『オズのジュリア=ジャム』




                 第十一幕  海の世界

 ジュリア達は人魚の宮殿の食事の間で彼等のご馳走を楽しむのでした、そのメニューはといいますと。
「うわ、凄いですね」
「そうでしょ」
 ジュリアはお料理を目の前にして目をきらきらと輝かせているジュリアに応えました。
「これが人魚の食事よ」
「そうなんですね」
「お刺身に天麩羅にムニエルにフライに」
 ナターシャは鮪や平目、鮭のお刺身やカルパッチョに鱚や烏賊、蛸の天麩羅に鱈のムニエルや鯵のフライを見て言います。
「豪勢だね」
「海草のサラダもいいね」
 カルロスは和布や昆布のそれを見ています。
「こちらも」
「そうだね、陸からのお野菜もあってね」
 ジョージはそこにあるレタスやトマトに注目しています。
「美味しそうだね」
「たこ焼きもあって」 
 神宝は先程話題にあがっていたそれを美味しそうに見て言いました。
「これはいいね」
「陸のお野菜は岸辺近くの領地で栽培しているんだ」
 人魚の王様が五人にお話しました。
「僕達は陸地にも領地を持っているからね」
「あっ、そうなんですか」
「陸地にも領地があるんですか」
「そうなんですね」
「実は魔法で下半身を人間のものに出来るしね」
 それでというのです。
「短い時間なら」
「そうした魔法は使うことを許されてるんです」
 女王様もにこりと笑ってお話します。
「私達人魚は」
「それで、ですか」
「そうして丘の畑でお野菜を耕しているんですか」
「そうもしているんですか」
「お米や麦も作っています」
 穀物もというのです。
「それでリゾットやパスタも作っていまして」
「じゃあ海鮮炒飯や海鮮麺も」
 神宝は目を輝かせて女王様に尋ねました。
「そうしたお料理もですか」
「食べていますよ」
「それはいいですね」
「それも美味しく」
「尚いいですね」
「他には海老蒸し餃子やフカヒレ餃子も」
「海の幸を使った中華料理って最高なんですよね」 
 こうも言った神宝でした。
「それもあるなんて凄くいいです」
「おや、君はかなり中華料理が好きなんだね」
 魚人の王様は神宝の言葉と輝く目を見て言いました。
「そうみたいだけれど」
「はい、中国人なんで」
「だからなんだね」
「中華料理が好きです」
 お国のそれがというのです。
「本当に」
「それじゃあ夕食はそれを食べようか」
「海の幸を使った中華料理ですか」
「今は和洋折衷だけれどね」 
 お刺身に天麩羅、カルパッチョやムニエルにフライにサラダとです。
「そちらも食べよう」
「楽しみにしています」
「確か魚人さん達も丘に領土があるわよね」
 ジュリアは魚人の王様に尋ねました、皆いただきますをしてそのうえでその海のご馳走を食べはじめています。
「そうよね」
「うん、そしてね」
「そこでお野菜や穀物を作っているわね」
「そうしているよ」
「そうなのね」
「お酒も造っているよ」
 そちらもというのです。
「これがまた美味しいんだよね」
「あら、お酒も飲んでるの」
「大好きだよ」
 魚人の王様はジュリアににこりと笑って答えました。
「よく飲んでいるよ」
「そうなのね」
「そういえば海のものだとね」
 ここでモジャボロが言いました、お刺身をとても美味しそうに食べています。
「お酒は出来ないね」
「そうなんだよね」
「それで丘でだね」
「そう、我々は多少なら海から出ても普通に動けるしね」
 魚人の人達はというのです。
「そうしたことも出来るからね」
「それでだね」
「人魚の人達と違って魔法を使わずにそのまま海からあがって」 
 そうしてというのです。
「栽培をしているんだ」
「田畑でだね」
「そしてお酒も造っているんだ」
「ビールやワインをだね」
「他のお酒もだよ」
「成程ね」
「人魚の人達も造っているよ」
 お酒をというのです。
「ジュースもね」
「最近オレンジジュースが気に入っていてね」
 人魚の王様はそのオレンジジュース、パックの中にあるそれをストローを使って飲んでいます。海の中なので外に出ると混ざるからです。
「楽しんでいるよ」
「人魚の王様もですか」
「そうされてるんですか」
「そうだよ、勿論お酒もね」
 そちらもというのです。
「楽しんでいるよ」
「そちらはどういったお酒を飲んでるのかな」
 かかしが尋ねてきました、食べないのですがいつもの様に木樵やジャックと一緒に皆が食べて飲んでいるその笑顔を見て楽しんでいるのです。
「ワインかな」
「ビールだね」
「そちらのお酒をだね」
「よく飲んでいるよ」
「そうしているんだね」
「うん、海の中だとストローで飲んで」
 そしてというのです。
「丘の上ではそのままコップで飲んでいるよ」
「主人も魚人の王様と一緒でお酒が好きなんです」
 人魚の女王様はにこりとしてこのこともお話しました。
「それでよく飲んでいます」
「そうなんだね」
「魚人の王様とお会いした時もよく」
「ははは、酒盛りを楽しんでいるよ」
 その人魚の王様のお言葉です。
「いつもね」
「それは何よりだね、楽しく過ごすのならね」
 それならとです、木樵が言いました。
「それに越したことはないね」
「そうだよね」
「僕もそう思うよ」
 木樵は笑顔で人魚の王様に言いました。
「本当にね」
「全くだね」
「何か人魚さんや魚人さんの世界もね」
 ジャックが言うことはといいますと。
「僕達の世界と同じところがあるね」
「そうですね、確かに」
 女王様が答えました。
「違うところもあれば」
「同じところもだよね」
「ありますね」
「そうだよね」
「種族が違っても同じ人間だから」
 ジュリアはこう言いました、鱈のムニエルをとても楽しく味わいながら。
「同じ部分も多いわね」
「違うところがありましても」
「重なるわね」
「そうよね」
「ええ、そういうことなのね」
 ジュリアはあらためて言いました。
「同じ人間なら」
「違うことがあっても同じことが多い」
「そうよね」
「そうですね、人間ですよね」
 ここで神宝が言いました。
「皆さん」
「そうよ、人間は何かっていうと」
 それはとです、ジュリアは神宝にもお話しました。
「心で、でしょ」
「そうなるものですね」
「種族が違っていてもね」
 人間でも人魚でも魚人でもです。
「心が人間だから」
「それで、ですね」
「人間になるのよ」
 そうだというのです。
「そして人間の文明はね」
「はい、似ていきますね」
 今度はジョージがジュリアに応えました。
「違う部分があっても」
「そうよ、オズの国でも一緒でね」
「違う部分があっても」
 カルロスはフライをとても美味しそうに食べています、見れば五人とジュリアにモジャボロは今もお口の中にキャンデーがあります。
「それでもですね」
「同じ部分も多いの」
 ジュリアはカルロスにも言いました。
「体型も同じ様なものだから」
「海の中でもですね」
 ナターシャの口調はしみじみとしていました。
「そうなるんですね」
「そうよ、人魚の人も手があるし」
 それにというのです。
「魔法で足も変えられるしね」
「そうなると、ですね」
 最後に恵梨香が言ってきました。
「同じ部分も多くなるんですね」
「そういうことよ」
「種族が違ってもですか」
「同じ人間ならですね」
「同じ部分も多くなる」
「住む場所が違ってもですか」 
「そうなるんですね」
 五人もこのことを知りました、種族が違っていて住んでいる場所も違っていても同じ人間であるならです。
 そしてです、ジュリアはこうも言いました。
「かかしさんも木樵さんもジャックも人間でしょ」
「はい、オズの国なら」
「そうですよね」
「オズの国の名士で」
「誰もが知っていて愛している」
「そうでしょ、皆人間の心がある人間よ」
 かかし達もというのです。
「もっと言えばオズマ姫も妖精でしょ」
「あっ、そうでした」
「オズマ姫って妖精でしたね」
「種族としてはそうでしたね」
「あの人も」
「そう、種族が違うだけで」
 本当にそれだけだというのです。
「あの方も人間なのよ」
「飴やパンの身体の人もいるしね」
 魚人の王様が笑って言ってきました。
「狐人もいればガーゴイルもいるし」
「オズの国の種族には」
「そうした人達も」
「けれど同じ人間だね、それなら似てくるさ」
 こう笑って言うのでした。
「オズの国はそうした国なんだよ」
「外の世界はどうか知らないけれど」
 また言うジュリアでした。
「オズの国はそうした世界ってことでね」
「理解してですね」
「そうして楽しむべきですね」
「そういうことですね」
「そうだよ、それでね」
 魚人の王様は皆にさらにお話しました。
「君達はオズの国の海の世界に来たのははじめてだね」
「はい、海は観たことはありましたけれど」
「リンキティンク王の国で」
「ですが海の中に入ったことはありません」
「今がはじめてです」
「それならね」
 笑顔で言うのでした。
「女王の真珠を見るのもいいけれど」
「その前に我が国を観て回ったらどうかな」
 人魚の王様も五人に言ってきました。
「そうしたらどうかな」
「人魚の国をですか」
「真珠を観る前に」
「そうしていいんですか」
「うん、いいよ」
 こう勧めるのでした。
「そうしたらどうかな」
「そうね、いいと思うわ」
 ジュリアもにこりと笑って五人に言いました。
「そうしたらね」
「それじゃあ」
「そうさせてもらいます」
 五人はジュリアに答えてでした、まずは海の祥のご馳走を堪能しました。そしてその後で、です。
 一行は人魚の兵士の人に案内されて人魚の国を巡りました、岩や海草の外に出るとお魚を養殖していたり海藻を繁殖させている場所がありました。
 その場所を観てです、五人は言いました。
「海の牧場かな」
「それで畑?」
「ここは」
「そうした場所かしら」
「そうだよ」 
 人魚の兵隊さんは笑顔で、です。五人にお話しました。
「ここはね」
「そうなんですね」
「ここはそうした場所ですか」
「海の牧場や畑ですか」
「そうだよ、色々なお魚を養殖してね」
 そしてというのです。
「そのうえでね」
「海草もですね」
「和布や昆布も養殖して」
「それで食べているんですか」
「そうもしているんですか」
「そうだよ、そしてね」
 兵隊さんは蛸壺を見つつ皆にさらにお話しました。
「丘の上で穀物やお野菜、果物も作っているからね」
「そうしてですか」
「食べているんですね」
「そちらも」
「陸の人達と交易もしてね」
 そうもしてというのです。
「そちらでも穀物を手に入れているしね」
「ううん、面白いですね」
「これがオズの海の国ですか」
「お魚も養殖していて」
「海草もでか」
「そしてね」
 ここで、でした。兵隊さんは五人に蛸壺を見せました。ご自身が手に取ってそのうえで。
「こうしたものもあるよ」
「あっ、蛸壺ですか」
「蛸壺でも蛸を養殖しているんですか」
「そうしているんですね」
「うん、最近人魚の国では蛸も人気でね」
 こちらの生きものもというのです。
「こうして養殖しているんだ」
「蛸いいわね」 
 ジュリアはにこにことして言いました。
「たこ焼きは最高でお刺身にしても天麩羅にしても唐揚げにしてもよくて」
「パエリアに入れても美味しくて」
「アヒージョにしてもいいですね」
「色々食べ方ありますよね」
「烏賊も美味しいですけれど蛸も美味しいですね」
「そうですよね」
「ええ、あの美味しさをずっと知らなかったのよ」
 ジュリアはこのことは残念そうに言いました。
「私達は」
「オズの国ではですね」
「オズの国は同じ時代のアメリカが反映されるので」
「アメリカでは長い間蛸を食べなかったので」
「だからですね」
「オズの国もそうだったんですか」
「ええ、というか海の幸の美味しさはね」
 それはといいますと。
「アメリカは日本や中国から来た人に教えてもらったのよ」
「そうですよね」
 神宝がジュリアに応えました。
「アメリカはずっとお肉ばかりでしたね」
「牛肉や豚肉や鶏肉ですね」
「あと羊ね」
 そうしたお肉は食べていましたが。
「海の幸はね」
「日本や我が国の人が来るまでは」
「知らなかったのよ、あまりね」
「そうだったんですね」
「たこ焼きなんてね」
 それこそというのです。
「日本、しかも関西からの人が来てからよ」
「オズの国でも食べられる様になったんですね」
「そうよ、有り難いことにね」
「そう思うとアメリカに色々な人が来ることは」
「有り難いことよ」
 ジュリアはにこりとして神宝にお話しました。
「本当に」
「そうですよね」
「私もそう思うわ」
「オズの国も多彩になるから」
「本当にね」
「うん、オズの国も変わったよ」 
 かかしは昔からオズの国にいる人の一人としてオズの国をずっと見てきているのでよく知っています。
「ドロシーとはじめて会った頃からね」
「相当にね」 
 本当にとです、木樵も言います。
「変わったね」
「あの頃のオズの国とね」
「何もかもが変わったよ」
「全くだね」
「オズの国の人種もだからね」 
 ジャックも言うのでした。
「アフリカ系やアジア系、ヒスパニックの人が増えたよ」
「そうそう、この子達も来てね」
 モジャボロは国籍も人種も様々な五人を見てかかし達に応えました。
「多彩になったね」
「昔と比べれば」
「相当に変わったね」
「何かと」
「全くだよ、携帯電話やテレビもあるしね」
 今のオズの国はというのです。
「コンピューターもね」
「科学も進歩してね」
「そうしてね」
「そうしたものもあるね」
「そう思うと変わったわね」
 ジュリアはしみじみとして言いました。
「オズの国も」
「うん、僕達が入った頃と比べてね」 
「そうよね」
「いい具合にね」
「科学と魔法が合わさってね」
「文字通りのお伽の国としてね」
「いい風に変わったわ」
 ジュリアはモジャボロに笑顔で言いました。
「そうなったわ」
「全くだね」
「ええ、それとね」
「それと?」
「こうして人魚や魚人の人達も加わって」
 オズの国にです。
「大陸全体がオズの国になってね」
「そう、死の砂漠が大陸沿岸に移ってね」
「周辺にあった国々がオズの国に入って」
 人魚や魚人の国等海の国々もです。
「広くなったわね」
「死の砂漠だった場所は農耕地とかになって」
「人も移住して」
「いい感じになったね」
「そうよね」
「そのせいで、ですね」
 人魚の兵隊さんも言ってきました。
「私もこうしてジュリアさん達と一緒にいるんですよね」
「そうなるわね」
「はい、オズの国に入ったお陰で」
「そうよね」
「この世のあらゆるものは変わっていっていて」
 神宝が言ってきました。
「オズの国もどんどん変わっていっていますね」
「うん、ドロシーさんが最初に来た時なんかは」
 ジョージは本で読んだその頃のオズの時代について思いました。
「今よりずっと素朴だよね」
「そうだね、今思うと」
 カルロスはジョージのその指摘に頷きました。
「あの時もかなり不思議な国だったけれど」
「どんどん不思議な人達が参加して」 
 ナターシャはそうした人達を思い出しました。
「不思議なものも出て来て」
「オズの国はどんどん賑やかで素晴らしい国になっていってるわね」
 恵梨香の口調はしみじみとしています。
「こうして人魚の人達ともお会い出来て」
「そうだよね、僕も君達と出会えたことはね」 
 兵隊さんは五人にも言いました。
「オズの国が変わっていったからだよ」
「それで人魚の国もオズの国に入って」
「そしてですね」
「その中で暮らしているから」
「そうなれたからですね」
「その通りだよ、昔はオズの国の存在はね」
 それ自体もというのです。
「知らなかったしね」
「それが、ですね」
「人魚の国も加わったんですね」
「オズの国を知って」
「うん、使者にドロシーさんが来てね」
 兵隊さんはこうしたお話もしてきました。
「オズの国に入って皆で仲良く過ごさないかってね」
「あっ、ドロシーさんがですか」
「あの人が最初にこの国に来られたんですか」
「そうだったんですか」
「そうだったんだ、トトを連れてね」
 彼も一緒だったというのです。
「それでオズの国に入ったらどんな楽しいことがあるかってね」
「お話してくれて」
「そして、ですね」
「オズの国に入って楽しく過ごそうってですね」
「お話してくれてですね」
「入ったんだ」
 まさにこの国にというのです。
「そうしたんだよ」
「それで魚人の人達もですね」
「一緒に入ったんですね」
「オズの国に」
「あちらにはベッツイさんが行って、他の海の種族にはトロットさん達が行ってね」
 そうしてというのです。
「オズの国の周りにあった海の種族は全部オズの国に加わったんだ」
「そうなったんですね」
「そしてオズの国は海にも広がったんですか」
「うん、今じゃ本当にね」
 兵隊さんはにこにことしてです、五人にさらにお話しました。
「楽しく過ごしているよ」
「オズの国の中で」
「そうされているんですね」
「そうだよ、それで女王様はね」
 この人はといいますと。
「君達みたいにお邪魔してくれた人に真珠を見せてくれるからね
「その虹色の真珠ですね」
「それをですね」
「見せてくれるんですね」
「そうしてくれるんですね」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「楽しみにしておいてね」
「わかりました」
 五人は笑顔で、です。兵隊さんに応えました。
「そうさせてもらいます」
「その時が来たら」
「是非共」
「見せてもらって」
「楽しませてもらいます」
「そうしておいてね」
「あとね」
 ここでジュリアは五人にこんなことをお話してきました。
「オズの国の海は平和だからね」
「オズの国だからですね」
「だからですね」
「そうよ、冒険も安心して出来るわよ」
 それもというのです。
「勿論キャンデーとか海の中でも移動出来る方法が必要だけれどね」
「それじゃあですね」
 神宝がジュリアに言ってきました。
「潜水艦とかで移動して」
「ええ、その方法もあるわよ」
「やっぱりそうですか」
「オズの国には潜水艦もあるわね」
「はい、そうでしたね」
「最新型のものもあるし」
 それでというのです。
「それで海の中をね」
「自由にですね」
「行き来も出来るから」
 だからだというのです。
「潜水艦を使う方法もあるわ」
「それも面白そうですね」
「潜水艦を使っての冒険もいいよ」
 かかしもそれを勧めます。
「海の中を隅から隅まで見られてね」
「そこにいる沢山の種族や生きものも見られるよ」
 木樵はここで上を見上げました、海面がきらきらと見えています。
「潜水艦の中からね」
「それもまた楽しんだよね」 
 ジャックもにこにことしてお話します。
「だから機会があればね」
「そうした冒険もしてみましょう」
 ジュリアはまた五人に言いました。
「そうしましょう」
「そうですね、また海の中に行く時があれば」
「その時はお願いします」
「そうさせて下さい」
「潜水艦での移動をお願いします」
「それじゃあね」
「あっ、皆見るんだ」
 ここで兵隊さんがまた声をあげました。
「多分皆が見たことがない生きものが来たよ」
「見たことのない?」
「といいますと」
「ほら、彼だよ」
 何とです、皆の上にでした。
 細長い形の大きな鯨が来ました、縦に身体を動かして泳いでいます。
「ゼウグロドンだよ」
「ああ、あれがゼウグロドンですか」
「昔の鯨ですか」
「オズの国にいるって聞いてましたけれど」
「あれが昔の鯨ですか」
「うん、ザトウクジラやマッコウクジラと違ってね」
 そうした鯨とは、というのです。
「ああした形なんだ」
「何か恐竜に似てますね」
「海にいた恐竜に」
「それに鰐とも」
「鰭ですけれど」
「うん、鰐は海にもいるけれどね」
 兵隊さんは鰐のお話もしました。
「確かに鰐に似てるね」
「お顔の感じが」
「どうも」
「ゼウグロドンは肉食だしね」
 そうした鯨だというのです。
「マッコウクジラに近いかな」
「そうですよね」
「マッコウクジラも肉食ですね」
「大きさもそんな感じで」
「近いかも知れないですね」
「外見は全然違うけれどね」
 それでもというのです。
「近いと言えば近いかも知れないね」
「そうですよね」
「まさかああした鯨も見られるなんて」
「凄くよかったです」
「オオウミガラスやステラーカイギュウも見られましたし」
「ゼウグロドンも見られて」
「今回の冒険も満足しています」
「まだ満足するのは早いわよ」
 ジュリアは口々に言う五人に笑顔で言いました。
「真珠を見ていないでしょ」
「あっ、そうでした」
「そちらがまだでした」
「真珠がありました」
「そちらが」
「そうでしょ、だからね」
 それでというのです。
「満足するのは早いわよ」
「そうですよね」
「真珠がまだありましたね」
「じゃあ真珠を見てですね」
「それで満足をするんですね」
「そうしてね」
 是非にというのです、そしてです。
 そうしたお話をしつつゼウグロドンを見ていました、見れば上には養殖をしているお魚以外にもです。色々なお魚が泳いでいて。
 鯨達もいました、ザトウクジラやミンククジラ、ナガスクジラにマッコウクジラも来てです。
 様々な種類のイルカ達も来てです、シャチまで来ました。そうした鯨の仲間を見て神宝はしみじみとして言いました。
「いや、鯨も多いね」
「そうだよね」
「イルカやシャチも鯨の仲間で」
「こうして見るとね」
「鯨も多いのね」
 四人も神宝と一緒に言います。
「海にはね」
「こうして一杯いるのね」
「そしてオズの国にもいて」
「海で楽しく過ごしているんだね」
「そうだね、こんなに一度に鯨を見られて」 
 それでとです、また言った神宝でした。
「よかったよ、ヨウスコウカワイルカも見られて」
「神宝はあのカワイルカが好きね」
「はい、中国じゃ本当に大事にされていたんです」
「大事にされていてもなのね」
「いなくなったんで」
 このことは残念なお顔で、です。神宝はジュリアに答えました。
「悲しく思っていまして」
「それでオズの国で見られたからなのね」
「とても嬉しいです」
「ジョージのリョコウバトと一緒ね」
「そう思います」
 神宝はジョージを見つつジュリアに答えました、ジョージも無言で頷いています。
「いなくなった生きものですからね」
「そうよね」
「そうした生きものがいるにもね」
 本当にとです、かかしが皆にお話しました。
「オズの国だからね」
「この国では彼等との出会いも楽しんでね」
 木樵は皆に笑顔で言ってくれました。
「是非共ね」
「本当に色々な生きものがいるんだよね」 
 ジャックも笑顔です、とはいってもこの人はカボチャ頭の表情をいつもそうしたものにしているのですが。
「オズの国にしかいない生きものも含めてね」
「ドラゴンもロック鳥もいてね」
 モジャボロも言います。
「そうなんだよね」
「僕達も海から出られて」
 兵隊さんは養殖場のお魚達が生き生きと泳いでいるのを見て目を細めさせています、とても大きな網の中で。
「お空にも行けるんだよ」
「あっ、魔法で足を人間のものにして」
「そうしてですね」
「気球とかに乗れば」
「そうしたことも出来ますね」
「そうだよ、そうしたこともね」 
 実際にというのです。
「出来るんだよ」
「そうなんですね」
「人魚もお空に行けるんですね」
「オズの国では」
「そうしたことも出来るんですね」
「そうだよ、そうしたこともね」
 本当にというのです。
「出来るのがオズの国なんだよ」
「不思議の国だから」
「だからですね」
「そうしたことも出来る」
「海からお空に行くことも」
「そうしたことまで」
「僕達も最初はそんなことが出来るなんてね」
 それこそというのです。
「思っていなかったよ」
「普通はそうですよね」
「そんなことが出来るなんてですよね」
「思わないですよね」
「海の中にいるのにお空に出るとか」
「とても」
「そう、想像もしてなかったよ」
 そうだったというのです、人魚の人達にしても。
「それが出来る様になったから」
「だからですね」
「それが出来る様になって」
「人魚の人達も嬉しいんですね」
「僕も行ったことがあるよ」
 そのお空にです。
「陸から上がって気球でね」
「あれを使ってですか」
「そうしてですか」
「そうだったんだ」
 まさにといいうのです。
「面白かったよ」
「そうですよね、海の中からお空の上に行くことも」
「普通はないですから」
「オズの国ならではで」
「それが出来たんですか」
「夢みたいだけれど現実だから」
 兵隊さんはそう思っていたのです。
「それが出来たんだからね」
「本当にそう思いますよね」
「夢みたいだって」
「けれどそれが現実だって」
「実際に体験出来て」
「本当にね、それとね」
 さらにお話する兵隊さんでした。
「魚人や他の種族の人も出来るからね」
「そうした人達もですね」
「海にいる他の種族の人達もですね」
「お空に出られる」
「そうなんですね」
「そうだよ、天使の人達とも会ったよ」
 彼等とも、というのです。
「そして精霊の人達ともね」
「ポリクロームともかしら」
 ジュリアは精霊と聞いて彼女のことを尋ねました。
「会ったかしら」
「虹の妖精の?」
「あのいつもひらひら踊っているね」
「うん、実は虹の妖精の雲まで行ったんだ」
「あっ、それでなのね」
「彼女とも会ったよ」
 そのポリクロームともというのです。
「そうしたよ」
「それは何よりね」
「オズの国のお空はお魚もいるしね」
 そして沢山泳いでいます。
「海に似ているところもあってよかったよ」
「オズの国のお空って凄いですよね」
 神宝もあのお空のことを思い出しています。
「お魚がいて妖精さんや天使さんがいて沢山の鳥がいて」
「そうだよね」
「本当に不思議です」
「お空に行ってとても楽しかったよ」
 兵隊さんはこうも言いました。
「また行きたいね」
「そうですね」
「うん、またね」
「機会があれば」
「そうしたいよ」
 是非にといいます、そうしたお話をしてです。
 皆で人魚の国のお外を見回りました、そしてティータイムとなりましたが兵隊さんは皆をある場所に案内してくれました。その場所はといいますと。
 養殖場の近くの洞窟ですがそこに入るとです、兵隊さんはその入口にあった赤いボタンを押しました。すると。
 洞窟の入口を右から左に岩が動いて塞いでしまいました、それから今度は赤いボタンの隣にあった青いボタンを押しますと。
 今度は上から下にです、海水がゴポゴポと降りてです。そうして海水がなくなりました。そうしてなのでした。
 兵隊さんは皆にです、笑顔で言いました。
「ティータイムはここで」
「あっ、ここならお水がないので」
「お茶も飲めますね」
「ええ、陸にいる時と同じくね」 
 ジュリアは兵隊さんに答えました。
「出来るわ」
「そう思いまして」 
 見れば兵隊さんは人間の足になっています、下半身には黒い海パンを穿いています。
「それで、です」
「気を利かしてくれたのね」
「そうなるでしょうか」
「有り難う、それじゃあね」
「今からですね」
「お茶を飲むわ」
 ティータイムを楽しむというのです。
「そうさせてもらうわ」
「それでは」
「ええ、そしてね」
「そのうえで、ですね」
「兵隊さんもどうかしら」
 ジュリアは兵隊さんに笑顔でお誘いをかけました。
「今から」
「私もですか」
「ティータイムは皆で楽しむものでしょ」
「だからですか」
「ええ、どうかしら」
「ご一緒して宜しいのですか」
「そうよ」
 ジュリアは笑顔のままでした。
「だからね」
「そこまで言われるのでしたら」
「皆でね」
「ティータイムを」
「楽しみましょう」
 こうしてでした、皆でです。
 ティータイムとなりました、テーブル掛けから出されたのはロイヤルミルクティーにマシュマロとケーキ、干しフルーツをそれぞれ三段に分けているティーセットでした。
 そのティーセットを一口ずつお口に入れてです、兵隊さんは言いました。
「これは」
「どうかしら」
「はい、とても美味しいです」 
 これが兵隊さんの感想でした。
「とても」
「そうなのね」
「素敵な味ですね」
 ミルクティーを飲みながらの言葉です。
「陸での食事もいいとです」
「思うのね」
「陸地で食べることも多いですが」
 人魚の人達もというのです。
「こちらもですね」
「ティーセットもなのね」
「いいですね」
 実際にというのです。
「本当に」
「それは何よりね」
「どれも甘いですし」
 兵隊さんはマシュマロも食べています、柔らかいその中にはチョコレートがしっかりと入っています。
「それも素敵な感じで」
「素敵なのね」
「はい、甘さが」
「適度な甘さということかしら」
「極端な甘ったるさではないですね」
 こう言うのでした。
「私の好みです」
「あら、そうだったの」
「はい、甘過ぎるとどうも」
 兵隊さんにしてみればというのです。
「苦手なんです」
「個人的な趣味としては」
「そうなんです」
「それじゃあ今日のセットは」
「丁度いいですね」
 兵隊さんにとってというのです。
「いや本当に」
「それは何よりね」
「甘いものは好きですが」
 それでもというのです。
「極端に甘いと」
「駄目だから」
「これ位がいいんです」
「これ位の甘さのものをなのね」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「このティーセットは素敵ですね」
「そうなのね、じゃあね」
 ジュリアは兵隊さんの言葉を受けてさらに言いました。
「どんどん食べてね」
「このティーセットをですか」
「幾らでも出せるから」
「そのテーブル掛けから」
「ええ、だからね」
 それでというのです。
「好きなだけ食べてね」
「そうしていいのですか」
「オズの国では遠慮はいけないことでしょ」
「はい、そう言われますと」
「だからよ」
 このこともあってというのです。
「遠慮は無用よ」
「それでは」
 兵隊さんも応えてでした、そしてです。
 兵隊さんはティーセットを堪能しました、兵隊さんにとって程よい甘さのそれを。そのティータイムの後もです。
 人魚の国を案内してもらいましたがここで五人がこんなことを言いました。
「オズの国の人魚は喋ることが出来ますね」
「楽に人間の足にもなれて」
「それからも喋ることが出来ますね」
「それも出来るんですね」
「そうなんですね」
「うん、普通にね」
 兵隊さんは五人に気さくに答えました。
「出来るよ」
「そうなんですね」
「人間の足になっても喋られるんですね」
「喋れなくなる呪いとかなくて」
ごく普通にですね」
「そうなれるんですね」
「ごく普通にね」
「だから人魚姫とは違うの」
 ジュリアが五人に笑顔でお話しました。
「そうしたことはないの」
「人魚の身体が完全に人間のものになっても」
「それでもですね」
「喋ることが出来るんですね」
「最初から喋ることが出来て」
「それが出来るんですね」
「そうよ、貴方達の世界の物語とは違うの」
 人魚姫とは、というのです。
「そこはわかっておいてね」
「わかりました」
「本当にそこは違うんですね」
「オズの国の人魚は人魚姫じゃないんですね」
「オズの国の人魚ですね」
「そうなんですね」
「そういうことよ、だから悲しいことはないから」
 人魚姫の様にです。
「安心してね」
「はい」
 五人はジュリアに笑顔で応えました、そしてです。
 皆で仲良く人魚の国を見て回りました、そのうえで街に帰った時にです。門のところに海月達が泳いできましたが。
「刺さないみたいだね」
「そうだね」
 かかしと木樵はただふわふわと浮かんでいるだけの海月を見てお話をしました。
「特にね」
「そうしたことはないね」
「ただ浮かんでいてね」
「こちらに何かをしてくることはないね」
「海月は攻撃してこないですよ」 
 兵隊さんもお話します。
「特にオズの国の海月は平和でして」
「だから余計になんだね」
「触っても何もしません」
 ジャックの質問にも答えます、実際に触ると触手のうちの一本を挙げてそうして挨拶をしてきました。
「この通りです」
「挨拶もしてきてだね」
「海の快い友達です」
「ついつい海月はね」
 モジャボロが言うにはです。
「刺してくるから注意が必要だけれど」
「オズの国ではそれもないので」
「安心出来るんだね」
「はい」
 その通りだというのです。
「ですから安心して下さい」
「それじゃあね」
「とにかくです」 
 また言った兵隊さんでした。
「海月にも安心して下さい」
「海のお友達だね」
「そう思って下さい」 
 こうお話してです、そのうえで。
 皆は海月の歓迎も受けて街に戻りました、そうして夕食を食べてそれからも楽しい時間を過ごして寝るのでした。



海の幸だけじゃなく、新鮮な野菜とかもあるのか。
美姫 「豪華な食事よね」
だな。皆、楽しそうで何よりだ。
美姫 「真珠の方は潜水艦で行く事になるのかしら」
それもまた楽しそうだな。
美姫 「どんな真珠なのか楽しみね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」
ではでは。



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