『オズのボタン=ブライト』




                 第二幕  リンキティンク王の宮殿

 オズマはこの時エメラルドの都の自分の宮殿においてです、オズの国のどんな場所でも自分が見たい場所を見られる鏡のあるお部屋にいました。
 そこでいつも通りオズの国を見回そうとしていましたら。
 ドロシーがです、トトを連れてオズマのところに来て言ってきました。
「オズマ、あの子達が来たらしいわよ」
「あの五人の子達が?」
「ええ、そうみたいよ」
「あら、けれど」
 そうドロシーに言われてです、オズマは。
 少し微妙なお顔になってです、こう言いました。
「王宮には来てないわね」
「今回は別の場所に出て来たみたいよ」
「何処にかしら」
「さっきグリンダから連絡があったけれど」
「グリンダの本に書かれたのね」
「そう、あの子達は今回はリンキティンク王の国に出たらしいわ」
 ドロシーはこうお話しました。
「あの人の国にね」
「あの人のなのね」
「そうなのよ」
「いつもは王宮に出て来るのにね」
「大抵はね」
「渦の扉も少し気まぐれだから」
「あちらの世界からこちらの世界に入る時は時々」
 ドロシーも言います。
「この王宮以外の場所に出て来るわね」
「そうよね」
「それで今回はね」
「リンキティンク王の国ね」
「今からあの人の宮殿に向かうそうよ」
「五人だけで?」
 オズマはドロシーに彼等自身のことも尋ねました。
「リンキティンク王の宮殿に向かっているの?」
「いえ、それがね」
「誰か一緒なのね」
「ボタン=ブライトと一緒みたいよ」
「そういえばあの娘昨日まで王宮にいたけれど」
 オズマはボタンのことにも気付きました。
「今はね」
「ええ、今朝から王宮にいなかったけれど」
「また何時の間にか寝ている間に」
「何処かに移っててね」
「あの子達と一緒になったのね」
「そうみたいね」
「六人ね、けれど」
 オズマはこのことまで確かめてでした、そのうえで。
 腕を組んで考えるお顔になってです、ドロシーに言いました。
「ボタンだけだと」
「頼りないわよね」
「あの子はすぐにわからないだから」
 こう言うからというのです。
「子供だし」
「子供が六人だけだとね」
「幾ら五人がしっかりしていても」
 それでもというのです。
「限度があるわ」
「何かと大変よね」
「だからね」
 それでというのです。
「誰かが行かないとね」
「どういった冒険になるかだけれど」
「ええ、助けてあげないと駄目よ」
「そうね、じゃあ今からリンキティンク王の国にね」
「行ってそこであの子達と合流して」
「助けてあげましょう」
 ドロシーはオズマににこりと笑って言いました。
「そうするべきよね」
「ドロシーの言う通りよ、ではね」
「これから誰かに行ってもらいましょう」
「それじゃあ今回は」
 鏡で、です。オズマはカルロス達の姿を確認しました。確かにボタンと一緒にリンキティンク王の宮殿に向かっています。
 その彼等を見てです、オズマはドロシーににこりと笑って言いました。
「ここは私が行くわ」
「オズマがなの」
「ええ、最近冒険に出ていなかったし」
 それにというのです。
「リンキティンク王に会っていなかったら」
「訪問の意味も含めてなのね」
「行って来るわ」
「そうするのね」
「これからね」
「わかったわ、じゃあ留守の間はね」
 ドロシーはオズマの言葉を受けてです、この娘もにこりと笑って返しました。
「私がオズマの代わりをしてるわ」
「オズの国の王女としてよね」
「ええ、だからオズマはね」
 冒険に出ている間はというのです。
「冒険に出てね」
「そうさせてもらうわ」
「今は王宮にかかしさんと木樵さんも来ているから」
 ドロシーが頼りにしているこのお二人にです。
「ライオンさんもいるし」
「万全ね」
「ええ、だから留守は任せてね」
「それじゃあね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 今回はオズマが冒険に出ることになりました、そのことを決めてです。
 出発となりましたがその時にです。
 見送りの時にかかしがです、オズマに言いました。
「必要なものは全部持ったけれど」
「テーブル掛けに折り畳み式のテントもね」
「オズマ一人で行くのはね」
「うん、危ないね」
 木樵も言いました。
「それはね」
「だから誰かと一緒に行くべきだよ」
「けれど今はね」
 ライオンは見送りの皆を見回します、今はドロシーと彼等だけです。
「他の皆は魔法使いさんと一緒にムシノスケ教授の王立大学に行ってるかそれぞれ冒険に出ていていてね」
「私はいるけれど」
 ジュリア=ジャムはいますが。
「他の皆はね」
「うん、誰かがオズマと一緒に行くにしてもね」
 かかしがまた言います。
「誰もいないからね」
「どうしたものかな」 
 木樵も腕を組んで考えるお顔になって言います。
「これは」
「さて、どうしたものかな」
「オズマだけで行くのはよくないし」
「かといって誰もいないしね」
「僕じゃ駄目かな」
 王室の歴史編纂を担っているボームさんがここで皆に言ってきました。
「姫と一緒にね」
「ボームさんは歴史書を編纂してもらわないといけないから」
 ドロシーはボームさんに残念そうに言いました。
「だから」
「駄目なんだね」
「ええ、どうしたものかしら」
「私一人じゃやっぱり」
 オズマも考えるお顔になっています。
「問題があるわね」
「ええ、本当に誰かが一緒じゃないとね」
「よくないわね」
「どうしたものかしら」
「王宮には僕達が残らないといけないから」
 かかしは王宮の留守役は残しておかないと、というのです。
「だからね」
「うん、オズマが行くにしてもね」
 木樵も困ったお顔のままです。
「オズマだけだとよくないよ」
「モジャボロさんもチクタクも腹ペコタイガーも」
 それこそ王宮にいつもいるその人達がです。
「いないから」
「王立大学に行って」
「だったら」
 ここで言ったのはジュリアでした。
「私が行こうかしら」
「貴女がなの」
「ええ、私はいつも姫様と一緒だし」 
 このことはドロシーと一緒です。
「姫様お付きの侍女でもあるから」
「こうした時はっていうのね」
「私が行けばどうかしら」
「そうね」
 少し考えてからでした、ドロシーはジュリアに答えました。
「お願い出来るかしら」
「それじゃあね」
「それと今はトロットとハンク、ベッツイと船長さんもそれぞれ冒険に出ていないけれど」
「それでもよね」
「ジャックのところに遊びに行っている木挽の馬が戻って来るから」
「もうすぐね」
「馬とジュリアと一緒にね」
 このパーティーでというのです。
「行けばいいかしら」
「それじゃあ私と馬がね」
「ええ、オズマのお供をして」
「そうするわね」
「オズマもそれでいいかしら」
 ドロシーはジュリアとお話をしてからでした、そのうえで。 
 オズマにもです、こう尋ねました。
「それでいいかしら」
「ええ、私はね」
 にこりと笑って答えたオズマでした。
「そうさせてもらうわ」
「それじゃあね」
「三人で行くわ」
「もうすぐ馬が帰って来るから」
「馬に乗ってリンキティンク王の宮殿まで行って」
「あの子達を待つわ、それでね」
 ボタン達に会ってからのこともです、オズマは言及しました。
「あの子達と今回はどうするか」
「それもお話するのね」
「この王宮まで来て遊ぶのもいいし」
「他にもよね」
「ええ、冒険もいいから」
「まずはあの子達と会ってからね」
「それから次第だね」
「あれっ、皆集まってどうしたの?」
 さっきまでおトイレに行っていたトトがでした。皆のところに来て尋ねてきました。
「いないから何処に行ったのかって探してたのに」
「あら、トト」
 ドロシーはトトに気付きました。
「貴方さっきまでいたのに」
「それがおトイレに行ってたから」
「ここにいなかったのね」
「そうだよ、そういえばドロシー鏡のお部屋でオズマと冒険のお話してたね」
「さっきはね」
「それでオズマが冒険に出るんだね」
「ジュリア、それに馬と一緒にね」
 この三人でというのです。
「カルロスやボタン達を迎えに行くのよ」
「あの人の宮殿ならね」
 そう聞いてです、トトが言うことはといいますと。
「今ガラスの猫とビリーナもいるよ」
「あっ、そういえばこの前一緒に行ったわね」
「つぎはぎ娘と一緒にね」
「忘れたわ、あの娘達も冒険に出ていてね」
「いないんだよね」
「エリカも一緒だったわね」
 あの猫もです。
「そうだったわね」
「そう、四人はいないよ」 
 つぎはぎ娘達はというのです。
「今はね」
「そうだったわね」
「そう、だからね」
「あの人の宮殿に行けば」
「あの娘達もいるから」
「カルロス達を迎えられるわね」
「そうなるね」
「ああ、そうなるとね」
 そのお話を聞いてです、かかしはこう言いました。
「あの宮殿は今相当に賑やかだね」
「そうね、あの王様にね」
 ドロシーもかかしに応えます。
「つぎはぎ娘にガラスの猫にビリーナもいるから」
「しかもエリカも賑やかだし」
 この猫も結構喋るのです。
「賑やかよね」
「そうだね」
「その賑やかな場所にだね」
 木樵も言います。
「オズマ達が行くんだね」
「そうなるわね」
 ドロシーも木樵に応えます。
「今回は」
「そうだよね」
「そしてカルロス達もね」
 ライオンが言った言葉です。
「そうなるね」
「そうよね」
「ただ」
 ここでトトは心配になったことがありました、それは何についてかといいますと。
「ボタン=ブライト大丈夫かな」
「また急に何処かに行くか」
「彼はいつもだからね」
「すぐにいなくなるのよね」
 ドロシーものことを知っていて言います。
「あの子って」
「そうだよね」
「いつも急に出て来てね」
「急にいなくなるから」
「相変わらずね」
「だからだよ」
「カルロス達と一緒にいても」
 今はそうであってもというのです。
「いなくなったりすることも」
「普通にあるわよ」
「そうなんだよね」
「そのことは大丈夫かしら」
「そのことはね」
 オズマがドロシー達に言うことはといいますと。
「言ってもね」
「仕方ないっていうのね」
「あの子はそうした子だから」
 いつも急に出て来て急にいなくなる子だからというのです。
「心配しても仕方ないわ」
「そうなるのね」
「だから私はあの子がそうなってもね」
「仕方ないってことで」
「まずはカルロス達を迎えに行くわ」
「そうするのね」
「これからね」
 こう言ってでした、オズマは王宮の正門のところ今皆が集まっているところで。
 馬が戻ってきたのを見てです、彼に事情を話しました。
 するとです、馬はすぐに答えました。
「それじゃあね」
「一緒に来てくれるのね、私達と」
「というかね」
「というか?」
「オズマとジュリアは僕の背中に乗って」 
 そしてというのです。
「すぐにね」
「リンキティンク王の宮殿まで」
「行こう」 
 こう提案するのでした。
「これからね」
「そうね、貴方の背中に乗れば」
「すぐにだよ」
 それこそというのです。
「行くことが出来るから」
「あっという間にね」
「もう今すぐにだよ」
「あの人の宮殿まで行けるわね」
「それでどうかな」
「わかったわ」
 オズマはにこりと笑って馬に答えました。
「それじゃあね」
「うん、僕の背中に乗って」
 オズマだけでなくジュリアにも言いました。
「そしてすぐに行こう」
「では今から」
「行って来るわ」
 オズマとジュリアはドロシー達に挨拶をしました。
「そしてリンキティンク王の宮殿で」
「カルロス達と会って来るわ」
「ええ、わかったわ」
 ドロシーがにこりと笑って二人に応えました。
「じゃあ皆がいない間はね」
「留守番お願いね」
「そうさせてもらうわ」
 こう和気藹々と挨拶をしてでした。
 オズマはジュリア、そして馬と一緒にです。リンキティンク王の国に向かって出発しました。馬は風の様に速く進んで、でした。
 あっという間にリンキティンク王の宮殿まで着きました。そして宮殿の門番の兵隊さんにオズマが馬から降りて尋ねました。
「リンキティンク王はおられるかしら」
「これはオズマ姫」
 兵隊さんはオズマの突然の訪問に少し驚いて言いました。
「今日は何の御用で」
「ここに私の友達が来る筈だから」
「お迎えに参られたのですか」
「そうなの、それでね」
「我が王にもですね」
「お話しようと思って来たけれど」
「王でしたら」
 兵隊さんはすぐに答えました。
「中にボボ王子とです」
「いるのね」
「今も賑やかに過ごされていますよ」
 兵隊さんはオズマににこりと笑ってお話します。
「つぎはぎ娘さん達と一緒に」
「ガラスの猫、それにエリカとよね」
「そうです、お客様達と一緒に」
 そうしてというのです。
「明るく笑っておられますよ」
「そこはいつも通りね」
「毎日明るく過ごされていますが」
「今日もということね」
「はい、そしてその王様を見てです」
 兵隊さんも明るく言います、見ればとても派手な軍服を見た気さくな感じの人です。
「私達も笑顔になります」
「そういうことなのね」
「では今からですね」
「ええ、リンキティンク王にね」
「それでは」
 こうしてでした、兵隊さんが門を開いてです。
 オズマ達はリンキティンク王の賑やかな宮殿の中に入りました。その宮殿の中に入ってです。
 ジュリアは首を傾げさせてです、こんなことを言いました。
「何かこの宮殿は」
「おもちゃ箱の中だね」
「そんな感じがするわ」
 こう木挽の馬に言いました。
「どうもね」
「そうだね、確かにね」
「貴方もそう思うわね」
「どうもね」
 馬も同じ意見でした。
「ここはね」
「お掃除はされてるけれど」
「妙に散らかってる感じがして」
 そしてです。
「色々なものがあって」
「それも遊ぶ為のものがね」
「色もカラフルでね」
「本当におもちゃ箱の中みたいだね」
「そうよね」
「リンキティンク王の趣味だね」
 この宮殿の主であるその人のです。
「だからね」
「こうした造りなのね」
「中もね」
「そうなのね」
「いや、本当にね」
 馬はこうも言うのでした。
「僕も何度かこの宮殿に来てるけれど」
「おもちゃ箱の中みたいって」
「いつも思うよ」
「私ははじめてだけれど」
 普段は王宮の中で勤めているからです、ジュリアは冒険に出ることは稀です。王宮のことは誰よりも詳しいですが。
「正直驚いてるわ」
「何度見てもね」
「ここはそうなのね」
「ええ、驚くから」
「そうした場所なのね」
「そうなんだ」
「あの人はね」
 オズマも言います。
「お掃除はしても散らかってる感じが好きだから」
「それでなんですね」
「そう、こうしてね」
「いつも宮殿をこうした感じにしてるんですか」
「そうなの」
 こうお話してでした、そして。
 皆で王様の間に行きます。リンキティンク王の部屋に。
 王様のお部屋なのにです、そこは子供部屋みたいでした。おもちゃがあちこちにあってそして賑やかな音楽が奏でられていて。
 そしてです、小柄で禿げた光る頭の上に金色の王冠を被った王様の服を着た白い口髭の人がつきはぎ娘達と一緒に遊んでいました。
 その人は踊るつぎはぎ娘を見てです、玉座で拍手をして笑っています。
「ホッホッホ、面白い面白い」
「そんなにあたいの踊りがいいのね」
「最高じゃよ」
 こうつぎはぎ娘に言うのでした。
「あんたの踊りは上手でじゃ」
「愉快っていうね」
「愉快、愉快じゃ」
 本当にというのです。
「しかも幾らでも踊れるな」
「あたいは疲れることがないしね」
「寝ることもなくじゃな」
「そうよ、あたしは食べることも寝ることもね」
「一切不要じゃな」
「好きな時に好きなことが出来るのよ」
 決して疲れることがないからというのです。
「今もこれからもね」
「だからじゃな」
「そうよ、どんな踊りでもね」
 それこそというのです。
「好きなだけ踊れるよ」
「そしてわしも楽しませてくれる」
「そういうことよ」
「何か王様を見てるとね」
「そうよね」
 ガラスの猫とエリカはそれぞれ丸いボールを弄っています、触れば触る程動くので二匹は夢中になっています。
「子供みたいね」
「外見は王様でもね」
「随分と遊び好きで」
「悪戯好きで陽気で」
「本当にね」
「子供みたいな人ね」
「王様は童心の人だからね」
 ここでこう言ったのはです。
 頭にターバンを巻いてペルシャ風の立派な身なりをした端整な青年でした。背は高く王様とは好対照な感じです。
「いつもこうなんだよ」
「そうなのね」
「だから子供みたいなのね」
「その童心があるから」
「それでこうした人なのね」
「そうだよ、そして私もね」 
 この人も言うのでした。
「そうした王様といつも一緒にいてね」
「楽しんでるのね」
「ボボ王子も」
「そうなんだ」
 そのボボ王子も言います。
「今みたいにね」
「確か貴方山羊だった時はね」
 ガラスの猫は王子のかつての姿の時を聞きました。
「王様と言い合ってばかりだったのよね」
「あの時の僕は随分と口が悪かったね」
「だからなのね」
「そう、実際にね」
「言い合ってばかりだったのね」
「何かとね」 
 実際にそうだったというのです。
「そうだったんだ」
「そうなのね」
「うん、けれどね」
「今はよね」
「そう、この通りね」
「王様といつも一緒にいて」
「仲良くしてるよ」 
 王子は王様を暖かい目で見ながらガラスの猫にお話します。
「王様は僕の一番の親友だよ」
「そこまでの間柄ね」
「そうだよ」
「それでだけれど」
 今度はエリカが言ってきました。
「お客様よ」
「あっ、これは」
 王子はお部屋の入り口のところを見てでした、すぐにです。
 王様にです、こう言いました。
「王様、お客人ですよ」
「おっ、これは」
 王様はすぐにでした、オズマ達に気付いてです。
 席から立ち上がってです、まずはつぎはぎ娘に言いました。
「踊りは少し中断じゃ」
「あら、どうしたの?」
「新たなお客人が参られた」
「あら、オズマじゃない」
 踊りをぴたりと止めてでした、つぎはぎ娘はです。
 オズマ達を見てです、こう声をあげました。
「どうしたの、一体」
「ええ、実はね」
 オズマが事情をお話しました。そして。
 お話を聞いてです、つぎはぎ娘は楽しそうに言いました。
「カルロス達がここに来るのね」
「ええ、そうなの」
「ボタンと一緒にね」
「あの娘ちゃんと来られるの?」
 エリカは彼のことを気にかけていました。
「しょっちゅういなくなる子だから」
「ええ、あの子のことはね」
 オズマも心配しているお顔です。
「私も気になってるわ」
「そうよね」
「けれどカルロス達は絶対に来るから」
「この王宮にね」
「あの子達を迎える用意はしておきましょう」
「そうするのね」
「それでリンキティンク王のところに来たのよ」
「確かあれじゃな」 
 王様はもう玉座から降りてです、そのうえで。
 オズマ達のところに来てです、こう言うのでした。
「その子達はドロシー達と同じ外の世界から来た子達じゃな」
「そうよ、それで時々ね」
「オズの国にも来るのじゃな」
「そうした子達なの」
「そしてその子達をこの宮殿に迎えるのじゃな」
「そうしていいかしら」
「願ってもない話じゃ」
 王様は明るく笑って言いました。
「客人が来れば来る程賑やかになる」
「貴方にとってもいいお話ね」
「そして楽しく飲み食い出来る」
 そちらも楽しめるというのです。
「ではその子達の為にも出迎えの準備もしておこう」
「為にも?」
「オズマ姫達も来られたのじゃ」
 王様はオズマ達もというのです。
「今から歓待させてもらわないとな」
「私達にもなのね」
「さあさあ、早速じゃ」
 王様は両手を叩いて明るく言います。
「ご馳走を食べよう」
「今日は何を召し上がられますか?」
 王子はオズマ達に挨拶をしてから王様に尋ねました。
「それで」
「うむ、ハンバーグにじゃ」
 それにと答えた王様でした。
「ホワイトシチュー、ポテトサラダにじゃ」
「それにパンですね」
「ケーキもジュースもじゃ」
 デザートのことも忘れていません。
「たっぷりと出してじゃ」
「これから皆で食べてですね」
「楽しもうぞ」
「それでは今から」
「うむ、食堂で皆で食べてな」
 そうしてというのです。
「歓待じゃ」
「何か来てすぐにそうしてもらうなんて」
 それこそと言うオズマでした、くすりと笑って。
「悪いわね」
「ほっほっほ、この宮殿でのご法度はじゃ」
 他ならぬ王様が決めたことです、宮殿の主の。
「遠慮はせぬこと」
「だからなのね」
「うむ、姫様達も遠慮はせずにじゃ」
 それにというのです。
「存分に楽しまれよ」
「それじゃあ」
「ご馳走を食べてからな」
 それからのこともお話する王様でした。
「皆で遊ぼうぞ」
「そうしながらっていうのね」
「その子達を待とうぞ」
「それじゃあね」
「この宮殿のハンバーグは最高じゃ」 
「そしてそのハンバーグを食べて」
「遊びも楽しもうぞ」
 こうしたことをお話してでした、皆でです。
 食堂で楽しく食べてでした、それから王様のお部屋に戻って皆で楽しく遊びます。それでつぎはぎ娘はまた踊りはじめました。
 その踊りを見ながらです、馬は王子に言いました。
「王様と王子はあの子達に会ってないよね」
「うん、まだね」
「そうだよね、じゃあね」
「今回はだね」
「いい機会だよ」
「あの子達に会うね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「楽しみにしていてね」
「そうさせてもらっているよ」
「王様はもうかな」
 馬は王子と一緒に今は玉座から降りてつぎはぎ娘の踊りを観ている王様にも尋ねました。
「楽しみかな」
「うむ、実にな」
 王様は明るくです、馬に尋ねました。
「楽しみで仕方ないぞ」
「そうなんだね」
「そうじゃ、一体どんな子達かな」
「とてもいい子達だよ」
 馬は王様に彼等のことをお話しました。
「だから楽しみにしておいてね」
「そうしておるぞ、それでな」
「それで?」
「このお菓子も食べてもらう」
 見れば王様は今はポップコーンを食べています、食べながらそのうえでつぎはぎ娘の踊りを観ているのです。
「そして賑やかに楽しんでもらうぞ」
「王様が普段そうであるみたいにだね」
「そうじゃ、しかしな」
「しかし?」
「姫様にも言ったがな」
「遠慮は無用だね」
「わしは一切遠慮せぬしじゃ」
 それにというのです。
「遠慮されることもじゃ」
「好きじゃないんだね」
「だからな」
「この宮殿の決まりにしたんだね」
「誰も遠慮してはならん」
 それこそ宮殿の中に入った人はです。
「一切な」
「それで姫様にも言って」
「うむ、遠慮してもらわなかったのじゃ」
「そうなんだね」
「そしてその子達にもな」
「遠慮してもらわないんだね」
「ボタン=ブライトにもな」
 五人と一緒に遊びに来ている彼にもというのです。
「遠慮はしてもらわんぞ」
「遠慮なく屈託なくだね」
「楽しんでもらう、しかしな」
「しかし?」
「このポップコーンは美味いのう」
 お口の中にどんどん入れて味わいながらの言葉です。
「幾らでも食べられるわ」
「シェフが焼いてくれたんですよ」
「おお、そうなのか」
「はい、王様がそう言われると」
 どうかとです、王子が言うには。
「シェフも喜びますよ」
「そして笑顔になるな」
「はい、心から」
「ならよい、落ち込んでるとそれだけで不幸になる」
「しかし笑っていると」
「それだけで幸せになる」
「だからな」
 だからこそというのです。
「シェフも喜ぶのならな」
「王様もですね」
「さらに嬉しいぞ、美味いものを作ってもらって食って」
「そしてシェフも喜んで」
「いいことばかりじゃ」 
 まさにというのです。
「わしも楽しいぞ」
「ポッピコーンってそんなに美味しいの?」
 エリカはその王様の横で首を傾げさせています。
「見ていたら前足を出したくなるけれど」
「それでもよね」
 ガラスの猫も言います、エリカと一緒にいて。
「特にね」
「美味しいとは思わないわね」
「そもそもあたし何も食べないし」
 ガラスの身体なので一切食べる必要がないのです。
「あんたもね」
「そうしたものは食べてもね」
「お口に合わないのね」
「そうなのよ」
 エリカもというのです。
「だからね」
「美味しいかって思うのね」
「どうもね」
「ただ、それでもよね」
「見ているとね」
 それでというのです。
「触りたくなるわね」
「妙にね」
「小さくて触ったらすぐに動くから」
「自然によね」
「前足が出るわね」
「それはあたしもよ」
 ガラスの猫もというのです。
「ああしたのはね」
「あんたは何も食べなくてもね」
「前足は出るわ」
「猫だからね」
「猫はそうしたものに前足が出るのよ」
 それこそ無意識のうちにです。
「それで触るのよ」
「そうするわね」
「食べることに興味はなくても」
 それでもなのです。
「自然とよ」
「そうよね」
「御前さん達にとってはそうでもじゃ」
 そのポップコーンを食べている王様のお言葉です。
「わしにとっては美味しいのじゃよ」
「王様にとっては」
「そうなのね」
「うむ、だからな」
「そうしてなのね」
「食べてるのね」
「楽しんでな」
 こう言ってさらに食べる王様でした、そして。 
 エリカにです、干した鳥肉を出したのでした。
「御前さんはこっちじゃな」
「あら、有り難う」
「好きなだけ食べるがいい」
「これはいいプレゼントね」
「楽しくなるな」
「だって大好物なのよ」
 それを貰うからというのです。
「嬉しくなることもね」
「当然じゃな」
「ええ、そうよ」
 こう王様に言うのでした。
「誰だってそうなるわよ」
「だからじゃ」
「あたしにくれるの」
「好きなだけ食べてじゃ」
 その大好きな干した鳥肉をというのです。
「笑顔になるのじゃ」
「それじゃあね」
「これもですよね」
「遊びじゃ」
 王様は王子にも応えました。
「こうして人の笑顔を見ることもじゃ」
「遊びですね」
「遊んでいて気付いた」
「人の笑顔を見ることも」
「遊びでじゃ」
 そしてというのです。
「その中でも最高のものじゃ」
「そういうことですね」
「では楽しもう」
「はい、今から」
「エリカにも美味しいものを食べてもらってな」
「じゃああたしはね」
 何も食べる必要のないガラスの猫はといいますと。
「どうなるのかしら」
「御前さんにはこれじゃ」
 王様はガラスの猫には丸いボールを出しました。
「これで遊ぶといい」
「あら、これはいいプレゼントね」
「そうじゃな」
「これが一番いいわ」
 ガラスの猫の一番好きなおもちゃです。
「転がして遊べるから」
「ではじゃな」
「ええ、有り難う」
 こう笑顔で応えたガラスの猫でした。
「心遣い感謝するわ」
「ほっほっほ、では遊ぶのじゃ」
「是非ね」
「遠慮は無用じゃ」
「そうさせてもらうわね」
「うむ、遊ぶことはな」
 何と言ってもと言う王様でした。
「人生最大の勉強じゃ」
「遊びは勉強なの」
「何かと楽しめてわかるからのう」
「だから勉強だっていうのね」
「そうじゃ、皆で楽しんでな」
 そしてというのです。
「勉強するのじゃ」
「そういえばこの王様は」
 ガラスの猫は王様の言葉を聞いてです、王様をあらためて見つつ言いました。
「意外と以上に賢者よね」
「意外とか」
「そう、ぱっと見では只の遊び人だけれど」
「それがか」
「そう、色々とわかっているね」
 まさにというのです。
「賢者よ」
「わしのことがわかったか」
「そこでそう言うのがね」
 どうにもと言ったガラスの猫でした。
「幾分マイナスだけれどね」
「しかしじゃな」
「王様は確かに賢者よ」
「それは間違いないのじゃな」
「ええ、そのことは確かよ」
「遊び好きの賢者」
 王子も王様を見つつ言います。
「それもいいかも知れないね」
「そうね、じゃあここで遊びながら」
 ジュリアはその王子に応えます。
「カルロス達を待つのね」
「あの子達の状況はいつも見ているから」
 オズマは手鏡を出してそれでカルロス達の状況を見守っています、王宮にあるあの鏡の小さなものみたいです。
「安心してね」
「何かあれば」
「すぐに私が行くから」
 そうしてカルロス達を助けるというのです。
「大丈夫よ」
「まずは自分達で、ですね」
「ここに来てもらいたいから」
「すぐに来られますしね」
 カルロス達が今いる場所からこの宮殿まで、です。
「ここは、ですね」
「あの子達を待つわ」
「わかりました、それじゃあ」
「あの子達が来るまでね」
「待つんですね」
「そうしましょう」
 こう言ってです、オズマ達はカルロス達を待つことにしました。宮殿の中でリンキティンク王達と一緒に遊びながら。



カルロス達が来た事はドロシーたちには分かったみたいだな。
美姫 「一安心よね」
だな。おまけという訳ではないが、オズマたちが迎えにも来てくれたしな。
美姫 「後は無事にリンキティンク王の所に辿り着くかよね」
何が起こるか分からないからな。
美姫 「次回も待っていますね」
待っています。



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