『オズのトト』




           第九幕  ウチナーの山

 真ん中の山を調べた次の日です、一行は新たな山に入りました。その山に入るとすぐにでした。
 恵梨香は目を少し丸くさせてです、こんなことを言いました。
「木が違うわね」
「うん、これまでの山とね」
 トトが応えました。
「何か暑いところの山みたいだね」
「そうよね」
「これは沖縄かな」
 神宝はそのこれまでとは違う木々を見て言いました。
「あそこの木かな」
「そういえばそうかな」 
 ジョージも木々を見ています。
「僕沖縄に行ったことがあるけれどこんな木だったよ」
「確かにこれまでの山の木とは違うね」
 カルロスもこう言います。
「僕もそれはわかるよ」
「これまでお話したけれど」
 ナターシャはこれまで皆でお話したことを思い出して言うのでした。
「沖縄と北海道は独特の気候だというわね」
「そう、本州とか四国とはまた違うの」
 恵梨香も四人にお話します。
「これがね」
「九州ともよね」
「北海道と本州の北の方は似ているけれど」
 それでもというのです。
「沖縄はまた違うわ」
「それじゃあどうした生きものがいるのかな」 
 トトは早速関心を向けています。
「この山には」
「それを調べよう、今からね」
 ムシノスケ教授は目をきらきらとさせて言いました、見れば教授が皆の先頭に立って山の中を進んでいます。
「是非共」
「そうだね、ではこの山も」
 カエルマンも言います。
「調べよう」
「今からね」
 こうしてです、一行はこの山も調べはじめましたがすぐにでした。ボタンが眼の前を通った蛇を見て言いました。
「あれっ、あの蛇何か違うね」
「そうだね」
 トトもその蛇を見て言います。
「蝮さんやシマヘビさんじゃないね」
「アオダイショウさんでもヤマカガシさんでもないし」
「ボタンも知ってるんだ」
「うん、王宮にいた時にボームさんに教えてもらったんだ」
「オズの国にはそうした生きものもいるって?」
「そうね」
「それで知ってたんだ」
「そうなんだ」
 こうトトにお話するのでした。
「ボームさんも色々なことを知っているからね」
「よく王宮にいて本も読んでるし」
「だから色々なことを知ってるんだ」
「そのボームさんに教えてもらって」
「ボタンも知っているんだ」
「うん、あの蛇はね」
 今も自分達の前にいるその蛇を見て言います。
「蝮とかじゃないね」
「また違う感じだね」
「あれはハブだね」
 その蛇だとです、教授が言いました。
「確か日本の沖縄の蛇だよ」
「そうなんだ」
「うん、ということはね」
「ここは沖縄なんだ」
「日本のね」 
 そうだというのです。
「そこになるよ」
「ううん、本当に沖縄だなんて」
「思わなかったかな」
「いや、あるかもって思ってたけれどね」
 トトは教授に自分が思っていたことを素直に答えました。
「けれどね」
「この山だとはだね」
「思っていなかったから」
 だからだというのです。
「少し驚いているんだ」
「まあ言ってすぐにそこというのはね」
「やっぱり驚くよね」
「言って少しあとだと思うね」
「普通はね」
「そうだね、しかしオズの国はね」
 このお伽の国ではというのです。
「こうしたこともね」
「考えてみればよくあるね」
「そうだよ」
 その通りだというのです。
「だからね」
「うん、この山を今からね」
「本格的に調べるんだね」
「そうしよう」
 教授はこう言ってすぐにでした、そのハブのところに行って声をかけました。
「君ちょっといいかな」
「何かな」
「うん、君はこの山に住んでいるんだよね」
「そうだよ」
 その通りとです、ハブは教授に答えました。
「とても凄しやすい山だよ」
「そうなんだね」
「それで貴方達は誰かな」
「私はムシノスケというのだが」
「ああ、オズの国の王立大学の学長さんだね」
「おや、知っているんだね」
「この山でも知らない人はいないよ」
 そうだというのです。
「僕も知ってるから」
「成程ね」
「オズマ姫もだし」 
 ハブはドロシー達も見て言います。
「ドロシー王女も他の人達もね」
「ひょっとして私達もかしら」
「勿論だよ」
 ハブは恵梨香に笑って答えました。
「オズの国の名誉市民の子達だよね」
「そうなの」
「君達も有名だから」
 オズの国においてというのです。
「僕も知ってるよ」
「それは嬉しいわ」
「これから宜しくね」
「こちらこそね」
 こう二人でお話してでした、そのうえで。
 今度はカエルマンがです、ハブに言いました。
「君に一つお願いがあるんだけれど」
「何かな」
「うん、君以外のこの山に住んでいる生きもの達を呼んでくれるかな」
「皆とお話がしたいんだ」
「そうなんだ」
 実際にとです、カエルマンは答えました。
「だからお願いしたいけれど」
「うん、わかったよ」 
 ハブはカエッルマンのお願いに笑顔で応えました、そしてです。
 すぐに皆を呼びました、すると。
 アマメノクロウサギやヤンバルクイナ、セマルハコガメ、ノグチゲラ、ケラマジカ、キシノウエトカゲ、リュウキュウキンバト、ケナガネズミ、オオコウモリにイリオモテヤマネコといった生きもの達が一杯出て来ました。
 その中で、です。ハブとは違う蛇を見てです。
 ドロシーはその蛇達にです、こう尋ねました。
「貴方達はハブじゃないわよね」
「うん、僕はヒャンっていうんだ」
「ハイっていうんだ」 
 その蛇達はドロシーに答えました。
「沖縄にいる蛇でね」
「ハブ君達とはまた別の種類の蛇なんだ」
「そうなの、貴方達も沖縄にいるのね」
「あの」
 恵梨香がドロシーに横から言ってきました。
「この蛇さん達は物凄く珍しいんです」
「あら、そうなの」
「八条学園の動物園にはいますけれど」
 それでもというのです。
「滅多に観ることの出来ない」
「そうした蛇なの」
「そうなんです」
 実際にというのです。
「凄く稀少なんですよ、それに」
「それに?」
「アマメノクロウサギやヤンガバルクイナやイリオモテヤマネコも」
 そうした生きもの達も見てドロシーにお話します。
「凄く珍しいんです」
「そうだったのね」
「滅多に出会えないのに」
 それでもというのです。
「会えるなんて」
「オズの国ならではね」
「そうですよね」
「滅多に出会えない出会いがあるのもね」
「オズの国ですよね」
「だからね」
 それでというのです。
「こうしたこともあるのよ」
「そうですか」
「そう、あとね」
「あと?」
「あの猫ちゃんがイリオモテヤマネコよね」
 そのヤマネコを指差してドロシーに尋ねます。
「そうよね」
「はい、おそらく」
「もう一種類いるけれど」
 イリオモテヤメネコと大きさや毛並みの感じが少し違うヤマネコがです。
「あのヤマネコは一体」
「まさか」
 恵梨香はそのヤマネコを見て驚いて言いました。
「あの、噂ですよ」
「外の世界での?」
「はい、イリオモテヤマネコは西表島にしかいないんです」
「だからイリオモテヤマネコね」
「はい、ですがあの島にはもう一種類いるって言われてるんです」
「ヤマネコが?」
「そう言われていまして」
 それでというのです。
「まさか」
「あのヤマネコがなの」
「そうじゃないでしょうか」
 こう言うのでした。
「確かイリオモテヤマネコがピンギマヤーで」
「そちらではそう呼ばれているの」
「ヤマピカリャーっていうらしいんですが」
「あのヤマネコは」
「そうじゃないでしょうか」
「そうよ」
 そのヤマネコも言ってきました。
「私がね」
「ヤマピカリャーなの」
「そうなのよ」
 恵梨香に笑顔で答えます。
「ピンギマヤーとは別の種類よ」
「同じヤマネコでも」
「また違うのよ」
「そうなのね」
「まだはっきりいるかどうかわからない生きものもね」
 ドロシーが恵梨香にまた言います。
「オズの国にはいるから」
「それで、ですか」
「ヤマピカリャーもいるのよ、ただね」
「ただ?」
「ヤマピカリャーは見付かっていないだけで」
 外の世界ではというのです。
「いるわね」
「西表島に」
「そう、だからね」
「外の世界でもですか」
「絶対に何時か見付かるわ」
「そうなって欲しいですね」
 恵梨香は心からこう思いました。
「是非」
「本当にそうよね」
「小さな島みたいですが」
 それでもというのです。
「まだはっきりしていませんから」
「こんな大きいからね」
「すぐに見付かるんじゃ?」
「そう思うけれど」
「そうでもないのね」 
 恵梨香以外の四人はこう言いました、そのヤマピカリャーを見て。
「小さな島だっていうけれど」
「簡単には見付からないんだ」
「そういうものなんだね」
「こんな大きなヤマネコが」
「確かに大きいね」
 ボタンもヤマピカリャーを観て言いました。
「イリオモテヤマネコさんよりもずっとね」
「見付からない時は見付からないものだよ」
 トトがボタンに言いました。
「特に山の中だとね」
「そういうものなんだ」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「ヤマピカリャーもね」
「見付からなくて」
「当然かもね」
「西表島は狭いけれど」 
 それでもとです、またお話した恵梨香でした。
「ジャングルみたいっていうし」
「だったらね」
「ヤマピカリャーも見付かりにくい」
「そうだと思うよ」
「成程ね」
 ボタンは二人の言葉を聞いて頷きました、そしてです。
 他の生きもの達も見ました、すると本当に色々な生きもの達がいてです、教授はその目をさらに輝かせました。
「素晴らしいね」
「教授ご機嫌だね」
 トトはその教授に応えました。
「本当に」
「見ての通りだよ」
 まさにというのです。
「感激しているよ」
「珍しい生きもの達ばかりで」
「どうしてこんなの多いのかな」
 珍しい生きもの達がというのです。
「沖縄には」
「日本にはこんなところもあるんだね」
 トトも言います。
「珍しい生きものの宝庫みたいな場所が」
「うん、そしてオズの国にも入っていて」
「僕達も会える」
「そうだね」
 二人でお話するのでした、そして。
 そのお話からです、ドロシーは沖縄の生きものの皆と親密にお話をしてこう言ったのでした。
「じゃあ皆もね」
「うん、この山にいてだね」
「真ん中の山で他の山の皆とも仲良くする」
「本州や四国の生きものさん達とも」
「妖怪さんや鳥さん達ともね」
「そうしてね」
 こう言うのでした。
「是非ね」
「うん、わかったよ」
「そうさせてもらうわ」
「是非ね」
「そうさせてもらうよ」
 こうお話してでした、そのうえで。
 今度はお食事となりますがここで、です。ドロシーは皆に笑顔でこうしたことを言ったのでした。
「今日のお昼は沖縄料理でどうかしら」
「沖縄の生きもの達と一緒にいるから」
「だからですね」
「沖縄料理にするんですね」
「今日のお昼は」
「そうするんですね」
「そうよ、それで思ったのよ」
 実際にというのです。
「どうかしら」
「いいですね」
「じゃあそうしましょう」
「今日のお昼は沖縄料理」
「そっちにしましょう」
「皆で食べましょう」
 恵梨香達五人は賛成してです、そしてでした。
 教授達も賛成しました、こうしてこの日のお昼は沖縄料理となりましたが。
 そーきそばに足てびち、ゴーヤチャンプルに山羊のお刺身、ミミガーやラフテーが出されてです。皆で食べますが。
 足てびちを食べてです、トトは笑顔で言いました。
「足てびちって美味しいよね」
「トトの好物よね」
「そのうちの一つだよ」
 ドロシーに明るい笑顔で答えます。
「実際にね」
「そうよね」
「そう、それにね」
 さらに言うドロシ―でした。
「他のものも美味しいわね」
「そーきそばにゴーヤチャンプルも」
「ミミガーもね」
「このラフテーがね」
 カエルマンはこちらを食べつつ笑顔になっています。
「とてもね」
「美味しいわね」
「本当にね」
 実際にというのです。
「珍味でね」
「不思議な豆腐料理よね」
 ドロシーはそのラフテーも食べながら言いました。
「ラフテーって」
「そうだね」
「ええ、とても変わった味よ」
「そうそう、この味がいいんだよ」
「とてもね」
 沖縄の生きもの達も言ってきます、
「独特の味で」
「お酒にも合うよ」
「まあ今は子供が多いから出さないけれど」
「泡盛と実によく合うんだよね」
「泡盛、沖縄のお酒だね」
 教授は泡盛と聞いてすぐに応えました。
「私も飲んだことがあるよ」
「それでどうだったかな」
「美味しかったかな」
「飲んでみてどうだったかな」
「泡盛の味は」
「沖縄料理ととても合うね」
 そーきそばを食べながら応えます。
「強くてお酒も一気に回るしね」
「そうそう、いいんだよね」
「あの強さがまたね」
「がつーーーんとくるんだよ」
「酔いが回って」
「本当にいいお酒だよ」
「ウイスキーとかをよく飲むけれど」
 それでもというのです。
「泡盛もいいね」
「そうだよね」
「じゃあこれからもね」
「沖縄料理を食べる時は飲んでね」
「そうしてね」
「是非ね」
 笑顔で応えてです、また飲む教授でした。そして。
 そーきそばも食べます、そのそーきそばはといいますと。
「こちらもね」
「大好きみたいね」
「沖縄のそーきそば」
「あっさりしてるよね」
「ラーメンに似てるけれどラーメンじゃない」
「また別の麺なんだよね」
「この味わいとコシがね」
 教授はお箸をとても上手に使いつつ生きもの達に応えます。
「いいね」
「おつゆもだよね」
「そっちもいいよね」
「勿論だよ」
 笑顔での返事でした。
「豚骨だけれどあっさりしているね」
「昆布を入れているからね」
「その分あっさりしているだ」
「ラーメンのスープよりもね」
「そうなっているんだよ」
「そうだね、麺も縮れていないし」
 ラーメンのそれとは違っててです。
「かん水を使っていてもね」
「だからまた違うんだ」
「ラーメンとはね」
「そーきそばにはそーきそばの味わいがある」
「その美味しさがいいんだよ」
「僕としてはね」
 トトが言うにはです。
「そーきそばもいいけど」
「あっ、ゴーヤチャンプル食べてるね」
「そのお料理がいいっていうんだね」
「足てびちも大好物だけれど」
 それだけでなく、というのです。
「こっちも大好きだよ」
「ゴーヤの苦みとお肉の味が合わさっていてね」
「滅茶苦茶美味しいんだよね」
「ゴーヤチャンプルって」
「だからいいんだよね」
「そうそう、お肉とゴーヤの組み合わせがね」
 実際にと言ったトトでした。
「最高にいいんだよ」
「そうなんだよね」
「トトも楽しんでいるんだね」
「僕達も好きだよ」
「それも大好きだよ」
 見れば沖縄の生きもの達もゴーヤチャンプルを食べています、ドロシーはその彼等を見て言いました。
「貴方達もゴーヤチャンプル好きなのね」
「この通りだよ」
「ゴーヤも豚肉も大好きだしね」
「こうして楽しんでるよ」
「トトと一緒でね」
「そうよね、ゴーヤってね」
 実際にと言うのでした、ドロシーも。
「苦みがあってね」
「お肉と合うよね」
「豚肉ともね」
「あとスパムとも合うんだよね」
「あの缶詰のお肉ともね」
「スパムってあの?」
 ボタンがスパムと聞いて言いました。
「豚肉の」
「うん、僕達も食べているんだ」
「缶詰の木から取ってね」
「これがまた美味しいよね」
「お料理にも使って食べているんだ」
「ううん、僕は焼いて食べることが多いかな」
 ボタンは沖縄の生きもの達のお話を聞いて自分のスパムの食べ方を喋りました。
「サンドイッチやハンバーガーにしたり」
「それも美味しいと思うけれど」
「私達はそうして食べてるの」
「ゴーヤと一緒に炒めたりして」
「そうしてね」
「それも美味しいかな」
 ボタンはゴーヤチャンプルを食べながら思いました。
「聞いてると」
「うん、美味しいよ」
「実際にね」
「今度食べてみたらいいよ」
「そうしてみてね」
「わかったよ、沖縄料理もね」
 お箸を使いながら今度はミミガーを食べています。
「美味しいし楽しみにしているよ」
「ふむ、スパムの食べ方も色々だけれど」
 カエルマンはその小さくてよく動く目を普段以上に動かしながら言いました。
「沖縄の食べ方も面白そうだね」
「豚肉も缶詰にしたらああなるんですね」
 神宝もスパムについて知っているので言います。
「角煮とかと全然違ってますけれど」
「違うというか別もの?」
 カルロスはこう言いました。
「もうね」
「加工してあそこまで変わるなんて」
 ナターシャは驚きを隠せない感じです。
「凄いわよね」
「あれ結構昔からあったらしくて」
 スパムはアメリカで造られたものです、そのアメリカ人のジョージが言うことはといいますと。
「お祖父ちゃん軍隊で食べ飽きたって言ってたよ」
「食べ飽きたって」
 そのことに驚く恵梨香でした。
「凄いわね」
「当時ではだね」
「はい、そう思いました」
 恵梨香は教授にも答えました、同じ豚肉でも足てびちを食べながら。
「お母さんが子供の頃まで日本じゃお肉は高かったですから」
「そう聞いているんだね」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「信じられないです」
「まあそれはね」
「それは?」
「国ごとに違うからね」
 このことはというのです。
「どうしても」
「アメリカではそうだったってことですね」
「そうだよ、そしてね」
「そして、ですか」
「うん、今は日本でもお肉を普通に食べているね」
「牛肉も豚肉も」
「日本もそうなったということだよ。むしろね」
 教授は今度は山羊のお刺身を食べつつ言いました。
「日本はこうして色々なものを食べられる」
「そのことはですか」
「凄くいいことだよ」
 そうだというのです。
「山羊のお刺身なんてね」
「沖縄では食べますね」
「そうだね、他の国や人を凄いと思うより」
「自分達の方をですか」
「見て思うことが大事なのだよ」
「自分のよさや至らなさを見て」
「努力することだよ」
 そのことがいいというのです。
「私はそう思うよ」
「そうですか」
「うん、そして恵梨香も」
 山羊のお刺身のお皿を一つ回してから言いました。
「食べるかな」
「はい、それじゃあ」
「このお刺身も美味しいね」
「お魚だけでなくお肉もお刺身で食べるのにはね」
 ドロシーが言うには。
「最初驚いたわ、お魚もね」
「驚かれたんですか」
「食べられるのかって。けれどね」
「実際に食べたらですね」
「美味しいのよね」
「お寿司にしても」
「そちらもね」
 食べると、というのです。
「本当にね」
「そうですよね、お寿司も」
「あれも不思議な食べものだわ」
 そうだとです、ドロシーも山羊のお刺身を食べつつ言うのでした。
「どうにもね」
「生のお魚とお酢やお砂糖で味付けした御飯をですね」
「巻いたり握ったりして食べるわよね」
「あとちらし寿司もありますね」
「そうした食べ方をするなんて」
 それこそというのです。
「最初は想像も出来なかったわ」
「けれど食べますと」
「物凄く美味しいから」
「そのこともですね」
「驚いたわ」
「私達もお寿司食べるわよ」
 アマミミノクロウサギが言ってきました。
「この島でね」
「そうなの」
「そう、お寿司の木もあってね」
「缶詰の木だけじゃなくて」
「本土の生きもの達がいる山にもあるし」 
 アマミノクロウサギは恵梨香にさらにお話しました。
「本土の妖怪さん達の山にもあって」
「この山にもあって」
「北海道の生きもの達の山にもあるわよ」
「あっ、北海道の生きもの達の山もなの」
「あるの」
 そうだというのです。
「この山の隣にね」
「それじゃあ」
「そう、その山に行けば」 
 そうすればというのです。
「北海道の生きもの達がいるわ」
「そうなのね」
「他には小人の山もあるよ」
 ヤンバルクイナも恵梨香に言ってきました。
「真ん中の大きな山を囲む形でね」
「他の山と一緒で」
「そこには小人達がいるんだ」
「ええと、小人っていうと」
 恵梨香は小人と聞いてです、自分の頭の中にある知識を辿ってそのうえでヤンバルクイナに言いました。
「コロボックル?」
「あとキジムナーね」
「沖縄の妖怪ね」
「どちらも知ってるのね」
「実はね」
 恵梨香はヤンバルクイナにお話しました。
「私達が通っている学校にいるって言われてるの」
「どちらもなの」
「そうなの、ガジュマルの木があって」
 恵梨香達が通っているその学校にです。
「そこにキジムナーがいて」
「あの木かな」
 トトは皆がいる場所の近くにある独特な形をした木を見て言いました。
「ひょっとして」
「そうだよ」
 リクガメが答えました。
「あの木がね」
「ガジュマルなんだ」
「あのガジュマルの木にはキジムナーはいないけれど」
「それでもなんだ」
「キジムナーはガジュマルの木に住むんだ」
 そうして暮らしているというのです。
「そしてね」
「そして?」
「コロボックルもいて」
 そしてというのです。
「一緒に住んでいるんだ」
「北海道の小人も沖縄の小人も」
「そうだよ」
 実際にというのです。
「このオズの国でもね」
「そうだったんだ」
「その山に行けば」
「彼等に会えるよ」
 キジムナーやコロボックルにというのです。
「明るくて賑やかな人達だよ」
「そうらしいわね」
 恵梨香がまた言いました。
「キジムナーやコロボックスは」
「そのことも知ってるの」
 恵梨香にです、今度はハブが答えました。
「よく知ってるね」
「だからいるってお話があってね」
「有名だから」
「私もよく知ってるの」
 そのキジムナーやコロボックルのことをです。
「そうなの」
「成程ね」
「そしてね」 
 さらにお話する恵梨香でした。
「そうした性格ってこともね」
「知ってるんだ」
「そうなの、聞けばね」
 それはといいますと。
「面白くてね」
「オズの国は小人さん達も多いけれど」
 ドロシーが恵梨香に言ってきました。
「実際にいい人達が多いわ」
「そうなんですね」
「コロボックスやキジムナーには合ったことがないけれど」
 それでもというのです。
「会いに行きましょう」
「わかりました」
「勿論北海道の生きもの達にもね」
 彼等にもというのです。
「そうしましょう」
「明日からですか」
「皆でね、それもお仕事だしね」
 どういった山があるのか調べて回る、ドロシー達が今回オズマに頼まれているお仕事の重要なものの一つです。
「だからね」
「それじゃあ」
「明日は次の山よ」
「どの山ですか?」
「それはね」
 ドロシーは少し考えました、ですがその考えがまとまらずそれでこう恵梨香に言ったのでした。
「ちょっと今は」
「決まらないですか」
「夜にお話して」
「飛行船の中で」
「それで決めましょう」
 その時にというのです。
「今は決められないから」
「わかりました」
 恵梨香はドロシーのその言葉に頷きました。
「それじゃあその時に」
「そういうことでね、それでお昼を食べてだけれどデザートは」
「何にしますか?」
「南国だからね」
 沖縄だからというのです。
「トロピカル系がいいですね」
「じゃあパイナップルだね」
「マンゴーもいいよね」
「沖縄にあるし」
「それにしよう」
「そうね、そういったのがいいわね」
 ドロシーは沖縄の生きものの皆の提案に頷きました。
「それじゃあね」
「うん、パイナップルやマンゴー」
「そっちだね」
「そうしましょう」
 こうしてでした、ドロシーはデザートはそういうものを出しました。そしてそれを食べてでした。
 皆は沖縄の生きもの達と別れました、そしてです。
 この山での冒険を再開しましたがその木々を見てでした。トトはあらためてこうしたことを言いました。
「沖縄って木からして違うんだね」
「そうなの、沖縄はね」
 恵梨香がトトに答えます。
「かなり違うの」
「本土って言ってたけど」
 トトは沖縄の生きもの達の言葉を思い出しました。
「本州とか四国のことだね」
「九州もね」
「そうした地域が本土なんだ」
「日本ではそう言うことがあるの」
「それで本土の方の木とは」
「また違うの。ただね」
 こうも言った恵梨香でした。
「桜はあるから」
「そうなんだ」
「桜がないと」
「日本人としては」
「いてもたってもいられないから」
 だからだというのです。
「桜はあるの」
「植えたんだ」
「そうなの、本当にね」 
 笑顔で言った恵梨香でした。
「桜がないと春じゃないから」
「日本人の感覚だと」
「一年もはじまらない」
「そう思ってなんだ」
「桜はあるの」
「それで春にはだね」
「沖縄にも咲くの。ただ暑いから」
 それでというのです。
「一番最初に咲くの。それで沖縄から北に上がっていくの」
「桜が咲いていくんだ」
「それで最後は北海道なの」
「一番寒いからだね」
「最後に咲くのよ」
「そうなっているんだ」
「それがテレビでも言われるの」
 放送されるというのです。
「それがないとね」
「日本では春じゃないんだ」
「そうなの。面白いでしょ」
「確かにね。というか桜がないと」
「日本人はね」
 恵梨香はトトに答えました。
「そんな気がしないの」
「どうしてもだね」
「春って気がしないのよ」
「つまり桜を見て春と思うのが日本人かな」
「そう思ってくれてもいいわ」
「だから沖縄も日本なんだね」
 トトはこう考えました。
「つまりは」
「そうなるわね」
「成程ね。桜は欠かせないお花なんだ」
「沖縄にもあって」
「この山にもあるし」
 丁度目の前にありました、それも沢山。
「ハブ君やヒャン君も見て楽しんでいるんだろうね」
「そうでしょうね」
「恵梨香も好きだよね」
「お花で一番好きよ」
 にこりと笑ってです、恵梨香はトトに答えました。
「何といってもね」
「やっぱりね」
「毎年春に見るのが楽しみよ」
「そこまで好きなんだ」
「ずっと見ていたいけれど」
 一年中というのです。
「それでも春の一時にしか見られない」
「そこに風情があるかな」
「そうかも知れないわね」
「そうも思うんだ」
「そうだけれど」
「そこは難しいね」
 トトは恵梨香の右隣を歩きつつ応えました、トトの右隣にはいつも通りドロシーがいます。
「一年中見たい、けれど」
「一時しか見られないからね」
「風情もあるね」
「そうよね」
「そこは本当に難しいね」
「一番好きなお花だからずっと見たいの」
 この気持ちは強いです、確かに。
「けれどね」
「そう思うのと一緒に」
「一時だけ見られるからね」
「風情もあるんだね」
「そうも思うから不思議だわ、他のお花にはこんなこと想わないのに」
 それでもというのです。
「桜にはそうなの」
「それだけ思い入れがあるということね」
 ドロシーが言ってきました。
「恵梨香は」
「桜にですね」
「何も思わないお花はね」
 それならというのです。
「そこまであれこれ思わないでしょ」
「そうなりますね」
「本当に好きだからよ」
「ずっと見てみたいと思いながら」
「一時でもとね」
「特に好きなお花でないなら」
「そこまで想わないわよ」 
 こう恵梨香にお話します。
「私だってそうだし。ただ人だと違うわね」
「はい、ずっと一緒にいたいって思いますね」
「そこは違うわね」
 お花とはというのです。
「本当に」
「ドロシーさんはそうした人が多いですね」
「多過ぎて数えきれない位よ」
 ドロシーは笑って恵梨香に答えました。
「もうね」
「やっぱりそうですか」
「もうどれ位か」
 それこそというのです。
「わからないわ」
「そうですよね」
「オズマに」
 何といっても最初は彼女でした。
「かかしさん、樵さん、臆病ライオン」
「魔法使いさんもですね」
「おじさんとおばさん、ベッツイにトロットに」
「今いる私達もですね」
「勿論よ、トトだってそうだし」
 彼を忘れず筈がなく今も見ています。
「腹ペコタイガー、ビリーナ」
「皆もですね」
「いつも一緒にいたいわ」
「ずっとですね」
「オズの国では誰も死なないからずっとだけれど」
 それでもというのです。
「やっぱりね」
「ずっといつも一緒に」
「沢山の人達とですね」
「いたいわ」
「そうですよね」
「人はそうだわ」
 こう恵梨香にお話しました。
「いつもね」
「一緒にいて」
「楽しく過ごしたいわ」
「そうですか、そう言われますと」
「恵梨香達もでしょ」
「はい」 
 そうだとです、恵梨香も答えました。
「そうですね」
「人が一人でいるとね」
「寂しいですよね」
「そう、私は特にね」
「一人でいることはですか」
「苦手な方だから」
 実はドロシーは寂しがりなのです、一人でいることが苦手です。
「それでね」
「冒険もですね」
「誰かがいてくれてね」
「楽しんですね」
「私だけで冒険をしたことは」
 これまで数多い冒険をしてきましたが。
「なかったんじゃないかしら」
「そういえばそうですね」
「半分以上絶対にトトがいて」
「トトがいなくても誰かが一緒で」
「お一人だったことないですね」
「私達が知ってる限りでも」
 五人もこのことについて言います。
「ドロシーさんの冒険は」
「いつもどなたかと一緒ですね」
「それで楽しく冒険されて」
「ピンチも皆で切り抜けて」
「そうされてますね」
「ええ、若し私が一人だったら」
 ドロシーはそうした場合はどうなのか、自分で言いました。
「どうしようもない時もあったわ」
「そうなの?」
 ボタンがそのドロシーに尋ねました。
「ドロシーだったらどんなトラブルも平気なんじゃ」
「そうでもないのよ」
「どうしようもない時もあったの」
「そうよ」
 それが実際だというのです。
「本当にね」
「そうは見えないけれどね」
「ボタンにはそう見えても」
「ドロシーとしてはだね」
「そんな時も多かったわ」
「そうだったんだ」
「人は一人じゃいられないよ」
 カエルマンがボタンに穏やかな声で言いました。
「誰でもでね」
「学校も一人ではどうしようもないしね」
 教授もボタンに言いました。
「冒険も他のこともだよ」
「僕もドロシーがいなかったら」
 トトはそのいつも一緒にいる彼にとって一番のお友達を見ました。
「どうなっていたかなって時も多しね」
「私もよ。トトがいて他の皆もいてくれて」
「それでだよね」
「やっていけてるのよ」
「それでそうしたこともあって」
「そう、お互いに助け合ってもいきたいし」
 だからというのです。
「いつも一緒にいたいわ」
「そういうことだね」
「ええ、そうよ」
 笑顔で応えたドロシーでした、そして皆で次の山に向かうのでした。



今度の山は沖縄みたいな所。
美姫 「珍しい生き物とかも居たわね」
だな。お昼も沖縄料理に。
美姫 「皆、楽しんでいるわね」
何よりだ。
美姫 「次は北海道の生き物に会いに行くみたいね」
どうなるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
待っています。



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