『オズのカエルマン』




                  第六幕  グルメの豹

 皆はムーンの村からでした、さらにです。
 森に向かいます、その中で。
 ふとです、魔法使いは森に行く前の紫の草原を見回してです。神宝達に対してこうしたことを言ったのでした。
「さて、次の森に入るまでに」
「はい、それまでに」
「何か」
「うん、このギリキンのことだけれど」
 言うのはこの国のことでした。
「皆どれだけ知ってるかな」
「ええと、オズの国の北で」
「紫の国ですね」
「オズマ姫が育った国で」
「ジャックさんや木挽の馬さんもですね」
「生まれた国でしたね」
「そうだよ」
 魔法使いは皆に微笑んで答えました。
「そしてそれ以外にもね」
「色々とですか」
「あるんですか」
「この国にも」
「そうだよ、オズの国だからね」
 このギリキンの国もというのです。
「色々な人もいるよ」
「さっきのルーンの村の人みたいに」
「そうなんですね」
「この国にも」
「そして色々な場所もある」
「そうなんですね」
「そう、今後この国にまた旅に出ることがあるけれど」
 このことは間違いないというのです。
「そうしたことも見てね」
「はい、冒険の度に」
「色々と見させてもらいます」
「私達も」
「そうしてね、この国も凄く面白い国だよ」
 ギリキンの国もというのです。
「だから楽しんでね」
「そうさせてもらいます」
「今回の冒険もこれからの冒険も」
「このギリキンでのそれも」
「そうさせてもらいます」
「オズの国で絶対すべきことは何か」
 魔法使いはにこりと笑ってこうも言いました。
「それはね」
「はい、楽しむこと」
「あらゆることを」
「そうだよ、冒険にしてもね」
 このことが絶対だというのです。
「僕もこれまで危険なこともあったけれど」
「魔法使いさんも楽しまれてましたね」
「そうされてましたね」
「だからですね」
「私達もそうして」
「冒険でも何でもすべきですね」
「そう、だから帰ったら」
 この冒険の後もというのです。
「ジグゾーパズルもね」
「そちらもですね」
「楽しんで」
「そうしよう」
 是非にというのです。
「ここはね」
「わかりました、じゃあ」
「都に帰ったらパズルですね」
「皆と一緒に」
「そうしよう、丁渡僕達の冒険が終わって帰る頃には」
 その頃にはといいますと。
「もうね」
「ドロシー嬢達も帰っているよ」 
 カエルマンも皆にお話します。
「それで皆でね」
「パズルも出来ますね」
「その時には」
「うん、だから冒険を楽しんですぐに」
 それこそというのです。
「パズルも楽しめるよ」
「それは嬉しいですね」
「楽しいことの次は楽しいこと」
「オズの国はまず楽しむこと」
「それが絶対なんですね」
「この国では」
「不思議の国はね」
 カエルマンはこうも言うのでした。
「まずは楽しむことだよ」
「それが第一で」
「楽しまないとオズの国じゃない」
「そういうことですね」
「この国は」
「悲しんだり苦しんだりしないことですね」
「そう、確かに人間だからね」
 このオズの国にいてもというのです。
「どうしてもそうした気持ちになる時はあるよ」
「悲しみ、苦しみがないとね」 
 魔法使いもまた言います。
「人は楽しみがわからないから」
「楽しみは他の感情を知って知るんだよ」
「これはあらゆる感情がそうだけれど」
「苦しみ、悲しみ、辛さ、怒ったりもして」
「それで楽しみを知るんだよ」
「そうなるんだよ」
 そうしたよくない感情も知ってというのです。
「僕達にしても苦しんだりするから」
「困ったりもね」
「けれどそれは少しで」
「楽しいことはね」
 このオズの国はといいますと。
「物凄く多いんだ」
「楽しむ気持ちが一番多いんだ」
「それがオズの国なんだ」
「そうした国なんだよ」
 苦しい気持ちになったり悲しい気持ちになったりもする、けれどそれよりも遥かにというのです。楽しい気持ちになる方が。
 だからだとです、カエルマンと魔法使いはお話するのでした。
「だからね」
「ここは明るい国だよ」
「楽しいことが九割以上あるから」
「他の国とは違ってね」
「それ位楽しいことが多いと」
 神宝が言いました。
「苦しい気持ちや悲しい気持ちは調味料ですね」
「そう、楽しい気持ちを引き立てるね」
「そうしたものだよ」
「このことはね」
「そうなっているんだよ」
 二人で神宝に答えるのでした。
「この国ではね」
「そうした気持ちは調味料だよ」
「楽しみをより引き立てる」
「そうしたものなんだよ」
「成程、そうですね」
 神宝は皆の言葉を聞いてなのでした、笑顔で頷きました。
 そしてです、五人で言うのでした。
「それじゃあ僕達は」
「うん、苦しいことや悲しいことも」
 ジョージが神宝に続きます。
「楽しいことの調味料と思ってね」
「受け入れればいいわね」
 恵梨香も笑顔になっています。
「そうした気持ちもあってね」
「楽しいこともある」 
 ナターシャもこう解釈するのでした。
「そうしたことね」
「そうだね、これまではそうした気持ちは嫌だったしこれからもだけれど」
 カルロスの言葉はといいますと。
「受け入れればいいね」
「そういうことだね、確かに苦しいこと悲しいことは嫌だけれど」
「人は生まれ生きていると」
 ケーキも言うのでした。
「どうしてもね」
「そうですよね、苦しいこと悲しいことがありますね」
「オズの国でもね」
「ケーキさんもですよね」
「勿論よ」
 その通りだとです、ケーキは神宝に答えました。
「そうしたこともね」
「そうですよね」
「そう、だからね」
「普通にですね」
「そうしたことは嫌でも受け入れるしかないのよ」
「受け入れてそして」
「楽しみの調味料にしましょう」
「楽しみ、それがいいものなら」 
 カエルマンの笑みはここでは気さくなものでした。
「それは苦しみや悲しみより遥かに勝る」
「いいものならですか」
「そう、悪い楽しみもあるよね」
「悪いことをしての、ですね」
「そうしたことはよくないよ」
「この国で言うとかつてのラゲドー王とか」
 まずはこの人が挙げられました、かつてオズの国を侵略しようと何度も何度も悪巧みをした悪名高い人です。
「あと妖魔もそうでしたね」
「うん、あの種族もかつてはね」
「マボロシ族とか」
「それに靴職人ウグもね」
 この人も名前が出ます。
「悪いことをしてね」
「悪いことを楽しみにしていましたね」
「こうした人達みたいなことはね」
「駄目ですね」
「そう、いいことをして楽しまないと」
 それこそというのです。
「本当の楽しみじゃないよ」
「そういうことですね」
「そうだよ、ではね」
「はい、僕達もいいことをして」
「いい楽しみを楽しもうね」
「わかりました」
 神宝はカエルマンの言葉に頷きました、そうしてでした。
 全員で一緒にさらに先に進みます、そしてその豹のいる森に入りました。
 森の中も勿論紫です、木の葉も下にある草もです。
 全部紫です、その中の紫の茸を見てです。
 ジョージは怪訝なお顔になってカエルマンに尋ねました。
「あの、この茸食べられますよね」
「オズの国に毒茸はないよ」
「ならいいですけれど」
「紫の茸は駄目なのかな」
「アメリカにも他の国にも毒茸がありますから」
 オズの国の外の国はそうなのです。
「ですから」
「毒茸に見えるんだね」
「はい、他の色に比べて」
「確かに。茸が紫ですと」 
 神宝も言います。
「毒茸に思えます」
「本当に食べられるのかしら」
 恵梨香もかなり不安気です、その茸を見て。
「オズの国のことは知っていてね」
「これはね」
「かなり不安な色ね」
 カルロスもナターシャもです、紫の茸には不安なものを感じています。
「鮮やかな紫だし」
「余計に怖く思えるわ」
「茸は怖いよ」
 毒茸はと言う神宝でした。
「もう間違って食べたらとんでもないことになる種類もあるから」
「そうよね、もう死ぬ様なのが」 
 恵梨香も神宝のその言葉に頷きます。
「死ぬみたいな目に遭うのとか」
「あるからね」
「何かゲームであったじゃない」
 ジョージはこちらのお話も出しました。
「食べるっていうか間違えて取ったら死ぬのが」
「あっ、スーパーマリオだったかな」 
 カルロスはジョージの言葉に応えました。
「あのゲームだと」
「あったわね、あの茸は緑だったけれど」 
 ナターシャもその茸のことは知っていました、それで言うのでした。
「あったわね」
「だからね」
 また言う神宝でした。
「不安になるんだよね」
「だから大丈夫だよ」 
 魔法使いは五人を安心させる為に優しい笑顔で答えます。
「そうした心配はね」
「オズの国ならですね」
「ないから」
 だからだというのです。
「安心してね」
「わかりました」
 神宝が皆を代表して頷きました。
「じゃあこの茸もですね」
「食べられるよ」
「美味しいですか?」
「その茸はあまり、だね」 
 魔法使いは味についても答えました。
「美味しくないよ」
「そうですか」
「うん、そうなんだ」
「じゃあ他に美味しい茸が」
「あるよ」
 そうだというのです。
「その辺りはね」
「ケーキだね」
 カエルマンがケーキに顔を向けて言いました。
「こうしたことはな」
「ええ、茸料理もよく作るから」
 そのケーキも神宝達にお話します。
「知ってるつもりよ」
「じゃあこの茸のこともですか」
「知ってるわ、色は違うけれど」
 それでもというのです。
「その形でわかったわ
「美味しい茸かどうか」
「その茸はあまりね」
 実際にというのです。
「美味しくないわ」
「そうですか、じゃあ」
「この茸は食べないで」
 それで、というのです。
「他の茸がいいわ」
「あっ、椎茸があるわ」
 恵梨香はこの茸を見付けました。
「これはいいわね」
「あら、椎茸があるの」
「はい、ここに」
 その茸を指差しての言葉です、見れば木の一つに椎茸が一杯付いています。どれも奇麗な紫色をしています。
「あります」
「それはいいわね」
「この椎茸を使って」
 ここで恵梨香がにこりとして言うことはといいますと。
「色々できますね」
「こっちにはマッシュルームがあるよ」
 ジョージはこの茸を見付けました。
「これも色々使えるよ」
「それもいいわね」
 ケーキはその紫のマッシュルーム達を見て言いました。
「美味しいわよ」
「そうですよね」
「ううん、こうした茸は」
 カルロスはエリンギを見付けています。
「熱帯のとはまた違いますね」
「ええ、またね」
 違うとです、ケーキもカルロスに答えます。
「オズの国でジャングルはね」
「ありませんよね」
「ああした森はないわね」
「僕の国とは違って」
 カルロスの祖国であるブラジルとはです。
「ありませんね」
「そうよ」
「後はツンドラもないですね」
 ナターシャも自分のお国の気候の名前を出します。
「オズの国には」
「寒い場所もね」
「ないですね」
「何処もいつも快適な場所だから」
 まさに常春か常秋です、オズの国は。
「だからね」
「それで、ですね」
「ジャングルとかツンドラはないのよ」
「何処も快適な気候で」
「極端に暑かったり寒い場所はないんですね」
「そうなんですね」
「この国は」
「そう、だからジャングルにある様な茸もなければ」
 それにというのです。
「ツンドラみたいな寒い場所もないわ」
「いや、アラスカみたいな場所があっても」
 魔法使いは祖国アメリカの州の一つのお話をしました。
「それでもね」
「あそこまで寒くないんですね」
「うん、どうしようもない寒さはね」
 ないとです、ジョージに答えます。
「そうだよ」
「そうなんですね」
「まあ茸もね」
 それはなのでした。
「ここには色々あるよ、熱帯や冷帯の場所のはないけれど」
「温帯だね」
 カエルマンはこの気候だと言いました。
「この国の茸は」
「オズのどの場所の茸も」
「そうなんですね」
「そうだよ、そして毒がある種類もない」
 このことも言うカエルマンでした。
「だから安心してね」
「例え美味しくなくともですね」
 神宝は舞茸を見付けてからまたそのあまり美味しくないと言われた茸を見ました。そうしてカエルマンに言うのです。
「食べられるんですね」
「そのことは安心してね」
「わかりました」
 カエルマンのその言葉に頷くのでした。
「それじゃあ美味しい茸だけを食べます」
「そうしてね」
「はい、じゃあ」
 こう頷いてでした、そしてです。
 皆で茸を見付けては手に取るのでした、そうしてからです。
 カエルマンは皆にです、笑顔で提案しました。
「じゃあ今日はね」
「はい、今日は」
「今日のお昼はですね」
「今から」
「皆が集めた茸でね」
 それを使ってというのです。
「お鍋にしよう」
「じゃあどうしたお鍋ですか?」
「今から」
「そうするんですか」
「そうしよう」
 こう笑顔で提案するのでした、そしてです。
 実際にでした、皆で茸を一つに集めます。美味しい茸が何種類も山積みになります。そこにさらにでした。
 魔法使いがです、皆にこうも言いました。
「茸以外のね」
「はい、他の食材もですね」
「必要ですよね」
「そちらはね」
 どうするかといいますと。
「テーブル掛けから。もう切っているものを出すから」
「そしてお鍋もですね」
「それも出してですね」
「そうしてですね」
「皆で食べるんですね」
「今から」
「うん、そうしよう」
 是非にというのです。
「これからね」
「何鍋にしますか?」
 神宝が尋ねました。
「それで」
「そうだね、スープはね」
「はい、それは」
「ここは中華風でどうかな」
「中国の鍋にするんですか」
「うん、君が聞いたからね」 
 だからだというのです。
「君の国の中国の感じでね」
「それじゃあそれで」
「いきましょう」
「中華鍋も美味しいですし」
「いいと思います」
 神宝以外の四人はすぐに魔法使いに答えました。
「それじゃあ鶏ガラですか」
「お醤油で味付けもして」
「それで薬味も入れて」
「皆で食べるんですね」
「そうだよ、けれどね」
 ここで神宝が皆にこのことを言いました。
「中国の料理は作ってから食べるから」
「お鍋もなんだ」
「普通に囲んでじゃなくて」
「そこは少し違うかな、火鍋みたいなのもあるけれどね」
「あっ、火鍋はね」 
 魔法使いはそのお料理には困ったお顔で言いました。
「あまりにも辛いから」
「駄目ですね」
「あの辛さはまた強烈過ぎるよ」
「はい、実は僕も」
 中国人の神宝でもです、火鍋については困ったお顔になっています。そうしてこうしたことを言ったのでした。
「火鍋は」
「食べられないんだね」
「元々四川生まれじゃないですし」
「あれは四川料理だったね」
「四川料理は辛いんです」
 その火鍋だけでなく、というのです。
「物凄く。ですが」
「火鍋はその中でもだよね」
「特別辛いんです」
 その辛さ故にというのです。
「ですから」
「それでだね」
「はい、とても」
 神宝にしてもとです、彼は魔法使いにお話していきます。
「あの鍋は食べられません」
「極端に辛いからね、火鍋は」
「タイ料理も辛いけれど」
 ジョージはこの国のお料理をここで思い出しました。
「火鍋はもっとなんだ」
「うん、ジョージも四川料理は知ってるよね」
「知ってるよ、アメリカのチャイナタウンでも四川料理のお店があるから」
「食べたことあるんだね」
「あるけれど辛いね」
「その四川料理の中でもですから」
 ジョージにも言うのでした。
「お勧め出来ないよ」
「そうなんだね」
「辛いにも限度があるから」
「カレーよりも辛いんだ」
 カルロスはこのお料理をここでお話に出しました。
「あれよりも」
「もっとだよ」
「もっとなんだ」
「本当に火を吹く位辛いから」
「本当にって」
「それはかなりね」
 恵梨香とナターシャも神宝のお話に驚いてです、女の子二人でお話します。
「じゃあちょっとね」
「食べるのは止めた方がいいわね」
「うん、絶対にだよ」
 神宝は女の子二人にも言います、忠告めいた口調になっています。
「あれだけはお勧め出来ないよ」
「じゃあ普通のお鍋でいくべきだね」
 こう言ったのはカエルマンでした。
「やっぱりね」
「普通の、ですか」
「中華料理のね」
「じゃあ鶏ガラとかの」
「そのスープでいこう」 
「わかりました、それじゃあ」
 こうしてです、魔法使いはお鍋に鶏ガラのスープを出してそこに茸やお野菜、それに鶏肉を入れてでした。
 生姜やお葱といった薬味も入れてでした、出来たところで。
 皆で食べようとです、お箸とお碗も出しました。しかしここで。
 ふとです、何処からか声がしてきました。
「美味しい匂いがするな」
「あっ、その声は」
 カエルマンはその声に反応します。
「来たんだね」
「そうさ、この村のリーダーさ」
 こう言ってです、出て来たのは。
 豹でした。豹は素早いしなやかな動きで皆のところに来てでした、一旦毛づくろいを軽くしてから皆に言いました。
「これから皆で美味いものを食うんだな」
「うん、そうだよ」
 カエルマンは豹に明るく答えました。
「丁渡今出来たところだよ」
「それは何よりだな」
「君もどうだい?」
 カエルマンは豹も御飯に誘いました。
「それで」
「そうしていいかい?」
「遠慮は無用だよ」
「実は俺はまだ昼飯を食っていない」
「じゃあ丁渡いいね」
「いやいや、あんた達にご馳走になるのはいいが」 
 ここでこんなことを言う豹でした。
「俺が何も出さないのはよくない」
「そうした遠慮もいらないよ」
「だから俺はこの森のリーダーだからな」
「リーダーだからだね」
「そうさ、だからな」
「何か出してくれるのかな」
「ちょっと待ってくれよ」
 こう言ってです、すぐにでした。
 豹は皆の傍にあった木に飛び上がりました、そしてです。
 すぐに美味しそうな果物を持って来ました、それは幾つもありました。
 その果物を見てです、恵梨香は目を丸くさせて言いました。
「柿?」
「ああ、そうさ」
「紫だけれど」
 色はギリキンのものです、ですがそれでもでした。
 それは柿でした、それで恵梨香は言うのです。
「これはいいデザートね」
「だろ?これが俺の出しものさ」
「有り難う、じゃあお鍋の後は」
「皆で柿を食ってくれよ」
 こう笑顔で、でした。豹は皆に言いました。そうして皆はその鶏ガラスープのお鍋を楽しく食べるのでした。
 そして食べながらです、豹は笑顔で言いました。
「美味いな」
「そうだね、このお鍋もね」
「やっぱり美味いものを食わないとな」
 それこそとです、豹はカエルマンに応えました。
「元気が出ないってことだ」
「その通りだね」
「だから俺もいつもな」
「美味しいものをだね」
「食ってるんだよ」
 そうしているというのです。
「いつもな」
「腹ペコタイガーさんみたいに?」
 ふとです、恵梨香はこの虎の名前を出しました。
「都にいる」
「ああ、あの虎だね」
「知り合いよね、腹ペコタイガーさんとも」
「友達だよ、けれどタイガーさんはな」
 この人はどうかといいますと。
「グルメっていうかな」
「大食漢かしら」
「ああ、だからな」
 それでというのです。
「そこは俺と違うな」
「豹さんはグルメなのね」
「そうさ、確かに俺もたっぷり食いたいさ」
「それでも豹さんは味の方をなのね」
「大事にしてるんだよ」
「そういえばタイガーさんは」
「そうよね」
 ここで、です。ジョージとカルロスも言います。
「味にはあまりね」
「こだわらないね」
「普通の味でもね」
「満足してるよね」
「お料理の味に文句は言わないね」
「絶対にね」
 腹ペコタイガーの優しい性格も影響しています、お料理の口が合わないと言ってその言葉で人が気分を害することを避けているのです。
「まずは量」
「そうした人だから」
「そこはね」
「豹さんと違うね」
「あの人は俺よりも遥かに食うだろ」
 豹はそれが何故かもです、皆に言いました。
「体格も違うしな」
「そうね、虎と豹では体格が違うわ」
 ナターシャも言います。
「虎はかなり大きいわ」
「だろ?俺なんか見なよ」
 豹は自分の体格のこともお話しました。
「痩せてるしな」
「ええ、大きさ自体もね」
「全然違うだろ」
「だからなのね」
「俺は腹ペコタイガーさんよりもな」
 相当にというのです。
「食う量は少ないぜ」
「そうなのね」
「そうしたこともあってな」
「グルメなのね」
「そっちなんだよ」 
 味にこだわるというのです。
「だから美味いものをいつも食ってるのさ」
「この森に美味しいものは多いんだ」
「何でもだぜ」
 豹は神宝に笑って答えました。
「ここは美味いぜ」
「そういえばどの茸も」
「美味いだろ」
「うん、とてもね」
「そうだよ、だからな」
 それこそというのです。
「この森にいれば美味いものには苦労しないぜ」
「そうなんだね」
「特に美味いものはな」
「それは?」
「鳥だな」
 それだというのです。
「俺は鳥が好きだってこともあるけれどな」
「それでなんだね」
「いつも楽しく食ってるぜ」
「あっ、そういえば」
 ここで、でした。神宝はあることに気付きました。それでそのことを尋ねたのでした。
「オズの国で食べられた生きものってどうなるんですか?」
「そのことだね」
「はい、肉食動物の人達いつも一杯食べてますけれど」
「僕達もお肉を食べているしね」
 カエルマンが神宝の言葉に応えます。
「それで食べられた生きものはどうなるのか」
「この国では死なないんですよね」
「どの生きもね」
「けれど食べられたら」
 普通は死んでしまいます、他の国ではです。
「そこはどうなっているんですか?」
「食べられてもね。一日経てばね」
「それで、ですか」
「元に戻るんだ」
「生き返るんですか」
「身体が元に戻るんだ」
 そうなるというのです。
「この国ではね」
「そうだったんですか」
「オズの国は誰も死なない」
 カエルマンはこのことからお話するのでした。
「そもそも魂は不滅だけれど」
「この国では身体もなんですね」
「そう、元に戻るんだ」
 身体はそうなるというのです。
「怪我をしてもなくなっても」
「元に戻るんですね」
「一日経てばね」
「そうだったんですか」
「例え食べられてもね」
 そうなってもというのです。
「この国では誰も死なないんだよ」
「だから豹さんが食べても」
「臆病ライオン君や腹ペコタイガー君でもね」
 勿論他の皆でも同じです。
「安心していいんだよ」
「わかりました、それじゃあ」
「うん、楽しく食べよう」
「そうさ、食うのは最高の楽しみだろ」
 豹も言うのでした。
「しかも死なないって余計に最高だよな」
「その通りだね」
「これがこの国だよ、それでだけれどな」
 豹は自分のお碗の中のものを食べつつ尋ねました。
「あんた達は何処に行くんだい?」
「今回の冒険はね」 
 カエルマンは豹に今回の冒険のことをお話しました、豹は彼のお話を聞き終えてからあらためて言うのでした。
「そうか、じゃあまだまだ先だな」
「ギリキンの国の奥だからね」
「気をつけなよ」 
 強く言う豹でした。
「ここから先はややこしいからな」
「坂があったり山があったり」
「そういう場所が」
「いやいや、他にもあるんだよ」
 それこそとです、豹は五人にもお話します。
「この国もな」
「っていうと一体」
「どんなことが」
「ユークーフーの女巨人はもういないけれど」
「まだあるんだ」
「この国は何でもあるからな」
 ギリキンの国にしてもというのです。
「だからな」
「ナンダ坂だけじゃなくて」
「他にも」
「そうさ、だからな」 
 それでというのです。
「気をつけろよ、蜂だって出るしな」
「蜂!?」
「蜂も出るんだ」
「そうさ、それもかなり凶暴なスズメバチがな」
 出るというのです。
「そうした場所もあるからな」
「それは危ないわね」
 スズメバチと聞いてです、お顔を曇らせたのはケーキでした。
「そんなのに刺されたら」
「そうだろ、そこには行かない方がいいぜ」
「わかったわ、じゃあね」
「ここから北に行って谷のすぐ傍にある森だよ」
 そこにというのです。
「蜂がいるからな」
「わかったわ、じゃあそこにはね」
「入るなよ、あとドラゴンもな」
「そのことはもう知っているよ」
 カエルマンは豹にすぐに答えました。
「あそこには寄らないよ」
「そうしなよ、あの連中はいつも腹を空かしてるからな」
「悪気はなくともね」
「誰でも見たら食いたい食いたいだからな」
「実際に食べようと狙って来るから」
「寄るなよ」
 そのドラゴンのところにもというのです。
「いいな」
「承知しているよ」
「そういうことでな、しかしこの鍋は」
 豹は今度はお鍋のお話をしました。
「美味いな」
「この鍋で作るとね」
「何でもなんだな」
「うん、美味しいんだ」 
 カエルマンは豹ににこりと笑って言いました。
「それこそね」
「それは何よりだな」
「魔法使いさんの魔法の中でも最も素晴らしいものの一つだよ」
「このテーブル掛けはね」 
 魔法使いは今も敷かれているそのテーブル掛けを出して言います。
「食べものは何でもどれだけでも出せるんだ」
「それは凄いな」
「そう、とても役に立っているよ」
「まさに魔法の道具だな」
「これ以上はないまでにな」 
 それこそというのです。
「最高だな」
「うん、自分でもいいものを作ったと思うよ」
「そうだな、大事にしろよ」
「そうしてるよ」
「それは何よりだな」
 豹は魔法使いの返事に笑顔で頷きました、そうしてでした。
 皆で一緒にお昼を食べてです、デザートの柿も食べてなのでした。皆満足して食事を終えました。そうして。
 豹は皆にです、また言いました。
「じゃあこれからだな」
「うん、出発するよ」
「またこの森に来るよな」
「そうするよ」
「機会があれば、か」
「そうだよ、今度は何時になるかな」
「それは何時でもいいさ」
 その時はと言う豹でした、カエルマンに対して。
「俺は待ってるぜ」
「うん、じゃあね」
「それまで楽しく遊んでるさ」
 この森でというのです。
「美味いものを食ってな」
「そうするんだね」
「これまで通りな。あとかかしさん達は元気かい?」 
 カエルマンにそうした人達のことも尋ねました。
「あの人達は」
「うん、皆元気だよ」
「それは何よりだよ、じゃああの人達にもな」
「宜しくだね」
「言っておいてくれよ」
 こうお願いしたのでした。
「それじゃあな」
「今回はこれでお別れだね」
「そうなるな、またな」
 豹は皆にお別れを告げてでした、そして。
 その皆に一礼してです、その身をさっと翻して森の中に消えました、その煙の様に消えた姿を見てでした。
 神宝は唸ってです、こう言いました。
「忍者みたいですね」
「そう言うのね」
「うん、本当に」
 こう恵梨香にも言います。
「ああしてさっと消えるって格好いいね」
「そうね、ただ」
「ただ?」
「いや、忍者とかは」
 それこそというのでした、恵梨香は。
「何か皆誤解してるんじゃないかって」
「ああしてさっと消えたりとか?」
「本当はしないのよ」
「隠れる方かな」
「忍者は見付からないの」
 消えるよりもというのです。
「そういう風にする人達なのよ」
「何か漫画とかじゃさっと出て来てさっと消えたりするけれど」
「また違うんだ」
 そうだというのです。
「あの人達はね」
「そうなんだね」
「そう、普通にね」
 それこそというのです。
「隠れる人達なの」
「そちらなんだね」
「うん」
「そういえば豹も」
 ここで神宝も気付きました。
「どっちかっていうと」
「隠れてよね」
「そうそう、それで木の上からね」
「獲物を襲うわよね」
「頭がいいしね」
「そうした意味だとね」
 豹もというのです。
「忍者だけれど」
「忍者は隠れるもの」
「そうなの」
「そのことは覚えておいた方がいいね」
 神宝は自分で言いました。
「僕にしても」
「まあ。手裏剣とかもね」
「あれ実際はどうだったの?」
「武器よりも道具だし」
 そちらの用途で使うというのです。
「サバイバルツールみたいなものよ」
「武器として投げたりするよりも」
「案外重いらしいの」
「鉄だから」
「そう、あれで案外ね」
「何か漫画とかだと」
 神宝は自分のお国でも出ている日本の忍者漫画からお話しました、実はこの子もかなり漫画が好きなのです。
「一度に何発も投げてたりするよね」
「うんうん、両手でね」
 ジョージも言います。
「一回の戦闘でね」
「普通に何発も投げてるけれど」
「実際はそうじゃないんだ」
「投げられないんだ」
「そうなの、それで威力も」
 肝心のそれはといいますと。
「刃が浅いから」
「十字とか卍の手裏剣?」
「あと八方手裏剣も」
「そう、苦無だって」
 この形の手裏剣もというのです。
「ナイフ程度だから」
「ああ、ナイフならね」
「相当いい場所に命中させないとね」
「漫画みたいに一撃じゃ相手倒せないね」
「とても」
「そうなの、あんまり強い武器zyないの」
 それが忍者の武器である手裏剣だというのです。
「あれはね。それで隠れる方がメインだから」
「消えたりすることも」
「あまりないんだ」
「確かに身体能力はあるけれど」
 このことは確かだというのです。
「それは隠れたり逃げたりするものだから」
「イメージ違うね」
 カルロスも唸る様にして言うのでした。
「漫画とかゲームとかと」
「それは私も思うけれど」
「実際にそうなんだね」
「忍者は戦士でも格闘家でもないの」
「スパイだけれど」
「スパイは見付かったら駄目だから」
「隠れるんだね」
 カルロスも納得しました。
「だから忍者なんだ」
「そうなの、忍ぶ人なの」
「そういうことなんだね」
「けれど考えてみたらそれが当然ね」
 ナターシャが言ってきました。
「忍者は隠れる人達ということは」
「ええ、情報を集めたりが仕事だから」
「暗殺も」
「するけれど」
「それは主な仕事ではないわね」
「実際に戦ったら武士の方が強いわ」
「侍の方が」
 ナターシャはここであえて侍と言いました、その方が格好いい言い方だと思ったからです。彼女個人は。
「強いのね」
「だっていつも身体を鍛えてるから」
「剣道や弓道で」
「武士の方が強いわ」
「実際に戦ったらそうなのね」
「だから新選組の人達になると」
 恵梨香は幕末の京都で戦った人達の名前も出しました。
「物凄い強さだったらしいわ」
「近藤勇局長?」
「土方歳三副長に」
「沖田総司一番隊隊長」
「斎藤一二番隊隊長ね」
「あの人達は本当に強かったのよ」
 そうだったというのです。
「もう今じゃ考えられない位に」
「そんなに強かったっていうと」
 ここで神宝が言うことはといいますと。
「水滸伝の好漢みたいな」
「あの人達も強いよね」
「うん、ただね」
 神宝がジョージにお話することはといいますと。
「あのお話は架空だから」
「実際にはなんだ」
「ああして百八人いなかったし」
「ああした好漢達もなんだね」
「殆どいなかったよ」
「じゃあ魯智深さんみたいな人も」
「いなかったよ」
 実際はそうだったというのです。
「あの人も凄く強いけれどね」
「物凄く重い錫杖振り回してね」
「あと三国志でも関羽様はね」
 神宝は今度はこの人のお話をしました。
「青龍偃月刀持っていなくて」
「へえ、関羽さんもそうだったんだ」
「あの時代あの武器なくてね」
「普通の武器で戦っていたんだ」
「そうだったんだ、呂布だってね」
「あの方天戟の」
「あの人も方天戟持っていなかったよ」
 そうだったというのです。
「実際にね」
「何かイメージ変わるね」
「中々面白いお話をしているね」
 カエルマンは五人のお話を聞いてこう言いました。
「忍者とか豪傑とか」
「はい、アメリカでもガンマンは」
 ジョージがお顔を明るくさせて魔法使いに応えました。
「実際と映画では違うみたいですね」
「そうそう、ドロシー嬢がはじめてこの国に来た時はね」
 魔法使いも言うのでした。
「まだ西部劇の時代が終わってね」
「然程経っていなかったですね」
「僕はその頃のカルフォルニアに行ったことがあったよ」
「西部劇の時代の」
「うん、あの時のカルフォルニアはワイルドだったね」
「実際にああした世界だったんですね」
「そうだよ、荒っぽくてね」
「ガンマンがいて」
「治安の悪い場所には行かなかったけれど」
 それでもだというのです。
「ああした世界だったよ」
「カウボーイもいて」
「騎兵隊もいたね」
 当時のカルフォルニアはというのです。
「それでそのガンマンやカウボーイ、騎兵もね」
「実際のその人達はですね」
 ここでジョージはカルロスを見て言いました。
「アフリカ系の人もいたんですよね」
「そうそう、カウボーイにもガンマンにも多くて」
「そして騎兵隊にも」
「いたんだよ」
「実際はそうだったんですね」
「そこが違うんだ」
「そうだったんですね」
「実際はね」
「ううん、面白いですね」
 カルロスはそのお話を聞いて目を瞬かせて唸る様にして言いました。
「実際と映画やアニメは違うんですね」
「そうだね、それとこの国はね」
 オズの国はといいますと。
「インディアン、ネイティブの人達もいるから」
「あっ、じゃあその人達の村にも」
「行けるんですね」
「うん、そうだよ」
 魔法使いは皆にこのこともお話するのでした。
「このギリキンの国にもあるからね」
「そこにも寄ることになるかもね」
 カエルマンも皆にお話します。
「その時は楽しみにしておいてね」
「はい、じゃあネイティブの人達とも」
「楽しくお会いします」
「そうしたことも楽しむ」
「それがオズの国の決まりですから」
「あの人達ともですね」
「楽しく会って楽しい時を過ごそう」
 カエルマンは五人に明るくお話しました。
「それじゃあね」
「はい、さらにですね」
「北にですね」
「行こうね」
 カエルマンは皆に笑顔で言いました、そうして豹の森を後にしてでした。ギリキンの国のさらに北を進むのでした。



今回出てきたのは豹。
美姫 「普通なら慌てて逃げるなりするけれどね」
オズではそんな心配もないからな。
美姫 「仲良く話しながら一緒に食事ね」
グルメみたいだしな。
美姫 「特に問題もなく、すんなりと豹の森も通過できたわね」
だな。後、どのぐらいで辿り着けるのか。
美姫 「次回は何があるのか楽しみです」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」



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