『オズのハンク』




                第十幕  遂に会えて

 一行はピラミッドの最上階に来ました、そこはまずは動物園がありました。その動物園の中にはです。
 外の世界ではアフリカにいる生きもの達がいました、ですがカルロス達は身体の前の半分はシマウマですが後ろ半分は茶色い馬を見て言いました。
「はじめて見るね」
「そうだよね」
「ええと。名前は何だったかな」
「シマウマに似てるけれど」
「何といったかしら」
「これはクァッガだよ」
 カエルマンが五人に教えました。
「もう外の世界にはいないけれどね」
「オズの国にはいてですか」
「それで、ですね」
「ピラミッドの中にもいるんですね」
「それで今ですね」
「私達も見ているんですね」
「そうだよ、あとね」
 カエルマンはさらに言いました。
「この動物園には外の世界にいない生きものがまだいるね」
「あれは」
 カルロスはレイヨウに似た青い毛の生きものを見ました。
「レイヨウに似てるけれど」
「ううんと、確かブルーバックだったかな」
 神宝がその生きものの名前を出しました。
「確か」
「あの生きものももう外の世界にいなかったね」
「それでもオズの国にはいて」
 恵梨香もそのブルーバックを見て言います。
「それでなのね」
「私達も見ているのね」
 ナターシャもブルーバックを見ています。
「そうなのね」
「あとね」
 ボタンはある生きものを見て尋ねました。
「何か小さなキリンみたいな生きものいたけれど」
「あれはオカピよ」
 トロットが答えました。
「オズの国では結構いるわよ」
「そうだったんだ」
「ええ、ボタンも見たことある筈よ」
「わかんなーーい」
「わからないっていうけれど」
 それでもというのです。
「忘れてたの?」
「そうかな」
「オカピは外の世界にもいるよ」
 こう答えたのはカルロスでした。
「あの生きものは」
「そうなんだ」
「物凄く珍しい生きものだけれどね」
 それでもというのです、動物園ではあらゆる生きものが放し飼いになっていてそれぞれの場所でくつろいでいます。互いに争うこともありません。
「それでもだよ」
「そうなんだね」
「うん、外の世界にもいるよ」
「ゴリラもいるわね」
 ポリクロームはこの生きものを見ています、見ればセロリや林檎、バナナを美味しそうに食べています。
「いつも通り平和そうね」
「そうそう、ゴリラって実は大人しいから」
 ハンクが答えました。
「完全な菜食主義でね」
「暴れたり絶対にしないのよね」
「お顔は怖いけれど」
 それでもというのです。
「凄く大人しくて優しいんだ」
「そうした生きものだね」
「人をお顔で判断してはいけないですが」
 クッキーも言います。
「生きものも同じですね」
「人を顔で判断したらいけないってね」
 カルロスも言いました。
「よく言われるし」
「幾らお顔がよくても」
 それでもとです、トロットはカルロスに応えました。
「性格が悪いと駄目よね」
「はい、確かに」
「だからね。ゴリラもね」
「一見怖そうですが」
「それでもよ」
「とても優しくて頭がいい」
「温和な生きものだからね」
 そうした生きものだからだというのです。
「本当にね」
「そのことをわかっていて」
「お付き合いしていけばいいのよ」
「そういうことですね」
「あとカバもいるね」
 ここで言ったのはボタンでした。
「大きいね」
「うん、僕達よりも遥かに大きいね」
 カルロスはボタンの言葉に頷きました。
「相当に」
「あそこまで大きいと」
「大きいと?」
「力も強そうね」
「若しカバが暴れたら」
 カエルマンがこの時のことを考えました。
「大変なことになるね」
「凶暴だっていうね、外の世界だと」
 ここで言ったのはハンクでした。
「カバは」
「そうだよ、だから外の世界で出会ったらね」
 カエルマンはハンクにすぐに答えました。
「気をつけないとね」
「いけないんだね」
「そう本に書いてあったよ」
「そうなんだね」
「あとあれは」
 カルロスはある生きものを見ました、それは何かといいますと。
 サーベルタイガ―に似たネコ科の生きものと鬣がとても長いライオンです、カルロスはその生きもの達を見て首を傾げさせました。
「まさか噂の」
「水ライオン?」
「それと岩ライオン?」
「そうかな」
「あの噂の」
「そうだよ」
 その通りだとです、カエルマンはカルロス達に答えました。
「彼等はね」
「外の世界ではいるかどうか」
 それこそと言うカルロスでした。
「わからないですが」
「それでもだよ」
「オズの国ではですね」
「いるからね」
 それでというのです。
「このピラミッドにはね」
「そうなんだね」
「そう、だから」 
「僕達も見られるんですね」
「オズの国はお伽の国だから」
「未確認動物もいるんですね」
「外の世界ではいるかどうかわからない生きものでも」
 例えそうであってもというのです。
「いるからね」
「そういうことですね」
「あとこの生きものは」
 ポリクロームはとても大きな目をした小さなお猿さんを見ました、尻尾が長くて木に登っています。
「確か」
「アイアイね」
 トロットが答えました。
「この生きものは」
「そうなのね」
「この生きものも珍しいのよね」
「マダガスカルという島にいるね」
 カエルマンがまた言います。
「外の世界では」
「そうなのね」
「うん、アイアイ以外にも」
 動物園を見回せばです。
「マダガスカルの小さな生きもの達がいるね」
「小さなお猿さん達が」
「いるね」
「ええ、本当に」
「そう、それと」
 さらに言うカエルマンでした。足元にいる太っている丸い目と頭そして曲がった嘴を持っている鳥です。
 この鳥についてもです、カエルマンは言うのでした。
「これもだよ」
「あっ、これは」
「ドードー鳥」
「ドードー鳥もここにいますか」
「このピラミッドに」
「そうなんですね」
「そうだよ、ドードー鳥もアフリカにいて」
 そしてというのです。
「マダガスカルの東の島にいたね」
「そうでしたね」
「アフリカでしたね、あそこも」
「モーリシャス諸島ですね」
「あちらにいて」
「それで、でしたね」
「そうだよ、しかしこうした生きものがね」
 カエルマンはドードー鳥を見つつ悲しいお顔になりました、そうしてこんなことを言ったのでした。
「外の世界ではもういないんだね」
「クァッガやブルーバックもです」
「そうだよね、悲しいことだね」
「そう言われますと」
「どんな生きものもいなくと寂しくなるよ」
 そうなればというのです。
「本当にね、けれど」
「オズの国ではですね」
「こうしているからね」
「僕達も出会えるんですね」
「オズの国にいたら」
「ピラミッドの中でも」
「お伽の国は不可能が不可能になる」
 これがカエルマンの返答でした。
「そういうことだよ」
「そういうことですね」
「だからですね」
「こうした生きもの達にも出会えて」
「お話だって出来るんですね」
「お伽の国だから」
「そうだよ」
 そのドードー鳥から言ってきました。
「僕もこうして喋るしね」
「そうだよね、オズの国だから」
 カルロスはそのドードー鳥に応えました。
「それでも出来るね」
「この通りね」
「そうだよね」
「じゃあ何かとお話しようね」
「そうして遊ぼうね」
「皆今はここで遊びましょう」
 トロットも笑顔で言いました。
「そうしましょう」
「そうだね、生きものの皆とお話してね」
 ハンクがトロットに笑顔で応えます。
「そうしてね」
「是非ね」
「楽しもうね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆はどーどー鳥やクァッガ、そしてゴリラや水ライオン達と楽しくお話をしました。そのことが終わってからです。
 皆はいよいよラー神の祭壇に向かいました、この時にです。
 クッキーは少し残念そうにこう言いました。
「結局ここまでね」
「メジェド神にはお会い出来なかったわね」
「そうですよね」
 こうポリクロームにも答えます。
「残念なことに」
「そうよね」
「そのことが」
 どうにもというのです。
「心残りですが」
「だからだね」
 ハンクがここで言いました。
「今から」
「ラー神の祭壇に行って」
「ラー神にお願いして」
 そうしてというのです。
「メジェド神を呼んでもらおう」
「そうしてもらいますね」
「ここはね、しかし」
「しかし?」
「いや、メジェド神は本当に神出鬼没で」
 それでというのです。
「会うのは運次第なんだね」
「このピラミッドの中では」
「うん、そう言われていたけれど」
「実際にですね」
「そうなんだね、だからね」
「私達もですね」
「今まで会えなかったんだね」
 そうなったというのです。
「これまで」
「そうですね」
「そんなこともあるわ、けれど最後は願いが叶うのがオズの国だから」
 トロットが皆に笑顔でお話しました。
「だからね」
「残念に思うことはないですか」
「そうなんだね」
「そう思うわ、だってこれから会えるのよ」 
 ラー神にお願いしてというのです。
「それだったらね」
「特にですね」
「どうも思うことはないんだね」
「そうじゃないの?まあとにかくこれからね」
 トロットはハンク達にあらためて言いました。
「ラー神の祭壇に行きましょう」
「古代エジプトの主神で太陽の神様」
 ここで言ったのはカエルマンでした。
「尊い存在だね」
「神々の中でも」
「そうだよね」
「中南米のインティや日本の天照大神ですね」
 カルロスはこうした神々の名前を出しました。
「要するに」
「そうよね、ギリシア神話だとヘリオスや」
 トロットはカルロスにも応えました。
「アポロンになるわね」
「どちらも太陽の神様でしたね」
「ギリシアの太陽の神様って二柱いる感じがするけれど」
「何か途中で代替わりしたみたいですね」
「そうなのね」
「だからヘリオス神も太陽神で」
 そしてというのです。
「アポロン神も」
「太陽神なのね」
「そうみたいですよ」
「そうなのね」
「それでオズの国にはですね」
「ギリシアの神々もいて」
 そしてというのです。
「ヘリオス神もアポロン神もね」
「いるんですね」
「そうなの」
「本当に色々な神様がいるんですね」
「そしてオズの国を守ってくれているの」
「それで一番数が多いのは何処の神様なの?」
 ボタンはトロットにこのことを尋ねました。
「一体」
「日本よ」
「日本なんだ」
「あの国の神様が物凄く多いの」
「そんなに多いんだ」
「八百万って言われる位にね」
「神様が八百万もいるんだ」
 ボタンはその数に驚きました。
「本当に?」
「実際はどれだけおられるかわからないけれど」
 それでもというのです。
「物凄く多いうえに次から次に出て来るから」
「それで多いんだ」
「ええ、人も祀られるとね」
 それでというのです。
「神様になるから」
「そうなんだ」
「オズの国にもそうした神様おられるわよ」
「日本の神様でだね」
「菅原道真さんもおられるし」
 まずこの人の名前を挙げました。
「織田信長さんや上杉謙信さんもね」
「おられるんだ」
「そうなの」
 実際にというのです。
「オズの国にはね」
「それでどんどん増えているから」
「オズの国で一番多い神様はね」
「日本の神様なんだね」
「そうなのよ」
「本当に八百万いたら」
 それこそと言うボタンでした。
「もう国が出来るね」
「そこまで多いわよね」
「うん、有り得ない位だよ」 
「日本の神様の神社もあるのよ」
 オズの国にはというのです。
「そしてそこで日本の神々が祀られていて」
「そこに行けばだね」
「日本の神々にもお会い出来るわね」
「その物凄く多い神様達に」
「それが出来るから」
 だからだというのです。
「機会があればね」
「行けばいいんだね」
「そうしたらね」
 それでというのです。
「いいわ」
「わかったよ、それじゃあね」
「機会があればね」
「僕も神社に行ってみるよ」
「そうしてみればいいわ」
「何かそうしたお話を聞くと」
 どうかとです、カルロスがここで言いました。
「オズの国って本当に色々な存在がいますね」
「人や生きもの以外にもね」
「妖精がいたり神々がいたり」
「エルフやドワーフやノームもいるでしょ」
「クルマーの人達やジグゾーパズルの人達もいて」
「狐人の人達もいてね」
「本当に色々な存在がいますね」
 カルロスの口調はしみじみとしたものでした。
「本当に」
「そう、まさにそれがね」
「お伽の国ですね」
「そういうことよ」
「そのことを今あらためて実感しました」
「そうよね、ではね」
 トロットはカルロスにあらためて言いました。
「これからね」
「ラー神のところにですね」
「行きましょう」
「わかりました」
 カルロスも頷いてでした、そのうえで。
 一行はピラミッドの最上階の迷路の中を進んでいって遂にラー神の祭壇に到着しました、まずは皆沐浴をしまして。
 そうして中に入るとでした、そこにです。 
 年老いた男の身体に鳥の頭の神様がいました、祭壇の壁には黄金に輝くとても大きな太陽と船が描かれています。
 その神様が多くの神官達を従えていてトロット達に言ってきました。
「待っていたぞ」
「私達が来ることは」
「わかっていた」
 こうトロットに答えます。
「既に」
「そうだったの」
「私は主神だからな」
「ピラミッドの中はなのね」
「全て把握していて」
 それでというのだ。
「君達のこともだ」
「わかっていたのね」
「そして君達が探している神のこともな」
「メジェド神のこともなのね」
「わかっているしだ」
 それにというのです。
「彼を探している理由もな」
「それもなのね」
「会いたいということもな」
 このこともというのです。
「わかっていてだ」
「それで、なのね」
「そうだ、既にテレパシーを送ってだ」
 そうしてというのです。
「この祭壇に呼んでいる」
「それじゃあ今から」
「ここに来る」
 そうなるというのです。
「だから君達の望みはだ」
「適うのね」
「そうだ」
 それでというのだ。
「これでいいだろうか」
「有り難う、じゃあここで待っていたら」
「うむ、彼は来る」
 メジェド神はというのです。
「待っていてくれ」
「わかったわ」
 トロットはラー神の言葉に笑顔で頷いて答えました、そうして皆でメジェド神が来るのを待つことにしました。
 その間皆でラー神とお話をしますがここで、です。
 ボタンはラー神にこんなことを言いました。
「ラー神はホルス神と似てるね」
「その姿がだな」
「うん、同じ鳥の頭だからね」
「それは当然と言えば当然だな」
 ラー神はボタンのその言葉に頷いてこう言いました。
「何しろエジプトではホルスは私の後を継いでいるからな」
「それで太陽の神様になってるからだね」
「だからだ、同じ太陽神だからだ」
 それ故にというのです。
「我々の外見はだ」
「似ているんだね」
「そういうことだよ」
「お身体がお年寄りのものだから」
 それでと言ったのはポリクロームでした。
「それでわかるけれど」
「うむ、区別はつくな」
「ホルス神は若々しいお身体をしていたから」
「そこで見分けてもらう、だが声が」
 ラー神は自分のそちらのお話もしました。
「違うな」
「ええ、だからお話をすればね」
「よくわかるな」
「そうなるわ」
「そうだな、だからだ」 
 それでというのです。
「そうしたところで見分けてもらう」
「それではね」
「それに同じ鳥の頭でも」
 カエルマンは学者さんの様に言いました。
「種類が違うからそこでもね」
「違うとわかるな」
「はい、まことに」
 カエルマンはラー神に敬意を払って答えました。
「わかりますよ」
「見分けてもらえれば何より」
「それでなのですが」
 今度はクッキーが言ってきました。
「ラー神はセト神とトト神を護衛にさせていたとか」
「空の船に乗り旅をする時だな」
「その時に大蛇と戦うのでしたね」
「アピスというな、その時に彼等が私を助けてくれるのだ」
「外の世界ではそうですね」
「古代エジプトではな」
 実際にそうだというのです。
「そうしてくれていた、彼等は」
「実際にそうなのですね」
「彼等は私の忠実なる戦士達でもあるのだよ」
「それぞれが司るものを持たれたうえで」
「そのうえでだよ」
 こうクッキーにお話するのでした。
「私を助けてもくれていたのだ」
「ではトト神は戦いの神でもあり」
 学問の神でもあってというのです。
「そうしてなんですね」
「そうだ、私の補佐役でもあるのだ」
「セト神と共に」
「彼から聞いているな、セト神は悪い話もあるが」
 それでもというのです。
「善神としてもだ」
「有名なのですね」
「そうだ、そしてオズの国ではな」
「完全な善神ですね」
「そのことをわかってな」
 そのうえでというのです。
「彼と話してくれて何よりだ」
「そうなのですね」
「人望もあるしな、トト神とは親友同士でだ」
 セト神自身が言う様にです。
「アヌビス神とも親しいのだ」
「そうなのですね」
「このピラミッドの中でも頼もしく思われているしな」
「何か外の世界では悪役に言われてますけれど」
 カルロスがここで言いました。
「ゲームとかで」
「あれはあくまで悪い一面だけをだ」
「見てのことですか」
「外の世界のな」
「そういうことなんですね」
「確かに悪い一面だけを言うと」
 恵梨香もここで言いました。
「物凄く悪い人にもなりますし」
「神様も同じですね」
 ナターシャも言います。
「北欧のオーディン神なんか」
「あの神様よく嘘吐くしね」
 ジョージがそのオーディン神のお話をしました。
「人がいがみ合うの好きだし」
「結構酷いこともしてるし」
 神宝もオーディン神のお話に乗りました。
「そこだけを見れば」
「オズの国には北欧の神々もいるが」
 ラー神も言います。
「彼等も同じだな」
「そうだね、オーディン神だけでなくロキ神もね」
 ハンクはこの神様のお話をしました。
「悪い一面だけを言うと」
「とてつもない邪神になるな」
「実際そう思われてもいるね」
「この世界では北欧の神々の中では炎と知恵の神だ」
 それがオズの国のロキ神だというのです。
「非常に悪戯が好きだがな」
「それでもだね」
「あの神も悪い神ではない」
「そうなんだね」
「だから会ってもだ」
「困ることはないんだね」
「彼もまた面白い神だ」
 そのロキ神もというのです。
「会う機会があれば楽しみにしていることだ」
「ではそうさせてもらうね」
「それではな」
「何かですね」
 カルロスはここでしみじみとした口調になって言いました。
「神様も変わるんですね」
「場所によってな」
「そうですよね」
「そして時代によってもな」
 このことでもというのです。
「変わるのだよ」
「時代によってですか」
「そうなのだよ、私はオズの国では主神のままだが」
 エジプトの神々のというのです。
「外の世界ではホルス神が次の主神になっていたりもする」
「そうなるので」
「だからだ」
「神は時代や場所で変わるんですね」
「何かとな、最近我々は日本でも有名だそうだが」
 ラーは恵梨香も見て言いました。
「面白いことだな」
「ゲームや漫画や小説で、ですね」
 その日本人の恵梨香が応えました。
「色々と」
「それでジェド神が特にだな」
 今まで皆が会いたいと思って探していてこれから会う神様もというのです。
「人気があるな」
「そうですね、エジプトの神様では」
「そうだな」
「ずっと名前もお姿も知られてなかったですが」
 それがというのです。
「最近は」
「そうだな、ふとしたことで知られてな」
「それからですね」
「定着したな」
「それまではオシリス神やイシス女神が有名でしたが」
 それがというのです。
「今ではメジェド神もです」
「有名だな」
「はい、そうなったみたいですね」」
「そうだな、それまでは影も形も知られていなかったがな」
「急に有名になって」
 まさにふとしたことで、です。
「ここでも私達は」
「それも面白い、しかし我々は日本という国を知らなかった」
 ラー神はこうも言いました。
「エジプトではな」
「まだ日本もですね」
「なかったしな、遠い昔だ」
「日本もなかったんですね」
「中国もなかったな」
 今度は神宝を見て言いました。
「アメリカもロシアもな」
「そしてブラジルもですね」
「そうだ、どの国もなかった」
 ラー神はカルロスにも答えました。
「そうだった」
「本当にエジプトだけだったんですね」
「メソポタミアはあったがな」
「それでもですね」
「君達の国はなかった、少しして中国という国が出来たが」
 それでもというのです。
「そうした国があるとほんの少し聞くだけでな」
「それ以外はですね」
「関わりもなかった。だ、今はな」
「こうしてですね」
「オズの国にあってな」
 そしてというのです。
「そうした国があることもな」
「ご存知なんですね」
「そうなった、面白いな」
 実にという口調でのお言葉でした。
「まことにな」
「本当に時代によって変わるんですね」
「人も神もな」
「オズの国もそうだし」
 ここで言ったのはトロットでした。
「この国も随分と変わったし」
「我々もいるしな」
 ラー神はトロットに明るい声で応えました。
「まだトロット王女達が来た時はな」
「貴方達はいなかったからね」
「ピラミッドもなかった」
 今自分達がいる場所もいうのです。
「君達がここに来た時は」
「そうなのよね」
「それがオリンポスもアスガルドも出来てな」
「このピラミッドも出来てね」
「蓬莱山も出来たな」
「高天原もね」
「天使達もいる」
 キリスト教の聖なる存在達もです。
「キャメロット城、聖杯の城もある」
「そうした場所もね」
「本当になくて」
「それがだ」
「今では全部あって」
「オズの国で楽しく過ごしている」
「そこも違うわね」
「全くだな」
 こうしたお話をしてです、そのうえで。
 皆でさらにお話していると祭壇の中に噂の神様が来ました。
 頭から白い布をすっぽりとか被っていて両目だけが見えます、手はなくて二本足だけが見えます。何か頭と身体が一つになっている感じです。
 大きさはカルロス達より小さい位です、ハンクはその神様を見てそのうえでラー神にこう尋ねました。
「この神様が」
「そう、君達が探していた」
「メジェド神だね」
「そうなのだよ」
「僕達は遂に会えたんだ」
「そうだ、ではだ」
「これからだね」
 ハンクはそのメジェド神を見ながらラー神に応えました。
「メジェド神ともお話をして」
「楽しめばいい」
「お口が見えないけれど」
「安心するのだ、喋ることが出来てだ」
 そしてというのです。
「聞くことも嗅ぐこともだ」
「出来るんだね」
「だから安心するのだ」
「それじゃあね」
「会話を楽しむのだ、メジェド神もだ」
 ラー神はメジェド神にも声をかけました。
「そうするといい」
「御意」
 今メジェド神は応えました、高くて癖のある男の人の声です。
 その声でラー神に応えてです、そのうえでハンク達に言うのでした。
「私を探していたんだったね」
「うん、会いたいと思ってね」
 ハンクはメジェド神に素直に答えました。
「それでね」
「そうだったね、実は明日ここでお祭りがあるから」
「ここに戻って来るつもりだったんだ」
「そうだったけれど」
 それでもと言うのでした。
「ラー神に呼ばれてね」
「それでだね」
「君達に会う為にね」
 まさにその為にというのです。
「ここに来たんだ」
「そうだったんだね」
「そう、そしてね」
 ハンクにさらに言うのでした。
「君達もお祭りに参加するつもりだね」
「そのつもりだよ」
 ハンクはまた素直に答えました。
「明日のね」
「そうだね、では一緒に楽しもうね」
「メジェド神と一緒に」
「そうしようね」
「わかったよ、あと貴方の姿は」
「どうしてこういう姿かだね」
「他のエジプトの神様とかなり違うけれど」
 その独特のお姿はというのです。
「どうしてかな」
「どうも当時のエジプトの人達の感覚でね」
「それでなんだ」
「こうした姿になったみたいだよ」
「そうだったんだ」
「とはいっても苦労はしていないよ」
「手とかがなくてもだね」
 ハンクハメジェド神のその外見を見つつ言いました。
「それでもだね」
「全くね、手がなくても神通力でものを持って動かせるし」
 こうした力があるからだというのです。
「神様の力で聞こえて嗅げて喋ることも出来るから」
「だからなんだ」
「全く困っていないよ」
 手とかがなくてもというのだ。
「僕はね」
「そうなんだね」
「食べる必要も寝る必要もないし」
「そこはかかしさんや樵さんと一緒だね」
「そうした身体の構造だからね」
 だからというのです。
「特にね」
「困ることもだね」
「なくてね」
 それでというのです。
「僕は何不自由なくピラミッドの中で過ごしているよ」
「それでピラミッドの中をいつも動き回っているんだ」
「時々ワープしたり壁を抜けたり姿を消したりね」
 そうしたこともしてというのです。
「楽しく過ごしているよ」
「そういえば貴方は見えないとも言われていますが」
 ここでカエルマンがメジェド神に尋ねました。
「あと何かを食べるとも」
「見えないのは姿を消せるからでね」
 メジェド神はカエルマンにも答えました。
「食べる必要はなくてもね」
「食べることは出来るのですね」
「そうなんだ、お口はないけれど」
 見れば確かにないです、目だけが目立っています。
「食べることが出来て味わうこともね」
「出来るのですね」
「そうなんだ、内臓が好きだよ」
「レバーとかホルモンとか」
 内臓と聞いてカルロスは言いました。
「そういうものがですね」
「実際に好きだよ」
「そうなんですね」
「僕は根」
「それは何よりですね」
「だからね」
 それでというのです。
「明日もね」
「楽しみなんだね」
「そうなんだ」
 実際にというのです。
「僕にしても」
「成程ね」
「だからね」 
 さらに言うメジェド神でした。
「明日が待ち遠しいよ」
「さて、明日は」 
 その明日のことをです、ラー神も言います。
「ご馳走を出してお酒もだよ」
「出すね」
「そしてここにピラミッドの住人達を呼んで」
「神々も人々もね」
「生きもの達もな」
 こうメジェド神に応えます。
「そうしてだよ」
「そのうえでだね」
「楽しもう、お客さんも来るからな」
「お客さんっていいますと」
 カルロスはお客さんと聞いてラー神に尋ねました。
「一体」
「オズの国の名士達だよ」
「達、ですか」
「君達もよく知っている」
「それは一体」
「ううんと、それはね」
 どうかとです、ここでトロットが言ってきました。
「少しね」
「少し?」
「待ってね」
 そしてというのです。
「楽しみにしておきましょう」
「あっ、ラー神にお聞きすることを」
「そのことを待ってね」
 そしてというのです。
「待っていましょう」
「そうですか、それじゃあ」
「そしてね」 
 そのうえでというのです。
「今はね」
「今は?」
「ゆっくりとしておきましょう」
「今を楽しむってことかな」
「誰か来ることはわかったらね」
 それでというのです。
「それは楽しみに置いておいて期待しながら」
「今を楽しむんだね」
「そうすればいいでしょ、そうすれば二つのことを楽しめるでしょ」
「今とそしてこれからのことを期待して」
「二つ同時にね、これって凄く嬉しいことよね」
 トロットはハンクににこにことしてお話しました。
「二つのことを同時に楽しめるなら」
「言われてみればそうだね」
 ハンクも頷くことでした。
「今聞いたらその楽しみがなくなるけれど」
「誰と会えるのかわかるとね」
「だったらね」
「そのことは置いておいて」
「そしてね」
「そのことを楽しみにしながら」
「今も楽しみましょう」
「それじゃあね」
 二人でお話してです、そしてでした。
 そのうえで、です。こうも言ったのでした。
「メジェド神ともね」
「お話すれば」
「折角お会い出来たし」
「ずっとお会いしたいと思っていて」
「それが適ったから」
 だからだというのです。
「ここはね」
「それじゃあね」
「僕にしてもね」
 そのメジェド神も応えました。
「君達とお話したいよ」
「貴方もなんだ」
「うん、僕に会いたいという人と会う」
 神様の言葉は嬉しそうなものでした。
「それはいいことだね」
「そうだね、それじゃあ」
「今からお話しよう」
「それではね」
 ハンクが笑顔で応えてでした、そのうえで。
 皆はメジェド神とお話をはじめました、そこでカルロスは神様に対してこんなことをお願いしたのでした。
「あの、お姿消せますから」
「だからだね」
「はい、今してくれますか?」
「いいよ、こうしてね」
 実際にでした、メジェド神は。
 姿を消してみせました、それですぐに出て来て言ってきました。
「出ることも出来るよ」
「実際に消えましたね」
「そうだよ、それで壁抜けもね」
 こちらもというのです。
「出来るしね」
「それもメジェド神の能力ですね」
「そうなんだ、そして明日はね」
「お祭りで」
「皆も楽しんでね」
「さて、内臓のお料理というと」
 トロットが楽しそうに言いました。
「ギドニ―パイやホルモンね」
「ホルモンっていいますと」
「焼き肉よね」
「そうですよね、それは」
 カルロスはトロットに笑顔で応えました。
「あと及第粥でも豚の内臓を入れますし」
「日本では鰻の肝のお吸いものもあるし」
「それにレバーを使ったお料理はね」
「結構ありますね」
「レバーのパテとかね」
 トロットも嬉しそうに言います。
「ああしたものもね」
「食べられますね」
「だから楽しみよ」
「明日がですね」
「誰が来るのかも楽しみだし」
「お料理もですね」
「本当に楽しみよ」
 笑顔で言うのでした、そうしてそのうえで今はラー神の祭壇でラー神そしてメジェド神と楽しくお話をして晩ご飯も食べてぐっすりと寝ることもしました。








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