『オズのジュリア=ジャム』




                 第六幕  マンチキンの蜂蜜

 皆でマンチキンの国を東に進む中で、でした。ジュリアは神宝達に言いました。
「最初の目的地に近付いてきたわよ」
「っていうと」
「そうよ、もうすぐ蜂蜜のところに行けるわ」
 こう神宝に答えました、左右にコバルトブルーの草原が広がっている黄色い煉瓦の道を一緒に歩いて進みながら。
「養蜂農家の人のお家がすぐだから」
「そうですか」
「ええ、ではね」
「養蜂農家の人のところに行ったら」
「その人に頼んでね」 
 そしてというのです。
「蜂蜜を食べさせてもらいましょう」
「蜂蜜を使ったお菓子も」
「そうよ、パンにも塗ってね」 
 ジュリアはにこにことして言います。
「そうして食べましょう」
「人魚の国に行く前にね」
 ジョージもにこにことなっています。
「蜂蜜をってなっていたけれど」
「いよいよだね」
 カルロスはとても楽しみにているのがオーラになって出ていました。
「どれだけ美味しいのかな」
「早く食べたいわね」
 恵梨香も期待がお顔に出ています。
「オズの国でも最高の蜂蜜を」
「オズの国の蜂蜜は本当に美味しいけれど」
 最後にナターシャが言いました。
「その中でも特にというから」
「本当に凄く美味しいからね」
 モジャボロは五人に笑顔でお話しました。
「皆楽しみにしていてね」
「それでだけれど」
 ここでかかしがモジャボロに言うことはといいますと。
「君はお髭に蜜は付かない様に気をつけないとね」
「そうだよね、ミルクの時もそうだけど」
 かかしも言います。
「モジャボロ君はお髭がとても長いからね」
「そうしたところに気をつけないといけないのは」
 ジャックは腕を組んで考える感じになっています。
「少し不便かな」
「いやいや、そうしたこともわかって生やしているからね」
 モジャボロはその見事なお髭を摩りつつ答えます、摩るその手の動きはとてもいとおしげな感じで皆も見ていてわかりました。
「別にね」
「いいんだね」
「そのことは」
「モジャボロさんにしても」
「そうだよ、本当にいいよ」
 別にというのです。
「付かない様にするしね」
「実際にだね」
「そうするからだね」
「うん、このお髭はこのままだよ」
 生やしていくというのです。
「剃ったりしないよ」
「お髭のないモジャボロさんって」
 神宝はそのお腹のところまである長くてしかも豊かなお髭を見ています、毎日洗ってブラシも入れているのでとても奇麗です。
「想像出来ないですが」
「そうだよね」
「お髭のないモジャボロさんってね」
「ちょっとね」
「想像出来ないわ」 
 ジョージ、カルロス、ナターシャ、恵梨香も言います。
「オズの国の人もお髭あったりなかったりね」
「するけれどね」
「モジャボロさんのお髭は立派だから」
「オズの国で一番かな」
「関帝様みたいだから」
 神宝はこんなことも言いました。
「モジャボロさんのお髭は」
「関羽さんのことね」
 ジュリアは神宝のお話からすぐにこの人の名前を出しました。
「関帝様っていうと」
「はい、中国でとても信仰されている神様でして」
「元は三国時代の英雄よね」
「とても強くて学問もあって義理堅い人だったんです」
「そうした人だから神様になったのよね」
「そうです、大柄で立派なお髭を持っています」
 それが関羽さんだというのです。
「モジャボロさんのお髭もそんな感じに思えました」
「このお髭は実際に僕の自慢だよ」
 モジャボロ自身こう言います。
「だからお洒落したい時は編んだりリボンを付けたりもしているんだ」
「そうもされているんですね」
「そうだよ、だから蜂蜜もね」 
 食べる時にというのです。
「付かない様に気をつけているよ」
「そうされているんですね」
「本当に自慢のお髭だからね」
 モジャボロはまた言いました。
「そのことは安心してね」
「わかりました」
「それじゃあね」
「はい、今からですね」
「養蜂農家さんのところに行こう」
 モジャボロは笑顔で行ってでした、ジュリアと一緒に皆をその農家の人のところに案内するのでした。そしてです。
 皆は近くにあった村に入りました、そしてです。
 その村のあるお家に行きました、すぐ傍にかなり大きな養蜂場がありました。
 それを見てです、神宝はすぐにわかりました。
「このお家がですね」
「ええ、そうよ」
 ジュリアはその神宝ににこりと笑って答えました。
「そのね」
「養蜂農家の人のお家ですね」
「そうなの、じゃあね」
「今からですね」
「お家にお邪魔をして」
 そしてというのです。
「そうしてね」
「お願いをしてですね」
「食べさせてもらいましょう」
 その蜂蜜をというのです。
「いいわね」
「わかりました」
「それではね」
「今からですね」
「お邪魔をするわ」
 その養蜂農家の人のお家にというのです、そして実際にでした。
 ジュリアは自分からお家、マンキチンの国にあるだけあって青いお家の青い扉を叩いてでした。そのうえで。
 出て来たアジア系の初老のマンチキンの服の男の人を呼び出しました、すると男の人はジュリアを見てすぐに言いました。
「あっ、ジュリアさん」
「トンホイさんお久し振りです」
「うん、こちらこそね」
 こう笑顔で言うのでした。
「元気そうで何よりだね」
「はい、トンホイさんも」
「トンホイさんっていうと」
 神宝はその名前から気付きました。
「中国系なのかな」
「そうだよ」
 その通りだとです、かかしが神宝に答えました。
「この人はね」
「やっぱりそうですか」
「お顔を見てもわかるよね」
「アジア系ですから」 
 黒い目と髪の毛に神宝や恵梨香と同じお肌の色で彫の浅い顔立ちです。見れば確かにアジア系の顔立ちです。
「わかります」
「そうだよね」
「アジア系の人もアフリカ系の人も沢山いてね」
 木樵も言うのでした。
「それに養蜂は中国では昔から行われていたね」
「はい、本当に昔から」
「だからね」
「養蜂農家の人もですか」
「中国系なんだよ」
「そういうことですか」
「これは全然意外じゃないね」 
 ジャックはにこにことしています。
「オズの国だからね」
「色々な人がいる国だから」
「最近はアラブ系の人もいるしね」
「そういえば褐色のお肌で彫のあるお顔の人も」
「いるね」
「はい、見ました」
 神宝もオズの国に何度も来ていてです。
「これまで」
「そういうことだからね」
「不思議じゃないですね」
「養蜂農家の人が中国系でもね」
「じゃあそのトンホイさんにお願いをして」
「蜂蜜をご馳走になろうね」
 モジャボロはトンホイさんとお話をしているジュリアを見つつお話をしました。
「これから」
「はい、楽しみです」
「何かいよいよって感じで」
「わくわくしてきたね」
 ジョージとカルロスはそんなお顔でジュリアとトンホイさんを見ています。
「最高に美味しい蜂蜜が食べられるから」
「今からね」
「どんな味なのかしら」
「どれだけ美味しいのかしら」
 ナターシャと恵梨香は女の子です、それで甘いものが大好きなので男の子達より期待しているのがおお顔に出ています。
「楽しみよね」
「本当にね」
「期待は裏切られないのがオズの国だよ」
 モジャボロはまた言いました。
「だからね」
「はい、期待させてもらいます」
「是非」
「実際に期待で胸が一杯ですし」
「ですから」
「そうだね、僕も期待しているからね」
 他ならぬモジャボロ自身もというのです。
「今は期待する気持ちを楽しんでいようね」
「皆さん、お話は聞きました」
 トンホイさんがジュリアとのお話が終わって皆にお顔を向けてきました。
「どうぞです」
「蜂蜜をですか」
「ご馳走になっていいんですね」
「遠慮なく」 
 これがトンホイさんのお返事でした。
「好きなだけ、お菓子も召し上がって下さい」
「それじゃあ」
「そうさせてもらいます」
「お言葉に甘えて」
「蜂蜜を」
「どうぞお入り下さい」
 温厚で穏やかな口調でのお言葉でした。
「お菓子は何時でも出せる様にしてあるので」
「蜂蜜自体もね」
 ジュリアも皆に笑顔で言ってきました。
「あるから」
「それじゃあ蜂蜜を舐めて」
「蜂蜜を使ったお菓子を食べて」
「そうしてですね」
「楽しませてくれるんですね」
「今から」
「そうよ、皆で食べましょう」
 是非にと言うのでした、そしてです。
 皆はトンホイさんのお家にお邪魔しました、するとです。
 お家の中は普通のマンチキンのお家でした、ですがテーブルの中に青いお菓子と青いとろりとした液が入っているガラスの瓶がありました。
 そのお菓子と瓶を手で指し示してです、ジュリアは神宝達に言いました。
「あれがね」
「はい、トンホイさんのお菓子ですね」
「トンホイさんの蜂蜜ですね」
「マンチキンの国ですから青いですが」
「蜂蜜ですよね」
「そうですよね」
「そうよ、この国では何でも青くなるからね」
 例え蜂蜜でもです。
「あの色だけれど」
「蜂蜜は蜂蜜ですね」
「そのことは紛れもなくですよね」
「だから蜂蜜の味がする」
「そうですよね」
「しっかりと」
「そして最高の蜂蜜よ」
 ただの蜂蜜だけでなく、というのです。
「本当にね」
「わしは蜂蜜ばかり作ってきたんだ」
 トンホイさんのお言葉です、見ればお腹が少し出ています。
「女房や子供達は田畑を耕していてね」
「トンホイさんは蜂蜜ですか」
「蜂蜜を作ってこられたんですね」
「それもずっと」
「それで、ですか」
「蜂蜜については」
「そう言ってもらってるんだ」
 オズの国一の養蜂農家だと、というのです。
「有り難いことにね、ではね」
「はい、頂きます」
「そうさせて頂きます」
 五人は笑顔で応えてでした、そのうえで。
 それぞれテーブルに着きました。食べる必要のないかかし達も同席していつも通り食べて楽しんでいる時の皆の笑顔を心の栄養にするのでした。
 実際にです、そのお菓子や蜂蜜を付けたパンやそれを入れたお茶を飲みますと。
「これは」
「もう何ていうか」
「普通の蜂蜜とは別格」
「とんでもなく美味しくて」
「嘘みたい」
 そこまで美味しいというのです。
「何ていうか」
「この味だと」
「目が覚めそう」
「とんでもなく甘くてそれでいてお口に入れたらすっきりして」
「普通の蜂蜜とは違う感じね」
「これがトンホイさんの蜂蜜なの」 
 ジュリアも食べてうっとりとなっています、そのお顔で五人に言うのです。
「素晴らしいでしょ」
「はい、本当に」
「こんな蜂蜜ははじめてです」
「幾らでも食べられそうです」
「魔法を使っているみたいですね」
「そんな美味しさですね」
「僕は魔法は使えないよ」
 魔法と聞いてです、トンホイさんは笑顔で否定しました。
「そうしたことは一切知らないよ」
「けれどこの蜂蜜の味は」
「何ていいますか」
「そんな感じがします」
「魔法を使っている様な」
「そうした美味しさです」
「そう言ってくれるんだ、だったらね」
 五人の言葉に笑顔になってです、トンホイさんは彼等にこうも言いました。
「どんどん食べて舐めてね」
「お菓子も蜂蜜も」
「そうしていいんですね」
「うん、蜂蜜はパンだけじゃなくてお菓子にも入れていいから」
 当然紅茶にも入れています、それも皆が。
「どんどんご馳走になってね」
「ですが」
 神宝はここで怪訝なお顔になって言ってきました。
「そんなに食べたら」
「蜂蜜もお菓子もだね」
「なくなりませんか?」
「安心していいよ」
「そのことはですか」
「そうだよ、沢山あるしいつも採れるからね」
 蜂蜜、それがというのです。
「だからね」
「いつも採れるんですか」
「そうだよ、決まった時にしか採れるという訳じゃないからね」
 このこともオズの国の特徴です、田畑の作物もどの季節で出来るかではなく種を蒔いて育てているとそれぞれの作物の実る期間で生えて食べられる様になるのです。
「いつも育てているからね」
「だからですね」
「蜂蜜がいつも採れるんですね」
「それも沢山」
「だからですか」
「私達も好きなだけ食べていいんですか」
「そうだよ、むしろ遠慮されるとね」
 オズの国の人らしいお言葉でした。
「僕は困るよ」
「オズの国では遠慮はしない」
 ジュリアも食べてにこにことしつつ言います。
「そうでしょ」
「はい、だからですね」
「好きなだけ食べて」
「そして満足することですね」
「蜂蜜も蜂蜜を使ったお菓子も食べて」
「そうして」
「そうよ、楽しんでね」
「いや、トンホイさんの蜂蜜を久し振りに味わっているけれど」
 勿論モジャボロも楽しんでいます、その見事なお髭に蜂蜜が付かない様にしつつ。
「いいね」
「そうさせてもらいます」
「是非」
 五人は笑顔で応えてでした、そうしてです。
 皆で蜂蜜とそれを使ったお菓子をお腹一杯食べました、そしてです。
 食べ終わった後で、です。トンホイさんに言われました。
「それで家族はね」
「はい、トンホイさんが蜂蜜を作っておられて」
「それで、ですよね」
「奥さんやお子さん達は田畑におられて」
「そこで、ですよね」
「そうなんだ、そちらで働いているんだ」
 田畑の方でというのです。
「僕は養蜂の方に専念していてね」
「そうしてですね」
「そのうえで、ですね」
「皆で楽しく働いてるんですね」
「手分けをして」
「そうなんだ、いやこれがね」
 にこにことして言うトンホイさんでした。
「実にいい家族で」
「奥さんもお子さん達も」
「実際にですね」
「それでトンホイさんは幸せなんですね」
「養蜂だけでなくそちらでも」
「何といっても家庭がいいとね」
 心から言うトンホイさんでした。
「最高の幸せだよ」
「うん、僕は家族はいないけれどね」
 木樵が応えました。
「皆で仲良くいられるとね」
「そうですね」
「こんなに幸せなことはないよ」
「家族は実は血縁でなくてもなれるからね」
 かかしは絆のお話をしました。
「僕達もそうした意味で家族だしね」
「そうしてですね」
「家族皆で楽しく過ごしているよ」
 毎日です、そうしているというのです。
「実際にね」
「僕達三人ウィンキーの国で暮らしてて」
 ジャックも言います。
「お家は離れているけれど」
「それでもですね」
「家族だね」
 そうなることをです、ジャックも言うのでした。そしてジュリアもです。
 お菓子も蜂蜜も楽しんだのでにこにことしつつこう言うのでした。
「私も王宮の皆にそう言ってもらって」
「それで、ですね」
「実家にはお父さんとお母さんもいて」
 実際の家族もいるというのです。
「王宮にも」
「オズマ姫やドロシーさん達とだね」
「いつも一緒にいてです」
「幸せなんだね」
「はい、とても」
 こうトンホイさんにお話するのでした。
「そうです」
「それは何よりだね」
「はい」
 実際にというのでした。
「家族もいてくれてです」
「ジュライさんも幸せだね」
「二つの家族があって」
「お家と王宮の」
「そうです」
 まさにという返事でした。
「家族が二つもありますので」
「余計に幸せだね」
「そうです」
「そう、家族は一つとは限らないんだよね」
 ジャックが陽気に言ってきました。
「これがね」
「そうなんだよね、それぞれのつながりが出来てね」
 木樵も言います。
「家族になっていくからね」
「僕達は最初は一人だったけれど」
 かかしも言うのでした。
「そこから結びついていて家族になったからね」
「だからジュリアもね」
 モジャボロは今は紅茶を飲みつつ言いました。
「結びつきが出来て」
「それでよね」
「二つの家族を持つ様になったんだよ」
「そうよね、やっぱり」
「そうだよ、それとね」
「それと?」
「ジュリアのお父さんとお母さんの好きなものは何かな」
 モジャボロはこのことも聞いてきました。
「それで」
「何でも好きよ」
「じゃあ蜂蜜をプレゼントしたらどうかな」
「この蜂蜜を」
「うん、どうかな」
 こうジュリアに提案するのでした。
「そうしたらどうかな」
「そうね、お父さんもお母さんも好きだし」
 その蜂蜜をというのです。
「それじゃあね」
「贈る?蜂蜜」
「そうするわ」
 このことも決めたジュリアでした、そしてです。
 ジュリアはトンホイさんにこうお願いしました。
「あの、よかったら」
「うん、いいよ」
 トンホイさんは快諾して応えました。
「それじゃあね」
「頂けますか」
「蜂蜜とお菓子でいいかな」
「私達が今食べている」
「それでどうかな」
「いいですね」
 ジュリアはトンホイさんの提案に笑顔で応えました。
「それじゃあ」
「うん、食べ終わったらあげるからね」
「有り難うございます」
「それじゃあね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 ジュリアはこの約束もしてでした、蜂蜜を使ったお菓子にそれを塗ったパンを食べて入れた紅茶も飲んででした。
 その後でトンホイさんからその蜂蜜が入った瓶とお菓子を入れたバスケットボックスをいただきました、ジュリアはその二つを受け取ってからトンホイさんに言いました。
「有り難うございます」
「お礼はいいよ、お父さんとお母さんにね」
「贈らせてもらいます」
「そうして楽しんでもらってね」
「わかりました」 
 笑顔でやり取りをしてでした、そのうえで。
 ジュリア達はトンホイさんと笑顔で手を振り合って再会の時を楽しみにしながら別れました、その後で。
 ジュリアは皆にです、こう言いました。
「じゃあ今からね」
「贈るんですね」 
 神宝がジュリアに尋ねました。
「蜂蜜とお菓子を」
「ええ、そうするわ」
「そうされますね」
「ただね」
「ただ?」
「今から贈る場所に行くから」
 そうするというのです。
「ちょっと寄り道するわ」
「贈る場所っていいますと」
 ジョージはそう聞いてこう言いました。
「郵便局とか運送の」
「そう、まさにね」
「そういえばですね」
 カルロスもそのお話を聞いて言うのでした。
「オズの国にも郵便や配達がありますね」
「そうよ、そこに行くから」
「そういえばオズの国にも」
 ナターシャはこれまでオズの国で見てきたもののうちの一つを思い出しました。
「ポストとかありましたね」
「そのポストに行くのよ」
「ポストのところに行けば」
 恵梨香も言います。
「そこからですか」
「そうよ」 
 まさにとです、ジュリアは五人にお話しました。
「オズの国は郵便と配達が一緒なのよ」
「ポストからですか」
「普通に送られるんですか」
「お手紙も荷物も」
「それが出来るんですね」
「そうなんですね」
「ええ、そうなの」
 ジュリアはにこりと笑ってです、こう言うのでした。
「だから今からね」
「ポストに行って」
「そこからですか」
「お家のご両親に送られるんですね」
「蜂蜜もお菓子も」
「そして食べてもらうんですね」
「そうなの、ポストは色々な場所にあるから」
 ものを送られるそこはというのです。
「この辺りのある場所も知ってるから」
「そこに行ってですね」
「今から」
「そうしてですか」
「蜂蜜とお菓子を送って」
「そしてですね」
「また行くんですね」
「冒険の再開よ」
 送ってからというのです、ジュリアはお菓子が入っているバスケットボックスに瓶も入れてそうして両手で大事そうに持ちつつ歩いています。
「いいわね」
「わかりました」
 五人はジュリアのその言葉に笑顔で応えました。
 そしてそのうえで、でした。一行はです。
 ポストのところに来ました、そのポストはといいますと。
 青いポストでした、五人はそのポストを見て言いました。
「マンチキンだから青い?」
「だからかな」
「黄色でも赤でもなくて」
「青いのね」
「そうなのね」
「うん、オズの国の郵便や配達はオズマが考えて作ったけれどね」
 かかしが言います。
「魔法を応用していてね」
「色はそれぞれの色のものなんだ」
 木樵も五人にお話します。
「それぞれの国のね」
「マンチキンのポストは青いよ」
 ここで言ったのはジャックでした。
「この通りね」
「カドリングのポストは赤くて」
 神宝はかかし達のお話を聞いて頷きました。
「ウィンキーだと黄色だね」
「そうだよ、勿論ギリキンは紫で都は緑だよ」
 モジャボロは笑って神宝にお話しました。
「このこおも覚えておいてね」
「わかりました」
「オズの国ではポストもそれぞれの国の色なんだ」
 そうなっているというのです。
「そこが外の世界と違うんだ」
「それでね」
 ジュリアが五人に笑顔でお話しました。
「ポストのところに行くでしょ」
「はい」
「そうしてですね」
「ポストをどうにかすればですね」
「そのものを送ることが出来るんですね」
「送りたい場所に」
「そうなの、ポストをこうしてね」
 ジュリアはポストに触りました、するとです。ポストから言ってきました。
「どなたですか?」
「ジュリア=ジャムよ」
「ジュリアさんですか」
「そう、エメラルドの都のね」
「都のどちらにお住まいですか?」
 ポストはジュリアにさらに聞いてきました。
「一体」
「王宮に住み込みで働いているわ」
「そちらに御用ですか?」
「いえ、実家に送りたいの。実家はね」
 ここでジュリアはポストに実家の場所をお話しました。
「そこなの」
「そこに何を送られますか?」
「これよ」 
 ジュリアはポストの前に蜂蜜とお菓子が入ったバスケットボックス、両手に持っていたそれを差し出しました。
「これを送って欲しいの」
「そのバスケットボックスをですね」
「ええ、送ってくれるかしら」
「はい、今すぐに」
 ポストはジュリアに礼儀正しく答えました。
「送らせて頂きます」
「それじゃあお願いするわね」
「わかりました」
 ポストも答えました、するとです。
 お空からとても大きな鳥が来ました、足で象を掴めるまでに大きいです。とんでもない大きさです。そしてです。
 その鳥の背中に郵便配達の人がいました、青い配達員の制服です。その人が鳥から降りてジュリアに言ってきました。
「では今から」
「はい、お願いします」
 ジュリアは配達の人に笑顔で応えました。
「お話した場所まで」
「送らせてもらいます」
「それでは」
 配達員さんはジュリアの手からバスケットボックスを受け取りました、そしてです。
 鳥の背中に戻ってです、鳥はあっという間に飛び上がりそうしてです。
 お空に消えていきました、五人は一部始終を見て言いました。
「大きいですね」
「凄い鳥ですね」
「鷲みたいですけれど」
「鷲よりも凄く大きくて」
「見ていてびっくりしました」
「ロック鳥よ」 
 ジュリアは五人にその鳥のことをお話しました。
「あの鳥は」
「ああ、アラビアンナイトに出て来る」
「あの鳥ですか」
「あの鳥がオズの国にもいて」
「それで、ですか」
「郵便や配達に使われているんですね」
「そうなの、配達の人は五つの国にそれぞれ沢山の人が務めていてね」
 ジュリアはオズの国の郵便と配達のシステムのお話もしました。
「ポストでお話をするとなの」
「ああしてですか」
「所定の場所に送ってくれる」
「ロック鳥に乗ってですか」
「そうしてですね」
「そこまで届けてくれるんですね」
「そうよ、あれだけ大きな鳥だから」 
 それこそ足で象を掴める位の大きさなので。
「だからね」
「どんな大きさのものでもですね」
「運べるんですね」
「あの大きさですから」
「しかもお空も飛んで」
「そのうえで」
「そうよ、しかもロック鳥は飛ぶのが凄く速いから」
 ただ大きいだけでなくてというのです。
「あっという間に届くのよ」
「オズの国ならですか」
「それこそ何処にでもですか」
「すぐに届くんですか」
「どんなものでもですか」
「ただ何でも届けてくれるだけじゃなくて」
「だからとても便利なの」
「こんな便利な配達は外の世界にもないだろうね」
 モジャボロは笑顔で言いました。
「ロック鳥はオズの国の端から端まで一時間もかからずに飛ぶからね」
「一時間ですか!?」
「このオズの国を」
「端から端までですか」
「たった一時間で行くことが出来るんですか」
「大陸なのに」
「そこまで速いんだ」
 ロック鳥の飛ぶ速さはというのです。
「だからとても便利なんだ」
「オズマが考えたと言ったけれど」
 かかしもお話をしました。
「こんな凄いシステムをよく考えられたよ」
「いや、びっくりしました」
「まさかこんなシステムだなんて」
「ポストは魔法でお話出来るのはわかりますけれど」
「まさかロック鳥まで使うなんて」
「本当に凄いです」
「ロック鳥もこの国にいてね」
 オズの国にというのです。
「配達と運送に使ってもらったんだ」
「あの時は皆でどうしたものにしようかって思ったけれど」
 木樵はシステムを作ろうとした時のことを思い出していました。
「いや、こんないいものが出来るなんてね」
「オズマ姫のお考えがですね」
「こうしたものを作ったんですね」
「こんな凄い郵便と配達のシステムを」
「オズの国ならではのものをですね」
「作ったんですね」
「そうなんだ、あの時僕達もあれこれアイディアを出したけれど」
「オズマがふと言ったんだ」
 まさにとです、ジャコクも言いました。
「こうしたらって」
「それでなんだね」
「オズマ姫が出してくれたので」
「それで決まって」
「こうして動いている」
「魔法と生きものを使って」
「僕達は科学の車を使おうとかドラゴンとか考えていたんだ」
 ジャックは自分達の考えをお話しました。
「あれこれとね、けれど皆オズマの言葉を聞いて決めたんだ」
「それならってね」
 モジャボロのお顔は笑顔でした。
「こんないいものはないってね」
「オズの国らしいですし」
「不思議の国ならではで」
「しかもすぐに届きますし」
「何でも運べて」
「本当にこんなにいいものは他には」
「そして実際に効果的に動いているんだ」
 そのシステムがというのです。
「見ての通りね」
「もうちょっとしたら届いているわね」
 ジュリアはにこにことしていました。
「都のお父さんとお母さんのところに」
「今ロック鳥が飛んでいるんですね」
「そうよ」
 ジュリアは神宝に笑顔で答えました。
「現在進行形でね」
「そうですね」
「そしてね」
「あと少しで、ですね」
「届くわ」
「じゃあジュリアさんのお父さんとお母さんも」
 神宝はジュリアのご両親を想像しました。
「あと少しで」
「そう、もうすぐね」
「あの蜂蜜をお菓子を楽しめますね」
「そうなるわ」
「いいことですね」
「いや、確かにね」 
 ここでこうも言ったジュリアでした。
「美味しいものはね」
「一人でなく、ですね」
「皆で食べてこそね」
「本当に美味しいですね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「お父さんとお母さんに送る様に言われて決めてね」
「よかったですね」
「本当にね」
 心から言うのでした。
「私今とても嬉しいわ」
「そうなんですね」
「さて、それじゃあ」
「はい、あらためてですね」
 ジョージは笑顔のジュリアに笑顔で応えました。
「冒険の再開ですね」
「人魚の国に向けて」
 カルロスも言います。
「行くんですね」
「蜂蜜もお菓子も楽しみましたし」
 ナターシャはその味を思い出してにこにことしています。
「あらためて」
「何か今回の旅は色々ありますけれど」
 恵梨香は冒険のことを振り返っています、オズの国では旅行と冒険は近いといいますか同じものなのです。
「面白いですね」
「ええ、じゃああらためて」 
 ジュリアは五人に言いました。
「冒険を再開しましょう」
「それじゃあ」
 五人はジュリアに応えてでした、そのうえで。
 皆で冒険を再開しました、冒険はこれまで通りです。
 とても楽しくて明るいものでした、夜まで歩いて。
 そして夜は晩御飯を食べてです、身体も奇麗にしてでした。テントで休みました。
 翌朝日の出と共に起きてち朝食と共に出発するとです、ふと。
 神宝は空を見上げてこんなことを言いました。
「このお空にロック鳥がいますか」
「お空に島がそれぞれあってね」
 またジュリアがお話します。
「そこからなの」
「連絡が来たらですか」
「ポストがそれなの」
「あのやり取りがですね」
「そう、連絡でね」
 それでというのです。
「あれからなの」
「ロック鳥で来てくれて」
「あっという間に届けてくれるの」
「ポストは通信機でもあるんですね」
「そうなの」
「そこは僕達の世界とは違いますね」
「魔法のポストなの」
 それだというのです。
「あれはね」
「そうですね」
「そう、そしてね」
「届けてくれるから」
「いいのよ」
 本当にというのです。
「あのポストはね」
「お空の島からやり取りをして」
「すぐに来てくれるしね」
「ううん、お空での冒険もありましたけれど」
 神宝はかつてポリクロームや魔法使いと飛行船で行ったその冒険のことを思い出していました。あの時のことを。
「オズの国のお空は凄くですね」
「独特でしょ」
「鳥もお魚も飛んでいて」
「お魚は泳いでいるのかしらね」
「そうなるかも知れないですね」
「私も行ったことがあるの」 
 ジュリアは微笑んでです、神宝だけでなく他の子達にも言いました。
「お空の冒険にね」
「オズの国のですね」
「飛行船に乗ってですか」
「そうしてですね」
「お空の冒険もされたんですね」
「そうされたんですか」
「オズマ姫と一緒にね」
 オズマの侍女として、というのです。
「それで行ったけれど」
「それでオズの国のお空のこともご存知ですね」
「そうなんですね」
「あそこのことも」
「それで、ですか」
「鳥やお魚や島のこともご存知ですか」
「そうなの、オズのお空の島は結構多いのよ」
 お空を見上げても島は見えません、ですがそれでもというのです。
「これがね」
「そうなんですね」
「そういえばお城があって」
「それで、ですよね」
「島も結構あって」
「地上からは見えないですが」
「見えなくてもあるものはあるから」
 だからというのです。
「私も行って見てきて知ってるわ」
「あのお空は不思議だよ」100
 モジャボロもお空を見上げて言います。
「海みたいでもあるしね」
「お魚もいて」
「それで、ですよね」
「しかもお城もあって」
「島まであって」
「不思議なお空ですよね」
「だからね」
 それでというのです。
「僕もあのお空が好きだよ」
「あのお空にロック鳥も配達の人達もいるの」
 ジュリアはまたお話しました。
「あそこにね」
「そうなんですね」
「お空にですね」
「ロック鳥もいて」
「そして配達の人もですね」
「そうよ、オズの国のお空はね」
 それこそというのです。
「他の国のお空とは違うから」
「色々な鳥がいてお魚もいて」
「お城もあって島もあって」
「そして配達の人もいて」
「凄く色々なものがあるんですね」
「そうなのよ、私が嬉しいのは」
 ジュリアはこうも言いました。
「リョコウバトもいるから」
「あっ、リョコウバトはですね」
「もう外の世界にはいないですからね」
「あの鳥はもう」
「外の世界じゃいなくなって」
「オズの国にしかいないですから」
「そのリョコウバトもいてくれているから」
 それでというのです。
「凄く嬉しいの」
「あの鳩は物凄い数がいたんだけれどね」 
 モジャボロは残念そうに言いました。
「僕が子供の頃はまだいたんだよ」
「それが、ですよね」
「あっという間にですね」
「いなくなったんですね」
「外の世界では」
「そうなりましたよね」
「残念だよ」
 あれだけいたというのに、とです。モジャボロは五人に答えました。
「そのことがね」
「オズの国は他の生きものもいるから」
 ジュリアは五人にさらにお話しました。
「外の世界ではいなくなった生きもの達もね」
「リョコウバト以外にもですね」
 リョコウバトはアメリカにいました、ですからアメリカ人のジョージはすぐに反応しました。
「いるんですね」
「じゃあオオナマケモノも?」
 ブラジル人のカルロスはこの生きものを脳裏に浮かべました。
「いるんですね」
「ステラーカイギュウもかしら」
 ナターシャはロシアの東の海にいた生きものを言葉に出しました。
「オズの海には」
「ニホンオオカミも?」
 恵梨香は日本人なのでこの生きものを思い出しました。
「いるのかしら」
「ヨウスコウカワイルカは」
 中国人の神宝はこの生きものを思いました。
「オズの国には」
「そうした生きもの達もいるよ」
 かかしが五人に答えました。
「全部ね」
「それはいいですね」
「オズの国だけにいる不思議な生きもの達だけじゃないんですね」
「そうした生きものもいるんですね」
「私達の世界ではいなくなっても」
「オズの国にはいますか」
「この国は不思議の国だから」
 木樵もこう言うのでした。
「皆いるよ」
「いない生きものはいないんじゃないかな」
 ジャックはこうまで言いました。
「ドードーもいるしね」
「あっ、あの鳥も」
「そうなんですね」
「じゃあその鳥もいて」
「他の生きものもですね」
「いるんですね」
「うん、それで僕が好きなのはね」
 特にというのです。
「オオウミガラスかな」
「ペンギンに似てるのよね」 
 ジュリアもオオウミガラスと聞いて言います。
「この生きものもいるわよ」
「とにかく沢山いるんですね」
「外の世界でいなくなっても」
「オズの国にはいるんですね」
「リョコウバトもそうで」
「他の生きもの達も」
「そのことも楽しんでね」
 そうした生きもの達に出会うこともというのです、そしてでした。 
 皆はそのお空を見た後でまた東に向かって歩いていきました、冒険の目的の一つを終えて次はそちらでした。



蜂蜜とお菓子。
美姫 「何か食べたくなってくるわね」
だよな。と、今回は郵便に関してか。
美姫 「一時間って凄いわよね」
国の端から端だもんな。
美姫 「再び旅を再開したけれど」
次はどんなお話になるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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