『オズのハンク』




             第一幕  驢馬と少女の語らい

 ベッツイ=ボビンはエメラルドの都の宮殿の中で驢馬ノハンクと一緒にいました、そこで彼女はハンクにふと言いました。
「今度ピラミッドに行かない?」
「都にあるあそこに?」
「そう、エメラルドの都にあるね」
 そこにというのです。
「行かない?」
「そういえばね」
 ハンクはベッツイの提案を聞いて言いました。
「僕達色々冒険に出てるけれど」
「オズの国のあちこちにね」
「けれどね」
 それでもというのです。
「エメラルドの都にはね」
「冒険に出ていないわよね」
「大抵周りの四つの国のね」
 マンチキン、ギリキン、ウィンキー、カドリングのです。
「何処かに行ってるね」
「周りの島々とか」
「そうだよね」
「そう考えたら」
 本当にとです、ベッツイも言いました。
「たまにはね」
「都の中で冒険をするのもいいかな」
「そう思ってよ」
 だからだというのです。
「私も今言ったのよ」
「そういうことだね」
「それでどうかしら」
 あらためてです、ベッツイはハンクに言いました。
「今度はピラミッドに行くってことで」
「そうだね、じゃあね」
「皆でだね」
「行きましょう」
「それじゃあ早速一緒に行く人を探すんだね」
「そうしましょう。ただね」
 ここでこうも言ったベッツイでした。
「一緒に来てくれる人を探しても」
「誰が一緒に来てくれるかはね」
「まだわからないわね」
「僕達二人だけだとね」
 ハンクはこうも言いました。
「やっぱり寂しいしね」
「どうしてもね」
「僕達二人は一緒にこの国に来たけれど」
 オズの国にです。
「それでもね」
「二人だけだとね」
「やっぱり寂しいね」
「楽しさも限られるわよね」
「大勢の方がいいからね」
「だからよ」
 それ故にというのです。
「私もね」
「誰かを誘おうっていうんだね」
「そうよ、誰と一緒がいいかしら」 
 こうしたお話をしているとでした、ふとです。
 二人が今いる王宮の中庭の隅で一人の水兵の服を着た男の子が寝ているのが見えました、その子はといいますと。
「ボタン=ブライトだね」
「いつも通り急に出て来たわね」
 ベッツイも彼の姿を見て言います。
「本当に」
「そうだね」
「気付いたら王宮の中庭で寝ているなんて」
「彼ならではだね」
「本当にね」
「そうだね、けれど」
 それでもと言うハンクでした。
「折角ボタン=ブライトと会ったし」
「それならよね」
「うん、彼を誘う?」
「いいわね」
 微笑んで、です。ベッツイはハンクに答えました。
「それじゃあね」
「最初の一人が決まったね」
「そうね、じゃあ他にも誰かをね」
「誘うんだね」
「そうしましょう」 
 二人でこうお話してでした、ハンクがボタンの傍に来て声をかけました。
「ちょっと起きてくれるかな」
「誰かな」
「ロバのハンクだよ」
 ハンクはボタンにすぐに答えました。
「久し振りだね」
「あっ、本当だ」
 ボタンは目を覚まして彼の姿を見て言いました。
「ハンクだね」
「うん、ここは王宮の中庭だよ」
「へえ、そうなんだ」
「どうしてここに寝ていたかわかるかな」
「わかんなーーーい」
 いつもの返事でした。
「さっきまで天空のお城にいたけれど」
「それで寝ているとだね」
「ここにいたんだ」
「いつも通りだね、けれどね」
「それでもだね」
「今王宮にいるのも縁だし」
 それでとです、ハンクはボタンにさらに言いました。
「これから冒険に行かない?」
「冒険に?」
「そう、都にあるピラミッドにね」
 そこにというのです。
「行かない?」
「そうだね」
 少し考えてからです、ボタンはハンクに答えました。
「今はこれといってすることもないから」
「それじゃあね」
「一緒に行こうね。ただね」
「ただ?」
「僕はまたね」
「何時かだね」
「うん、寝ている間にね」 
 その時にというのです。
「何処かに行くかもね」
「その時は仕方ないわ」
 微笑んで、です。ベッツイも言ってきました。
「それが貴方だから」
「それでいいんだね」
「ええ、私達がどうか出来ることじゃないから」
 あくまでボタン特別のことからです。
「仕方ないよ」
「そうなんだね、じゃあ」
「一緒に来てくれるかな」
「それじゃあね」
 こうしてでした、最初に冒険に参加したのはボタンとなりました。ですがそれだけではなくでした。
 ここで、でした。王宮にです。
 カエルマンとクッキーが来たとの知らせが入りました、ベッツイはその知らせを聞いてハンクに言いました。
「あら、今度はね」
「うん、お二人だね」
「お二人が来ることもね」
「久し振りだよね」
「本当にね」
 二人でこうお話してです、ボタンと一緒に二人を迎えるとでした。そしてそこにはです。
 カエルマンとクッキーがいました、それにです。
 カルロスと恵梨香、ジョージ、神宝そしてナターシャもいました。ハンクはカルロス達も見て言いました。
「貴方達も一緒だったの」
「いや、実はね」
 ここで言ったのはカエルマンでした。
「私達はオズマ姫にクッキーを届けに来たんだ」
「はい、私が焼きまして」
 クッキーもベッツイにお話します。
「それがあまりにも美味しくて」
「それでなんだ」
 実際にというのです。
「都のオズマ姫にと思ってね」
「ここまで来ましたけれど」
「それで都の宮殿に入る時に」
「あっ、わかったわ」
 ここで、でした。ベッツイも気付きました。
「そこでカルロスと会ったのね」
「はい、僕達もオズの国に行こうってお話して」
 カルロスもお話しました。
「ここに来たんです」
「そこでなのね」
「カエルマンさん達にお会いしました」
「いや、奇遇だったね」
「そうですよね」
 カルロスは笑顔で頷きました。
「オズの国らしいですね」
「この国はいつもだからね」
「急に何かが起きて」
「それでね」
「出会いもですね」
「いつもだから」
 それでというのです。
「そうした国なんだよ」
「不思議な出会いに満ちていますね」
「そう、そしてね」
「これからですね」
「絶対に何かあるってね」
「お話しましたね」
「そうだったね」
 こんなことをお話してでした、そのうえで。
 カエルマンはベッツイに笑顔で尋ねました。
「冒険に行くね、これから」
「カルロス達と出会ってなのね」
「これはって思ったけれど」
「ええ、そうよ」
 その通りだとです、ベッツイはカエルマンに笑顔で答えました。
「これからエメラルドの都のピラミッドにね」
「行くんだね」
「一緒に行く人を探していたけれど」
 それでもというのです。
「貴方達もどうかしら」
「喜んで」
 カエルマンはベッツイの申し出に笑顔で答えました。
「私達も行けたらいいと思っていたし」
「それじゃあね」
「うん、ピラミッドだね」
「そこに行きましょう」
「それではね」
「冒険は久し振りですから」
 クッキーも笑顔で言います。
「それでは」
「行こうね」
「僕達もよかったら」
 カルロスが言ってきました。
「一緒に」
「勿論よ」
 これがベッツイの返事でした。
「貴方達が来てくれるならね」
「それならですか」
「有り難いわ、じゃあ皆で行きましょう」
 ベッツイは笑顔で言いました。
「ピラミッドに」
「そうしようね」
 ハンクも頷きます、ですが。
 ここででした、また知らせが来ました。今度のお知らせはといいますと。
「ポリクロームさんが来られました」
「今度は彼女なんだ」
 ハンクはお知らせに来たジュリア=ジャムの言葉を聞いて言いました。
「またこれはね」
「そうね、久し振りの人がね」
「どんどん来るね」
「こうしたこともあるのがね」
「本当にオズの国ね」
「そうだよね」
「それじゃあね」
 ベッツイはまた言いました。
「ポリクロームもね」
「誘うんだね」
「そうしましょう」
「そうだね、じゃあね」
「今からね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 ポリクロームが来るとそこでベッツイは彼女にも誘いをかけました。するとポリクロームはこう言いました。
「私実は王宮に遊びに来たの」
「そうだったの」
「久し振りにこちらで遊びたくなって」
「じゃあ王宮にいるの?」
「いえ、ピラミッドに行ったことはないから」
 それでというのです。
「それならね」
「私達と一緒に来てくれるの」
「そうさせてもらうわ」
「それではね」
 ベッツイは笑顔で頷きました、こうしてです。
 ピラミッドに行くメンバーが決まりました、そして出発の準備もすることになりましたが。
 準備は食べものを出してくれるテーブル掛けや他の魔法の道具を幾つか持って終わりでした。そうしてからです。
 ベッツイは一緒に冒険に行く面々に王宮の中でお話しました。
「私もピラミッドにははじめて行くわ」
「私達もだよ」
 カエルマンが答えます。
「オズの国にもピラミッドはあるけれど」
「それでもよね」
「うん、そこに行くのはね」
「はじめてよね」
「だからそこに行くことは」
 こうベッツイに言うのでした。
「楽しみだよ」
「そうなのね」
「これも縁だね」
 笑顔で言うカエルマンでした。
「今回皆でピラミッドに行くことは」
「そうよね、じゃあね」
「一緒に行きましょう」
「是非ね」
「それでピラミッドって何なの?」
 ボタンはピラミッドのことについて尋ねました。
「一体」
「王様のお墓だよ」
 神宝がボタンの質問に答えました。
「僕達の世界ではね」
「そうなんだ」
「昔のエジプトの王様、ファラオのお墓で」
 ジョージもボタンにお話します。
「中は迷宮になっているんだ」
「凄く大きなお墓で」
 今度はナターシャがお話します。
「石が四角すいの形で積まれているのよ」
「それが私達の世界のピラミッドだけれど」
 それでもと言う恵梨香でした。
「オズの国ではどうかしら」
「オズの国では誰も死なないから」
 それでと言ったのはポリクロームです。
「お墓って言われても」
「お墓は死んだ人の亡骸や骨を置く場所よ」
 ベッツイがポリクロームにお話しました。
「外の世界では誰もが絶対に死ぬから」
「だからあるのね」
「そう、外の世界ではね」
「そうなのね」
「それでピラミッドもお墓だけれど」
「この世界のピラミッドは神殿だよ」
 カエルマンがオズの国のピラミッドのお話をします。
「エジプトの神々を祀ったね」
「そうした場所なのね」
「そして冒険の場所でもあって」 
 カエルマンはポリクロームにさらにお話します。
「迷宮になっているんだ」
「そのことは僕達の世界と同じですね」
 カルロスはカエルマンのお話を聞いて彼に言いました。
「中身が迷宮なのは」
「うん、ただね」
「お墓でないことはですね」
「違うからね」
「そうなんですね」
「だから中も安全よ」
 ベッツイもカルロスにお話します。
「お墓だとお墓を荒らす悪い人達に備えて罠が必要だけれど」
「オズの国のピラミッドは神殿だから」
「そうしたものはないわ、ただね」
「ただ?」
「中は色々な人がいるわよ」
 ピラミッドの中はというのです。
「それで外の世界のピラミッドより大きいから」
「そうですか」
「中に入ると」 
 そうすればというのです。
「凄い迷宮よ」
「そうなっているんですね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「中に入るとね」
「迷宮も楽しめますね」
「絶対に楽しい冒険になるし、それに」
「それに?」
「エメラルドの都での冒険ははじめてでしょ」
 こうカルロス達に言うのでした。
「そうでしょ」
「はい、実際に」
「貴方達の冒険も都以外でだったし」
「オズの国の色々を回っても」 
 それでもというのです。
「エメラルドの都は」
「なかったでしょ、だからね」
「そのことも含めてね」
「楽しめる旅ですね」
「今回はね」
 カルロスににこりと笑って言うのでした。
「そうした冒険になるわ」
「そうですね、じゃあ」
「明日出発しましょう」
「明日にね」
 まさにと言うハンクでした。
「この都を出て」
「それからだね」
「そう、都から少し歩いたら見えてくるから」
 ハンクはボタンに答えました。
「そこに着いたら」
「そうしたらだね」
「中に入って」
 ピラミッドのというのです。
「そうしてね」
「冒険の開始だね」
「そうなるよ、明日からね」
「今回の冒険は早速はじまるんだね」
「だってね」
 こうも言うハンクでした。
「エメラルドの都だから」
「冒険が行われる場所は」
「だからね」
 それでというのです。
「本当にすぐにはじまるんだ」
「そうなんだね」
「明日は朝にオズマとドロシーに挨拶をして」
 ベッツイがまた言ってきました。
「出発よ」
「今回はお二人は参加しないのね」
「ええ、二人は王宮に残って」
 それでとです、ベッツイはポリクロームに答えました。
「そうしてお仕事よ」
「そちらにかかるのね」
「だからね」
 それでというのです。
「二人は参加しないの」
「そうなのね」
「かかしさんも樵さんも」
 オズの国を代表するこの人達もというのです。
「今回はね」
「お仕事があるのね」
「そうなの、魔法使いさんもトロットもね」
「皆なのね」
「それぞれお仕事があって」
「今回の冒険には参加しないのね」
「そうよ、だからね」
 それでというのです。
「今回の冒険はね」
「この顔触れでなのね」
「行くことになるわ」
「わかったわ。それじゃあね」
 ポリクロームはベッツイの言葉に頷きました、そうして納得しました。その後でベッツイは皆と晩ご飯を食べることになりましたが。
 ステーキを食べつつです、ベッツイは言いました。
「このステーキだけれど」
「羊ですね」
 カルロスが応えました。
「そのお肉のステーキですね」
「ええ、フィレツェステーキだけれど」
「美味しいかどうか」
「皆はどうかしら、私このステーキが大好きで」
 それでというのです。
「皆にもって思ったけれど」
「ステーキはね」
 ここで言ったのはボタンでした。
「牛肉が多いね」
「そちらのお肉のステーキがでしょ」
「けれど羊のお肉は」
「マトンよ」
「そのステーキはね」
「牛肉のより少ないから」
 それでというのです。
「どうかしら」
「多い少ないじゃね」
「そうした問題じゃないっていうのね」
「美味しいよ」
 笑顔で、です。ボタンはベッツイに答えました。
「ビーフステーキに負けない位に」
「ならいいけれわ」
「うん、羊も美味しいからね」
「そう、牛肉にも負けないね」
 カエルマンも言ってきました。
「このステーキも、じゃあワインもね」
「そちらもよね」
「楽しませてもらうよ」
「それじゃあね」
「私も。これは」
 恵梨香もそのフィレンツェステーキを食べつつ言いました。
「好きになりました」
「うん、確かにね」
「このステーキ美味しいね」
「柔らかくて味もよくて」
 ジョージ、神宝、ナターシャも言います。
「これならね」
「素敵だね」
「何枚でも食べられるよ」
「そうなの。ではね」
 ベッツイは彼等の言葉を聞いて笑顔で応えました。
「どんどん食べてね」
「そうさせてもらいます」
 カルロスが五人を代表して答えました、そして実際にでした。
 皆はこの日の晩ご飯特にフィレンツェステーキを心ゆくまで楽しみました、そのうえで食後にお風呂に入ってです。
 ベッドの中でゆっくりと寝ました、そうして日の出と共に起きて。
 オズマとドロシーにです、ベッツイが皆と一緒に言いました。
「もうお話は聞いてるわよね」
「ええ、今日からよね」
 ドロシーが応えました。
「ピラミッドに行くのよね」
「そうしてくるわ」
「わかったわ、エメラルドの都にあるし」
 そのピラミッドはというのです。
「それならもう気楽にね」
「行ってきていいのね」
「そうしてきてね。私はあそこにも何度か行ってるけれど」
 オズの国きっての冒険家であるドロシーはです。
「ベッツイ達ははじめてよね」
「ここにいる皆はね」
 今回参加する顔触れはとです、ベッツイはドロシーに答えました。
「そうよ」
「だったらピラミッドのマップをよく見て」
 そうしてとです、ドロシーはベッツイに言いました。
「行ってね」
「そうするわね」
「ピラミッドは凄い迷宮になっているから」
 オズマもベッツイに言ってきました。
「だからね」
「マップはなのね」
「持って行ってね、そして」
 オズマはさらに言いました。
「カエルマンさんの知恵がね」
「私のですな」
「そう、カエルマンさんは大人で」
 それにというのです。
「私達と知り合ってからオズの国の色々なところを巡って」
「そして本も読ませて頂いております」
 多くの本をというのです。
「今もなお」
「それだけにかなりの知識を知恵を備えているから」
 そうした人になったというのです。
「だからね」
「カエルマンさんの言葉もなのね」
「聞いてね。クッキーもいて」
 そしてというのです。
「ハンクもいるし」
「そうね、皆もいるから」
 ベッツイもオズマの言葉に頷きました。
「一緒に力を合わせて」
「お話を聞いてね」
「ピラミッドの中を進んでね」
「そうしていくわね」
「そうしてね」
「ポリクロームとボタンもいて」
 そしてと言うベッツイでした。
「カルロス達もいるし」
「皆でね」
「カエルマンさん達のお話を聞いて」
「そのうえで楽しんでいってね」
「そうさせてもらうわね」
「一体どんな場所かしら」
 ポリクロームはそのピラミッドのことを思うのでした。
「今から楽しみだわ」
「僕行ったことあるかな」
 ボタンの言葉は彼らしく少しぼんやりしたものでした。
「ピラミッドでも」
「覚えていないの?」
「わかんなーーい」
 こうクッキーに答えました。
「だって寝ていたらね」
「全く知らない場所に出るのね」
「オズの国かすぐにオズに国に戻れる場所だけれど」
 寝ている間に何処かに移動してしまうことがあるのがボタン=ブライトという子なのです。不思議なことに。
「知らない場所にいてね」
「それでまた寝たらなのね」
「別の場所に行ったりするから」
「ピラミッドにもなのね」
「行ったことがあるかも知れないし」 
 逆にと言うのでした。
「行ったことがないかもね」
「知れないのね」
「だからね」
「わからないのね」
「そうなんだ。オズの国の色々な場所に行ったけれど」
 それでもというのです。
「ピラミッドはあるかな」
「じゃあ今回行ったら」
「僕の記憶に残るのなら」
 それならというのです。
「それがはじめてになるね」
「そうなるのね」
「それじゃあね」
「ええ、貴方にとってもはじめての場所にね」
「今から行こうね」
「そうしましょうね」
 クッキーはボタンに笑顔で応えました、こうしてでした。
 一行はエメラルドの都の宮殿を出て街も出ました、そして宮殿を出たところでテーブル掛けから朝ご飯のサンドイッチと牛乳それにサラダを皆で食べますが。
 ハンクはサラダを食べつつです、ベッツイに尋ねました。
「ピラミッドに入ればだね」
「ええ、もうすぐにね」
 ベッツイはそのハンクに答えました。
「中に入るわよ」
「そうするよね」
「そして皆で一階一階ね」
「進んでいってだね」
「踏破を目指して中にいる人達ともね」
「お会いしてだね」
「お話もしたいわ」
 こうハンクに答えました。
「是非ね」
「それじゃあね。ただね」
「ただ?」
「いや、ピラミッドは神殿だけれど」
 ハンクはオズの国のピラミッドのこともお話しました。
「それでもね」
「それでも?」
「いや、どんな神様が祀られているのかもね」
「エジプトの神様達よ」
「オズの神様達とは別の神様ね」
「キリスト教の神様でもないから」
 ベッツイはこのことも断りました。
「このことはね」
「ちゃんとわかっておくことだね」
「オズの国は神様も大勢おられてね」
 ベッツイはハムサンドを食べつつハンクにお話しました。
「元々のオズの国の神々に」
「エジプトの神様達もだね」
「おられてね。他にはギリシアや北欧やケルトの神々もね」
「おられるんだ」
「そうよ、中国やインドや日本の神々もよ」
 アジアの国の神様達もというのです。
「だってアメリカにはそうした国からも人が来ているから」
「ああ、だからだね」
「オズの国はアメリカが反映されるから」
 外の世界にあるこの国がというのです。
「だからよ」
「それでだね」
「神様もそうなっているの」
「成程ね」
「中南米の神様達もいるし」
「何か色々だね」
「そういえば」
 ここでカルロスがベッツイに尋ねました。
「中南米にもピラミッドがありますけれど」
「ええ、あちらは完全な祭壇よね」
「はい、僕達の世界でも」
「そうよね、あちらのピラミッドもね」
 ベッツイはカルロスにもお話しました。
「オズの国にはあるわよ」
「中南米の人達もアメリカに来ているからですね」
「ええ、メキシコからも沢山の人が来ていて」
 それにというのです。
「他の中南米の国々からもね」
「だからですね」
「そう、オズの国にはあちらのピラミッドもあるわ」
「中南米のものも」
「正面が階段になっているね」
 ベッツイはそのピラミッドの形もお話しました。
「ああしたピラミッドもあるわ」
「そうなんですね」
「それもエメラルドの都にね」
「あっ、この国にですか」
「そう、あってね」
 それでというのです。
「そのピラミッドにもね」
「行くんですね」
「エジプトのピラミッドに行く前に」
 迷路になっているそこに行く前にというのです。
「まずはね」
「そうするんですね」
「ええ、じゃあね」
「はい、まずは」
「そちらのピラミッドに行きましょう」
「まさか二つのピラミッドに行けるなんて」
 神宝はサンドイッチを食べながら驚きを隠せないお顔になりました、そのうえで言います。
「思いませんでした」
「普通エジプトはエジプトで」
 それでと言ったのはナターシャです、牛乳を飲みながら言います。
「中南米は中南米なのに」
「その辺りオズの国ですね」
 ジョージはサラダを食べながら頷きつつ言います。
「違うタイプのピラミッドが近い場所にあるなんて」
「そんな国他にないです」
 恵梨香も言います、恵梨香は牛乳を飲んでいます。
「流石オズの国ですね」
「そう、オズの国はお伽の国だから」 
 それでとです、ベッツイはお話するのでした。
「だからね」
「違う形のピラミッドもですね」
「それぞれエメラルドの都にあって」
「一度の冒険で両方観られるんですね」
「中にも入られるんですね」
「そうよ、だからどちらも行きましょう」
「いいね、ただね」
 ここでカエルマンが言いました。
「外の世界だとエジプトと中南米はかなり離れているね」
「はい、もう」
 カルロスは卵サンドを食べつつ言うカエルマンにすぐに答えました。
「大西洋が間にあって」
「凄く広い海だよね」
「はい、その海があって」
「エジプトのあるアフリカ大陸と中南米の大陸はね」
「そうですが」
「外見こそかなり違っても」
 それでもと言うカエルマンでした。
「それぞれピラミッドがあるんだね」
「そうです」
「それは不思議なことだね」
「造られた年代は違いましても」
 エジプトのピラミッドと中南米のそれはです。
「それでもね」
「二つの地域でピラミッドが造られていることは」
「不思議なことだね」
「本当にそうですよね」
「ピラミッドは前から見たら三角形で」
「上から見たら四角だね」
「四角すいですね」
 カルロスから言いました。
「ピラミッドの形は」
「どちらのピラミッドもね」
「そうですよね」
「造るにはかなり高度な数学の知識が必要で」
 それにというのです。
「エジプトにも中南米にもね」
「その数学の知識があって」
「それを使ってですね」
「ピラミッドを造ったんですね」
「それでオズの国でもですね」
「数学の知識を使って造ったんですね」
「私も協力したけれど」
 それでもとです、カエルマンはカルロス達五人にお話しました。
「ムシノスケ教授の知識が生きたよ」
「あの人はオズの国一の学者さんでしたね」
「だから数学もご存知で」
「それで、ですか」
「あの人が活躍されて」
「オズの国でもピラミッドが出来たんですね」
「そうだよ、それでもね」
 またこう言うカエルマンでした。
「本当に何で二つの地域にあったのかな」
「たまたまとか?」
 ボタンは野菜サンドを食べながら言いました。
「それは」
「いや、偶然にしてもね」
「おかしいの?」
「私はそう思えるよ。外の世界には行ったことがないけれど」
 それで見て知らないけれどというのです。
「それでもね」
「ううん、偶然にしては」
「エジプトのピラミッドはお墓だけれど」
 カエルマンはボタンにさらにお話しました。
「王様、ファラオのね」
「エジプトの王様だね」
「その人達のお墓で」
 それでというのです。
「中南米のそれは神様の為のね」
「祭壇なんだ」
「それで特定の日に夕陽を受けると」
 そのピラミッドがというのです。
「神様の姿が見える様なね」
「そうした風にもなんだ」
「工夫がされているんだ」 
 中南米のピラミッドはというのです。
「ピラミッドの階段に出来る影が神様の身体でね」
「影がなんだ」
「そう、それでね」
 さらにお話するカエルマンでした。
「ピラミッドの最下段にある神様の頭の像がね」
「頭だね」
「そうなってね」
「神様の姿が出る様になっているんだ」
「オズの国のピラミッドでもそうだよ」
 中南米のそれはというのです。
「そうなっているよ」
「何か凄いね」
「そうなっているんだ」
「どうして二つの地域でピラミッドがあるのか不思議だけれど」
 ポリクロームも言ってきました、ポリクロームは今もお花から出た露を飲んでいます。この娘がこれで充分なのです。
「そうした造りになっているなんて」
「凄いことだね」
「今でも考えて造らないと出来ないことね」
「けれどそれをね」
「私達よりずっと昔にしていたのね」
「そうだったんだ」
「本当に凄くて」
 それにとです、ポリクロームは言いました。
「不思議ね」
「そうだね」
「ピラミッドは神秘の塊だね」
 こう言ったのはハンクでした。
「僕もそう思うよ」
「そのピラミッドによ」
 ベッツイは自分の一番の友達に微笑んでお話しました。
「私達は今から行くのよ」
「そうするんだね」
「そこには神官さん達がいて」 
「他の人達もいるよね」
「そうよ、その人達にもお会いするから」
「ベッツイも楽しみだよね」
「本当にね。じゃあ朝ご飯を食べて」
 そうしてというのです。
「ピラミッドを目指すわよ」
「是非ね」
「それとね」
「それと?」
「呪いはないわよ」
 ベッツイは笑ってこうも言いました。
「そちらの心配は無用よ」
「呪い、あれだね」
「そう、ファラオのね」
「あれはないんだね」
「本当かどうかわからないけれど」
「エジプトのファラオには付きものだね」
「こうしたお話はね」
 呪いはというのです。
「どうしてもね」
「呪い?」
 クッキーは呪いと言われてもわかりませんでした。
「西の魔女や東の魔女が使っていた魔術かしら」
「そうよ、私はその人達は直接知らないけれど」
「あの人達が使っていたものね」
「相手の人に災いをかけるの」
「そうした魔術ね」
「それがピラミッドというかエジプトにもあるって言われていて」
 それでというのです。
「ピラミッドとかに入ると」
「その呪いをかけられる」
「そうもね」
「言われているのね」
「私達が今お話してるのはツタンカーメン王のお話で」
 外の世界のこの人のというのです。
「この人はピラミッドじゃないけれど」
「呪いがあったの」
「そうなの、王家の墓っていうところに葬られていて」
「そのお墓を暴くとね」
 それでと言うハンクでした。
「呪われたってね」
「そうしたお話があったの」
「お墓を暴いてその財宝を奪ったから」
「呪われたの」
「そうしたお話があったんだ」
「そうだったのね」
「オズの国にはないお話だね」
 ここでこう言ったのはカエルマンでした。
「呪いにしろお墓にしろ」
「そうだよね」
「うん、私も聞いていてね」
 牛乳を飲みつつです、カエルマンは首を傾げさせて言いました。
「珍妙なお話だと思ったよ」
「そうだね」
「うん、そんなお話があるんだね」
「外の世界にはね」
「お墓は言うならお家だね」
 カエルマンはこう考えました。
「そうだね」
「死んだ人のね」
「そうしたところに入って何かを取るのは悪いことでも」
 それでもと言うカエルマンでした。
「そうした怖いことはね」
「オズの国ではないね」
「そもそも人のお家に勝手に入る時点で」
 もうこの段階でというのです。
「ないよ」
「そうだね」
「けれどね」 
 それでもと言うカエルマンでした。
「呪いはもっとね」
「よくないよね」
「オズの国では魔法は決められた人しか使えないけれど」
 オズマにグリンダ、そして魔法使いといった人達です。
「その人達も呪い、呪術はね」
「使わないね」
「絶対にね」
「だからオズの世界にはないわね」
 ベッツイはまた言いました。
「こうしたお話は」
「絶対にないよ」
 カエルマンはベッツイに対して断言しました。
「何があってもね」
「そうしたお話よね」
「本当にね、けれど今お話した通りにね」
「ピラミッドでもよね」
「オズの国だからね」
 それでというのです。
「絶対にないよ」
「そうよね」
「そう、だからね」
「安心して中に入って」
「楽しめるよ」
 カエルマンはベッツイに笑顔でお話しました。
「最初から最後までね」
「それで出てからも」
「何もないよ」
「呪いもなくて」
「私はツタンカーメン王のお話は知らないけれど」
 それでもというのです。
「呪いがないからね」
「最初からないわね」
「絶対にね、だから安心して」
「楽しんで行けばいいわね」
「そうだよ、そして私も」
 カエルマンはさらに言いました。
「楽しむよ、ただ私もね」
「ピラミッドの行くのははじめてだから」
「ピラミッドに入るとね」
 何もかもというのです。
「楽しめるよ」
「そうよね、はじめての場所にもね」
「どんどん入って」
「心から楽しむのがね」
「オズの国だから」
 だからこそというのです。
「是非共ね」
「行こうね」
 ハンクもベッツイに言います。
「これから」
「そうするわ。そういえばね」
「そういえば?」
「いえ、オズの国も色々な人が増えて」
 そしてというのです。
「色々なものがね」
「増えてきてるね」
「そうなってるわね」
「どんどんね」
「ピラミッドが出来たし」
 これから行くそれもというのです。
「他にもね」
「出来ていって」
「人も増えてそうして」
「今に至るから」
「そう思うとオズの国は凄く変わったわね」
 ポリクロームも思うことです。
「そして変わり続けているわね」
「そうだね」
 ハンクはポリクロームのその言葉に頷きました。
「本当に」
「それもよくね」
「科学も進歩して」
「しかも魔法もあるから」
「その両方がいい意味で合わさっていて」
「科学と魔法が交差するっていいますと」
 カルロスが言ってきました。
「日本ではアニメとかでありますよ」
「そうなんだ」
「うん、これがね」
 カルロスはハンクにもお話します。
「ライトノベルが原作でね」
「面白いんだ」
「そうなんだ、僕も好きでね」
 それでというのです。
「今もね」
「読んでるんだ」
「そう、そしてね」
「科学と魔法がだね」
「一緒にあるとね」
「日本の創作を思い出すんだ」
「そうなんだ」
 実際にというのです。
「今実際にそうなったよ」
「成程ね」
「まあオズの国は最初からだけれどね」
「この国に科学が入って」
 そしてとです、ベッツイもカルロスにお話します。
「それからね」
「科学と魔法がですね」
「ずっと一緒にあるのよ」
「それがオズの国ですね」
「そうよ、じゃあね」
「今からもですね」
「その科学と魔法を同時にね」
 オズの国だからというのです。
「楽しんでいきましょう」
「わかりました」
 カルロスも他の四人も笑顔で頷いてでした、そのうえで。
 今は美味しい朝食を楽しみました、そうして先に行くのでした。








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