『オズのトト』




           第六幕  妖怪の山

 一行は南の山々への冒険をはじめました、そこでです。
 最初の山に入ってです、ムシノスケ教授が言いました。
「ふむ、確かにこの山は独特だね」
「草木がだね」
「うむ、オズの国の多くの山々と違うね」
 こうカエルマンに応えるのでした。
「やはりね」
「そうなんだね」
「そう、これが日本の山なのかな」
「はい、本当にこんな感じなんです」
 日本人の恵梨香が答えました。
「青いのでわかりにくいですが」
「マンチキンの青だね」
「だからなんだね」
「そのせいですけれど紅葉の木ですね」
 今自分達の周りにある木々はというのです。
「秋になったら紅くなりますけれど」
「日本によくある木だね」
「はい、それに」
 恵梨香は教授にさらにお話します。
「黄色くもなりますので」
「それは銀杏かな」
「あっ、ご存知ですか」
「うん、このマンチキンの国では青緑になるからね」
「黄色ですけれど青いマンチキンの中にあるからですね」
「青に近い青緑になるんだ」
 マンチキンなので青が勝つからだというのです。
「そうなるんだ」
「成程、そうですか」
「そうしてね」
 さらにお話する教授でした。
「オズの国は常春ですね」
「秋はないですか」
「けれど一定の時期にね」
「そうしたいろにもなるんですね」
「そうだよ」
 こうお話するのでした。
「いつもその色の銀杏もあるけれどね」
「紅葉もですか」
「楓もね」
 こちらの木もというのです。
「そうだよ」
「そうなんですね」
「それで紅葉の色はね」
 どう変わるかといいますと。
「マンチキンだと青紫になるんだ」
「青と赤で紫ですね」
 ジョージはすぐにわかりました。
「そういうことですね」
「しかもマンチキンなので青が強いから」 
 神宝もその色になる理由がわかりました。
「青紫なんですね」
「その色の色が勝つんですね」
 カルロスはオズの国のこの法則をあらためて理解しました。
「そういうことですか」
「他の国でもそうなのね」
 ナターシャもこう考えました。
「それぞれのお国の色が勝つのね」
「そうだよ、それもオズの国だよ」
 教授は四人にも答えました。
「それも面白いね」
「はい、確かに」
 こう答えるのでした。
「オズの国ならではですね」
「そうしたことも」
「それぞれのお国で色があって」
「その色が勝つんですね」
「それでいて独自の色も出せるから」
 出そうと思えばです。
「それもまた面白いんだよ」
「そう、例えば僕もね」
 カエルマンが言ってきました。
「ウィンキーにいるから黄色だね」
「あっ、そうですね」
「カエルマンさんはウィンキーの人だからですね」
「黄色いんですよね」
「タキシードも靴も」
「全部黄色なんですね」
「しかし青い服も着られるし」 
 ここで、です。何とです。
 カエルマンはお肌の色を変えてみせました、これまで黄色だったそのお肌が見事なコバルトブルーになりました。
 その青くなったカエルマンを見てです、五人はびっくりしました。
「えっ、青いですね」
「青くなりましたけれど」
「お肌の色が変わりましたね」
「それも急に」
「そうしたことも出来るんですか」
「そう、この通りね」
 見せた通りにというのです。
「変えようと思えば変えられるんだ」
「蛙はお肌の色を変えられましたね」
「そのこともあるけれどね」
 恵梨香にも答えました。
「オズの国ではそれぞれの色があってもね」
「変えようと思えばですね」
「変えられるんだ」
「その自由もあるんですね」
「独自の色を出すことも出来るんだ」
 そうしたことも可能だというのです。
「そしてね」
「そして?」
「合わせることも出来るんだ」
 周りの色にというのです。
「どちらも可能なんだ」
「そうなんですね」
「そうだよ」
 笑顔で恵梨香にお話をするのでした。
「それがオズの国なんだよ」
「そのこともよくわかりました」
「そうしてくれるのなら何よりだよ」
 こう笑顔で言うのでした、そうしたお話をしながらです。
 一行は今入っている森を冒険していましたがに時間程そうしているとです。
 ふとです、トトが耳をピンと立てて言いました。
「何か変わった匂いがしたよ」
「変わった?」
「うん、変わったね」
 そうだったというのです。
「生きものとはまた違う」
「どんな匂いなのかな」
 オジョがそのトトに尋ねました。
「一体」
「だから生きているけれどね」
「生きものとはだね」
「また違うんだ、妖精さんみたいだけれど」
 それでもというのです。
「また違うね」
「独特の匂いなんだ」
「そうした匂いがしたんだ」
「ううん、僕は何もね」
 オジョはトトのその言葉に微妙なお顔になって応えました。
「匂わないけれど犬の君にはだね」
「うん、わかるんだ」
 犬のお鼻ならというのです。
「それでね」
「不思議な匂いがするんだ」
「何の匂いなのかな」
 トトは匂いを嗅ぎながら首を傾げさせました。
「これは」
「わからない?」
「ちょっとね」
 どうにもというのです。
「はじめて嗅いだ匂いだよ」
「あれっ、あれは」 
 ここでオジョはまた言いました、ふと前を見てです。
 すると前にです、お顔はお口だけでやけに節だった身体の蛇を見ました。その蛇を見ていうのでした。
「変わった蛇だね」
「あの蛇は」
 ここでまた言ったトトでした、その蛇を見てです。
「あの蛇から匂いがするから」
「あっ、そうなんだ」
「あの蛇は普通の生きものじゃないよ」
 そうだというのです。
「妖精でもないし」
「妖怪じゃないかしら」 
 ここで言ってきたのは恵梨香でした。
「あの蛇は」
「妖怪?」
「そう、日本のね」
「日本の妖精かな」
「そう言っていいかしら」
 恵梨香は考える顔になってそのうえで言うのでした。
「妖怪っていうと」
「そうなるんだ」
「ええ、そういえばオズの国は妖精もいる国ね」
「オズマ姫やポリクロームもそうだね」
「そうよね、だったら」
「その妖怪もだね」
「いても不思議じゃないわね」
 こう言うのでした。
「ここが日本が反映されている山々なら」
「それじゃあ」
「そう、そしてね」
 それにというのです。
「私達が妖怪に出会うことも有り得るわね」
「そうなるんだね」
「あれは野槌だね」
 ここで教授が言いました。
「日本の山に出る妖怪だね」
「教授は知ってるのね」
「うん、大学には妖怪の本もあってね」
 それでとです、教授はドロシーに応えました。
「それで読んでね」
「知ってるのね」
「うん、一説にはツチノコが正体だったとも言われているけれど」
 それでもというのです。
「あれは野槌という妖怪だよ」
「面白い外見の妖怪だね」
「全くだね」
 こうしたお話をです、ドロシーはその野槌を見つつ教授とお話をしていましたがここで、でした。
 オジョとトトがです、その野槌に声をかけました。
「おい君、いいかな」
「時間あるかな」
「何かな」
 野槌の方も声をかけて応えました。
「一体」
「うん、君に聞きたいことがあるんだ」
 こう言ったのでした。
「この山や君自身についてね」
「僕にだね」
「君は野槌っていう妖怪だね」
「そうだよ」
 その通りという返事でした。
「日本にいる妖怪だよ」
「そう聞いたよ、今ね」
「今はオズの国にいるけれどね」
「本来はだね」
「日本の山にいるんだ」
「そうなんだね」
「うん、あとこの山について聞きたいとも言ってたね」
 野槌は自分から言ってきました。
「今ね」
「そうなんだ、この山には誰が住んでいるのかな」
「妖怪が住んでいるよ」
「妖怪が?」
「つまり僕達がね」
 自分自身も含めてというのです。
「住んでいるんだ」
「ここは妖怪の山なんだ」
「そうなんだ」
 一行の前に来てお話をするのでした。
「ここはね」
「それじゃあ」 
 ドロシーも野槌に言いました。
「お願いがあるけれど」
「お願い?」
「そう、その妖怪の皆だけれど」
 その彼等をというのです。
「呼んでくれるかしら」
「今ここにだね」
「そうしてくれる?」
 こう言うのでした。
「一緒にね」
「うん、いいよ」
 早速です、野槌はドロシーに応えました。そしてそのうえでなのでした。
 野槌は実際にです、口だけのそのお顔で皆来てくれと言いました。そうしてからなのでした。
 野槌はあらためてです、皆に言ってきました。
「あと少しで来るからね」
「そうなのね、あとね」
「あと?」
「貴方お顔にあるのはお口だけだけれど」
 このことも言うのでした。
「目とかお鼻は」
「あるよ」
「あるの?」
「そう、あるんだよ」
 そうしたものはというのです。
「しっかりとね」
「そう、けれどね」
「見えないね」
「ちょっとね」
「よく見たらあるよ」
「あっ、そういえば」
 ここでドロシーも気付きました、何とです。 
 野槌の大きなお口の傍に小さな目がありました、お鼻もです。ドロシーはそうしたものを見てでした。
 そしてです、こう言ったのでした。
「成程ね」
「わかってくれたね」
「ええ、だから見えるのね」
「聞こえるし匂いもね」
 それもというのです。
「嗅げるよ」
「不自由はしていないのね」
「そうなんだ、それとね」
「ええ、妖怪の皆を読んだから」
「すぐに来てくれるよ」
 その皆がというのです。
「ちょっと待ってね」
「ええ、わかったわ」
 ドロシーは野槌の言葉に微笑んで応えました、そしてです。 
 実際に少し経って山のあちこちから色々な姿の妖怪達が来ました、その妖怪の皆を見てです。
 オジョは目を丸くしてです、こんなことを言いました。
「いや、凄いね」
「妖怪の皆の外見がだね」
「うん、そうだよ」
 こうトトに答えました。
「そう思ったよ」
「実際に」
「うん、何かね」
「鬼に」
 恵梨香は角が生えていて赤や青いお肌の大男を見ました、着ている下着は虎毛で金棒も持っています。
「天狗に」
「あのお鼻の高い?」
「お顔の赤い」
 オジョとトトは恵梨香が見たその天狗も見て言いました。
「あれがなんだ」
「天狗さんなんだね」
「それと塗り壁に」 
 大きな四角い姿の妖怪です。
「子泣き爺に砂かけ婆」
「小さなお爺さんだね」
「それと着物のお婆さんだね」
「一反木綿に」
 ひらひらと舞う細長い布に目鼻と小さな両手があります。
「油しましね」
「あの蓑を着たお爺さん?」
「丸い頭の」
「はい」
 そうだというのです。
「あの妖怪は」
「ふうん、そうなんだ」
 トトは恵梨香の説明に頷きました。
「そうした名前なんだ」
「あとは」
 恵梨香は他の妖怪達も見ました、一本足に一つ目の妖怪と大きな猿みたいな妖怪、そして白い着物にお肌の妖怪は。
「一本だたら、狒々、雪女」
「狒々っていうと」
 狒々と聞いて言ったのはドロシーでした。
「生きものの?」
「あっ、また違います」
「そうなの」
「あれはマントヒヒですよね」
「あのヒヒとは違うのね」
「大きな猿の妖怪なんです」
 今ここにいる狒々はというのです。
「そうなんです」
「そうなのね」
「はい、マントヒヒとはまた違います」
 そうだというのです。
「そうなんです」
「成程ね」
「あと狐や狸もいるね」
 トトは彼等にも気付きました。
「彼等も妖怪なの?」
「日本では生きものも長い間生きるとね」
「妖怪になるんだ」
「そして人間に化けたりして人をからかったり悪戯をするの」
「そんなことをするんだ」
「そう、だからね」
 そうしたことをするからだというのです。
「妖怪に入るの」
「そうなんだ」
「正確には妖怪変化って言うけれど」
「成程ね」
「穴熊もいるね」
 トトはこの生きものにも気付きました。
「アメリカのとは違う毛並みだけれど」
「貉ね」
「貉?」
「日本では穴熊は貉とも呼んでね」
 そしてというのです。
「やっぱり人を化かすって言われているの」
「そうだったんだ」
「ええ、狸とよく似てるでしょ」
「あっ、確かに」
「それで同じ様にね」
 狸とです。
「化かすって言われているの」
「それも面白いね」
「あと猫もいるけれど」
 オジョは猫の妖怪も見ましたが。
「尻尾が二本あるね」
「猫又ですね」
「そうした名前の妖怪なんだ」
「やっぱり長生きしてです」
「妖怪変化になってかな」
「人を化かしたり人の言葉を喋ったりします」
 そうしたことをするというのです。
「猫又も」
「ふうん、そうなんだ」
「はい、あとあそこの小さい猫みたいな妖怪は」 
 白地に黒の毛並みで何処かスコティッシュフォールドに似た外見の妖怪です。
「すねこすり、あとあそこにいるのは」
「亀の甲羅があって手には水かきもあって」
「頭にはお皿もあるけれど」
「河童ね」
 この妖怪だというのです。
「あの妖怪もいるのね」
「水の妖精、いや妖怪かな」
 トトはその外見から思いました。
「やっぱり」
「ええ、そうよ」
 恵梨香がその通りだと答えました。
「河童はね」
「そのお水の妖怪が山にいるってことか」
「この山にお池か川があるのね」
「うん、あるよ」
 その河童が恵梨香に答えました。
「いいお池がね」
「それで河童さんはそこに住んでいるのね」
「そうなんだ」
 恵梨香にとても気さくに答えてくれるのでした。
「いつも楽しくね」
「そうなの」
「胡瓜畑も近くに作ってね」
「胡瓜は河童の大好物なのだよ」
 ムシノスケ教授がここで恵梨香以外の皆にお話しました。
「だからいつも食べているのだよ」
「そうそう、胡瓜がないとね」
 どうしてもとです、河童も言います。
「僕は駄目なんだ」
「わし等は葡萄だ」
「あと豆腐だ」
 赤鬼と青鬼はにこりとした目でお話しました。
「酒も大好きでな」
「そうしたものも好きだぞ」
「それで畑もあるぞ」
「この山の麓にな」
「あっ、お豆腐あるんだ」
 お豆腐と聞いてです、神宝は笑顔になりました。
「それはいいね」
「お豆腐って美味しいよね」
 ジョージもお豆腐が好きなので笑顔になっています。
「どんなお料理にも合うし」
「そのまま食べても美味しいよね」 
 カルロスは冷奴をお話に出しました。
「お醤油とかかけてそれをあっさりと」
「湯豆腐もいいわよ」
 ナターシャはこのお料理を思うのでした。
「熱くて」
「お豆腐はあっさりとしていて色々なお料理が出来るからね」
 カエルマンもお豆腐について笑顔でお話しました。
「いいんだよね」
「お豆腐は揚げにも出来るし」
「あれがまたいいんだよ」
「とてもね」
 狐と狸、貉はお豆腐から揚げのお話をしました。
「特に狐君達は好きだね」
「僕達も好きだけれど」
「そうそう、稲荷寿司もきつねうどんも大好きだよ」
「何か妖怪それぞれで好みがあるんだね」
 トトはここまで聞いてこのことに気付きました。
「胡瓜やお豆腐や揚げにって」
「そうみたいだね」
 オジョはトトのその言葉に頷きました。
「聞いていると」
「その通りじゃ」
 油すましがトト達に答えました。
「ちなみにわしは油が好きじゃ」
「ああ、だからなんだ」
「それで油すましって名前なんだ」
「そうじゃ、だから油を粗末にしてはならん」
 油すましはトト達にこうも言いました。
「そこは気をつけてもらいたい」
「まあそれはね」
「僕達にしてもね」
 トトもオジョも油を粗末にすることにはこう言います。
「よくないよね」
「無駄使いは」
「お料理によってはかなり使うけれど」
「それでもね」
「左様、好きなもんこそ大事に使う」
 粗末に使わずにというのです。
「それが大事なのじゃよ」
「しかし最近の油はのう」
「随分と種類が増えたわ」
 子泣き爺と砂かけ婆がお話をしました。
「オリーブオイルだ何だのと」
「随分とのう」
「あっ、昔の日本にはオリーブオイルはなかったわね」
 ドロシーはここでこのことを思い出しました。
「そういえば」
「そうなのじゃよ」
「これがな」 
 子泣き爺と砂かけ婆はドロシーに答えました。
「胡麻や菜種の油が多かった」
「昔の日本はな」
「サラダオイルとかもなかったぞ」
「そんなの最近ばい」
 塗り壁と一反木綿もお話してきました。
「それが最近オリーブオイルも出来たばい」
「そしてこれがまた美味くて」
「わし等今ではのう」
「すっかりオリーブオイルの虜じゃ」
 また子泣き爺と砂かけ婆が言ってきました。
「何ともな」
「これは」
「あのオリーブオイルを使えば」
 狒々も言います。
「あらゆるお料理が美味しくなる感じがするな」
「和食にもなの?」
「ははは、和食はやっぱり違うな」 
 狒々は恵梨香の問いには笑って返しました。
「オリーブオイルではどうかという時もある」
「やっぱりそうよね」
「天婦羅には天婦羅油でな」
 そしてというのです。
「オリーブオイルは限られる、しかし」
「使える時はなのね」
「和食でもオリーブオイルを使うと美味い」
「まさに魔法の油だね」
 野槌も言います。
「あれはね」
「私も好きよ」
「僕もね」
 猫叉とすねこすりもオリーブオイルが好きみたいです、にこにことしてそのうえでお話をしています。
「勿論和食以外にもいいし」
「最高の油の一つよ」
「日本とオリーブの組み合わせはね」
 ドロシーは最初は違和感を感じました、ですが。
 すぐにです、こうも言いました。
「案外いいのね」
「お豆腐にかけても美味い」
「お刺身にもだぞ」
 赤鬼と青鬼も言います。
「是非そうして食べてくれ」
「一度な」
「胡瓜にもいいんだよね」
 河童もお勧めでした。
「オリーブオイルは」
「それでオリーブの木は何処にあるのかな」
 トトは妖怪さん達にこのことを尋ねました。
「それで」
「麓にあるぞ」
 赤鬼がトトに答えました。
「葡萄園や豆畑と一緒にな」
「オリーブ園もあってな」
 青鬼も言います。
「それで皆で作っているのだ」
「皆で仲良くしておるぞ」
 天狗もトトに答えます。
「この山でな」
「それはいいことだね、ただもうこの山には皆が暮らしているんだね」
 ここでこのことを言ったオジョでした。
「だったら」
「ええ、鳥さん達はね」
 ドロシーがそのオジョに応えました。
「どうしてもね」
「移住出来ないね」
「別の山ね」
「いや、別にいいぞ」
 天狗がドロシーに答えました。
「わし等は賑やかなことが好きだからな」
「毎晩楽しく飲んで食べてだからね」
 すねこすりも言います。
「誰が来てもね」
「先に誰かがいたら法律的に駄目だから」
 ドロシーが妖怪の皆にこの事情をお話しました。
「だからね」
「その鳥さん達もか」
「この山は駄目なの」
「そうなの」
 こう天狗とすねこすりに答えるのでした。
「これがね、しかもね」
「しかも?」
「しかもっていうと」
「鳥さん達は夜は絶対に寝るから」
 この事情もあってというのです。
「夜に宴会されるとね」
「ああ、寝られないね」 
 このことについてです、猫又はすぐに気付きました。
「そのこともあるね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「この山はちょっとね」
「ううん、私達はよくても」
 前足を組んでです、猫又はドロシーの返事を聞いて言うのでした。
「あちらの事情があるのね」
「法律もね」
「それで駄目なのね」
「そうなの」
「世の中難しい事情もあって」
「オズの国の法律は基本的なことしかないけれど」
 それでもとです、トトはドロシーに応えました。
「どうしてもね」
「守らないことはね」
「守らないとね」
「それが法律だから」
「法律を守らないとね」
「大変なことになるから」
 それこそです。
「もうね」
「無法になるから」
「若し法律を守らないと」 
 ここで恵梨香はこう言いました。
「北朝鮮みたいになるわ」
「あの国やりたい放題でね」
「とんでもない国だからね」
「法律を守らないとああなるんだね」
「北朝鮮みたいになるのね」
 四人も言いました、恵梨香に応えて。どうも世界の子供達から見てもいい国ではないみたいです。
「昔のノーム王よりも酷いわよね」
「ちょっと以上にね」
「一緒にいたくない感じだよ」
「ああした国とはね」
「ああなるのね」
 あらためて言った恵梨香でした。
「法律を守らないと」
「僕は外の世界の国々のことは知らないけれど」
 それでもと言った教授でした。
「法律は守らないとね」
「どうしてもですね」
「そう、やっぱりね」
「だからだね」
 それでと言った天狗でした。
「その鳥さん達もだね」
「法律は守らないとって言ってて」
 それでというのです。
「どうしても」
「成程、なら仕方ないな」
 天狗もここまで聞いて納得しました。
「我々もオズの国の住人、それなら」
「法律を守って」
「彼等の主張を受け入れよう」
「それじゃあ」
「一緒に住めないというのなら仕方がない」
 これが妖怪側の結論でした。
「彼等には別の山で暮らしてもらおう」
「そういうことね、それじゃあ」
 ドロシーは天狗の言葉を受けてでした、頷いてです。
 そのうえで皆で別の山を探すことにしました、そのことを決めてそのうえで次の山に行こうとしましたが。
 ここで、です。カエルマンがタキシードから懐中時計を出して時間をチェックしてからドロシーに言いました。
「もうお昼だよ」
「あら、そうなの」
「うん、そうだよ」 
「それじゃあ」
 お昼と聞いてです、ドロシーはすぐに言いました。
「お昼にしましょう」
「それでは」
「ええ、妖怪さん達と一緒に」
「よし、お豆腐だ」
「葡萄も出そう」
 赤鬼と青鬼はすぐに言いました。
「他にも美味しいものを出して」
「皆で食べるとしよう」
「胡瓜は欠かせないね」
 河童はこれをお話に出しました。
「何といっても」
「よし、きつねうどんを出そう」
 狐が言いました。
「今日のお昼は」
「たぬきそばも出そう」
「それも忘れたらいけないね」
 狸と貉はそちらもでした。
「きつねにたぬき」
「どっちも食べよう」
「きつねそばも出さない?」
「たぬきうどんもね」
 すねこすりと猫又はこう言ってきました。
「どっちもね」
「よくない?」
「あれっ、きつねそばにたぬきうどん?」
 トトはそう聞いて首を傾げさせました。
「そんな食べものもあるんだ」
「そうなの、地域によってあるの」
 恵梨香がそのトトにお話しました。
「これがね」
「そうなんだ」
「そう、揚げが入っているお蕎麦がきつねそばたっだりね」
「へえ、そうなんだ」
「天かすってあるわね」
 恵梨香はトトにさらにお話しました。
「天婦羅を作った時に出来る」
「あの天婦羅の衣だけのだね」
「あれをお蕎麦に入れたのをたぬきそばって言う地域があるけれど」
「それをうどんにしてなんだ」
「そうなの、たぬきうどんになるの」
「そうだったんだ」
「色々地域によって違う」 
 きつねとたぬきのおうどん、おそばはというのです。
「本当に」
「そうなんだ」
「だから妖怪さん達が言うね」
「きつねとたぬきはだね」
「あるのよ」
「成程ね」
「ええ、地域によってね」
「そのことわかったよ」
 トトも頷きました。
「色々あるんだね」
「そうなの、日本の麺類にもね」
「そのことも理解しないと」
「覚えておいてね」
「そういうことでね」
「さて、色々出して」
 油すましが言ってきました。
「皆でお昼を楽しもうか」
「お昼は皆で大宴会じゃ」
「夜は運動会でな」
 子泣き爺と砂かけ婆がまた言います。
「夜も宴会をするがのう」
「朝もな」
「ううん、日本の妖怪さん達って明るいね」
 オジョは目の前で実際に楽しそうに盆踊りみたいに踊りつつお話をする彼等を見て思いました。
「どうにも」
「はい、実は」
 恵梨香がそのオジョに答えます。
「日本の妖怪さん達ってこうなんです」
「明るくて親しみやすいんだね」
「そうなんです」
「そう言うとあれだね」
 オジョがここで思ったことはといいますと。
「妖精と似ているね」
「欧州のですね」
「うん、そう思ったよ」
「確かにそうかも知れないですね」
 恵梨香も実際にこう思いました。
「妖精さん達とどうも」
「似ているね」
「同じ感じもします」
「実際にかなり近いと言えるね」
 教授も学問からお話しました。
「これは」
「やっぱりそうですか」
「うん、何かとね」
「そうなんですね」
「だからね」
 それでというのです。
「そう思えるのも当然だよ」
「そうですか」
「そしてね」
 さらにお話した教授でした。
「オズの国にかなり合っているみたいだね」
「だからいつも楽しくですね」
「しているみたいだね」
 そうでもあるというのです。
「どうやらね」
「そうですか」
「そうみたいだね」
 こう言うのでした。
「どうやら」
「そう、オズの国にいると」
 河童も盆踊りみたいに踊りつつ恵梨香達にお話します。
「何もかもが楽しくてね」
「それだけ合っているのね」
「そうなっていてね」
「だからこんなに楽しんでるのね」
「元々僕達は楽天な性分だけれどね」
 自分でもこのことを認める河童でした。
「しかしね」
「それでもオズの国にいると」
「外の世界にいる時以上にだよ」
「そういうことなのね」
「そう、じゃあその楽しい気分でね」 
 まさにというのです。
「お昼を楽しもうか」
「それじゃあ」
 こうお話してでした、ドロシーはテーブルかけを出して妖怪達もでした。それぞれの大好物を出しました。
 おうどんにお蕎麦、揚げにお豆腐に胡瓜に葡萄にとです。彼等はそれぞれ出してそうしてでした。
 皆で食べます、カエルマンは冷奴を食べてにこりとなりました。
「うん、やっぱりね」
「お豆腐はいいな」
「美味いな」
「最高にね」
 赤鬼と青鬼にも笑顔で答えます。
「いいね」
「これを食べると百人力」
「実にいい」
「そして葡萄もいいからな」
「最後はそれを食べようぞ」
 言いつつです、鬼達は赤いワインも飲んでいます。
 そうしながらです、他の妖怪達もワインを飲んでいますが。
 ふとです、恵梨香は妖怪達に尋ねました。
「日本の妖怪でワイン?」
「これはあれだ」
「わし等が皆に勧めた」
「実はわし等は海を渡ってきた人間がモデルだと言われていてな」
「その人間達がワインを飲んでいるのを血を飲んでいると思われたらしい」
 その鬼達が恵梨香にこの辺りの事情をお話します。
「それでわし等は葡萄が好きでな」
「ワインもそこから造っておる」
「そして今も飲んでおる」
「そういうことだ」
「そうした事情だったのね」
 恵梨香はきつねうどんを食べつつ鬼達の説明に頷きました。
「そういえば鬼さん達って外国の人みたいな外見ね」
「毛深くて髪の癖が強くて大柄でね」
 ドロシーもきつねうどんを食べています、そうしつつ恵梨香に応えました。
「お顔の彫もあって」
「そうですよね」
「実際にそうだったかも知れないわね」
「鬼は実は外国から来た人ですか」
「日本以外の国からね」
「その可能性は確かにありますね」
 こう言うのでした。
「言われてみますと」
「そうよね」
「鬼のはじまりも色々あるんですね」
「言うがわし等は人を襲って食わんぞ」
「そんなことは絶対にせん」
 鬼達は笑ってこのことは断りました。
「別にな」
「だから安心するのだ」
「わし等は皆そんなことはせん」 
 狒々も笑って言います、揚げを食べつつ。
「だから安心するのだ」
「そもそもオズの国ではそんなことすることは絶対にないわね」
 ドロシーが言い切りました。
「誰であっても」
「そう、法律で定められる以前」
「まさにね」
 教授とカエルマンも言います。
「そうしたことはね」
「オズの国では有り得ないことなのだよ」
「誰も死なない国だから」
 だからだとです、恵梨香もわかりました。
「それでなんんですいね」
「その通りだよ」
「まさにね」
 二人で恵梨香に答えます。
「そうしたことはないから」
「恵梨香達も安心するんだよ」
「わかりました、ただピンチは多いですね」
 それはどうしてもです。
「オズの国には」
「そう、ピンチは本当に多い国よ」
 ドロシーはオズの国一の冒険家として恵梨香に答えました。
「何かとね」
「そうですよね」
「そしてね」
 さらに言うのでした。
「そのピンチはね」
「乗り越えられますね」
「どんなものでもね」 
「どんな難しいものでも」
「それは出来るのよ」
 乗り越えられるというのです。
「絶対にね」
「それがオズの国ですね」
「乗り越えようと思えば」
 例えそれがどれだけとんでもないピンチでもです。
「絶対に出来るの」
「そうしたピンチですか」
「私が知っている限りではね」 
 こう恵梨香にお話します。
「そうよ」
「成程、それじゃあ」
「ええ、どんな難しいとんでもないものが前に出ても」
「ドロシーさんは向かわれるんですね」
「これは無理って思ってね」
 最初目にした時はです。
「諦めそういなるけれど」
「それでもですね」
「向かうべきなの」
「そして乗り越えるんですね」
「そうよ」
 その通りだというのです。
「私はいつもそうしていきたいしこれまではね」
「そうして来られたんですね」
「そうなの、だからこれからもね」
「ピンチに向かい続けるんですね」
「困難があってもまずは落ち着いて」
 微笑んで、です。ドロシーは恵梨香達五人に言いました。
「そうして周りを見るのよ」
「周りをですか」
「何かピンチを乗り越えるヒントがあるか」
 それを見て、というのです。
「そして一緒に乗り越えてくれるお友達がいるか」
「あっ、一緒に」
「そうよ、貴女達もそうでしょ」
「そう言われますと」
 恵梨香はドロシーの言葉を受けて皆を見ました、すると確かにでした。
 自分を含めていつも一緒にいる五人がいます、そのことを見て言うのでした。
「私達もですね」
「人に頼り切りはよくないけれど」
「助け合うことはですね」
「いいことよ、そうした時は皆そのピンチを前にしているでしょ」
「はい」
「それだったらね」
「助け合ってですね」
「ピンチは乗り越えるものよ」
 ドロシーはこう恵梨香達にお話しました。
「そこにいるそれぞれの人の頭と力を使ってね」
「そうして乗り越える」
「そうしていくべきよ」
「わかりました」
 恵梨香もドロシーのお話に頷きました、そうしてです。
 きつねうどんを食べながらです、こうも言いました。
「幾らとんでもないピンチになっても」
「そう、皆でね」
「乗り越えていきます」
「そうしてね」
 こうお話をしてでした、そのうえで。
 皆できつねうどんやお豆腐を楽しみました、そしてです。
 そのお話の後で、です。ドオロシー達は妖怪達に言いました。
「じゃあね」
「うん、鳥さん達に宜しくな」
 天狗が妖怪を代表してドロシーに応えました。
「わし等はいいとな」
「それでもなのね」
「そう、そちらがそう言うならわかったとな」
「そう伝えておくわ、それでね」
「鳥達がいられる山をか」
「探していくわ」
 そうしていくというのです。
「これからね」
「わかった、ではまたここに来たらな」
「その時はなのね」
「共に遊ぼう」
 こう笑顔で言うのでした。
「そうしようぞ」
「食べて宴会もして」
「歌って踊ってな」
 妖怪達の楽しみです、そうしたことも。
「楽しもうな」
「それじゃあね」
「うむ、ではな」
 再会を約束してでした、そのうえで。
 ドロシー達は妖怪達と笑顔で別れました、そうして次の山に向かうのでした。



オズには妖怪もいるんだな。
美姫 「天狗とかも気性の優しい方たちだったわね」
本当に面白い所だな、オズの国は。
美姫 「次の山ではまた何かあるのかしら」
どうなのか。次回も待っています。
美姫 「待っていますね」



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