『オズのボタン=ブライト』




                 第三幕  六人の子供達の到着

 カルロス達五人はボタン=ブライトと一緒にリンキティンク王の国に向かっていました。お昼御飯の後すぐに出発してです。
 地図を見ながら宮殿の方に向かいます、その道中で・
 神宝が地図を持ってその地図と回りを見回しつつ皆に言いました。
「この地図わかりやすいから」
「僕達が今何処にいるかもだね」
「うん、わかるしね」
 こうジョージにも応えます。
「宮殿の場所もね」
「ああ、あれだね」 
 そのおもちゃ箱みたいな色々と派手な色で飾られた西洋のお城を指差してでした、ジョージは神宝に言いました。
「あのお城だね」
「うん、そうだよ」
「凄い色の宮殿ね」
 恵梨香はその宮殿を観て少し驚いた声で言いました。
「青に赤に緑に」
「派手ね」
 ナターシャも言います。
「ブロックのお城みたいね」
「そうよね、おもちゃのね」
「そうしたお城ね」
「そうだね、あのお城はね」
 カルロスもそのお城を観つつ言います。
「リンキティンク王のお城だね」
「そうだね、まさにね」
「あの人のお城ってイメージだね」
 神宝とジョージもそのお城を観つつ言うのでした。
「おもちゃのお城みたいで」
「外観もね」
「お城の塔とか壁も」
 カルロスはそうしたものも観て言いました。
「ブロックのおもちゃみたいだよ」
「本当のブロックじゃないにしても」
 それでもと言う恵梨香でした。
「そうした風ね」
「本当にそうだよね」
「間違いないわね」
 ナターシャは断言しました。
「あのお城はリンキティンク王のお城よ」
「そうだね、宮殿だね」
「あの人のね」
「うん、じゃああのお城に向かって」
 そしてとです、カルロスは皆に言いました。
「リンキティンク王にお会いしよう」
「これからね」
「そして王様にお会いして」
「そのうえで」
「これからどうするかよね」
「どうしようかな、これから」
 カルロスはここで腕を組んで考えました。
「宮殿に着いたら」
「その時はね」
「どうしたものかしらね」
「そうだね、いつもは王宮に行くけれど」
 エメラルドの都のです。
「行かないといけないかっていうと」
「特にね」
「そうしたルールはないし」
「今回たまたまリンキティンク王の国に出たけれど」
「都に行くつもりが」
「どうしようかな」
 まだ考えているカルロスでした、皆も一緒です。
「本当に」
「そうね」
 ここで、です。恵梨香が。
 深く考えるお顔になってです、こうカルロスに提案しました。
「リンクティンク王と一緒に遊ぶ?」
「そうするんだ」
「そうしない?」
「そうだね、王宮に行くかね」
「リンキティンク王と遊ぶか」
「どちらかにしようか」
「そうしたらどうかしら」
 恵梨香はまたカルロスに言いました。
「少し考えたけれどね」
「そうだね、じゃあね」
「何はともあれね」
「あの宮殿に行きましょう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆はです、宮殿に向かうのですが。ここで急にでした。
 カルロスは皆を見回してです、こう言いました。
「ボタンはちゃんといるね」
「うん、ここにね」
 しっかりと言ったボタンでした。
「ここにいるよ」
「よかったよ」
「僕がいなくなってるって思ったの?」
「ひょっとしてね」
 いつもみたいにです。
「そうじゃないかって思ったから」
「皆を見回したんだ」
「また寝ていてね」
「それはないよ」
 ボタンは落ち着いた声で、でした。カルロスに答えました。
「だってずっと歩いてるから、今は」
「寝ることはないっていうんだね」
「そうだよ」
「そうだね、考えてみればね」
「確かに僕は急にいなくなったりするけれど」
 それでもというのです。
「今はこうしてね」
「僕達と一緒にだね」
「うん、いるよ」
「歩いているんだね」
「そうだよ、安心してね」
「それじゃあね」
「じゃあこれからだよね」
 ボタンもその派手な宮殿を観て言いました。
「あの宮殿に行くんだね」
「今からね」
「それじゃあ行こう」
「これからね」
 こうお話してでした、皆でリンキティンク王の宮殿に向かいます。ですがその宮殿の姿は見えてはいてもです。
 歩いても中々近付くことは出来ません、やがて日は落ちてきてです。 
 カルロスは少し不安になってです、皆に言いました。
「出来ることなら夕方までにね」
「うん、行きたいね」
「そうだよね」 
 神宝とジョージが神宝に応えました。
「暗くなるまでに」
「そうしたいね」
「だからね」
 それで、というのです。
「急ごう」
「このままだと」
 ナターシャも言います。
「夜までに着けるかしら」
「少し不安ね」
 最後に言ったのは恵梨香でした。
「夜までに着けるか」
「暗くなって歩くのはね」
 どうかとです、不安になって言うカルロスでした。
「よくないからね」
「このオズの国でもね」
「それはね」
「子供は夜に歩くものじゃない」
「お父さん達も言ってるし」
「実際にね」
 カルロスは足元を見ました、今は何もなる歩けるその場所を。
「こうした場所も夜だとね」
「見えないからね」
 ボタンがカルロスに言ってきました。
「危ないんだよね」
「うん、そうなんだよね」
「石があっても」
「お昼なら見えているからね」
 だからというのです。
「避けるかどけることが出来るけれど」
「夜は見えていないから」
「そのせいで医師につまづいたりするよね」
「同じ道でもね」
 それこそとです、カルロスは言いました。
「昼と夜で全然違うんだよね」
「だから夜はだね」
「歩くべきじゃないよ」
 決してというのです。
「だから夕方までにね」
「あの宮殿にだね」
「着く様にしないと」
「幸い皆歩くの速いから」
 恵梨香はこのことから言いました。
「少し速くしたら」
「それでだね」
「着くことが出来るかしら」
「夕方までにね、じゃあ」
 カルロスは恵梨香とのお話を終えてでした。
 そしてです、こう言いました。
「少しだけ急ごう」
「よし、それじゃあ」
「皆で少しだけ急ごうね」
 神宝とジョージの男の子二人が応えてでした、そして。
 そのうえで、です。ボタンもでした。
「僕も急ぐよ」
「じゃあ私もね」
「私もそうするわ」
 ナターシャと恵梨香も言ってでした、六人で。
 足を少し速くしてでした、宮殿に向かいました。宮殿は少しずつです。皆の目には大きく見えてきてでした。
 夕方のすっかりお空が赤くなった時にでした、皆は。
 宮殿は皆の前に来ました、そのうえで。
 カルロスは門の前まで来てです、皆に言いました。
「何とか着くことが出来たね」
「そうだね」
「何とか夜までに着くことが出来たね」
「何とかね」
「到着したわね」
「よかったよ」 
 このことに素直に喜ぶカルロスでした。
「夜までに着くことは出来て」
「それじゃあだね」
「うん、これから門を開けてもらおう」
「坊や達お客さんかい?」
 門の兵隊さんがカルロス達に声をかけてきました。
「王様への」
「実は僕達は」 
 カルロスは兵隊さんに自分達の事情をお話しました、そのうえで兵隊さんにこうも言いました。
「それで王様にもです」
「会いに来たんだね」
「はい、そうです」
「わかったよ、そういえばね」
「そういえば?」
「ここは南門だけれどね」
 宮殿のです。
「北門にもお客さん来ていたそうだね」
「あっ、そうなんですか」
「そうみたいだよ、話を聞いたところ」
「そうですか」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「今は宮殿で王様達と遊んでいるそうだよ」
「そうなんですか」
「前からここに来て遊んでいるお客さん達もいるしね」
「今はお客さん多いんですか」
「それで王様も喜んでおられるよ」
 そのリンキティンク王もというのです。
「あの人はお客さんが好きだしね」
「お客さんと遊ぶことがですね」
「好きだからね」
「だから喜んでおられるんですね」
「そうだよ、それで君達も来たら」
 そのカルロス達がというのです。
「余計にね」
「喜んでくれますか」
「絶対にそうだよ、じゃあね」
「はい、中に入れてくれますか?」
「うん、是非ね」
 こうしてでした、兵隊さんは門を開けようとしました。
 お話は前後します、宮殿の中で。
 オズマは手鏡を観てです、ジュリア達ににこりと笑って言いました。
「来たわ、今ね」
「カルロス達がですね」
「ボタンも一緒よ」
 その彼もというのです。
「六人いるわ」
「そうですか、じゃあ皆が来るのを待つんですね」
「そう思ったけれど」
 くすりと笑って言う恵梨香でした。
「ここはね」
「わかりました、あの子達がいる門まで行って」
「あの子達を迎えましょう」
「私達からですね」
「そうしましょう、どうかしら」
「そうですね、私達から顔を出してですね」
「あの子達を少し驚かせてあげましょう」
 これがオズマの提案でした。
「南門まで行って」
「それじゃあ」
「ええ、これからね」
「私達で、ですね」
「それは面白いのう」
 リンキティンク王もお話を聞いて楽しそうに言いました。
「ではわしも行こう」
「王様もなのね」
「いきなりわし等から顔を出してな」
 そしてとです、王様はオズマに楽しく笑って言いました。
「あの子達を驚かせてやろう」
「あら、楽しいこと考えるのね」 
 つぎはぎ娘も乗ります。
「じゃああたしもね」
「私もね」
「あたしも乗るわ」
 エリカもガラスの猫もでした。
「私達から顔を出して」
「あの子達を驚かせてあげましょう」
 こうお話してでした、皆で。
 南門まで行こうとしますが、王子はそこに留まって言いました。
「では僕はここに残ります」
「僕もそうするよ」 
 木挽の馬も言います。
「そうした驚かせることは流儀ではないので」
「ここで皆を待つよ」
「おやおや、こうしたあえてびっくりさせることもな」 
 王様はその王子達に明るく笑って言いました。
「遊びじゃよ」
「そしてびっくりさせてですね」
「そこから一気に皆で遊ぶこともな」
「遊びですか」
「遊びは掴みじゃよ」
 つまり最初からというのです。
「それで上手くいくとな」
「いいというのですね」
「後で波に乗れるからな」
「だから最初からいく」
「そういうことじゃよ」
「驚かせるといってもね」
 オズマが言うにはです。
「別にびっくり箱を出すだけじゃないかしら」
「いいんですね」
「これ位のサプライズはね」
 何かといいますと。
「王様の言う通り掴みでサプライズよ」
「いい驚かせですね」
「そう思うからね」
 だからこそというのです。
「今から行きたい人だけ行きましょう」
「さて、あの子達がどんな顔をするのか」 
 つぎはぎ娘は今から楽しそうです。
「そのお顔を早く観たいわね」
「それじゃあね」
「今からその顔を観に行くわよ」
 エリカとガラスの猫も応えてでした。有志で門まで行きました。
 そしてカルロス達がです、兵隊さんに門を開いてもらおうとすると。
 門の方から開いてきました、兵隊さんはそれを観て言いました。
「おや、これは」
「中からですね」
「開いたよ」
 こうカルロスにも応えます。
「これは誰か出るのかな」
「そうしたお話聞いてました?」
「いや、全然」
 カルロスにこうも答えます。
「今はじめてだよ」
「これから門が開くことはですか」
「見たよ」
 聞いてもいないというのです。
「本当に」
「じゃあ何でしょうか」
「さて」
 そこにいる皆がこの状況に目を瞬かせていますと。
 開かれた門の向こうからです、声がしてきました。
「待っていたわ」
「待っていたって」
「まさか」
「そう、いらっしゃい」
 オズマが皆の真ん中にいて笑顔で言ってきました。
「貴方達が来ることがわかっていたから」
「ああ、鏡で観て」
「王宮のね」
「それで、ですか」
「前以てこの宮殿に来てね」
「僕達を待っていてくれてたんですか」
「そうだったのよ」
 こうカルロス達にお話するのでした。
「今までね」
「そうでしたか」
「驚いた?」
 つぎはぎ娘は明るく聞いてきました。
「あたし達がいきなり出て来て」
「いや、そう言われると」
「特になのね」
「いきなり顔を出してきたことには驚いたけれど」
 皆もそうです、カルロスだけでなく。
「お話を聞いたらね」
「納得したのね」
「うん、それでね」
「あら、それじゃあね」
 エリカはカルロスの言葉を聞いて言いました。
「掴みは失敗したかしら」
「ふむ、そうかのう」
 リンキティンク王は顎に手を当てて考えるお顔になっています。
「それは残念じゃのう」
「いえ、驚いたことは驚きましたよ」
「はい、僕達皆」
「まさか門が開くなんて思ってませんでしたし」
「オズマ姫がおられるなんて」
「他の皆も」
「僕もだよ」
 最後にボタンが言いました。
「まさかね」
「ふむ、それならな」
 王様は皆の言葉を聞いて言いました。
「掴みは成功じゃな」
「そうなるのね」
 ガラスの猫が王様に応えました。
「驚いてくれたなら」
「それならな」
「じゃあこのままね」
「一気にいこうぞ」
「あの、何か」
 カルロスはにこにことお話しているオズマや王様達を見てきょとんとしたお顔になって言いました。
「僕達皆さんのペースに入ってません?」
「その通りじゃよ」
 明るく返す王様でした。
「実際に皆をわし等の中に入れてな」
「そして、ですか」
「そのうえでじゃ」
 さらに言う王様でした。
「皆に楽しんでもらいたいのじゃ」
「そうですか」
「遊んでな」
「遊びですね」
「皆で遊んでじゃ」
 そのうえでというのだ。
「楽しもうぞ」
「王様の大好きな遊びで、ですね」
「遊びは本当に最高じゃ」
 こうも言った王様でした。
「ではこれからな」
「はい、宮殿の中で」
「遊ぶとしよう」
 こう言ってでした、そのうえで。
 実際にボタンも入れて六人は宮殿の中に入りました。するとです。
 皆は王様のお部屋に案内されてでした、そこで賑やかに遊びはじめました。その賑やかな遊びの中においてでした。
 カルロスはつぎはぎ娘と一緒に踊りつつです、こうしたことを言いました。
「思ったよりも」
「どうかしたの?」
「いや、簡単にオズマ姫や皆と会えて」
「意外っていうのね」
「そうなんだ、ましてやね」
「こうしてね」
 ジョージも踊っています、他の子達もそうしています。
「皆とすぐに遊べるなんて」
「確かに王様達のペースだけれど」
 神宝も言います。
「今回はすぐこうなってるね」
「エメラルドの都まで行くのかしらって思っていたら」
「それがね」
 ナターシャと恵梨香はオズマ姫と一緒に踊っています。
「リンキティンク王の宮殿でなんて」
「思わなかったわ」
「そうね、けれどね」
 ここでこう皆に言ったオズマでした。
「それもオズの国なのよ」
「何が起こるかわらない」
「何時何かがですね」
「それがオズの国ですよね」
「外の世界以上に」
「偶然はこの世界を支配するとても重要な存在の一つだけれど」
 偶然というこれ以上はないまでに世の中と関わりの深いそれでいて非常に気まぐれな存在のことにも言うのでした。
「オズの国ではね」
「特に、ですね」
「外の世界以上にですね」
「偶然が働く」
「だからです」
「何時何が起こるかわからないんですね」
「そう、オズの国は偶然が特に働く世界なのよ」
 こう五人にお話するのでした。
「もっとも今回は私が鏡を観てね」
「それで、ですね」
「ここまで来てくれて」
「それでそのうえで」
「私達を待ってくれていて」
「一緒に楽しんでくれてるんですね」
「そういうことよ」
 まさにというのです。
「今回は偶然ではないわね」
「偶然が強い世界でもですね」
 カルロスがそのオズマに応えます。
「今回はまた違いますね」
「魔法の力ね」
「それで僕達のことを知ってくれて」
「ドロシー達に留守を任せて」
 そのうえでというのです。
「私達で来たのよ」
「今回は私も冒険に出たの」
 ジュリアも楽しく踊っています。
「こうしてね」
「ジュリアさんが出られるのは珍しいですね」
 恵梨香は今度はジュリアと一緒に踊っています。
「そういえば」
「ええ、あまり出ないわね」
「いつも王宮におられますから」
 ナターシャはその勤め先から述べます。
「だからですね」
「どうしてもね」
 それこそと言うのです、ジュリア自身も。
「私も冒険に出ないの」
「最近になってからですか」
 神宝はここ最近のジュリアのことから言いました。
「ジュリアさんが時々でも冒険に出られるようになったのは」
「そうね、確かにね」
「それまではずっとですね」
 最後にジョージが言ってきました、賑やかな音楽の中で踊りながら。
「王宮におられたんですね」
「冒険自体にあまり興味もなかったわ」
 それまでのジュリアはというのです。
「けれど姫様のお供に最初に出て」
「それからですね」
「そう、出る用になったの」
 時々でもというのです。
「そうなったのよ」
「そうですよね」
「今もあまり出ないけれど」
 それでもというのです。
「出る様になったのはね」
「確かですね」
「そうよ」
 こうカルロスにもお話します。
「こうしてね」
「そうですか」
「実は姫様も冒険好きだし」
「ええ、オズの国の国家元首だからあまり出られないけれど」
 そのオズマの言葉です。
「好きなことは確かよ」
「だから今回みたいにね」
「時々でも出たりするのよね」
 ガラスの猫とエリカは猫らしく踞て寝ていますがそれでもというのでした。
「ドロシー達に留守番頼んだりして」
「そのうえでね」
「姿が急に消えた時なんかはね」
 木挽の馬はあのウグが悪いことをした時のことを思い出しています。
「大騒ぎだったけれどね」
「ああ、あの時も確か」
 ここでカルロスはお菓子を食べながらリンキティンク王やボボ王子と一緒に楽器を鳴らしているボタンを見ました。
「ボタンがいて」
「そうなの、この子のファインプレーもあってね」
 その消えていたオズマの言葉です。
「私は助かったのよ」
「大変な状況でしたけれど」
「それが助かったのよ」
「そういえばボタンは」
 そのボタンを見たまま言うカルロスでした。
「特に偶然が多い子の様な」
「もう偶然に愛されているわね」
「はい、それで何かすれば」
「必ず偶然が何かをしてくれてね」
 そのうえでというのです。
「それがいい状況になるのよ」
「そうした子ですね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「この子は凄いのよ」
「偶然に愛されているんですね」
「これ以上はないまでに運もいいしね」
「幸運の塊でもあるんですね」
「オズの国一の幸運児よ」
「そうなんだね」
「わかんなーーい」
 けれどボタンはです、カルロスに聞かれてもこう返します。
「僕そんなに凄いかな」
「常にいいことが起こるからね」
「確かに不幸になったことはないよ」
 ボタン自身も言います。
「そうしたことはね」
「特によね」
「そう、じゃあ運がいいのかな」
「不幸に遭わないだけでもね」
「運がいいんだね」
「そう言ってもいいけれど」
 それ以上になのでした。
「幸運を自分だけじゃなく皆にももたらしてくれるから」
「ボタンは凄い子よ」
 オズマもこう言います。
「オズの国一のラッキーボーイよ」
「ほっほっほ、この子は確かに運がいいぞ」 
 王様も笑って言います。
「トランプもおはじきもサイコロもいつも勝つからのう」
「とにかく運がいいので」
 王子もにこりと笑ってボタンのことをお話します。
「勝負ごとは無敵ですね」
「しかも勝ってもな」
「特に自慢も欲も張らないので」
「そのこともあるのじゃろうな」
「とても無欲な子なので」
「だって僕もう服は着てるし」
 その水兵さんの服です。
「食べるものはオズの国なら何処にでもあるから」
「困ることはない」
「そう言うんだね」
「身体もお池や川で奇麗に出来るから」
 オズの国ではというのです。
「何もいらないよ」
「ふむ、だからじゃな」
「ボタンは無欲なんだね」
「だって欲しいものはいつもあるししたいことも出来るから」
 それで、というので。
「これ以上何かしたいなんて思わないよ」
「無欲さこそ最高の美徳というから」
 カルロスはボタン自身の言葉を聞いてこう言うのでした。
「ボタンは神様に愛されていてね」
「それでなのかな」
「うん、いつも偶然が周りで起こってね」
 そしてというのです。
「幸福に愛されてるんだよ」
「そうだよね」
「そう、それでね」
「それでなのかな」
「君は無欲さ故に運がいいんだよ」
「成程ね」
「オズの国の人は無欲な人が殆どだけれど」
 中にはかつてのノーム王ラゲドーみたいな人もいますが。
「ボタンはその中でも特にだからね」
「欲がないから」
「だからなんだ」
「ううん、だから欲しいものはね」
 それこそというのです。
「あるし、それにね」
「ある以上のものは、だね」
「欲しくないから」
「そこで欲しくないというのならね」
「それが無欲なんだよ」
「ううん、あるものがあればそれ以上何が欲しいの?」
 これがボタンの考えです。
「世の中には手元であるもので充分なのに」
「そこで満足出来るのがね」
「滅多にいないのよね」
 神宝と恵梨香が言います。
「そうした人って」
「私達の間でも」
「持っていてもそれ以上欲しい」
「それが人間よね」
 ジョージとナターシャも言うのでした。
「欲張りな人ばかりで」
「どうしてもそうした人が多いから」
「オズの国の人は確かに殆どの人が無欲だけれど」
 またこう言ったカルロスでした。
「カルロスは特にだからね」
「無欲なのを自覚していないことこそ」
 王子の言葉です。
「それが最高の無欲だね」
「そういうことになりますね」
「うん、ボタンは凄い子だよ」
 王子はカルロスにこうも言いました。
「オズの国でも一番の無欲だからね」
「偶然と幸運にですね」
「愛されているんだね」
「僕そんなに凄くないよ」 
 またこう言ったボタンでした。
「ただ欲しいものがいつもあるから何も欲しくないだけだから」
「何かお話が平行線だけれどとにかく」
 カルロスはお話をまとめました。
「ボタンが偶然と幸運に愛されていることは確かだね」
「偶然が強いオズの国でもね」
 ここで微笑んで述べたオズマでした、その踊りの中で。
「この子はそうなのね」
「じゃあこの子と一緒にいたら」
「色々と偶然が起きるわよ」
「そうなりますね」
「そう、普通にね」
 それこそというのです。
「これから何が起こるのか」
「楽しみなんですね」
「この王宮で何が起こるのか」
 それこそというのでした。
「待っていましょう」
「遊びながらですね」
「こうしてね」
「ほっほっほ、楽しく遊んでそして飲み食いをしようぞ」
 こう言ってでした、王様は。
 楽器を鳴らす手を少し止めてです、傍にあった鈴を鳴らしました。
 するとです、すぐにお付きの人が来ましてその人に言うのでした。
「お菓子とジュースをじゃ」
「こちらにですね」
「何でもいいからたっぷりと持って来てくれ」
「何でもいいのですね」
「甘くて美味しいものなら大歓迎じゃ」
「それでは」
 こうしてです、そのお付きの人がお菓子の山を運んで来ました。そのお菓子はといいますと。
「あれっ、これって」
「そうよね」
 恵梨香はそのお菓子を見たカルロスに応えました。自分もそのお菓子を見ながら。
「私の国のお菓子ばかりね」
「羊羹にういろうに」
「お饅頭に三色団子」
「もなかもあるし」
「ゼリーもあるわ」
 お茶菓子のその少し固い感じで透明な食べられる生地に包まれたものです。
「全部ね」
「日本のお菓子だね」
「オズの国にも和菓子はあるけれど」
「日本のこうしたお菓子もね」
「あるんだね」
「おお、このお菓子がのう」
 王様もその色々な種類のお菓子を見て言います。
「またどれも美味いのじゃ」
「王様もですね」
「お好きなんですね」
「うむ、大好きじゃ」
 実際にというのです。
「どのお菓子もな」
「そうですか」
「それじゃあ」
「うむ、皆で食べようぞ」
 その日本の茶菓子達をというのです。
「お茶もあるしのう」
「ジュースじゃなくてですね」
「わかっておるわ」
 そのお付きの人もというのです。
「こうしたお菓子の時はな」
「お茶ですね」
「それも日本のお茶じゃ」
 カルロスにも笑顔で言います。
「何といってもな」
「では、ですね」
「これからじゃ」
 まさにというのでした。
「お茶でお茶菓子をな」
「これからですね」
「食べようぞ」
「それでは」
 こうしてです、皆は踊りを中断してです。そのお菓子を食べました。するとボタンは三色団子を食べて言いました。
「このお菓子凄く美味しいよ」
「そうなんだよね、そのお団子はね」
 カルロスはういろうを食べつつボタンに応えます。
「物凄く美味しいよね」
「かなりね」
「このういろうも美味しいよ」
「今度それ食べていい?」
「好きなの食べていいよ」
 ういろうだけでなくというのです。
「ボタンのね」
「じゃあ次はういろうを食べるね」
「それじゃあね」
「そしてね」
 さらに言うボタンでした。
「お饅頭も食べるし」
「それにだね」
「羊羹とかゼリーも」
「このゼリーはね」
 恵梨香がそのゼリーを食べています。
「普通のゼリーとは違うのよ」
「何かあれだね」
 ボタンはその赤や黄色、緑や紫で弾力のあるとても美味しそうで奇麗なそのゼリー達を見て言うのでした。
「そのゼリーってね」
「どうしたのかしら」
「うん、普通のゼリーで水気があるけれど」
「このゼリーはなくてね」
「何か不思議だね」
「こうしたゼリーもあるの」
 恵梨香はお口の中でゼリーの弾力と甘さを味わいながら言います。
「日本にはね」
「そしてオズの国にも」
「そう、あるから」
 だからというのです。
「これも食べてね」
「わかったよ、それにしてもね」
「どうかしたの?」
「うん、王様のところってお菓子多いよね」
「ほっほっほ、わしが大好きだからのう」
 だからと答えた王様でした。
「それでじゃ」
「こうしてなんだ」
「色々なお菓子があるのじゃ」
「日本のお菓子もあるんだね」
「最初はなかったんじゃがのう」
 それがというのです。
「オズの国はアメリカが反映されるからな」
「オズの国にこうしたお菓子が入れば」
「わし等も食べられるのじゃよ」
「そういうことなんだね」
「いや、色々なお菓子を食べられる」
「凄く幸せなことだね」
「実にな」
 王様は羊羹を食べています、栗羊羹です。
「これもまたいい」
「羊羹も美味しそうだね」
「かなり美味いぞ」
 実際にというのです。
「楽しめるぞ」
「じゃあそれもね」
「食べるのじゃな」
「うん、何でも食べられるんだよね」
「お菓子はこんなにあるぞ」
 それこそ山みたいにです、王様はボタンに笑って答えました。
「だからな」
「好きなだけだね」
「好きなものを食べられるぞ」
「最高に幸せだね」
「そこで幸せっていうのがね」
 つぎはぎ娘の言葉です。
「やっぱりいいのよね」
「そうね、私達は食べないけれど」 
 ガラスの猫とつぎはぎ娘、それに木挽の馬はです。けれどなのです。
「見ていてね」
「気持ちがいいから」
「ええ、あたしから見ても」
 それでもとです、エリカも言います。
「美味しく食べて幸せならいいわ」
「見ているだけでもね」
「心の栄養になるのよね」
「そうそう」
 馬はつぎはぎ娘とガラスの猫の言葉に頷きます。
 そうしたお話をしてです、つぎはぎ娘はボタンに聞きました。
「あんたが一番好きなお菓子何?」
「今食べてる中で?」
「そう、何が好きなのかしら」
「わかんなーーい」
「ここでもそう言うのね」
「だって全部美味しいから」
 それでというのです。
「そんなこと聞かれてもね」
「わからないのね」
「ちょっとね」
 実はというのです。
「わからないから」
「そうなの」
「そう、本当にどれも美味しいよ」
 それこそというのです。
「全部ね」
「今食べてるゼリーもなの」
「お団子もお饅頭もね」
「羊羹とかもよね」
「ういろうも美味しいよ」
 本当に全部というのです。
「だからね」
「どれか一つとは言えないのね」
「とてもね」
「そうなの、わかったわ」
 これで納得したつぎはぎ娘でした。
「何もかもが美味しいのね」
「とてもね」
「じゃあ何もかもを食べてね」
 ここにいるお菓子全部をというのです。
「最高の気持ちになればいいよ」
「そうだよね」
「あたしはそのボタンも皆も見てね」
「楽しむんだね」
「何も食べなくてもね」
 それでもというのです。
「その食べる皆を見るのも栄養になるのよ」
「そうなんだ」
「そうよ、心のね」
「じゃあつぎはぎ娘さんもガラスの猫も」
「その通りよ」
 ガラスの猫もボタンに答えます。
「食べなくてもね」
「僕達が食べるのを見てだね」
「それが栄養になるのよ」
「見ているだけで」
「食べられる人は食べて笑顔になるでしょ」
「僕もね」
「その笑顔を見て心の栄養にするの」
 そうなるというのです。
「つまり心で食べるのよ」
「そういうことだね」
「それじゃあ」
「どんどん食べるから」
「見させてね」
 食べる時の笑顔をというのです。
「じっくりとね」
「とにかくね」 
 カルロスもゼリーを食べて言うのでした。
「このお菓子美味しいね」
「そうでしょ」
「こんなゼリーもあるんだね」
「スプーンで食べるゼリーとは別にね」
「何か癖になりそうだよ」
「わしは癖になっておるぞ」
 王様は既にというのです。
「ここまで美味いからのう」
「だからですね」
「もなかも饅頭もお団子も羊羹もじゃ」
「そしてういろうも」
「全部じゃ」
「何もかもがお好きですか」
「うむ、その子と一緒じゃよ」
 ボタン=ブライトというのです。
「本当に全部大好きじゃ」
「そうですか」
「ただのう」
 ここで、です。食べながらでした。
 王様は少し残念なお顔になってです、こんなことを言いました。
「食べて寝る前はな」
「歯を磨くことを言われてるんだよ」
 王子がカルロスに言ってきました。
「宮殿の人達にね」
「ああ、やっぱり」
「甘いものをいつもたっぷり食べているからね」
「それで寝る前はですね」
「よく歯を磨く様にってね」
「言われてますか」
「それがのう」 
 このことは少し困った感じで言う王様でした。
「辛いのう」
「いや、寝る前は絶対にですよ」
 カルロスもこのことは言います。
「歯を磨かないと」
「駄目か」
「オズの国では虫歯にはならないですけれど」「
「それでもじゃな」
「歯を磨かないと汚いですから」
 お口の中がです。
「磨かないと駄目ですよ」
「絶対にじゃな」
「お口の匂いも臭くなりますし」
「では今日もじゃな」
「毎日磨かないと」
「わかった、ではな」
 お菓子を食べながらです、そうしてです。
 王様は今日も歯を磨かないといけないと思うのでした、このことは嫌々ですが「食べることはそうではありませんでした。



無事に城に着いたな。
美姫 「オズマ姫とも再会できたしね」
ひとまずは良かったな。
美姫 「特に問題もなかったしね」
うんうん。さて、とりあえずは何をするのかな。
美姫 「次回はどんな話になるのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」
ではでは。



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