『オズのガラスの猫』




               第六幕  二つの橋

 動物園に行ってからです、皆は動物園を出て暫く歩いてから晩御飯を食べました。そうしてまた近くの川で身体を洗ってテントの中で寝てです。
 翌朝は日の出と共に起きて朝御飯のパンとスクランブルエッグ、ソーセージにミルクを楽しんで出発しました。
 皆で十時まで歩いて十時は休憩も兼ねてティータイムとなりましたがオズマはこの時に皆にこんなことを言いました。
「もう少ししたら川があるの」
「川ですか」
「じゃあ橋があるんですね」
「そうなんですね」
「そうなの、ただその橋が面白いの」
 オズマはロシア風の紅茶を飲みながらジョージと神宝、カルロスに答えました。今回のティーセットはロシア風なのです。
「見たらオズの国らしいってわかるわ」
「その橋がですか」
「そうした風に思えるんですね」
「見れば」
「そうよ、成程って思えるから」
 そうした橋だというのです。
「本当にね」
「というと」
「どんな橋なのかしらね」
 ナターシャと恵梨香の女の子二人はオズマのお話を受けて二人でお話をしました。
「オズの国らしいっていうと」
「一体」
「よかったらお話するわよ」
 つぎはぎ娘は苺のジャムを舐めている二人に言ってきました、ロシアでは紅茶はジャムを舐めつつ飲むのです。
「そうするけれど」
「いえ、それはね」
「今回は見てのお楽しみにしておくわ」
「もうすぐその橋でしょうし」
「見てのね」
「そうなのね、じゃあ言わないわね」
 つぎはぎ娘も二人の言葉を受けて言わないことにしました。
「そうするわね」
「じゃあね」
「その時のお楽しみということでね」
「そうさせてもらうわ、しかしね」
 こうも言ったつぎはぎ娘でした。
「オズの国って確かに面白い国よね」
「ええ、何かとね」
 オズマはロシアのお菓子を食べつつつぎはぎ娘に応えました。
「色々なものがあってね」
「色々な人がいてね」
「本当に面白い国よ」
「そうよね」
「奇麗な猫もいるしね」
 ガラスの猫はこう言うのでした。
「あたしがね」
「そこでそう言うのね」
 ナターシャはそのガラスの猫に横からクールな表情で突っ込みを入れました。
「貴女らしいわね」
「そうでしょ、ここでこう言うのがね」
「貴女よね」
「だって事実だし」
 それでというのです。
「言うのよ」
「奇麗な猫なのは」
「言うのよ、ただね」
「ただ?」
「あたしは面白い猫でもあるでしょ」
「ええ、奇麗でしかもね」
 ナターシャは今度は微笑んで言いました。
「面白い猫よ」
「ガラスの身体に宝石の脳味噌とハートを持っていてね」
「面白いわ」
「しかも食べることも寝ることもしない」
「そんな猫は他にいないわ」
「オズの国でもあたしだけよ」
 そうした猫はというのです。
「そう思うと面白い猫ね」
「確かにね」
「だから言うのよ、あと本当にね」
「本当に?」
「あたしも思うけれどこれから行く橋はね」
「オズの国ならではの」
「面白い橋よ」
 そうだというのです。
「だから是非行って見てそうしてね」
「渡るのね」
「そうすればいいわ」
 こう言うのでした、ガラスの猫も。
「オズの国ならではの経験が出来るわよ」
「オズの国はーーお伽のーー国ですから」
 チクタクもナターシャ達にお話します。
「こうしたーーこともーーあるーーとーーです」
「思う様な橋なのね」
「そうーーです」
 まさにというのです。
「とてもーー素敵なーー橋ーーです」
「成程ね、じゃあ楽しみにしておくわ」
「その橋を渡った時には」
 その時にと言うオズマでした。
「もうお昼よ」
「いい時間になっているんですね」
「大体ね」
「そうなんですね」
「そうした今日のお昼もね」
「魚介類のご馳走をですね」
「楽しみましょう」
 笑顔で言うのでした。
「そうしましょう」
「それじゃあ」
「そう、そしてね」
 さらにお話したオズマでした。
「面白いものがさらにあるから」
「橋を渡った先にもですね」
「面白い国もあるし」
「そうなんですね」
「本当に色々な場所や人があるから」
 だからだというのです。
「オズの国は最高に面白いの」
「そしてそのオズの国にいたら」
「楽しんでね」
「わかりました」
 ナターシャはオズマに笑顔で応えました、そうしてまた紅茶を飲みました。その紅茶を飲み終えてからでした。
 一行は歩くのを再開しました、そうしてお昼前にでした。
 川があったのですが何とです、そこに架けてある橋は。
 トランプの橋でした、橋の全てがトランプのカードで造られています、五人はその橋を見てびっくりしました。
「これは」
「トランプの橋!?」
「マジックみたいに建てられてて」
「そんな橋なんだ」
「この橋は」
「そうよ、それがね」
 まさにというのです。
「この川の橋なの」
「そうですか、こうした橋ですか」
 ナターシャはオズマにしみじみとした口調で応えて言いました。
「ちょっと予想していませんでした」
「こうした橋もあるの」
「オズの国にはですね」
「そうなの、それでこの橋を建てた人がすぐ傍に住んでいるわ」
「あっ、あそこに」
 ナターシャも他の子達も気付きました、丁度橋のすぐ近くにです。
 橋と同じ様にトランプのカードで建てられた家があります、そしてその家から黒いタキシードとズボンにシルクハットのリザードマンの人が出てきました。
 その人にです、オズマが挨拶をしました。
「こんにちは、ミスター」
「こんにちは、オズマ姫」
 リザードマンはシルクハットを取ってオズマに丁寧にお辞儀をしました。
「お久しぶりです」
「そうね、お元気そうね」
「はい、今日も楽しく元気に過ごしています」
「そうなのね」
「それで今は」
「実はね」
 オズマはリザードマンに自分の今回の旅の目的をお話しました。
「それでなのよ」
「今こちらの来られたのですな」
「そうなの」
「わかりました、楽しい旅になることを祈らせて頂きます」
「有り難う、それでね」
「今からですな」
「橋を渡らせてもらうわね」
 そのトランプの橋をというのです。
「そうしていいかしら」
「どうぞ」
 リザードマンはオズマに笑顔で答えました。
「お渡り下さい」
「それじゃあね」
「それでなのですが」
 リザードマンはオズマとのやり取りの後でナターシャ達五人を見て言いました。
「こちらの子達は噂の」
「ええ、オズの国の名誉市民のね」
「外の世界から来ている子達ですな」
「そうなの」
 こうリザードマンに答えるのでした。
「今回の旅はこの子達と一緒なの」
「そうですか、では今から」
「この子達にね」
「挨拶をさせて頂きます」
 こう言ってです、リザードマンは。
 五人の前に来てです、オズマに対してした様に礼儀正しくお辞儀をしてからナターシャ達に言いました。
「はじめまして、この橋の番をしているミスター=ドラコといいます」
「はじめまして」
 五人もお辞儀をしてそれぞれ名乗ってです。
 そのうえで、です。リザードマンはガラスの猫達にも挨拶をしましたがナターシャがその挨拶も終えたミスター=ドラコに尋ねました。
「貴方がトランプの橋を建てられたのですね」
「左様、トランプの家もですぞ」
「そうなんですね」
「中の家具もトランプや他のマジックの品から造っていますぞ」
「というと貴女は」
「はい、マジシャンです」
 その職業の人だというのです。
「手品師なのです」
「そうなんですね」
「ですから手品で」
 こちらでというのです。
「何でも造れるのです」
「凄いですね」
「いえいえ、オズの国ではです」
「そうしたこともですか」
「普通のことではないですか」
 こうナターシャに言うのでした。
「むしろ私の手品は手品だけですが」
「あっ、魔法使いさんは」
「あの方は手品だけでなく魔法も使えますので」
 文字通りの魔法使いになったのです、この人は。
「あの方には及びません」
「そうなんですね」
「それにわたくしの手品も」
 それもというのです。
「魔法使いさんに教えて頂いたものが多いのです」
「そうなんですか」
「わたくしは確かに手品師でして」
 それでとです、ミスター=ドラコはナターシャに礼儀正しくお話します。
「手品は使えます、ですがトランプで橋を造る様なことは」
「出来なかったんですね」
「トランプやマントで隠れたり姿を消すことも」
 そうしたこともというのです。
「出来なかったのです」
「手品で、ですか」
「そうした手品は」
「はい、魔法使いさんに教えて頂きました」
「それでなんですか」
「橋も造ることが出来る様になり」
 ミスター=ドラコはトランプのお家を見ました、壁も屋根も煙突も全てトランプのカードで出来ていてとても面白いです。
「家も建てられる様になりました」
「手品で」
「そうなのです」
「オズの国はそうしたことも出来るんですね」
「魔法の様ですな」
「そう思いました」 
 実際にと答えたナターシャでした。
「何か」
「それが手品なのです」
「オズの国の手品ですか」
「そうなのです」
「そうですか」
「はい、そしてですね」
「今からトランプの橋を渡っていいですか?」
「どうぞ」
 ミスター=ドラコはナターシャにも笑顔でこう答えました。
「お渡り下さい」
「それじゃあ」
「いや、はじめて渡った時を思い出すわ」
 ガラスの猫は橋に向かいながらこんなことを言いました。
「あの時をね」
「どんな風だったの?その時は」
「この橋を渡ったらどんな感じかいらねってね」
「思ったのね」
「そうなの、期待していたわ」
 渡るそのことをというのです。
「そうだったわ」
「そうだったのね」
「そう、そしてね」
「今からよね」
「あんた達も渡るのよ」
 その時のガラスの猫の様にというのです。
「じゃあいいわね」
「ええ、今から渡るわ」
「そうしてね」
 ガラスの猫は自分からです、足を踏み出して。そしてナターシャ達五人と一緒に橋を渡ったのでした。
 橋を渡り終えてです、五人は言いました。
「確かな橋だったわね」
「うん、トランプで薄い筈なのに」
「コンクリートの橋みたいだったね」
「しっかりした感じで」
「渡って何の心配もなかったわ」
「これがこの橋なのよ」 
 まさにとです、ガラスの猫は自分と一緒に渡った五人に答えました。
「トランプだけれどね」
「コンクリートの橋みたいに丈夫で」
「普通に渡れるんだね」
「安心して」
「崩れたりしないで」
「安全なのね」
「そうよ、それがあの人の造った橋なのよ」 
 トランプの橋だというのです。
「面白いでしょ」
「確かにね」
 ナターシャがガラスの猫に答えました。
「渡って本当に思ったわ」
「そうでしょ、いい橋でよ」
「まさにオズの国の橋ね」
「そうでしょ、じゃあね」
「ええ、私達も渡ったし」
「オズマ達も渡るから」
 見ればオズマとつぎはぎ娘、チクタクはまだ橋の向こう側にいます、ミスター=ドラコもそちらにいます。
「渡り終えてからね」
「また歩いて」
「お昼御飯になるわ」
 ガラスの猫は食べないですがこのこともお話に出しました。
「そうなるわ」
「そうなのね」
「それじゃあね」
「ええ、オズマ姫とつぎはぎ娘とチクタクは渡ったら」
「それからね」
「道を歩いていきましょう」
 今度はそちらをというのです。
 そうお話してでした、ナターシャ達はオズマを待ちました。オズマ達も程なく橋を渡りました。
 そして皆が橋を渡り終えるとミスター=ドラコは彼等のところに来て笑顔で言いました。
「では皆さんいい旅を」
「はい、それじゃあまた」
「こちらに来られた時は宜しくです」
 ナターシャに笑顔で応えました。
「また橋を渡って下さい」
「それでは」
「あと気になったことだけれど」
 ガラスの猫がミスター=ドラコに尋ねました。
「手品で造った橋なのよね」
「はい、そうです」
「それじゃあ一瞬でなくしたり」
「また建てたりですな」
「そうしたことも出来るの?」
「はい」
 ミスター=ドラコはガラスの猫に笑顔で答えました。
「勿論です」
「そうなのね」
「こうして」 
 ミスター=ドラコが橋に手を触れるとです、一瞬で。
 橋が消えてです、ミスター=ドラコの手にトランプのカードがありました。そして今度はです。
 ミスター=ドラコはカードを投げるとです、あっという間にです。
 橋になりました、ここでこう言ったのでした。
「種も仕掛けもありません」
「まさに一瞬だったわね」
「手品なので」
 それでというのです。
「こうしてです」
「崩して建てて」
「出来るのです」
「お見事ね」
「これが手品というものです」
 ガラスの猫に恭しく言うのです。
「面白いですね」
「最高にね、やっぱり手品は何度見てもね」
「面白いわ」
 つぎはぎ娘も言ってきました。
「最高にね」
「そう言って頂けると何よりです」
「ミスターにとってもなのね」
「手品師の最高の喜びです」
 そうだというのです。
「まさに」
「そうですか」
 ナターシャが応えました。
「手品師の人達はですね」
「手品に喜んで頂くことがです」
「最高の喜びなので」
「はい、では」
「これからですね」
「わたくしの手品が気に入って頂ければ」 
 その時はというのです。
「面白いと思って下さい」
「そうさせてもらいます」
 ナターシャはミスター=ドラコに笑顔で応えました、そうしてお互いに笑顔で再会を約束してでした。 
 そのうえで今度は黄色い煉瓦の道を進みます、そのうえでお昼になりましたが。
 お昼はこの日は中華料理でした、白魚を蒸したものに中国風のお刺身に海老やフカヒレの蒸し餃子に焼売に海鮮麺です。
 そうしたものを食べつつです、オズマは言いました。
「中華の魚介類のお料理もいいわね」
「はい、本当に」
 ナターシャは海鮮麺を食べつつ応えました。
「美味しいです」
「そうよね」
「何ていいますか」
「っていうと?」
「いえ、ロシアにいますと」
 ナターシャの祖国ではというのです。
「あまりなんです」
「魚介類はなのね」
「あまり食べないです」
「ああ、ロシアではなのね」
「お魚よりもお肉です」
「魚介類よりも」
「そうですから」
 それでというのです。
「こうしたお料理も」
「食べないのね」
「殆ど」
 そうだというのです。
「最近までそうだったとか」
「お刺身とかもなの、いえ」
 オズマは自分で言って気付きました。
「オズの国でもね」
「お刺身はですね」
「最近になるまでね」
 それこそというのです。
「食べていなかったわ」
「そうなんですね」
「ええ、それにね」
 オズマはさらに言いました。
「お寿司だってね」
「そちらもですよね」
「あれもネタは生だし」
 握り寿司や巻き寿司はそうです。
「お魚をこんなに、しかも生で食べるのは」
「オズの国でも最近になってからですね」
「アメリカで和食がよく食べられる様になってからね」
 オズの国が反映されるこの国で、です。
「そうなってからね」
「まさにですね」
「ええ、本当にね」
「オズの国でもお肉が主体だったんですね」
「そうよ、お魚は食べない訳じゃなかったけれど」
 それでもというのです。
「ここまでよく食べなかったわ」
「そういうことですね」
「ええ、中華料理でもね」
「ただ、中華料理でもです」
 中国人の神宝が言ってきました。
「広東料理や上海料理では食べますけれど」
「あっ、北京料理とかだとね」
 ジョージは自分の生まれ故郷シカゴのチャイナタウンのことから言います。
「お魚はあまり食べないね」
「中国は広くてそれぞれの地域の料理の特質があるからね」
 カルロスもこのことは知っています。
「だからね」
「何処も魚介類をふんだんには食べないわね」
 恵梨香もこのことは知っています。
「日本と違って、もっとも日本も」
「冷凍技術が発達してからよね」
「ええ、お寿司やお刺身が何処でも食べられる様になったの」
 恵梨香ハナターシャに答えました。
「そうなったの」
「そうよね」
「技術は必要ね、科学でも魔法でも」
 まさにとです、オズマも言います。
「進歩するとね」
「その分ですね」
「お料理も進歩するわね」
 ナターシャにこう言うのでした。
「そうなるわね」
「そうですね、確かに」
「だからロシアでもね」
「お魚が依然より食べられる様になったと思います」
「そうよね」
「はい、確かに。ただロシアは」
 ここで笑ってこうも言ったナターシャでした。
「冷凍技術はあまり必要ないという考えも出来ます」
「寒いからだね」
「だからだよね」
「ロシアはね」
「それでよね」
 四人の子供達がそのナターシャに言ってきました。
「何かとね」
「冬は長くて」
「しかも寒くて」
「もう凄いからね」
「そうなの、だからね」
 それでというのです。
「それはあまり必要ないかもね」
「ロシアってそんなに寒いのね」 
 ガラスの猫はオズの国の住人として述べました。
「冷凍技術が必要ない位って」
「そうなの、お肉も外に置いたらね」
「凍るの」
「あっという間に氷漬けよ」
 そうなってしまうというのです。
「お水をかけたらね」
「そうなるの」
「そうなの、ロシアだと特に冬はね」
「それは凄いわね」
「ロシアの寒さは別格なの」
「オズの国じゃない位に」
「そうよ、もう全くよ」
 それこそというのです。
「そうはない寒さよ」
「成程ね」
「オズの国にはない寒さね」
「オズの国は常春だからね」
 そうした国です、ただし雪が積もるところは積もっています。そこは寒くはないですがスキーも楽しめるのです。
「ロシアの寒さはないわね」
「そうよね」
「日本でもないけれど」
 ナターシャだけでなく他の子達も今いるこの国でもというのです。
「ロシアの寒さは」
「つまりロシアだけの寒さなの」
「北欧も寒いけれど」
 この国々もというのです。
「ロシアはまた別格でしょうね」
「ううん、あたしには想像出来ないわ」
「そうした寒さもあるの」
「そうなのね、とはいってもね」
「あっ、貴女はね」
 ナターシャは焼売を食べつつガラスの猫に応えました。
「ガラスの身体だから」
「暑いのも寒いのもね」
「関係ないの」
 ガラスの身体にはというのです。
「全くね」
「そうよね」
「暑さ寒さは感じても」
 それでもというのです。
「それで辛いと思ったりね」
「動きに影響することもよね」
「ないの」
「そうよね」
「だからいいのよ」
「そんなの全然辛くないわよ」
 つぎはぎ娘も言ってきます。
「オズの国じゃ確かにそう感じることは稀だけれどね」
「暑さ寒さは」
「それでも」
「そうよ、ガラスの猫もあたしもね」
「温度に関係なく動けるわね」
「ただあたしは湿気で身体が鈍くなることもね」
 それもというのです。
「あるわよ」
「あっ、貴女は濡れるとね」
「それで身体が鈍くなるわ」
「お水を吸うからね」
 ぬいぐるみのその身体はです。
「それはあるわ」
「そうよね」
「あたしはお水も平気よ」
 ガラスの猫はここでも言います、オズマの横にちょこんと座ったうえで。
「全くね」
「お水にも濡れないからね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「お水の中も底もね」
「普通に進めて」
「泳ぐことも出来るけれど」
「底を進むことも」
「出来るの、あたしはね」
「しかも息もよね」
「それをする必要もないから」 
 このことについてもお話するガラスの猫でした。
「全く平気よ」
「そうなのね」
「そう、こうしたことでも最高の身体なのよ」
「そこで自慢するよね」
「だって本当のことだから」
 悪びれずに返すガラスの猫でした。
「嘘は言わないわ」
「そうなのね」
「そう、自慢と言われてもね」
「そう言うのね」
「そういうことよ、まああたしにとっては寒さも暑さもお水もよ」
「意味がないのね」
「砂もよ」
 こちらもというのです。
「何ともないわ」
「私はーー駄目ーーですーーね」
 チクタクはこう言ってきました。
「砂はーー身体のーー中にーー入るーーので」
「苦手なの」
「好きにーーなれーーません」
 そうだというのです。
「どうーーにも」
「そうなのね」
「はいーーそうーーです」
 まさにというのです。
「お水もーー錆びるーーので」
「中に入った後のお手入れが大変ね」
「全くーー以て」
「あたしは砂も平気だけれどね」
 つぎはぎ娘はそうだというのです。
「お水は動きが鈍くなるの」
「綿の身体だから」
「どうしてもね、絞って干せばいいけれど」
「あっ、そうすればね」
「そうよ、もう何ともなくなるわ」
「それじゃあ洗濯みたいね」
「あたしは洗濯で奇麗になるしね」
 自分からも言うつぎはぎ娘でした。
「洗濯にもなるわね」
「お水に入れば」
「ええ、その分ね」
「何か凄いお話ね」
「凄くないわよ、オズの国だから」
 こうしたこともというのだ。
「だって何でもある国でしょ」
「まあそれはね」
「お伽の国だから」
 まさにこのことに尽きます。
「何があっても起こってもね」
「不思議じゃないわね」
「そうよ、それとね」
「それと?」
「また橋があるから。この先にね」
 つぎはぎ娘はナターシャ達にこのお話もするのでした。
「さっきの川の支流があってね」
「そうなの」
「そうよ、川があってね」
「そこにも橋が架けられているのね」
「そうよ、ただ今度の橋はね」
「トランプの橋じゃないのね」
「あの橋はミスター=ドラコの橋だから」
 それでというのです。
「あそこだけの橋なの」
「そうなのね」
「ミスターはあそこの橋守りでしょ」
 ガラスの猫も言ってきます。
「だから基本あそこから離れなくて」
「次の橋ではなのね」
「また別のね」
「橋を見られるのね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「だからどういった橋かはね」
「楽しみにして」
「そうして行きましょう」
「わかったわ、じゃあ御飯を食べて」
 今度は蒸し餃子を食べつつ応えるナターシャでした。
「それから皆でね」
「その橋にも行くわよ」
「わかったわ、今度はどんな橋かね」
「楽しみにしてよね」
「行かせてもらうわ」
 是非にというのでした、そしてです。
 一行は中華料理で魚介類を使ったものを楽しんででした、そうしてからまた出発してそうしてです。
 その橋に向かいました、今度の橋はといいますと。
「あれっ、この橋は」
「どうかしら」
「これまた面白い橋ね」 
 ナターシャはその橋を見つつガラスの猫に応えました、見ればです。
 その橋は水です、氷ではなく水を固めてそうして出来ています。透明な感じでガラスとはまた違った感じです。
「お水で出来た橋なんて」
「魔法で造った橋なの」
 オズマがナターシャ達に笑顔でお話します。
「魔法使いさんがね」
「あの人が造られたんですか」
「そうなの、何を素材にして橋を造ろうかって考えて」
「そうしてですか」
「下にお水が流れてるでしょ」
「はい」
 見ればかなりの量のお水が流れています、その中には沢山のお魚も泳いでいます。
「それならお水を使ってね」
「橋を造ろうってなってですか」
「そうしてなの」
「お水を固めてですか」
「橋にしたのよ」
「そうなんですね」
「面白いでしょ」
 オズマはナターシャににこりと笑って言いました。
「こうした橋も」
「面白いっていいますか」
「奇想天外ですね」
「まさかお水の橋なんて」
「お水を渡るのに」
「物凄いことですね」
 ナターシャだけでなく他の子達も言います。
「お水の橋とは」
「お水があるならお水を使う」
「そうした発想で橋を造るなんて」
「ちょっとないです」
「オズの国ならではですね」
「そうでしょ、オズの国ならではよ」
 まさにと言うオズマでした。
「お水の橋はね」
「ちゃんと渡れるわよ」
 ガラスの猫が言ってきました。そのお水の橋を見つつ。
「この橋もね」
「さっきのトランプの橋と同じで」
「そうよ、固い橋よ」
「コンクリートの橋よりもなのね」
「同じ位固いわよ」
 コンクリートの橋と、というのです。
「そうなのね」
「そう、だからね」
「安心して渡ればいいのね」
「石橋をたたいて渡るって言葉があるわね」
 ここでこの言葉も出したガラスの猫でした。
「けれどね」
「この橋はなのね」
「そうして渡る必要もない」
「そうなの」
「そこまで固いから」
「それでなの」
「そう、安心して渡るのよ」
 まさにというのです。
「いいわね」
「じゃああたしが最初に渡るわね」
 つぎはぎ娘がくるくると回転しつつ言ってきました。
「そうするわ」
「ええ、それじゃあ」
「私達もね」
「つぎはぎ娘さんと一緒にね」
「そうさせてもらうわ」
「面白い橋だし」
「こんな橋オズの国にしかないわよ」
 それこそと言うつぎはぎ娘でした。
「そうでしょ」
「ええ、こんな橋ないわ」
「外の世界には」
「魔法で造った橋だから」
「科学で造った橋しかないから、外の世界には」
「だからね」
「そうよね、けれどそれがオズの国だから」
 魔法で造った橋もあるというのです。
「こうしてね」
「それじゃあね」
「今から渡ろう」
「あの水の橋を」
「そして渡ってどんな橋か確かめよう」
「是非そうしましょう」
「その好奇心いいわね、じゃあ一緒に渡りましょう」
 つぎはぎ娘は五人の周りをくるくると回って言いました、そして五人はそのつぎはぎ娘と一緒にでした。
 橋を渡りました、橋はとても固くてまさにコンクリートみたいでした。
 それで渡り終えてです、五人は嘘みたいだという顔で言いました。
「丈夫な橋だったわね」
「何人渡っても大丈夫」
「そんな橋だったね」
「いい橋だよ」
「コンクリートの橋と同じだけ」
「そうでしょ、それが水の橋なのよ」
 つぎはぎ娘は自分と同じく渡り終えた五人に言うのでした。
「確かに水だけれどね」
「固めてそうして」
「あそこまで固いんだね」
「それこそコンクリートみたいに」
「通り抜けたりせずに」
「何も通さない感じで」
 五人は驚嘆さえしていました、そこにです。
 オズマ達も渡ってきました、そうしてオズマも五人に言うのでした。
「お水も十分に固めればああなるの」
「コンクリートみたいにですか」
「そうなるんですね」
「氷みたいっていうか」
「水晶みたいっていうか」
「そうなるんですね」
「そうよ、お水を凍らせたら氷になるけれど」
 それと同じくというのです。
「固めてもね」
「ああなるんですね」
「コンクリートみたいに固くなって」
「凄く丈夫になるんですね」
「何人渡っても平気な」
「あそこまで固くなるんですね」
「そうなのよ、氷は凍って固まるけれど」
 再び氷のお話をするオズマでした。
「あの橋は凍らせずに固めているの」
「また違うんですね」
 ナターシャがオズマに応えました。
「また」
「そう、凍らせずに魔法で固めたの」
「そういうことですね」
「オズの国には氷のお城もあるわ」
 そうしたものもあるというのです。
「魔法使いさんもそこからヒントを得てなの」
「お水の橋を造られたんですね」
「そうなの、面白い発想でしょ」
「はい」
 ナターシャはオズマに答えました。
「本当に」
「あの人ならではのね」
「そうですよね」
「ああした発想が出来るのがね」
「あの人なんですね」
「そうなの、あの人はマジシャンだったでしょ」
 手品師です。
「ミスター=ドラコに教えられる位の」
「最高の手品師ですよね」
「だから色々と面白い発想が出来るから」
「あの橋もですね」
「造られたのよ」
 氷の城をヒントとしてです。
「それが出来たのよ」
「そうなんですね」
「そしてね」
 さらにお話をするオズマでした。
「造ろうと思えばお水の城だって」
「出来ますね」
「ええ、そうでしょ」
「はい、お水の橋を造られるなら」
「今度造ってみようってお話もしてるの」
「魔法使いさんとですね」
「そうなの」
 まさにというのです。
「面白いでしょ」
「はい、確かに」
「あとガラスのお城なんてどうかしら」
 ここで言ってきたのはガラスの猫でした。
「それもいいわよね」
「それは貴女がガラスだから言うのよね」
「ええ、そうよ」
 その通りだとです、ガラスの猫はオズマに答えました。
「だから言うけれど」
「そうよね」
「どうかしら」
「それもいいわね」
「じゃあそのガラスのお城にはぬいぐるみを沢山入れましょう」
 今度はつぎはぎ娘が言ってきました。
「それでお城の中を飾りましょう」
「あんたと同じぬいぐるみでなの」
「そうしましょう」
「それもいいわね」
 ガラスの猫はつぎはぎ娘の言葉に乗り気でした。
「ガラスのお城の中も」
「そうでしょ」
「そしてーーです」
 チクタクも言ってきました。
「ゼンマイのーーおもちゃーーも」
「いいわね、もう何でも入れて」
 そしてと言うガラスの猫でした。
「楽しいお城にしましょう」
「そういうことでね」
「ガラスってのは何でも映し出すから」
 それでというのです。
「ぬいぐるみもおもちゃも全部映えるわよ」
「そうなるわね」
「そうーーですーーね」
 二人もガラスの猫に応えます。
「それーーでは」
「ガラスのお城を建てた時はね」
「そうして飾りましょう」
「いいわね、それも」
 オズマもそのお話を聞いて言いました。
「ガラスのお城もね」
「オズマもそう思うわよね」
「ええ、じゃあまたね」
「時間があればね」
「そうしたものも建てましょう」
「そうしましょうね」
 ガラスの猫はオズマにも言いました。
「是非ね」
「そうしてそのお城の中は」
「ぬいぐるみやゼンマイのおもちゃでね」
「飾って」
「そのうえでね」
「楽しむのね」
「そうしましょうね」
「じゃあね、それじゃあね」
「ええ、旅を続けていくわよ」
 オズマは皆に言いました。
「香辛料を手に入れる為にね」
「わかりました、それにしても」
「どうしたの、ナターシャ」
「はい、私達がオズの国に入りますと」
 その時にはとです、ナターシャはオズマに言うのです。
「よく途中何かを手に入れますね」
「そういえばそうね」
 オズマも言われて気付きました。
「貴方達と一緒に冒険をするとね」
「よくそうなりますよね」
「そうした時ばかりじゃないけれど」
「今回はそうですから」
 それでというのです。
「あらためて思いました」
「そうなのね」
「けれどそうした冒険の旅も」
「面白いでしょ」
「何かと色々な場所を巡ることも出来ますし」
 ナターシャは笑顔でお話しました。
「ですから」
「そうよね、オズの国の中のね」
「やっぱり面白いです」
「じゃあね、楽しいままにね」
「そうしてですね」
「旅を続けていきましょう」
 ナターシャにも他の子達にも言いました。
「香辛料を手に入れて猫の国まで行きましょう」
「わかりました」
「旅は長いわ」
 今回の旅もというのです。
「だからね」
「どんどん歩いていくんですね」
「そうよ、どれだけ長い道も歩いていけば」
 そうしていけばというのです。
「必ずね」
「目的地まで着くことが出来ますね」
「だから歩いていきましょう、道はわかっているわ」
 目的地、まずは香辛料を栽培しているお百姓さんのお家にです。
「それじゃあね」
「その道をですね」
「進んでいくわよ」
 オズマは皆に笑顔で言うのでした、そしてです。
 皆は一緒にです、道を進んでいくのでした。長い道ですが一歩一歩確実に歩いて進んでいきます。








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