『オズのトロット』




                第十一幕  イッソスの国の女王

 遂にです、一行はイッソスの国に入りました。そうしてイッソスの国の中を見てそのうえでなのでした。
 カルロスは目を瞬かせてこう言いました。
「鏡が多いね」
「確か鏡は」
 ジョージも言います。
「イクシー女王はお嫌いだったんじゃ」
「そうだったね」
 神宝はジョージのその言葉に頷きました。
「鏡にご自身の素顔が映るから」
「それでお嫌いだった筈なのに」
 ナターシャもお国の中を見ています、見ればお家の扉の前には絶対にありますし鏡の迷路もあります。
「何でこんなにあるのかしら」
「どういった変化かしら」
 恵梨香も首を傾げさせます。
「これは」
「鏡のことね」
 トロットは五人にすぐに答えました。
「それはイクシー女王が気付いたからよ」
「気付いた?」
「何に気付かれたんですか?」
「鏡が映し出すものによ」
 それにというのです。
「気付いたのよ、だからよ」
「この国に鏡が多いんですか」
「あちこちにあるんですか」
「そうなの、イクシー女王は鏡に映る自分の本当のお顔が嫌だったでしょ」
「それでバド王やフラフ王女と騒動になって」
「そしてでしたね」
「最後は仲良しになってますね」
 バド王とフラフ王女にイクシー女王がお会いしたお話でもあります、五人もこのお話については知っています。
「その時にですか」
「女王もおわかりになったんですか」
「鏡のことが」
「そう、鏡は自分の本当の姿を映し出すのよ」
 そうしたものだというのです。
「だからね」
「若し自分の心が確かですと」
「イクシー女王もね」
「鏡に映るご自身のお姿がですね」
「奇麗なままだってね」
「おわかりになってですか」
「鏡を置いたのよ」
 お国のあちこちにというのです。
「そうなったの」
「そうですか」
「そう、そのことに気付いてね」
「こうしてですね」
「お国のあちこちに鏡を置いてるの」
「そもそもね」
 ここで教授がお話します。
「オズの国では誰も歳を取らないね」
「そうですよね」
「ご自身でもっと歳を取りたいって思ったら成鳥出来ますけれど」
「トロットさんみたいに」
「そう自分で思わな限りは」
「歳を取らないですね」
「イクシー女王もだよ」
 この人もというのです。
「そのことにも気付いたしそれにね」
「鏡のことにもですね」
「気付いたからね」
 だからだというのです。
「そうしたことをしなくなったんだよ」
「そうですか」
「そう、魔法ケープもいらないってわかってね」 
 そしてとカルロス達にお話します。
「そしてね」
「そのうえで、ですね」
「鏡もね」 
「こうしてですね」
「沢山置く様になったんだよ」
 ご自身のお国の中にです。
「そうして皆でいつも本当の自分を確かめよう」
「そうなったんですね」
「この国ではね」
「鏡の国だよ」
 こう言ったのはモジャボロでした。
「この国はね」
「オズの国の中にある」
「鏡の国ですね」
「アリスにありましたけれど」
「ここは鏡の国なんですね」
「そうなんですね」
「そうだよ、鏡の国だよ」
 まさにというのです。
「この国はね」
「それにアリスもね」
 キャプテンはこの娘のことをお話しました。
「オズの国の住人でもあるからね」
「あの娘もですか?」
「オズの国の住人なんですか」
「イギリスにいましたけれど」
「今はですか」
「オズの国にいるんですか」
「あちこちの世界を回っている娘だけれどね」
 不思議の国、そして鏡の国を巡っていました。この二つの冒険のことは世界中の人が知っていることです。
「それでもね」
「オズの国にいてですか」
「そうしてなんですね」
「今もあらゆる世界を行き来している」
「そうしてるんですね」
「あの娘も」
「そうなんだ、二つの旅の後ね」 
 それからのアリスはといいますと。
「大人になって結婚して子供も出来たけれどね」
「ずっとですね」
「子供心を忘れなかった」
「だからですね」
「オズの国に入ったんですね」
「そしてオズの国の住人になったんですね」
「そうなの、だからね」
 アリスもいるからというのです、またトロットがお話しました。
「機会があったらね」
「アリスともお会いして」
「そうしてですね」
「一緒に冒険して」
「そしてですね」
「楽しめばいいですね」
「そうよ、それじゃあね」
 これからはというのでした。
「その時のことも楽しみにして」
「今はですね」
「イクシー女王のところに行くんですね」
「これから」
「そうよ、じゃあ行きましょう」
 笑顔で言ってです、そしてでした。
 イクシーの国を進んでいきます、そうしつつです。
 皆はお昼にはトロットが持っているテーブル掛けからお食事を出して食べます、今日は串カツを出すのですが。
 串カツを食べつつです、トロットはこうしたことを言いました。
「これにキャベツがあるからね」
「よく合うよね」
 キャプテンも応えます。
「串カツと」
「ええ、これは日本のお料理だけれど」
「そうそう、大阪のものらしいね」
 日本のというのです。
「日本の西の街だね」
「貴方達が今いる神戸のすぐ近くだったわね」
 トロットは五人にお顔を向けて聞きました、豚肉や牛肉の串カツだけでなくてうずらの卵や鶏肉、海老や烏賊や蛸や貝、ソーセージのものもあります。
「大阪は」
「はい、そうです」
 その通りだとです、恵梨香が答えました。
「電車ですぐの場所です」
「そうなのね、実際に」
「私神戸生まれでよく行き来してまして」
 子供の頃からというのです。
「それでなんです」
「大阪のこともよく知ってるのね」
「串カツも結構食べてました」
 海老の串カツを食べつつトロットにお話します。
「昔から」
「そうなのね、じゃあこの串カツはどうかしら」
「大阪の串カツですね」
 まさにそれだというのです。
「おソースも」
「それもなのね」
「はい、美味しいです」
 ちゃんとソースが入れられている容器も置かれています、皆そこにちゃんと串カツを一回だけ入れています。
「本当に」
「それは何よりよ」
「ううん、大阪はね」
 キャプテンが言うには。
「わしも知らないんだよね」
「賑やかで楽しい街だというけれど」
「オズの国の日本街にあるかな」
 教授とモジャボロも首を傾げさせています、とても美味しい串カツを食べながらこのことを思うのでした。
「大阪は」
「どうなのかな」
「若し大阪があったら」
 それならと言うトロットでした。
「行きたいわね」
「オズの国ならあるんじゃないですか?」 
 カルロスは豚肉の串カツを食べつつ言いました。
「大阪みたいな街も」
「アメリカには日系人の人も多いから日本もあるけれど」
 トロットは考えるお顔でカルロスに答えました。
「それでも日本全体でね」
「大阪自体はですか」
「どうなのかしら」
 それはというのです。
「一体」
「そこはですか」
「わからないですか」
「ちょっとね、ただオズの国はお伽の国だから」
 それでと答えたトロットでした。
「日本人街もあってね」
「大阪もひょっとしたら」
「あるかも知れないわ、そうした日本人街も」
「日本人街もオズの国に幾つかあるよ」
 キャプテンも言ってきました。
「中華街もあるしね」
「それで日本人街の中には」
「大阪みたいな街もあるかな」
 こうカルロスにお話しました。
「わし等がまだ行っていないか行っていても気付いていなかったか」
「そこが大阪だとですね」
「そうかも知れないね」
「イッソスの国の南、ギリキンの北にも日本人街があるわよ」
 トロットがこのことをお話しました。
「だからね」
「この帰りにですね」
「行ってみようかしら」
「それじゃあ」
「ええ、行ってみましょう」
 是非にと言ってでした、そのうえでです。
 皆は串カツを食べてからまた歩きはじめました、そうしてその王宮のある街に来るとそこはといいますと。
 街を囲む城壁は全て鏡です、カルロス達はその鏡を見て言いました。
「鏡の国だからね」
「城壁も鏡なんだね」
「それで全部囲んでいる」
「そうした街なのね」
「とても眩しいわ」
「そうでしょ、鏡の国の都だからね」
 まさにとお話したトロットでした。
「こうしてね」
「城壁が鏡で」
「光を反射して眩しいですし」
「僕達の姿も映ってて」
「本当の姿を映し出してくれてるんですね」
「私達の本当の姿を」
「そう、今鏡に映っているのがね」
 城壁には皆の姿が映っています、皆自分も他の人達もよく知っている姿のままです。何一つ変わることはありません。
「私達の本当の姿よ」
「そうなんですね」
 カルロスが応えました。
「僕達が思っている姿そのままです」
「私もよ、それならね」
「いいことですね」
「若し鏡に映っている姿が酷いものだったら」
「普通に見えている姿が奇麗でも」
「本当の姿が酷かったら嫌でしょう?」
「そうですよね」
 カルロスはトロットのお話に神妙なお顔で頷きました。
「それ程嫌なことはありません」
「言うならば心よ」
「その本当の姿は」
「そう、だからイクシー女王はね」
 鏡に映っている年老いたお姿に困っていたこの人はといいますと。
「お心がね」
「老いていたんですね」
「そう、だからね」
「お心が若さを取り戻して」
「若くなったのよ」
 鏡に映るそのお姿もというのです。
「そうなったのよ」
「そうなんですね」
「そう、そしてね」
「そして?」
「魔法で若くすることも止めたの」
「オズの国は誰も歳を取らないから」
「そうする意味がないこともわかったからね」
 だからだというのです。
「それでなの」
「魔法を使われることも止めて」
「そう、ありのままになったのよ」
「イクシー女王も変わられたんですね」
「そうなの、ありのままにね」
 オズの国の住人としてです。
「そうなったのよ」
「凄く変わられましたね」
「その変わるきっかけがね」
「バド王、フラフ王女との出会いですね」
「だからイクシー女王はお二人に感謝もしてるの」
「それで今もお友達なんですね」
「そうなの」
 まさにというのです。
「今もね」
「本当に変わられたんですね、イクシー女王も」
「そうよ、それじゃあね」
「これからですね」
「そのイクシー女王にお会いしましょう」
「わかりました」
 カルロスも他の子達も頷いてです、そしてでした。
 皆で街の中にも入りました、すると街の中も至るところに鏡があって皆の姿を映し出しています。街の人達はその鏡で自分の本当の姿を見ています。
 宮殿もです、外は全て鏡で壁もそうでした。窓のガラスと壁のとても奇麗な宮殿で皆の姿も映っています。
 その宮殿の廊下の中を進みつつです、教授は言いました。
「身だしなみも気をつけないとね」
「そうだね」
 モジャボロも教授に応えてです、歩きながらもそれぞれの服装の埃を取ったり乱れをなおしていたりしています。
「折角鏡があるんだし」
「女王にお会いする前に身だしなみを整えよう」
「整えられるなら整える」
「そうしないとね」
「紳士としてね」
「それを忘れたらいけないからね」
 二人はこうお話して鏡を使って身だしなみを整えます、それはトロットとキャプテンも同じで五人もでした。
 身だしなみを整えます、そのうえで女王の間に入りますとこのお部屋の中も壁は全て鏡の正真正銘の鏡の間で。
 その鏡の間の玉座にとても奇麗な十六歳位の紫のドレスを着た金色の冠を被った奇麗な人がいました、その奇麗な人を見つつトロットは五人に紹介しました。
「この人がこの国の主よ」
「イッソスの国のイクシー女王」
「まさにその人ですね」
「そうよ」
 その通りと答えたのは女王ご本人でした。
「私がイクシー女王よ、はじめまして」
「はじめまして」
 皆で女王に挨拶をしました。
「宜しくお願いします」
「こちらこそね」
「お待たせしたわね」
 今度はトロットが笑顔で言ってきました。
「色々なお国を回っていたから」
「いえ、楽しみにしてたから」
「私達が来るのを」
「待つのは苦しくなかったから」
 だからだというのです。
「気にしないで」
「そう言ってくれると嬉しいわ、じゃあね」
「プレゼントね」
「それを贈らせてもらうわ」
 こうしてイクシー女王にも贈りものが渡されました、それからでした。
 イクシー女王は皆に笑顔でこうも言いました。
「それじゃあ今からパーティーよ」
「私達を歓迎してくれてよね」
「ええ、そうよ」
 その通りとトロットに答えます。
「そうさせてもらうわ」
「有り難う、今回は皆にこうして歓迎してもらえて」
「嬉しいのね」
「とてもね」
 女王に笑顔で答えます。
「嬉しいわ」
「そう思ってくれるなら何よりよ。じゃあね」
「今からね」
「パーティーを開くわ。この宮殿の大広間で」
「あのお部屋ね」
「そう、あそこで開くから」 
 こうトロットに言うのでした。
「楽しみにしていてね」
「それじゃあね」
「皆来てね」
 トロット以外の旅人達にも言うのでした。
「そうして楽しんでね」
「はい、そうさせてもらいます」
 カルロスが笑顔で答えました。
「これから」
「そうよ。けれど皆ね」
 女王は五人を見てにこにことして言いました、もう玉座から立って皆のところに来てにこにことしてお話をしています。
「とても元気で何よりよ」
「元気がですね」
「最大の宝でしょ」
 だからだというのです。
「何よりも」
「人は元気ならですね」
「それだけで幸せなのよ、私もね」
 ここでご自身の鏡に映るお姿を見た女王でした、そのお姿は皆が見ているお姿と何も変わりはありません。
「昔は違ったから」
「鏡に映るお姿をですね」
「嫌だったの」
 そう思っていたというのです。
「お婆さんのそのお姿をね」104
「そう聞いてます」
「けれどそれはね」
「女王のお心だったんですね」
「年老いていたその心だったのよ」
 鏡に映し出されていたのはです。
「そのことがわかってね」
「お心をですね」
「正しく持つ様にしたら」
 そうしたらといいますと。
「皆が見ている姿と鏡で私が見る姿が同じになったのよ」
「そうなったんですね」
「私は心が老いていたの」
 それがかつてのイクシー女王だというのです。
「身体ではなくてね」
「それでそのお心が正しくなられて」
「若くなったらね」
 その時にというのです。
「今みたいになれたの、よかったわ」
「ご自身の問題だったんですね」
「そうなるわね、そのことがわかったのも」
 カルロスににこりと笑って言いました。
「バド王とフラフ王女のお陰よ」
「お二人にお会いしてですね」
「今みたいになったわ」
「そうですか」
「ええ、あとね」
「あと?」
「折角来てくれたから」
 ここお話を変えたイクシー女王でした。
「おもてなしさせてもらっていいかしら」
「それじゃあ」
「今からパーティーよ」
 おもてなしのそれだというのです。
「是非来てくれてね」
「今からですね」
「そうさせてもらうわね」
「ではね」
 トロットが女王に応えました。
「宜しくお願いするわ」
「それではね」
 女王はトロットにも応えてでした、そのうえで皆を王宮の食堂に案内しました。そこも壁が鏡になっていてです。
 テーブルも鏡です、その鏡のテーブルの席に座ってです。そのうえでおもてなしの美味しいものを頂くのですが。
 テーブルの上のお料理を見てです、五人は少し驚いて言いました。
「フォンデュですか」
「チーズフォンデュですね」
「これを出してくれたんですね」
「これは想像していませんでした」
「何かと思っていましたけれど」
「そうなのね、実は私チーズが大好きで」
 笑顔で応えた女王でした。
「フォンデュもよく食べるの」
「そうなんですね、ただ」
 ジョージは自分達の前にあるお鍋を見ました、そこに白ワインと一緒に煮られて溶けているチーズがあります。
「意外でした、フォンデュとは」
「そういえばオズの国ではフォンデュを食べたことは殆どなかったですね」
 神宝もこう言います。
「チーズはよくあっても」
「ですから驚いていますが」
 ナターシャはフォンデュに入れる串に刺したお肉やソーセージ、ベーコンにハム、茸やパンを見ています。
「期待しています」
「凄く美味しそうです」
 恵梨香はにこりとしています、見れば他の皆も同じです。
「チーズも入れるものも」
「では今からですね」
 カルロスも言います。
「フォンデュを皆で」
「召し上がってね」
 これが女王の五人への返事でした。
「好きなだけね」
「はい、それじゃあ」
「今からですね」
「皆でフォンデュを食べるんですね」
「そうして皆で楽しんで」
「素敵な思いをするんですね」
「そうなってね」
 にこりと笑って言う女王でした、そしてです。
 皆でフォンデュを楽しんで食べはじめました、パンやソーセージ等を溶けた熱いチーズの中に入れてです。
 そのうえで食べます、すると最初にカルロスが言いました。
「これは」
「うん、美味しいね」
「串に刺しているものだけじゃなくてチーズもね」
「とても素敵な味だわ」
「これは幾らでも食べられそうよ」
「この国にはとてもいい牧場が沢山あるのよ」
 トロットも食べながら五人にお話します。
「それでなの」
「こうしてですね」
「こんな美味しいフォンデュが食べられるんですね」
「チーズもお肉も他のものも美味しい」
「そうした素敵なフォンデュが食べられるんですね」
「素晴らしい牧場が一杯あるから」
「そうなの、だから食べてね」
 女王もまた言います。
「我が国の自慢のお料理の一つだから」
「乳製品とお肉がいいんだよね」
 モジャボロも食べながらにこにことしています。
「この国は」
「だからよね」
「僕もこの国のチーズが大好きだよ」
「そう言ってくれて嬉しいわ」
 モジャボロにもにこにこと返す女王でした。
「じゃあどんどんね」
「頂くね」
「そうしてね」
「いや、ワインもいいよ」
 教授はワインも飲んでいます、そのワインは赤ワインです。
「フォンデュの中にも入っているしね」
「ワインを飲むとね」
 女王がワインについてお話することはといいますと。
「これもまた幸せな気分になるのよね」
「そうだよね」
「チーズと最高に合うし」
 女王はグラスの中にある赤ワインを優雅な仕草で飲んでいます、その上品さはまさに女王のものでした。
「素敵なお酒よね」
「それで女王もだね」
「大好きよ」
 チーズと同じだけというのです。
「本当にね」
「フォンデュもワインも楽しんで」 
 キャプテンが言うことはといいますと。
「ここでも最高の気分だよ」
「それは何よりも」
「いつも素敵なおもてなしをしてくれるね」
「それが私の趣味になったから」
 だからとです、女王はキャプテンににこりと笑って答えました。
「それでよ」
「そうだね」
「けれどどの国もよね」
 ここでこうも言った女王でした。
「皆をおもてなししてくれたわね」
「それぞれの国のおもてなしだったわよ」
 トロットが女王に答えました。
「素敵だったわよ」
「そうよね、だからね」
「イッソスの国でもっていうのね」
「負けていられないから」
「こうしてなのね」
「フォンデュを楽しんでもらってね」
 大人にはワイン、子供には葡萄ジュースが出されています、どちらもとても甘くて素敵な味で幾らでも飲めます。
「牧場にも案内させてもらうわね」
「牧場でもよね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「おもてなしさせてもらうわ」
「そちらも楽しみよ」
「牛に豚に羊に山羊がいて」
 にこにことしてお話する女王でした。
「賑やかでのどかで素敵よ」
「それがオズの国の牧場でね」
「この国の牧場よ」
 イッソスの国のというのです。
「我が国自慢のね」
「とても素敵な牧場ばかりだからね」
「それを見ているだけで幸せになれるの」
「そうよね」
「それでだけれど」
 トロットにさらにお話した女王でした。
「貴方達はもう帰るのよね」
「ええ、この国を出たらね」
「エメラルドの都に帰ってそして」
「あちらでも楽しく過ごすわ」
「そうね、そういえば私もずっと都にお邪魔していないわね」
「イッソスの国から出たこともないわね」
「そうなのよね」
 このことは少し寂しそうに言う女王でした。
「それにバド王、フラフ王女とも会っていないし」
「ドウ一世やメリーランドの女王ともよね」
「会ってないわ」
「皆お友達なのにね」
「携帯でやり取りはしていても」
 それでもというのです。
「それでもね」
「そうよね、じゃあ機会があったら」
「その時はね」
「一緒にね」
「楽しくね」
「同じ時間を過ごしたいわ」
 こうトロットにお話しました。
「皆とね」
「そうなれたらいいわね」
「本当にね」
「大阪でとか」
 ここで冗談でこの街の名前を出したカルロスでした。
「どうでしょうか」
「大阪?」
「日本にそうした街があるらしいの」
 トロットが大阪と聞いて怪訝なお顔になった女王にお話しました。
「何でも凄く賑やかで楽しい街らしいわ」
「そうした街があるのね」
「ええ、外の世界の日本にはね」
「日本は私も知ってるけれど」
 それでもとです、女王は整ったお顔を傾げさせながら言いました。
「大阪って街ははじめて聞いたわ」
「面白い街らしいのよ」
「そうなの」
「どういった街か私も興味があるわ」
「日本なら」
 このお国ならとも言う女王でした。
「瓦の屋根のお家と木の建物で食べものもね」
「生ものっていうのね」
「お寿司とかお刺身とか」
 そうしたものを思いついた女王でした。
「そうしたものかしら」
「そうよね」
「そんな風かしら」
「私もそう思うけれど」
「それでもなのね」
「具体的にどんな街かはね」
 それはというのです。
「私も知らないから」
「面白い街なら言ってみたいわね」
「何でも物凄く人が多い街らしいからそこからアメリカに移民に来てる人もいるかしら」
 こう考えたトロットでした。
「だとしたらオズの国にも反映されているのかしら」
「大阪もオズの国にあるっていうのね」
「そうかも知れないわ」
 こういお話したのでした。
「そうも思ったわ」
「それじゃあ若しオズの国に大阪があったら」
 それならとです、女王は興味深そうなお顔で言いました。
「行ってみたいわね」
「そうよね、日本人街なのは間違いないわ」
「日本の街だから」
「それは間違いないと思うけれど」
「果たしてオズの国に反映されてるか」
「それが問題ね」
「そうよね」
 二人でこうしたことをお話してです、フォンデュを食べていきます。そしてそのフォンデュを食べてからでした。
 皆で牧場に行きました、ギリキンの紫の芝生の上に沢山の牛や羊達がのどかに過ごしています。そうしてです。
 その生きもの達を見てです、トロットはここでも笑顔で言いました。
「何時見てもいいわね」
「心が和むでしょ」
「ええ、こうして見て触ってね」
 牛を触りながら女王にお話するトロットでした。
「それだけで幸せな気分になれるわ」
「不思議よね、牧場にいたらね」
「それだけでね」
「幸せな気分になれるのよ」
 女王もトロットにお話します。
「私もそうよ」
「そうよね、こうした牧場が沢山あって」
「イッソスの国は乳製品も採れてね」 
 最高に美味しいそれがです。
「見ても楽しめるのよ」
「そうなのよね」
「どれも広い牧場だし」
 見れば皆が今いる牧場もかなりの広さです。
「沢山の生きものがいるのよ」
「豚や山羊もいますね」 
 カルロスはそうした生きものを見ています。
「それに鶏も」
「どの生きものも沢山いるでしょ」
「ここでは小屋の中で飼わないんですね」
「夜は皆そこで休むわよ」
 小屋の中でというのです。
「けれどお日様が出ている間はね」
「こうしてですね」
「そう、皆お外に出てね」
「お日様の光を浴びてるんですね」
「この国ではそうしてるのよ」
「そうなんですね、こうした牧場もいいですよね」 
 カルロスは鶏達を見ながら女王に応えました。
「鶏もお外にいるのも」
「外の世界ではずっと小屋の中にいる鶏もいるのよね」
「そうなんです、けれどこの国ではですね」
「見ての通りにね」
「お外に出てですね」
「楽しく過ごしているのよ」
「素敵ですね」
 こうも言ったカルロスでした。
「見ていて和みます」
「そんなにいいのね」
「はい、あと犬もいますね」
「牧場には欠かせないでしょ」
 牛や羊達の周りにはコリーやブリアードといった犬もいます、女王はその犬達についても答えました。
「牛や羊と一緒でね」
「牧羊犬で、ですね」
「オズの国では牧場に狼は来ないけれど」
「それでもですね」
「牛や羊達を小屋に案内してくれたり働いている人達の助けもしてくれるから」
 だからだというのです。
「欠かせないでしょ」
「だからですね」
「犬もいるのよ、そしてね」
 今度は馬に乗って牧場の中を巡っている働いる人も見てお話した女王でした。
「あの人達もね」
「カウボーイですね」
「働いている人達はあの人達よね」
 牧場ならというのです。
「そうでしょ」
「カウボーイですね」
「何といってもね」
 牧場ならというのです。
「そうでしょ」
「はい、確かに」
「だからね」
「あの人達もいてこそ」
「牧場なのよ」
「それはイッソスの国でも同じですね」
「そうよ、こうしたものを見ていると」
 本当にというのです。
「それだけで和むのよ、私も。それでね」
「それで?」
「何処かの牧場に毎日行ってるの」
「それは女王として国内を見て回る為でもあるしね」
 キャプテンが笑顔の女王に応えます。
「だからだからね」
「そうなの、そのこともあってね」
「女王は毎日牧場を巡ってるね」
「そうしてるの」
「女王の心は和むし国内の状況もわかるしね」
「牧場以外の場所も見て回ってるわ」 
 他の場所も忘れていない女王です。
「毎日ね」
「王宮から出てだね」
「今日は違うけれど御前はそうしてね」
「午後に政治を執ってるんだね」
「そうしてるの、今日は午前にしたわ」
 午後ではなくというのです。
「政治をしていたの」
「それでわし等に会ったんだね」
「そうしたのよ、どちらも忘れないわ」
 毎日そうしているというのです。
「この国を幸せな国のままにする為にも」
「オズマ姫みたいにですね」
「そうされてるんですね、女王様も」
「この国を幸せにする為に」
「毎日お国の隅から隅まで見て」
「政治もされてるんですね」
「そうよ、幸せな国のままにして」
 カルロス達にさらにお話しました。
「もっとよ」
「今以上にですか」
「この国を幸せな国にする」
「幸せに際限はないからですね」
「何処までも幸せにしていきますね」
「このイッソスの国を」
「そう考えてるわ」
 是非にというのです。
「私もね」
「そう、幸せに際限はないの」
 トロットもこう言います。
「何処までも幸せになれるの」
「上限はないものだから」
「オズの国も何処までも幸せになって」
「このイッソスの国もね」
「その幸せなオズの国の中にもあるし」
「何処までも幸せになるわ」
 こう言ってそしてでした。
「その為に私はいつも働いているのよ」
「牧場も見て」
「そうしてるの、ただ政治の合間でもいいから」
「バド王達にはっていうのね」
「ええ、会いたいわ」
 お友達にはというのです。
「その気持ちはやっぱりあるわ」
「携帯で連絡をするのと実際に会うのは違うからね」
 モジャボロもこのことはよくわかっています。
「本当にね」
「そう、だからね」
「会いたいんだね」
「そう思ってるわ、何処かでお会い出来たら」
 心からのお言葉でした。
「嬉しいわ」
「機会は作るものというけれど」
 教授は女王の立ち場に立って考えてみました。
「何処かに皆が一瞬に集まればね」
「それなら魔法で出来るわよ」
 トロットは教授のお話を聞いてすぐに言いました。
「オズの国の魔法の道具でね」
「そうだね、オズマやグリンダの魔法もあるし」
「それを使えばね」
「皆が一瞬で一つの場所に集まれるね」
「そうよね、オズマにお話してみようかしら」
「それがいいね」
「そうね、それじゃあお願い出来るかしら」
 それならとです、女王もトロットにお願いしました。
「そのことは、あと大阪は」
「その街ね」
「オズの国にあれば」
「それならよね」
「是非行ってみたいわね」
「本当にどんな街かしらね」
「それが気になって仕方なくなったわ」
 フォンデュを食べている時にお話をしてからというのです。
「本当にね」
「それ私もよ。本当にね」
「凄く面白そうな街よね」
「少し聞いただけでね」
 トロットはこうも言いました、その大阪について。
「何でも食べものも美味しくてね。串カツにたこ焼きもあって」
「たこ焼き?」
「そんな食べものもあるらしいの」
「じゃあそのたこ焼きも食べて」
「お笑いも凄いらしいから」
「じゃあそのお笑いも」
「皆で楽しみたいわね」
 心から思ったトロットでした。
「そうよね」
「そうね、美味しいものを食べてお笑いで笑って」
「最高の気持ちで過ごしたいわね」
「あと野球は阪神タイガースです」
「阪神タイガース?」
「縦縞のチームで」
 カルロスはそのチームのお話もしました。
「結構有り得ない負け方するんですが」
「それはあまりよくないことね」
「けれど何か妙に楽しいチームなんです」
「負けてもなの」
「不思議と勝っても負けても絵になるんですよ」
「それは本当に不思議ね」
 トロットが聞いてもでした。
「負けても絵になるなんて」
「そうしたチームなんです」
「信じられないわ」
「凄い負け方もしますけれどね」
 その信じられない負け方の中でもというのです。
「何か日本一を決める場面で四試合でこっちは四点しか取れないで敵に三十三点も取られて負けたとか」
「それは凄い負け方ね」
「有り得ないわね」
 トロットも女王も他のオズの国の人達もびっくりです、お話を聞いた牧場の人や生きもの達さえ驚いています。
「そうした場面でそこまで負けるなんて」
「信じられないわ」
「そんなチームですけれど凄く面白いチームなんです」
 それが阪神タイガースというチームだというのです。
「負けてもそうですから」
「そのチームもあればいいわね」
「オズの国にね」
 二人でカルロスに応えます。
「負けても絵になるチームなんて信じられないわ」
「どんなスポーツでも」
「そんなチームが本当にあるならね」
「見てみたいわ」
「僕はサッカーをしてますけれど」
 それでもと言うカルロスです。
「野球観ることもすることも好きでして」
「それでなのね」
「その阪神を観ても楽しいのね」
「そうなんです、こっちの世界にも阪神があれば」
 この野球チームがというのです。
「絶対に皆に愛されますよ」
「そんなチームは私もはじめて聞いたよ」
 教授もカルロスの今のお話に驚きを隠せませんでした。
「いや、普通スポーツはスポーツマンシップを守ってね」
「そうして勝ってですよね」
「それを観るのが楽しいものなんだ」
 それがスポーツのよさというものです。
「勿論負けた方もスポーツマンシップを守って全力を尽くした」
「それがいいことですね」
「だけれど敗北は敗北だからね」
「絵にはならないですね」
「うん、その敗北を次に活かすことが大事でね」
「そうですよね、けれど阪神は違うんです」
 教授にもお話するカルロスでした。
「本当に」
「負けるその姿までもが絵になるんだね」
「華があるとも言われています」
「信じられないチームだよ、大阪という街にはそんなチームがあるのだね」
「本拠地は大阪じゃなくて甲子園にありますけれど」
「それでも大阪と縁が深いんだね」
 このことは間違いないと確かめる教授でした。
「そうだね」
「そうなんです、大阪の殆どの人が応援しているチームです」
「じゃあ若しオズの国に大阪があれば」
「阪神もありますか」
「そうかも知れないですね」
 こう答えたカルロスでした。
「そして大阪も阪神もです」
「オズの国にあって欲しいですね」
「そう思っています」
 こうしたこともお話した一行でした、そしてイッソスの国でもおもてなしを受けてです。皆はいよいよエメラルドの都への帰路につきました。



イクシー女王にもプレゼントを渡し終えたな。
美姫 「ここでもおもてなしを受けて」
美味しい物を食べれて良いな。
美姫 「でも、今回の旅もいよいよ終わりに近づいてきたわね」
だな。後は都に戻るだけと。
美姫 「次回も待っていますね」
待っています。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る