『オズのベッツイ』




               第六幕  クマセンターへの道

 一行はハーグの都からクマセンターに向かいます、その中で。
 お空を飛ぶ一羽の鳥を見てです、ナターシャはしみじみとした感じでこんな言葉を呟きました。
「あの鳥は赤だったから」
「ええ、カドリングの鳥よね」
 恵里香もその鳥を見てナターシャに応えます。
「あの鳥は」
「そうね、カドリングからウィンキーに来てるのね」
「それであの方角は」
「ギリキンね」
 鳥は南から北に向かっています、それならです。
「あちらに行くのね」
「そうよね」
「翼があれば」
 それならと言うナターシャでした。
「速く、そして楽に行き来出来るわね」
「そうよね」
「お空を飛べたらね」
 その翼で、です。
「出来るわね」
「そうよね、ナターシャは鳥が羨ましいの?」
「時々そう思えない?」
「飛べるから」
「そう、ああして飛べるからね」
 その通りだと答えるナターシャでした。
「時々そう思うの」
「鳥が羨ましいって」
「自分でお空を飛べたら」
 それこそとです、ナターシャは遠くに飛んでいくその赤い鳥を見ながらそのうえでこうも言ったのでした。
「素晴らしいわ」
「確かにそうよね」
「どんなに楽しいかしら」
 自分の力でお空を飛べたらというのです。
「本当にね」
「そうよね、ただ」
「ただ?」
「ここは不思議の国だから」
 恵里香はナターシャにこう言いました。
「飛べるじゃない」
「あっ、ガーゴイルの羽根もあれば」
「そう、他にもね」
「飛ぶ方法があるわね」
「オークに掴んだりね」
「メリーゴーランド山脈も飛行船で越えたし」
「色々あるじゃない」
 お空を飛ぶ方法はというのです。
「自分で飛ぶ方法じゃないものもあるけれど」
「そうよね」
「他にも魔法であると思うし」
「あるわよ」
 ガラスの猫がここで言ってきました。
「魔法でお空を飛ぶ方法あるわよ」
「自分で?」
「ええ、魔法使いさんやグリンダ、それにオズマが知ってるわよ」
 オズの国で魔法を使える人達がというのです。
「魔法のマントや翼を付けてね」
「そうしてなの」
「そう、飛べるわよ」
 それが出来るというのです。
「魔法を使ってね」
「そうなのね」
「だから必要な時、飛びたい時はね」
「その魔法でお空を飛べるのね」
「そうよ、オズマ達に許してもらえればね」
 その時はというのです。
「出来るから」
「それじゃあ」
「飛びたい時はお願いするのね」
「そうしてみたらいいわ」
 ベッツイもナターシャにこう言いました。
「エメラルドの都でそうして遊びたい時はね」
「はい、そうさせてもらいます」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「そうした魔法の道具は私も使わせてもらったけれど」
「何かあるんですか?」
「さっきの鳥もそうだけれど死の砂漠から無効は行けないわよ」
 それは無理だというのです。
「その手前で止まってしまうのよ」
「そうなんですか」
「オズの国から出るにはね」
「私達みたいにですね」
「そう、門を潜らないといけないから」
 学園の時計塔の一番上等にあるそこをというのです。
「だからね」
「オズの国から外には出られないですね、お空を飛べても」
「そのことは覚えておいてね」
「わかりました、けれど」
「オズの国にいたらよね」
「別にいいです」
 その時はというのです。
「オズの国にいたらオズの国から出る理由はないですから」
「それだけでよね」
「はい、満足出来ますから」
「そういうことね」
「そう思いますから」
「貴方達五人はオズの国からあちらの世界を行き来出来るからね」
 それでというのです。
「そのことも安心していいわ」
「帰ろうと思えばですね」
「そうよ、帰られるしね」
「死の砂漠を越えられなくてもいいですね」
「ええ、そうなるわね」
「そうですね、それにしても本当に色々な魔法がありますね」
 ナターシャは今度はしみじみとして言うのでした。
「オズの国には」
「そうでしょ、オズマ達がいつも研究しているからね」
「お空を飛ぶことも出来るんですね」
「さもないとどうしてもっていう時もあるから」
「お空を飛べないと」
「メリーゴーランド山脈の時だってそうだったわね」
「はい、確かに」
「だからね」
 それで、というのです。
「お空を飛ぶ魔法も必要なのよ」
「必要だから生み出されたんですね」
「魔法も科学も同じよ」
「あれば便利だからですね」
「研究されて開発されていくのよ」
 様々な魔法がというのです、そして科学も。
「そういうものだからね」
「それで、ですね」
「お空を飛ぶ魔法も開発されたのよ」
「成程」
「さて、お空のお話はいいけれど」
 ここでベッツイは話題を変えました。
「そろそろ暗くなってきたから」
「あっ、夜ですから」
「休みましょう」
 こう皆に言うのでした。
「そろそろね」
「わかりました、それじゃあ」
「早速テントを張ってね」
 言いながらです、ベッツイは早速でした。
 道の横にそのテントを出しました。男の子用と女の子用のものを一つずつです。そしてそのうえでなのでした。
 テーブル掛けも出します、今晩のメニューはといいますと。
「今晩はこれですか」
「ええ、どうかしら」
 お鍋です、その中に様々なお野菜や魚介類が入っています。特にトマトが入っていてそれがお鍋を赤くしています。
「ブイヤベースよ」
「美味しそうですね」
「そうでしょ、これとね」
 パンも出して言うベッツイでした。
「これもあるから」
「今日も豪勢ですね」
「このテーブル掛けはどんなお料理もどれだけでも出せるから」
 それでというのです。
「楽しんでね」
「わかりました、それじゃあ」
「ええ、じゃあね」
「今晩は楽しんでね」
「はい、わかりました」
 ナターシャが笑顔で頷いてです、そして。
 皆でそのブイヤベースのお鍋を囲みます、そうして魚介類とお野菜を食べながらです。ジョージは目を細めさせて言いました。
「いや、何か不思議ですね」
「不思議って」
「ずっとウィンキーにいますから」
 それでというのです。
「そこで黄色じゃないものを見ましたので」
「あっ、それでなのね」
「さっきの赤い鳥もそうでしたけれど」
「確かにね、ウィンキーは何でも黄色だからね」
 ベッツイも微笑んで答えます。
「他の色はあまりないから」
「ですから」
「そうね、そういえば私もね」 
 ベッツイも笑顔出言うのでした。
「さっきの赤い鳥もこの赤いブイヤベースもね」
「不思議なものを感じますね」
「一色の中に別の色があるだけだけれど」
 たったそれだけのことです、ですがそうなるとなのです。
「それがね」
「不思議なものがありますね」
「それだけのことなのに」
「本当にそうですね」
「そして味もね」
 その味はといいますと。
「いいでしょ」
「はい、凄く美味しいです」
 神宝はお魚に貝や海老を食べています、そのうえでベッツイに答えます。
「大蒜も効いていて」
「このテーブル掛けから出したものは何でも凄く美味しいのよ」
「それで、ですね」
「このブイヤベースもなのよ」
「素材がいいですね」
 そのそれぞれがというのです。
「調理が気になりますけれど」
「調理はテーブル掛けの中で自動的にされるのよ」
 それはというのです。
「そうなっているの」
「あっ、そうなんですね」
「エメラルドの宮殿のシェフの人に合わせているわ」
 その腕はというのです。
「だからこれだけ美味しいのよ」
「それでこのお味ですか」
「そういうことなの」
 ベッツイもブイヤベースを食べつつ神宝に答えます。
「だから味も楽しんでね」
「わかりました」
「しかもかなりの量がありますね」
 カルロスは量に注目しています。
「幾ら食べても尽きない感じで」
「皆が満足したらなくなるわよ」
 それで、とです。ベッツイはカルロスに答えました。
「だから安心してね」
「わかりました」
「お腹一杯食べましょう」
「今晩も」
「お腹一杯食べてこそよ」
 それからというのです。
「人間は幸せになれるから」
「まずは」
「そう、だからね」
 それでとです。さらに食べつつおwするベッツイでいsた。
「楽しんでいきましょう」
「わかりました」
「晩御飯を食べたら」
 そ後のこともお話するベッツイでした。
「丁渡近くにお池があるから」
「そこで、ですね」
「ええ、身体を奇麗にしてね」
 そうしてというのです。
「寝ましょう」
「わかりました」
「清潔第一よ」 
 身体を奇麗にしてこそというのです。
「女の子も男の子もね」
「そうですね、毎日お風呂に入らないと」
 恵里香はベッツイのそのお話にその通りと頷いて答えて言います。
「不衛生ですね」
「だからね」
 それで、というのです。
「身体を奇麗にしてね」
「わかりました」
「昔の旅は身体を奇麗にするなんて殆ど出来なかったけれど」
「今は違いますね」
「ええ、ボディーソープもシャンプーもあるし」
 勿論タオルもです。
「それにオズの国は気候もいいから」
「水浴びをしても風邪をひかないですね」
「だから楽なのよ」
 水浴びをすることもです。
「風邪をひかないのならね」
「身体を奇麗にしてですね」
「そうしておいた方がいいから」
「そうそう、それに五人共お風呂嫌いじゃないしね」
 このことはハンクが言ってきました。
「丁渡いいよ」
「そう、いつも奇麗にしないとね」
 ガラスの猫も言ってきます、暗くなろうとしているその中でガラスの身体の透き通っているものが見えています。
「それがいいのよ」
「貴女もいつも奇麗にしているから」
「あんた達もよ」
 是非にというのです。
「奇麗にしてね」
「わかったわ」
「そういうことよ」
「貴女も水浴びをしているの?」
 恵里香は猫に尋ねまいた。
「やっぱり」
「いえ、違うわ」
「じゃあどうして奇麗にしているの?」
「舌よ」
 ガラスのお口から舌をぺろりと出しての言葉です。
「これを使ってよ」
「それだと他の猫と同じね」
「そう、このことは普通の猫と同じよ」
 舌で身体を奇麗にすることはというのです。
「あとベッツイ達に奇麗に磨いてもらうこともあるわ」
「時々そうしているの」
 実際にと答えるベッツイでした。
「そうしたら普段よりも奇麗になるから」
「それでなんですね」
「この娘の身体は曇らないし傷つきもしないけれど」
 このことは普通のガラスとは違います、そして壊れることもありません。そうした意味でとても優れたガラスです。
「磨くとなのよ」
「余計に奇麗になるんですね」
「水晶みたいにね」
「私の身体はそうなのよ」
「私達も見ていて奇麗だから」
「磨いてくれるのよ」
 そうだというのです。
「感謝しているわ」
「ううん、確かにこの娘がさらに奇麗になるのなら」
 それならと言うナターシャでした。
「私達もそうしてみたいわ」
「何時でもいいわよ」
 猫は誇らしげにナターシャに答えます。
「私を磨くことはね」
「何時でもいいの」
「私は寛大だから」
 それでというのです。
「何時でもいいわよ」
「何か偉そうね、相変わらず」
「だって偉いから」
 ここでこう言うのがこの猫です。
「それは当然でしょ」
「そこでそう言うのね」
「悪いかしら」
「悪いって言っても態度をあらためないわよね」
「それが私よ」
 ガラスの猫というのです。
「あくまで私はわたしなのよ」
「そう言うからね」
 それで、と返すナターシャでした。
「大体猫はそうだし」
「猫は偉そうなのが普通なんだよね」 
 ハンクもその猫を見て言います。
「この娘みたいに」
「そうよ」
 猫の方も否定しません。
「私達は偉いのよ」
「どうして偉いのかがわからないのよね」
 ナターシャは首を傾げるばかりでした。
「そのこと自体は」
「私達猫が偉い理由?」
「別に何もしれくれないでしょ」
 ナターシャはこの事実を指摘しました。
「犬は番をしてくれて牛はお乳を出してくれて鶏は卵を産んでくれて」
「僕達は人やものを運ぶよ」
 ハンクはロバとして自分達の仕事のことを言いました。
「ちゃんとね」
「けれど猫は?」
 ナターシャはまた猫に問いました。
「何をするの?鼠を捕まえるにしても」
「今はもう鼠はね」
 恵里香が言います。
「捕まえなくてもね」
「そう、鼠捕り器もあるし他にも一杯あるから」
「別にね」
「ましてやオズの国だと悪戯をする鼠もいないし」
「猫のお仕事もないわよね」
「それでどうして偉いの?」
 ナターシャはガラスの猫に尋ねるのでした。
「それはどうしてなの?」
「決まってるわ、皆私達を見てどう思うかしら」
「?猫を見て?」
「そう、どう思うかしら」
 猫はナターシャの問いにです、まずはこう問い返したのです。
「私達を見てね」
「可愛いと思うわ」
 ナターシャは猫の問いにこう答えました。
「やっぱりね」
「そうでしょ、その他にも思うわよね」
「ええ、和むし」
 猫を見ているとです。
「それに触ったりおもちゃを出して一緒に遊びたくもなるわ」
「癒されるでしょ」
 猫は具体的にナターシャに言いました。そのことをお話してそのうえでこうしたことも言ったのでした。
「それなのよ」
「それがなの」
「そう、猫のお仕事なのよ」
「そこにいるだけで人を癒せるから」
「猫は偉いのよ」
 こう言うのでした、猫は胸を張っています。その仕草自体がとても偉そうで誇らしげなお顔でナターシャにも他の皆にも言うのでした。
「それ故にね」
「そういうことになるのね」
「これでわかったわね」
「ええ、そう思うと確かにね」
「猫は偉いわね」
「確かにね。けれどね」
 それでもと言うナターシャでした。
「貴女はその猫の中でもとりわけ偉そうね」
「当たり前よ、私は普通の猫じゃないのよ」
「ガラスの猫だから」
「そう、余計に偉いのよ」
 他の猫よりもというのです。
「何も食べることも飲むことも寝ることもね」
「一切必要がないから」
「いいのよ」
 まさにそうだというのです。
「そのことも覚えておいてね」
「それでも偉そうに過ぎるわ」
 また言ったナターシャでした。
「猫の中でも」
「そんなことだと何時か誰かに怒られるわよ」
 ベッツイが猫に忠告します。
「それも強く」
「そう言うのね」
「そうよ、オズマかグリンダに」
「あの二人だけはね」
 猫も二人のことを言われるとでした。
「困るわ」
「そう思うでしょ」
「だから謙虚になれっていうのね」
「少しはね」
「これでも充分謙虚よ」
「自分を偉いと言っておいて?」
 説得力がないというのです、実際にナターシャ達五人もハンクもそのベッツイの言葉にその通りだと頷いています。
「そう言うの?」
「まあそれはね」
「違うって言うの?」
「出来ることと出来ないことはわかっているわ」
 猫にしてもというのです。
「私がね」
「だからっていうのね」
「出来ないことには何も言わないし偉そうにしないから」
 それで、とです。猫はベッツイに答えます。
「だからね」
「それで、よね」
「そう、私は謙虚でもあるのよ」
「そうなるのかしら」
「そうよ、わかったわね」
「そういうことなのね」
 ベッツイはとりあえず猫の言葉を聞きました。そうしてなのでした。
 一行はブイヤベースを美味しく食べました、その後で。
 デザートは果物でした、ベッツイは無花果を手にして皆に言います。
「最後はこれを食べましょう」
「果物をですね」
「これでお腹一杯になるわ」
 デザートの果物も食べてというのです。
「そうしましょう」
「はい、それじゃあ」
「デザートも食べて」
「そうしてあらためてね」 
「旅をですね」
「再開するんですね」
「そうするわよ、明日の朝にね」
 全ては朝からでした、行くのは。
 そうしてです、食べ終えてから水浴びをしてそれからこの日は寝ました。そしてお日様が出ると共にでした。
 一行はテントから出ました、ハンクはベッツイ達女の子が入っているテントの出入り口の傍で寝ていました。猫は男の子達のテントの出入り口の傍でずっとうずくまっていました。
 そのテントから出てです、ベッツイは皆に言いました。
「それじゃあ朝御飯にしましょう」
「はい、そしてですね」
「食べて歯を磨いて」
 そしてというのです。
「それからよ」
「出発ですね」
「ええ、クマセンターに向かうわよ」
 こう一行に言うのでした、そのベッツイにナターシャが尋ねます。
「それでなんですけれど」
「何かしら」
「今から御飯を食べて歯を磨いてから出発して」
「クマセンターに着く時間は?」
「何時頃になるでしょうね」
「そうね、お昼過ぎにはね」
 その頃にはというのです。
「着くわ」
「お昼過ぎですね」
「そこでアン女王と会って」
「そうしてですね」
「黄金の林檎のジャムのことをお話してね」
 そうしてというのです。
「ウーガブーの国に行くわよ」
「わかりました」
「そうしてね」
 ベッツイはナターシャに笑顔でお話していきます、お話をしながら大きな敷きものを敷いて皆にそこに座ってもらってです。テーブル掛けを出しています。
「黄金の林檎のジャムをヘンリーおじさんとエムおばさんにプレゼントするわよ」
「お二人の結婚記念日に」
「その為にもね」
 まずはというのです。
「クマセンターに行きましょう」
「そこですんなりとアン女王にお会い出来たらいいですね」
 神宝はここでベッツイにこう言いました。
「首尾よく」
「そうね、そのことはね」
「アン女王がどうしてクマセンターに行かれたのかわからないですから」
「あの人にも事情があるわよ」
「そうですよね、ですから」
「若し他にも用事があって私達がクマセンターに行った時にもういないと」
 その時はどうなるのか、ベッツイも少し気になって言いました。
「困るわね」
「そうですよね」
「そのことが気になるわね」
 懸念材料、それだというのです。
「どうなるのかしら」
「若しおられないと」
 ジョージがベッツイに提案することはといいますと。
「女王を追いかけましょう」
「そうするのね」
「はい、それしかないですよね」
「事前に女王がクマセンターに行った目的や何処に行くのかわかればいいけれど」
「それがわからないですから」
 今のベッツイ達にはです。
「ですから」
「若しいなかったら追うしかないわね」
「センターの熊さん達にお聞きして」
「それしかないわね、ただ」
 ここでベッツイはふと危惧を覚えて言うのでした。
「イップの国までは行かないわよね」
「カエルマンさんの」
「そう、あそこまではね」
 ウーガブーの国の様にウィンキーの端っこにあるお国です。ウーガブーの国はウィンキーの北西の端ですがイップの国は南西の端にあります。
「それぞれ正反対の場所にね」
「行くとなると」
 それは、というのです。
「大変だから」
「確かにそれは大変ですね」 
 カルロスも言います。
「あの国まで行くとなると」
「あの国まで行くとなると記念日まで間に合うかわからないわ」
 結婚記念日、その日にです。
「だからね」
「だからこそ」
「あそこまで行くことにならないといいけれど」
「それが心配ですね」
「だからその前に」
 出来るだけ、というのです。
「女王に会いましょう」
「それじゃあ」
「そして合流してね」
 そのうえでというのです。
「ジャムのことをお話しましょう」
「そして黄金の林檎のことをお話して」
「そしてね」
「ジャムをあげましょう」
 こう言ってでした、皆にです。
 まずは朝御飯を出しました、それを出してなのです。
 皆で食べました、今朝の朝御飯はコーンフレークでした。その上に牛乳をかけてそれからなのでした。皆で、です。
 クマセンターに向かいました、その中で。
 ナターシャはです、前を見ながらベッツイに尋ねました。
「お昼過ぎに着いて」
「女王にね」
「お会いしてですね」
「そう、ジャムのことをお話しましょう」
「じゃあ急がないといけないですね」
「いえ、考えたけれど」
 ここでなのでした、ベッツイはこうナターシャに答えました。
「事前に猫に行ってもらうわ」
「クマセンターになのね」 
 ガラスの猫がベッツイに応えました。
「行ってなのね」
「そう、そしてね」
「女王に会って」
「ええ、貴女の速さならすぐにクマセンターまで行けるでしょ」
「そう、そしてね」
「そうしてなのね」
「そう、確かめてきて」
 アン女王の目的もというのです。
「これからね」
「わかったわ、じゃあ先にクマセンターに行って」
 猫はベッツイに答えました。
「そして女王と会ってね」
「そしてよね」
「そう、目的を聞いて」
「ベッツイ達のことも話して」
「若し他の場所に行くのなら」
 その前にとです、ベッツイは猫にお話していくのです。
「待ってもらってね」
「そうして」
「ジャムのことを認めてもらいましょう」
「わかったわ、じゃあ先に行くわね」
「お願いするわね」
「すぐに待ってね」
 こうお話してでした、猫が先に行ってでした。
 ベッツイはその猫を見送ってです、皆に言いました。
「これでいいわ」
「猫に先に行ってもらって女王にお話するんですね」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「女王と会いましょう」
「こうした方法もあるんですね」
「あの娘は凄く足が速いし疲れも知らないから」
 ガラスの猫の長所です。
「本気になれば風みたいに速いから」
「あっという間にクマセンターまで着いて」
「女王にお話してくれるわ」
「そうすると女王が先に行く前にお話出来て」
「順調にいけるわ」
「そうなるんですね」
「だからいいのよ、じゃあ行きましょう」
 ベッツイ達もベッツイ達でというのです、こうお話してでした。
 皆は自分達のペースで先に進みました、そして三時間位歩いた時にでした。
 猫がクマセンターの方から戻って来ました、そのうえでベッツイ達にこう言いました。
「いたわよ」
「女王が?」
「ええ、そしてね」
 そうしてというのです。
「事情をお話してきたわ」
「あの人何て言ってたの?」
「わかったって言ってたわ」
「じゃあ待ってくれるのね」
「それでジャムのこともお話したけれど」
 肝心のこのこともというのです。
「ベッツイと会って正式に伝えたいそうだけれど」
「それでもなのね」
「いいって言ってたわ」
「そう、それはよかったわ」
「これで安心出来るわ」
「本当にね」
 ベッツイは猫にほっとなった笑顔で答えました。
「よかったわ」
「そうよね、ただね」
「ただ?」
「女王さんに女王さんの旅の目的を聞いたけれど」
「そのこともお聞きしたの」
「ええ」
 それも既にというのです。
「話して聞いたわ」
「それはどういったものなの?」
「何でもウーガブーの国が大変なことになってるらしいのよ」
「大変なことって」
「虫が出てるらしいの、一杯ね」
「虫?」
「どんな虫かはわからないけれど」
 それでもというのです。
「もう国中を埋め尽くして大変らしいのよ」
「作物を荒らす虫かな」
 ハンクは猫のお話を聞いて眉を曇らせました。
「そうした虫だったらね」
「そうよね、林檎もね」
 ベッツイはすぐに黄金の林檎のことを心配しました。
「食べられて」
「林檎がなくなるかも知れないよ」
「そうなったら大変よ」
 ベッツイはお顔を強張らせてハンクに答えました。
「若しそうなったら」
「そうだね、それじゃあね」
「ええ、どんな虫なのかよね」
「何でも今のところは何も被害は出ていないらしいわ」
 猫がその虫のこともお話してきました。
「女王さんが言うにはね」
「作物には?」
「勿論林檎にもね」
「ならいいけれど」
「けれど虫で一杯でね」
「国中が?」
 ベッツイは猫に尋ねました。
「そうなのね」
「そう、だからね」
「それを何とかしたくてなのね」
「女王はクマセンターに行ったらしいわ」
「あそこのピンクの小熊に聞きに行ったのね」
「ピンク=ピンカートンにね」
「そういうことなのね」
 ベッツイは猫から事情を聞いて納得したお顔で頷きました。
「わかったわ」
「じゃあまずはね」
「ええ、クマセンターに行って」
 そうしてと言うのでした。
「女王にお会いしましょう」
「今からね」
「有り難う、行って伝えてお話してくれて」
 ベッツイは猫に笑顔でお礼を言いまいた。
「お陰で助かったわ」
「礼には及ばないわ」
 猫はそのベッツイに誇らしげに返しました。
「当然のことだから」
「今回のことが」
「そう、当然のことだからね」
 それでというのです。
「これ位のことはね」
「貴女ならっていうのね」
「風みたいに速く駆けてしかも休めない」
 猫は胸を張ったまま言うのでした。
「これが出来るのはオズの国で出来るのってそんなにいないでしょ」
「木挽きの馬とウージィはそうね」
「かかしさんや木樵さんは出来ないでしょ」
「あの人達も休む必要はないけれど」 
 つぎはぎ娘もこのことは同じです。
「けれど風の様に速く駆けることはね」
「木挽の馬とウージィだけでしょ、私の他は」
「そして小さいのは」
「貴女だけよ」
「そう、私だけしか出来ないことだからね」
「それで、っていうのね」
「それをしただけだから」
 自分しか出来ないこと、それをしてみせたからというのです。
「当然のことなのよ」
「その当然のことをしたから」
「礼には及ばないわ」
 そうだというのです。
「別にね」
「そうなのね」
「私だけしか出来ないことなら喜んでするわ」
 これがこの猫の誇りなのです、猫にとってはそれを果たすこともまたそうなのです。
「そういうことよ」
「それじゃあ」
「あらためて行きましょう」
 猫はベッツイ達に笑顔で言いました。
「クマセンターに」
「あらためて」
 こうお話してでした、皆でなのでした。
 クマセンターに向かって行きます、やがて森の中に入ってでした。
 一行にです、ベッツイは言いました。
「もうすぐよ」
「そのクマセンターはですね」
「アン女王がおられる」
「そして熊さん達もいるわよ」
 クマセンターだからというのです。
「そもそもあそこは熊さん達の場所だから」
「それで、ですね」
「そう、ぬいぐるみの熊が一杯いるわよ」
 ベッツイは五人にクマセンターのことを説明します、そして。
 ここでなのでした、ベッツイは猫にここでも尋ねました。
「それでだけれど」
「今度は何なの?」
「ええ、女王はお昼は」
「持ってきてるらしいわよ」
 ちゃんとです。
「保存用のお肉やあちこちで手に入れた果物をね」
「そうなのね」
「パンもあるから」
「あちこちのお弁当の木から手に入れたのね」
「そう、食べるものには困っていないらしいわよ」
「今もなの?」
「私が来た時に丁渡お昼と食べていたわよ」
「あら、早いわね」 
 お昼御飯の時間にしてはというのです。
「貴女が最初にクマセンターに来た時にはまだ十時にもなっていなかったでしょ」
「そういえばそうだったわね」
「それでお昼は」
「じゃあおやつだったのかしら」
「そう思うわ、十時だとね」
 お昼ではなく、というのです。
「そちらよ」
「そうよね」
「ただ、十時のおやつも食べられる位なら」
「食べるものに困っていないわね」
「お腹も空いていないわね」
「なら安心ね」
 女王のお腹のこともというのです。
「よかったわ」
「そうよね」
「それじゃあ」
「このことは安心していいわね」
 女王の食べることについてはというのです。
「別にね」
「そうですね、食べるものがあれば」
「それだけで全く違うものだか」
 ベッツイはナターシャにも応えます。
「いいことよ」
「安心して女王のところに行けますね、ただ」
「ただ?」
「オズの国での旅ですから」
 ナターシャはこのことからも言うのでした。
「何時何が起こってもおかしくないですから」
「それで、っていうのね」
「はい、用心はですね」
「しておいた方がいいわね」
「少なくとも気構えはしておくと」
 何時何が起こってもとです。
「違いますよね」
「そう、こうしてクマセンターに行くことにもなっているしね」
「このことも予想していませんでしたね」
「旅に突然の事態はつきものよ、特にここはオズの国だから」
「余計にですね」
「そう、本当に何が起こってもおかしくないから」
 それこそ何時でもです。
「用心していきましょう」
「そういうことですね」
「ではね」
「はい」
 ナターシャはベッツイに笑顔で応えました。
「行きましょう、クマセンターに」
「これからね」
「お昼は何時食べるのかな」
 ここでハンクがベッツイにこのことを尋ねました。
「今の食べるの?」
「ううん、食べる時ね」
「そう、何時にするのかな」
「そうね、クマセンターに行けば丁渡いい時間だけれど」
 お昼過ぎになるからです。
「クマセンターでは熊さん達食べないからね」
「あっ、あそこの熊さん達はぬいぐるみでしたね」
「そう、皆ね」
 そうだとです、ベッツイは恵里香に答えました。
「食べるとしたら女王さんだけれど」
「急がないと若しかしたらね」
 猫がベッツイに言ってきました。
「あの人達何処かに行くかも知れないわよ」
「そうよね、じゃあ女王さんと合流してね」
 そしてと言うベッツイでした。
「一緒に食べた方がいいわね」
「そうするのね」
「その方がいいわね、途中で食べてその間に女王さんが何処かに行ったら」
「本末転倒よ」
「そうなるわね、だからね」
 それでというのです。
「先にクマセンターに行きましょう」
「よし、それじゃあ」
 こうお話してでした、そのうえで。
 一行はまずはクマセンターに行くのでした、そうしてアン女王と合流することを優先させました。



クマセンターへと向かう途中でベッツイが猫を先行させたか。
美姫 「確かにその方が確実みたいだしね」
実際、それでアン女王へと話を持って行けたしな。
美姫 「同時に何でクマセンターにアン女王が居るのかも分かったわね」
ああ。しかし、やっぱり問題が起きているみたいだな。
美姫 「そうなると、すんなりと黄金の林檎を手に入れられるのかどうかよね」
果たして、どうなるのか。
美姫 「次回も待っていますね〜」
待っています。



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