『オズのビリーナ』




                 第十二幕  種を蒔いて

 一行は大きなモグラさんとの出会いの後は順調に進んでいきました、先に先にと進んでいってそれでなのでした。
 地上に出てです、ビリーナが最初に言いました。
「久しぶりに見るお日様は奇麗ね」
「というか眩しいわね」
「どうにもね」
 ガラスの猫とエリカはこう言いました。
「これまでヒカリゴケの淡い光だったから」
「その中にいたからね」
「それが急にお日様を見て」
「眩しいわ」
「そうね、特に私はね」
 ビリーナがここで言うことはといいますと。
「光がよく見えるから」
「あっ、鳥だからね」
 それでとです、トロットはビリーナの話を聞いて言いました。
「光がよく見えるのよね」
「他の生きものよりもね」
「そうなの、ただね」
「夜でもよね」
「オズの国にいたら平気よ」
「鳥目じゃないのね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「そこは違うのよ」
「あとね」
 トロットがここで言うことはといいますと。
「哺乳類は普通は白黒なのよね」
「見るものがなのね」
「そう、けれどオズの国ではね」
「私が実際によ」
 エリカの言葉です、猫も哺乳類です。
「外の世界では白黒だったけれど」
「今ではよね」
「普通に色が見られるわ」
「それが出来るのよね」
「オズの国ではね」 
 まさにというのです。
「私もトトも色がわかるわ」
「臆病ライオンや腹ペコタイガーだと」
 ここで言ったのはキャプテンでした。
「最初からわかっていたよ」
「だから都でサングラスもかけていて」
 ナターシャは臆病ライオンが最初にエメラルドの都に来た時のことを思い出しました、あの時臆病ライオンは確かにサングラスをかけていました。
「それで色も」
「はっきりとわかっていたね」
「そういえばそうでした」
「皆ね」
 それこそというのです。
「色がわかるんだよ」
「そうなんですね」
「そう、皆ね」 
「哺乳類でもですね」
「外の世界では人間と猿しか色がわからないけれど」
 哺乳類は、です。
「ここでは違うことも覚えておいてね」
「わかりました」
 ナターシャはキャプテンのその言葉に頷きました。
「そのことも」
「そういうことでね」
「さて、それじゃあね」
 ビリーナはあらためて皆に声をかけました。
「これから私の国に行くわよ」
「うん、鶏の国だね」
 神宝がビリーナに応えました。
「戻るんだね」
「それで種を蒔いて」
 虹色の菫の種をとです、カルロスは種のことを考えました。
「咲かせるんだね」
「あの菫奇麗だったから」
 ジョージは地下で見たそれを思い出しています。
「鶏の国も奇麗に飾れるね」
「じゃあすぐに戻りましょう」
 恵梨香はビリーナに応えました。
「これからね」
「そう、国に戻ってね」
 今度は戻ると言ったビリーナでした。
「種を蒔きましょう」
「種は落としてないわよね」
 ガラスの猫はビリーナにこのことを確認しました。
「そこは大丈夫よね」
「ええ、ちゃんと持ってるわ」
 ビリーナは左の羽根の下、彼女の脇のところを見ました。そのうえでちゃんとチェックしてからガラスの猫に答えました。
「安心して」
「それならいいわ」
「一粒も落としてないわ」
「じゃあ安心していいわね」
「そう、安心しなさい」
 是非にと言うのでした。
「落とす様なことはしないわ」
「それじゃあね」
「このまま戻るわよ」 
 種を持ってと言ってです、ビリーナは地上でも先頭に立って進みました。そうして先に先にと進んでいってです。
 鶏の国に着くとです、鶏の皆がビリーナに声をかけてきました。
「お母さん、お帰り」
「今回の冒険はどうだったの?」
「楽しかった?」
「危ないところはなかった?」
「冒険のことは後で詳しく話すわね」
 ビリーナは出迎えてくれた自分の子供や孫達に言いました。
「ちゃんとね」
「じゃあその時にね」
「お話してね」
「その時を楽しみにしてるから」
「お話してくれる時を」
「そういうことでね、さて」
 ここでビリーナは王宮、この国での自分のお家を見て言いました。
「まずはあの人に挨拶を」
「戻って来たって」
「そうよ」
 まさにとです、トロットに答えました。
「あの人に言わないとね」
「何もはじまらないっていうのね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「だって私はこの国の女王様でね」
「ご主人は王様で」
「あの人の妻だから」
「だからまずは戻ったって言うのね」
「それからよ」
「種を蒔くのね」
「そうするわ」
 まさにそれからというのです。
「これからね」
「わかったわ、じゃあ行きましょう」 
 トロットはビリーナのその言葉に応えました、そしてです。
 皆で王宮に向かってでした、そのうえで。
 王様に帰還の挨拶をしました、王様はビリーナに久し振りに会って満面の笑顔になってからその挨拶を聞いて言いました。
「それは何よりだよ」
「種が手に入ったこと?」
「いやいや、君が戻って来たことがだよ」
「そのことがなの」
「うん、一番嬉しいよ」 
 そうだというのです。
「私はね」
「そうなのね」
「いや、心配だからね」
「何があってもよ」
「その頭と度胸でだね」
「私は乗り切るわよ、それにね」
 ここで皆も見て言うのでした。
「仲間もいるから」
「大丈夫だっていうんだね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「だから安心していいわ」
「いつも通りだね」
「そうよ、あなたも安心していいのに」
「いやいや、そうは出来ないんだよ」
「私が冒険に出たら」
「死ぬことはないにしてもね」 
 オズの国でこれはありません、誰でも。
「それでもだよ」
「不安なのね」
「何が起こるかってね」
「心配性ね、本当に」
「否定しないよ、それで」
「種ね」
「種も手に入れてるんだね」
「二十粒程ね」
 持って来たとです、ビリーナはご主人に答えました。
「蒔くわ」
「そうするんだね」
「ええ、そうするわ」
 実際にというのです。
「これからね」
「じゃあね、これから外に出て」
「蒔くわよ、いい場所はもう見付けてるから」
「そこは何処かな」
「公園よ」
 お国のというのです。
「まずはそこに蒔くわ」
「そしてだね」
「そこからオズの国全体にね」
「お花が広まっていくんだね」
「そうなるわ、けれどそれは後のお話で」
 それでというのです。
「まずは蒔くことよ」
「それからだね」
「そう、蒔きに行くわ」
「では私も同席させてもらうよ」
「どうぞ、蒔きに行きましょう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆で国の最も立派な公園に出ました、そこは草木それに花々が咲き誇っている実に奇麗な場所でした。
 そこに入ってです、そのうえで。
 ビリーナは公園の真ん中、花壇の何もないところでした。そこにです。
 ビリーナは取り出した種をお口で一粒一粒蒔きました、そのうえで言いました。
「よし、これでね」
「後はだね」
「種から芽が出てね」 
 ここではキャプテンに応えるのでした。
「お花が咲くのを待つだけよ」
「それだけだね」
「そう、待つことよ」
「お水をあげながら」
「ここの土は栄養がたっぷりあるから」
「だからだね」
「肥料をやる必要はないの」
「そういえばオズの国って作物もよく育ってるわね」
 ナターシャはここでこのことに気付きました。
「枯れることもないし」
「ええ、肥料もあるし」
「土の養分が元々いいから」
「どんな作物も自然に育つ位なのよ」
「そうしたお国なのね」
「だから農業をしてもね」 
 多くの人が楽しく農業をしていますが。
「肥料をあげて農具を使えば」
「もうどんどんなのね」
「作物が育つわ」
「気候もいいし」
「そのこともあるからね」
「種もなのね」
「すぐに芽が出てね」
 そしてというのです。
「お花も咲くわ」
「そうなるのね」
「世話は私がするわ」
 ビリーナ自身がというのです。
「そうするわね」
「そういえば貴女言ってたわね」
「お花を咲かせることが得意だってね」
「ガーデニングが趣味なの」
「趣味の一つよ」
 実際にというのです。
「そのことはね」
「だからなの」
「そう、だからね」
 それでと言うのでした。
「安心して任せてね」
「わかったわ、ただね」
「ただ?」
「咲くのは少し先だから」
 このことはしっかりと言ったビリーナでした。
「今すぐじゃないわよ」
「そうよね、やっぱり」
「お花が咲くには時間がかかるわよ」
「どのお花でもそうよね」
「すぐに咲くお花はないわ」
 このことも言ったビリーナでした。
「どうしてもね」
「待つことなのね」
「そうよ、普通に待つことよ」
「咲くのを待つ」
「それが大事よ、では行きましょう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 ビリーナは種を全て蒔きました、それから皆に言いました。
「さて、後はね」
「咲くのを待つだけね」
「私は待てるけれど」
 ビリーナはここでナターシャ達五人を見て言うのでした。
「あんた達はもう」
「ええ、またね」
「帰るわよね」
「また帰って」
 そしてとです、ナターシャがビリーナに答えました。
「外の世界で過ごすわ」
「そうするわよね」
「ここで過ごした時間は外の世界では瞬きする位だから」
 オズの国でどれだけ過ごしてもです。
「何でもないしまた来られるけれど」
「そうなのね、それじゃあね」
「それじゃあって?」
「咲くまで待ってみる?」
 ビリーナは五人にこう提案しました。
「そうしてみる?」
「そうね、それじゃあ」
「ええ、待ってね」
 そしてと言うのでした。
「咲くのを見たら?」
「そうしようかしら」
 ナターシャはビリーナの提案を聞いてでした、そしてでした。 
 考えるお顔になってです、他の子達に尋ねました。
「どうしようかしら」
「いいんじゃない?」
「どうせ外では一瞬のことだし」
「待ってもね」
「私もいいと思うわ」
 ジョージ、神宝、カルロス、恵梨香の順に言います。
「それでね」
「まあ待っていこう」
「お花が咲くまで」
「そうしていましょう」
 こう言うのでした、ですが。
 ここでトロットがです、皆にこう言いました。
「私達だけで観ることは」
「私達だけで?」
「っていいますと」
「何か勿体無いわね」 
 こう言ったのでした。
「どうもね」
「っていいますと」
「それはどういうことですか?」
「一体」
「それは」
「だから、オズマ達にも見せてあげたいわね」
 こう言ったのでした。
「エメラルドの都にいるね」
「そうだね、待つのならね」
 キャプテンもトロットの言葉を聞いて言いました。
「その間にね」
「そうでしょ、一旦エメラルドの都に戻ってね」
「皆をここに連れて来るんだね」
「そうしましょう」
 キャプテンにも言うのでした。
「その間にね」
「うん、奇麗なものは皆で観る」
「それが一番楽しいでしょ」
「奇麗なものは一人で観るよりも皆で観るとね」
「余計に奇麗だしね」
「楽しいしね、じゃあ」
「そうしましょう」
 笑顔で言ったトロットでした。
「そうしましょう」
「まあね、待っている間はね」
 エリカは大きく欠伸をしつつ言いました。
「寝るか食べるか悪戯をするかだからね」
「私は悪戯だけよ」
 ガラスの猫の場合はです。
「それだけよ」
「そうね、あんたの場合は」
「けれどエメラルドの都に行って皆を呼ぶなら」
 その間はです。
「行き来出来るから」
「いいわね」
「そうね」
 二匹でお話するのでした。
「それじゃあね」
「それでいきましょう」
 二匹でお話します、そしてでした。
 あらためてです、二匹でトロットに言いました。
「私達もいいと思うわ」
「それでね」
「じゃあそういうことでね」
「一旦エメラルドの都に行きましょう」
「私達もそれでいいと思います」
 五人の子供達も彼等の間でどうかとお話していましたが」結論が出てでした、ナターシャが皆を代表してトロットにいました。
「私達も一旦戻った方がいいと思います」
「待つよりもね」
「はい、その間に」
「わかったわ、じゃあね」
「戻るんですね」
「そうしましょう」
 にこりと笑ってです、トロットはナターシャに答えました。
「貴方達もそう言うし」
「じゃあ今から」
「ビリーナ、そうしていいかしら」
 トロットはビリーナにも尋ねました。
「私達は一旦エメラルドの都に行くわ」
「それで皆を呼んで来るのね」
「そのうえでここに戻って来るわ」
「ええ、私にしてもね」
 ビリーナはトロットの言葉に答えました。
「沢山の人に観て欲しいから」
「それじゃあね」
「待ってるわよ」
 こう答えたのでした。
「ここでね」
「それじゃあね」
「さて、それとね」
「それと?」
「一つ思うことはね」
 その思うことはといいますと。
「タイミングよ」
「ここに戻って来た時に咲いているかどうか」
「そうよ、そのタイミングよ」
「それが大事なのね」
「今日や明日には咲かないわ」
「じゃあ少しゆっくりとよね」
「戻って来てね、咲いたらね」 
 そうなったらというのです。
「オズの国のお花だから」
「一年中咲くわよね」
「そう、咲いたらね」 
 その時はというのです。
「枯れることなくね」
「じゃあ」
「咲いてからか咲く瞬間にね」
「戻って来ればいいわね」
「そうよ」
 まさにと言うのでした。
「そのタイミングはわかってね」
「わかったわ、まあ行って戻ってだから」
「相当急がないとね」
「早過ぎたってことはないわね」
「そうね」
 こう二人でお話するのでした。
「それじゃあね」
「急ぎ過ぎないで」
「やっていきましょう」 
 こう二人でお話するのでした、そして。
 一旦ビリーナとお別れしてです、そのうえで。
 トロット達はエメラルドの都に向かうのでした、ナターシャは鶏の国を出てそうして黄色い煉瓦の道を歩きつつ言いました。
「さて、ゆっくり行けばいいけれど」
「ええ、都には今誰がいるかしら」
 恵梨香はナターシャに応えました。
「それが問題ね」
「ちょっと携帯で聞いてみる?」
 神宝はこう提案しました。
「ドロシーさんに聞いてね」
「あっ、それいいね」
 ジョージは神宝のその提案に賛成しました。
「そうしたらすぐにわかるね」
「そうだね、今すぐドロシーさんに連絡して」
 カルロスも言います。
「都に誰がいるのか聞こう」
「じゃあすぐに聞くわね」
 トロットはすぐにでした、五人の言葉を受けてです。
 携帯を出してドロシーに聞きました。
「今都に誰がいるの?」
「事情はわかってるわ」
 携帯の向こうからです、ドロシーはトロットに返しました。
「虹色の菫のことね」
「あっ、わかってるの」
「オズマと一緒にいつも鏡でどうなってるか見守っていたから」 
 オズの国のあらゆる場所、観たい場所を観ることが出来る鏡で、です。
「観たわ」
「そうなの」
「ええ、だから事情はわかってるわ」
「それならお話が早いわね」
「都にいてそちらに行けるのは誰か」
「そう、誰なの?」
 トロットはドロシーにあらためて尋ねました。
「今そっちにいるのは」
「私とオズマ、トトにね」
 トトもいるとのことです。
「それとかかしさんと木樵さんがいるわ」
「お二人もおられるのね」
「ジャックとつぎはぎ娘、モジャボロさんもいるわ」
「それとジュリアね」
「そう、臆病ライオンと腹ペコタイガー、木挽の馬、あとハンクはベッツイと一緒に冒険に行ってるわ」
 彼等はそうしているというのです。
「だからね」
「今はいないのね」
「ギリキンに行ってるわ」
「じゃあベッツイには機会をあらためて行ってもらうことになるわね」
「魔法使いさんはボームさんと一緒にカドリングに行ったわ」
「そうなの」
「そう、グリンダのところに行ったわ」
 お二人はそうしたというのです。
「だから残っているのはこのメンバーよ」
「それじゃあ」
「このメンバーで、よね」
「鶏の国に行きましょう」
「それじゃあね」 
 二人でお話してでした、今都に残っているメンバーがわかりました。ガラスの猫はそのメンバーのことをトロットの横で聞いてから言いました。
「いつもいる面々かしら」
「まあおおよそはそうね」
 トロットもガラスの猫に答えます。
「私達のね」
「そうね、じゃあね」
「都に戻ってね」
「皆と一緒に行きましょう」
 鶏の国まで虹色の菫を観にです。
「そうしましょう」
「それじゃあね」
「ゆっくり歩いてのんびりですね」
 ナターシャがトロットに尋ねました。
「今回は」
「ええ、そうなるわよ」
「焦らず歩いて」
「そしてね」
 そのうえで、でした。
「鶏の国に戻ることもね」
「ゆっくりですね」
「普通に歩いていけばいいわ」
「そうしたものですね」
「そうよ、むしろ焦ったらね」
「今回は損をしますね」
「そうよ、そういえばね」
 ここでこんなことを言ったトロットでした。
「ナターシャと恵梨香は焦らないわね」
「はい、ロシアは寒くてあまりお外に出られないので」
 まずはナターサシャが答えました。
「焦らないですね」
「気が長いのね」
「私もそうなんです」
「そうなのね」
「自分でも気が長くて焦らないと思います」
「私は焦ったら失敗しますから」
 恵梨香も答えます。
「ですから」
「焦らないのね、貴女も」
「はい」
 その通りだと答えるのでした。
「そうです」
「そうなのね、それでね」
 今度は男の子三人に言ったトロットでした。
「貴方達は結構せっかちかしら」
「言われるとそうですね」
「僕達は焦る方です」
「女の子達と違って」
 三人もトロットに正直に答えました。
「時は金なりですよね」
「早ければそれだけ他のことも出来ますし」
「何でもすぐにやって後は休めますから」
「それぞれ性格が出てるわね」
 焦るにしてもと思ったトロットでした。
「けれど急がないといけない時もあるけれど」
「急がなくていい時もある」
「そうなんですね」
「今みたいに」
「そうよ、今みたいね」
 実際にというのです。
「焦るとかえって損な時もあるのよ」
「戻ってもお花がまだ咲いていない」
「そうしたことになりかねない」
「だからですね」
「焦らないでね」
 また言ったトロットでした。
「ゆっくりと歩いていきましょう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆で都に戻ります、そして。
 マンチキンの国から都に入ると青から緑になってです、エリカは後ろの方を振り返ってしみじみとした口調で言いました。
「あっという間にね」
「戻って来たっていうのね」
「ええ、そう思わない?」
「結構ゆっくり歩いて休んでるけれど」
 朝と夜も幾度も過ごしています。
「言われてみればね」
「都にあっという間に戻ってきたわね」
「そんな感覚ね」
「不思議ね、そのことは」
「そうね、じゃあ鶏の国に戻るのも」
「あっという間かもね」
「そうね」 
 こうしたことをお話してでした、そうして。
 一行は都に戻りました、するとです。
 ドロシーがトトと一緒にお迎えしてです、早速言うのでした。
「もう皆用意は出来てるわよ」
「出発の用意が」
「そう、すぐに出発しましょう」
 まさにというのです。
「そうしましょう」
「焦らなくてもいいのに」
「焦ってはないわ、鶏の国に行くのはゆっくりでいいし」
「それじゃあ」
「皆すぐに集まるから」 
 こうもお話したドロシーでした。
「呼ぶわね」
「皆行こう」
 トトが皆に声をかけました。
「これからね」
「私とトトの用事も終わったしね」
 それでと言うのでした。
「心置きなく行くことが出来るわ」
「よし、それじゃあ」
「行きましょう」
「今からね」
 こう二人でお話してでした、そのうえで。
 皆すぐに集まりました、オズマとジュリア、モジャボロとかかしそれに木樵、つぎはぎ娘とジャックが来ました。
 そしてジャックがです、トロットに言うのでした。
「僕も頭を新しいのにしてね」
「出発の用意をしていたのね」
「そうなんだ」
「お髭も手入れしたよ」
 モジャボロはにこにことして自分のお髭を摩っています。
「奇麗にね」
「あたしも洗濯してもらったし」
 つぎはぎ娘はいつも通りくるくると踊っています。
「何時でも行けるわよ」
「ただ、チクタクはね」
 オズマは彼については残念そうに言うのでした。
「実は今はいないの」
「あっ、そうだったわ」
 ドロシーも言われて思い出しました。
「彼は今はウィンキーにいるわ」
「出張中だったわね」
「あちらで騒動が起こって」
 それでというのです。
「今は出張してるの」
「騒動を収めに」
「チクタクがいないのは残念ですね」
 ナターシャもそのことで少しがっかりとなります。
「あの人も凄く楽しいいい人ですから」
「そうね、けれどね」
「またの機会ですね」
「彼と一緒に行くのは」
「そうなるから、じゃあ今からね」
「出発ですね」
「鶏の国までね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆で出発しました、そして。
 エメラルドの都を出てマンチキンにある鶏の国に向かいます、その道中は特に何もなくて木樵は笑顔で言いました。
「平和な旅だね」
「ほのぼのしたね」 
 かかしも笑顔で応えます。
「いい旅だね」
「ゆっくりと歩いてね」
「はい、お昼も夜もしっかり食べて」
 ジュリアは食事のお話をするのでした。
「そうして行きましょう」
「ゆっくり先に進んで」
「歩くことも楽しみましょう」
 ナターシャにも言うのでした。
 そしてです、ジュリアはナターシャにこんなことも言いました。
「お昼のデザートだけれど」
「何がいいかですね」
「ナターシャは何を食べたいかしら」
「そうですね、アイスでしょうか」
「アイスクリームね」
「それがいいかなって思いました」
 こうジュリアに答えました。
「聞かれますと」
「アイスクリームね」
「好きですし」
「そういえばアイス嫌いな子っていないわね」
 オズマも言いました。
「私も大好きだし」
「姫様はよく召し上がっておられますね」
 ジュリアはオズマにも応えました。
「そうですよね」
「ええ、デザートにね」
「お昼にも晩にも」
「数日に一回は食べているかしら」
「そうかも知れないですね」
「じゃあ今日のお昼はね」
「アイスにされますか」
「そうしようかしら」
 ジュリアに考えるお顔で答えました。
「今日のお昼は」
「ではテーブル掛けを出した時に」
「デザートはそれね」
「そうしましょう」
「アイスクリームはね」
 ここでドロシーが言うことはといいますと。
「カンサスにいた時は食べたことがなかったわ」
「そうだったのね」
「周りに何もなくてアイスを作る機械も売る人もいなくて」
 だからだとです、オズマにお話しました。
「それでね」
「食べたことがなかったのね」
「そうだったの」
 ずっと、というのです。
「オズの国に来てからよ」
「食べる様になったのね」
「そうだったの」
 まさにというのです。
「カンサスにいた時は」
「周りに何もなかったから」
「そうだったの」
「けれど今はね」
「ドロシーもアイスを数日に一回は食べてるわね」
「それが出来る様になったわ」
 オズマに笑顔でお話します。
「それだけでも全然違うわ」
「それは何よりね」
「ええ、じゃあ今日のお昼は」
「そのアイスをね」
「皆で楽しみましょう」
 笑顔でお話しました、そしてお昼に実際にデザートでアイスを食べました。それからさらに進んでいってムシノスケ教授のいる王立大学の横も通りました。
 道中は本当に穏やかでした、ゆっくりと進み。
 トロットは先を見てです、皆に尋ねました。
「鶏の国には明日着くけれど」
「うん、その明日にだね」
「お花は咲いているかしら」
「そうなっているんじゃないかな」
 キャプテンはトロットに答えました。
「今回は結構ゆっくり歩いてるからね」
「そうね、焦らないでね」
「あえてそうしていてるからね」
「じゃあ着いたらね」
「もう咲いてるかな」
「そうかも知れないわね」
 笑顔で応えたトロットでした。
「少なくとももうすぐ咲く」
「それ位だね」
「そうよね」
「一番いいのはね」
「いいのはって?」
「うん、着いたらね」
 その時にというのです。
「咲く瞬間だったらね」
「それがベストなのね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「その時だったらいいね」
「ええ、お花は咲く瞬間が一番奇麗だっていうし」
「その時に来られたらいいね」
「そうね」
「あの菫が咲く瞬間ですか」
 ナターシャはお話を聞いて実際にでした、頭の中にあの菫を思い出しました。そのうえでトロットとキャプテンに言いました。
「確かにですね」
「観たいと思うでしょ」
「はい」
 実際にと答えました、トロットに。
「私もそう思います」
「だからね」
「ここは、ですね」
「その瞬間に来られたら」
「ベストですね」
「その時に着けることを期待していましょう」
 トロットはにこりと笑って言うのでした。
「明日にね」
「はい、私も期待します」
「そうね」
「ビリーナも元気かしら」
 つぎはぎ娘は彼女のことを思い出しました。
「あたしあの娘とは最近会ってないから」
「だから彼女と会うこともだね」
「楽しみよ」
 こうジャックに答えるのでした。
「そちらもね」
「そうだね、ビリーナのこともね」
「会いたいわ」
 つぎはぎ娘はそうだというのです。
「彼女ともね」
「じゃあビリーナに会う為にもね」
「あの国に行きましょう」
「是非ね」
 一行は先に先にと進んでいって次の日に実際に鶏の国に着きました、すると出迎えに来たビリーナが皆に言いました。
「丁度いい時に戻って来たわね」
「というと」
「ええ、今よ」
「今なの」
「そう、今ね」
 まさにとです、トロットにお話しました。
「お花が咲くのよ」
「昨日キャプテンとそのことをお話してたのよ」
 トロットはビリーナの言葉に驚きつつも笑顔で答えました。
「実はね」
「お花が咲くのを観たいってかしら」
「そう、まさにね」
「それは面白いわね」
「そうでしょ、それでその時に来られるなんてね」
「運がいいわね」
「本当にね」
 二人でお話します、そして。
 ここで、でした。ナターシャがビリーナに言うのでした。
「それじゃあ今から」
「ええ、案内するわね」
「お花のところまでね」
 こうお話してでした、一行はビリーナに案内されてです。
 そのうえで花壇のところに行きました、するとまだお花は咲いていませんでした。充分な大きさにはなっていますが。
 そのお花を皆に見せてです、ビリーナは言うのでした。
「これから蕾になってね」
「それからなのね」
「ええ、咲くわよ」
 お花がというのです。
「だからね」
「今は、ね」
「待っていてね」
 まさにというのです。
「咲くのを」
「ええ、それじゃあね」
「今から蕾が出るから」
 ビリーナが言ったその時にでした。
 蕾、虹色のそれが出てです。
 お花がそこからゆっくりと咲きました、赤に橙、黄色、緑、青、藍、紫の七つの色がです。
 お花に奇麗な模様で花弁の一枚一枚を飾っています、その虹色の菫が咲いたのを見てです。 
 トロットはにこりと笑ってです、ビリーナに言いました。
「私このことを忘れないわ」
「私もよ」 
 ビリーナも応えます。
「このお花が咲く瞬間を見られたことをね」
「そうよね、奇麗ね」
「この上なくね」
「それでよね」
「ええ、これからはね」
「このお花もこの国を飾るのね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「そうなるわ」
「そのこともいいことね」
「色々なお花がこの国を飾っているけれど」
「虹色の菫もね」
「これから飾ることになるわよ」
「そうね」
「さて、これからパーティーを開くけれど」
 ビリーナは皆にあらためて声をかけました。
「皆もどうかしら」
「そのパーティーだけれど」
 ナターシャはビリーナの申し出を受けて彼女に言葉を返しました。
「鶏の食べものが出るのよね」
「そうよ」
「じゃあ私達は」
「私達は私達で出せばいいじゃない」 
 ドロシーがトロットに横からにこりと笑って言ってきました。
「そうでしょ」
「あっ、そうですね」
「お料理はテーブル掛けで出せるから」
「それじゃあ」
「今から出すわよ」
「わかりました」
「色々なご馳走を出しましょう」
 オズマも皆に言います。
「勿論飲みものもね」
「それで鶏の皆と一緒にパーティーですね」
 ジョージはオズマに尋ねました。
「そうするんですね」
「それなら大丈夫ですね」
 神宝はオズマの言葉に頷きました。
「僕達のものを僕達自身が出すのなら」
「じゃあ色々一杯出しましょう」
 カルロスは早速陽気に提案します。
「そうしましょう」
「皆が一緒だと場所は」
 恵梨香はこのことを考えるのでした。
「何処になるでしょうか」
「それはお外でね」
 ビリーナはすぐにです、恵梨香に答えました。
「そうしましょう」
「それじゃあ」
「ええ、早速城壁のすぐ外のお城で開きましょう」
「じゃあ」
「さて、ではね」
「早速パーティーの用意に入ろうね」
 かかしと木樵はにこにことして皆に声をかけました。
「私達はいつも通り食事は摂らないけれどね」
「それでも皆の笑顔を楽しませてもらうよ」
「歌って踊って」
 つぎはぎ娘はこちらを楽しむつもりです。
「賑やかにお祝いしましょう」
「僕もそうさせてもらうよ」
 ジャックもつぎはぎ娘に続きます。
「是非ね」
「そうね、お花が咲いたし」
「こんないいことはないから」
 ガラスの猫とエリカも言います。
「お祝いにね」
「パーティーも楽しむべきよね」
「お料理は好きなものを出して」
 ジュリアはそちらについて考えだしています。
「飲みものも出しましょう」
「お茶もジュースもね」
 キャプテンもにこにことなっています。
「どんどん出そう」
「お花もパーティーも楽しむ」
 トトは今もドロシーの足元にいます。
「まさにオズの国の楽しみ方だね」
「さて、このお花は何時か都に持って行きたいけれど」
 モジャボロはこのことを考えています。
「僕も地下に行こうかな」
「その必要はないわ、種が出来たらね」
 ビリーナがモジャボロに応えます。
「あげるから」
「そしてその種からだね」
「お花を咲かせるといいわ」
「じゃあそうさせもらうよ」
「そういうことでね、じゃあパーティーのはじまりよ」
 笑顔で言うビリーナでした、そしてです。
 皆は一旦国を出てそのうえでパーティーをはじめるのでした。虹色の菫が咲くのを見てそちらも楽しむのでした。


オズのビリーナ   完


                          2016・7・12



無事に戻って種を植えて。
美姫 「綺麗な花とパーティーで楽しんでいたわね」
今回の冒険はこれでお終いか。
美姫 「今回も中々、大変だったわね」
だな。今回も投稿ありがとうございます。
美姫 「今回も楽しませてもらいました」
ではでは。



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