『オズのトト』




           第二幕  いざ森へ

 エメラルドの都にかかしと樵、そしてカエルマンがやって来ました。三人はすぐにオズマに挨拶をしました。
 そしてです、かかしは一緒にいた五人に言いました。
「今回も来てくれんだね」
「はい、宜しくお願いします」
「今回も」
「こちらこそね」
「さて、今回僕達はエメラルドの都への定期の訪問で来たけれど」
 樵も五人に言います。
「君達はいつも通り思い立って来てくれたのかな」
「そうでした」
「実は」
「うん、そこはいつも通りだよね」
 カエルマンも五人ににこりとして言います。
「じゃあいつも通りですね」
「楽しくですね」
「一緒にですね」
「遊ぼうね」
「今回も宜しくね」
 ドロシーはにこりとして三人に言いました。
「そしてよかったらね」
「冒険だね」
「それにもだね」
「一緒に出ましょう}
 一番古いお友達であるかかしと樵に言うのでした。
「機会があったな」
「うん、そうしたいけれどね」
「実は僕達は今は駄目なんだ」
 かかしと樵はドロシーに申し訳ないお顔で答えました。
「ちょっとオズマと一緒にやることがあってね」
「エメラルドの都の城壁のことでね」
「城壁を今以上に奇麗にしようってね」
「そうしないといけないから」
「だからね」
「今回はね」
 無理だというのです。
「また今度行こうね」
「そうしようね」
「わかったわ」
 ドロシーも二人の言葉に頷いたのでした、いささか残念そうに。
「うん、それじゃあ」
「またね」
「機会があったら」
「よかったら僕が行かせてもらうよ」
 二人の代わりにカエルマンが名乗り出ました。
「冒険に行くのならね」
「そうしてくれるのね」
「是非共ね」
「それじゃあその時は宜しくね」
 こう約束をするのでした、そしてです。
 五人もです、こうお話するのでした。
「何かまたね」
「うん、冒険になるかも」
「オズの国で冒険のお話が出たら」
「実際に冒険に出ることが多いから」
「だから今回もね」
「ええ、その時はね」
 実際にとです、その場にいたオズマも五人に言いました。
「貴方達も一緒に行ってもらうかも知れないわ」
「わかりました、じゃあその時は」
 最初にジョージが応えました。
「宜しくお願いします」
「今回また行くことになったら」
 神宝は早速その時のことを考えています。
「一体どんな冒険になるか楽しみです」
「オズの国は色々な場所がありますけれど」
 カルロスも言います。
「果たしてどういった場所に行けるかですね」
「都にいても冒険に出ても楽しいですから」 
 ナターシャも笑顔になっています。
「どうなってもいいですね」
「じゃあ冒険に出た時は」
 最後に恵梨香が言いました。
「また行ける人達で」
「私も久し振りに行こうかな」 
 ムシノスケも出て来ました。
「そうさせてもらおうかな」
「大学の方は」
「今はモジャボロ君が弟さんと一緒にいてね」
「だからですか」
「彼は実は大学の副学長でもあってね」
 それでというのです。
「私の留守も守ってくれるんだ」
「そうですか」
「うん、だからね」
「今回はですね」
「私も冒険に、そして」
 ムシノスケはさらに言いました。
「フィールドワークもね」
「フィールドワーク?」
「学問は本を読むだけじゃないのだよ」
 ムシノスケは何処か気取った仕草で恵梨香達に言いました。
「その場所に行ってその目で見ることもね」
「学問ですか」
「そうなのだよ、だから冒険も旅行もね」
「学問ですか」
「そう、オズの国では両者の区別は殆どないけれど」 
 冒険と旅行のです。
「それもまた、だよ」
「学問なんですね」
「最近私はそれをする機会がなかったからね」
「だからこそですね」
「是非ね」 
 冒険の機会があればというのです。
「一緒に行かせてもらうよ」
「わかりました、じゃあムシノスケさんとカエルマンさんがですね」
 その時のメンバーはとです、恵梨香は今この場所にいるオズの国の人達を観てそのうえで言いました。
「一緒に行きますね」
「あと私もね」 
 ドロシーも言ってきました。
「行かせてもらうわ」
「あっ、ドロシーさんもですね」
「是非ね」
「そうですか」
「オズマも行けないし」
「僕達もだからね」
「それで、だからね」
 かかしと樵も言います。
「今回はその顔触れで、ってなるかな」
「その時はね」
「つぎはぎ娘さんは」
 ここで恵梨香は彼女の姿が見えないことに気付きました。
「どちらに」
「ビリーナの国に行ったわよ」
 オズマが恵梨香に答えました。
「臆病ライオンと腹ペコタイガー、エリカと一緒にね」
「そうなんですか」
「そう、そしてね」
 オズマはさらにお話しました。
「魔法使いさんはリンキティンク王のところに行って」
「あの人もですか」
「ベッツイとトロットはハンクやキャプテンさんと一緒に中華街に遊びに行ったから」
「中華街ですか」
「オズの国にもあるから」
 だからというのです。
「だからね」
「あっ、アメリカにも中国系の人がいるから」
「だからですね」
 ジョージと神宝がこのことに気付きました。
「オズの国にも中華街がある」
「そうなんですね」
「まあ中華街はどの国にもあるよね」
「ええ、大抵の国にね」
 ナターシャはカルロスのその言葉に頷きました。
「あるし」
「オズの国にもだね」
「じゃあお二人は今は、なのね」
 また言った恵梨香でした。
「中華街で楽しく食べたりしてるのね」
「そうだと思うわ」
 オズマもそうではないかしらと答えます。
「あの娘達もね」
「そうですか」
「うん、そしてね」
「そして、ですか」
「今残ってるのは私達に木の馬にチクタクとね」
「私よ」
 ここでガラスの猫が登場です。
「宜しくね」
「あっ、貴女も冒険に行きたいのね」
「猫はいつも好奇心旺盛でしょ」
 左の前足を出して言うのでした。
「そうでしょ」
「ええ、だからなのね」
「冒険ならね」
 まさにというのです。
「行かせてもらうわ」
「わかったわ、じゃあね」
「その時は宜しくね」
「私はーー今はこの国にーーいますーーが」
 チクタクも言ってきました。
「あと少しーーしたらーー出発ーーです」
「何処になの?」
「ファイター大尉のーーところにーーです」
 そこにというのです。
「行ってーーきます」
「そうなの」
「はいーーそうーーです」
 こう恵梨香に言うのでした。
「ですからーー冒険はーーです」
「今回はなのね」
「残念ーーながら」 
 そうだというのです。
「またーー今度」
「わかったわ、魔法使いさんもオジョのところに行ったし」
 ドロシーはこれまた古いお友達のことを思い出しました。
「このメンバーで行くことになるかも」
「冒険に出るとしたらね」
「ええ、まあね」
 こうも言ったドロシーでした。
「まだわからないけれど」
「出た時は」
「大抵こうしたお話が出たら行くことになるけれど」
「その時はだね」
「このメンバーね」
「ひよっとしたら」
 笑ってこうも言ったカエルマンでした。
「ボタンと一緒になるかもね」
「ボタン=ブライトですね」
「そう、あの子ともね」
「あの子はわからないですね」
「そう、何時何処で会えるかね」
「本当にわからないですよね」
「いつも急に会うからね」
 カエルマンにしてもそうです、笑って彼のことをお話するのでした。
「いや、この前なんかね」
「どういった出会いでした?」
「朝起きてお池の中のおい家から出たら」
「そこにですか」
「いたんだよ」
 そうだったというのです。
「お池の傍で寝ていたんだよ」
「それはまた」
「凄いというかね」
「あの子ならではですね」
「それで起こしてどうしてここにいるかって聞いたら」
「いつも通りですね」
「わからない、だったよ」
 本当に彼にとってはいつも通りだったというのです。
「何というかね」
「よくわからない子ですよね」
「寝ている間にだからね」
 何処かに移動してしまうのです。
「本当にわからないよ、ただね」
「それはオズの国の中のことで」
「出てもすぐ傍だからね」
 そのオズの国の、です。
「安心出来るだよね」
「そうですよね」
「そうした意味で彼もまたオズの国の住人なんだ」
 オズの国から離れることがないからです、だからボタンもオズの国の住人だというのです。
「そうなるんだよ」
「そうですか」
「うん、彼もね」
 こう恵梨香達に言うのでした。
「そうなるよ」
「まあ何時会える子かわからないから」
 ドロシーも言います。
「会えた時はね」
「一緒にですね」
「楽しみましょう」
 そうしようというのです。
「遊んでね」
「わかりました、それじゃあ」
「彼のあの体質はどうしてなのか」
 ムシノスケは腕を組みぐるぐると歩きながら言いました。
「これは一つの謎だね」
「原因がわからないからね」
「魔法の影響みたいだけれどね」
 かかしと樵は立ったままムシノスケに応えました。
「けれどね」
「詳しいことはわからないね」
「そう、だからね」
 それでとです、ムシノスケはさらに言うのでした。
「少し研究してみようかな」
「どうして研究するんだい?」
「彼の身体を調べてね」
 そうしてとです、カエルマンに答えました。
「血液を調べたりレントゲンで検査してね」
「病気みたいだね」
「いやいや、体質もだよ」
「そうしてだね」
「調べるものだからね」
 病気の原因を調べるのと変わらないというのです。
「だからね」
「彼についてはだね」
「一度大学でね」
「その医学部で」
「うん、血液やらを調べてね」
 そうしてというのです。
「どうした体質か調べたいね」
「魔法がかかっていたら」
 オズマが言うにはです。
「それは血液やお肌の検査でわかるかも知れないわ」
「左様ですな」
「魔法も身体に影響を与えるから」
「若し魔法の影響なら」
「やっぱりね」
「身体にですな」
「その証拠があるわ」
 紛れもなく、というのです。
「そうなるわ」
「では機会があれば」
「その時はね」
「彼の同意を得て」
 そうしてというのです、ムシノスケ学長も紳士なので決して無理強いをすることはしないのです。
「そうしましょうぞ」
「その時はね」
「それでオズマ姫達は城壁のお話をするとして」 
 ここで言ったのはガラスの猫でした。
「それでね」
「今何をするかなのね」
「何をして遊ぶの?」
 ガラスの猫はドロシーにその透き通ったお顔を向けて尋ねました。
「それで」
「そうね、これからね」
 ドロシーはガラスの猫の言葉を受けて考えてから言いました。
「スポーツはどうかしら」
「それをして遊ぶのね」
「陸上競技とかね」
「陸上競技?」
「それはどうかしら」
「じゃあマラソンとかかしら」 
 ガラスの猫は陸上競技と聞いてこの競技をお話に出しました。
「それとか?」
「あっ、いいわね」
「貴方達もどうかしら」
 ドロシーは恵梨香達五人もマラソンに誘いました。
「この都の中を巡ってね」
「お散歩みたいにですね」
「走るんですね」
「そう、ジャージに着替えてシューズを履いて」 
 そうしてというのです。
「そうしない?」
「そうですね、じゃあ」
「僕達走ったりするのも嫌いじゃないですし」
「エメラルドの都も大好きですし」
「それで、ですね」
「これから皆で」
「そう、どうかしら」
 五人をにこりと笑って誘うのでした。
「これからね」
「はい、じゃあお願いします」
「今日はそうして遊びましょう」
「エメラルドの都の中を走って」
「お喋りもして」
「そのうえで」
「ええ、ゆっくりと走ってね」
 別に速く走ることもないというのです。
「そうしましょう」
「わかりました」
「じゃあ今から」
「僕も参加させてもらうよ」
 トトも参加するというのです。
「楽しくね」
「貴方もなのね」
「僕はドロシーといつも一緒だからね」
 恵梨香ににこりと笑って答えました。
「だからね」
「それでなのね」
「そう、だからね」
「一緒に走るのね」
「そうさせてもらうよ」
「勿論私もよ」
 ガラスの猫も参加を志願してきました。
「エメラルドの都を観て回るわ」
「そうしながら走るのね」
「そうよ」
 その通りとです、彼女も恵梨香に答えました。
「是非ね」
「それじゃあ」
「一緒に走りましょう」
「じゃあジャージとシューズに着替えて」
「服と靴は好きなのを選んでね」 
 オズマが言ってきました。
「貴方達のね」
「わかりました」
「じゃあ選ばさせてもらいます」
「今から」
「衣裳部屋に一杯あるから」
 ジャージやシューズもというのです、他の服や靴と一緒で。
「だからね」
「好きなのを選んで」
「そうしてですね」
「準備体操もしてね」
 それは忘れてはいけないというのです。
「そうしてね」
「そうですね、準備体操をしないと」
「運動の前には」
「やっぱり怪我しますからね」
「それは忘れたら駄目ですね」
「絶対に」
「ええ、オズの国では怪我をしてもすぐに治るけれど」
 グリンダや魔法使いさんが作ってくれたお薬や医療品のお陰で、です。例え怪我をしてもあっという間に治ってしまうのです。
「けれどやっぱり怪我はしたくないでしょ」
「はい、どうしても」
「痛いですから」
「怪我はしたくないです」
 男の子三人がオズマに答えます。
「だからですね」
「まず準備体操をする」
「それが重要ですね」
「そうよ、あと準備体操をするとね」
 オズマは五人にさらにお話をしました。
「身体がほぐれて温まるから」
「身体が動きやすい」
「そうなるんですね」
「そうよ、これで怪我をしないし」 
 今度は女の子二人にお話するオズマでした。
「動きやすくもなるの」
「だから準備体操は忘れない」
「そうした方がいいんですね」
「そうよ」
 こう五人に言うのでした。
「だからオズの国では法律で決めているの」
「運動をする前には準備体操をすること」
「このことをですね」
「そして運動の後はね」
 その時もというのです。
「整理体操をすることもね」
「それもですね」
「オズの国の法律で決めてるんですね」
「そうよ」
 こうお話するのでした。
「だからね」
「整理体操も忘れない」
「そちらも」
「そう、運動を沢山した後は身体が疲れてるから」
 だからだというのです。
「終わったらね」
「身体をしっかりとですね」
「整える為にですね」
「整理体操もする」
「それが大事ですね」
「そう、だからことも忘れないでね」
 その整理体操もというのです。
「わかったわね」
「はい、わかりました」
「終わったら整理体操もします」
 五人はオズマにはっきりとした返事をしました、そうしてそれぞれのジャージとシューズを選んだのですが。
 ドロシーは上下共白いジャージを着ていますが五人のそれぞれのジャージの色を見て思わず笑顔になりました。
「皆好きな色が出てるわね」
「あっ、確かに」
 赤いジャージのジョージが最初に応えました。
「そうですね」
「何も意識せずに選んだんですけれど」 
 青いジャージ姿の神宝が次に言いました。
「自然と好きな色になってますね」
「ううん、色々なジャージがあったんですけれど」
 カルロス少し苦笑いになっています、この子は黄色いジャージです。
「僕は黄色を選んでしまいました」
「私もですね」
 ナターシャは自分が着ている黒のジャージを見ています。
「黒が好きだから」
「何か皆意識しないで、ですね」
 最後に言った恵梨香のジャージの色はピンクです、本当に五人が普段着ている服と同じ色です。
「それぞれの色になりましたね」
「そうね、五人共ね」
 ドロシーは誤飲を見てしみじみとして言いました。
「自分達が好きな色を選んだわね」
「そうですね」
「何か本当に自然にです」
「いつもの色を選んじゃいました」
「ジャージについても」
「そうなりました」
「この辺りどうしてもだよね」
 トトも言います、ドロシーの足元で尻尾をぱたぱたとさせてこれからのことに期待を見せています。
「好みが出るよね」
「そうよね」
「うん、ドロシーは色々な服を着るけれど」
「今は白でね」
「それはドロシーが色々な色が好きだからかな」
「ええ、そうだと思うわ」
 実際にとです、ドロシーはトトに答えました、
「私自身もね」
「うん、じゃあね」
「これからね」
「準備体操しようね」
「ええ、それからね」 
「走るんだね」
「そうしましょう」 
 こうトトに応えてです、そしてでした。
 皆で輪になってそのうえで準備体操をじっくりとしてでした、王宮を出て都の中を走りますが。
 都の中を走ってです、五人はこんなことを言いました。
「お散歩でも観てたけれど」
「こうした走って中を観てもね」
「いいね」
「うん、景色を楽しめて」
「面白いわ」
「お散歩で観る景色もいいけれど」
 五人にです、先頭を走るドロシーが言ってきました。
「けれどね」
「それでもですね」
「こうして走りながら観る都もいいですね」
「いい景色ですね」
「だから貴方達を誘ったの」
 実際にというのです。
「これもいいと思ってね」
「だからですね」
「こうして楽しんで」
「それじゃあですね」
「じっくり走ってですね」
「じっくり観るんですね」
「そうしましょう」
 こう言いつつ走りますが。
 ここで、です。ドロシーは五人が走るのを観てこうも言いました。
「皆速いし体力もあるわね」
「そうですか?」
「別にそうは思わないですよ」
「特に速くないですし体力も」
「別にです」
「ないと思いますよ」
「いえいえ、私足には自信があるから」
 だからだというのです。
「速く長く走ることも」
「そのドロシーさんについていっているからですか」
「いいっていうんですか」
「そうなんですね」
「そうよ、やっぱりね」
 ドロシーが言うにはです。
「いつも冒険に出て歩いてるでしょ」
「あっ、オズの国で」
「確かに僕達いつも冒険に出ていますし」
「それで歩いているから」
「だからですね」
「それが身体を動かしてるってことになるんですね」
「そうよ、ああして毎日長く歩くこともね」
 それもというのです。
「いい運動だから」
「だからですか」
「僕達も動けるんですね」
「ドロシーさんについていけてるんですね」
「そうよ、だからね」 
 男の子三人に応えるのでした。
「冒険は体力もつけてくれるのよ」
「あれもまた運動だったんですね」
「スポーツだったんですね」
「そうよ」
 ドロシーは女の子二人にも言いました。
「だからね」
「また冒険に出て」
「歩くといいんですね」
「そうよ、私自身ね」
 くすりと笑って言うのでした。
「冒険に出たいしね」
「冒険はドロシーさんにとって最高のスポーツですね」
「そうよ」
 その通りだとです、ドロシーは恵梨香に答えました。
「何といってもね」
「だから冒険がお好きなんですね」
「そうなの。気付いたらね」
 今ではというのです。
「オズの国で一番の冒険家って言われてるわ」
「そうなんですか」
「そしてこうしてね」
「走られる様にもなってるんですね」
「そうなの」 
 実際にというのです。
「カンサスにいた時はこんなに走られなかったわ」
「カンサスの時も結構活発だったんじゃ」
「お元気でしたよね」
「そうでしたよね」
 ジョージと神宝、カルロスがドロシーに言いました。
「お話を読んでいますと」
「そうでしたよね」
「トトとも遊んでて」
「まあね」
 トトが三人に応えます、ドロシーの横を元気に四本の足で走っています。
「ドロシーはあの時から元気だったよ」
「そうそう、トトと遊んでいて」
「とても元気でね」
「オズの国にいた時もよく動けていたし」
「そういえば農家で」
「身体を動かすお仕事だから」
 ナターシャと恵梨香も言います。
「そちらでも身体を動かしていて」
「その頃から体力もあって」
「そうだよ」
 その通りとです、トトは女の子達にも応えました。
「けれどオズの国に来てからね」
「いつも冒険に出ていて」
「歩いているから」
「その分体力もついてね」
 カンサスにいた時以上にです。
「運動も出来る様になったんだ」
「そういえばオズの国の冒険は」
 恵梨香はまた言いました。
「身体全体を使うアスレチックみたいな場所もよく行くし」
「そうだよね」
「そのこともあってなのね」
「うん、ドロシーはスポーツも得意になったんだ」
「成程ね」
「オズの国のお姫様の中じゃ一番運動神経がよくて体力もあるかな」
 そうした風になっているというのです。
「冒険の数が違うしね」
「トロットやベッツイもよく行ってるけれど」
 ドロシーの言葉です。
「やっぱり私がなのね」
「絶対にそうだよ」
「そうなのね」
「うん、冒険に出ていないと出たくなるよね」
「どうしてもね」
「そこまで好きだし実際によく出てるし」
 勿論トトもいつも一緒です。
「ドロシーは今やそうなっているよ」
「オズの国一の冒険家で」
「そして運動神経もかなりよくなっているんだ」
「そうなのね」
「ドロシーにとって本当に冒険はいいことなんだね」
 こうも言ったトトでした。
「そしてオズの国も」
「若しオズの国に来られなかったら」 
 それこそと言うドロシーでした、奇麗な緑色でエメラルドで飾られているその街の中を走りつつ観ながら。
「私どうなったいたかしら」
「僕もね」
「お家も畑も売らないといけない時もあったし」
「それでおじさんとおばさんもこっちに来たしね」
「そう思うとね」
「本当にだよね」
 カンサスにいた時のことを思いつつ言うトトでした。
「僕達どうなっていたかな」
「ひょっとしたら」
 こうも言ったドロシーでした。
「私達離れ離れになっていたかも」
「まさか」
「いえ、本当によ」
「お家も畑も売って」
「私達何処に流れていたかもわからなくて」
 そうなっていてというのです。
「私もトトといられなくなって」
「それでなんだ」
「離れ離れになっていたかも知れないわ」
「僕そんなの信じられないよ」
 トトは駆けつつ自分の隣にいるドロシーを見上げて言いました、その黒くて大きな目で。
「ドロシーと離れ離れとか」
「私もよ、けれどね」
「オズの国に来ていなかったら」
「そうなっていたかも知れないわよ」
「そう思うと怖いね」
「そうよね、だからね」
 そう思うこともあるからというのです。
「私オズの国に来られてよかったわ」
「そしてこの国に住めて」
「本当によかったわ」
「運命ですね」
 ここで恵梨香がドロシーに言いました、彼女のすぐ隣に来て。これまではドrシーとトトが先頭にいて五人がその後ろにいましたが五人はその距離を一気に詰めてドロシー達の隣に来ました。
「それは」
「あっ、そう言ってくれるの」
「はい」
「そう、運命なのね」
「ドロシーさんにとって」
「ううん、そう言われると」
 ドロシーも恵梨香のお話を聞いて言いました。
「そうかも知れないわね」
「そうですよね」
「ええ、考えてみると私がね」
「ドロシーさんが?」
「若しオズの国に来なかったら」
 その時はというのです。
「皆もオズの国のことを知らなかったわよね」
「そうなんですよね」
「若しドロシーさんが竜巻に運ばれないで」
「波にさらわれたりモジャボロさんと出会わなかったり」
「そうしてオズの国に来られなかったら」
「そうなっていたら」
「ボームさんも知ることが出来なかったわ」
 オズの国の物語をです。
「あの人が言われるには」
「そう思うと不思議ですね」
「まさに運命ですね」
「ドロシーさんがオズの国に来られたのは」
「オズの神々のお導き」
「そうなんですね」
「そうだと思うわ、私もね」 
 走りつつもしみじみと思うドロシーでした。
「本当にね」
「そうだね、僕もこうしてドロシーとずっとオズの国にいられるのも」
 トトも思いました、それも心から。
「それもね」
「運命よね」
「そうだよね」
「他の皆もね」
 外の世界からオズの国に来た人皆がというのです。
「オズの国に来たのは運命で」
「私達もですね」
「そうだと思うわ、じゃあその運命つまりは神々のお導きにね」
「感謝ですね」
「そうしましょう」
 心からというのです、そしてでした。
 五人はエメラルドの都をじっくりと走って楽しみました、そしてです。 
 その後で紅茶とチョコレートのシュークリーム、チョコレートケーキ、チョコレートそのものの三段セットのティーセットを楽しんでいるとジュリアが来てドロシーにこう言ったのでした。
「あの、オジョから連絡が来まして」
「あの子から?」
「はい、マンチキンの国まで来て欲しいって」
 そう言ってきたというのです。
「今しがたオズマ姫に携帯で」
「何かあったのかしら」
「あの子が住んでいる場所の山が大変なことになっているとか」
「それでなの」
「何とかして欲しいと」
「一体何があったの?」 
 ドロシーはジュリアに具体的なことを尋ねました。
「一体」
「はい、鳥が異常に多くやって来てです」
「鳥さん達が」
「それでそこまで森に住んでいる生きもの立とトラブルになっているとか」
「それでその解決になのね」
「どうかお願いしたいと、ですが」
「今都で手が空いているのは」
 ドロシーはここまで聞いてわかりました。
「つまりは」
「ドロシーさん達だけなので」
「私達がなのね」
「はい、オズマ姫が言われました」
「わかったわ」
 ここまで聞いてです、ドロシーは言いました。
「すぐにオジョのところに行くわ」
「ではお願いします、ただ」
「ただ?」
「今すぐはです」
 それはといいますと。
「無理です」
「旅の用意はすぐに出来るけれど」
「いえ、今宵はパーティーの予定が入っています」
「あっ、そうだったわね」 
 ドロシーも言われて思い出しました。
「確かに」
「ですからまずはです」
「パーティーに出てなのね」
「はい」
 そうしてというのです。
「それからです」
「夜は出発出来ないし」
 ドロシーは夜歩くことはしません、このことはオズの国の冒険では基本と言っていいことです。
「だから」
「はい、ですから」
「翌朝になのね」
「出発して頂きたいのですが」
「わかったわ」
 ドロシーも納得してです、ジュリアに答えました。
「それじゃあね」
「はい、今日はです」
「パーティーね」
「都の市民達と共に」
「そうだったわね、オズマが主催してね」
 まさにそのうえで、です。
「そうしての大がかりなパーティーで」
「ドロシーさんも王女としてです」
「出席する予定だったし」
「では」
「ええ、明日の朝に御飯を食べてね」
 そうしてからと言うのでした。
「出発するわ」
「ご一緒の方々はムシノスケ先生とカエルマンさんですね」
「トトとね」
 ドロシーなトトのことは絶対に忘れません、そして恵梨香達五人を観てそのうえでまた言いました。
「この子達もね」
「はい、では」
「ムシノスケ先生とカエルマンさんには」
「これからお話します」
「じゃあそちらもお願いするわね」
「はい」
 ジュリアはドロシーのお願いにこくりと頷いて答えました。
「すぐに」
「じゃあ皆で出発するわね」
「それでは」
「ええ、ただね」
「ただとは」
「オジョはすぐに来て欲しいって言ってるのよね」
「左様です」
 その通りだとです、ジュリアはドロシーに答えました。
「そうお願いしてきています」
「じゃあ普段みたいに歩いて行くよりもね」
「別の手段で行かれますか」
「そうするわ、オークか飛行船か」
 お空の移動手段を考えるドロシーでした。
「どちらがいいかしら」
「飛行船にされては」
「皆で行くからなのね」
「あの船は魔法使いさんだけでなくムシノスケ教授も動かせますので」
 だからだというのです。
「丁度いいかと」
「そうね、じゃあね」
「はい、すぐにですね」
「お空からね」
 歩いて行くのではなく、というのです。
「行ってね」
「そしてですね」
「すぐにオジョのところに行くわ」
 ドロシーはジュリアとお話を進めて決めていきます。
「そうしていくわね」
「それでは」
「ええ、ただ鳥さん達がなのね」
「とにかく異常な数だとか」
「山に来てなのね」
「定住しようとしてです」
 そうしてというのです。
「そこにいる生きもの達とです」
「揉めているのね」
「そうです」
 これまでお話した通りにというのです。
「先程お話した通り」
「そうよね、じゃあね」
「宜しくお願いします」
 こうお話してです、今回の冒険のことが決まりました。
 そのお話の後です、五人はドロシーに言いました。
「今回もですめ」
「僕達冒険に出られるんですね」
「今度はオジョさんのところですね」
「そういえばオジョさんとはあまりお話してないですし」
「いい機会でもありますね」
「ええ、そうよね」
 五人とオジョのことはこう言うドロシーでした。
「いい機会になるわね」
「そうですよね」
「何度もオズの国にお邪魔してますけれど」
「オジョさんとはお会いしても」
「これといってお話したことなくて」
「今回が、ですね」
「ええ、じゃあそのことも含めてね」
 是非にと言うのでした。
「冒険に行きましょう」
「飛行船に乗ってね」
 トトも五人に言います。
「行こうね」
「うん、前に飛行船乗ったけれど」
「それでオズの国のお空を冒険したね」
「魔法使いさん達も一緒で」
「あの時の冒険も楽しかったわ」
「その飛行船にまた乗るのね」
「そう、そしてね」
 そのうえでと言うトトでした。
「今回はムシノスケ教授とカエルマンさんが一緒だから」
「そういえばムシノスケ教授と一緒の冒険は」
 恵梨香が言います。
「これまでなかったかしら」
「あまり冒険に出ない人だからね」 
 それでというのです。
「だからね」
「私達もなのね」
「うん、冒険もね」
 それもというのです。
「はじめてなんだよ」
「そのことも楽しみね」
「そうだね、実はね」
「実は?」
「前の教授はもっと付き合いにくい人だったんだよね」
「そうよね、急に本を読みだしたり知識をひけらかす癖があって」
 ドロシーもかつてのムシノスケ教授のことをお話します。
「そうしたところあったわね」
「そうだよね」
「それがね」
「うん、その困ったところはね」
「かなり穏やかになって」
「付き合いやすい人になったね」
「そうよね、多分ね」
 何故教授の性格の困ったところが改善されたのかをです、ドロシーはトトとお話するのでした。
「ボームさんが来られてからね」
「ボームさんの知識と教養に驚いてね」
「自分より遥かに凄いのに謙虚な人がいるってわかって」
「それからだね」
「ボームさんは」
 恵梨香がこの人について言いました。
「最初に私達にオズの国のことを紹介してくれて」
「そう、私の最初の冒険をね」
 ドロシーは恵梨香のこのことからお話しました。
「そうしてくれたわね」
「そうですよね」
「そしてあの人のオズの国の知識はね」
「知らないことはですね」
「ないと言っていい位なのよ」
「そうなんですね」
 何しろオズの国の冒険を数多く皆に紹介してくれた人です、それで教授以上にオズの国にことを知っているのも当然です。
「そのボームさんとお会いして」
「教授も変わったの」
「謙虚になられたんですね」
「ボームさんはただ知識があるだけじゃないから」
「謙虚な人なんですね」
「穏やかでね」
「そうした人とお会いして」
 恵梨香もわかりました。
「教授も今みたいな方になられたんですね」
「そうよ、ボームさんはあまり王宮から出ないけれど」
「また、ですね」
「お話したらいいわ」
「わかりました、じゃあ」
「はい、機会があれば」
 恵梨香はドロシーにこくりと頷いて答えました、そうして明日からはじまる冒険について期待するのでした。



今回はただ遊ぶだけかと思ったら。
美姫 「やっぱり冒険に出る事になったわね」
ああ。今度の行先はマンチキンの国みたいだな。
美姫 「飛行船で行くようだけれど」
今度はどんな冒険になるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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