『オズのトト』




           第八幕  誰もいないので

 ドロシー達は今入っている山を見回っていきました、その山は幾ら回っても本当に誰もでした。
 いません、それでドロシーはお昼御飯を食べている時に皆に言いました。
「夕方まで観て回るけれど」
「それでもですね」
「誰もいなかったら」
「その時はですね」
「ええ、この山にしましょう」
 実際にとです、五人にお話しましょう。
「是非ね」
「わかりました」
「私もそうしたらいいと思うよ」
「僕もだよ」
 ムシノスケ教授とカエルマンはドロシーに同意でした。
「適度に広くて景色も奇麗で」
「あの鳥君達が暮らすには丁度いいよ」
「午後も調査をするにしても」
「最適じゃないかな」
「そうね、じゃあこの山にしましょう」
 ドロシーは二人の言葉に笑顔になりました。
「本当に誰もいないと」
「うん、ただね」
 ここで教授はこうも言いました。
「時間があれば周りの山をもう少し巡ってみないかい?」
「学問として?」
「そう、日本の山も見ていると興味深い」
 それでというのです。
「私はそう思ったけれどね」
「そうね、今回の冒険は順調だし」
「鳥君達を案内したうえでね」
「そうしたらいいわね」
「しかもだよ」
 教授はドロシーにさらにお話しました。
「生きものの山、妖怪達の山そしてこの山の間にとても大きな山があるね」
「真ん中にね」
「あの山も調べよう」
 そうしようというのです。
「是非ね」
「あの山にも誰かがいるのかな」
 トトが言いました。
「やっぱり」
「だったらそれでいいしいなかったら」
 そうだった場合もです、教授はトトにお話しました。
「あの山をこの辺りのオズの住人達共通の憩いの場にする」
「公園みたいに」
「それはどうかな」
「あっ、いいわね」
 ドロシーは教授のその提案にお顔をぱっと明るくさせて応えました。
「それも」
「ドロシーとしては賛成だね」
「ただお家があるだけじゃなくてね」
「皆の共通の憩いの場所もあれば」
「余計にいいわ」
「私もそう思って提案したのだよ」
「それじゃあオズマの意見も聞いてみましょう」
 携帯でオズマに連絡をするとすぐにでした、お話を聞いたオズマは笑顔でいいと言ってくれました。
 その返事を聞いてです、ドロシーは皆に笑顔で言いました。
「オズマも賛成よ」
「あの山に誰もいないとだね」
「そう言ってくれたわ」
「それは何よりだね」
 トトも笑顔で応えます。
「オズマも賛成なら」
「もう決まりね」
「そうだね」
「それとですが」
 恵梨香が言ってきました、今日のお昼のメニューの一つスパゲティカルボナーラを食べています。他のメニューはハンバーグにトマトとアボガド、バナナと蕪のサラダそれにパンとフルーツのミックスジュースにアイスクリームです。
「日本の生きものと妖怪の山がそれぞれありましたけれど」
「ええ、そうね」
「北海道や沖縄は」
 そうした地域の名前も出すのでした。
「ありますか?」
「日本の地域ね」
「はい、北海道は北で沖縄は南です」
 日本のそれぞれのです。
「地域でして妖怪とかもまた違うんです」
「あら、そうなの」
「はい、日本の山でしたらあるでしょうか」
「そうね、この辺りは日本だから」
 日本の山々だからとです、ドロシーは恵梨香に答えました。
「あるかも知れないわね」
「それじゃあ」
「そうした山もあるか調べると面白いわね」
「よし、ではそうしたことも調べよう」
 教授は恵梨香とドロシーのお話に目を輝かせて応えました、細かく切ってある野菜や果物のサラダにかけられているドレッシングの味を楽しみながら。
「是非ね」
「そういえば日本の自然も色々だよね」
 ここでジョージも言いました。
「本州とかと北海道、沖縄でね」
「気温もかなり違うし」
 神宝はそちらのことをお話しました。
「北海道は寒くて沖縄は暑い」
「全然違うよね」
 カルロスが言うことはといいますと。
「食べものもね」
「本州と四国、九州は似てるけれど」
 最後いナターシャが言います。
「北海道と沖縄はそれぞれ違うわ」
「どう違うのかを調べたい」
 教授はさらに乗り気になりました。
「私としてはね」
「教授の学究心が刺激された?」
「そうなったよ」
 実際にとです、教授はトトに答えました。
「本当にね」
「それじゃあだね」
「そちらも楽しみだよ。学者の性分として」
「知らないことを知りたい」
「そして調べたくなるからね」
 どうしてもというのです。
「私としてはね」
「北海道や沖縄の生きものや妖怪のいる山々もだね」
「あるかどうか見てみたいね」
「それじゃあ」
「もう楽しみで仕方がなくて」
 それでというのです。
「余計に元気が出て来たよ」
「それはいいことだね」
「さあ、頑張って調べていこう」
 教授は輝いた目でハンバーグを食べつつ言いました。
「周りの山々もね」
「教授のそのお話を聞いたら」 
 ここでボタンが言いました。
「遊ぶみたいだね」
「私にとっては学問こそがだよ」
「遊びなんだ」
「楽しいという意味でね」
 そうなるというのです。
「そうなるよ」
「そうなんだ」
「うん、だからこそね」
「遊びにだね」
「全力で向かってそして」
 そのうえでというのです。
「楽しむよ」
「そうするんだ」
「是非ね」
「学問って楽しいんだ」
「知らないことを知っていくことはね」
 まさにというのです。
「最高に楽しいよ」
「じゃあね」
「じゃあとは」
「全部知ったらどうするの?」
「この世の全てのことを」
「知って調べた後はどうするの?」
「ははは、それは絶対に有り得ないよ」
 教授はボタンに質問に知的でかつ穏やかな笑みで答えました。
「それこそね」
「どうしてなの?」
「だって世界はとんでもなく広いんだ」 
 それでというのです。
「宇宙はね」
「この国がある星の外のだね」
「そう、宇宙はね」
「とんでもなく広いから」
「その全部を知ることはなんだ」
「出来るものじゃないよ」
 とてもというのです。
「本当にね」
「そうなんだ」
「だから私が全部を知ろうとしてもね」
「出来ないんだ」
「無理だよ」
 絶対にというのです。
「そんなことはね」
「ううん、そうなんだ」
「だから幾ら知っていってもね」
「まだまだ知らないことがある」
「だからね」
「知ってもだね」
「まだまだ知らないことは沢山あるのが世の中だよ」
 教授は今度はパンを食べつつボタンにお話しました。
「だからその心配は無用だよ」
「わかったよ」
「そういうことでね」
「そういえば幾ら知っても」
 恵梨香も言いました。
「幾らでもね」
「知らないことは出て来るね」
「学校のお勉強も世の中のことも」
「常にね」 
 それこそというのです。
「沢山あるんだ」
「そうなんですね」
「うん、だから私はどんどん知っていくんだ」
 そうだというのです。
「調べてね」
「終わりがないから」
「何時までも楽しめるんだ」
「じゃあオズの国でずっと」
「私は遊べる幸せな者だよ」
 こう笑顔でお話する教授でした、その教授のお話を聞いてトトも言いました。
「そういうことだね、教授も遊ぶ人なんだ」
「楽しむという意味でね」
「そうなるんだね、僕は学問には興味がないけれど」
 それでもというのです。
「ドロシーと一緒に遊ぶことはね」
「楽しいね」
「冒険もね」 
 今行っているそれもというのです。
「本当に好きだよ」
「ではその好きな遊ぶをね」
「これからもだね」
「楽しむといいよ」
「そうさせてもらうよ」
 トトは教授に笑顔で応えました、そうしてお昼御飯を食べ終えてそれから再び冒険をしますが。
 山の中は隅から隅まで回ってもでした、本当に。
 誰もいませんでした、夕暮れが山を完全に覆う頃まで回ってそうしてでした。一行は飛行船に戻ってです。
 晩御飯の後で、です。ドロシーが皆に笑顔で言いました。
「あの山で決まりね」
「そうですね」
「誰もいませんでしたから」
「それならですね」
「鳥さん達はあの山に入ってもらって」
「そうして暮らしてもらいますね」
「そうなるわ」
 是非にというのでした。
「明日は鳥さん達のところに行って」
「そうしてね」
 まさにというのです。
「あの山まで案内しましょう」
「いや、本当にね」
 トトは尻尾をぱたぱたとさせつつドロシーに応えました。
「早いうちに見付かってよかったね」
「本当にね」
 笑顔で応えたドロシーでした。
「よかったわ」
「そうよね」
「それじゃあ鳥さん達に山を紹介して」
「それからだね」
「真ん中の大きな山も調べて」
 そしてというのです。
「後はね」
「そう、周りの山々も調べようね」 
 カエルマンは教授を見ながらトトに応えました。
「是非」
「そうだね、調べて」
「どんな山か知ろう」
「知ったことはちゃんと書き留めておくよ」
 教授は学者さんとして言いました。
「絶対にね」
「それじゃあ」
「そう、その用意もしているからね」
 教授はその手にペンとノートを出しました。
「既に」
「教授はいつも持ってるよね」
 そのペンとノートをとです、トトは教授に返しました。
「そうしてるよね」
「何かあればね」
「書き留める為にだね」
「読む為の本もいつも持っているけれど」
 それに加えてというのです。
「ペンとノートもだよ」
「持っていてだね」
「いつも使っているよ」
 新たに知ったことを書き留めているというのです。
「本当にね」
「そうしているんだね」
「学者としてね」
「ううん、教授も凄いね」
「いやいや、昔はこうじゃなかったね」
「知ったかぶりしていたとか?」
「そうした者だったよ」
 かつての自分自身のことをです、教授は反省しています。そしてその反省を今ここで言うのでした。
「だからもうね」
「そうした風いならない様に」
「気をつけてね」
 そうしてとです、トトに言います。
「本当の意味で学者としてね」
「学んでいくんだね」
「そう心掛けているよ」
「そう、知ったかぶりをするとね」
 カエルマンもかつての自分自身を思いだして言います。
「やっぱりね」
「よくないんだね」
「そうだよ」
「何かカエルマンさんもそう言うんだ」
「過去の僕がそうだったからね」
「戒めとしてなんだ」
「気をつけているんだよ」
 こうトトにお話するのでした。
「僕もね」
「知らないことを認める」
「自分自身のね」
「そうすればだね」
「知ることが出来る様になるんだ」
 そうなるというのです。
「知らないのなら知りたいと思うね」
「何でもね」
「だからだよ。知りたいのならね」
「知らないことを知る」
「それからなのだよ」
「成程ね」
「そうすればより多くのことを知ることが出来るのだよ」
 カエルマンは気取った仕草で言いますがそこには深い思慮と経験に裏打ちされた智恵がありました。
「人はね」
「じゃあ私もですね」
「そうだよ」
 カエルマンは恵梨香にも答えました。
「知らないことを知る」
「そうすればですね」
「知ることが出来るんだよ」
「より多くのことが」
「そうなのだよ」
「それは学校の勉強のことだというのなら」
 ナターシャがここで言いました。
「私も今以上に」
「ナターシャは成績いいじゃない」
「そうそう、かなりね」
 ジョージと神宝がそのナターシャに突っ込みを入れました。
「国語算数理科社会なら僕が一番だけれど」
「恵梨香が二番、僕が三番でね」
「学年でそうだけれど」
「ナターシャは四番だけれど」
 それでもというのす。
「体育や音楽、図工も入れるとね」
「ナターシャは一番じゃない」
「僕は体育以外は普通だしね」
 カルロスもナターシャに言います。
「総合だとナターシャは学年一じゃない」
「だから。学校だけのことだから」
 ナターシャはこうカルロスに答えました。
「それに四教科も四番じゃなくて」
「一番になりたいんだ」
「だからよ」
「知らないことを知る」
「そうしていきたいわ」
 こう言うのでした。
「もっとね」
「そうなんだね」
「そう、もっとね」
「知らないからこそ余計に勉強をするね」
 教授は五人にもお話しました。
「それがいいんだよ」
「それじゃあ私達は」
「そう、もっともっとね」
「知ることが出来るんですね」
「勉強もね」
 そうだというのです、こうしたお話をしてです。
 皆は翌日鳥さん達のところに行って山のことをお話することにしました、そして次の日実際にでした。
 お話をするとです、鳥さん達は笑顔で言いました。
「あっ、あったんだ」
「それじゃあその山にだね」
「今から案内してくれる」
「そうしてくれるんだ」
「そうさせてもらうわ」
 ドロシーが鳥さん達に笑顔で答えます。
「是非ね」
「僕は山でも大丈夫だしね」
 ダチョウが言ってきました。
「オズの国のダチョウだからね」
「山の中でもね」
「そう、平原でなくても身体に合ってね」
 そうしてというのです。
「楽しく過ごせるんだ」
「僕も暖かい場所でも平気だよ」
 今度はペンギンが言ってきました。
「オズの国のペンギンだからね」
「気温に関係なく」
「そう、平気だよ」
「じゃあ皆山に入ってもいいわね」 
 ドロシーは全ての鳥さん達に確認を取りました。
「そうしても」
「うん、いいよ」
「そんなに素敵な山ならね」
「是非入りたいよ」
「それで暮らしたいわ」
「それじゃあね」
「ずっと皆で楽しく明るく暮らして」
 ドード―鳥は実際ににこにことして言います。
「そうしていけるね」
「絶対にね」 
 ドロシーはドードー鳥に微笑んで答えました。
「だから安心してね」
「うん、そうさせてもらうよ」
「じゃあ今から案内するわね」
 その山にとです、こうお話してでした。
 皆で鳥さん達をその山まで案内しました、鳥さん達はその山に入ると笑顔でこんなことを言いました。
「いい場所だね」
「そうね」
「食べものもお水も豊富で」
「過ごしやすい気温で」
「木がとても多くて」
「ここにいたら」
「うん、楽しく過ごせるね」
 こうお話してです、鳥さん達は山の中での生活をはじめました。皆でドロシー達にお礼も言いました。
 そしてです、皆で今度は。
 真ん中の山に入りました、そうして調べていますと。
 誰もいなくてしかもです。
「この山もいい山だね」
「そうだね」
 教授とカエルマンが最初に言いました。
「自然が豊かで」
「果物も多くてね」
「木も多い」
「とてもいい山だよ」
「じゃあこの山はね」
「皆の憩いの場所にしよう」
「そうね、考えていた通りにね」
 まさにとです、ドロシーも二人に応えます。
「この山を皆の憩いの場所にしましょう」
「僕もそれでいいと思うよ。ただね」
 ここでトトがこんなことを言いました。
「日本の山っていうけれど」
「どうしたの、トト」
「うん、どの山も凄く木が多いよね」
 こうドロシーに言うのでした。
「この辺りの山は」
「あれっ、山は木があるものでしょ」
 恵梨香はそれは当然だとです、トトに返しました。
「それも一杯」
「あれっ、木がない山もあるよ」
「ウィンキーの方にある回る山?」
「あの山もそうだけれどね」
 それ以外にというのです。
「結構あるよ」
「そうなの」
「オズの国にもね」
「山は木があるのが普通で」
「普通だけれど」
 それでもというのです。
「こんなに木ばかりの山って多くないよ」
「そうだったの」
「むしろ森だから」
 日本の山はというのです。
「そう言っていい位だよ」
「ううん、山は木が一杯ある場所だって思っていたわ」
 恵梨香はそうだったいのです、それでトトと今お話をしてそれでどうにもと首を傾げさせているのです。
「どうもね」
「まあそれだけじゃなくて」
「木がない山もある」
「そうだよ」
「というか日本の山って密林みたいだよ」
 カルロスはこう恵梨香に言いました。
「びっくりする位に木ばかりで」
「ツンドラも木が多いけれど」
 ナターシャもお国のお話をします。
「日本の山も木がかなり多いわ」
「ちょっと街から出たら木が一杯の山ばかりで」
 神宝は驚いたという感じです。
「山の中に街があるって感じだよ」
「日本にいたらちょっと街から離れたら木が一杯で」
 ジョーシはそれがというお顔です。
「緑しか目に入らない感じだよ」
「それで秋は紅葉でね」
「その緑の山が黄色や赤になって」
「驚く位奇麗になって」
「この世のものと思えない位だしね」
「何かね」
 恵梨香が言うにはです。
「春は桜、夏は緑の葉、秋は紅葉で冬は雪」
「その四つの色がだよね」
「日本の山にはあって」
「季節ごとに凄く奇麗で」
「観ていて飽きないよ」
「そういえば」
 ここでトトが言いました。
「この山紅葉や銀杏も多いから」
「紅葉も観られるっていうのね」
「うん、そうだと思ったけれど」
「それじゃあね」
 ボタンがこんなことを言いました。
「この山で紅葉も楽しめるのかな」
「桜も多いわよ」
 ドロシーはこの木に気付きました。
「梅や桃もね」
「ふむ、夏の木ある」
 教授も指摘します。
「これで雪が降れば」
「白くもなるね」
「そう、この山は凄い山かもね」
 こう言ったのでした。
「景色も存分に楽しめる」
「あれっ、けれど」
 ここでボタンが言いました。
「オズの国の山は」
「そう、常春の国だからね」
「季節は楽しめないんじゃ」
「いや、これがね」
「違うんだ」
「そう、オズの国はお伽の国だね」
 だからだというのです。
「例えばこうして願うと」
「あっ」
 ここでボタンは観ました、教授が桜の木に満開になって欲しいと声をかけたその桜達をです。
「満開になったね」
「こうしたことが出来るんだよ」
「オズの国なら」
「そうだよ」
 その通りだというのです。
「こうしたことも出来るんだ」
「何か凄いね」
「この山はね」
 まさにというのです。
「こうしたことが出来る山なんだよ」
「よくそれがわかったね」
「いや、見ていてわかったんだ」
「山の木を?」
「そうだよ」
 こうボタンに答えるのでした。
「オズの木の中でも独特の木達でね」
「桜や紅葉でもなんだ」
「そうした木なんだ」
「成程ね」
「それに雪もね」
 それもというのです。
「降って欲しいと願えば」
「降るんだ」
「そうだよ」
 こう笑顔でお話しました。
「実際にね」
「ううん、何というか」
「四季の全てが楽しめる」
「日本の」
「それも出来るよ」
「じゃあこの山を憩いの場所にしたら」
「余計にいいよ」
 景色を楽しめるという点で、というのです。
「本当にね」
「成程ね」
「しかもだよ」
 ここで、です。教授はにこりとしてです。
 柿の木から実を取ってそうして言いました。
「こうしたものもあるんだ」
「柿だね」
「そう、食べものも豊富だからね」
 今度はトトにお話します。
「いいんだよ」
「憩いの場に最適だね」
「皆のね」
「何というか柿ってね」
 トトは教授が食べているその柿を見てこうしたことを言いました。
「日本的っていうか」
「そうした果物だね」
「そう思ったよ」
「うん、実際に柿はね」
「日本の果物だよね」
「原産地だよ」
 日本がというのです。
「だから日本の山にもあって」
「こうしてだね」
「食べられるんだよ」
 そうだとです、教授は柿を食べつつトトにお話しました。
「トトも一個どうかな」
「あっ、取ってくれるんだ」
「どうぞ」
 もう一個取ってです、トトの前に差し出してきました。
「この柿をね」
「有り難う、柿以外もあるしね」
「色々な果物がね」
「色々楽しめるね」
「お弁当の木もあるわよ」
 ここで、です。ドロシーが柿を食べているトトに言ってきました。
「そちらの木もね」
「あっ、そうだね」
 トトはその木にも気付きました。
「色々な木があるね」
「お昼はこれにしましょう」
「お弁当をだね」
「皆で食べましょう」
「じゃあ」 
 ここで言ったのは恵梨香でした。
「お握りを」
「日本のファーストフードだね」
「そう、日本にいたらね」 
 恵梨香はにこりと笑ってトトに応えました。
「よく食べるの」
「恵梨香はオズの国でもよく食べるね」
「大好きだから」
 それでというのです。
「それでね」
「よくテーブル掛けに出してもらったりして」
「食べてるの」
 実際にというのです。
「美味しくね」
「美味しいんだね」
「とてもね」
「じゃあ僕もね」
 トトもお話を聞いて言いました。
「お握り頂くよ」
「そうするのね」
「うん、恵梨香とお話してたら食べたくなったよ」
 まさにというのです、そしてです。
 トトは恵梨香が取ってくれたお握りのお弁当も食べました、勿論恵梨香もお握りを食べます。
 その中で、です。こうも言ったのでした。
「お握りを食べると余計にね」
「余計に?」
「日本にいる感じがするよ」
 そうだというのです。
「何かね」
「そうなの」
「うん、柿だけじゃなくてね」
「まあお握りはね」
「日本の食べものだよね」
「皆から言われるわ」
 恵梨香はナターシャ達四人を見て答えます、勿論四人もお握りのお弁当を美味しく食べています。
「本当にね」
「実際にそうだよ」
「まあ海苔には最初抵抗があったよ」
 ジョージはその海苔に巻かれた鮭のお握りを食べています。
「アメリカじゃ海草食べないから」
「冷えた御飯もね」
 神宝はそちらのお話をします、おかかのお握りを食べながら。
「食べるなんてってね」
「お寿司は有名だし僕も知ってたけれど」
 カルロスは昆布のとても大きなお握りを両手に持っています。
「お握りは日本人皆が好きだからね」
「何かあればお握りよね」
 ナターシャは梅のお握りです。
「日本人は」
「そうなの、本当にお握りがないと」
 それこそというのです。
「日本人ははじまらないってところがあるわね」
「サンドイッチみたいなものね」
 ここでドロシーは恵梨香に笑顔で言いました、ドロシーが食べているお握りは天むすです。
「言うなら」
「そうですね、ただ」
「サンドイッチよりもポピュラーかしら」
「そうみたいです」
「恵梨香も何日に一回は絶対に食べるから」
「冒険に出ていますと」
「特によね」
 王宮等で遊んでいる時よりもです、恵梨香はお握りを食べています。
「そうね」
「お外で食べると特に美味しくて」
「今もよね」
「そうなんです、本当に美味しいです」
「そうね、ただね」
「ただ?」
「恵梨香が好きなお握りは」
 それはと言いますと。
「一番は何かしら」
「中の具ですね」
「そう、それは何かしら」
「ううん、何でしょうか」
 梅のお握りを食べつつです、恵梨香はドロシーに難しいお顔で応えました。
「一体」
「わからないの」
「お握りでしたら」
 それこそというのです。
「何でもでして」
「それでなの」
「梅干しも好きで天むすも」
 ドロシーが今食べているそれもというのです。
「昆布もおかかも好きで若芽御飯でも麦御飯でもチャーハンでも」
「何でもなのね」
「大好きで」
 それでというのです。
「何でもでして」
「嫌いなものはないの」
「ですから一番といいますと」
「難しいのね」
「はい、どれかと言われますと」
 それはというのです。
「難しいです」
「そうなのね」
「はい、どうも」
 こうドロシーに答えます。
「中に何が入っていなくてもいいですし」
「あら、そうなの」
「はい、そうしたお握りでも」
 いいというのです。
「本当に」
「そうなのね」
「そうです、まずはお握りです」
「お握り自体が好きで」
「具は何でもいいです」
「そうなのね」
「ですからどんなお握りでも何個でも」
 それこそとお話してです、そのうえで。
 恵梨香はお握りをお腹一杯食べました、それからデザートの柿を食べてそのうえで言ったのでした。
「とても美味しかったわ」
「柿も食べてるしね」
「デザートもね」
 その柿もとです、トトに応えます。
「美味しいし、お茶もね」
「そうそう、お握りにはお茶だよね」
「日本のね」 
 それだというのです。
「それがね」
「一番合うんだね」
「これが紅茶だと」
 少し苦笑いをして言った恵梨香でした。
「どうもね」
「お茶はお茶でもだね」
「今一つね」
「合わないんだね」
「特に甘い紅茶はね」
 お砂糖を入れたそれはというのです。
「合わないと思うわ」
「そうなんだね」
「そう、それでね」
 さらに言った恵梨香でした。
「お茶はね」
「甘くない、だね」
「日本のお茶よ」
 それが一番合うというのです。
「私はそう思うけれど」
「そうだね、お握りだとね」
 実際にとです、トトも言います。
「甘いお茶はね」
「合わないわね」
「そうした食べものだね」
「そうなの、だから私もね」
「お握りの時はだね」
「日本のお茶なの」
 それを飲むというのです。
「それを飲んでるの」
「それでサンドイッチの時は」
「色々飲むでしょ」
「うん、皆と一緒でね」
「紅茶も牛乳もコーヒーもね」
 そういった飲みものをというのです。
「ジュースも飲むけれど」
「お握りについては」
「もう日本のお茶よ」
 それしかないというのです。
「私としてはね」
「こだわりだね」
「そうなの」
 本当にというのです。
「絶対に」
「だから今もだね」
「日本のお茶なの」
 緑茶を飲んでいました。
「そちらなの」
「恵梨香はお茶好きだけれどね」
「お握りの時はね」
 普段以上になのです。
「好きよ」
「確かにね。お握りの時はね」
 ドロシーは枇杷の皮を剥きつつ恵梨香に応えました。
「お茶よね」
「ドロシーさんもですね」
「本当に紅茶やコーヒーはね」
「ジュースもですね」
「合わないわ」
 そうだというのです。
「お握りには」
「そこはどうしてもですね」
「そうなのよね」
「お砂糖を入れたりすると」
 お茶にです。
「合わなくて」
「あっさりとした味のお茶よね」
「はい、お握りには」
「あとお茶漬けね」
 ドロシーはこのお料理についても言いました。
「恵梨香こちらも時々食べるわよね」
「はい」
「あれも甘いお茶だとなの」
「合わないです」
 そうだというのです。
「紅茶も甘いお茶も」
「そうよね」
「私お茶漬けも好きですけれど」
「それでもよね」
「日本の普通のお茶をかけて」
「冷えた御飯に」
「そうして食べています」
 恵梨香はそうしたお茶漬けを時々食べています、恵梨香が言うには時々食べたくなるとのことです。
「お握り程じゃないですが」
「お茶漬けもよね」
「好きです」 
 そうだというのです。
「それでかけるのは」
「日本のお茶ね」
「それは決まっています」
「成程ね」
「御飯にはそうしたお茶ですね」
「和食だとね」
「そうです、私としては」
 こうお話してです、恵梨香はまたお茶を飲みました。そうして。
 それからです、また柿を食べるのでした。
「柿もいいですね」
「枇杷もどう?」
「食べていいんですか?」
「はい、どうぞ」
 にこりしとしてその剥いた枇杷の実を差し出します。
「こちらも」
「有り難うございます、じゃあ」
 恵梨香も柿を差し出しました。
「私も」
「柿をくれるのね」
「枇杷を頂きましたから」
 だからというのです。
「私も」
「交換ね」
「そうなりますね」
「わかったわ、じゃあね」
 笑顔で、です。ドロシーは恵梨香に応えました。
「交換してね」
「一緒にですね」
「食べましょう」
 こうお話して柿と枇杷を交換してでした、二人はそれぞれの果物も楽しみました。その後ででした。
 トトは食べ終わったドロシーの横でしみじみとして言いました。
「オズの国がアメリカを反映してよかったよ」
「色々なものが見られるから?」
「そして感じられるからね」 
 だからだとです、トトはドロシーに答えました。
「それでそう思ったよ」
「そうね、そう言うとね」
「そうだよね」
「ええ、私もそう思うわ」
 ドロシーにしてもというのです。
「アメリカが反映されるから」
「今もだよね」
「こうしてお握りにも枇杷も楽しめるのよ」
「日本のものも」
「アメリカに日本が入ると」
 移住してきた人達によってです。
「こうしてね」
「日本も楽しめるんだね」
「そうよ、じゃあ次はね」
「うん、後はね」
「今日はこの山をさらに冒険して」
 そうしてよく調べてというのです。
「そしてね」
「それからだよね」
「他の山も回ってみましょう」
「さて、どうした山か」
 教授が胸をわくわくさせる感じで言ってきました。
「今から楽しみだよ」
「教授は特に楽しみにしてるね」
「その通りだよ、ではね」
「うん、行こうね」
「他の山々にも」
 こうお話してです、皆はまずは真ん中の大きな山を巡りました。調べた結果山は本当に周りのオズの国の住人達の憩いの場に相応しい山だとわかりました。



お弁当か。
美姫 「楽しそうで良いわね」
美味そうだし。
美姫 「肝心の山の調査もちゃんとして」
問題なかったようだし。
美姫 「みたいね。次はどうなるのかしら」
次回も待っています。



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