『オズのベッツイ』




               第四幕  薊の国

 羊飼いさんの好意で借りた飛行船でメリーゴーランド山脈を越えた一行はさらに進みました、その中ででした。
 カルロスがです、ベッツイに尋ねました。
「あの、薊の国ですけれど」
「あそこのことよね」
「薊が都の周りに生えてるんですよね」
「そうよ、それで見えているけれど実は何もない石の壁があってね」
「あの国の人達もですよね」
「頭はトランプのダイヤの形でね」
 ベッツイはその人達のこともです、カルロスにお話します。
「そして身体はハートの形よ」
「手足が細いんですよね」
「目は丸くて大きくてね」
「お鼻とお口が小さいんですね」
「そう、それに服は身体にぴっしりとしていて」
  薊の国の人達のことが話されていきます。
「華やかな色合いで派手に刺繍がしてあってね」
「サンダルを履いてるんですよね」
「ストッキングは穿いていないわ」
「かなり独特な人達ですよね」
「オズの国の人達だからね」
 これに尽きました。
「個性的なのよ」
「そういうことなんですね」
「ええ、けれどね」
「悪い人達じゃないですよね」
 今度はジョージがベッツイに尋ねました。
「そうですよね」
「とてもいい人達よ」
「なら安心ですね」
「そうね、けれど貴方達のことは知らないから」
 五人はこれから薊の国にはじめて行きます、ですから薊の国の人達も五人に会うのははじめてなのです。
「初対面同士ってことはね」
「頭に入れておかないといけないですね」
「そのことは気をつけてね」
「わかりました」
「薊は痛いですから」 
 触るとです、神宝はこのことを気にしていました。
「そのことは気をつけないといけないですね」
「だからね」
「それで、ですよね」
「皆靴はちゃんと履いてるわね」
「はい」
「あとズボンもね」
 それもというのです。
「男の子三人は長ズボンだけれど」
「ええと、私達は」
「スカートですから」
 恵里香とナターシャが言うのでした。
「靴下は履いてますけれど」
「それでもですね」
「ズボンじゃないと痛いですよね」
「薊は」
「僕もなんだよね」
 ハンクもです、少し心配そうに言うのでした。
「この毛でも薊は痛いよ」
「どうしましょう、私達は」
「薊に対して」
 女の子二人はハンクと一緒にベッツイに心配そうに尋ねました。
「痛くないようにするには」
「どうすれば」
「お薬があるけれど」
 ふとです、ベッツイは女の子達にこう言ったのでした。
「足に塗ればふわふわと浮かぶのよ」
「身体がですか」
「そうなるんですか」
「そうなの、足の裏に塗るだけで。三十センチ位だけだけれどね」
「宙に浮かんで、ですね」
「歩けるんですね」
「少しの間だけだけれどね」
 そうしたお薬だというのです。
「それを使う?」
「そんな便利なものもあるんですね」
 ナターシャはベッツイのお話を聞いて目を瞬かせて言いました。
「今のオズの国には」
「そうなの、私もドロシーもトロットも何かあった時の為にいつも何種類かお薬とか道具を持って旅に出ているの」
「オズマが持たせてくれているのよ」
 ガラスの猫がこの辺りの事情をお話します。
「それでなのよ」
「そうなのね」
「あんた達これまで二回位ドロシーと一緒に旅をしたけれど」
 このことも言うのでした。
「その時いざとなればドロシーが出してくれてたわよ」
「お薬なり道具を」
「皆グリンダや魔法使いさんが作ったものよ」
「科学と魔法を合わせて」
「そう、そうしてね」
「何か。科学と魔法が合わさることがオズの国の特徴で」
 ナターシャは猫とお話しつつしみじみと述べました。
「そこから凄いものが出来て」
「そう、ベッツイ達を守ってるのよ」
 いざという時にというのです。
「だからこうした時もね」
「お薬を使って」
「痛い思いをしなくて済むわよ」
「貴方達もズボンでもね」
 ベッツイは男の子達にも言いました。
「考えてみたらあそこの薊は険しいから」
「だからですね」
「ええ、足の裏に塗って」
 そのお薬をというのです。
「いいわね」
「わかりました、それじゃあ」
「さて、では行きましょう」
 その薊の国にというのです。
「そしてあの国の主ココ=ローラムにも会いましょう」
「偉大なココ=ローラム様ですね」
「儀礼を以て呼ぶとね」
「そうなりますね」
 ナターシャはベッツイに応えて言うのでした。
「あの人は」
「そうよ、あと薊はね」
 それはといいますと。
「私達は食べられないから」
「そのことはですね」
「そう、テーブル掛けで食べものを出すから」
「そのことも心配しなくていいですね」
「そうよ、テーブル掛けはね」
 この魔法の道具のお話にもなりました。
「オズの国の魔法の品の中でも特にいいものの一つでしょうね」
「何時でも何でも食べものが出ることは」
「有り難いでしょ」
「食べるものに困りませんから」
 まさになのでした。
「これだけでも全く違います」
「そうでしょ、だからね」
「どの人もいつも持っておられるんですね」
「そうなの、私達は食べないと動けないから」
「私は違うけれどね」
 ガラスの猫の場合はそうです。
「けれど食べないといけない面々には絶対に必要なのよね」
「そう、だからいつも持ってるの」
 そうだというのです。
「私達はまずは食べることからだから」
「そして飲むこともね」
 ハンクも言ってきました。
「絶対だからね」
「テーブル掛けは大事よ」
「そういうことだよね」
「これがある限りは大抵のことは乗り越えられるわ」
 ベッツイは五人に微笑んで言うのでした。
「だから安心してね」
「はい、それじゃあベッツイさんを頼りにして」
「一緒に」
「まあ私が頼りになるかというとね」 
 このことについてはです、ベッツイは少し苦笑いになって五人に答えました。
「とてもだけれど」
「いえ、頼りにしてますよ」
「ベッツイさん達がいてくれてですから」
「僕達っ楽しく旅が出来ます」
「どんな場所でも行けます」
「僕達だけじゃとてもです」
「ううん、私なんかね」
 やっぱり少し苦笑いになって言うベッツイでした。
「何も出来ないけれど」
「何言ってるのよ、あんただってこれまで何度も危機を乗り越えてきたでしょ」
 猫がそのベッツイにこう言いました。
「何度も何度もね」
「だからなのね」
「そう、頼りにされるだけのものはあるわよ」
 ベッツイにです、そうしたものが備わっているというのです。
「だからそんな恥ずかしそうになる必要はないのよ」
「だといいけれど」
「とにかくね」
「うん」
「薊の国に行ってもあんたがいてハンクがいて」
 猫がここで言うことはといいますと。
「何よりも私がいるから心配無用よ」
「そこでそう言うのね」
「言うわよ」
 つんとです、猫は猫特有のおすましを以てベッツイに答えます。
「この中で私が一番奇麗でしかも頭がいいから」
「相変わらずの自信家ね」
「猫は皆そうなのよ」 
 自信家だというのです。
「ユリカだってそうでしょ」
「確かにあの娘も自信家ね」
「自信家でない猫なんて猫じゃないわ」
「誰もがなのね」
「そうよ、それは何故かというと」
 猫は誰もが自信家である理由はといいますと。
「猫が優秀だからよ。頭がよくて素早くてね」
「しかも奇麗だからっていうのね」
「これだけのものがあるからよ」
「だから自信家だっていうのね」
「そう、私達以上に素晴らしい生きものはいないのよ」
 こうベッツイに言うのでした。
「それで自信がない筈がないじゃない」
「そうなるのね」
「その通り、その私がいるからには」
 胸を張ったままの言葉でした。
「ベッツイに何かあっても心配無用よ」
「何でここまで言う娘なのに」
 恵里香は首を傾げさせてです、自信満々に言い続ける猫を見つつ言いました。
「嫌いにならないのかしら」
「猫だからでしょ」
 ナターシャがその恵里香にお話します。
「猫は皆こうした生きものだし。それに傍にいてくれているだけでね」
「何もしなくても?」
「悪戯ばかりしてもね」
 それでもというのです。
「見ているだけで心が癒されるから」
「嫌いにならないのね」
「私も猫好きよ」
「僕もだよ」
「僕も」
「僕もね」
 男の子三人も言うのでした。
「猫大好きだよ」
「見ているだけで和めるよね」
「ついつい触りたくなるよ」
「それが猫なのよ」
 ナターシャは恵里香にあらためて言いました。
「普通にいてくれているだけで違うのよ」
「それで嫌いじゃないのね、この娘も」
「私の魅力に感謝しなさい」
 またこうしたことを言った猫でした。
「あんた達の心を癒してくれてるんだからね」
「偉そうだけれどね」
「実際に偉いの」
「猫だから?」
「それ以外に理由はないわよ」
 本当に偉そうなガラスの猫でした、自信満々な態度で。ですが一行からは離れません。そうしてなのでした。 
 薊と石の壁に囲まれた丘の上の都を見てでした、ベッツイは皆に言いました。
「あれがなのよ」
「はい、薊の国ですね」
「私達が今から行く」
「そう、着いたわよ」
 こう言うのでした。
「じゃあいいわね」
「はい、それじゃあですね」
「今からですね」
「皆一旦靴と靴下を脱いで」
 ベッツイは懐からでした、白くて丸い容器に入ったお薬を出しました。
「これを足の裏に塗ってね」
「それが、ですね」
「宙を浮かんで歩ける様になるお薬ですね」
「そうなんですね」
「そうよ、じゃあ塗ってね」
 早速というのです。
「いいわね」
「わかりました、そしてですね」
「薊を越えて」
「あの国の人達に会いに行きましょう」
 こうしてでした、皆一旦靴と靴下を脱いでベッツイから受け取ったそのお薬をそれぞれの足の裏に塗りました。ハンクにはベッツイが蹄の裏に塗ってあげてガラスの猫にも同じ様にしました。猫はここでベッツイに言うのでした。
「私は薊でも痛くないわよ」
「ええ、けれどね」
「けれど?」
「皆が浮かぶのならね」
「私だけ違うのはっていうのね」
「そう思うからよ」
 だからだというのです。
「塗るつもりだけれど」
「お付き合いってことね」
「嫌?」
「別に嫌じゃないわよ」 
 猫は今度は素っ気なくベッツイに答えました。
「浮かんで歩くのも面白そうだし」
「じゃあそれでいいわね」
「いいわ、じゃあ行きましょう」
「それではね」
 こうしてでした、皆でです。 
 宙を浮かんでふわふわと歩きながらです、薊の上を進むのでした。ナターシャはそうして歩きながらベッツイに言いました。
「何か歩いている様で」
「歩いていない感じでしょ」
「はい、何か」
 そうだと答えるのでした。
「飛んでいるのとはまた違って」
「歩いていても踏んでる感触がなくてね」
「それでも進めていて」
「不思議でしょ」
「本当に魔法なんですね」
「そう、科学と合わさったね」
 まさにそれだというのです。
「これはね」
「そうですよね」
「じゃあいいわね」
「はい、このままですね」
「薊を越えてね」
 そしてというのです。
「先に進みましょう」
「石の壁の前までですね」
「あそこまで行って」
「そう、石の壁は実は何もないから」
 石の壁は確かにあります、ですが実はそこには何もないのです。
「安心して行きましょう」
「わかりました」
 こうしたことをお話してでした。一行はそのまま進んでいきました。そして薊の原を越えたところで薬の効き目が切れました。
 そして地面に降り立ったその時にでした。
「ようこそ」
「この人達が」
「そうよ、この国の人達よ」 
 そうだとです、ベッツイが恵里香にお話します。
「この人達がそうなのよ」
「本当に頭の形がダイヤなんですね」
 恵里香は出迎えてくれたその人を見つつ言いました。
「お身体はハートで」
「そうなの、それで薊を食べているのよ」
「成程、そうですか」
「私は兵士です」
 その人が言ってきました。
「この国の」
「そうなんですね」
「番兵です、そしてココ=コーラム王にお仕えしています」
「じゃあ今から」
「はい、王の御前に案内します」
 こうお話してでした、そのうえで。
 一行はお国の中に案内してもらいました、そのお国にいる人達も皆ダイヤの頭の形にハートの形のお身体にです。
 細い手足と大きな目、そして小さなお鼻とお口です。足にはサンダルがあります。
 その人達がです、口々にベッツイ達に声をかけてきました。
「王女様お久しぶり」
「ハンクさんも元気そうだね」
「猫さんも相変わらず奇麗だね」
「それでその子供達は?」
 五人のことも尋ねるのでした。
「はじめて見ますけれど、どの子も」
「一体どういう子達ですか?」
「私達の友達よ」 
 そうだとです、ベッツイが皆にお話します。
「この子達はね」
「ああ、王女さん達のお友達で」
「そうなんだね」
「悪い子達じゃないから」
 このことも言うベッツイでした。
「皆も仲良くしてあげてね」
「うん、じゃあね」
「これから宜しくね」
「見たところベッツイ王女より少し年下だね」
「悪い子達じゃなさそうだね」
「はい、宜しくお願いします」
 五人も皆に挨拶をします。
「これから」
「そうしてね」
「じゃあ今からね」
 ベッツイが五人に言ってきました。
「ココ=ローラムのところに行きましょう」
「はい、それじゃあ」
「今から」
 五人もベッツイに応えてでした、そのうえで。
 王宮に入るとです、そこには一際立派な身なりの人がいました。その人はすぐにベッツイのところまで来て声をかけてくれました。
「ようこそ」
「お久しぶりね、ココ=ローラムさん」
「うん、来てくれて何よりだよ」
 ココ=ローラムはにこりと笑ってベッツイに応えます。
「我が国に来てくれて」
「そう言ってくれると嬉しいわ」
「うん、今回来てくれた理由は何かな」
「実は私達これからウーガブーの国に行くの」
「また遠い場所に行くね」
「黄金の林檎で作ったジャムを貰いにね」
 それでというのです。
「あの国に行くの」
「成程、それでその途中にだね」
「この国に立ち寄ったの」
「そうか、道中幸あらんことを」
「有り難う、楽しい旅を続けるわ」
「そうしてもらえると何よりだよ」
 ココ=ローラムはベッツイ達に笑顔で言うのでした。
「僕にしても」
「旅は安全に楽しくよね」
「そう、冒険はね」
 その二つを同じものとしてです、ココ=ローラムは言うのでした。
「楽しまないとね」
「そういうことね」
「折角来てくれたし」
  ココ=ローラムのペースでお話が進みます。
「何か楽しんでいくかい?とはいってもね」
「食べものはね」
「うん、君達は薊を食べられないからね」
 ココ=ローラムもこのことはわかっています、ベッツイ達を何度も迎えて楽しい時間を過ごしてきているからです。
「他のものでいいかな」
「ええ、テーブル掛けを持ってきてるわ」
 ベッツイがココ=ローラムの問いに答えました。
「だから安心して」
「わかったよ、じゃあパーティーを開こう」
「それじゃあね」
 こう楽しくお話してでした、そのうえでなのでした。
 一行はココ=ローラムと一緒に楽しいパーティーに入りました。そしてそのパーティーの中でなのでした。
 ココ=ローラムはベッツイ達の食事を見てベッツイに尋ねました。
「その白いものは何かな」
「これね」
 お箸とお椀を手に持ちながらです、ベッツイはココP=ローラムに応えました。
「御飯よ」
「御飯。お米だったかな」
「そうよ、確かココ=ローラムさん前も見ていなかったかしら」
「ああ、その時は白くなかったから」
 見れば皆白い御飯を食べています、ココ=ローラムはそれを見て言うのでした。
「違うと思ったんだ」
「お米となの」
「そうなんだ、それも御飯なんだね」
「私達が前にここに来た時はカレー食べていたかしら」
「そうそう、茶色い食べものだったね」
「それはカレーよ」
「だから白くなかったんだね」
 ココ=ローラムはしみじみとして述べました。
「茶色い中に色々と入っていてね」
「カレーはそうしたお料理だから」
「あれっ、カレーも」
 恵里香は二人のお話を聞いてふと気付いて言いました。
「白い御飯に」
「あっ、その時食べたカレーはもう御飯とルーを最初から混ぜていたの」
「ああ、大阪のカレーですね」
 恵里香はベッツイの返答にすぐに気付いて納得したお顔で頷きました。
「難波の自由軒の」
「私そのお店は知らないけれど」」
「日本の大阪って街にそうしたお店があるんです」
「カレー屋さん?」
「もっと言うと洋食屋さんですね」
 そちらのお店になるというのです。
「あそこは」
「洋食、日本のお料理のジャンルの一つだったわね」
「あれっ、日本のですか」
「だって日本人が作って食べているお料理じゃない」
 その洋食もとです、ベッツイは恵里香に答えるのでした。
「だったらね」
「あれは日本のお料理ですか」
「洋食はね」
「外国のお料理なんじゃないんですか?」
 外国のお料理を日本人が作っているものではとです、恵里香は首を傾げさせてこうベッツイに言葉を返すのでした。
「洋食は」
「違うと思うわ」
「日本のお料理ですか」
「最初は外国のお料理だったかも知れないけれど」
「それでもですか」
「そう、今はね」
 ベッツイは御飯を食べつつにこりとして恵里香にお話します。
「そうなっているんじゃないかしら」
「日本のお料理になっていますか」
「洋食はね」
「そうそう、それはね」
「僕達もそう思うよ」
 ジョージと神宝も恵里香にこう言うのでした。
「洋食は日本のお料理だよ」
「そうなってるよ」
「だって今だってね」
「僕達ハンバーグ定食食べているじゃない」
 とても大きなハナb−グがお皿の上にあってその横にオレンジ色のドレッシングをかけたキャベツとレタス、それにトマトの付け合せのサラダとミートソースにしたマカロニがあります。そしてコンソメスープも一緒にあります。
「これだってね」
「日本のお料理じゃない」
「洋食だってね」
「日本のお料理だよ」
「ううん、そうなるのかしら」
 恵里香はハンバーグをおかずにして御飯を食べつつ言うのでした。
「洋食って」
「日本人は欧州のお料理を自分達のものにしてしまったのよ」
 ナターシャはサラダをお箸で食べつつにこりとして言いました、皆お箸で食べています。
「だからね」
「それでなのね」
「そう、普通にね」
「洋食は日本のお料理なのね」
 恵里香は首を傾げさせつつ言うのでした。
「ずっと違うって思ってたわ」
「じゃあ何で御飯なの?」
 カルロスも恵里香に尋ねました。
「僕達が今食べているのは」
「だって定食じゃない」
 恵里香はそのカルロスにも答えました。
「だったらね」
「御飯っていうんだね」
「けれどこのこともなのね」
「うん、日本っていったら御飯だよね」
「ええ、確かにパンも食べるけれど」
 それでもと答えた恵里香でした。
「日本人の主食はね」
「御飯だよね」
「それが第一ね」
 日本のお料理の主食といえばというのです。
「このことかもなのね」
「そうだよ、やっぱり洋食は日本のお料理だよ」
「違和感があるけれど」
「別に違和感持つ必要もないわよ」
 ベッツイもです、ハンバーグで御飯を食べつつ恵里香に言います。
「だってどの国のお料理もそうだから」
「他の国のお料理を取り入れてですか」
「自分の国のお料理にしているから」
「だからですか」
「ピロシキだってお饅頭や揚げパンからよ」
 ナターシャは恵里香に自分の大好物をお話に出しました。
「中に入っているわよね」
「あれはどう見てもお饅頭だね」
 神宝もナターシャに応えます。
「ピロシキは」
「そう、ボルシチはビーフシチューで」
「ビーフシチューはアメリカでも食べるけれどね」 
 ジョージも言います。
「奥州から来たものだよ」
「ブラジルは昔ポルトガルの植民地だったからね」
 ブラジル人のカルロスが言うことはといいますと。
「ポルトガル料理の影響が強いよ」
「ポルトガル料理からはじまったんだ」
「そう、ブラジル料理だってね」
「そういえば和食も」
 恵里香は最初から自分の国のお料理と考えているものからあらためて考えてそのうえで言うのでした。
「お豆腐も中国からだし」
「そうでしょ、他の国のものでしょ」
 また言うベッツイでした、恵里香に対して。
「他にもあるわよね」
「お味噌やお醤油も」
 調味料も挙げた恵里香でした。
「ああしたものも」
「他の国からのものよね」
「中国からです」
 和食には欠かせないこの二つの調味料もなのです。
「どちらも」
「それが日本の調味料になってるじゃない」
「このことも考えてみますと」
「そう、洋食もね」
 こちらもというのです。
「日本のお料理よ」
「そうなるんですね」
「そうよ、これでわかったわね」
「わかりました、そういえば前もこうしたお話をした様な」
「そうだったかしら」
「何か」 
 恵里香は首を傾げさせつつ述べました。
「そんな気もします」
「そういえばそうだったかしら」
「はい、けれど今のお話でわかりました」
「洋食のことが、よね」
「そう思います」
「それじゃああらためてね」
 恵里香は微笑んでベッツイに応えました。
「これから」
「はい、御飯をですね」
「食べましょう」
「面白いパーティーだね」 
 ココ=ローラムは定食を食べながらのその中で述べました。
「今回のこれは」
「ええ、普通のパーティーは定食食べないわね」
「オートブルを食べて飲んでだからね」
「だから趣向を変えてみたの」
 今回のパーティーはというのです。
「そうしたの」
「フルコースを食べるのでもなく」
「そう、日本の洋食のね」
「定食にしたんだね」
「これもいいわよね」
「うん、面白いよ」
 ココ=ローラムはにこりとしてベッツイに答えました。
「よかったよ」
「うん、それじゃあね」
「もっと食べようね」
「勿論よ、お腹一杯食べないと」
 ベッツイは実際に御飯を食べつつ言うのでした。
「何も出来ないから」
「それは僕達もだよ」
 薊の国の人達もだというのです。
「食べないと力が出ないよ」
「薊を食べないとなんですね」
「うん、僕達はそうなんだよ」
 ココ=ローラムはこうナターシャに答えました。
「薊が主食だからね」
「薊って美味しいんですか」
「僕達にとってはそうだよ」
「そうそう、僕と事情は一緒だよ」
 ここでこう言って来たのはハンクです、ハンクは今はベッツイ達が食べているそのサラダを食べています。桶の中にたっぷり入っているそれをです。
「僕も草が主食じゃない」
「それぞれの種族で食べるものが違うんだよ」
 ココ=ローラムがこう言うのでした。
「またね」
「そうなるんですね」
「うん、ただ」
「ただ?」
「オズの国は食べなくてもいい人達もいるから」
「私が実際にそうじゃない」
 ガラスの猫の言葉です。
「そうでしょ」
「そう、そうも言えない人もいるからね」
「食べなくてもいいってことも楽よ」
 その食べる必要のない猫の言葉です。
「とてもね」
「それはそれこれはこれってことね」
「簡単に言えばね」
 そうだとです、猫はベッツイにも答えました。
「そうなるわね」
「まあそこはそれぞれってことでね」
 ココ=ローラムはまた言いました。
「食べることは」
「そういうことね、まあ食べなくてもいいのなら」
 ベッツイはガラスの猫を見つつこうしたことも言うのでした。
「それならそれでいいわね」
「そうよ、食べることを楽しめればそれでいいし」
 それならそれでとです、ベッツイは割り切った考えになりました。
「そうしたことでね」
「いいんじゃない?あとね」
 猫はベッツイの横から彼女の顔を見つつこうしたことも言いました。
「私達の旅って絶対に何か起こるじゃない」
「トラブルがってこと?」
「そう、だからね」
「今のところは何もなくても」
「何かが起こるかも知れないわよ」
 こうベッツイに言うのです。
「ひょっとしたら」
「何か嫌な予感ね」
 ナターシャは眉を顰めさせてです、そして言ったのでした。
「そして猫の予感だから」
「当たるわよ」
「猫は勘がいいからね」
「そう、何かが起こるわよ」
 こう言うのでした。
「これからね」
「ううん、何が起こるのかしら」
 ナターシャは首を傾げさせつつ述べます。
「何処で」
「そこまではわからないけれどね、私にも」
「けれど何かが起こることは間違いないわね」
「だから用心してね」
 こう一行に言うのでした。
「皆ね」
「わかったわ、気をつけるわ」
 ベッツイは猫の言葉に確かな顔で応えました。
「何かが起こるって覚悟してね」
「そうしておいてね、この国はそうした国だからね」
「ううん、これまでの旅であったことは」
 ナターシャは腕を組んで自分達のこれまでの旅のことを述べました。
「ボタン=ブライトが寝ていたりカドリングの色々な国を回ったり」
「トラブルはなかったわね」
 恵里香もナターシャに応えて言います。
「特に」
「ええ、ドロシーさん達の沢山の旅に比べたら」
「それでもなのよ」
 ベッツイがその二人に言うのでした。
「オズの国の旅は大抵何かが起こるのよ」
「多くの場合はですね」
「これまでは貴方達の度は何かがあってもね」
 それでもというのです。
「そう感じさせない位のものだったのよ」
「そうだったんですね」
「私達のこれまでの旅は」
「そうだったの、ただね」
「この旅はですね」
「何か起こるわよ」
 このことは間違いないというのです。
「ガラスの猫の予感だから」
「わかりました、それじゃあ」
「気をつけます」
 ナターシャと恵里香が五人を代表して応えます、そしてベッツイは微笑んで五人にこうも言ったのでした。
「それにね」
「それに?」
「それにっていいますと」
「私が頼りにならなくても」
 それでもというのです。
「ハンクとガラスの猫がいるから」
「ううん、僕は何も出来ないよ」
 ハンクは照れ臭そうに笑って言います。
「別にね」
「そんなことないわよ」
「だといいけれどね」
「いつも頼りにしてるわ」
 親友であるハンクをとです、ベッツイは笑って彼に言うのでした。
「だからね」
「この旅もなんだね」
「そうよ、何が起こってもね」
「僕を頼りにしてくれてるんだ」
「そうしてわよね」
「頼りにされたら嬉しくない筈がないよ」
 心優しいハンクにとってはです、このことはとても嬉しいことです。
「それじゃあね
「ええ、この旅もね」
「頑張らせてもらうよ」
 是非にと言うハンクでした。
「僕もね」
「それじゃあね」
「私がいるだけでね」 
 猫は猫らしく言うのでした。
「何があっても大丈夫だから安心してね」
「ここでこう言うのがね」
 ナターシャは少し笑って猫を見て言いました。
「猫らしいわね」
「私じゃなくて?」
「猫はそうした生きものだから」
 それで、というのです。
「だからね」
「猫らしいっていうのね」
「そう、まあ貴女自身もそうだけれど」
「私がいるとね」
 それこそとです、また言う猫でした。
「もう何があっても安心よ」
「そう言える根拠がわからないんだけれどね」
 ココ=ローラムの言葉です。
「僕にとっては」
「あら、そうなの」
「うん、君はいつも自信満々だよね」
「不安なんて感じたことはないわ」
「その自信がわからないんだよ」
「だって。私は奇麗だし何も食べる必要も寝る必要もないのよ」
 こうした能力があるからだというのです。
「しかも頭がいいし素早くて」
「何でも出来るっていうんだね」
「そう、だからよ」 
 それでというのです。
「私と一緒にいたら心配することはないわ」
「それが根拠になるのかな」
 ココ=ローラムも首をかしげさせるのでした。
「一体」
「充分過ぎる程根拠になるでしょ」
「とにかく君はそう思っているんだね」
 こう考えることにしたココ=ローラムでした。
「ならいいかな」
「まあ任せてね」
 猫は相変わらずの自信に満ちた顔でベッツイに言うのでした。
「私がいるから」
「ええ、貴女も頼りにさせてもらうわ」
「私だけで充分でしょ」
 まだこう言う猫でした。
「まあ大船に乗ったつもりでいてね」
「そういえばこの娘って」
 ふとでした、ナターシャが言いました。
「これまで実際に何度も一緒に旅をしている人を助けたりしているのよね」
「そうよ、私がいてだったのよ」
 それこそだったというのです。
「皆助かったのよ」
「危機をよね」
「貴女達の危機なんか何でもないわ」
 猫はナターシャにも自信を見せます。
「だから安心してね」
「ええ、皆頼りにさせてもらうわ」
「皆なのね」
「だって。ベッツイさんもハンクもいるのよ」
 ナターシャはくすりと笑って猫に返すのでした。
「それならね」
「皆頼りにしないと、っていうのね」
「そう思うけれどどうかしら」
「私だけでいいというのが私の意見よ」
「貴女の力だけで充分っていうのね」
「そう、安心していいのよ」
 やっぱりこう言ったのでした。
「何度も言ってるのにわからないのね」
「気を悪くしたの?」
「別に。私がわかっていないのならわからせるだけよ」
 猫は自信を失わずに言いました。
「それだけのことよ」
「まあその自信があるのならね」
 ココ=ローラムがここでまた言うのでした。
「元気付けられるね、皆」
「ええ、この娘がいると安心出来るから」
 実際にと言うベッツイでした。
「有り難いわ」
「猫はいるだけで心の癒しになるしね」
「それだけでも充分嬉しいけれど」
「実際に色々してくれるから」
「頼りになることは実際だね」
「うん、何とかなるよ」
 是非にとお話してでした、そうしてでした。
 皆はパーティーを心ゆくまで楽しみました、そしてです。
 一行は薊の国を後にすることにしました、ココ=ローラムは国を後にする皆を見送って来てこう言ったのでした。
「トラブルがあってもね」
「それでもよね」
「うん、楽しい旅にならんことよ」
 こうベッツイ達に言ったのでした。
「幸あらんことを」
「有り難う、それじゃあね」
「また来てくれるね」
「ええ、そうさせてもらうわ」
「その時のことを待ってるよ」
 ココ=ローラムは笑顔で応えたのでした。
「楽しみにね」
「そうしてくれるのね」
「それじゃあね」
 こうお別れの言葉を交えてでした、皆はです。
 薊の国を後にします、その前に別井が皆に言います。
「それじゃあね」
「あっ、そうですね」
「今からですね」
「そう、薊があるからね」
 とても険しいそれがあるからというのです。
「クリーム塗りましょう」
「そうですね、そうしてですね」
「宙を浮かんで」
「そうしてですね」
「薊の上を歩いてね」 
 そしてというのです。
「行きましょう」
「わかりました」
 ナターシャが応えてです、そしてでした。
 皆は薊の国を後にしました、そしてです。
 ベッツイは皆にです、明るい声で言いました。
「それじゃあ次はね」
「はい、果樹園を越えて」
「そしてですね」
「ハークの都に行きましょう」
 そこにというのです。
「そしてヴィグ皇帝とお会いしましょう」
「そういえばですけれど」
 ナターシャがヴィグ皇帝と聞いてこう言いました。
「一つ気になることが」
「どうしたの?」
「はい、ヴィグ皇帝は皇帝陛下ですけれど」
「ウィンキーにはっていうのね」
「ブリキの木樵さんもおられます」
 この人もというのです。
「あの人も皇帝ですよ」
「そうですよね、皇帝の上に皇帝がいるんですね」
「そうよ、オズの国ではね」
「そこが違いますね」
「皇帝はあらゆる民の上に立つ方よね」
「はい、例えば」
 ここでナターシャは恵里香を見てです、そして言いました。
「恵里香のお国の日本は」
「天皇陛下?」
 恵里香もナターシャに応えて言うのでした。
「あの方?」
「ええ、ロシアも昔は皇帝がいたけれど」
 今はいないのです。
「日本の天皇陛下は皇帝でしょ」
「そうね、言われてみれば」
 そうなるとです、恵里香もナターシャの言葉に頷きます。
「あの方は皇帝になるわ」
「そうでしょ、皇帝は王の上に立つから」
「私達の世界ではね」
「皇帝は二人もいない筈よ」
 これが五人の世界の決まりです、ベッツイ達もかつていた。
「そこがオズの国では違うのね」
「そうよ、オズの国では皇帝がいてもね」
「それでもですよね」
「皇帝の上に皇帝がいるの」
 そのヴィグ皇帝の上にというのです。
「木樵さんがね」
「そうなんですね」
「そしてね」
 さらにお話するベッツイでした。
「その上にオズマがいるのよ」
「オズマ姫がですね」
「オズの国で一番偉いのはお姫様なの」
「お姫様が国家元首ですね」
「四つの国、そしてエメラルドの都のね」
 あらゆる国のというのです。
「国家元首がオズマなのよ」
「そうなるんですね」
「そう、じゃあね」
「あらためてですね」
「オズの国の仕組みを納得してくれたら」
 国家元首のこともその中にあるのです。
「あらためて行きましょう」
「ヴィグ皇帝のところに」
「そしてね」
 さらにと言うのでした。
「ゾソーゾだけれど」
「あの力が強くなるお薬ですね」
 ナターシャがベッツイに応えます。
「それも物凄く」
「そう、あのお薬を飲む?」
「ううん、それは」
「それはなのね」
「別にいいです」 
 特に興味はないといった口調で、です。ナターシャはベッツイに答えました。
「それは」
「そう、じゃあ興味ない人はそのままでね」
「それで、ですね」
「何はともあれヴィグ皇帝のお国に行きましょう」
 そのハーグの都にです、こうして一行はさらに旅を続けるのでした。



薊の国へと立ち寄る一行と。
美姫 「今回は魔法の薬が出てきたわね」
わずかな時間だけれど、空をふわふわと。
美姫 「ちょっと楽しそうよね」
だよな。で、薊の国でココ=ローラムと会うまでは良かったんだが。
美姫 「嫌な予感というのが気になるわよね」
だな。今回の旅は何かが起こるのだろうか。
美姫 「どうなるのか、次回を待っていますね」
待っています。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る