『オズのポリクローム』




                     第一幕  ボームさん

 恵里香達五人は今は学校のお昼休みを楽しく過ごしていました。給食をお腹一杯食べてその後で学校の図書館に入ってです。
 そこで本を読みながら楽しくお話しています、その本はといいますと。
 オズシリーズの本です、その本を読みながらです。
 恵里香はしみじみとしてです、皆に言いました。
「最初はボームさんが王室の歴史を書いていたのね」
「うん、アメリカでね」
 そのアメリカ人のジョージが恵里香に答えます。
「そうだったんだよ」
「そうよね、そしてそのボームさんがオズの国に入られてからは」
「ボームさんがオズの国から教えてくれているんだ」
 オズの国の歴史書を書くことを定められた人達にです。
「色々な手段でね」
「そうよね、ボームさんがおられてこそね」
「オズの国のことがわかるんだよね、皆」 
 神宝もオズの国についての本を手にしています。
「どうなっているのかを」
「そうよね」
「そして僕達はだね」
 神宝はこうも言いました。
「オズの国に出入りして実際に見ているね」
「そしてその歴史をだね」
 今度はカルロスが言いました。
「僕達はこの目で見ているんだね」
「そうよね、実際に」
「そして僕達の冒険もね」
「ボームさんがこちらの世界に教えてくれているんだね」
「そうよね、けれどボームさんのことは」
「私達はお会いしていないわね」
 ナターシャはまさにそのことをです、指摘しました。
「あの人には」
「確かあの人は」
 恵里香がまた言うのでした。
「王宮におられるけれど」
「まだお会いしていないわね」
「そうね、一度お会いしようかしら」
 こう言うのでした。
「オズの国に行ったら」
「うん、じゃあね」
「これからね」
「オズの国に行って」
 そしてというのです、男の子三人もです。
 オズの国に行くことに決めました、そして。
 皆でオズの国に行くことにしました、ですが。
 そこでナターシャがです、四人に尋ねました。
「皆ボームさんのことは知ってるわね」
「ええ、どうした人なのか」
「本にも書いてあるし」
「おおよそこのことはね」
「知ってるつもりだよ」
 四人はナターシャにこうそれぞれ答えました。
 そしてです、ナターシャも言うのでした。
「私もおおよそ知ってるわ、私達子供のことをいつも考えてくれている素晴らしい人ね」
「そうね、けれど私達何度もオズの国に行ってるのに」
 恵里香もナターシャに応えて言います。
「ボームさんにはね」
「お会いしていないわね」
「そうなのよね」
 この人だけにはというのです。
「色々な人にはお会いしてるのね」
「いつも王宮には行くのに」
「どうしてもね」
「ボームさんにはお会いしていないわね」
「じゃあね」
「ええ、今度の冒険ではね」
 オズの国に行くことをです、五人はこう言っています。
「まずはボームさんにお会いしましょう」
「そうするべきね」
「いや、本当にオズの国に行くことは嬉しいわ」
 ここで、です。こうも言ったナターシャでした。
「だってあの国はいつも春だから」
「ああ、ロシアはね」
「とにかく寒いからね」
「だからだよね」
「そうなの、日本の冬ですらね」
 それこそとです、男の子三人にも言うのでした。
「暖かい位だから」
「いつも春のオズの国はね」
「ナターシャにとっては嬉しいものなんだね」
「行くだけでも」
「そうなの、では行きましょう」
 微かに笑ってです、そしてでした。
 五人は席を立ってでした、そうして。
 八条大学の時計塔のところまで行ってでした、そこの青い渦の中に入ってです。そのうえで五人一緒になのでした。
 オズの国に行きました、そして。
 王宮に来るとです、ジィージがオズマに尋ねました。
「あの、ボームさんはおられますか?」
「王室付の歴史編纂室長のあの人ね」
「はい、あの人はおられますか?」
「おられるわよ」
 微笑んで、です。オズマはジョージに答えました。
「この王宮にね」
「ではお会いしていいですか?」
「そういえばね」
 ジョージのお願いにです、オズマも気付きました。
「貴方達ボームさんとお会いしていないわね」
「はい、そのことに気付きまして」
「ボームさんにお会いしたいのね」
「はい、じゃあお会いしていいですか?」
「いいわよ、ではね」
「はい、今からボームさんのところに行ってきます」
「そうします」
 ジョージが五人を代表してでした、そのうえで。
 皆で一緒にでした、ボームさんのお部屋に行きますと。
 そこに穏やかなお顔立ちでお髭を生やしたスーツの方がおられてです。五人が扉に来たところででした。
 自分から出て来てです、こう言って来ました。
「やあ、ようこそ」
「あっ、ノックしようと思ったら」
「扉を」
「もうですか」
「察しておられたんですね」
「そうだよ、足音が聞こえたからね」
 扉のところにです。
「若しやと思ったら」
「僕達が来ていた」
「そういうことですね」
「いや、じゃあ」
「今からですね」
「お邪魔していいですか?」
「いいよ」
 穏やかな笑顔で、でした。その人ボームさんはです。
 皆に頷いてでした、お部屋の中に入れてくれてです。皆にお菓子とお茶を出してくれました。お菓子は外郎、お茶は番茶です。 
 そのお菓子とお茶を出してです、ボームさんは言うのでした。
「日本のういろうもいいねえ」
「名古屋のお菓子ですね」
「うん、実はこの国に来るまでは日本のことを知らなかったんだ」
 こう恵里香に答えるのでした。
「あまりね、けれどね」
「オズの国に来られてからですか」
「知る様になったよ」
 こうお話するのでした、皆と同じテーブルに座って。
「かえってね」
「そうなんですね」
「皆知ってると思うけれどオズの国はね」
「はい、アメリカが反映されますよね」86
 ジョージがここでボームさんに応えました。
「そうですよね」
「うん、だからね」
「アメリカに日系人の人が増えて」
「日本文化が入るとね」
「こうしたものも食べられますね」
「そうだよ、だからね」 
 ボームさんもというのです。
「日本のことをよく知る様になったよ」
「そうですよね」
「日本以外の国のこともね」
 ボームさんは神宝も見ました。
「知る様になったよ」
「中国のこともですね」
「うん、ブラジルやロシアのこともね」
 ボームさんはカルロスとナターシャも見ました。
「知る様になったよ」
「そうですよね」
「いや、本当にね」
 実にと言うボームさんでした。
「アメリカの多様さは面白いし素晴らしいね」
「ボームさんがおられた頃のアメリカと今のアメリカは違いますね」
「全く違うよ」
 それこそとです、ジョージにも答えます。
「何もかもがね」
「やっぱりそうですよね」
「テレビもなかったし」
「はい、まずは」
「ラジオだけだったね」
 ボームさんがアメリカにいた頃はというのです。
「あの時は」
「そうだったよ、けれどね」
「けれど?」
「あの時はあの時で楽しかったよ」
「テレビがなくてもですか」
「ラジオでもね。それにどんどん色々なものが出て来て」
 ラジオだけでなくというのです。
「潜水艦や飛行機も出て来てね」
「あっ、そういえば」
 ボームさんのお言葉を受けてです、ジョージは言いました。
「オズの国もそうでしたね」
「この国はアメリカが反映されるね」
「はい、だからですね」
「アメリカにどんどんそういったものが出て来て僕は凄く嬉しかったけれど」
 それでもというのです。
「それがオズの国にも反映されていてね」
「そのこともですね」
「嬉しかったよ」
 そのどちらもというのです。
「とてもね」
「そうだったんですね」
「アメリカのこともオズの国のこともね」
「あの、ボームさんはどちらがよりお好きですか?」
 神宝は笑顔でお話するボームさんに尋ねました。
「祖国アメリカと今おられるオズの国と」
「両方だよ」
 これがボームさんのお返事でした。
「僕にとってはもう両方が祖国だよ」
「アメリカもオズの国も」
「うん、両方ね」
「そうなんですか」
「けれどまさかこうして王宮に入るとは思わなかったよ」
 ボームさんはそこまではというのです。
「そしてこうしてオズの歴史を編纂しているなんてね」
「アメリカにおられた時の様に」
 カルロスはあえてボームさんにこう尋ねました。
「同じくですね」
「うん、引き続きこの仕事が出来て」
「それで王宮に入られたことは」
「オズの国にいつも行きたいと思っていたけれど」
 アメリカにいた時はです。
「こうしてオズの国に行くことが出来てしかも王宮にいられるなんてね」
「思っていませんでしたか」
「そこまではね」
「けれどボームさんなら当然じゃないんですか?」
 恵理香はこう言うのでした。
「だってオズの国を私達の世界に最初に紹介してくれた人じゃないですか」
「そうだね、僕が最初に紹介したんだったね」
「はい、それなら」
「そうだけれどね」
「それでもですか」
「うん、オズの国の何処かで一人で編纂しているかなと思ったけれど」
 それでもというのです。
「王宮まで入られるなんてね」
「とてもですか」
「思っていなかったからね」
 これがボームさんのお返事でした。
「嬉しいよ」
「では今は凄く幸せですね」
 最後にナターシャがボームさんに聞きました。
「オズの国、しかも王宮におられて」
「うん、凄くね」
「やっぱりそうですね」
「何も心配いらないで楽しく過ごせる場所だよ」
「オズの国の中でも」
「だっていつも周りに友達が沢山いるからね」
 だからだというのです、ボームさんが楽しく過ごせる理由は。王宮の中で贅沢な暮らしが出来るからではなくです。
「僕はいつも凄く幸せに過ごしてるよ」
 そうだというのです。
「歴史も編纂しているよ」
「じゃあ僕達の冒険もですね」
 ジョージはボームさんに自分達の冒険のことを尋ねました。
「これまで何回かオズの国を回っていますけれど」
「勿論だよ、君達が最初この国に来た時からね」
「エメラルドの都に最初に来た時の」
「あの時もね」
 その時もというのです。
「歴史書に書いているよ」
「そうなんですね」
「うん、書いておいたよ」
「そうなんですね」
「君達の冒険は全て書いているよ」
「他の人達の冒険もですね」
「うん、全部ね」
 それこそというのです。
「書いているよ」
「そうなんですね」
「色々な冒険のある国だからね」
「その数々の冒険をですね」
「全部書いて残しているよ」
 オズの国の歴史書にというのです。
「オズマ姫やドロシーの旅もね」
「そういえばドロシーさんは」
 恵理香はドロシーの名前が出たところで言いました。
「一番数多く冒険に関わっている人ですね」
「そうだね、あの娘はね」
「何かあれば冒険に関わりますよね」
「あの娘はそうした娘なんだ」
 それがドロシーだというのです。
「冒険にどうしても関わる、冒険の方からあの娘を呼ぶんだ」
「冒険の方からですか」
「そうなんだ、あちらからね」
「だからいつも冒険をするんですね」 
 ジョージもドロシーについてお話しました。
「何かと」
「そうなんだ、そしてドロシーはその冒険がね」
「大好きですよね」
「冒険を心から楽しめる娘なんだ」
「例え何があろうともですね」
「そうだよ、決して希望を失わないしね」
 このこともドロシーのいいところです、ドロシーはいつも前向きで何があっても諦めないそうした娘なのです。
「だから何があってもね」
「乗り越えられるんですね」
「そしてあの娘にはいつもね」
「はい、周りにですね」
「頼りになる人達がいてくれるね」
 本当にです、ドロシーの周りにはいつも彼女のお友達がいます。そしてその人達と仲良く冒険をしているのです。
「かかしさんや木樵さんにね」
「臆病ライオンさん達も」
「その皆がいてくれてね」
「ドロシーさんを助けてくれるんですね」
「ドロシーも助けるしね」
 お互いになのです。
「そうしているんだ」
「そうなんですね」
「あの娘はそうした娘なんだ」
「生粋の冒険者で」
「そう、いつも周りに人がいてくれる」
「神様のご加護があるんですね」
「そうだね、あの娘にはね」
 それがドロシーだというのです、こうお話してです。
 そしてです、五人はボームさんと一緒にお茶とお菓子を楽しみました。ういろうは七種類あってそのどれもが美味しいです。
 ボームさんとお話をしてからです、五人は王宮の中庭に出ました。そこでかかしや木樵と一緒にクリケットをしているドロシーに会ってです。
 ボームさんのことをお話しました、するとです。
 ドロシーはにこりと笑ってです、五人にこう言いました。
「あの人がアメリカを去る時にね」
「その時にですか」
「そうなの、皆であの人がオズの国に来る様にお願いしたの」
「それでオズの国に来られたんですね」
「しかも王宮にね」
 そこにというのです。
「そうお願いしたの」
「そうだったんですね」
「そう、それでね」
「それで、ですか」
 ジョージがドロシーの言葉に応えます。
「ボームさんはこの王宮に来られたんですね」
「そうなの」
「成程、そうだったんですね」
「それで来てくれて」
 そしてというのです。
「今は皆と楽しく過ごしているのよ」
「オズの国の歴史編纂係としてですね」
「あの人がいなかったら」
 それこそともお話するドロシーでした。
「私達のことを誰が皆に教えてくれたか」
「うん、そのことはね」
「わからなかったよ」
 かかしと木樵も言うのでした。二人共今日はエメラルドの都に来てドロシーと遊んでいるのです。横には臆病ライオンと腹ペコタイガーもいて気持ちよさそうに寝ています。
「果たして誰が教えてくれたか」
「一体ね」
「そのことはね」
「わからなかったね」
「そうなの、ボームさんがいてくれたから」
 ドロシーも言うのでした。
「私達のことが皆に知ってもらってね」
「そしてね」
「後にも王室編纂係の人が出てくれたんだよ」
「今も書いてくれていて」
「賑やかになっているんだ」
「そうなんですね、最初にボームさんがいてくれて」
 そしてとです、ジョージはまた言いました。
「後の人も出て来たんですね」
「最初に誰か出てくれないと」 
 ドロシーがお話しました。
「何もはじまらないのよ」
「ううん、そうなんですね」
「最初に誰か出てくれないと」
「お話は動かない」
「何もはじまらないんですね」
「そうしたものなんですね」
 ジョージだけでなくです、四人も頷くのでした。
「ううん、ボームさんがいてくれなかったら」
「僕達もオズの国のことを知れなかったかも知れないんですね」
「そしてこうしてドロシーさんに会えなかったかも」
「オズの国に行くことも」
「なかったかも知れないんですね」
「そうかも知れなかったのよ」
 実際にとです、ドロシーは五人に答えました。
「私も皆に会えなかったかもね」
「ボームさんがおられてこそ」
「それで、ですか」
「僕達はドロシーさんを知ることが出来て」
「オズの国にも来られて」
「皆さんとも会えたんですね」
「そうなるわ、だから皆ボームさんに感謝しているの」
 それこそというのです、ドロシーも。
「そして今はあの人とも楽しく遊んでいるのよ」
「ボームさんもスポーツをされるんですか?」
 ジョージはドロシーにこのことを尋ねました。
「あの人も」
「いえ、あの人はね」
「何かスポーツはでしたよね」
「ご自身がされることはあまりないの」
「アメリカにおられた時はお身体が弱くて」
「そうした方だったから」
 だからだというのです、オズの国に来てからも。
「観戦はされるけれど」
「それでもですね」
「そう、ご自身ではされないから」
 スポーツをというのです。
「お部屋の中で本を読んだりお茶を飲んだりお喋りしたり」
「あとゲームですね」
「ええ、ゲームもお好きよ」
 テレビゲームやネットゲームをというのです。
「あの人は」
「そういった遊びがお好きなんですね」
「そうなの」
「遊び方はそれぞれですから」
「あの人はそういった遊びが好きなの」
「だから僕達ともですね」
「お話をしたのよ」
 お茶を飲みながらだというのです。
「最近あの人和菓子がお好きでね」
「あっ、ういろうですね」
「そう、ういろうはね」
 ドロシーもです、ういろうについて笑顔でお話しました。
「凄く美味しいわよね」
「はい、とても」
「七種類あってね」
「白と黒、抹茶に小豆とコーヒー、それに柚と桜ですね」
「七種類があってね」
 それこそというのです。
「お茶があって」
「最高ですよね」
「私も好きよ」
 ドロシーもにこりと笑って言いました。
「ういろうはね」
「そうだよね、ドロシーも和菓子好きだからね」
「ういろうや羊羹もね」
 ここで臆病ライオンと腹ペコタイガーも起きて首を起こして言ってきました。
「だから昨日もね」
「ういろう食べたよね」
「そうなの、オズマと一緒にね」
 ドロシーは二匹の心優しい獣にもにこりと笑って答えました。
「楽しく食べたわ」
「そうだよね」
「僕達もすぐ傍で見ていたよ」
「ベッツイ、それにトロットも一緒でね」
「四人仲良く食べていたね」
「そうだったんですか、そういえば」
 ここでふとです、ジョージはある人のことを思い出して言いました。
「ポリクロームさんは」
「あっ、あの娘は最近お空の上にいるの」
 彼女のお家にとです、ドロシーが答えました。
「だから昨日もね」
「おられなかったんですか」
「そうなの」
「ポリクロームさんはおられる時とそうでない時がありますね」
 神宝は上を見上げました、ポリクロームがいるその場所を。
「お家がお空にあるので」
「そうなの、あの娘はね」
 ドロシーも神宝に答えてお話します。
「王宮にもね」
「おられる時とおられない時がありますよね」
「そうなのよ」
「おられる時は、ですよね」
 カルロスも言います。
「楽しく過ごされてますよね」
「地上でもね」
「そしてお空でもですね」
「そうよ」
 そちらでもというのです。
「楽しく過ごしているのよ」
「あの、それじゃあ」
 ナターシャもお空を見上げています、今は五人共そうしています。
「お空に行けば」
「ええ、あの娘がいるわ」
「そうですよね」
「お空に行くことが出来たら」
 恵理香がここで言うことはといいますと。
「私達もポリクロームさんと楽しく遊べますね」
「そうよ、ただね」
「お空の上ですから」
「そうは行けないわよ」
 ドロシーはこのことを少し残念そうに言いました。
「私達でもね」
「飛ぶ魔法を使えば」
 ジョージはここでこう言いました。
「行けますか?」
「魔法ね」
「はい、そうでないのなら」
「気球や飛行船を使ってよね」
「そうしたら行けませんか?」 
 こう言うのでした。
「どうですか?」
「そうね、それなら行けるかも知れないわね」
「あの、じゃあ」
「ふむ、気球ならね」 
 お話を聞いていたかかしも言いました。
「行けるかも知れないね」
「うん、そうだね」
 木樵はかかしのその言葉に頷きました。
「あれを使えばね」
「うん、行けるかも知れないよ」
「そしてお空でもね」
「ポリクロームに会えるかも」
「そうかもね」
 こうしたことをお話するのでした、そして。
 ドロシーは腕をです、こんなことを言いました。
「あのね」
「あの?」
「あのっていうと」
「いえ、気球なら魔法使いさんが持ってるけれど」
 こうかかしと木樵に言うのでした。
「あの気球でポリクロームのお家まで行けるかしら」
「その高さまで辿り着けるか」
「そのことが問題だっていうんだね」
「ええ、ポリクロームのお家は雲のところにあるわよね」
 こう言うのでした。
「だったらね」
「あの気球でそこまで行けるか」
「雲の高さまで」
「そのことがだね」
「問題なんだね」
「気付いたのよ」
 ふと、というのです。
「今ね」
「気球もそれ位の高さまで行けませんか?」
 ジョージはこうドロシーに尋ねました。
「あれだと」
「行けるかしら」
「はい、それで」
「どうかしら」
 ドロシーは首を傾げさせたまま言いました。
「行けたらいいけれど」
「やってみますか?」
「そうね、少し考えてみたいけれど」
 ドロシーは考えつつ言うのでした。
「どうかしらね」
「翼を生やすとか?」
「それはどうかな」
 ここで言ったのは臆病ライオンと腹ペコタイガーでした。
「そういうのはね」
「どうかな」
「それで鳥みたいに飛んでね」
「ポリクロームのところまで行く?」
「魔法で、よね」
 ドロシーは二匹のお話を聞いて述べました、
「オズマかグリンダの」
「魔法使いさんの魔法は少し違うからね」
「そういうのじゃないからね」
「だからね」
「オズマかグリンダにお願いしてね」
「それもいいけれど鳥はそこまで高く飛べないわよ」
 ドロシーは翼では、と答えました。
「鳥は案外高く飛べないのよ」
「そういえば雲の高さまではね」
「鳥は見えないね」
 二匹も言われて気付きました。
「そこまで高くなると」
「どうもね」
「昆虫はいるらしいよ」
 神宝が二匹に答えました。
「その高さでもね」
「あっ、虫はなんだ」
「飛んでいるんだ」
「そうみたいだよ、本で読んだけれど」
「ううん、虫って凄いね」
「鳥でも飛べないところまで飛んでるとかね」
「そうだよね」
 二匹は神宝のその言葉に唸りました、そして。
 あらためてです、また言うのでした。
「じゃあ虫の羽根を生やす?」
「蜂とかのね」
「それだとね」
「ポリクロームのところまで行けるかな」
「どうかしら、昆虫の羽根ならいけるかしら」
 ドロシーは神宝達のやり取りを聞いて自分の顎に手を当てて考えるお顔になっていました、そのうえでなのでした。
 また腕を組んで、です。お空を見上げました。するとかなり高いです。
 その高いお空を見てでした、また言いました。
「どうかしらね」
「オズの国に飛行機は」
「皆の国みたいなのはないわよ」
 ドロシーはこうカルロスに答えました。
「あるけれど、ヘリも」
「そうですか」
「あくまでオズの国を行き来するもので」
「あっ、そうなんですか」
「そう、あまり距離を飛ぶものじゃなくてね」
「高さも」
「そんな高い距離を飛ぶことは」
 そうしたことはというのです。
「無理よ」
「そうなんですね」
「ヘリコプターもあるけれど」
 オズの国にはこちらもあるというのです。
「そこまでの高さはね、そもそも姿も」
「僕達の世界のものとは」
「違うから」
 そうだというのです。
「だってオズの国はお伽の国だから」
「それで、ですね」
「ええ、違うから」
「ううん、そうなんですね」
「だから私も最初からお話に出さなかったの」
 飛行機やヘリコプターをというのです。
「そうしたの」
「そうだったんですか」
「オズの国の飛行機やヘリはですか」
「そんなにですか」
「高く飛べない」
「そうなんですね」
「そうなの、あまり遠くまで飛ぶ必要もないし」
 ドロシーは五人にこうもお話しました。
「オズの国の中を行き来出来ればいいから」
「あっ、オズの国を出てですね」
「遠くに行く必要もありませんね」
「オズの国のあるこの大陸だけで充分で」
「死の砂漠を越える必要もないですから」
「だからですね」
「そうよ、オークという鳥がいる島まで行って帰られる位なら」
 オズの国の近くの島に住んでいるとても速いスピードでお空を飛ぶ鳥です。
「いいから」
「オズの国の飛行機やヘリは」
「遠くまで飛ぶ必要がない」
「そして高く飛ぶ必要もない」
「そういう事情で」
「雲のところに行くにも」
 それもというのです。
「必要がないと思っていたから」
「じゃあポリクロームさんのところに行くには」
「飛行機やヘリは使えないですね」
「それに翼も」
「翼を使う魔法をグリンダさん達からお借りしても」
「無理かも知れないですね」
「そうね、一体どうしたものかしら」
 ドロシーも五人と一緒に腕を組んで考えだしました、それはかかしや木樵達も同じで。
 皆で考えだしました、そして。
 かかしは皆にです、こう提案しました。
「皆で話して考えてみたらどうかな」
「王宮にいる皆で」
「どうして雲のところまで行くのか」
「ポリクロームさんのところまで」
「どうしたら行けるのか」
「皆でお話すればですね」
「僕としては飛行船かな」
 かかしはこれが一番いいというのです。
「これだと思うけれどね」
「それはどうしてかな」
「うん、気球だと飛行船より燃料を多く搭載出来ないし」
 かかしは木樵の問いにすぐに答えました。
「それに気球は乗っている場所が剥き出しじゃない」
「だから何かあれば」
「落ちたりするから」
「だからだね」
「うん、飛行船はちゃんと乗っている人の場所は閉じられているね」
「うん、船体の下の方でね」
 木樵もこのことは知っています。
「しっかりと密閉されているね」
「だからこちらの方がいいと思うけれど」
「それでなんだね」
「どうかなと思うけれど」
 これがかかしの考えでした。
「飛行船でゆっくりと安全に行けばいいよ」
「それじゃあそのことを皆のいる場所で提案するんだね」
「そうしてみるつもりだよ」 
 こう木樵にお話するのでした、そしてです。
 まずは皆で相談することにしました、ポリクロームの国に行くにはどうすればいいのか。すぐに王宮にいる皆でお話することになりました。



今度の冒険は空か。
美姫 「まずはその手段ね」
今の所は飛行船でって事になっているけれど。
美姫 「それで問題なく雲の高さまで行けるかしら」
さて、どうなんだろうか。
美姫 「次回も待っていますね」
待っています。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る