『新オズの腹ペコタイガー』




                 第十二幕  最高のカレー

 トロット達は蜂蜜を貰ってから薔薇の女王と笑顔で別れて薔薇の国を後にしました。その道中でアンはトロットに問いました。
「これで後は、よね」
「ええ、都に帰るだけよ」
「そうよね、後はそれだけよね」
「そうなの、それでアンはどうするの?」
「私?」
「やっぱりウーガブーの国に戻るの」
「そのつもりよ。林檎の収穫は終わったけれど」 
 それでもというのです。
「他の果物のことがあるから」
「それでなのね」
「お仕事があるから」
「都に誘おうって思ってたけれど」
「カレーライスを食べるかどうかよね」
「そう思ってたけれど」
「確かにカレーライスのことはね」
 アンも聞いていてというのです。
「惹かれるけれど」
「お仕事優先ね」
「お国の仕事は放っておけないから」
 だからというのです。
「私はいいわ」
「わかったわ、それじゃあね」
「また機会があったらね」
「都に来てくれるのね」
「そうさせてもらうわ」
 これがアンの返事でした、そして。アンは今度は皆にこう言ったのでした。
「ウーガブーの国に戻るまでは一緒よ」
「そうだね、その間はね」
 今度は腹ペコタイガーが応えました。
「一緒だね」
「ええ、旅を楽しみましょう」
「アンも随分旅行好きになったね」
「そうね、最初はね」
 それこそと言うのです。
「オズの国征服とか言う前は」
「ウーガブーの国から出たことがなかったね」
「そうなの、けれど今はね」
「結構旅行に行ってるね」
「そうなってるわ」
 実際にというのです。
「それでその旅行がね」
「楽しみになっているんだね」
「時々行ってね」
 旅行を楽しんでいるというのです。
「オズの国を歩き回っているわ」
「オズの国はいい国だよ」
 トトもしみじみとして言います。
「奇麗でしかも面白い場所が一杯あってね」
「そうなのよね。私達も何度か来てるけれど」
 恵梨香も言います。
「何度行き来しても楽しいわ」
「そうよね、じゃあ今度一緒にね」
「私達五人が、ですか」
「私と一緒に旅行に行きましょう」
「はい、お願いします」
 こうお話してでした、そのうえで。
 一行は楽しく煉瓦の道を歩いて旅を続けました。そしてウーガブーの国に着くとです。アンは皆に満面の笑顔で言いました。
「じゃあまた来てね」
「ええ、またね」
 トロットがそのアンに応えます。
「会いましょう」
「それじゃあね、その時はね」
「ええ、一緒に楽しみましょう」
「今回は林檎だtったけれど」
「他の果物もあるわよね」
「そう、そちらも楽しんでね」
 林檎意外の食べものもというのです。
「是非ね」
「そうさせてもらうわね」
「私も冒険に行くし」
「一緒に冒険してもいいわね」
「恵梨香にもお話したけれど」 
 アンはここで恵梨香を見ました。恵梨香はトロットの横でにこにことしています。
「五人と一緒にね」
「冒険ですね」
「そうしましょう」 
「それじゃあね」
 こうしたこともお話してでした、そうして。
 皆はアンとも別れてでした、五人に戻って都への道を進んでいました。
 その道の途中で、です。トトは歩きながらトロットに聞きました。
「僕達が一番長く歩いてるね」
「そうよね」
「うん、長い旅になってるけれど」
「もう皆帰ってるかしら」
 他のパーティーはというのです。
「都に」
「僕もそう思ってたよ」
 実際にと答えたトトでした。
「それでカレー作りはじめてるかな」
「それはないわ」
「僕達が帰ってから作るんだね」
「やっぱり材料が全部揃ってから作らないと」
 それこそというのです。
「よくないから」
「だからなんだね」
「そう、私達が戻ってからよ」 
 カレーライスを作ることはというのです。
「そうなるから」
「じゃあ急いで戻ろうか」
「そうね、私達が一番長い距離を歩いててね」
「時間もかかってるからね」
「皆待ってるから」
 このことは間違いないからだというのです。
「急ぎましょう」
「いやいや、急ぐのではなくてね」
 ここで言って来たのはモジャボロでした。
「寄り道をしないで行くことがね」
「大事なのね」
「そしてアクシデントがあっても」 
 旅には、特にオズの国においてはとりわけ多いこれのこともというのです。
「冷静に対処してね」
「焦らずにはなのね」
「進むことが大事だよ」
「焦ったらね」
 それだけで、と言ったトロットでした。
「もうそれだけで解決出来ることも出来ないし」
「時間もロスするね」
「ええ、何にもならないわ」
「冷静にだよ」
 大事なことはというのです。
「それが大事だからね」
「それでよね」
「そう、急ぐよりも冷静に」
「そのことが大事ね」
「そうしていこう」
 この帰り道はというのです。
「これまで通り日の出と一緒に起きて朝御飯を食べてね」
「途中おやつの時間と休憩の時は休んで」
「そしてね」
「日暮れまで歩いて」
「夜もしっかり寝てね」
「そうしていけばいいわね」
「そうだよ、焦らず確かに歩いていくこと」
 まさにこのことこそがというのです。
「一番の近道だよ」
「わかったわ、では行きましょう」
「皆で一緒にね」
 こうも言ったモジャボロでした、そして実際にでした。
 一行は焦らずに休憩もしながら冷静に進んでいきました、ですがその歩く速さは。
 恵梨香は歩きつつです、行きと同じその道を進みながら言うのでした。
「何か行っていた時よりも」
「そうだね、歩く速さがね」
 腹ペコタイガーがその恵梨香に応えます。
「速くなっているね」
「焦って急いではいないのに」
「それでもだよね」
「歩くのが速くなってるわ」
「確かにそんな感じだね」
「どうしてかしら」
 首を傾げさせてです、こうも言った恵梨香でした。
「同じ道を進んでるのに」
「確かに焦らないでとは言ったけれどね」
 モジャボロはここでも言います。
「皆都に早く帰ろうって思って」
「それでなんですか」
「自然と足が速くなっているね」
「焦っていなくてもですね」
「うん、そうだと思うよ」
 まさにというのです。
「ここはね」
「そういうことですか」
「この調子で歩いていけば」 
 その行きよりも速い歩く速さで、です。
「都にはすぐだね」
「そうなりますね」
「そしてアクシデントがあっても」
「その時も」
「落ち着いて対応しよう、皆でね」
「私達五人で」
「そうすればどんなアクシデントも乗り越えられるよ」
 五人でならというのです。
「安心していいよ」
「五人だとですね」
「一人では難しくてもね」
「五人でなら」
「何とかなるからね」
 相当なことが起こってもというのです。
「まずは落ち着いてね」
「対応することですね」
「それが大事だよ」
「じゃあ冷静に」
「歩いていこう」
 ここでもこうしたお話をしてでした、皆で進んでいきます。
 そしてそろそろブリキの木樵のお城が見えてきそうなところに来てでした、不意に目の前の煉瓦のとkろにです。
 大きなヤマアラシがいました、トロットはそのヤマアラシを見て言いました。
「確かあのヤマアラシ」
「うん、マンチキンの国だったかな」
 腹ペコタイガーがトロットに応えます。
「確か」
「そこを通せんぼしていた子よね」
「そうだったね」
「あの時懲らしめられて」
「後で改心したって聞いてるよ」
「じゃあ今は」
 首を傾げさせながら言うトロットでした。
「どうしてここにいるのかしら」
「あの時は針を全部取られたけれど」
 そうして懲らしめられたのです。
「もう針も全部また生えて」
「剣山みたいになってるわね」
「何か動かないけれど」
「どうしたのかしら」
「まずはヤマアラシ自身に聞いてみよう」
 これがトトの提案でした。
「とりあえずはね」
「そうね、それが一番ね」 
 トロットもトトの言葉に頷きます、そしてでした。
 腹ペコタイガーがです、ヤマアラシのところに来て彼に尋ねました。
「どうして道の上で止まってるのかな」
「うん、実はね」
 ヤマアラシは腹ペコタイガーにすぐに応えました、悪い態度ではありませんがそのお顔はとても困ったものです。
「足が痛くなってね」
「足が?」
「動けなくなったんだ」
 それでここにいるというのです。
「それでなんだ」
「足が痛いんだ」
「右の前足の肉球のところがね」
「肉球のところ?」
「そこが痛くて仕方ないんだ」
「肉球だね、またどうしてかな」
 腹ペコタイガーはヤマアラシの言葉を聞いてまずは考える顔になりました。
 そしてそのうえで、です。すぐにこうヤマアラシに言いました。
「よかったら見せてくれるかな」
「右の前足をだね」
「その肉球のところをね」 
 痛いというその場所をというのです。
「そうしてくれるかな」
「わかったよ」
 すぐに答えたヤマアラシでした、そして。
 ヤマアラシは自分のところに来た五人にその肉球のところを見せました、するとそこにです。
 ガラスの大きな、五人からみれば結構そうである破片が刺さっていました。腹ペコタイガーはその破片を見て言いました。
「原因がわかったよ」
「僕の足が痛い原因が?」
「肉球のところにガラスの破片が刺さってるよ」
「おかしいな、見た時にはね」
 どうにもと言うヤマアラシでした。
「何もなかったのに」
「けれどね」
「刺さってるんだ」
「結構深くね」
「そうだったんだ」
「透明だから」
 こう言ったのはトロットです。
「見えないのよ」
「そうだよね、それに」
「それに?」
「最近僕目が悪くて」 
 そうだとも言うヤマアラシでした。
「よく見えないんだ」
「そうなの」
「そのせいだね」
「そうね、けれどね」
「うん、そのガラスをだね」
「私達が取るから」
 痛みの元凶はというのです。
「安心してね」
「それじゃあね」
「さて、それじゃあね」
 腹ペコタイガーが皆に言います。
「早速取ろうね」
「そうしましょう」
「僕達も怪我をしないようにしてね」
「若し油断したら」
 どうなるかもです、恵梨香は言いました。
「私達も怪我するから」
「結構鋭いガラスだし」
「注意しましょう」
 そうして取り出そうというのです、そして。
 そのガラスにです、モジャボロは懐から出したハンカチを巻いて皆に言いました。
「これで大丈夫だよ」
「あっ、そうしてですね」
「切れる部分を覆ってね」
「それに布が手に止まって動きやすくなるから」
「だからね」
 それで、というのです。
「今からね」
「取るんですね」
「そうしようね」
 怪我をしなくてしかも持ちやすくしてというのです。皆はそこに手や前足をやってそのうえでそのガラスをでした。
 取ってです、トロットがヤマアラシに言いました。
「これで後はね」
「後は?」
「近くにお池があるから」
 そのお池を見て言います、実際に皆のいる場所のすぐ傍にお池があります。
「あそで傷口を洗ってね」
「消毒をするんだね」
「それで傷口はね」
 トロットは包帯も出しました。
「これで覆えばいいから」
「それも用意しているんだ」
「何かあってもいい様にね」
「いつも持ってるんだ」
「オズの国は死なないけれど」
 それでもというのです。
「怪我をする時はあるから」
「それで持ってるのね」
「そうなの、じゃあね」
「うん、まずは傷口を洗って」
「それでね」
 包帯を巻こうとなってでした、そのうえで。
 ヤマアラシはお池で傷口を洗いました。オズの国のお池はどのお池もとても清潔なので消毒にも使えるのです。
 そしてヤマアラシは実際にそこで洗ってでした、それから。
 トロットに包帯を巻いてもらいました、そのうえでこうお礼を言うのでした。
「有り難う、助かったよ」
「ええ、これでとりあえずはね」
「そうだね、ただね」
「目のことよね」
「目はどうしようかな」
 最近視力が悪くなっているそちらはというのです。
「一体」
「そうね、それはね」
 トロットはすぐにです、ヤマアラシに答えました。
「方法があるわ」
「その方法は?」
「眼鏡屋さんに行ってね」
 そこで、というのです。
「眼鏡を貰えばいいから」
「そして眼鏡をかければ」
「それでいいから」
 だからだというのです。
「目のこともね」
「わかったよ、じゃあね」
「一緒にね」
 こうしたことをお話してでした、ですが。
 ヤマアラシはここで、でした。難しいお顔になって皆に尋ねました。
「それで眼鏡屋さんは何処にあるのかな」
「お店の場所ね」
「うん、何処にあるのかな」
「結構色々な場所にあるわよ」
 恵梨香が答えました。
「眼鏡屋さんだと」
「そうなんだ」
「この辺りにもあるかしら」
「あっ、この辺りだとね」
 すぐにです、トトが言ってきました。
「ここから南に行くとね」
「南に?」
「町があるから」
「あっ、その町になんだ」
「眼鏡屋さんがあるから」
 それでというのです。
「そこに行けばいいよ」
「そうなんだね」
「うん、じゃあね」
「わかったよ、それじゃあね」
 それならとです、ヤマアラシも頷きました。
「今から南の方に行って来るよ」
「そうするんだね」
「早く何とかしないから」 
 だからというのです。
「ここはね」
「すぐに行くんだね」
「そうするよ」
「それじゃあね、ただね」
「ただ?」
「よく町のこととか知ってるね」
 こうも言ったのでした、トトに。
「そこに眼鏡屋さんがあることも」
「この辺りも冒険で何度も通ってるからね」
 だからと答えたトトでした。
「それでなんだ」
「知ってるんだね」
「うん、何処にあるのかをね」 
 眼鏡屋さんをというのです。
「それじゃあ案内しようかい?」
「いや、そこまではいいよ」
 ヤマアラシはトトの今の申し出は断りました。
「それは自分で行くからね」
「そうするんだね」
「じゃあ前足のことは有り難うね」
 このことにお礼を言ってです、そして。
 ヤマアラシは皆と別れてそのうえで眼鏡屋さんに行きました。そして。
 ここで、です。トロットは皆にあらためて言いました。
「それじゃあね」
「うん、今からあらためてね」
「都に戻ろう」
「そして都に帰って」
「カレーだね」
「カレーはシェフの人達が作ってくれるから」
 このこともです、トロットはお話しました。
「まずはね」
「そう、寄り道せずに都に帰って」
 腹ペコタイガーが応えます。
「皆でカレーを食べようね」
「ええ、行きましょう」
 トロットは皆に応えてでした、そのうえで。
 皆で都に戻ります、そして。
 都に着くとです、腹ペコタイガーはにこにことして皆に言いました。
「さあ、早く宮殿に戻ろう」
「何か腹ペコタイガーさん今は」
「うん、もうカレーを食べたくてね」
 舌なめずりしながら恵梨香に言うのでした。
「仕方ないよ」
「そうなのね」
「ちゃんと朝も食べたけれどね」
 それでもというのです。
「もうお腹が空いて仕方ないよ」
「そこまで食べたいのね」
「そうなんだ」
「じゃあまずはね」
 モジャボロが腹ペコタイガーに言いました。
「王宮に入ろう、ただね」
「ただって?」
「カレーは晩御飯になるよ」
「ああ、作る時間があるからね」
「お昼にとはならないよ」
 帰ってすぐに食べられはしないというのです。今皆が来た時間は朝です。丁度十時になろうかという時です。
「君にとっては残念だけれどね」
「まあそうだけれど晩に食べられるのならね」
「それでいいんだね」
「うん、それでね」 
 こうモジャボロに言うのでした、そして。
 皆で都に入ってです、そこからすぐに王宮に戻りました。五人が王宮に戻るともう他のパーティーの面々は戻って来ていて。
 丁度十時のお茶を飲んでいてです、皆で迎えてでした。
 そのうえで、です。オズマが皆に言いました。
「お帰りなさい」
「ええ、今戻ったわ」 
 トロットがオズマににこりと笑って応えます。
「お待たせ」
「待ってはいないわ」
「そうなの」
「暫く皆で楽しんでいたから」
 こう言ったのでした。
「待ってはいないわ」
「そうなのね」
「それでそっちはどうだったのかしら」
「どうだったって?」
「旅よ、貴女達のね」
「そのことならね」
 トロットは旅のことになると笑顔になって応えました。
「お話出来るわよ」
「そうなのね、じゃあお茶を飲みながら」
「お話をするのね」
「そうしたいけれどいいかしら」
「わかったわ、けれどその前にね」
 オズマはここでもにこりと笑ってです、トロット達に応えました。
「五人共お風呂はどうかしら」
「そこで身体を奇麗にして」
「そう、そして服も着替えてね」
 そうしてというのです。
「それから皆でお話しましょう」
「お茶を飲んでそして」
「お昼も食べてね」
 そうしつつというのです。
「お話をしましょう」
「旅のことを」
「そして他のこともね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 トロット達はまずはお風呂に入って服も着替えました。そうしてすっかり奇麗になってからなのでした。
 皆でお茶を飲みながら旅のことをお話しました、勿論恵梨香も四人とお話します。
 お互いの冒険のことをお話してです、恵梨香は言いました。
「皆それぞれ楽しかったのね」
「うん、かなりね」
「楽しかったよ」
 ジョージと神宝が恵梨香に応えます、丸いテーブルを囲んで座りながら。
「食材も無事に手に入ったし」
「嫌なことは何一つなかったよ」
「僕の方もだよ」
「私もよ」
 カルロスとナターシャもそうだったとです、恵梨香にお話します。
「もういつも楽しくてね」
「オズの国の冒険だったわ」
「そうなのね、私もだったわ」
 恵梨香の方もというのです。
「お話した通りね」
「色々なことがあって」
「それでだね」
「常に楽しくて仕方なかった」
「そうした旅だったのね」
「そうだったわ、トロットさんとの旅もね」
 その今回の旅もというのです。
「楽しくて仕方がなかったわ」
「それは何よりだったわね、私はオズマ姫と一緒だったけれど」
 ブリキの木樵、ハンクも一緒でした。
「姫様って結構以上に歩くのが速かったのよ」
「そういえばあの人も冒険お好きよね」
「そうでしょ、冒険に出られることもあるし」
 エメラルドの都を出てです。
「だからなのよ」
「歩き慣れている方なのね」
「ドロシーさん達と同じだけね」
「そうなの、オズマもね」
 トロットが皆に言ってきました。
「冒険にもよく出てスポーツも好きだから」
「歩くのも速いんですね」
「そうなの、だから貴女達が五人でオズマと冒険に出た時はね」
「トロットさん達と一緒に冒険する時と同じで」
「楽しめるわよ」
「私がそうしたみたいに」
「そうよ、その時のことは楽しみにしていてね」
 こう笑顔でお話するのでした、そうしたお話をしてです。
 お茶も飲んでお昼御飯も食べました、腹ペコタイガーはお昼御飯のローストチキンとキャベツや玉葱がたっぷり入ったスープを食べながらです。
 そのうえで臆病ライオンにです、こう言いました。
「今も楽しんでるけれどね」
「晩御飯だよね」
「早くカレーを食べたいよ」
 こう言うのでした。
「本当にね」
「そうだろうね、僕もだよ」
「どんなカレーなのかな」
「楽しみだよね」
「本当にね」
 こうお話するのでした、そして。
 ビリーナもです、腹ペコタイガーにこんなことを言いました。
「じゃあお昼を食べたらね」
「お昼寝だね」
「違うわよ、ちゃんと運動をしてお腹を空かして」
「そしてなんだ」
「晩御飯に備えるのよ」 
 そのカレーを食べる時にというのです。
「そうしたらいいわ」
「余計に美味しく食べられるから」
「身体を思いきり動かした後の御飯は最高よ」
「だからなのね」
「ええ、食べたらいいわ」
 こう腹ペコタイガーに言うのでした。
「是非ね」
「わかったよ、じゃあ今日はね」
 腹ペコタイガーもビリーナのその言葉に素直に頷きます。
「何かスポーツをするよ」
「そうしたらいいわ」
「じゃあ何をしようかな」
「野球とか?」
 こう言って来たのはトトでした。
「君だと尻尾がバットになってお口がグローブになるから」
「ああ、それで尻尾でボールを投げるなね」
「前足で思いきり蹴ったりしてね」
「何か無理がないかな」
「ううん、言われてみればね」
「他のスポーツがいいかな」
 野球以外のというのです。
「むしろ」
「じゃあ陸上競技とか?」
 こう言ったのはハンクでした。
「それをする?」
「そうだね、走ったりしてね」
「その方がいいよね」
「それじゃあお昼を食べたら」
 腹ペコタイガーはあらためて言いました。
「走ったり跳んだりするよ」
「僕もそうしようかな」
 臆病ライオンも言います。
「ここは」
「いいと思うわよ、勿論私もね」 
 ビリーナも言います。
「身体動かすわ」
「君はカレーは食べないんじゃ」
「晩御飯は食べるから」 
 だからというのです。
「ちょっとね」
「身体を動かすんだね」
「そうするわ」
「さて、僕は美味しいカレーをお腹一杯食べたいから」
 それで、と言う腹ペコタイガーでした。
「お腹を空かせる為にもね」
「思いきり運動をするのね」
「そうするよ」
 是非にと言うのでした、そして実際にです。
 動物の皆はそれぞれ陸上競技を楽しみました、そして。
 その運動を見てです、モジャボロはかかし達に言いました。
「僕は運動はしないけれどね」
「君の場合はだね」
「お散歩をするよね」
「そうしてね」
 かかしと木樵に応えてです、モジャボロは言うのでした。
「僕もお腹を空かせるよ」
「最高の食材で作るカレー」
「どんなものだろうね」
「僕達は食べないけれどね」
「君達がどんな笑顔をするか楽しみだよ」
「私もーーです」
 チクタクも言ってきます。
「楽しくーー見させてーーもらいーーます」
「私は食べるけれど」
 キャプテン=ビルも応えます。
「モジャボロ君と一緒にね」
「お散歩をしますか」
「そうしようかな」
 こう言うのでした、そしてです。
 五人も楽しくお散歩をするのでした、その陸上競技やお散歩を見てでした。恵梨香は考えるお顔になって一緒にいる皆に言いました。
「私達もね」
「うん、身体を動かしてね」
「そのうえでだね」
「お腹を空かせて」
「カレーを楽しむ食べるのね」
「そうしない?」
 こう四人に提案するのでした。
「皆でね」
「そうだね、じゃあ陸上競技する?」
「それか球技?」
「水泳もいいよ」
「自転車はどうかしら」
「何をしてもいいわね、じゃあ何をしようかしら」
「それならね」
 ここでトロットが皆に言ってきました。
「バスケットボールはどうかしら」
「バスケットですか」
「今王宮の体育館は空いてるし」
 このことからお話するトロットでした。
「そこで皆でね」
「バスケットですね」
「勿論ジュリア達も呼んでね」
「そしてですね」
「運動をしてお腹を空かせたらどうかしら」
「バスケットなら」
 ここで、です。ふと。
 恵梨香は四人を見回してです、こう言いました。
「皆も好きだし」
「うん、バスケットならね」
「僕達皆好きだし」
「いいね、走って身体も動かして」
「お腹も空くわね」
「そうよね、それにトロットさんも」
「ええ、私達もよ」
 トロットも笑顔で応えます。
「皆バスケが好きよ」
「それじゃあ」
「すぐに服を着てね」
 バスケットボールの服をです。
「それで体育館でしましょう」
「オズマ姫も来られますか」
「ええ、あの娘も今は午前中でお仕事が終わったから」
 それでというのです。
「時間があるわ」
「それじゃあ」
「楽しく運動をしてね」
 そしてというのです。
「楽しく遊びましょう」
「それじゃあ」
 こうしてでした、恵梨香達も楽しく汗をかいてそうしてお腹を空かせました。それが終わってからはまたお風呂に入ってです。
 すっきりとして晩御飯を待つのでした、その時に。
 恵梨香はお茶を飲んでいる時についつい傍にあったクッキーに手を伸ばしそうになったのを止めてでした。
 そのうえで、です。傍に寝そべっている腹ペコタイガーに言いました。
「危なかったわ」
「うん、食べたらね」
「その分だけね」
「お腹が膨れてね」
「カレーの美味しさが減るわね」
「そうなっていたよ、僕もね」 
 腹ペコタイガーもというのです。
「今は我慢しているんだ」
「お腹を出来るだけ空かして」
「晩御飯に備えているんだ」 
 そのカレーにというのです。
「最高のカレーを最高の状態で食べる為に」
「だからなのよね」
「いや、本当にね」
 それこそというのです。
「今僕は何でも食べたいよ」
「貴方の場合余計によね」
「そうなっているけれど」
  それでもというのです。
「必死に我慢しているんだ」
「何かそれってね」
 そのお話を聞いて言う恵梨香でした。
「相当辛そうね」
「何しろ僕は腹ペコタイガーだからね」
「他の誰よりもお腹が空くから」
「そう、だからね」
 まさにそれが為にというのです。
「今辛くて仕方ないよ」
「拷問みたいかしら」
「実際にそうだよ」
 拷問だというのです、彼にとっては。
「目が回りそうだよ」
「そうよね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「辛いよ、けれどね」
「我慢をしてるのね」
「晩御飯の為にね」
「拷問みたいね」
「これ以上はないまでにね」
 腹ペコタイガーにとってはです。
「辛い拷問だよ、けれどね」
「それでも我慢をして」
「カレーを待っているんだ」
「そうなのね、それじゃあね」
「あと少しだね」
「ええ、待てばね」
 それでというのです。
「この苦労が報われるわよ」
「そうだよね」
「こうしてお茶を飲んで」
 そしてというのです。
「待ちましょう、ただね」
「そのお茶もだね」
「あまり飲み過ぎるとね」
「それはそれでお腹が膨れるね」
「だからあまり飲めないわ」
 こう腹ペコタイガーにお話します。
「この一杯で終わりよ」
「そうなのね」
「そう、それじゃあね」
「今からね」
「楽しみましょう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 恵梨香も今は必死に我慢します、そして。
 その我慢する中で、でした。ふと。
 カレーの匂いがキッチンから恵梨香達のお部屋に入って来ました、それで恵梨香は腹ペコタイガーににこりと笑って言いました。
「そろそろよ」
「そうだね」
「少し待てば」
 それで、というのです。
「カレーよ」
「街に待ったね」
「そうなるわ」
「そうだね、待てば」
 それでというのです、腹ペコタイガーも。
「あと少しだけね」
「美味しく食べられるわ」
「そうよ」
「じゃあ待つよ、けれどこの香りは」
「もうどうしようもないわね」
「我慢出来ないよ」
 実際にもうマタタビを貰った猫になってしまいそうな腹ペコタイガーです。
「これはね」
「そうよね」
「あまりにもいい香りだからね」
「ここまで素晴らしい匂いはないわ」
「そうだよね」
「今はこの匂いを楽しみましょう」 
 食べる時を待ちながらです。
 そうしたお話をしながら待っているとです、遂にでした。
 食堂の方からベルが鳴りました、そして。
 皆で食堂に入りました、すると。
 もう食べる用意が出来ていました、それで皆でそれぞれ席に着くと。
 恵梨香は我慢出来ないといったお顔で、です。こう言いました。
「何かね」
「何か?」
「何かっていうと?」
「この待つ時間がね」
 まさにというのです。
「待ち遠しくて仕方ないわ」
「まあそれでもね」
 ここでまた言ったトロットでした。
「この待つ時間もまた楽しいでしょ」
「言われてみれば」
「これを楽しむこともね」
「食事の楽しみなんですね」
「そうよ、だから今はじっと待って」
「そしてですね」
「楽しみましょう」
 こう言うのでした、そして。
 遂にそのカレーが来ました、白いお皿の中に御飯とカレールーが入っていてその横には銀のスプーンと紅茶が置かれていて。
 テーブルの上には薬味や調味料が用意されています、その準備が全て出来ていて。
 オズマがです、皆に言ってきました。
「では今からね」
「はい、このカレーを食べて」
「そしてですね」
「楽しく食べましょう」
 こう言ったのでした。
「そうしましょう」
「その時を待っていました」
「もうお腹ペコペコで」
 五人がこうオズマに言います。
「今か今かでした」
「そしてこれからですね」
「カレーを食べるんですね」
「そうよ、私も待っていたわ」
 他ならないオズマもというのです。
「だから皆でね」
「はい、食べて」
「楽しみましょう」
「ではーーです」
 チクタクも言います、見れば食べない人達も別のものを食べる人達も一緒にいてなのでした。皆が食べるお顔を見るというのです。
「皆さんーーどうぞ」
「ええ、私も食べるわ」
 ビリーナもお豆やコーンを前にしています。
「これからね」
「さて、じゃあね」
 腹ペコタイガーは舌なめずりしました。
「食べようね」
「是非ね、じゃあ」
「じゃあ皆いいわね」
 あらためて言ったオズマでした。
「カレーを食べましょう」
「はい、これから」
「皆で」
「皆で食材を集めてシェフの人達が作ってくれたカレーよ」 
 こうも言ったオズマでした。
「それを食べましょう」
「うん、じゃあ食べよう」 
 腹ペコタイガーも言います。
「これからね」
「では」
 オズマは皆に先駆けて手を合わせました。他の皆もそれに続いて。
 いただきますの後で食べるのでした、そのカレーを食べてです。
 恵梨香はにこりとしてです、こう言いました。
「こんな美味しいカレーはじめて」
「私もよ」 
 トロットも応えます。
「こんな美味しいカレーはね」
「はじめてですか」
「そうよ」
 まさにというのです。
「最高のカレーよ」
「食材を集めて」
「そして作ってくれて」
「これまでお腹も空かせていたので」
「色々あってね」 
 最高のカレーが最高の状態で食べられているからというのです。
「こんな美味しいカレーないわね」
「本当にそうですよね」
「これなら何杯でも食べられるわね」
「そうですね」
「僕もう一杯食べたよ」
 腹ペコタイガーはお皿の上のカレーを食べてしまっています。
「この通りね」
「じゃあおかわりね」
「うん、お願いするよ」
 こうジュリアにも答えます。
「早速ね」
「ええ、幾らでもあるから」
「幾らでも食べさせてもらうよ」
「一体何杯食べるつもりかしら」
 ここでこう尋ねたのは恵梨香でした。
「貴方は」
「食べられるだけだよ」
 これが腹ペコタイガーの返事でした。
「いつも通りね」
「そうなのね、じゃあ私もね」
「恵梨香も食べるんだね」
「食べられるだけね」
「じゃあこれからどれだけ食べられるか勝負する?」
 こんなことも言った腹ペコタイガーでした。
「お互いにね」
「いえ、それは止めておきましょう」 
 そのお誘いは笑顔で断った恵梨香でした。
「お互いに満足いくまでってことで」
「あっ、そうするんだ」
「だって貴方と私じゃ食べる量が全然違うから」
「そうだね、僕の方がずっと大きいからね」
「止めておきましょう」
「それがいいね」
「それではね」 
 あらためて言う恵梨香でした。
「皆それぞれ満足するまでね」
「最高のカレーを食べようね」
「皆お腹一杯になるまで食べましょう」 
 トロットもこう言います。
「最高のカレーを最高の気持ちの中でね」
「うん、そうしよう」 
 皆トロットのその言葉に笑顔で頷きました、そのうえでそれぞれ最高のカレーを楽しむのでした。楽しい夜の宴でした。


新オズの腹ペコタイガー   完


                         2015・11・12



惠梨香の方は帰りに困っているヤマアラシを見つけたりしたけれど。
美姫 「特に大きな問題もなく解決できたしね」
他の皆より少し遅くなったけれど、無事に全ての材料が揃ったな。
美姫 「その後は順調に調理もして」
皆、楽しそうで良かった、良かった。
美姫 「今回の旅もこれでお終いね」
だな。今回も楽しませてもらいました。
美姫 「投稿ありがとうございました」
ではでは。



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