『オズのジュリア=ジャム』




                 第四幕  植物達のダンス

 一行はさらに東に進んでいきます、そんな中日が暮れるとテントを出してテーブル掛けから晩御飯を出して食べます。今日のメニューは飲茶でした。
 麺に海老やフカヒレの蒸し餃子ににら餅、焼売にお饅頭それに八宝菜や豚腹煮込みもあります。そうしたものを食べながらです。
 ジュリアはにこにことしてです、お茶も飲みつつ言いました。
「オズの国の中華街でもね」
「あっ、オズの国にも中華街ありますね」
「ええ、あるでしょ」
 こう神宝に答えました。
「都にもあるしね」
「そうですよね」
「大きな街には大抵あるわ」
 オズの国でもというのです。
「そしてそうした場所でもね」
「こうしてですね」
「食べられるし」
「今みたいにですね」
「テーブル掛けでも出せてね」
 そうしてというのです。
「食べられるのよ」
「それも美味しく」
「そうよ、中華料理の中では」
 ジュリアは海鮮麺を食べつつ言いました。
「これが一番好きかしら」
「飲茶がですか」
「そうかも知れないわ」 
 炒飯を食べる神宝に言うのでした。
「私はね」
「中華料理は他にもメニューの形がありまして」
「飲茶以外にもよね」
「これは大体広東の方ですね」
「確か君はそちらの生まれじゃないね」
「はい、ですから」
 神宝はモジャボロにも答えました。
「本場かといいますと」
「同じ中国でもだね」
「違います」
「そうだったね」
「北京や上海、四川でまたお料理が違いまして」
「確かこれは本来は四川料理だね」
 モジャボロは自分が食べている麻婆豆腐を見ながら神宝に尋ねました。
「そうだったね」
「はい、そちらのお料理です」
「僕の好物の一つだけれど」
「本当は飲茶には入らないですね」
 広東料理にはというのです。
「広東料理は海鮮ものが多いですから」
「ううん、僕は食べないけれど」
 かかしや木樵と一緒に皆が食べるのを見て楽しんでいるジャックがここで神宝に尋ねるのでした。
「確かに海鮮ものが多いね」
「フカヒレスープとかね」
 ジュリアはジョージが飲んでいるそれを見ています。
「あるしね」
「そうだよね」
「まさか鮫を食べるなんて」
 ジュリアはそれが信じられないといったお顔でした。
「想像もしなかったわ」
「これがまた美味しいんですよね」
 神宝はそのフカヒレスープに言及しました。
「本当に」
「そうなのよね、私そのスープも好きよ」
「お野菜も多くて」
 恵梨香は八宝菜を食べています。
「身体にもいいんですよね」
「特徴としては火を通してるよね」
 カルロスは回鍋肉を食べています。
「中華料理って」
「そうよね、生ものは殆どないわ」
 ナターシャはお饅頭をほくほくと食べています。
「お刺身とかは」
「あるにはあるみたいだけれど」
 ジョージは今度はピータンとお豆腐を食べています。
「少ないのは間違いないね」
「そう、それで火を通したお料理を楽しむのもね」
 ジュリアは海老蒸し餃子にお箸を移しています。
「中華料理の楽しみ方ね」
「お刺身もあるにはありますが」 
 神宝が言うにはです。
「確かに殆ど食べないですね」
「そうよね」
「冷えた御飯もです」
 こちらもというのです。
「食べませんし」
「最近までそうよね」
「最近食べる人も少し出てるみたいですけれど」
 それでもというのです。
「中国では食べないです」
「温かいものね」
「それを食べています」
「そして今の飲茶も」
「熱を通したのばかりで」
「それを楽しむものね」
「いや、お酒にも合うしね」
 大人のモジャボロはお酒も飲んでいます、桂花陳酒をごくごくと飲んでいます。
「中華料理って」
「あら、そうなの」
「そうだよ、これがね」 
 ジュリアにお酒で赤らんだお顔で答えました。
「実に合うんだ」
「そうなのね」
「うん、ただジュリアと神宝達は」
「子供だから」
「アルコールが入っているものは飲めないね」
「ええ、そうよ」
「それは仕方ないね、ただアルコールが入っていないお酒は飲めるから」
 オズの国にはそうしたものもあります。
「そちらはどうから」
「ノンアルコールのワインとか」
「それでも酔えるしね」
 アルコールが入っていなくてもです。
「どうかな」
「別にいいわ」
 ジュリアはそちらは断るのでした。
「林檎のジュースがあるから」
「だからなんだ」
「ええ、別にね」
「だといいけれどね」
 モジャボロはグラスの中に氷を入れた桂花陳酒も楽しみながら応えました。
「君がそう言うのなら」
「僕もですね」
「別にお酒はいいです」
「ジュースやお茶がありますか」
「そちらを楽しんでますので」
「ですから」
 五人もこう言ってお酒を飲まないのでした、そしてお茶やジュースを飲んでいます。そうして皆でお腹一杯食べてから近くの川で身体を奇麗にしてからテントの中で寝ました。
 そして次の日朝御飯を食べてからです。出発しましたが。
 ふと道の向こうから音楽が聴こえてきました、それでジャックが言いました。
「あれっ、この音楽は」
「ポップスだね」
 木樵もその曲を聞いて言いました。
「この曲は」
「うん、そうだよね」
「ダンスに合ったね、けれど」
「何か違うね」
「曲の感じがね」
「楽器を使っていても」
 それでもなのでした、聴いていますと。
「何かね」
「金属の感じがしないね」
「何処か柔らかいよ」
「これはどうしてかな」
「それをわかるには音楽が奏でられている場所に行くことだね」
 かかしが解決案を出しました。
「まずは」
「そうだね、知りたいならね」
「そうすべきだね」
 ジャックと木樵はかかしの言葉に頷きました。
「知りたいなら見る」
「それが一番だからね」
「どちらにしてもそちらに行くから」
 ジュリアも応えました。
「それじゃあね」
「うん、行こうね」
「このままね」
 ジャックと木樵はジュリアにも応えました、そのうえで。
 皆で音楽が聴こえる道の先に行きました、すると。
 そこにです、色々な草花達が生えていてでした。
 それぞれの茎や葉、お花等を使ってでした、様々な音楽を鳴らしています。その音がギターやベース、ドラム、サックス、シンセサイザーの音に似ているのです。
 その音楽を聴いてです、ジャックは納得しました。
「成程、金属と違った感じがしたのは」
「うん、植物だからだね」
 木樵も納得して頷きます。
「音の響きが違うんだね」
「そうだね」
「こうした音楽もいいね」
「そうだね」
「柔らかい感じがして」
「素敵だよ」
「何かね」
 かかしは何処かうきうきとした感じで皆に言いました。
「踊りたくならないかい?」
「うん、そうだね」
「こうした曲を聴いてるとね」
 ジャックと木樵はかかしに笑顔で応えました。
「自然とね」
「踊りたくなるよ」
「歌も歌ってね」
 モジャボロは右手の人差し指を立ててお話に入りました。
「そうしたくなるね」
「明るくてノリのいい曲だから」
 ジュリアも今にも踊りだしそうな感じです。
「そうなるわ」
「じゃあ今からだね」
「踊るの?」
「そうするのかい?」
「どうしようかしら」
「ここはそうすべきだよ」
 ジュリアが少し考えているとです、ここででした。
 何とミュージッカーが出てきました、相変わらず身体から始終音楽を出していてそうして陽気な感じで踊りながら歩いています。
「陽気にね」
「あっ、ミュージッカーさん」
「確かカドリングにおられたんじゃ?」
「それでどうしてマンチキンにいるの?」
「旅行中?」
「それでかしら」
「そうだよ、今は旅行中なんだ」
 ミュージッカーは神宝達五人に答えました。
「それで今はこの植物達の音楽を楽しんでいるんだ」
「君にこの国で会うとはね」
 モジャボロがミュージッカーに応えました。
「思わなかったけれどね」
「たまたまここでこの植物達に巡り合ってね」
「この国を旅行していてたね」
「それで今は音楽を楽しんでいるんだ」
「そうなんだね」
「うん、そしてね」
 ミュージッカーはさらにお話します。
「数日ここで歌って踊っているんだ」
「君自身の音楽と合わせて」
「そうしているんだ」
「成程ね」
「いや、これがね」
「これが?」
「とてもよくて留まっているんだ」
 そうして歌って踊っているというのです。
「こうしてね、満足したら他の場所に行くよ」
「君の旅行の目的地は何処かな」
「特に決めていないんだ」
「気分の赴くままにだね」
「旅行をしているんだ」
「では満足したらだね」
「カドリングに戻るよ」
 つまり彼のお家がある場所にというのです。
「そうするよ」
「そのこともわかったよ」
「ううん、とてもいい音楽だから」
 ジュリアがここでまた言いました。
「ミュージッカーさんの勧めもあるし」
「踊ったり歌ったりするんだね」
「ここはそうしようかしら」
 かかしに考えるお顔で答えました。
「皆で」
「じゃあ僕達もですね」
「皆で、ですね」
「ここで踊って歌うんですね」
「植物達の音楽に合わせて」
「そうするんですね」
「こうしたことがあるのもね」
 いきなりダンスパーティーになるのもというのです。
「オズの国の楽しみ方でしょ」
「その時に起こったことを楽しむ」
「それがオズの国ですね」
「オズの国の冒険ですね」
「だからですか」
「私達も」
「ええ、そうすることもいいかしら」
 ジュリアは段々前向きに考えだしていました。
「ここは」
「僕達はいいですよ」
「本当に明るくて楽しくていい曲ですから」
「踊ってみたくなりました」
「そして歌いたくもなりました」
「聴いていますと」
「そうね、ただ踊ることはいいにしても」
 それでもというのでした、ジュリアはここで。
「歌いたいにしても」
「歌詞がないね」
「リズムは聴いてるけれど」
 かかしにも応えました。
「歌詞はつぎはぎ娘が出せるけれど」
「今はつぎはぎ娘がいないからね」
「だからね」
「そちらはね」
「どうしようかしら」
 ジュリアが考えているとです、ミュージッカーがです。
 ジュリアの肩を指でちょんちょんと突いてです、あるものを出してきました。それは楽譜とそれに合わせた歌詞でした。
 楽譜は植物達が奏でている音楽と一緒でした、ジュリアはその楽譜と歌詞を見て言いました。
「貴方が作詞をしたの」
「そうだよ」
 まさにという返事でした。
「作詞も出来るんだよ」
「そうだったのね」
「ではどうかな」
「じゃあこの歌詞でね」
「今からだね」
「皆で歌おうかしら」
「何枚も持っているからね」
 ミュージッカーは歌詞が書かれた楽譜をさらに出しました。
「皆も読みながらね」
「歌うんですね」
「そして踊って」
「ダンスの振り付けは僕に合わせてね」
 こちらのお話もするのでした。
「いいね」
「ああ、ダンスもですか」
「そちらも考えてくれたんですか」
「そうだよ」
 ミュージッカーは五人に笑顔で答えました。
「こうしたことは得意だしね」
「流石ミュージッカーさんですね」
「こうしたことは得意なんですね」
「いつも音楽と一緒にいるだけに」
「それで、ですね」
「歌もダンスも考えられるんですね」
「そうだよ、では皆で歌って踊って楽しもう」
 ミュージッカーは笑顔で言いました。
「いいね」
「わかりました」
「それじゃあ今から皆でね」
 五人が応えてジュリアも言いました。
「歌とダンスを楽しみましょう」
「それじゃあね」
「これから皆で」
 ジャックと木樵が応えました、そしてです。
 皆で歌と踊りを楽しみました、それは長い時間でしたが。
 その後で、です。ジュリアは歌って踊って満足したうえでミュージッカーに言いました。
「まさかここでダンスパーティー出来るなんてね」
「思わなかったんだね」
「ええ、このままずっとね」
「人魚の国に行くって言ってたね」
「そうすると思っていて」
「ダンスパーティーは」
「あるなんて思わなかったわ」
 とてもというのです。
「本当にね」
「オズの国の旅だからね」
「何時何があるかわからない」
「そうだよ、何が起こるかね」
「そうよね、だから」
「こうしたこともあるんだよ」
 ダンスパーティーもというのです。
「そういうことだよ」
「言われてみればそうね」
 ジュリアも納得しました。
「それじゃあ」
「納得してくれたね」
「楽しんだ後でね」
 そのうえでというのです。
「そうなったわ、それでだけれど」
「それで?」
「貴方はこれからどうするの?」
 ジュリアはミュージッカーにあらためて尋ねました。
「一体」
「ひょっとして」
「特に予定はないみたいだし」
 旅の行く先はというのです。
「よかったら私達と」
「いやいや、何も決めていないから」
「決めていないから?」
「うん、ジュリアさん達と一緒に行くことはしないよ」
「あくまでなのね」
「そう、気の赴くままの旅を続けるよ」
 ミュージッカーはジュリアに歌う様に述べました。
「そうさせてもらうよ」
「それじゃあ」
「うん、またね」
「機会があったらね」
「会おうね」
「それじゃあ」
「僕はもう暫くここにいるよ」
 音楽を奏でる植物達のところにというのです。
「そして楽しんでいるよ」
「私達は東に行くから」
 人魚の国に向かってというのです。
「また縁があって会ったらね」
「うん、その時はね」
「宜しくね」
「こちらこそね」 
 お互いに笑顔でやり取りをしてでした、そのうえで。
 皆はミュージッカーとお別れの挨拶をしました、そうして笑顔で手を振り合って別れました。その別れの挨拶の後で。
 皆は再び歩きはじめました、音楽は次第に遠のいていき聴こえなくなりました。完全に聴こえなくなってからでした。 
 神宝はしみじみとしてです、こうしたことを言いました。
「まさかミュージッカーさんにお会いするなんて」
「思わなかったわね」
「はい、カドリングの人なので」
「人は縁で会うものだから」
「それで、ですね」
「会うものなのよ」
 思わないところで、というのです。
「そういうものなのよ」
「人と人は」
「そうなの」
 ジュリアはこう神宝にお話しました。
「私も正直ここでお会いするとは思わなかったわ」
「誰もが予想しなかったよ」
「全く以てね」
 かかしと木樵の動きはまだダンスのそれが残っています。
「あそこで彼に会うなんて」
「想像も出来なかったよ」
「けれど会ってお互いに楽しめる」
 ジャックの口調は歌っている感じです。
「それがオズの国なんだよね」
「うん、音楽も楽しめたし」
 モジャボロはとてもにこにことして満足しているのがわかります。
「よかったよ」
「いや、カドリングにいる人とマンチキンでお会いする」
 カルロスはサンバの動きです。
「人の出会いって奇妙な縁ですね」
「何時何処で誰と会えるかわからないのは」
 ナターシャは何処かバレエになっています。
「人ではわからないのね」
「神様が決めることなんだろうね」
 ジョージはラップの趣があります。
「そうしたことについては」
「そうよね、私達もオズの国に来ていることも」
 恵梨香の踊りは日舞です。
「かかしさん達と偶然だったし」
「あの偶然は偶然じゃなくて」
 神宝は京劇の踊りでかなり派手です。
「神様の力だったんだね」
「全ての出会いがそうよ」 
 ジュリアはミュージッカーとの出会い、五人がかかし達と出会ってオズの国に来たこと全てを含めてお話しました。
「まさに神様の配剤なのよ」
「そうしてですね」
「出会ってそうしてですね」
「楽しい時間を過ごす」
「そうしたものなんですね」
「そこから人生も変わったりして」
「そうよ、私にしても」
 他ならぬジュリア自身もというのです。
「これまで多くの出会いがあってだったから」
「僕もドロシーと会わなかったら」
「僕もだよ」
 かかしと木樵も言うのでした、少ししんみりとなって。
「果たしてどうなっていたか」
「わからないしね」
「あのままあの森の中で錆びていたままだったかもね」
「畑にいたままだったかも知れないよ」
「僕もドロシーと会わなかったら」
 モジャボロにしてもそうでした。
「オズの国に来ていたかな」
「僕もオズマがいなかったらだよ」
 ジャックも言いました。
「生まれていなかったかもね」
「皆がこうしてここにいるのは」
 ジュリアがあらためてです、歩きつつ言いました。
「神様がそうさせてくれたのよ」
「それぞれの出会いからだね」
「それでだね」
「そう思うわ、私が王宮に入って皆と一緒にいるのも」
 このこともというのです、かかしと木樵に応えての言葉です。
「出会いからだからね」
「どういう出会いだったんですか?」
「ええ、王宮のシェフの人に都の市場でお会いして」
「それでだったんですか」
「私のお家は市場で喫茶店をやってるけれど」
「そこにシェフの人が来られて」
「接客がいいって言われてね」
 そしてというのです。
「王宮の侍女に誘われたの」
「それで、ですか」
「王宮の侍女になったの」
「その出会いからですね」
「この出会いも偶然じゃなくて」
「やっぱりですね」
「ええ、神様の配剤だったのよ」
 それだというのです。
「そして王宮にいるから」
「人と人の出会いはですね」
「神様が動かしているのよ」
「オズの国でもですね」
「オズの国の神々がね」
「そうなんですね」
「全てがね」
 何といってもというのです。
「神様のされていることなのよ」
「結局人がわかること、出来ることは少ないんだ」
 かかしは右手の人差し指を立ててこの言葉を出しました、見ればもう皆歌や踊りからリズムは消えています。
「どんな賢い人、立派な人でもね」
「そうなんだよね、人間はね」 
 木樵も腕を組んで言うのでした。
「出来ることって少ないんだよね」
「誰でもね、だから出会いなんて」
 ジュリアのしみじみとした口調は変わりません。
「人ではわからないわ」
「偶然と思っていても」
「そう、それは神の御業よ」
 ジャックにもお話しました。
「まさにね」
「そういうことだね」
「そして私達もね」
「こうして一緒にいるんだね」
「そうなるわね、けれどね」
「けれど?」
「いえ、踊って歌っていたから」
 だからだというのでした。
「今日はいつも以上にお腹が空いてるわね」
「そうですね、確かに」
「いつも以上にです」
「お腹が空いてます」
「もうお腹ぺこぺこです」
「夜になったらもう」
 五人もこうジュリアに言います。
「今夜はお腹一杯食べたいですね」
「お腹に溜まるものを」
「そんな気分です」
「果たして何を食べるのか」
「それも問題ですよね」
「ええ、本当に何を食べようかしらね」
 笑顔で言うジュリアでした。
「一体」
「ううん、ふと思いついたけれど」
 ここでモジャボロが出したメニューはといいますと。
「ハンバーガーはどうかな」
「ハンバーガー?」
「あれを色々な種類を一杯出してね」
 そうしてというのです。
「食べたらどうかな」
「そうね、ハンバーガーならね」
 ジュリアはモジャボロの言葉に頷いて言いました。
「沢山食べられて」
「お腹に溜まるね」
「そうなるわね」
「それじゃあね」
「ええ、わかったわ」
 確かな顔になってです、ジュリアはモジャボロに答えました。
「夜はハンバーガーにするわ」
「そうしようね」
「そしてね」
「そして?」
「ハンバーガーだけじゃ足りないから」
 だからというのでした。
「お野菜がね」
「ハンバーガーがお野菜はあまり入っていないからね」
「そう、だからね」
 サラダやトマト、ピクルスを挟んでいますがメインではありません。
「お野菜のお料理も出しましょう」
「じゃあシチューはどうですか?」
 神宝がこのお料理を出しました。
「それは」
「シチューね」
「はい、シチューならお野菜も沢山入っていて」
「いいわね」
「そうですよね」
「ええ、じゃあね」
 ジュリアは笑顔で、でした。神宝に答えました。
「お野菜をたっぷり入れたシチューも出すわ」
「それじゃあ」
「そのうえで皆でね」
 夜になればというのです。
「食べましょう」
「わかりました」
「お腹一杯食べて身体も奇麗にして」
「今夜もですね」
「しっかりと寝ましょう」
「食べて寝て」
「明日も楽しく冒険をするのよ」
 こう言うのでした。
「いいわね」
「今夜もですね」
「ええ、ただ本当にお腹が空いたわね」
 ジュリアは少し苦笑いになってまた言うのでした。
「今日は」
「もうぺこぺこですよね」
「だからね」
 それでというのです。
「今日はね」
「沢山食べて」
「じっくりと寝るのよ」
「いつも通りですね」
「そうしましょう」 
 こうしたお話をしてです、夕方まで皆で進んでいるとふとでした、皆の目の前、煉瓦の道の横にでした。何と。
 温泉が見えました、恵梨香がその温泉を見て言いました。
「よかったらここで」
「今日はなのね」
「はい、お風呂にしませんか?」 
 こうジュリアに提案するのでした。
「どうでしょうか」
「いいわね」
 ジュリアも恵梨香に笑顔で応えました。
「それも」
「そうですよね」
「ええ、温泉はいいわよね」
 ジュリアはにこにことして言うのでした。
「身体が温まってね」
「気持ちもいいですし」
 入っていてというのです。
「だからね」
「ここで、ですね」
「入ってね」
 そしてというのです。
「気持ちよく奇麗になりましょう」
「身体が奇麗になれば」
 神宝も言いました。
「そのうえで芯から温まると」
「いいわね」
「はい、それじゃあ」
「夜になったらって思ってたけれど」
「いえ、もうですよ」
 ここで言ったのはジョージでした。
「夜ですよ」
「そういえばもう暗くなってきてるし」
 夕暮れも終わろうとしています、カルロスは赤から濃紫になろうとしているその中で言ったのでした。
「休むにも」
「いい時間ですね」 
 ナターシャもその夜になろうとしている中で言うのでした。
「じゃあ」
「そうね、少しだけ早いけれど」
「今からですね」
 神宝が応えました。
「お風呂に入って」
「いえ、食べてからでもいいわね」
「どちらでもですか」
「温泉で奇麗になるのは」
「どちらでもですね」
「いいわね、じゃあどちらを先にしようかしら」
 食べるのか温泉かをというのです。
「それが問題ね」
「そうだね、もうね」
 モジャボロが言いました。
「皆お腹ぺこぺこだから」
「食べる必要のある人達は」
「だからね」
 それでというのです。
「ここはね」
「食べる方がいいわね」
「僕はそう思うけれど」
「そうね」
 ジュリアはモジャボロのその言葉に頷きました。
「その方がいいわね」
「ゆっくりたっぷり食べてね」
「それからよね」
「お風呂に入ればいいよ」
 温泉にというのです。
「それでどうかな」
「そうね、何かこうお話している間にも」
 まさにとです、ジュリアは急に力が抜けていくのを感じました。
「お腹が空き過ぎてね」
「動けなくなりそうだね」
「皆はどうかしら」
 ジュリアは限界を感じつつ五人とモジャボロに聞きました。
「もう限界?」
「はい、実は」
「お風呂よりもって気分です」
「正直に言いまして」
「まずは御飯食べたいです」
「お腹一杯」
「僕なんかね」
 モジャボロに至っては困った笑顔になっています。
「一歩もだよ」
「そうなのね」
「動けなくなりそうだよ」
 そうした状況だというのです。
「このままね」
「それじゃあ」
「うん、食べたいね」
 お風呂よりもまずというのです。
「そうしたいよ」
「わかったわ、それじゃあね」
「うん、今からね」
「テーブル掛け出すわね」
「そしてだね」
「そうよ、ハンバーガーとシチューを出すわ」 
 先程お話をした通りにというのです。
「それと飲みものもね」
「ハンバーガーといえば」
 神宝が言うにはです。
「やっぱりコーラかな」
「そちらにしたいのね」
「そう思いましたけれど」
「不思議とね」
 ジュリアもコーラについて言うのでした。
「あれはハンバーガーに合うのよね」
「そうですよね」
「本当に不思議な位」
「じゃあ僕もコーラがいいよ」
「僕もだよ」
「私もコーラにするわ」
「私もよ」
 ジョージ、カルロス、ナターシャ=恵梨香もコーラがいいと言うのでした、こうして飲みものも決まったのですが。
 ふとです、ジャックが皆でテーブル掛けを出して敷いてそこにメニューを出す中でこんなことを言いました。
「そういえばコーラってどうして作るのかな」
「ああ、そのことだね」
「ちょっとわからないけれど」
「あれはね」 
 神宝もそう言われると首を傾げさせるのでした。
「何か企業秘密らしくて」
「企業秘密?」
「そうらしくてね」
 それでというのです。
「よくわからないらしいよ」
「そうなんだ」
「僕達の世界ではそうなんだ」
「そうだったんだ」
「うん、そうだよ」
「じゃあオズの国では」
「オズの国ではね」
 ジュリアがかかしにお話しました。
「普通にコーラの実があってね」
「それからなんだ」
「実を絞って作るから」
「じゃあコーラの実もだね」
「食べられるわ」
 そちらもというのです。
「ちゃんとね」
「そうなんだ」
「コーラの実はコーラの味がするわよ」
「ふうん、それは面白いね」
「オズの世界のコーラはそうなの」
「外ですと」
 神宝は彼等の世界のことをお話するのでした。
「そうはいかないんですよね」
「どうして作られてるか不明なのね」
「はい、企業秘密で」
「コーラを作っている会社で」
「全然わからないんです」
「企業の人達だけが知ってるのね」
 ジュリアもその事情を納得しました。
「オズの国とは違うのね」
「むしろオズの国のコーラの方が」
「わかりやすいわね」
「そう思います」
 神宝はジュリアに答えました。
「本当に僕達の世界のコーラはどうして作っているんでしょうか」
「あれ不思議だよね」
「オズの国位にね」
「どうして作ってるのかしら」
「そして誰が考えたのかしら」
 四人も考えますがわからないことでした、コーラのことは。
 そしてです、とえりあえずは皆でハンバーガーとシチューを食べてコーラを飲みました。そのコーラは確かに美味しくて。
 ジュリアも飲んで笑顔で言いました。
「美味しいわ」
「そうですね」
「オズの国のコーラも」
「こちらもですね」
「しっかりと美味しいですね」
「炭酸も効いていて」
「この炭酸もいいのよね」
 ジュリアは飲みながらまた言いました。
「本当に」
「ですよね」
「ハンバーガーとも合って」
「幾らでも飲めます」
「物凄くいいです」
「こちらも」
「ハンバーガーもね」
 モジャボロはハンバーガーを頬張りつつ言いました。
「いいね」
「はい、こちらも」
「どんどん食べられます」
「この調子だとすぐにお腹一杯になりますね」
「シチューもありますし」
「満足出来そうです」
「ハンバーガーはね」 
 モジャボロはハンバーガー自体のお話もしました。
「これでお腹にたまるんだよね」
「ボリュームがあるのよね」
 ジュリアがその理由を言いました。
「ハンバーグやスパム、ベーコンのお陰で」
「そう、だからね」
「食べるとね」
「ボリュームがあるんだよ」
 モジャボロは三段のハンバーガーを食べています、ハンバーグにスパム、そして厚く切って焼いたベーコンが挟まれています。
「この三段のハンバーガーなんて特にね」
「ええ、それは特によね」
「食べるとね」
「ボリュームがあってね」
「すぐにお腹一杯になるわ」
「これはいいね」
 モジャボロはにこにことさえしています、ハンバーガーを食べつつ。
「満足出来るよ」
「ええ、それでね」
「食べ終わったらね」
「後はね」
「お風呂だね」
「順番に入りましょう」
 ジュリアは温泉の方を見つつモジャボロにも五人にも言いました。
「男の子と女の子で」
「そうするんだね」
「ええ、私とナターシャと恵梨香で」
 女の子達はです。
「男の子はね」
「僕とジョージ、神宝、カルロスだね」
「お互いに別れてね」
「それがいいね」
「それじゃあ御飯の後は」
 ハンバーガーとシチュー、コーラのメニューのそれのおです。
「それぞれ別れてね」
「入ってあったまって身体も奇麗にして」
「寝ましょう」
「そうしようね」
「ええ、順番は」
「さて、それが問題だけれど」
 モジャボロはジュリアの言葉を受けて考えだしました。
「どうしようかな」
「まあ大したことじゃないけれどね」
「順番は決めないと駄目だからね」
 かかしと木樵がこう言いました。
「一緒に入るのはちょっとね」
「よくないしね」
「お風呂は男の子と女の子別々にだよね」
 ジャックも言います。
「そうして入るべきだからね」
「水着を着て入ればいいけれど」 
 ジュリアは解決案も出しました。
「身体を奇麗にするから」
「全身をね」
「この場合は水着を着ない方がいいから」
 つまり裸になるからだというのです。
「別々に入った方がいいわ」
「うん、じゃあどうして決めようかな」
 モジャボロはあらためて言いました。
「ここは」
「じゃんけんとか?」
「くじ引きとか?」 
 ナターシャと恵梨香はそれぞれの選び方を述べました。
「そういうので決めたら?」
「そうよね」
「コインの表裏とかね」
「そういうのでもいいね」
「恨みっこなしってことで」
 ジョージと神宝、カルロスも言います。
「まあ何でもね」
「そういうので決めていいんじゃ」
「軽くね」
「まあ先に入る入らないなんて大したことじゃないし」
 モジャボロはまた言いました。
「どっちにしろ入るんだしね」
「そうなのよね」
 ジュリアは温かいシチューを食べつつ応えました。
「結局は」
「じゃあどうして決めようか」
「そうね、私ともじゃボロさんでじゃんけんなりくじ引きなりコイントスなりして」
「そうしてだね」
「決める?」
「それじゃあそうしようか」
 モジャボロはジュリアの提案に頷きました。
「これから」
「そうね、じゃあ」
「食べた後すぐに」
「そうしましょう」
「具体的には何をして決めるか」 
 今度はそうしたお話になりました。
「それはどうしようか」
「そのお話もあるわね」
「うん、どうしようかな」
「じゃんけんでいいかしら」
 ふと思ってです、ジュリアは答えました。
「それで」
「じゃんけんだね」
「ええ、結局決めることは決めるし」
「じゃあじゃんけんで」
「そうしましょう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 ジュリアとモジャボロの二人で、です。御飯の後でじゃんけんをしました。その結果女の子達が先に入ってです。この日も寝る人達はぐっすりと寝ました。



今更ながら、旅をしていてもちゃんとした食事が取れるのは良いよな。
美姫 「確かにね。あのテーブル掛けは凄いわよね」
だよな。ちょっと所か、かなり欲しいな。
美姫 「そうよね。さて、今回も順調に進んでいるわね」
良い事じゃないか。
美姫 「まあね。このまま何事もないのが一番なんでしょうけれど」
さてさて、どうなっていくのか。
美姫 「次回も待っていますね〜」
待っています。



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