」
「柿の美味しさに」
「そういうものなのよ」
「そうなのね」
「ああ、それじゃあね」
 モジャボロは恵梨香とナターシャのお話を聞いてそれならと言うのでした。
「エメラルドの都でのパーティーでも出そうか」
「柿をですね」
「それをですね」
「そう、デザートに出そう」
 こう提案するのでした。
「折角だからね」
「じゃあ楽しみにしておきます」
「柿も」
「食べるものは種類も多い方がいいからね」
 だからだというのです。
「是非ね」
「勿論林檎もよね」
 ここでこう言ってきたのはドロシーでした。
「モジャボロさんの大好物の」
「うん、あれは外せないね」
 モジャボロにしてもでした、このことは。
「やっぱり」
「そうよね、じゃあね」
「林檎もね」
「アップルパイも出して」
 林檎から作ったお菓子もだというのです。
「食べましょう」
「そうそう、あとは林檎のお酒もね」
 それもだというのです。
「飲もう」
「私達は林檎のジュースね」
「他のジュースも用意してね」
「楽しもうね」
 飲むこともだというのです。
「是非共ね」
「そうしましょう、皆で楽しみましょう」
「さて、お昼を食べたら」
「明日はまただね」
 かかしと木樵は確かに食べても飲んでもいません、しかしです。
 二人はジャックと共に笑顔でいます、そうして言うのでした。
「エメラルドの都に向かって歩こう」
「楽しい旅を続けよう」
「あと少しだよ」
 ジャックも楽しげに言ってきました。
「あと少しでエメラルドの都だよ」
「今回の旅も楽しかったね」
「そうだったね」
 ジョージと神宝はジャックのその言葉に笑顔で応えました。
「楽しい場所に行って楽しい人に会えて」
「凄く楽しかったよ」
「その旅ももう少しで終わるかって思うと」
「残念かな」
「いやいや、まだ楽しいことがあるよ」
 トトがここでこう言うのでした。
「パーティーがね」
「あっ、そうだね」
「まだあったね」
「そうだよ、それにまたオズの国に来ればね」
 その時はというのです。
「楽しい旅が出来るよ」
「じゃあまたね」
 ここで、でした。カルロスも言うのでした。
「オズの国に来て」
「うん、一緒に楽しい旅をしようね」
「そうしようね」
 こうしたことをお話してでした、皆でなのでした。
 皆はこの日の食事も楽しみました。そうしてでした。
 次の日も歩きました、そしてでした。
 黄色の草原がぱっと緑に変わりました、モジャボロは緑の世界に入ったところでとても明るい笑顔になりました。
「入ったよ」
「エメラルドの都ですね」
「戻ってきましたね」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「あと少しよ」
「少しですね」
「エメラルドの都にですね」
「そう、行こう」
 パーティーが開かれるそこにというのです。
「オズマが待ってるわよ」
「はい、それじゃあ」
「今から」
 こうしたことをお話してでした、そうして。
 遠くにエメラルドの都が見えてきました、いよいよオズマが開くパーティーに皆で行くのでした。



今回は歩きだけじゃなく、船での移動も出てきたな。
美姫 「そうね。尤もすぐに到着しちゃったけれどね」
まあ、それは仕方ないさ。ともあれ、無事に木樵とかかしにも会えたし。
美姫 「後はエメラルドへと戻るだけかと思ったけれど」
途中でメンバーが増えたりして、行きよりも賑やかな帰り道になったな。
美姫 「そうね。道中も特に問題もなく、無事に戻ってこれたし」
言う事なしだな。いよいよパーティーが始まるのかな。
美姫 「そうでしょうね。そうなると、今まで出てきたキャラたちが総出演かしら」
さてさて、どうなるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
待ってます。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る