『オズのジュリア=ジャム』




                 第五幕  大掃除

 皆でマンチキンの国を東に東に進んでいきます、その中で。
 一行は今度は少し大きい町に入りました、煉瓦の道の少し離れたところにです。
 青い城壁に囲まれて町があったのです、神宝はその町を見て言いました。
「もうすぐお昼ですよね」
「ええ、そろそろね」 
 ジュリアは懐から時計を取り出して時間をチェックしてから神宝に答えました。
「時間よ」
「それじゃあお昼は」
「あの町に入って」
「そうして食べませんか?」
「そうね、町に入って食べるのもね」
 それもとです、ジュリアは笑顔で応えました。
「いいから」
「それじゃあ」
「ええ、今からあの町に入ってあそこでお昼を食べましょう」
 こうしてです、皆はその町でお昼を食べることになりました。そして町の方に歩いていって門のところに行ってです。
 門番の人に挨拶をしてもらって入れてもらうとです。
 奇麗な整然とした青い壁と屋根のお店が並んでいました、そのお店を見回してです。
 かかしがにこりとしてです、こう言いました。
「奇麗に並んでいるね」
「うん、家々もお店もね」
「整然としてるよね」
 かかしに木樵とジャックが応えました。
「道も整っていてね」
「チェスのボードみたいになっていていいね」
「こうした町は整えやすいんだよね」
 かかしは町の区画を見て言うのでした。
 そしてジュリアもです、笑顔で言いました。
「事前に町の区画をして家やお店を立てていくと町は整えやすいのよね」
「オズマもよく言ってるね」
「ええ、町も村も事前の準備だってね」
「造る前にね」
「本当にその通りね」
 ジュリアはモジャボロに応えて言うのでした。
「何でもね」
「若し町の人が増えたら」
 恵梨香はここで言いました。
「どうするのかしら」
「城壁を一旦どけて広げる場所を区画してね」 
 ジュリアは恵梨香の疑問に答えました。
「また城壁で町を囲むの」
「そうして町を広げていきますよね」
 ナターシャはジュリアのその言葉に頷きました。
「昔の町の拡げ方ですね」
「町は城壁に囲まれていたからね」
 しみじみとです、ジョージは言いました。
「そうして拡げていっていくんだよね」
「城壁の外は町じゃないからね」
 カルロスはこの考えを言うのでした。
「城壁は一旦どけないと」
「うん、しっかりした区画をして奇麗な町のままにしたいならね」 
 最後に神宝が言いました。
「城壁をどける位はしないと」
「きちんとしたいのなら手間暇は惜しまないことよ」
 ジュリアは五人にお話しました、皆でその左右対称でかつチェスのボードみたいに道が縦と横に並んでいてその道に囲まれて家やお店が並んでいる町の中を歩きつつ。
「城壁をどける位はね」
「もう厭わないで」
「そうしてですね」
「きちんと区画をして」
「そうしてやっていかないといけないですね」
「奇麗なままでいたいなら」
「そうよ、整理整頓になるかしらね」
 この場合はというのです。
「そうしないとね」
「そうしたらこの町みたいにですね」
「奇麗になるんですね」
「奇麗なままでいられる」
「事前によく考えて区画をして」
「それで手間暇をかけることですね」
「そうよ、まあそうしたお話はこれ位にして」
 それで、というのでした。
「今からね」
「はい、お昼ですね」
「皆で食べましょう」
「何処かのお店に入って」
「そうしてですね」
「美味しいものを」
「ええ、さて今日は何を食べようかしら」
 ジュリアが町の中を見回してお店を探しているとです。
 ふとロシア料理のレストランを見付けて皆に言いました。
「あそこにしようかしら」
「ロシア料理だね」
「ええ、あそこはどうかしら」
 木樵に応えました。
「ふと目に入ったけれど」
「僕は食べる必要がないからこれといって言えないけれど」
 それでもとです、木樵はジュリアに答えました。
「皆が食べたいならね」
「それならなのね」
「それでいいんじゃないから」
「そういえば最近ロシア料理は食べていないんじゃ?」
 ジャックはこう言ってきました。
「僕が見た限りだけれど」
「そういえばそうね」
 ジュリアはジャックの言葉でこのことに気付きました。
「それじゃあ」
「うん、ナターシャも喜ぶだろうし」
 かかしはナターシャを見て言いました、小さなお友達の一人を。
「いいと思うよ」
「最近中華料理にアメリカ料理にで」
 ジュリアは言いました。
「それならね」
「丁度いいタイミングだね」
「今朝はお握りだったし」
 和食です、言うまでもなく。
「ハヤシライスとかも食べてるし」
「これも日本の食べものだね」
「今晩はシェラスコを食べるつもりだし」
 こちらはブラジル料理です。
「それなら」
「よし、じゃあお昼はロシア料理にしよう」
 モジャボロもジュリアに言いました。
「ナターシャのお国でね」
「ええ、そうしましょう」
 ジュリアはナターシャにお顔を向けて皆に答えました、見ればナターシャはジュリアの決断ににこりとなっていました。
「それじゃあね」
「よし、じゃあ僕達は一緒のテーブルにいてね」
「皆が食べる姿を見せてもらうよ」
「いつも通りね」
 かかしと木樵、ジャックはこう言ってでした。
 そのうえで皆でロシア料理のレストランに入ってでした、そうして。
 ジャガイモが沢山入った濃いサラダとビーフストロガノフにボルシチ、鱒のフライに黒パンとクッキーの様に固いケーキをデザートに頼んでです。ロシアンティーをジャムを舐めつつ飲みながらです。
 皆でロシア料理を楽しみました、その後で。
 町を散策して楽しんでいましたが町の北東の端のかなりの部分を占める建物の前で、でした。人々が困っていました。
「参ったね」
「全くだね」
「こんなことになるなんて」
「どうしたものかな」
「急にだからね」
「あれっ、どうしたのかしら」
 恵梨香は困っている人達を見てでした、まずは何かと思いました。
 それで、です。その人達のところに行って尋ねました。
「一体どうしたんですか?」
「うん、図書館がね」
「大変なことになっているんだ」
 皆その大きな建物を見つつジュリアに答えました。
「もうね」
「酷いことになっていて」
「図書館の中の本がね」
「本棚から出て滅茶苦茶になっているんだ」
 そうした状況だというのです。
「これをどうしようか」
「けれど床に落ちている本が多過ぎて」
「具体的にどうするか」
「どうして収めようかってね」
「考えているけれど」
「これがね」
 どうにもというお顔でジュリアにお話するのでした。
「あんまりにも酷い状況だから」
「もう何から手をつけたらいいかわからなくて」
「僕達図書館の書士だけじゃ人手がとても足りなくて」
「途方に暮れているんだ」
「でしたら」
 ジュリアはすぐに決断して書士の人達に答えました。
「私達がお手伝いさせてもらいます」
「片付けを手伝ってくれるんだ」
「そうしてくれるんだ」
「はい」
 是非にという返事でした。
「そうさせてもらいます」
「あっ、ジュリアさんじゃないか」
「ああ、そうだね」
 書士の人達はここでジュリアのお顔をよく見て気付きました。
「都の王宮の侍女さんの」
「今回は冒険でここまで来たのかな」
「かかしさんや木樵さんもいるね」
「ジャック君もモジャボロさんも」
「それとあの子達は」
「確かオズの国の名誉市民の」
「あの子達だね」
「五人の」
「はい、そうです」
 その五人が答えました。
「僕達外の世界から来ています」
「今回も冒険させてもらっています」
「ジュリアさん達と一緒に」
「そうさせてもらっています」
「今はこちらにいます」
「そうか、それで君達もかな」
 書士の人のうちの一人が五人に言いました。
「手伝ってくれるのかな」
「そうさせてもらっていいですか?」
「僕達も」
「お困りみたいですし」
「困っている人達は助けさせてもらう」
「そうするものですから」
「それじゃあ悪いけれどね」 
 それならというのです、そしてです。
 五人も図書館の本をなおすことに参加することになりました、そして皆で図書館の中に入るとその中はといいますと。
 とても広い図書館の中がです、もう滅茶苦茶になっていました。あちこちの本が床に落ちて床が見えなくなってさえいました。
 その惨状を見てです、かかしは首を傾げさせて言いました。
「どうしてこうなったのかな」
「はい、実はです」
「昨日の夜この町の下でとても大きなドラゴンが歩いていたらしくて」
「それでなんです」
「町全体が揺れたんですが」
「その結果です」
「図書館も揺れて」
 そうしてというのです。
「もうです」
「本が落ちまして」
「それで、です」
「こんな風になりました」
「地下のドラゴンがだね」
 かかしも事情がわかって言いました。
「この辺りにそんな大きなドラゴンがいたんだ」
「はい、物凄く大きくて」
「何でも野球場位の大きさがあるとか」
「青龍様程大きくはないですが」
「相当に大きくて」
「たまたま町の下に来てです」
 そうしてというのです。
「動いているだけで地鳴りがして」
「それで、なんです」
「町が大きく揺れて」
「図書館もこの有様です」
「町は平穏だったけれどね」
 木樵はとても奇麗な町のことを言いました。
「奇麗でね」
「朝早くからお昼前までです」
「町の人皆で頑張って奇麗にしました」
「あちこちのお家やお店のものが落ちましたが」
「それをです」
「皆で奇麗にしたんです」
 そうしたというのです。
「いや、本当に」
「大変でした」
「それで今度は図書館をって思いましたが」
「ここが特に酷くて」
「どうしようかとです」
「困り果てていまして」
「こんな有様で」
 書士の人達は実際に困り果てたお顔になっています、そして。
 木樵はふと気付いてです、書士の人達に聞きました。
「あの、町の他の場所は」
「図書館以外のですね」
「他のお家やお店はですね」
「そして施設は」
「そう、そうした場所はどうだったかな」」
 こう聞いたのでした。
「一体」
「何とかです」
「他のお家やお店は何とかなりました」
「官公庁の方も」
「ここ以外の場所も」
「それじゃあここが最後なんだね」 
 図書館がだとです、木樵は納得して頷きました。
「それじゃあ皆で頑張って元に戻そう」
「はい、本は一冊一冊収める棚があります」
「それぞれの分野によって」
「そこを守って下さいね」
「ただ収めるだけでなく」
「わかたよ、ただ凄い荒れ様だから」
 木樵はあらためて言いました。
「書士の人達と僕達だけだと」
「かなり時間がかかりそうだね」 
 ジャックも言いました。
「ここは」
「そうね、私達は十人で」
 ジュリアはまずは自分達の数からお話しました。
「書士の人達は」
「十五人います」
「合わせて二十五人ですね」
「それだけですね」
「二十五人でこの図書館の本を全部収めるとなると」
 決められた本棚にそれぞれです。
「かなりの時間がかかるわね」
「ええと、図書館のフロアーは」
 神宝が書士の人達に尋ねました。
「ここだけですか?」
「いや、上は五階建てでね」
「地下は二階あるんだ」
「合わせて七階だよ」
「それだけあるよ」
「七階全部がこうだと」
 神宝も考える顔になりました。
「二十五人だと」
「とてもね」
 それこそとです、ジュリアも言いました。
「足りないわね、人手が」
「そうですよね」
「こんなに多いと」
 それこそというのです。
「大変だから」
「どうしましょうか」
「人手が足りないから」
 それで、と言うジュリアでした。
「そこを何とかするしかないわね」
「よし、じゃあね」 
 かかしがここでアイディアを出しました。
「町の皆にね」
「助っ人を頼もう」
 木樵も言いました。
「多分この図書館は明日皆が利用出来る様にしないといけないからね」
「僕達で今日中は無理だしね」
 ジャックが見てもそうです。
「それならね」
「やっぱりですか」
「人手が必要ですか」
「私達以上に」
「そうなりますか」
「僕もそう思うよ」
 ジャックも言うのでした。
「こんな状況が七階もだと」
「一階に何十人か必要でね」 
 かかしがさらに言いました。
「図書館をよく知っている書士の人が各階にいて」
「我々がですか」
「うん、それでどの本を何処に収めるか言いながらね」
 なおす人達にです。
「そうしていくべきかな」
「我々がお話して」
「そのうえで、ですか」
「各階単位でなおしていく」
「そうしていくべきですか」
「これがいいんじゃないかな」
 かかしはこうお話しました。
「どうかな」
「そうですね、こんな状況が全階ですから」
「地上の五階と地下の二階全てが」
「しかもこの図書館は敷地面積も広いですし」
「その分蔵書も膨大ですからね」
「それならだよ」
 もう是非にというのです。
「人を集めてね」
「そうしてですね」
「一階一階ですね」
「私達が別れてですね」
「手分けしてなおしていく」
「そうすべきですね」
「それでは」
 書士の人達もです、ここまでお話を聞いてでした。
 頷き合ってです、こう言いました。
「わかりました」
「それでやらせてもらいます」
「人を集めて各階で手分けしてなおしていきましょう」
「そうしていきましょう」
「それじゃあまずは人に来てもらおう」
 木樵も再び言いました。
「これからね」
「問題は人がです」
「ここにいないことですね」
「我々以外は」
「そのことが問題ですが」
「うん、どうして集めるかだね」
 木樵も書士の人達と一緒に考えるのでした。
「具体的に」
「皆街の他の場所の片付けをやっと終えてです」
「お昼も食べてです」
「今はお昼寝の時間ですね」
「この街は午後はお昼寝をするんで」
「それでなんです」
「今は人手が」
「それは困ったね、お昼寝をしている人は起こしたら可哀想だね」 
 心優しい木樵にそうした人を起こそうなんて考えられる筈がありません、ですからこう言ったのです。
「やっぱり」
「はい、ですから」
「これをどうするかですよね」
「果たして」
「もう街の人達は寝ていますから」
「一体」
「いや、やり方はあるよ」 
 ここで言ったのはモジャボロでした。
「街の皆が寝ていてもね」
「人を集めることは出来る」
「そうなんですか」
「うん、僕のラブ=マグネットを使えばね」
 モジャボロの秘密兵器です、これを出せば誰もが彼を好きになってくれるという。
「街の皆が寝ていても来てくれてね」
「それで、ですか」
「皆が手伝ってくれる」
「そうしてくれるんですか」
「そうだよ、じゃあ早速出すから」
 そのラブ=マグネットをというのです。
「そうするからね」
「そしてですか」
「早速ですか」
「ラブ=マグネットを使われてですね」
「寝ている街の人達に来てもらって」
「そのうえで」
「うん、手伝ってもらおうね」
「それで来てくれた人達には後で事情をお話してお礼をして」
 ジュリアも言いました。
「それでいいかしら」
「そうだね、それでね」
「いいんじゃないかな」
「僕もそう思うよ」
 かかしと木樵、モジャボロはジュリアに応えました。そしてです。
 モジャボロは早速ラブ=マグネットを出してでした。それをかざすとです。
 街の人達が寝巻き姿で寝たまま靴を履いて図書館に来てくれました、ジュリア達は図書館の前に出てその街の人達を出迎えてでした。
 各階で書士の人達の言うまま動いてくれました、勿論ジュリア達もその中にいてせっせと働いてでした。
 夕方にはです、完全にでした。
「元に戻りました」
「本は全部元の棚に戻りました」
「そしてお掃除も出来ましたし」
「万々歳ですよ」
「あんなに大変な状況だったのに」
 神宝はすっかり奇麗になった図書館の中を見て驚いていました。
「もう元に戻ったなんて」
「何日かかるかって思ったのに」
 ジョージも驚きを隠せていません。
「夕方に終わるなんて」
「皆でやったからだね」 
 カルロスはそれが出来たのは何故かと言いました。
「それでだね」
「街の人達が総出でお手伝いしてくれたから」
 ナターシャの口調はしみじみとしたものでした。
「だからよね」
「そうよね、私達だけじゃとてもね」
 最後に恵梨香が言いました。
「夕方までには終わらなかったわ」
「本当に沢山の人達が手伝ってくれたから」
 ジュリアはすっかり奇麗になった図書館の中を見て笑顔になっています。
「こうして出来たのよね」
「そうだよ、すっかり奇麗になったね」
「大変な状況が元に戻ってね」
「お掃除も出来たし」
 かかしと木樵、ジャックもにこにことしています、疲れることがない三人は休憩をすることなくキビキビと動いていました。
「やっぱり人手があったからだね」
「こんなに早く出来たんだね」
「あんな有様だったけれど」
「人が少ないと無理なことでもね」
 モジャボロも言います。
「皆がいれば出来るんだよね」
「その通りね、それじゃあね」
 ジュリアはここでこう言いました。
「手伝ってくれた街の人達に事情をお話してね」
「そしてですね」
「ええ、皆でね」
 それこそというのです。
「お礼をしましょう」
「わかりました」
「さて、お礼だけれど」
 ジュリアは神宝にお話をしました。
「もう考えてあるの」
「どういったものですか?」
「もうすぐ夜でしょ」
 ジュリアはにこりとしてです、お日様を見ました。夕陽は今にも大地から姿を消してお月様が出てきそうです。
「だからね」
「それで、ですか」
「そう、御飯の時間だけれど」
「あっ、その御飯をですか」
「出しましょう」
「テーブル掛けで、ですね」
「テーブル掛けは何でも幾らでも出そうと思えば出せるから」
 そうした魔法の品だからだというのです。
「ここは沢山出してね」
「街の人達にですね」
「お礼をしましょう」
「そうされるんですか」
「そう、そして皆で美味しく食べられるものといえば」
 さらに考えて言うジュリアでした。
「バーベキューかしらね」
「あっ、バーベキューですか」
「あれなら皆で食べられますしね」
「楽しく賑やかに」
「それならですね」
「街の人達も喜んでくれますね」
 神宝達五人もバーベキューが好きなので笑顔で応えます。
「それじゃあ今からですね」
「テーブル掛けからバーベキューを出して」
「そうしてですね」
「街の人達に食べてもらうんですね」
「それで私達もですね」
「今晩の御飯は」
「そうよ、皆で食べるからね」 
 だからというのです。
「バーベキューよ」
「わかりました」
 五人で応えてです、そしてでした。
 ジュリアはテーブル掛けからとんでもない量の、本当に街の人達皆がお腹一杯食べられるだけの量のバーベキューを出しました。おやつの時間には起きていて事情を聞いてからまたお手伝いをしていた街の人達もです。
 そのバーベキューの量に驚いてです、ジュリアに言いました。
「こんなに沢山だなんて」
「お礼っていうけれど」
「これはまた凄いお礼だね」
「まさかこれ程までなんて」
「思いもしなかったわ」
「というかお礼もね」
 これ自体もというのです。
「別にいいし」
「街のことだからそうするのは当然よ」
「図書館はこの街の大事な場所の一つだし」
「そこを何とかするのは当然だよ」
「それでお手伝いもないし」
「起こして言ってくれてもよかったから」
 このことも問題なかったというのです。
「それでお礼なんて」
「それもこんなに美味しそうなバーベキューなんて」
「別にいいわよ」
「ここまでは」
「いえ、私達の気持ちですから」
 ジュリアは謙遜する街の人達ににこりと笑って答えます。
「是非です」
「食べて欲しい」
「そう言うんだ」
「この沢山の美味しそうなバーベキューを」
「今から」
「そうして下さいね」
 是非にというのです。
「これから」
「僕からも頼むよ」
「皆是非食べて」
「遠慮しなくていいからね」
「僕達も食べるしね」
 書士の人達も言います。
「折角手伝ってくれたんだから」
「それも寝ている時にね」
「そうしてもらったから」
「是非ね」
「そうしてね」
「そこまで言うのなら」
 街の人達は書士の人達に言われてでした、そのうえで。
 皆で、です。頷き合ってそうしてでした。
 ジュリア達の好意を受けることにしてバーベキューを食べることにしました、勿論ジュリア達も書士の人達も食べます。
 そのバーベキューを食べてです、ジュリアは言うのでした。
「こうしてパーティーにして食べるのも」
「はい、美味しいですね」
「それも凄く」
「歌や踊りも出てきましたし」
「いいですね」
「最高の気分ですね」 
 五人もジュリアと一緒に食べながら応えました。
「こうした時はバーベキューですね」
「皆で食べられますし」
「幾らでも食べられて」
「楽しくお喋りも出来て」
「気分よくいられますね」
「だからバーベキューにしたけれど」
 それでもというのです。
「これもいいわね」
「そうだね、しかもね」 
 モジャボロはビールも飲んでいます、大ジョッキでそれを飲みつつ言うのでした。
「お酒にも合うしね」
「ビールにもなのね」
「うん、この組み合わせもいいんだ」 
 バーベキューにビールもというのです。
「焼いたお肉やお野菜、ソーセージとかとね」
「ビールは合うのね」
「そうなんだ、だからね」
「モジャボロさんは今飲んでるのね」
「こうしてね」
 楽しくというのです。
「そうしているんだ」
「大人の楽しみ方ね」
「そうだよ」
 バーベキューのというのです。
「これもまたね」
「ビールなのね」
「君達もアルコールの入っていないものですかな」
 そうしたビールでというのです。
「楽しんだらどうかな」
「そうですね、僕達はです」
「サイダーやコーラがありますから」
「別に、ですね」
「ビールはいいです」
「そうした飲みものやジュースで」
 五人共お酒は遠慮するというのでした、そしてジュリアもです。
 マンチキン独特のとても濃い青の葡萄ジュースを飲みながらです、モジャボロに対して言うのでした。
「私もね」
「その葡萄のジュースがあるからだね」
「ええ、ビールはいいわ」
 アルコールの入っていないそれでもというのです。
「こちらでね」
「そうななんだ、じゃあね」
「ええ、貴方はビールでね」
「君達はそうしたものでね」
「お互いに楽しみましょう」
 飲みものはというのです。
「そうしましょう」
「それじゃあね」
「あとね」
 ジュリアはさらに言いました。
「デザートだけれど」
「それは何かな」
「アイスクリームを出すつもりよ」
 デザートはそれだというのです。
「最後に出すわね」
「ああ、アイスだね」
「こうした時はそれだと思ったから」
「そうだね、外で食べるアイスもね」
「いいでしょ」
「うん、確かにね」
「だからそれを出すわ」
 ジュリアはまた言いました。
「最後はね」
「僕もそれでいいと思うよ」
「それじゃあ」
「ええ、最後でね」 
 そうしたお話をしてでした、皆で。
 最後は実際にアイスクリームを食べてです、楽しい夜を終えました。そしてジュリア達は街の外を出てです。
 そこでテントを出したその中で寝ようとしましたがそこで初老の見事な口髭を生やした恰幅のいい青いスーツの男の人が言ってきました。この街の市長さんです。
「折角ですから」
「といいますと」
「はい、皆さんは今夜はです」
 市長さんはジュリアに言うのでした。
「街のホテルに泊まって頂けますか」
「ホテルにですか」
「図書館をちゃんとする様にして頂いてご馳走もしてくれました」
 だからだというのです。
「ですから」
「いえ、それは」
 今度はジュリアが謙遜して言うのでした。
「あくまで、です」
「当然のことだというのですか」
「はい」
 だからだというのです。
「あまりです」
「いえいえ、そう言われますが」
「違うというのですか」
「街の為にして頂いたので」
「今晩はですか」
「そうです、この街のホテルにお泊り下さい」
 是非にという口調での言葉でした。
「どうか」
「どうしようかしら」
「そうだね」
「これはね」
「ちょっと難しい問題かな」
 かかしと木樵、ジャックがそれぞれお話をしました。
「お礼をしたけれど」
「そのお礼にお礼を返されるとね」
「どうしたものかってなるよね」
「僕達は手伝ってくれたお礼をしたからね」
「それがあのバーベキューでね」
「それで終わったと思ったんだけれど」
「ですから」
 ジュリアも市長さんにお話します。
「もう」
「いえいえ、違います」
「違うとは」
「はい、これは私の好意です」
 そうだというのです。
「ですから」
「だからですか」
「はい、そのホテルは私のホテルでして」
「市長さんの」
「そうです、私がこの街に来た人とお泊めする」
「そうしたホテルですか」
「先程のバーベキューとは別です」
 そこは保証するのでした。
「ですからご安心を」
「お礼やそういうのではなくて」
「私の純粋な好意です」
 それに基づくものだというのです。
「ただ単なる」
「そうですか」
「はい、ですから」
「そのホテルにですね」
「お泊り下さい、晩御飯はもう終わりましたが」
 それでもというのです。
「まだありますね」
「お風呂とですね」
「そうです、ホテルのお風呂は素晴らしいですよ」
 市長さんはジュリアににこりと笑ってお話しました。
「これ以上はないまでに」
「お風呂が」
「そして朝食も出ます」
 こちらのお話もするのでした。
「ですからどうでしょうか」
「ホテルにですね」
「はい、今晩は」
 こうお話するのでした。
「それでどうでしょうか」
「そうですね」
 ジュリアは市長さんのお言葉に少し考えるお顔になりました、そのうえで皆と少しお話をすることにしました。
「どうしようかしら」
「お礼じゃないっていうしね」
「ご好意ならね」
「それにこの街に来た人はっていうし」
「それならね」
 かかしと木樵、ジャック、モジャボロはそれぞれ答えました。
「いいんじゃないかな」
「そうした決まりっぽいしね」
「それにご好意を無下に断っても悪いし」
「折角だから」
「そうね、それじゃあ貴方達は」
 ジュリアは今度は五人に尋ねました。
「どう思うかしら」
「はい、僕達もです」
「いいんじゃないかなって」
「お礼にお礼はどうかって思いますけれど」
「折角のお誘いでしたら」
「それなら」
「わかったわ、貴方達もそう言うのなら」
 皆賛成だとなってでした、ジュリアは市長さんにあらためて応えました。
「でしたら」
「はい、今夜はですね」
「お邪魔させてもらいます」
「お邪魔なぞとんでもないです」
 市長さんはジュリアに笑顔で言葉を返しました。
「この街に来て頂いた方ならですから」
「どなたもですか」
「はい、泊まって頂くので」
 こうしたことになっているというのです。
「ですから遠慮なく」
「ホテルにですね」
「泊まられてです」
 そしてというのです。
「ゆっくりとお休み下さい」
「それでは」
 ジュリアも頷いてでした、そうしてです。
 皆はホテルに案内してもらいました、そこは五人の世界では文句なしに最高級と言っていい位のものでした。 
 そのホテルで案内してもらったお部屋は。
「うわ、これは」
「凄いなんてものじゃないよ」
「王宮の中にいるみたい」
「エメラルドの都にね」
「色は青だけれど」
 緑の宮殿とは色こそ違うけれどです。
「同じ位凄いね」
「このお部屋で一泊なんだ」
「そうしていいんだ」
「お風呂も使っていいっていうし」
「朝御飯もなのね」
「ロイヤルスイートだね」
 ここでモジャボロが言いました。
「このお部屋は」
「最上階にありますし」
「そのレベルのお部屋ですか」
「こんなお部屋用意してもらったなんて」
「悪いですね」
「そこまでしてもらって」
「まあそれは市長さんの好意だね」
 ホテルの持ち主のその人のです。
「そこはね」
「凄いご好意ですね」
「こんなお部屋まで用意してもらって」
「悪い気がします」
「そこまで思ってしまいます」
「どうしても」
「まあそうしたことはあまり思わないでね」
 モジャボロは遠慮する五人に言いました。
「このご好意を受けて」
「今日はこのお部屋で皆で休みましょう」
 ジュリアもにこりと笑って五人に言いました。
「ゆっくりとね、そしてね」
「朝もですね」
「美味しい朝御飯を食べて」
「そのうえで街を出て」
「明日も元気よくですね」
「冒険よ、朝御飯は」
 ここでジュリアは部屋の机にあったホテルのスケジュールを確認しました、そこには朝御飯は日の出と共にと書いてありました。
「早いわ、日の出と共にだよ」
「随分早いね」
 モジャボロはジュリアの言葉を聞いて応えました。
「ここのホテルは」
「そうよね」
「それに起こしてもらえるし」
 モジャボロもスケジュールを見て言いました。
「いいホテルだね」
「そうね、じゃあね」
「うん、日の出と共に朝御飯を食べて」
「お風呂にも入って」
「そうして休もう」
「ええ、そうしましょう」
 二人でこうお話しました、そしてです。
 ジュリア達七人は天幕付きの羽毛ベッドの中でぐっすりと寝ました、かかしと木樵、ジャックは夜の間三人でソファーに座ってテレビを観たりお喋りをしたりチェスをして楽しみました。そしてオムレツやソーセージ、ハム、サラダやピクルス、色々なフルーツやヨーグルトがある朝食を食べてお風呂に入ってです。皆で気持ちよく市長さんに笑顔で有り難うと言って街を出て冒険を再開するのでした。



図書館のお手伝いか。
美姫 「散らばった理由が凄いけれどね」
確かにな。ドラゴンによる被害。
美姫 「本だけで済んでいるのがオズの国らしいけれどね」
だな。ともあれ、無事に本も戻せたし。
美姫 「良かったわね」
次はどんなお話になるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る