『オズのアン王女』




              第一幕  オークが来て

 恵梨香達五人はこの時もオズの国にお邪魔して遊んでいました、今回はブリキの木樵のお城を訪問しています。
 木樵のお城は全てブリキで造られています、ドロシー達の像がお庭に飾られていますがその像もお庭のお花や草木も全てブリキです。
 そのブリキでピカピカと輝くお城にいてです、ジョージはこんなことを言いました。
「最初本で読んだ時からです」
「どう思ったのかな」
「木樵さんのお城らしいなって思いました」
「ははは、ブリキだからだね」
「はい」
 こう木樵本人にお話しました、他の四人それにかかしも一緒です。
「そう思いました」
「うん、やっぱり僕はね」
「ブリキの中にいるとですね」
「一番落ち着くからね」
「それで、ですね」
「全てね」
 まさに何もかもがというのです。
「ブリキで造ったんだ」
「そうなんですね」
「そうだよ」
「木樵君を象徴するお城なんだよね」
 木樵の親友であるかかしも言います。
「このお城は」
「そうですよね、ブリキで」
 神宝がかかしに笑顔で応えます。
「まさに木樵さんのお城ですね」
「若しブリキでなかったら」
 どうなのかとです、カルロスが言います。
「何か違うと思いますね」
「このお城に入ると」
 ナターシャはその見事なブリキのお城、宮殿を見ています。ピカピカと輝いてとても奇麗なその場所をです。
「木樵さんだって思えますね」
「むしろ木樵さんでないと」
 最後に恵梨香が言うのでした。
「こうしたお城も考えられないですね」
「うん、オズの国だからね」
 まさにとです、木樵も皆にお話します。
「僕がいてこのお城もあるんだよね」
「そうですよね」
「オズの国ですから」
「ブリキの木樵さんもいてブリキのお城もある」
「私達の世界とはまた違うから」
「だからですね」
「そうなんだよ、この国は外の世界とは違うからね」
 それ故になのです。
「僕もこうした場所もあるんだよ」
「僕もね」
 かかしも言います。
「いられるんだよ」
「そうそう、かかしさんもですよね」
「喋って動けて考えられますね」
「オズの国ですから」
「かかしさんのお家もありますし」
「このウィンキーの国に」
「君達の世界とは違うからね」 
 まさにそれが為にというのです。
「本当に、それじゃあね」
「はい、これからですね」
 ジョージがかかしに応えました。
「お城の中に戻って」
「お茶にしよう」
「お茶ですね」
「お城の人達が用意してくれているよ」
 木樵に仕えていて同時に木樵のお友達である人達がです。木樵はお城の人達にもとても優しくてお友達でもあるのです。
「紅茶もコーヒーもどちらもね」
「コーヒーですね」
 ジョージはコーヒーと聞いてこう言いました。
「ウィンキーの」
「そうだよ」
「黄色のコーヒーですね」
「君達このコーヒーも好きだよね」
「面白いですから」
 だからと答えるジョージでした。
「大好きです」
「どの国のコーヒーも面白いですね」
 恵梨香はこんなことを言いました。
「それぞれの色で」
「青、赤、緑、紫と」
「はい、お国の色で」
「ウィンキーは黄色でね」
「それも面白くて」
 だからというのです。
「大好きなんです」
「黄色くてもコーヒーの味がすると聞いてるよ」
 かかしはにこにことして応えました。
「僕もね」
「僕もだよ」
 木樵もでした、このことは。
「僕達はコーヒーを飲むこともないけれど」
「そう聞いているよ」
「そしてそのお話を聞いてね」
「何よりだって思っているよ」
「コーヒーですね」
 ジョージも言います。
「お二人はそちらも飲まないんですね」
「身体がそうだからね」
「食べる必要も飲む必要もないからね」
「寝ることも休むことも必要ない」
「僕達はそうだよ」
「凄く便利ですね」
 ですがジョージは心の中でコーヒーや紅茶を味わえないのなら残念かな、とも思いました。それを言葉に出しそうにもなりましたが。
 お城の中からメイドさんが来ました、黄色いメイド服と白いエプロンです。
 そのメイドさんがです、皆に言いました。
「お茶とお菓子の用意が出来ました」
「うん、それじゃあね」
 木樵がメイドさんに応えました。
「今から皆で行くよ」
「何処で飲まれますか」
「お城の外がいいかな」
 飲む場所は木樵が考えました。
「それなら」
「では二階のテラスはどうでしょうか」
「あっ、いいね」
 木樵はメイドさんの提案に笑顔で応えました。
「それじゃあね」
「はい、そちらでですね」
「皆で飲むよ」
「それでは」
 こうして皆は二階のテラスでティータイムを楽しむことになりました。黄色いコーヒーやレモンティーが用意されていて。
 黄色いチョコレートで覆われたクッキーやシュークリーム、それにケーキが三段のティーセットにあります。そのティーセットを見てです。 
 ジョージは頷いてです、こう言いました。
「今日はチョコレートですね」
「はい」
 先程のメイドさんが木樵の席の後ろから神宝に答えました。
「いいチョコレートが手に入りましたので」
「だからですね」
「このチョコレートもいいんですよね」
 カルロスは黄色いチョコレートを見てにこにことしています。
「色も美味しさも」
「最近やっとチョコレートってわかる様になりました」
 ナターシャはチョコレート自体のことをお話します。
「それぞれの国のものが」
「私達の世界のチョコとは違いますけれど」 
 色がとです、恵梨香も言います。
「わかる様になりました」
「チョコレートは本来黒いね」
 かかしも自分の席からお話します、七人で円卓に座って卓の真ん中に置かれているセットを見ながらのお話です。
「君達の世界では」
「はい、そうです」
「焦げ茶ですね」
「限りなく黒に近い焦げ茶ですね」
「チョコレートの色は大体そうです」
「チョコレート色ともいいますね」
「そうだね、けれどオズの国では黒いチョコレートもあるけれど」
 それでもなのです。
「それぞれの国でね」
「こうしてですよね」
「それぞれの国のチョコがある」
「そうですね」
「ウィンキーですと黄色で」
「青や赤、紫、緑もありますね」
「そうだよ、それぞれの国でね」
 まさにというのです。
「こうしたチョコレートもあってね」
「何かお菓子を覆っている質でわかってきました」
 ジョージはそこからだと言いました。
「チョコレートだって」
「色でなくてだね」
「はい、その質で」
「そうだね、他の食材ともね」
「チョコレートはまた違っていて」
「そのチョコレート独特のものがだね」
「わかってきました」
 こうかかしにお話しました。
「オズの国で」
「色で何かを見分けることも大事だけれどね」
「色だけではですね」
「見分けることにもですね」
「限度があってね」
「色に頼らない」
「そうした見方もあるんだ」
 かかしはジョージ達に穏やかな声でお話しました。
「色は大事だけれど色ばかりに頼らない」
「ものごとを見極めるには」
「そうなるね」
「チョコレートもですね」
「そうだよ」
 こうしたお話もしてです、皆でティータイムを楽しみました。
 そのティータイムが終わってです、木樵は皆に尋ねました。
「これから何をして遊ぼうか」
「晩御飯までですね」
「何をするか」
「そのことですね」
「色々あるけれどね」
 遊ぶにしてもです。
「具体的に何がいいかだけれど」
「鬼ごっことかかくれんぼとか」
「だるまさんが転んだ」
「アスレッチも近くにありますし」
「お散歩もあって」
「そこは色々ですね」
「具体的にだよ」
 まさにと言う木樵でした、五人に。
「何がいいかだよ」
「それは難しいですね」
「僕も考えていませんでした」
「僕もです」
「一体どうしたらいいのか」
「何をして遊ぶか」
「今は」
「僕もだよ」
 木樵は腕を組んで皆と一緒に考えます、ですがどうしても答えは出ないでそのままでいるとです。そのテラスにです。
 一羽のオークが来ました、そのオークの首元にはです。
 手紙がありました、その手紙を見てかかしが言いました。
「オズマからだね」
「あっ、そうだね」
 木樵はかかしに応えました。
「僕達宛だよ」
「ジョージ達にもね」
「それじゃあね」
「この手紙を読もう」
「そうしよう」
 こう二人でお話してでした、そのうえで。
 木樵がお手紙を取って読んでみますと。ジョージが読み終わった木樵に尋ねました。
「オズマ姫からは何て」
「うん、ウーガブーの国にね」
「あそこにですか」
「行って欲しいってあるよ」
「そうなんですか」
「今からドロシーが来るらしいよ」 
 このお城にというのです。
「そう書いてあったよ」
「ドロシーさんが」
「そして僕とかかし君は一緒に残って欲しいらしいね」
「このお城に」
「そして君達とドロシー、それにね」
 さらにというのです。
「ファイター大尉にも声をかけたらしいから」
「大尉さんにですか」
「そうだよ」
 木樵のお友達にして最も忠実な家臣の一人です。木樵と同じブリキの身体でブリキのサーベルを使います。
「合わせて七人でね」
「ウーガブーの国までですか」
「行って欲しいらしいね」
「そうですか」
「アン王女を助けに」 
 ウーガブーの王女にして国家元首であるアン=アンヤコレヤ王女です。かつてオズの国全ての征服を考えたこともある中々威勢のいいお姫様です。
「行って欲しいってね」
「あの人ですか」
「そうだよ、いいかな」
「はい、それでしたら」
 ジョージも他の皆もです、特に反対することもなく。
「僕達も」
「是非」
「アン王女がお困りなら」
「ウーガブーの国まで行かせてもらいます」
「そうさせてもらいます」
「それじゃあね、ドロシーが来て」
 そしてというのです。
「大尉も来るから」
「ファイター大尉ですね」
「君達はまだ大尉と一緒になったことはないね」
「そういえば」
 そうだとです、ジョージは答えました。
「そうでした」
「そうだね、それじゃあね」
「大尉ともですね」
「一緒にね」
「行くこともですね」
「楽しんでね」
「わかりました」
 このことにも頷いたジョージでした、そして皆も。
「そうさせてもらいます」
「それじゃあね、ただね」
「ただ?」
「ウーガブーの国で何があったか」
 そのことはといいますと。
「それはわかっていないんだ」
「そうなんですか」
「どうもね」
「何ででしょうか」
「手紙には起こったんじゃなくてね」
 どう書いてあったかといいますと。
「起こるって書いてたよ」
「これからですか」
「何か予言があったらしいんだ」
「予言ですか」
「グリンダが伝えてくれたんだ」
 カドリングの国を治めるこの人がというのです。
「手紙にはそうも書いてあったよ」
「そうでしたか」
「とにかくね」
「その何かを防ぐ為に」
「ウーガブーの国に行って欲しいと書いてあったんだ」
「そうですか」
「グリンダの本に書いてあったらしいんだ」
 オズのあらゆることが書かれるその本にです。
「ウーガブーの国に何かが起こるってね」
「既にですか」
「書いてあってね」
「それで僕達にですね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「行って欲しいってね」
「何が起こるか」
「これからだよ」
 そしてそれを防ぐ為にというのです。
「君達にね」
「ううん、何か」
 ジョージは首を傾げさせて言いました。
「期待と不安が入り混じってます」
「こうした時はいつもそうなるよね」
 神宝はジョージのその言葉に頷きました。
「冒険がはじまる時は」
「うん、どうなるか期待してね」
 カルロスは具体的にお話しました。
「そしてどうなるか不安にもなる」
「期待の方が大きくても」
 ナターシャはこう言うのでした。
「不安もあるわね」
「期待七割で不安三割かしら」
 恵梨香は期待と不安の割合を検証しました。
「そうなるかしら」
「そうだよね、どうしても期待していて」
 ジョージは四人に応えつつ言いました、今度は。
「そして不安にもなるね」
「そしてその不安を打ち消してくれるのがね」
 木樵が言うには。
「ドロシーと大尉だよ」
「一緒に冒険してくれる人ですね」
「今回はお二人ですね」
「オズの国の人達ですね」
「この国のことを知っている人達」
「お友達でもあるあの人達がですね」
「そう、だからね」
 それ故にというのです。
「期待して行くといいよ」
「じゃあ皆ドロシーと大尉が来たらね」
 かかしも五人にお話します。
「ウーガブーの国まで行くんだよ」
「わかりました、果たしてあの国で何が起こるのか」
 ジョージは木樵とかかしに応えながら言いました。
「これからわかって」
「そしてね」
「それを僕達が防ぐか止める」
「そうなるからね」
「楽しみにしてですね」
「今回の冒険を行っていってね」
「そうさせてもらいます」
 笑顔で応えてでした、皆はお城で今度は縄跳びやお部屋の中でトランプとかをしながら楽しい時間を過ごしました。この日は一日そうしていました。
 ドロシーは五人がお城で楽しんでいる時にエメラルドの都の宮殿でトトに御飯をあげている時にオズマに言われました。
「さっきグリンダから連絡があったけれど」
「何かあったの?」
「ウーガブーの国で何かが起こるらしいの」
「予言?」
「グリンダの本に出たらしいの」
 グリンダがいつも読んでいるオズの国の出来事が自然と書かれる本とは別のある程度の未来が書かれる本にです。
「だから起こる前に何とかしたいけれど」
「今貴女はね」
「そう、都の城壁のことで忙しいから」
「もっと奇麗な壁にする為に」
「それで貴女にお願いしたいの」
「私がウーガブーの国に行って」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「あの国を守るか救うか」
「何が起こるかわからないけれど」
「どうにかしてね」
「わかったわ、じゃああの国に行って」
「アン王女にお話をして」
「何とかするわ」
「そうしてね」
「今からウーガブーの国に行くわ」
 ドロシーはオズマに笑顔で応えました。
「そうするわね」
「お願いね、それで貴女と一緒にファイター大尉にも行ってもらうわ」
「あっ、大尉さんもなのね」
「あの人にも連絡するか」
「じゃあ何処かで待ち合わせて」
「木樵さんのお城でよ」
 場所はそこでした。
「そこで大尉さんとも待ち合わせをして」
「そしてあの国に行くのね」
「そうしてね、それとお城にはね」
「あの子達がいるわね」
「あの子達とも一緒にね」
「ウーガブーの国にね」
「行ってね」
 ドロシーにこうも言うのでした。
「そうしてね」
「わかったわ、じゃあまずは木樵さんのお城にね」
「行って来るわね」
「僕もだよね」
 これまでドロシーの足元で御飯を食べていたトトがドロシーに応えました。
「一緒に冒険に行くんだよね」
「勿論よ、ドロシーにはね」
「いつも僕が一緒だからね」
「一緒に行ってね」
「是非そうさせてもらうよ」
 笑顔で応えたトトでした。
「まずは木樵さんのお城までドロシーと一緒にだね」
「行ってもらうわ」
「それじゃあね」
「オズの国は安全だし」 
 安全さでオズの国に勝る国はありません。
「木樵さんのお城までの道も楽しんできてね」
「わかったわ」
「そうさせてもらうね」
 ドロシーとトトはオズマに笑顔で応えました、ですが。
 ドロシーはオズマにです、怪訝な顔で言うのでした。
「ただ。何が起こるのか」
「ウーガブーの国でね」
「そのことが気になるわね」
「私もなの。グリンダもそこまではわからないっていうし」
「ううん、また妖魔みたいな人達が攻めて来るのかしら」
「ノーム王とかね」
「それか災害かしら」
 ドロシーはこの可能性も考えました。
「オズの国には災害もないけれど」
「大変な災害はね」
「じゃあ何かしら」
「いいことか悪いことかもね」
「わからないわね」
「そうなのよね」
 どうにもです、オズマもわかりませんでした。ですがドロシーは早速ウーガブーの国への冒険に入るのでした。
 オズマにです、ドロシーは都の門で笑顔で一時のお別れの挨拶をしました。
「それじゃあね」
「ええ、行ってらっしゃい」
「何かあったらね」
「すぐに連絡してね」
「うん、これでね」 
 ここで携帯電話を出したドロシーでした。
「そうさせてもらうわね」
「お願いね」
「後は旅道具も全部持ったから」
 ドロシーは右手に持っているバスケットボックスを見ながら言いました。
「もうね」
「何の心配もなくね」
「冒険に出られるわ」
「それじゃあね」
 二人で抱き締め合って笑顔で一時のお別れの挨拶としました、そのうえで。
 ドロシーはトトと一緒にまずは木樵のお城に向かいます、黄色い煉瓦の道を進みますがその道中で、でした。
 ふとです、トトはドロシーにこんなことを言いました。
「ファイター大尉との冒険はそういえば」
「久しぶりよね」
「そうだよね」
「ええ、私も言われて気付いたわ」
「うん、ドロシーはオズの国一の冒険家でもあるけれど」
「それでもね」
「大尉との冒険はね」 
 それはといいますと。
「本当に久しぶりだね」
「だからそのことも楽しみよ」
「そしてあの子達もいるし」
 ジョージ達五人もです。
「だからね」
「あの子達ともね」
「一緒にね」
「冒険を楽しめるわね」
「あの子達とは最近よく一緒になるね」
「ええ、何かね」
 ドロシーはトトににこりと笑ってこう言うのでした。
「弟や妹か後輩か」
「五人共だね」
「そんな感じがするわ」
「そうだね、ドロシー達から見るとね」
「あの子達はそうでしょ」
「年齢的にもね」
「オズの国の人は歳を取らないけれど」 
 不思議の国だからです、ドロシーも他の皆も歳を取ることがないのです。そして死ぬこともないのです。この国では。
「それでもね」
「あの子達はだね」
「年下になるから」
「弟や妹に思えて」
「後輩にもね」
 どちらかにというのです。
「思えるわ」
「そうなんだね」
「だからあの子達と一緒の冒険はね」
「楽しいんだね」
「そうした子達と一緒にいるって思えるから」
 だからだというのです。
「楽しいし今もね」
「楽しみだわ」
「僕もだよ、五人共いい子だしね」
「凄くね」
「神宝は頭がよくて」
 まずはこの子のことをお話するのでした。
「いつも知恵を出してくれて」
「カルロスは元気でムードメーカーで」
「雰囲気をよくしてくれて」
「ナターシャはまとめ役というかリーダーで」
「皆を本当にまとめてくれて」
「恵梨香は皆のお母さん役」
「優しくて面倒見がよくて」
 皆のお話をしていくのでした。
「ジョージはいつも先頭にいてね」
「何でも率先してやっていく」
「五人共それぞれ個性が違っていて」
「いい感じで動いてくれてるのよね」
「そうなのよね」
 実際にというのです。
「だからいいのよね」
「本当にね」
 笑顔でお話します、そしてです。
 その五人についてです、ドロシーはまた言いました。
「一人一人もいいけれど」
「五人揃うとね」
「尚更いいのよね」
「凄い力を出すんだよね」
「一人より五人」
「そうした子達だね」
「生まれた国は違うけれど」 
 ドロシーはこのことについても言うのでした。
「仲がよくてね」
「上手い具合に動いてるね」
「そうなのよね」
「いい五人だよね」
 トトも五人が好きです、それで親しみを込めてドロシーに言います。
「本当に」
「そうよね」
「さて、その五人と一緒にね」
「いざウーガブーの国ね」
「アン王女と会うのも久し振りだし」
「楽しみね」
「彼女に会うのもね」
 親しい友人の一人である彼女とも、というのです。ドロシーとトトはお互いにお喋りをしながら一緒に黄色い煉瓦の道を進んでいきます。
 そして大尉もです、オークから手紙を受け取って言うのでした。
「よし、すぐにね」
「はい、木樵さんのお城まで」
「まずはそこに行かせてもらうよ」
 自分のお家であるブリキの基地の中でオークに答えます。
「そうさせてもらうよ」
「お願いしますね」
「うん、そういえばね」
「そういえば?」
「いや、あの噂の五人の子供達も一緒だよね」
「はい、今回の冒険は」
「ドロシー王女との冒険も久し振りだし」
 それにというのです。
「あの子達との冒険ははじめて」
「だからですね」
「楽しみだね、それに」
 さらに言う大尉でした。
「トトもいるよね」
「ドロシー王女が来られますから」
「そうだよね、ドロシー王女といえばね」
「トトもですから」
 何しろドロシーがカンサスにいた時からのお友達だからです。その絆はとても強く深いものがあります。オズの国においても。
「そうなりますね」
「じゃあトトともね」
「一緒にですね」
「行かせてもらうよ」
「それじゃあ」
「うん、是非ね」
 こう笑顔で応えてでした、大尉も出発します。ですがドロシー達も大尉もその日のうちにお城には着けませんでした。
 それで今は休んで晩御飯を食べていますが。
 サンドイッチを食べているドロシーにです、トトはドッグフードを食べながら聞きました。
「サンドイッチだけでいいの?」
「今晩は」
「うん、それと野菜ジュースだけで」
「サンドイッチだけでもね」
 ドロシーはトトに答えました。
「色々な種類を出したから」
「いいんだ」
「ハムサンドに卵サンドに野菜サンドにね」
 飲んでいるのは果汁百パーセントのフルーツジュースです、林檎やオレンジや葡萄のミックスジュースです。
「カツサンドもツナサンドもあるし」
「本当に色々だね」
「スパムサンドもあるわよ」
「あっ、スパムもなんだ」
「あるのよ」
「本当に色々だね」
「今はトマトとハンバーグのサンドよ」
 それを食べているというのです。
「美味しいわよ」
「そうなんだね」
「ツナサンドもいいわよ」
「日本のサンドイッチだね」
「次はそれを食べるわ」
「いや、まさかね」 
 トトはツナサンドについてこう言いました。
「鮪の缶詰をね」
「サンドイッチに挟んで食べる」
「そうしたことをするなんてね」
「日本独特よね」
「そうだよね」
「日系人の人が食べてるのよ」
 アメリカにおいてもです。
「それで恵梨香も好きでしょ」
「うん、ツナサンドをね」
「実際に美味しいしね」
「そうそう、僕も食べたことがあるけれれど」 
 今はドッグフードを食べていますがトトはサンドイッチも好きでそれでツナサンドも食べたことがあるのです。
「美味しいよね」
「そうだよね」
「あっさりとしていてね」
「食べやすくて」
「いい味だから」
「ドロシーも僕も好きだね」
「特に恵梨香がね」
 日本人のこの娘がです。
「ツナサンド好きよね」
「うん、あと恵梨香が一番薄味好きかな」
「あっ、確かにね」
「他の皆もそれぞれ好みがあるけれど」
「恵梨香はね」
「五人の中で一番薄味が好きだね」
「しかもお魚が好きなのよね」
 実は恵梨香はお魚が大好きです、それでオズの国でもよくお魚を食べています。
「鯛とか秋刀魚とか」
「鯵とかね」
「他の国ではあまり食べないお魚もね」
「大好きだね」
「ただ、恵梨香って小骨のあるお魚は食べても」
「それでね」
 お魚の好き嫌いはないのですが。
「小骨まではね」
「食べないわね」
「そこは絶対なんだよね」 
 トトも言います。
「僕は普通のお魚の骨も食べるけれど」
「あっ、出来ればね」
「普通のお魚の骨はだね」
「鰯とか秋刀魚の場合はいいけれど」
「恵梨香も言ってたね」
「鯛とか鯵の骨はね」
 こうしたお魚の骨はです。
「犬でもね」
「あまり食べない方がいいんだね」
「消化にあまりよくないから」
 だからだというのです。
「小魚位にしてね」
「わかったよ」
「小魚ならいいから」
「骨はだね」
「あまり食べないでね」
「わかったよ」
「恵梨香は骨は絶対に食べないけれどね」
「生は大好きだけれど」
 だからお刺身やお寿司も大好きなのです、恵梨香は焼き魚や煮魚、天麩羅も好きですが生魚の方が好きなのです。
「骨はね」
「食べないね」
「あと何でもね」 
 ドロシーはトトにさらにお話しました。
「川魚もよ」
「生ではなんだ」
「オズの国以外では食べないらしいわ」
「それはどうしてなのかな」
「ご両親に止められてるらしくて」
 川魚を生で食べることをです。
「それでらしいわ」
「あたるからかな」
「外の世界ではね」
「そうそう、外の世界では食べるものはね」
「変なものを食べたらあたるから」
「食中毒とかになって」
「それでらしいわ」
 恵梨香のご両親は恵梨香が川魚を生で食べることを止めているのです。
「危ないから」
「オズの国ではそうしたことはないけれどね」
「鯉を食べてもね」
「別に何もないから」
「そうそう」
 ドロシーはトトに言いました。
「別にね」
「だから普通に食べられるけれど」
「川魚も生で」
「鯉でも何でもね」
「オズの国はこのこともいいわね」
「うん、何でも生で食べられる」
「そのことがね」
 ドロシーは今はツナサンドを食べています、恵梨香が大好きなそれを。
「またね」
「いいところだね」
「トトもそうよね」
「お刺身は美味しいよね」
「お寿司もね」
「最初生で食べるのってびっくりしたけれど」
「これがね」
 実にというのです。
「美味しくて」
「いいんだよね」
「じゃあ皆と合流したら」
「お刺身食べる?」
「お寿司かどちらかをね」
「いいね、皆と合流するのは明日かな」
「そうなると思うわ、ただ大尉はね」
 この人はといいますと。
「あの人は夜休む必要がないから」
「木樵さんやかかしさんと同じ様な身体だからね」
 勿論何かを飲んだり食べたりする必要もありません。
「どんどん歩いていけるから」
「お城までの距離も近いし」
「もう着いてるかな」
「そうかも知れないわね」
 ドロシーはトトに考えるお顔でお話しました。
「あの人は」
「ううん、僕達も急いだ方がいいかな」
「勿論今日はもう寝てね」
「身体も奇麗にしたしね」
 近くの川で身体を洗ったばかりです。
「だからね」
「食べ終わったら歯を磨いて寝るわ」
「そして日の出と共に」
「出発よ、ただ急ぐのなら」
 そう考えるならというのです。
「歩きながら食べた方がいいかしら」
「そうする?」
「何か軽いものを食べながらね」
「じゃあ何がいいかな」
 朝に食べるものはと言うトトでした。
「それなら」
「フランクフルトとか?」
「そういうの?」
「あとハンバーガーかしら」
「それもなんだ」
「どうかしら」
「いいんじゃないかな」 
 トトは特に反対しませんでした。
「急いで行くのならね」
「そうね、じゃあ」
「朝起きたら」
「急いで行くのなら」
 そう決めたならというのです。
「そうしましょう」
「そうだね」
「じゃあ」
「うん、それじゃあね」
「明日の朝よ」
「出発だね」
「そうしましょう」
 ドロシーはトトにお話しました。
「そして木樵さんのお城に行きましょう」
「そうだね、ただね」
「ただ?」
「今回乗りものが何もないからね」
 トトはこのことを残念に思うのでした。
「木挽の馬もね」
「今はモジャボロさん達と一緒だから」
「それで頼りに出来ないから」
「仕方ないことよ」
「そうだね、じゃあ歩いてね」
「お城まで行きましょう」
 こうトトに言うのでした。
「いいわね」
「わかったよ、じゃあ今日は早く寝よう」
「そうしましょう」
 ドロシーはこう言って御飯を食べてです、そのうえで歯を磨いてからテントの中でトトを抱いて寝るのでした。そしてです。
 翌朝日の出前に起きられました。
「まだ暗いわね」
「うん、早く寝たからだね」
 トトはドロシーと一緒にテントを出て古い友達に応えました。
「早く起きられたね」
「ええ、じゃあね」
「テーブル掛けで御飯を出すけれど」
「ハンバーガーか何か」 
 昨日のお話の通りでした。
「それを出してね」
「歩きながらだね」
「進みましょう」
「ドロシーはハンバーガーで」
「貴方は何を食べたいの?」
「フランクフルトかな」
 少し考えてからです、トトはドロシーに答えました。
「それかな」
「フランクフルトなの」
「あれならすぐに食べられるからね」
「だからなのね」
「うん、それにしようかな」
「それじゃあ」
「フランクフルトにするよ」
 トトはここで決めました。
「それをね」
「わかったわ、じゃあハンバーガーと牛乳とね」
「フランクフルトだね」
「貴方も飲みものは牛乳でいいかしら」
「ううん、それを出しても」
 それでもというのです。
「犬は歩きながら飲むことが出来ないから」
「そういえばそうね」
「今はいいよ」
「それじゃあ」
「うん、途中でお水飲めばいいしね」
「その時は出すわね」
 テーブル掛けからというのです。
「そうするわ」
「それでお願いね」
「そういうことでね」
 こうお話してです、そのうえでなのでした。
 ドロシーはハンバーガーと牛乳、それにフランクフルトを出しました。ですがここでドロシーはその他にあるものを出しました、それはというと。
「あれっ、これって」
「西瓜よ」
 それのスライスしたものでした。
「トト西瓜も好きだから出したのよ」
「あっ、これを食べてなんだ」
「水分を補給してね」
「そういえば西瓜って水分も多いから」
「こうした時はいいからなのよ」
「出してくれたんだ」
「スライスしてるから歩きながらでも食べられるし」
 犬のトトでもです。
「食べない方は私が持っておくから」
「そこまでしてくれるんだ」
「食べるだけじゃなくて飲むこともしっかりしないと」
 それこそというのです。
「身体に悪いから」
「だからなんだ」
「西瓜も食べましょう」
「うん、有り難う」
「一緒に食べて行きましょう」
 こうしてでした、ドロシーはすぐにテーブル掛けを収めてです。
 トトと一緒に歩きながら食べはじめました、外はまだ暗いですが。
「もう少ししたらよね」
「お日様が出るね」
「そうなるわ」
「いつもは日の出と共の出発だけれどね」
「今回はね」
 急ぐからというのです。
「もう出発してるのよ」
「そういうことだね」
「今日中にお城に着く様にしましょう」
「出来る限り急いでね」
 こうお話しながらです、ドロシーとトトはお城に向かうのでした。まだ暗いうちから出発して。



今回はウーガブーへと。
美姫 「今までとは少し違う感じで旅の始まりね」
だな。大事にならないと良いけれど。
美姫 「ドロシーたちも付いて行くみたいだし、何とかなると思うけれどね」
一体、何が起ころうとしているんだろうか。
美姫 「どんな旅になるのか楽しみね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」



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