『オズのポリクローム』




                 第十二幕  雲と虹を渡って

 皆は団長さんに雷玉のある場所を聞いてでした、そこに行くことにしました。そしてです。
 天使さん達とお別れをしてでした、皆で飛行船に乗り込んでです。
 お空の世界に戻って西に進みました、島を覆っている雲を抜けると。
 そこから西を見てです、ポリクロームは言いました。
「ここから進んでいけば」
「うん、雲が連なる場所があってね」
 それでとです、魔法使いがぽりクロームに答えます。
「そこにだよ」
「雷玉があるのね」
「そうだよ、だからまずはね」
「西に行って」
「そして行こう」 
 是非にとです、子供達も言います。
「ここはね」
「はい、それじゃあ」
「このまま進んで」
「そして、ですね」
「雷玉を見付けて」
「それで雷の精霊さん達のところに戻って」
 五人も言います。
「雷玉をお渡ししたら」
「それで一件落着ですね」
「長さんもほっと出来ますね」
「いいことですよね」
「喜ばれますよね」
「そうなるわね、ただね」 
 ポリクロームが五人に行って来ました。
「雷玉を長さんに返したら」
「あっ、そうですね」
 神宝が最初に気付きました。
「それでもう」
「私達の旅は終わりになるわ」
「そうですよね」
「最初は私のお家に来るだけだったでしょ」
「はい」
 今度はカルロスが答えます。
「それで帰るつもりでした」
「それが雷玉を見付ける旅になったわね」
 雷の精霊さんのお家に行ってです、そこからそうなりました。
「それで雷玉を見付けたら」
「もうそれで」
「終わりになるわ」
「そう思うと寂しいですね」 
 恵梨香は実際に少し寂しそうに言いました。
「この旅しい旅が終わるって思うと」
「そう思うわね、恵梨香も」
「どうしても」
「そうね、この旅も楽しい旅だったわ」
 ナターシャもしみじみとして言います。
「とてもね」
「その旅が終わると」
 それこそというのです。
「皆と一旦お別れね」
「そうなりますね」
「けれどどんな楽しい旅も終わるから」
 ここで言ったのはジョージでした。
「絶対にね」
「はじまりがあると?」
「はい、終わりもありますよね」
「旅にしても」
「ですからまたオズの国に遊びに来た時に」
 まさにその時にというのです。
「楽しめばいいです」
「別の旅を」
「どんな面白い漫画もアニメも終わります」
 何時かは絶対にというのです。
「それは悲しいことだってお母さんが言ってましたけれど」
「それでもなのね」
「悲しい気持ちは抑えてまた面白い漫画やアニメを楽しめばいい」
「そうお母さんに教えてもあったのね」
「そうでした」
 まさにというのです。
「ですからこの旅は」
「これで終わっても」
「また楽しめばいいって言われました」
「ジョージの言う通りだよ」
 魔法使いがここで微笑んでこうお話しました。
「旅が終わってもね」
「それでもですね」
「また別の旅があるから」
「その旅を楽しめばいいですね」
「そうだよ、だからこの旅はもうすぐ終わるけれど」
 それでもというのです。
「最後まで楽しんでね」
「そして、ですね」
「別の旅を楽しもう」
 こう皆にお話するのでした、そしてです。 
 飛行船を西に進ませていきました、するとお昼にです。
 その雲が連なっている場所が見えてきました、その連なった雲達を見てです。ドロシーが目を輝かせて言いました。
「何かあの雲を見てると」
「渡りたいよね」
「雲を一つ一つ」
「ええ、飛行船で傍まで行ってもいいけれど」
 それでもとです、ドロシーは臆病ライオンと腹ペコタイガーに応えます。
「それでもね」
「ああして雲が段みたいに連なってると」
「それでだね」
「ええ、飛んで渡りたくなったわ」
「それなら」
 ここでポリクロームがドロシー達に応えました。
「一ついい方法があるわよ」
「どうするの?」
「私の虹は渡れるのよ」
「あっ、虹を橋にして」
「それが出来るから」
 だからだというのです。
「雲と雲の間に虹の橋をかけてね」
「進んでいけばいいのね」
「そうしましょう」
「では雲を渡れる靴を出そう」
 魔法使いは皆に笑顔で言いました。
「人数分はあるよ」
「ドロシー達はそれでいいけれど」
 トトがここで魔法使いに言いました。
「僕達は」
「そう、君達にもちゃんと方法があるよ」
「どうするのかな」
「ほら、足の裏に塗れば雲を渡れるクリームもあるから」
「あっ、そのクリームを足の裏に塗れば」
「雲を渡れるよ」
 動物達もというのです。
「だから君達も行けばいいよ」
「そうさせてもらうね」
 是非にと応えてです、そしてでした。
 皆はそれぞれ魔法使いが出してくれた靴を履いてクリームを塗ってでした。そのうえでなのでした。飛行船を先頭の雲のところに止めて。
 そこから雲に出ました、するとです。
 雲の上に立てました、最初に雲の上に立ったジョージは実際に飛び上がってそのうえで跳ねたりもしながら言いました。
「普通の雲でもなんですね」
「その靴ならね」
「こうしてですね」
「そう、雲の上を立ててね」
 そしてというのです。
「歩けるんだよ」
「そうなんですね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「雷玉がある雲はもうわかっているから」
「どの雲ですか?」
 神宝が魔法使いに雷玉のある雲はどれかと尋ねました。
「それで」
「あの雲だよ」
 一番奥にある雲を指差してです、魔法使いは答えました。
「これに反応があるから」
「あっ、魔法の道具に反応する磁針ですね」
 恵梨香は魔法使いが持っている磁針に気付きました。見れば魔法使いのその手には一見すると方位磁針に見えるものがあります。
「それに反応があるから」
「あそこにあるよ」
「それじゃあ」
「あの雲に行けば」
 それで、というのです。
「雷玉があるよ」
「そうなんですね」
「じゃあ行こう」
 その雲までというのです。
「これから」
「わかりました」
「それじゃあ今からですね」
「あそこまで、ですね」
「雲を渡っていって行きましょう」
「あの、ポリクロームさん」
 ナターシャはポリクロームに尋ねました。
「これからですね」
「そうよ、私が雲と雲の間に虹をかけるから」
「それじゃあ雲と雲の間も」
「安心してね」
「わかりました」
「ううん、何か凄いですよね」
 ジョージも唸る様にして言うのでした。
「雲と虹を渡って進めるなんて」
「うん、オズの国でもね」
「そうそう出来ないことだよね」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーが応えます。
「この国でも」
「そうそうはね」
「そうだよね、それが出来るなんて」
 それこそと言うジョージでした。
「夢みたいだよ」
「けれど夢じゃないから」
「現実のことだから」
 二匹でジョージに言います。
「行こうね」
「これから」
「わかったよ、じゃあこれからね」
 ジョージも笑顔です、そしてです。
 その足で先に進もうというのでした、ですが。
 雲の端から下を見下ろしてでした、ドロシーが言いました。
「気をつけましょう」
「ここから落ちたらね」
「ええ、オズの国では誰も死なないけれど」 
 トトにも答えます。
「それでもね」
「よくないから」
「そう、痛いわよ」
「それも凄くね」
「それにこの下は海だから」
「泳いでオズの国まで着けたらいいけれど」
「外の世界に行ってしまうかも知れないわ」
 その危険もあるというのです。
「だからね」
「ここは気をつけてね」
「雲と雲の間を渡っていきましょう」
 トトだけでなく皆にも言うのでした、そしてです。
 皆はポリクロームが作って雲と雲の間にかけた虹を渡りました、その虹の橋を渡ってみてです、臆病ライオンが言いました。
「何かね」
「うん、橋だけれどね」
「やっぱり普通の橋じゃないね」
「何か不思議な橋だね」
 腹ペコタイガーも言うのでした。
「硬いけれどきらきらとしてて」
「これが虹の橋なんだね」
「不思議な橋だよ」
「本当にね」
「そうかしら。私にしてみれば」
 橋を作ったポリクロームの言葉です。
「この橋は普通の橋だけれど」
「ううん、やっぱり普通の橋じゃないよ」
「特別な橋だよ」
「僕達からしてみると」
「そうだよ」
「そうなのね、私はいつも渡ってるから普通だけれど」
 それでもというのです、そしてです。
 そうしたことをお話してでした、皆でです。
 虹の橋を渡って次の雲に入ってまた虹の橋を渡ってです。一行は雲と虹を進んでいきました。そしてなのでした。
 一番奥にあった雲まで着きました、すると。
 そこにでした、赤と青、緑と黄色が複雑に混ざり合って輝いているその玉を見てです。ポリクロームが言いました。
「これがね」
「長さんの玉ですね」
「ええ、そうよ」
 間違いなくというのです、ポリクロームはトトにお話しました。
「これがね」
「じゃあこの玉を手に入れて」
「あっ、待って」
 ポリクロームが尻尾をぱたぱたとさせて雷玉に近付こうとするトトに注意しました。
「雷だから」
「迂闊に近付いたら」
「ええ、雷が来るわ」
「大丈夫だよ、僕も避雷針を付けてるから」
 見ればです、トトの頭に一本の小さな針が立っています。
 それを見てです、ポリクロームも頷きました。
「それなら大丈夫ね」
「だから安心してね」
「ええ、けれどね」
「今度はどうしたの?」
「貴方は身体が小さいから」
 だからというのです。
「その雷玉を持てないわよ」
「じゃあ私が持とう」
 こう言ったのは魔法使いでした。
「私が持ってね」
「そしてなのね」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「雷の精霊さん達のところに戻ろう」
「これからね」
「それで後は」
 魔法使いはポリクロームを見て言いました。
「君もね」
「お家に帰って」
「そう、それでね」
 そのうえでというのです。
「旅は終わりだよ」
「待って」
「待ってっていうと?」
「私はオズの国にも行きたいわ」
「王宮まで」
「そう、だからね」
「ここで帰らないんだね」
 魔法使いもポリクロームの言葉に頷くのでした。
「そうするんだね」
「そのつもりよ。暫く遊んで行くわ」
「それじゃあ」
「ええ、行きましょう」
 是非にとお話してでした、そして。
 魔法使いがその雷玉を受け取りました、そこから。
 また虹と雲を渡ってでした、飛行船まで戻りました。その虹と雲を歩くことが終わってです。ジョージは笑顔で言いました。
「こうして雲と虹の上を歩けて」
「楽しかったのね」
「はい」 
 ポリクロームに笑顔で答えました。
「とても」
「外の世界で出来ないわね」
「とてもです」
 それこそとです、ジョージはまた答えました。
「出来ません」
「そうね、けれどね」
「この国ならですね」
「オズの国ならね」
 まさにというのです。
「こうしたことも出来るの」
「そういうことですね」
「そうよ、だからね」
「また、ですね」
「私に行ってくれれば」
「虹の上を渡れるんですね」
「リングを作ってね」
 虹のそれをです。
「その上を歩くことも出来るわよ」
「橋と同じですね」
「虹だから」
 橋でもリングでも虹であることは同じだというのです。
「それは出来るわよ」
「そういうことですね」
「そう、だからね」
「また楽しめますね」
「靴はね」
 その靴の持ち主である魔法使いも笑顔で言ってきました。
「私が持っているから」
「それで、ですね」
「それがあれば」
 その靴がです。
「雲も渡れるよ」
「じゃあまたお願いします」
「そういうことでね、さて」
「さて?」
「もうお昼だよ」
 その時間だというのです。
「そろそろね」
「お昼御飯ですね」
「それにしよう」
 このこともです、魔法使いは笑顔で言いました。
「それじゃあね」
「わかりました」
「さて、お昼は何がいいかな」
「そうね、羊のお肉をね」 
 ドロシーが言ってきました。
「シェラスコにした」
「それをだね」
「出そうかしら」
「あっ、シェラスコですか」
 このお料理に最初に反応したのはカルロスでした。
「それはいいですね」
「ええ、あと果物も一杯出して」
「ライチも出しましょう」
 神宝も言います。
「是非」
「そうね、あとお茶も出して」
 ドロシーはこれも忘れていません。
「楽しく食べましょう」
「お茶はどんなお茶ですか?」
「ジャガイモも出しませんか?」
 恵梨香とナターシャも言います。
「それも」
「ジャガイモ料理ね」
 ドロシーはナターシャにも応えました。
「それも食べるのね」
「どうでしょうか」
「いいわね」
 ドロシーも乗り気で応えます。
「それじゃあね」
「はい、それも食べましょう」
「そのジャガイモ料理はロシアのお料理?」
 恵梨香はナターシャにそのお料理のことを具体的に尋ねました。
「それを食べるのね」
「そうよ、私はロシアのジャガイモ料理を考えていたけれど」
「わかったわ、じゃあね」
 恵梨香もナターシャに笑顔で頷きました、そしてです。
 皆で羊のシェラスコとロシアのジャガイモ料理を食べるのでした。
 そのジャガイモを食べながらです、ジョージはこんなことを言いました。
「オズの国でもジャガイモ普通に食べるよね」
「うん、そうだよ」
「僕達もよく食べるよ」
 ジョージに臆病ライオンと腹ペコタイガーがお話します。
「マッシュポテトとかポテトサラダとか」
「そういうのをよく食べるよ」
「生では食べないけれどね」
「お料理したのを美味しく食べてるよ」
「ジャガイモはいい食べものよ」
 ドロシーもこう言ってそのジャガイモ料理を食べています、それも美味しく。
「沢山採れるし。カンサスでも作っていたわよ」
「ヘンリーおじさんとエマおばさんが」
「そうだったのよ」
「そうですか、ドロシーさんのお家はカンサスで農家をやっていて」
「ええ、お父さんとお母さんはいなかったけれど」
 それでもというのです。
「おじさんとおばさんに育ててもらっていたの」
「そしてその中で」
「ジャガイモも沢山作っていたわ」
「それで食べていたんですね」
「あの頃のジャガイモも美味しくて」
 そして、というのです。
「今もとても美味しいわ」
「そうですね、オズの国はジャガイモも美味しいです」
「幾らでも食べられるでしょ」
「はい」
「じゃあこのジャガイモとシェラスコを食べて」
「それからですね」
「雷の精霊さんのところに戻りましょう」
 是非にというのです。
「そうしましょう」
「ええ、是非ね」
 お露を飲んでいるポリクロームにも応えました。
「そしてその後は」
「王宮に戻って」
「私も暫くぶりに王宮を楽しみたいわ」
 こう考えているのです。
「是非ね」
「そうしたいのね」
「ええ、オズマにも会いたいわ」
 このこともです、ポリクロームは思うのでした。
「あの娘にも」
「そういえば貴女オズマに最近会っていなかったわね」
「だからね」 
「会いたいのね」
「そうなの、では行きましょう」 
 ポリクロームもドロシーに言いました。
「まずは雷の精霊さんのところに」
「そして王宮にも」
 こうお話してです、そしてです。
 皆はまずはです、お昼御飯を食べ終えてから飛行船に乗ってそうして雷の精霊さんのお家に向かいました。
 お家にはすぐに着いてです、そしてまた長さんのところに案内してもらってでした。長さんに玉を差し出しますと。
 長さんは目を細めさせてこう言いました。
「見付けてくれたんだ」
「ええ、この通りね」
 ドロシーが長さんに笑顔で答えました。
「見付かったわ」
「悪いね、わざわざ」
「いいのよ、こうした時はお互い様でしょ」
「だからだね」
「そう、気にしないでね」
「しかしお礼はしないとね」
 ドロシーにこう言ってもらってもです、こう返した魔法使いでした。
「いいことをしてもらったからには」
「それじゃあ」
「そう、だからね」
 それでというのです。
 長さんは皆にあるものを差し出しました、それはといいますと。
 服でした、それも精霊さん達の着ている服です。その一着の服を皆に拡げて見せてみせてから言うのでした。
「これを皆に一着ずつあげるよ」
「精霊さん達の服を」
「僕達にくれるんですか」
「玉を見付けてくれたお礼に」
「そうだよ」
 ジョージ達男の子三人にも答えるのでした。
「私からのお礼だよ」
「何か悪いです」
「そんな奇麗な服を頂くなんて」
「幾ら何でも」
「だから遠慮することはないよ」
 またこう言った長さんでした。
「だからね」
「それで、ですか」
「この服を貰ってもですか」
「いいんですね」
「是非貰ってくれないから」
 長さんは皆にお願いもするのでした。
「さもないと私の気が済まないからね」
「では有り難く受け取らせてもらうよ」
 魔法使いが答えました、魔法使いにはこの人がいつも着ているタキシードにシルクハット、雷の精霊さんの服の色のそれが精霊さんの一人に持たれています。
「私もね」
「それで僕達にもなんだ」
「そうだよ」
 長さんはトトにも答えました、トト達三匹の動物達にはです。
 それぞれの大きさに合わせたリボンが用意されています、それも出してそのうえでお話する長さんでした。
「ではいいかな」
「それじゃあ」
 ポリクロームが応えました。
「有り難く」
「そう言ってくれて私も助かったよ」
「ええ、頂くわ」
 こう答えてでした、皆はそれぞれその服を貰ってです。
 雷の精霊さん達と笑顔でお別れしてまた飛行船に戻りました。そのうえでお空の中を進みながらでした。
 ポリクロームは皆にです、こう言いました。
「王宮に帰って」
「それで、ですね」
「あちらでも楽しみましょう」
「さて、今回の旅も楽しかったけれど」
 トトも言ってきました。
「まだ旅は続いているんだよね」
「旅はお家に帰るまでよ」
 その時までが旅だとです、ドロシーはトトに答えました。
「それまではね」
「うん、旅だよね」
「だからね」
 それでというのです。
「まだ旅は続いているわよ」
「そうだよね」
「いや、こうした旅もいいね」
「そうだよね」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーもお話します。
「お空を飛んでの旅も」
「それもね」
「夜空も夕焼けも見られて」
「中々快適だったね」
「うん、これまでもオズの国での旅はしてきたけれど」
 ジョージも二人に応えて言うのでした。
「飛行船での旅もよかったよ」
「それもオズの国の飛行船だったから」
 神宝はこのことからお話します。
「また格別だったね」
「三百六十度見られたからね」
 カルロスはとても明るい笑顔です。
「それがよかったよね」
「お空の中にいるみたいだったわ」
 恵梨香はその感触をこう表現しました。
「自分が飛んでいて」
「外の世界の飛行機や飛行船で飛んでいる時とは違って」 
 ナターシャも微笑んでいます。
「それがよかったわね」
「ええ、夜空も全部見られて」
「まさにオズの国のお空の旅だったわね」
「本当にそうだったわよね」
「この飛行船での旅は好評みたいだね」
 魔法使いも笑顔です。
「じゃあ今度は皆で行こうかな」
「オズマ達も一緒に、なのね」
「うん、飛行船に乗ってね」
 そうだとです、魔法使いはドロシーに答えました。
「そしてね」
「そのうえで」
「そう、楽しもうね」
 そのお空の旅をというのです。
 こうしたお話をしながらです、皆で王宮に向かうのでした。高度を徐々に下げてです。そして雲の下に出てです。
 王宮に向かっていますがこの時にです、ジョージはまた言いました。
「王宮に戻るのは何時頃でしょうか」
「そうだね、明日の朝だね」
 魔法使いがジョージの問いに答えました。
「六時位に着くよ」
「六時ですか」
「うん、その時にね」
 着くというのです。
「大体だけれど」
「それじゃあ夜は」
「寝ていていいよ」
「もう夕方ですから」
 お昼御飯を食べて長さんに雷玉をお渡ししてです、それで今はその時間なのです。
「夜寝たら」
「そう、もうね」
「王宮ですね」
「そうなるよ」
「そうですか、何かあっという間の旅でしたね」
「楽しい旅はすぐに終わるんだよ」
 魔法使いはジョージに笑顔で答えました。
「そうなるんだよ」
「楽しい時間はあっという間に過ぎる」
「そうしたものなんだよ」
「だからオズの国では時間が過ぎるのが早いのね」
 ポリクロームも言います。
「そうした場所だから」
「そうだよ、この国は楽しいことばかりだからね」
「時間が過ぎるのも早いのね」
「そうなるんだ」
「わかったわ、それじゃあ」
 ポリクロームはまたでした、くるくると踊って皆に言いました。
「今も楽しい時間を過ごしましょう」
「そうね、あっという間に過ぎる時間をね」
 ドロシーもポリクロームに応えてでした、皆で。
 晩御飯も食べるのでした、今日の晩御飯はハンバーガーにシーチキンサラダ、そしてズッキーニと玉葱と大蒜を入れたスープを食べました。
 それからお風呂に入ってです、皆は寝てです。
 目が覚めるとです、皆の目にはオズの国が下にありました。
 それぞれの色に分かれている五つの国を見てです、ジョージは言いました。
「凄いですね」
「お空から見るオズの国もいいものでしょ」
「はい」
 ポリクロームの問いに答えるのでした。
「凄く奇麗ですね」
「私このお空を見るのもね」
「好きなんですね」
「ええ、大好きよ」
 好きどころかというのです。
「いつもこうして見ているの」
「お空からオズの国を」
「それで楽しんでいるのよ」
 奇麗な色の五つの国をというのです。
「そうしているの」
「素敵な楽しみですね」
「そう言ってくれるのね」
「はい、そう思います」
「有り難う、じゃあまたね」
「このお空の旅をですね」
「一緒にしましょう」
 ポリクロームも笑顔でジョージに言います。
「皆でね」
「そうですね、昨日魔法使いさんも仰っていましたけれど」
「一人で楽しんでもね」
 そうしてもというのです。
「実はあまり楽しくないのよ」
「皆で楽しんでこそですよね」
「本当に楽しいのよ」
「だからこうしてお空からオズの国を見ることも」
「皆で見てこそよ」
「楽しいんですね」
「そうなの、私はいつもは家族の皆と一緒に見ているわ」
 虹の精霊さん達、ポリクロームの家族達と一緒にというのです。
「そうしているわ、けれど今はね」
「こうしてですね」
「ジョージ達と見ているけれど皆で見ているから」
 だからというのです。
「とても楽しいわ」
「そういうことですね、僕も一人だと」
 一人で今見ている景色を楽しんでもとです、ジョージも思うのでした。
「こんなに楽しくないですね」
「そうよね」
「はい、ここまでは」
「皆と一緒に楽しむよ」
「一人の時よりずっと楽しい」
「そういうものなのよ」
 こうジョージにお話するのでした。
「だから皆でね」
「わかりました」
 ジョージはにこりと笑ってポリクロームの言葉に頷きました。
 そしてです、皆でなのでした。
 お空から見るオズの国の景色を楽しんで。それからでした。
 緑のエメラルドの都に戻ってです、王宮のお庭に着陸してでした。
 皆で飛行船から出るとです、すぐに王宮の皆が迎えてくれて。
 先頭にいるオズマが笑顔で言葉をかけてくれました。
「今回の旅はどうだったかしら」
「今回も最高の旅だったわ」 
 ドロシーがオズマに笑顔でこう返しました。
「本当にね」
「そう、それは何よりよ」
「色々なことがあって」
「そうみたいね、お顔に書いているわよ」
「私の?」
「皆のね」
 ドロシーだけでなく、というのです。
「お顔に書いてるわよ」
「色々なことがあったって」
「楽しいことがね」
 こうドロシーに言うのです。
「そう書いてあるわよ」
「そうなのね」
「お空の旅もいいものなのね」
「うん、最高だったよ」
 今度は魔法使いがオズマに答えました。
「だから今度は皆でね」
「お空の旅をなのね」
「しようね」
 是非にというのです。
「時間がある時に」
「わかったわ、私も忙しいけれど」
 それでもと答えるオズマでした。
「旅の時間は作るものだから」
「そう、だからね」
「今度は皆で行きましょう」
「そうだね、では僕達も」
「その時は一緒に行こう」
 かかしと木樵も乗り気です。
「お空の旅も楽しそうだし」
「是非ね」
「何でもお空には天使君達がいるお城があるとか」
「そこにも行ってみたいしね」
「行って来たわよ」
 実際にとです、ポリクロームが二人に答えました。
「そこにも」
「おや、もう行って来たんだね」
「そのお城に」
「とても奇麗な場所だったわ。だからね」
「皆でお空に出た時は」
「その時はだね」
「そう、お城に行きましょう」
 その天使さん達のお城にというのです、
「皆でね」
「ではその時もね」
「楽しみにさせてもらうよ」
「それじゃあね」
「その時まで別のことを楽しませてもらうよ」
「まずは皆が無事に戻って来たから」
 オズマがまた言います。
「そのことをお祝いしてパーティーを開きましょう」
「それじゃあ今から」
「パーティーですね」
「そうよ、皆で楽しみましょう」
 そのパーティーをというのです。
「是非ね」
「じゃあ今から」
「皆で」
「もう用意は出来ているわ」 
 既にというのです。
「王宮の中でね」
「あら、もうなの」
「いつも皆の旅を見守っていたの」
 王宮にあるオズの国のあらゆる場所を観ることが出来る鏡で、です。オズマは皆が旅に出ている間は毎日その鏡で安全を見守っているのです。
「それで今日帰って来ることを知ってたの」
「今朝に、なのね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「ジュリアにお話して用意してもらってたの」
「そうだったのね」
「そうよ、ではね」
「これからなのね」
「パーティーを楽しみましょう」
「その前にお風呂をどうぞ」
 そのジュリアも皆に言ってきました。
「何時でも入られますよ」
「そういえば今朝は」
「そうだよね」
 神宝とカルロスが二人でお話します。
「まだね」
「お風呂に入ってないよね」
「それじゃあ」
「今から」
「はい、お風呂に入って」 
 そしてというのです。
「服も着替えられてはどうでしょうか」
「その服だけれど」
 ポリクロームがジュリアに答えました。
「雷の精霊さんの長さんから貰ってるの」
「雷の精霊さん達の服を」
「そうなの。トト達はリボンでね」
 そしてというのです。
「魔法使いさんはタキシードで」
「私もお風呂をご馳走になって着替えてくるよ」
 お洒落な魔法使いも言います。
「その服にね」
「わかりました、では」
「うん、今からね」
 こうしてです、皆はまずはお風呂に入りました。トト達動物組もです。
 そしてお身体を奇麗にしてから服を着ました。その雷の精霊さん達の服を・
 男の子の服は上着は短くて下はズボンです、生地は赤に青、緑に黄色にと雷の色がそれぞれ奇麗に混ざり合って光っています。魔法使いのタキシードもリボンも同じです。
 女の子達の服はポリクロームが着ている服と同じデザインで雷の配色です。お互いにその格好を見てです。
 ポリクローム、今は雷の精霊さんの服のこの人が言いました。
「この服も貰えて」
「それで、ですよね」
「この旅は、ですよね」
「最高だった」
「そう思えますね」
「ええ、私もそう思うわ」
 ポリクロームもにこりと笑っています。
「本当にね」
「それならですね」
「この服でパーティーに出て」
「それで、ですね」
「後は」
「パーティーを楽しみましょう」
 是非にというのです。
「今から」
「うん、行こうね」
 トトもいます、奇麗に毛を洗ってもらってドライヤーで乾かしてもらっていてふわふわとしています。頭には可愛いリボンがあります。
「これからね」
「トトも似合ってるわよ」
 ドロシーがそのトトに言います。
「そのリボン」
「それは何よりだよ」
「貴方もお風呂に入って」
「うん、奇麗になってね」 
 それでというのです。
「これからパーティーに行くよ」
「そうするのね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「今回の旅は」
 お空の旅はというのです。
「本当に色々あったね」
「今回もね」
「そうだね、オズの国の旅は色々とある」
「そうしたものでしょ」
「だからああした旅になったんだね」
「そうよ、ではね」
「次の旅も」
 ポリクロームも言います。
「楽しみましょう」
「皆でね」
 トトはポリクロームにも応えました。
「次もそれからもね」
「楽しもうね」
「じゃあ行きましょう」
 ジョージが皆に言いました。
「パーティーに」
「旅の最後の楽しみにね」
 ポリクロームは満面の、虹よりも輝かしい笑顔で応えました。そのうえで皆でそのパーティーに出て楽しむのでした。


オズのポリクローム   完


                         2015・7・10



無事に雷玉も見つかって。
美姫 「回収も終わったわね」
今回の旅もこれで終わりか。
美姫 「今回はのんびりとした感じだったわね」
だな。空の旅で飛行船というのもあったからな。
美姫 「それもこれでお終いね」
今回も楽しませてもらいました。
美姫 「ありがとうございます」



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