『オズのトロット』




                ギリキンの海へ

 一行はギリキンの黄色い煉瓦の道を進んでいきます、そうしつつトロットは五人にこう言いました。
「次の目的地は港街よ」
「ギリキンのですか」
「そう、そこに行ってね」
 そのうえでというのです。
「船を借りてね」
「そうしてですね」
「ハイランドとローランドに行くわ」
 この二国がある島にというのです。
「そうするわよ」
「そうですか、海に出ますか」
「これまで海に出たことはあるわよね」
 オズの国の海にというのです。
「そうよね」
「はい、リンキティンク王の国でも見ましたし」
 カルロスはトロットにすぐに答えました。
「人魚の国にも行きました」
「二回位ですね」 
 恵梨香もトロットにお話します。
「大体」
「オズの国の海に行ったのは」
 ナターシャもお話します。
「それ位です」
「ただ、島とかにはです」 
 オズの国の周りのです、神宝が今言う島は。
「まだ行ってなかったです」
「ですから島に行くとなりますと」
 ジョージもトロットにお話しました。
「はじめてですね」
「港町もですね」
 カルロスはそうした街自体がと言いました。
「はじめてです」
「そうなのね、だったらね」
 トロットは五人のお話を受けて笑顔で説明しました。
「是非ね」
「はい、今回はですね」
「ギリキンの港町に出て」
「そうしてですね」
「そこで船を借りて」
「海に出てですね」
「島に行きましょう、そして船に乗ったら」
 ここでキャプテンをにこりと笑って見たトロットでした。
「キャプテンの出番よ」
「久し振りに船に乗るね」
 キャプテンもにこにことトロットに応えます。
「そして船長として働くね」
「キャプテンの本領発揮ね」
「全くだ、その時になったら」
 言葉に張りきったものが出ています。
「何をしようか」
「何ってもう決まってるでしょ」
 トロットはそのキャプテンに笑顔で応えました。
「海でもね」
「楽しむんだね」
「そう、冒険をね」
 まさにそれをというのです。
「それは決まっているわ」
「そういうことだね」
「普通の船でもいいし」
「潜水艦でもだね」
「キャプテンは潜水艦の方も乗れるわよね」
「オズの国に来てからね」 
 キャプテンがオズの国に来るまでは潜水艦も実用化されていませんでした、それでその時はまだそちらの船の船長さんは出来なかったのです。
「それはね」
「そうよね」
「けれど今は」
「潜水艦の船長さんもね」
「出来るよ、まあ厳密には艦長だね」
「潜水『艦』だから」
「そう、艦長になるよ」
 言葉の関係でというのです。
「そうなるよ」
「そうね」
「この言葉の違いは中々大事でね」
 教授も笑ってお話してきました。
「船と艦はまたね」
「違っていて」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「動かす人の名前も違ってくるんだ」
「船長さん、艦長さんって」
「そうなるんだ」
「それでキャプテンもよね」
「船の時は船長さんでね」
「艦の時は艦長さん」
「そうなるのだよ」
 乗るものの違いによってです。
「微妙な違いだけれどね」
「同じお池や海で乗るものだから」
「そんなに違いはないけれど」
「違いはあって」
「よくわかっていないとね」
「駄目ってことね」
「そうだよ」
 こうトロットにお話するのでした。
「何かとね」
「そのこともわかったわ」
 トロットは教授に確かなお顔で答えました。
「私もね」
「うん、覚えておいてくれると嬉しいよ」
「それじゃあね」
「それとどちらに乗るかは」
 普通の船と潜水艦のです。
「港町に来て決めよう」
「それがいいわね」
「どちらも楽しそうだね」 
 普通の船に乗っても潜水艦に乗ってです、モジャボロは楽しめると言うのでした。
「海の中を見るのも楽しいし」
「むしろですね」
 カルロスがここで言うには。
「両方出来たら」
「そうした船に乗ったらだね」
「最高に面白そうですね」
「そうした船もあるわよ」
 トロットはカルロスにすぐに答えました。
「港町には」
「そうなんですか」
「というか潜水艦自体がね」
 まさにこの船がというのです。
「どちらでも行けるから」
「潜水艦はですか」
「海の上も進めるから」
 海の中だけでなくというのです。
「そちらに行ったらね」
「いいんですね」
「ええ、どっちもってなったら」
「そうですか」
「まあそうしたことはね」
「港町に行ってですね」
「決めましょう」
 こうお話してそしてでした、皆で港町に向かっていきます。一行の目の前にその港町が見えるとトロットは五人に笑顔でお話しました。
「あの街がよ」
「あっ、見えてきましたね」
「それに潮の香りもしてきました」
「それじゃあですね」
「今からあの街に入って」
「そして海に出るんですね」
「そうよ、海に出て」
 そしてというのです。
「そちらの旅も楽しみましょう」
「海に出たら」
 その時のことをまた言うカルロスでした。
「海の上でも中でもですね」
「そこを見ながらね」
「冒険をするんですね」
「御飯も食べるのよ」
 そちらも楽しむというのです。
「船旅の中でね」
「わあ、優雅ですね」
「貴方達はそうしたことはしたことがあるかしら」
 船旅を楽しむことはとです、トロットは五人に尋ねました。
「そちらは」
「ないです」
「ちょっとそうした機会はなくて」
「残念ですが」
「日本でもです」
「一度も」
「そうなのね、けれどこれからね」
 オズの国においてというのです。
「楽しめるから」
「それじゃあ」
「そう、楽しみましょう」
 まさにとです、答えてでした。皆で港町に入りました。すると奇麗に整った紫の街の先に波止場がありました。
 波止場には沢山の船が泊まっています、大きな船もあれば小さな船もあって漁船もボートも沢山あります。そして潜水艦もです。
 そうした色々な船達を見てトロットは言いました。
「どうかしら」
「はい、凄いですね」
 カルロスがこう答えました。
「色々な種類の船が沢山あって」
「こうした街なのよ」
「そうなんですね」
「漁業も出来てね」
 そしてというのです。
「船旅も出来るし」
「ボートで遊ぶことも」
「そちらもよ」
「そうですか、何かとですか」
 また言った先生でした。
「海での楽しみを満喫出来る街なんですね」
「そうなの、じゃあね」
「はい、今からですね」
「どの船に乗るかを決めましょう、そうね」
 どうして決めるかです、トロットが考えた決め方はといいますと。
「どの船に乗るか多数決で決めましょう」
「多数決ですか」
「それで決めればすぐに決まるし沢山の人がってことでね」
 賛成しているからというのです。
「いいから、じゃあね」
「はい、今から多数決を取って」
 そうしてというのです。
「決めましょう」
「そうだね、それがいいね」
 モジャボロはトロットのその意見に笑顔で賛成しました。
「今回の冒険のリーダーはトロットだしね」
「私が決めることだから」
「どの船に乗るかもトロットが決めてもいいけれどね」
「こうした時は多数決がいいと思って」
「皆の意見を尊重してだね」
「それでと思ったけれど」
「それでだね、じゃあね」
 モジャボロも賛成して他の皆も賛成しました、そして多数決を取ることをはじめましたがトロットが最初に潜水艦を出すとです。
 皆右手を挙げました、その意見を見てでした。トロットは笑顔で言いました。
「すぐに決まったわね」
「そうですね、やっぱりです」
「海の上も中も行けるからよね」
「潜水艦がいいと思いまして」
 カルロスが答えました。
「それでなんです」
「僕もです」
「潜水艦に乗られるなんてそうそうないですから」
「海の中を受けるなんて」
「貴重な経験ですから」
 四人もこう答えてです、そして教授とモジャボロも言います。
「最近海の中を見ていなかったからね、学問的な研究の意味でもね」
「僕は珊瑚礁とか海の中のお魚を見たいからだよ」 
 二人もそれぞれの理由でした、最後にキャプテンが言いました。
「わしはどの船でもいいからね、ただ潜水艦を久し振りに動かしたくなって」
「それでなのね」
「賛成したんだ」
「私の場合は」
 トロットはどうして潜水艦に乗りたいのかをお話しました、見れば結構大きな三百メートルはある潜水艦が港に停泊しています。潜水艦としてはかなり大型で黒い葉巻みたいな形をしていて艦橋は前の方にあります。
「海の中の旅をしたくなって」
「それでだね」
「賛成だったわ」
「それぞれの理由だね」
「そうね、じゃあね」
「今から乗ろう、そしてね」
 乗ったらとです、モジャボロは皆に言いました。
「出港して海に出たらね」
「丁度お昼ね」
「そうした時間になるから」
 だからというのです。
「お昼を食べよう」
「そうね、じゃあね」
「今から潜水艦を借りよう」
「じゃあ市長さんとお話をしましょう」
 こうお話をしてでした。
 トロットが市長さんとお話をすると市長さんも快諾してくれてでした、そうして皆で潜水艦に乗り込みますが。
 その操縦室を見てです、笑顔で言ったキャプテンでした。
「もう自動操縦だからね」
「それでなのね」
「わしが見ているだけでも」
 それでもというのです。
「島に行くことが出来るよ」
「そう、じゃあね」
「今から出港だ」
「それでキャプテンは」
「ここに残るよ」
 操縦室にというのです。
「そして皆はね」
「お昼をっていうの」
「そうしたらいい、わしは後でここで食べるよ」
「いえ、自動操縦よね」 
 トロットはこのお話を聞いて言いました。
「そうよね」
「そうだよ」
「だったらお昼の間はね」
「見張りもだね」
「そう、しなくていいかも知れないわ」
「そういえば」
 ここで操縦室をじっくりと見回してです、キャプテンは遠隔操作が出来るリモコン装置を見てそうしてトロットに言いました。
「これで動かせばね」
「それでなのね」
「ここにいなくてもね」
 それでもというのです。
「操縦は出来るよ」
「そうなのね」
「そして皆が寝ている間は」
 つまり夜はというのです。
「わしは操縦室にいてね」
「それで寝るの」
「何かあったらすぐに起きられるから」
「キャプテンは海の人だから」
「何か異変があったら」
 その時はというのです。
「起きるからね」
「じゃあ海にいる間は」
「わしに任せてくれるか」
「わかったわ、ただ自動操縦なんて」
「凄いね」
「ええ、流石はオズの国ね」 
 この国の潜水艦だというのです。
「外の世界じゃ潜水艦を動かすにも大勢の人が必要よね」
「はい、そうです」
 その通りとです、カルロスが答えました。
「百人位ですか?」
「それ位の数の人が必要なのね」
「もっと少ないかも知れないですけれど」
「どちらにしても大勢の人が必要ね」
「学校で先生に教えてもらいました」
 そのことをというのです。
「日本の学校で」
「先生が教えてくれたの」
「授業の間に」 
 そうだったというのです。
「他の船もそうだと」
「そうなのね、面白いこと教えてくれる先生ね」
「はい、本当に」
「けれどオズの国ではね」
 その潜水艦もというのです。
「そうしてね」
「一人で、ですか」
「動かせるから」
「しかも自動操縦で」
「そこは違うわね」
「これも魔法と科学が両方あるからですね」
「そうよ」
 その通りとです、トロットはカルロスに答えました。
「その両方があるからね」
「自動操縦もですね」
「出来るの、魔法だけでも科学だけでもね」
「無理ですね」
「この潜水艦はグリンダが造ってくれたの」
 そうした潜水艦だというのです。
「それでなのよ」
「こんなに凄いんですね」
「そう、ほら見て」
 操縦席の端を指差しました、するとそこにはカドリングの紋章がありました。他ならないその国のです。
「その証拠にね」
「カドリングの紋章ですね」
「これがあるでしょ」
「グリンダさんが造ってくれたからですね」
「これがるのよ」
 潜水艦の中にというのです。
「この街へのプレゼントだけれど」
「グリンダさんが造ってくれたことはですね」
「事実よ」
 このことは紛れもなく、というのです。
「この通りね」
「そうなんですね、じゃあグリンダさんに感謝して」
「そしてね」
「ハイランドとローランドに」
「今から行きましょう」
 そこにというのです。
「海の旅を楽しみながらね」
「わかりました、じゃあ今からですね」
「出港よ」
 これからというのです。
「そうなるわ」
「いよいよですね」
「さて、海に出たら」
 キャプテンも言います、操縦席に集まっている皆に。
「海の上の景色も中の景色もね」
「両方をですね」
「楽しもうね」
 そうしようというのです。
「これからね」
「はい、それじゃあ」
「今から出港ですね」
「ハイランドとローランドに向かって」
「そうしてですね」
「海の上も中も見ながら」
「そうなるよ」
 キャプテンは笑顔で応えます、そしてここででした。
 カルロスはふとです、気付いた顔になってキャプテンに尋ねました。その尋ねたことは何かといいますと。
「あの、ただ」
「ただ?」
「潜水艦で海の中にも行きますよね」
「そうだよ」
「そうすることはいいとしても」
 それでもというのです。
「この潜水艦もそうですが潜水艦って全部金属で包まれていて」
「そしてだね」
「外は見られないんじゃ」
 つまり海の中はというのです。
「潜水艦の中からだと」
「そうだね、けれどね」
「この潜水艦は違うんですか」
「そう、潜水艦全体が三百六十度モニターになっていてね」
 それでというのです。
「モニターのスイッチを入れたらね」
「そうしたらですか」
「海の周りが全部見られるよ」 
 そうなるというのです。
「そうなるよ」
「そうですか、それでなんですね」
「海の中を身られるよ、潜水艦を海の上に出してそうして甲板にいてもね」
 そうしていてもというのです。
「モニターのスイッチを入れていたらね」
「甲板から海の中を見られるんですか」
「そうなんだ、甲板の真下をね」
「それは凄いですね」
「これも魔法と科学が合わさっているからだよ」
 まさにその為にというのです。
「オズの国ならではのね」
「そうですか」
「だから凄いものが見られるからね」
「そのことを楽しみにしながら」
「航海を楽しもうね」
 それをというのです、こうお話してでした。
 潜水艦は出港しました、港と出るとすぐにでした。キャプテンはモニターのスイッチを入れてそうしてです。
 皆で甲板でお昼御飯を食べました、今日のお昼のメニューは魚介類をふんだんに使ったものでシーフードサラダに蟹のスープ、生牡蠣にスパゲティペスカトーレに鱈のムニエル、ロブスターの丸煮にパエリアといったものでした。
 そのシーフードのお料理を食べつつです、モジャボロはトロットに満面の笑顔で言いました。
「海の上で海の景色を見つつ海の幸を食べる」
「最高の贅沢よね」
「全くだよ」 
 ロブスターをにこにことして食べつつ言うのでいsた。
「本当にね」
「そう思ってね」
「今回のお料理を出したんだね」
「そうなの、パエリアもね」
 これもというのです。
「出したのよ」
「海老も烏賊も貝も入っていて」
 ジョージはそのパエリアを食べつつ言います。
「凄く美味しいです」
「このスープもいいですよ」
 神宝は蟹のスープの味にご満悦です。
「本当に」
「ペスカトーレもです」
 ナターシャはこちらを食べています、パスタの腰もかなりでオリーブオイルとガーリックもよく利いています。
「いいですよ」
「ムニエルも新鮮で味付けも焼き加減もよくて」 
 恵梨香はフォークとナイフを礼儀正しく使って食べています。
「美味しいですよ」
「うん、これは最高のご馳走だよ」
 教授も白ワインを飲みながらお料理を楽しんでいます。
「海に出た醍醐味の一つだよ」
「海は本当にいいよ」
 キャプテンも笑顔になっています。
「こうしたものが楽しめるからね」
「そうですよね、ただブラジルにいますと」
 カルロスはキャプテンにお家のお話をしました、今もロブスターのお塩だけで神父つに味付けされたそれを楽しんでいます。
「どうしてもです」
「海に面しているところじゃないとだね」
「冷凍技術があっても」
 それでもというのです。
「あまりです」
「海の幸は食べないんだね」
「アマゾンの方に行くと特に」
「川のものをよく食べるね」
「そうなっています、それかやっぱり」
「お肉だね」
「むしろブラジルはそっちが主流で」
 お魚等海の幸よりもというのです。
「シェラスコとかを食べます」
「そうだね」
「海の幸になるとやっぱりアメリカの西海岸とか中国の広東とか日本ですね」
「うん、そこは有名だよ」
「広東料理の海の幸も最高だよ」
「日本は今では何処でも海の幸を食べられるわ」
 ジョージと神宝、恵梨香がそれぞれカルロスに応えました。
「お刺身もお寿司も」
「蒸し餃子や麺類や炒飯に入れたり」
「ムニエルにしてもフライにしてもカルパッチョにしてもいいね」
「そうしたところで」
「ロシアはどうしてもね」
 ナターシャは微妙なお顔になっています。
「海があっても。寒い場所ばかりでしかも陸が広過ぎてね」
「だからだよね」
「ロシアでは海の幸はあまり食べないんだよね」
「全般的に」
「そうなの、鮭やマスのフライ位は食べるけれどね」
 こう三人にも答えます、そしてそのお話を聞いてトロットは言いました。
「オズの国も私が来た時から暫くはね」
「海の幸はですね」
「あまりですね」
「食べていなかったんですね」
「そういえば本でもそうでしたね」
「ステーキとかオートミールは食べていでも」
「こうしたものは食べていなかったでしょ」
 ボームさんが紹介してくれた冒険の中ではというのです。
「そうでしょ」
「はい、確かに」
「パエリアもなかったですし」
「ペスカトーレもでしたね」
「生牡蠣なんかも」
「ロブスターも」
「それがやっぱり変わったのよ」
 オズの国もというのです。
「やっぱりね」
「そうなんですね」
「変わってですね」
「今みたいにですね」
「食べているんですね」
「こうして」
「そうなの、そしてね」 
 それにというのです。
「この潜水艦だってね」
「なかったですよね」
「こんな立派な潜水艦は」
「殆ど豪華客船です」
「立派なお風呂もあって」
「お部屋だって豪勢で」
「こんな潜水艦ない筈よ」 
 外の世界にはとです、うっとりとして言うトロットでした。
「何処にもね」
「絶対にだよ、お部屋も立派でね」
 キャプテンも言います。
「そのお風呂もお部屋にそれぞれあるからね」
「まさに豪華客船だよ」
 モジャボロも言ったのです。
「この船旅も楽しめるよ」
「まさかオズの国で豪華客船の旅も楽しめるなんて」
 カルロスはうっとりとしています。
「考えていませんでした」
「そうだね、けれどね」
「これもですね」
「オズの国だからだよ」
「お伽の国だから」
「不思議なことがね」
 それこそというのです。
「何でもある国でね」
「それでなんですね」
「こうしてね」
「今は船旅を楽しめる」
「そうしようね」
「そうですね、海の幸に」
 それにでした。
「景色ですね」
「そう、景色もね」
 トロットも周りを見つつ言うのでした、見渡す限り海で下には海底があってそこに行き交うお魚や蛸や烏賊が見えてです。
 そしてです、奇麗な貝も見えてです。五人は言いました。
「いや、これは」
「何ていうか」
「海の底も何て奇麗なんだろう」
「海の上だけじゃなくて」
「中も一緒に見られるし」
「こうして見られるからね」
 笑顔で言うモジャボロでした。
「本当にいいね」
「まさに幻想だね」
 うっとりとして言ったキャプテンでした。
「これは」
「はい、海の上も中も一緒に見られて」
「後で潜るからね」
「潜るとですね」
「海の中が三百六十度見渡す限りね」
「見られるんですね」
「お魚がそうしているみたいにね」
 まさにというのです。
「それが出来るから」
「それも凄いですね」
「そしてね」
 さらにお話するキャプテンでした。
「夜になるとね」
「夜の海の中をですね」
「見られるよ、今日は確か満月で快晴だしね」
 お空には雲一つありません。
「それでね」
「月明りに照らされた海の中をね」
「見られるんですか」
「そうだよ、夜のね」
「何か嘘みたいですね」
「ははは、だからね」
「その嘘みたいなことが起こるのがオズの国ですね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「だからこのこともね」
「驚くことじゃないですか」
「そうだよ」
「そうですか」
「月明かりに照らされた海の中を見られるなんて」
 トロットもお話を聞いてうっとりとしています。
「本当に素敵だわ」
「トロットも楽しみだね」
「本当にね」
「ではお昼はここで食べて」
「それでよね」
「午後は潜って夕方はまた出てね」
「夕方の海を見ながらよね」
「夕食を食べて」
 そしてというのです。
「夜はね」
「月明かりに照らされた海の中を進む」
「そうしていこうね」
「わかったわ、キャプテンもロマンチックね」
「海の男は多くの人がそうだよ」
「ロマンチストなのね」
「海にはロマンがあるからね」 
 だからだというのです。
「そうなる人が多いんだよ」
「そしてキャプテンもまた」
「そうだよ」
 その通りと答えるのでした。
「ロマンが好きなんだよ」
「そうなのね」
「わしも見るのが楽しみだからね」
 海の中、そして海の上の景色をというのです。
「だからね」
「御飯の後は潜って」
「その中でティータイムも楽しんで」
 そしてというのです。
「夕方はね」
「また海の上に出てディナーを楽しんで」
「夜はね」
「寝るまではよね」
「お風呂に入ったりする間もね」
 モニターのスイッチは入れたままにしてというのです。
「勿論他のお部屋は見られないからね」
「お風呂にいても安心ね」
「外は見られてもね」
 お部屋の中は違うというのです。
「だから安心してね」
「そうしてよね」
「お風呂を楽しみながら」
「夜の海の中の景色も楽しんで」
「寝ようね」
「わかったわ」
「わしもそうするからね」
「では私はね」
 教授もにこにことして言います。
「夜の海の中を見てね」
「教授は学問ね」
「それを楽しむよ」
「そうするのね」
「絶対にね」
「それはいいことね」
「夜の海の中を直接見られるなんてそうそうない機会だよ」
 それ故にというのです。
「この機会を逃さないよ」
「それじゃあ」
「楽しみにしているよ」
「僕はお風呂も楽しんで豪勢なお部屋でワインも飲みながら」
 そうしてと言うモジャボロでした。
「そうしてね」
「景色も楽しむのね」
「そうするよ」
 こうトロットに答えました。
「是非ね」
「それはいいことね」
「そうだね」
「ええ、今日も素敵な一日になりそうね」
「全くだね」
「お昼も夕方も夜も楽しみよ」
「全くだね、あと全部食べた後は」
 どうするのかとです、モジャボロはトロットに尋ねました。
「デザートは何かな」
「ええ、ワインゼリーよ」
「ゼリーなんだ」
「そうよ」
 それだというのです。
「こっちも楽しみにしておいてね」
「海の関係かと思っていたけれどね」
「何かこうね」
 首を傾げさせて答えるトロットでした。
「海の関係のデザートはね」
「知らないんだ」
「それでなの」
「ゼリーにしたんだ」
「ゼリーに使う寒天で連想してね」 
「だからなんだ」
「ゼリーにしたけれど」
 それでもとです、トロットは言うのでした。
「どうかしら」
「ううん、寒天ならね」
 モジャボロはトロットのお話を聞いてこう言いました。
「まあいいかな」
「そう言ってくれるのね」
「寒天は海草だからね」
 それでというのです。
「いいかな」
「それじゃあね」
「デザートはゼリーを食べよう」
「そうしましょう、じゃあね」
「今日はね」
「海の景色を楽しみましょう」
 こうお話して実際にでした、皆はお昼御飯の後は海の中に潜航してそうしてその景色を楽しんででした。夕方はディナーを海の上で楽しんで。
 そしてです、夜にはでした。
 上から満月に照らされた海の中を見ました、周りに色々な種類のお魚が泳いでいて海底もはっきり見えています。貝殻や珊瑚やイソギンチャク達がいる。
 その夜の海を見てです、トロットはお茶を飲みながらうっとりとして一緒に見ている皆に言いました。
「本当にね」
「奇麗だね」
「ええ」
 キャプテンにも答えます。
「これまで見たことがない様な」
「これを見ると潜水艦で来てよかったって思うね」
「こんなに奇麗なもの見られるから」
 それでというのです。
「そう思わないでいられないわ」
「うん、最高の場所だよ」 
 教授は海の中の状況や様々な生きもの達を見つつ言いました。
「夜の生態系、月明りの状況もわかるから」
「やっぱり学問的にも」
「見所があるよ」
 そうだというのです。
「私も来てよかったよ」
「そうなのね」
「見どころがあり過ぎて」
「かえって?」
「困る位だよ」
「嬉しい困りごとね」
「そう言っていいね、では寝るまでね」
 その時までというのです。
「見ていくよ」
「そうするのね」
「お風呂にも入るけれどね」
「明日には島に着くし」
 モジャボロは景色を楽しみつつこれからのことも考えました。
「着いたらね」
「早速使節団のお仕事ね」
「それが待っているから」
 だからというのです。
「そちらに励もうね」
「ええ、その時は正装に着替えて」
「そうしてね」 
 そのうえでというのです。
「贈りものもしましょう」
「オズマ姫からのね」
「それも楽しみよ、今回の冒険も色々な国に行くから」
「その時は正装に着替えてね」
「そうなるわ、あとね」
 さらに言うトロットでした。
「明日の朝だけれど」
「日の出の海だね」
「ええ、それを見たいわ」
 こうキャプテンに答えました。
「その時の海もね」
「朝日の時の海ですか」
「それも凄く奇麗そうですね」
「じゃあ僕達も」
「是非です」
「一緒に」
「勿論よ、皆で見ましょう」
 トロットは五人に笑顔で答えました。
「そうしましょう」
「じゃあ明日もですね」
「日の出と共に起きて」
「皆で、ですね」
「朝日の海を見るんですね」
「そうなりますね」
「そのうえでね」
 レモンティーを飲みつつ答えるトロットでした。
「島に着くから」
「ハイランドとローランドのある」
「あの島にですね」
「そしてそのうえで、ですね」
「使節団としてですね」
「私達も働くんですね」
「そうよ、ただ使節といってもね」 
 それでもとお話するトロットでした。
「緊張することはないから」
「そうなんですか」
「ええ、特にね」
 こう答えました。
「そうすることはないわ」
「大事なお仕事ですよね、使節って」
「そうよ、けれどね」
「それでもですか」
「肩肘張らないでね」
 そうしてというのです。
「私達と一緒にいればいいから」
「そうなんですか」
「使節団って大変って思っていたら」
「そうでもないんですか」
「緊張しなくていい」
「別にですか」
「貴方達は五人共礼儀正しいからね」
 このことがしっかりしているからというのです。
「別にね」
「緊張しないで、ですか」
「つまりいつも通りですか」
「いつも通りにしていればいい」
「紳士として淑女としてですね」
「振舞っていればいいんですね」
「タキシードやドレスに相応しい仕草よ」
 要するにというのです。
「そうしたものでいいから」
「本当に堅苦しくなる理由はないからね」
 キャプテンもこうお話します。
「別にね」
「そうなんですね」
「そう、そしてね」
「そのうえで」
「後はね」
 トロットがここで五人に言うことはといいますと。
「ドウ一世と道化大臣のチック=ザ=チェラブにゴムの熊のパラ=ブルーインだけれど」
「ハイランドの人達ですね」
「ジンジャーブレッドとお菓子の紳士でしたね、ドウ一世は」
「パジャマにサンダルの大臣さんと」
「そしてゴムの熊ですね」
「あの二国の国家元首さん達ですね」
「面白い人達だから」
 彼等はというのです。
「会う時を楽しみにしておいてね」
「わかりました」
 カルロスがトロットに答えました。
「明日のことを」
「是非ね、けれど最初見て不思議に思ったでしょ」
「ジンジャーブレッドの身体の人はですね」
「ええ、そうだったでしょ」
「最初読んだ時に」
 そのドウ一世が出て来る時をです。
「またオズの国らしい人だなって」
「そう思ったのね」
「はい、元々はオズの国の人じゃなかったですよね」
「砂漠の向こうにあった国だったからね」
 オズの国の国境である死の砂漠です、今は海岸のところに移っていて大陸全てがオズの国になっています。
「だからね」
「それで、ですよね」
「外国の人だったのよ」
「そうでしたね、ですがそれでもです」
「オズの国の人らしいって思ったのね」
「そうでした」
 カルロスはこうトロットに答えました。
「本当に」
「そうだったのね」
「はい、オズの国ならですよね」
「そうした人も多いでしょ」
「ですから」
「オズの国らしいって思ったのね」
「そうでした、じゃあ明日は」
 カルロスも明日のことが楽しみになっていました。
「是非ですね」
「そう、ハイランドとローランドに行きましょう」
「わかりました」
 笑顔で応えたカルロスでした、そしてです。
 潜水艦の中から海の中を見てです、五人はうっとりとしていました。
「月の明かりに照らされて」
「本当に奇麗だね」
「お魚も一杯泳いでて」
「珊瑚も貝殻もあって」
「まるで嘘みたいに奇麗だわ」
「夜の海の中もね」
 トロットもうっとりとしています。
「オズの国では見られるから」
「こうしてですね」
「そうよ、じゃあ寝るまでね」
 その時までというのです。
「見ていましょう、そしてこの海の中を見ながらね」
「今日は寝るんですね」
「そうしましょう」
 こう言ってでした、皆は夜の海の中の景色を見つつです。それぞれのお部屋で気持ちよく朝まで寝ました。



潜水艦で海中を。
美姫 「本当に色んな所へ冒険しているわね」
ああ。今回は海の中だしな。
美姫 「楽しんでいるようで良かったわね」
確かにな。のんびりとしているようだし。
美姫 「次はどうなるのかしら」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」



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